(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-20
(45)【発行日】2023-09-28
(54)【発明の名称】電力管理システム、電力管理方法及び電力管理プログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 13/00 20060101AFI20230921BHJP
G06Q 10/04 20230101ALI20230921BHJP
G06Q 50/06 20120101ALI20230921BHJP
【FI】
H02J13/00 301A
G06Q10/04
G06Q50/06
(21)【出願番号】P 2019110236
(22)【出願日】2019-06-13
【審査請求日】2022-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】312002347
【氏名又は名称】株式会社エナリス
(74)【代理人】
【識別番号】100117514
【氏名又は名称】佐々木 敦朗
(72)【発明者】
【氏名】小林 輝夫
(72)【発明者】
【氏名】坂巻 義徳
(72)【発明者】
【氏名】藤原 健
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-169819(JP,A)
【文献】特開2003-009430(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 50/06
G06Q 10/04
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力の消費単位である需要家内における電気機器の消費電力を管理する電力管理システムであって、
前記需要家内に設けられ、需要家内において発電又は消費した電力量を測定して実績データを生成する実績データ生成部と、
前記需要家内において前記実績データ生成部よりも前記電気機器側に設置され、需要家単位で測定された総消費電力の時間的変動を分析して、前記需要家内で稼動している個別機器とその消費電力である個別消費電力とを推定する個別機器推定部と、
前記個別機器推定部による推定結果に基づいて前記個別機器の電源の状態を時系列で記録した推定履歴情報を記録するデータ記録部と、
前記データ記録部により記録された推定履歴情報を用いて、実時間で測定された総消費電力について、前記実時間の総消費電力から予測開始時点での個別機器の稼動台数を推定するとともに、予測期間に対応する期間の電源状態パラメータを用いて、前記予測開始時点からの前記予測期間における個別消費電力の推移を予測する個別電力予測部と、
前記個別電力予測部により予測された前記予測期間における個別消費電力の推移をもとに、前記予測期間における総消費電力の推移を予測する電力予測部と
、
実際に消費された電力に関する実消費電力情報を蓄積する実消費電力蓄積部と、
前記実消費電力蓄積部に蓄積された実消費電力情報、及び前記データ記録部が記録した推定履歴情報を教師データとして、前記電力予測部の人工知能を学習させる学習部と
を備えたことを特徴とする電力管理システム。
【請求項2】
前記個別機器推定部は、電力波形及びその時間的な変化を分析し、周波数成分及び電力の変動パターンの特性を抽出することによって、稼動している個別機器とその消費電力である個別消費電力とを推定することを特徴とする請求項
1に記載の電力管理システム。
【請求項3】
電力の消費単位である需要家内における電気機器の消費電力を管理する電力管理方法であって、
前記需要家内に設けられた実績データ生成部が、需要家内において発電又は消費した電力量を測定して実績データを生成する実績データ生成ステップと、
前記需要家内において前記実績データ生成部よりも前記電気機器側に設置されたデータ記録部が、需要家単位で測定された総消費電力の時間的変動を分析して、前記需要家内で稼動している個別機器とその消費電力である個別消費電力とを推定し、この推定結果に基づいて前記個別機器の電源の状態を時系列で記録した推定履歴情報を記録するデータ記録ステップと、
個別電力予測部が、前記データ記録ステップで記録された推定履歴情報を用いて、実時間で測定された総消費電力について、前記実時間の総消費電力から予測開始時点での個別機器の稼動台数を推定するとともに、予測期間に対応する期間の電源状態パラメータを用いて、前記予測開始時点からの前記予測期間における個別消費電力の推移を予測する個別電力予測ステップと、
前記個別電力予測ステップで予測された前記予測期間における個別消費電力の推移をもとに、前記予測期間における総消費電力の推移を電力予測部が予測する総電力予測ステップと
、
実際に消費された電力に関する実消費電力情報を実消費電力蓄積部が蓄積する実消費電力蓄積ステップと、
前記実消費電力蓄積ステップで蓄積された実消費電力情報、及び前記データ記録ステップで記録した推定履歴情報を教師データとして、前記電力予測部の人工知能を学習させる学習ステップと
を含むことを特徴とする電力管理方法。
【請求項4】
前記データ記録ステップにおいて個別機器推定部は、電力波形及びその時間的な変化を分析し、周波数成分及び電力の変動パターンの特性を抽出することによって、稼動している個別機器とその消費電力である個別消費電力とを推定することを特徴とする請求項
3に記載の電力管理方法。
【請求項5】
電力の消費単位である需要家内における電気機器の消費電力を管理する電力管理システムにおいて、
前記需要家内に設けられ需要家内において発電又は消費した電力量を測定して実績データを生成する実績データ生成部よりも前記電気機器側に設置されたコンピューターを、
前記需要家内において前記実績データ生成部よりも前記電気機器側に設置され、需要家単位で測定された総消費電力の時間的変動を分析して、前記需要家内で稼動している個別機器とその消費電力である個別消費電力とを推定する個別機器推定部と、
前記個別機器推定部による推定結果に基づいて前記個別機器の電源の状態を時系列で記録した推定履歴情報を記録するデータ記録部と、
前記データ記録部により記録された推定履歴情報を用いて、実時間で測定された総消費電力について、前記実時間の総消費電力から予測開始時点での個別機器の稼動台数を推定するとともに、予測期間に対応する期間の電源状態パラメータを用いて、前記予測開始時点からの前記予測期間における個別消費電力の推移を予測する個別電力予測部と、
前記個別電力予測部により予測された前記予測期間における個別消費電力の推移をもとに、前記予測期間における総消費電力の推移を予測する電力予測部
と、
実際に消費された電力に関する実消費電力情報を蓄積する実消費電力蓄積部と、
前記実消費電力蓄積部に蓄積された実消費電力情報、及び前記データ記録部が記録した推定履歴情報を教師データとして、前記電力予測部の人工知能を学習させる学習部
として機能させることを特徴とする電力管理プログラム。
【請求項6】
前記個別機器推定部は、電力波形及びその時間的な変化を分析し、周波数成分及び電力の変動パターンの特性を抽出することによって、稼動している個別機器とその消費電力である個別消費電力とを推定する機能を有することを特徴とする請求項
5に記載の電力管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力の消費単位ごとに設けられた複数のユーザーシステムにおける電力管理を行う電力管理システム、電力管理方法及び電力管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、送電システムとしては、従来型の送電網に加えて、スマートグリッド(次世代送電網)やスマートコミュニティと呼ばれる電力の流れを供給側・需要側の両方から制御し、最適化できるしくみが普及しつつある。従来、このようなスマートグリッドを通じて各需要家における余剰電力を、複数のユーザー間において融通し合うことが可能な電力取引システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。このような、スマートグリッドでは、各需要家において消費電力や発電量を計測するスマートメーターを通じて、毎月の検針業務の自動化やHEMS(Home Energy Management System:住宅用エネルギー管理システム)等における電気使用状況が管理される。
【0003】
上記従来型の送電システムやスマートグリッドでは、住宅や業務設備などで消費される将来の電力量を予測し、予測した消費電力をモニタに表示して可視化することより、需要者の節電行動に結びつけることができるようにしたり、家電などの電気機器を自動制御して使用状態の最適化を行ったりするシステムの開発が進められている。将来の消費電力を予測することによって、瞬間的或いは局地的に消費電力が増大するのを回避するいわゆるピークカットが可能となる。一方、電力需給調整を行う方法として、火力発電所を中心として太陽光発電や風力発電に代表される再生可能電源を分散電源として組み合わせる方法が普及しつつある。
【0004】
ところで、再生可能電源を分散電源とした場合、例えば、太陽光発電装置では太陽の前を小さな雲が通過するなど短い時間での天候の変動によっても出力変動が生じるため、この出力変動に起因する電力需給バランスの変動を補償するための電力需給調整技術の一つとして、電力系統の配電網下に連系する“蓄電池”などの分散エネルギーストレージを活用する技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
上位装置である電力系統制御装置が電力供給スケジュールに基づいて作成する2次電池の運転スケジュール(制御情報)に、短い時間での天候の変動に伴う電力供給の変動分を反映させることが実質的に困難となることから、上記特許文献1に開示されたシステムでは、電池制御装置が外部装置から動作制御情報を入手する時間間隔と、電池に対する動作制御処理の動作時間間隔を調整することによって、通信の不具合の影響を受け難くしつつ、実際の電力系統の状態の変化に応じて電池の動作を調整することを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1に開示されたシステムでは、複数の需要家における電力系統の状態変化を収集して解析して各需要家における運転スケジュール(制御情報)を出力するものであることから、各需要家で個別的に且つ短期的に生じる変動に対してリアルタイムで対応することが難しく、また、電力系統の状態変化は各需要家に固有の特性があるため、複数の需要家をとりまとめた制御ではきめ細かな対応が難しいという問題がある。この結果、上述した特許文献1に開示されたシステムでは、各需要家に個別的且つ短期的に生じる各需要家固有の状態変化をカバーできるように、多少の余裕を持たせた電力制御となるため、その分だけ無駄な電力供給或いは蓄放電が必要となり、エネルギー資源の有効利用にも一定の限界があった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、かかる従来技術の課題に鑑み、スマートグリッドを利用した電力制御において、個別住宅又は小規模ビルなどの小単位の施設で消費される将来の電力の予測精度をローカル側で自立的に行わせて、各需要家に個別的且つ短期的に生じる各需要家固有の状態変化をカバーできる電力管理システム、電力管理方法及び電力管理プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、電力の消費単位である需要家内における電気機器の消費電力を管理する電力管理システムであって、需要家内に設けられ、需要家内において発電又は消費した電力量を測定して実績データを生成する実績データ生成部と、需要家内において実績データ生成部よりも電気機器側に設置され、需要家単位で測定された総消費電力の時間的変動を分析して、需要家内で稼動している個別機器とその消費電力である個別消費電力とを推定する個別機器推定部と、個別機器推定部による推定結果に基づいて個別機器の電源の状態を時系列で記録した推定履歴情報を記録するデータ記録部と、データ記録部により記録された推定履歴情報を用いて、実時間で測定された総消費電力について、実時間の総消費電力から予測開始時点での個別機器の稼動台数を推定するとともに、予測期間に対応する期間の電源状態パラメータを用いて、予測開始時点からの予測期間における個別消費電力の推移を予測する個別電力予測部と、個別電力予測部により予測された予測期間における個別消費電力の推移をもとに、予測期間における総消費電力の推移を予測する電力予測部とを備える。
【0010】
また、本発明は、電力の消費単位である需要家内における電気機器の消費電力を管理する電力管理方法であって、
(1)需要家内に設けられた実績データ生成部が、需要家内において発電又は消費した電力量を測定して実績データを生成する実績データ生成ステップと、
(2)需要家内において実績データ生成部よりも電気機器側に設置されたデータ記録部が、需要家単位で測定された総消費電力の時間的変動を分析して、需要家内で稼動している個別機器とその消費電力である個別消費電力とを推定し、この推定結果に基づいて個別機器の電源の状態を時系列で記録した推定履歴情報を記録するデータ記録ステップと、
(3)個別電力予測部が、データ記録ステップで記録された推定履歴情報を用いて、実時間で測定された総消費電力について、実時間の総消費電力から予測開始時点での個別機器の稼動台数を推定するとともに、予測期間に対応する期間の電源状態パラメータを用いて、予測開始時点からの予測期間における個別消費電力の推移を予測する個別電力予測ステップと、
(4)個別電力予測ステップで予測された予測期間における個別消費電力の推移をもとに、予測期間における総消費電力の推移を電力予測部が予測する総電力予測ステップとを含む。
【0011】
上記発明において、実際に消費された電力に関する実消費電力情報を蓄積する実消費電力蓄積部と、実消費電力蓄積部に蓄積された実消費電力情報、及びデータ記録部が記録した推定履歴情報を教師データとして、電力予測部の人工知能を学習させる学習部とをさらに備える。
【0012】
上記発明において、個別機器推定部は、電力波形及びその時間的な変化を分析し、周波数成分及び電力の変動パターンの特性を抽出することによって、稼動している個別機器とその消費電力である個別消費電力とを推定することが好ましい。
なお、上述した本発明に係る電力管理システムや電力管理方法は、所定の言語で記述された本発明の電力管理プログラムをコンピューター上で実行することにより実現することができる。すなわち、本発明のプログラムを、携帯端末装置やスマートフォン、ウェアラブル端末、モバイルPCその他の情報処理端末、パーソナルコンピューターやサーバーコンピューター等の汎用コンピューターのICチップ、メモリ装置にインストールし、CPU上で実行することにより、上述した各機能を有するシステムを構築して、本発明に係る方法を実施することができる。
【0013】
また、本発明の電力管理プログラムは、例えば、通信回線を通じて配布することが可能であり、また、コンピューターで読み取り可能な記録媒体に記録することにより、スタンドアローンの計算機上で動作するパッケージアプリケーションとして譲渡することができる。この記録媒体として、具体的には、フレキシブルディスクやカセットテープ等の磁気記録媒体、若しくはCD-ROMやDVD-ROM等の光ディスクの他、RAMカードなど、種々の記録媒体に記録することができる。そして、このプログラムを記録したコンピューター読み取り可能な記録媒体によれば、汎用のコンピューターや専用コンピューターを用いて、上述したシステム及び方法を簡便に実施することが可能となるとともに、プログラムの保存、運搬及びインストールを容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、スマートグリッドを利用した電力制御において、個別住宅又は小規模ビルなどの小単位の施設で消費される将来の電力の予測精度をローカル側で自立的に行わせて、各需要家に個別的且つ短期的に生じる各需要家固有の状態変化をカバーできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態に係る電力管理システムの全体構成を示す概念図である。
【
図2】実施形態に係るユーザーシステムの機器構成を示すブロック図である。
【
図3】実施形態に係る電力制御端末の内部構成を示すブロック図である。
【
図4】実施形態に係る電力制御端末内に構築される電力管理に関するモジュールを示すブロック図である。
【
図5】実施形態に係る学習部の内部構成を示すブロック図である。
【
図6】実施形態に係る学習処理の概要を示す説明図である。
【
図7】実施形態に係る管理サーバーの内部構成を示すブロック図である。
【
図8】実施形態に係る電力管理システムの動作を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る電力管理システムの実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0017】
(電力管理システムの概要)
図1は、本実施形態に係る電力管理システム1のネットワーク構成を示した図である。本実施形態に係る電力管理システムは、電力の消費単位ごとに電力を制御及び管理する複数のユーザーシステム4,4…における電力を管理するシステムであり、各ユーザーシステム4,4…等に設置された実績データ生成部であるスマートメーター41と、インターネットや電話回線、専用回線等を介してスマートメーター41と接続された管理サーバー2とから概略構成される。
【0018】
電力管理システム1では、各スマートメーター41が、各ユーザーシステムにおいて各電力使用期間中に発電又は消費した電力量を需要家ごとに測定して実績データD1を生成し、管理サーバー2側で実績データD1に基づいてユーザーシステム4,4…内における電力消費を管理する。
図1に示すように、本実施形態では、各ユーザーシステム4,4…における電力管理実績及び予測結果を管理サーバー2側で利用できるようにしている。電力管理システム1では、管理サーバー2と、各施設(発電所、PPS、需要家、電力プロシューマ等)に設けられた電力制御端末40とが通信ネットワーク3で相互に接続されている。各需要家において外部電力系統には各ユーザーシステム4のスマートメーター41が接続されている。
【0019】
電力制御端末40は、例えば、CPUを備えた情報処理端末で構成されており、各需要家の他、発電所、PPS、電力プロシューマ、アグリゲーター等の各施設の電力設備を統括的に制御する装置であり、ユーザーシステム内において実績データ生成部であるスマートメーター41よりも電気機器(負荷)側に設置されるとともに、ユーザーシステム内においてスマートメーター41と分電盤45の両方に接続されている。この電力制御端末40が制御する対象設備としては、需要家や電力プロシューマ等の施設内に配備されたユーザーシステム4に含まれるスマートメーター41、蓄電池42、PV(Photovoltaics:太陽光発電)43など、発電や蓄電、電力消費を管理する装置が含まれる。
【0020】
なお、この電力制御端末40が制御対象とする各種装置は、必要に応じて省略することができる。例えば、ユーザーシステム4,4…ではその電力消費がスマートメーター41により測定されるが、需要家によっては発電設備及び蓄電設備を有するものもあれば、発電設備又は蓄電設備のいずれかの設備を有するもの、或いは発電・蓄電設備のいずれも備えずスマートメーター41だけが設けられ電力消費のみを行うものもある。また、電力プロシューマも電力消費をする立場にあるが、太陽光発電や蓄電池を備え、電力を供給する側にも位置することができる。
【0021】
通信ネットワーク3は、インターネットなど通信プロトコルTCP/IPを用いたIP網であって、種々の通信回線(電話回線やISDN回線、ADSL回線、光回線などの公衆回線、専用回線、WCDMA(登録商標)及びCDMA2000などの第3世代(3G)の通信方式、LTEなどの第4世代(4G)の通信方式、及び第5世代(5G)以降の通信方式等の他、Wifi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)などの無線通信ネットワーク)を相互に接続して構築される分散型の通信ネットワークである。このIP網には、10BASE-Tや100BASE-TX等によるイントラネット(企業内ネットワーク)や家庭内ネットワークなどのLANなども含まれる。
【0022】
(各装置の構成)
次いで、各装置の構成について説明する。なお、説明中で用いられる「モジュール」とは、装置や機器等のハードウェア、或いはその機能を持ったソフトウェア、又はこれらの組合せなどによって構成され、所定の動作を達成するための機能単位を示す。
【0023】
(1)ユーザーシステム4
ユーザーシステム4は、需要家や電力プロシューマが有する電力設備全般であり、電力を消費する単位でもある。需要家とは、電力の供給を受けて使用している電力設備に関する契約単位であり、契約電力が500kW以上の高圧大口需要家、50kW以上500kW未満の高圧小口需要家、一般家庭などの50kW未満の低圧需要家が含まれる。また、ユーザーシステム4は、発電や蓄電の設備を備える場合がある。発電の設備としては、例えば太陽光発電や風力発電等が挙げられる。このユーザーシステム4には、電力制御端末40と、実績データ生成部としてのスマートメーター41とが含まれる。また、電力を消費する設備としては、各種家電製品や工場設備、オフィス機器のみならず、電力制御装置(IoT機器)等の制御装置全般が含まれる。
【0024】
各需要家に設置される電力制御端末40は、需要家のユーザーシステム4内において実績データ生成部であるスマートメーター41よりも電気機器(蓄電池42、PV43,その他負荷441~44n)側に設置され、分電盤45に接続されてユーザーシステム4内で流通される電力に関する電力の電流、電圧、電力波形、周波数等が取得可能となっているとともに、各電気器、ユーザーシステム4(需要家)内に配置されたPV43や蓄電池42の発電や充放電を実際に制御する装置である。具体的に電力制御端末40は、通信機能やCPUを備えた情報処理端末であり、OS或いはファームウェア、各種アプリケーションソフトをインストールすることにより様々な機能が実装可能であり、本実施形態では、アプリケーションをインストールして実行することによって電力管理部として機能する。この情報処理端末としては、パーソナルコンピューターの他、例えば、スマートフォンや、機能を特化させた専用装置により実現することができ、タブレットPCやモバイルコンピューター、携帯電話機が含まれる。
【0025】
スマートメーター41は、需要単位であるユーザーシステム内における発電・蓄電・電力消費を統括的に管理する実績データ生成部であり、需要家のユーザーシステム4内において、各需要家での電力消費を計測する他、ユーザーシステム内の他の設備、例えば蓄電池や太陽光発電による蓄電や発電も制御・管理し、需要家において各電力使用期間中に発電、蓄電又は消費した電力量を測定して実績データD1を生成し、定期的に電力制御端末40を経由して管理サーバー2に送出する。この実績データD1の送信は、通信ネットワーク3や電話回線、専用回線等を通じて管理サーバー2に対して行われる。なお、本実施形態では、実績データ生成部としてスマートメーター41を用いるが、本発明はこれに限定されず、例えば、電力制御端末40や、需要家内に配置された各種家電製品、工場設備、オフィス機器など、電力制御装置(IoT機器)等の制御装置を備えて自機の状態を実績データとして通信ネットワークに送信する機能を有する電子機器全般が含まれる。
【0026】
(2)管理サーバー2の構成
管理サーバー2は、電力管理サービスの提供業者が管理運用するサーバー装置であり、
図7に示すように、通信インターフェース23と、認証部22と、学習実行部25と、外部情報データベース21aと、ユーザーデータベース21bと、実績管理データベース21cと、学習情報データベース21dと、外部情報管理部24、データ管理部26とを備えている。
【0027】
通信インターフェース23は、通信ネットワーク3を通じて、他の通信機器とデータの送受信を行うモジュールであり、本実施形態では、本サービスを提供するために各電力制御端末40及びスマートメーター41、及び外部情報源5に接続されている。
【0028】
認証部22は、電力管理に係るアクセス者の正当性を検証するコンピューター或いはその機能を持ったソフトウェアであり、ユーザーを特定するユーザーIDに基づいて認証処理を実行する。本実施形態では、通信ネットワーク3を通じてアクセス者の端末装置からユーザーID及びパスワードを取得し、ユーザーデータベース21bを照合することによって、アクセス者にその権利があるか否かや、そのアクセス者が契約者であるか否かなどを確認する。
【0029】
学習実行部25は、通信ネットワーク3を通じて、各ユーザーシステム4に備えられたAIの機械学習を実行するモジュールであり、本実施形態では、学習履歴管理部25a及びシステム連携部25bを備えている。
【0030】
学習履歴管理部25aは、各ユーザーシステム4側で実行された学習の履歴である学習履歴データを生成するモジュールである。システム連携部25bは、各ユーザーシステム4側の電力制御端末40と、協働して機械学習処理を進めるモジュールである。学習実行部25は、このシステム連携部25bを通じて各電力制御端末40と連携をとることによって、AIによる機械学習を管理する。
【0031】
外部情報管理部24は、通信ネットワーク3上に分散配置された各外部情報源5から情報を収集するモジュールである。具体的に外部情報管理部24は、情報収集部24aと、相関抽出部24bと、相関情報提供部24cとを備えている。
【0032】
外部情報データベース21aは、収集された外部情報を分類して蓄積する記憶装置であり、各外部情報と、その種別や時間情報、キーワード等の付加情報とを紐付けて蓄積する。ユーザーデータベース21bは、各需要家のユーザーや、アグリゲーター等の業者に関する情報を蓄積する記憶装置である。
【0033】
実績管理データベース21cは、発電所や需要家、アグリゲーター等の電力の授受に関係する者による実績データを収集し蓄積して管理する記憶装置である。各スマートメーターから受信した各実績データは、この実績管理データベースに蓄積され、学習実行部25における機械学習の用に供される。学習情報データベース21dは、各需要家における機械学習の実績を記録する記憶装置である。
【0034】
データ管理部26は、各需要家から実績データD1及び推定履歴D2を収集し解析することによって、学習用の教師データを生成するモジュールであり、このデータ管理部26による解析結果は、外部情報管理部24が解析した相関情報とともに、学習実行部25に入力され、機械学習の用に供される。具体的に、データ管理部26は、実績データ収集部26aと推定履歴収集部26bとを備えている。
【0035】
(3)電力制御端末40
具体的に電力制御端末40は、
図3に示すように、CPU402と、メモリ403と、入力インターフェース404と、ストレージ401と、出力インターフェース405と、通信インターフェース406とを備えている。なお、本実施形態では、これらの各デバイスは、CPUバス400を介して接続されており、相互にデータの受渡しが可能となっている。
【0036】
メモリ403及びストレージ401は、データを記録媒体に蓄積するとともに、これら蓄積されたデータを各デバイスの要求に応じて読み出す記憶装置であり、例えば、ハードディスクドライブ(HDD)やソリッドステートドライブ(SSD)、メモリカード等により構成することができる。特に、本実施形態においてストレージ401は個別機器推定部である稼働電気機器特定部402dによる推定結果に基づいて個別機器の電源の状態を時系列で記録した推定履歴情報D2を記録するデータ記録部としての機能を果たすとともに、需要家内において実際に消費された電力に関する実消費電力情報D5を需要家内側で蓄積する実消費電力蓄積部としての機能も果たしている。
【0037】
入力インターフェース404は、ユーザーシステム内に設置された各設備から制御信号を受信するモジュールであり、受信された制御信号はCPU402に伝えられ、OSや各アプリケーションによって処理される。他方、出力インターフェース405は、ユーザーシステム内に設置された各設備へ制御信号を出力するモジュールである。かかるユーザーシステム内に設置される各設備は、その需要家やプロシューマなどの形態によって異なり、例えば、需要家では、電力消費についてはスマートメーター41により測定され、発電・蓄電については、太陽光発電及び蓄電設備の両方を有するものもあれば、太陽光発電又は蓄電池のいずれかの設備を有するもの、発電・蓄電設備のいずれも備えないものもある。また、プロシューマでは、電力消費をスマートメーター41により計測し、太陽光発電(PV)42や蓄電池42に対する制御信号が入出力される。
【0038】
通信インターフェース406は、他の通信機器とデータの送受信を行うモジュールであり、通信方式としては、例えば、電話回線やISDN回線、ADSL回線、光回線などの公衆回線、専用回線、WCDMA(登録商標)及びCDMA2000などの第3世代(3G)の通信方式、LTEなどの第4世代(4G)の通信方式、及び第5世代(5G)以降の通信方式等の他、Wifi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)などの無線通信ネットワークが含まれる。通信インターフェース406は、スマートメーター41
【0039】
CPU402は、各部を制御する際に必要な種々の演算処理を行う装置であり、各種プログラムを実行することにより、CPU11上に仮想的に各種モジュールを構築する。このCPU402上では、OS(Operating System)が起動・実行されており、このOSによって各電力制御端末40の基本的な機能が管理・制御されている。また、このOS上では種々のアプリケーションが実行可能になっており、CPU402でOSプログラムが実行されることによって、種々の機能モジュールがCPU上に仮想的に構築される。
【0040】
本実施形態では、CPU402上でブラウザソフトを実行することによって、このブラウザソフトを通じて、システム上の情報を閲覧したり、情報を入力したりできるようになっている。詳述すると、このブラウザソフトは、Webページを閲覧するためのモジュールであり、通信ネットワーク3を通じて管理サーバー2からHTML(HyperText Markup Language)ファイルや画像ファイル、音楽ファイルなどをダウンロードし、レイアウトを解析して表示・再生する。このブラウザソフトにより、フォームを使用してユーザーがデータをWebサーバーに送信したり、JavaScript(登録商標)やFlash、及びJava(登録商標)などで記述されたアプリケーションソフトを動作させたりすることも可能であり、このブラウザソフトを通じて、各ユーザーは、管理サーバー2が提供する電力管理サービスを利用することができる。
【0041】
図4に示すように、CPU402上には、入力インターフェース404を通じて需要家内の負荷441~44nの稼動状況を検出するための実消費電力管理モジュールとして、総電力使用量取得部402aと、電力波形情報取得部402bと、時間変動算出部402cとを備えている。また、需要家内で稼動中の電気機器を特定して、消費電力の予測を行うためのモジュールとして、稼動電気機器特定部402dと、尤度推定部402eと、電力予測部402fとを備えている。また、電力予測部402fに対して機械学習を行わせるためのモジュールとして、学習部402gを有している。そして、需要家に配置されたPV43や蓄電池42の発電や充放電を実際に制御するモジュールとして充放電制御部402hを備えている。
【0042】
総電力使用量取得部402aは、入力インターフェース404を介し、分電盤45に接続されてユーザーシステム4内で流通される電力に関する電力の電流、電圧等を計測し取得するモジュールであり、電力波形情報取得部402bは、分電盤45を通じてユーザーシステム4内で流通される電力に関する電力の波形や周波数を計測し取得するモジュールである。時間変動算出部402cは、総電力使用量取得部402aで計測された総消費電力の時間的変動を算出するモジュールである。総電力使用量取得部402a,電力波形情報取得部402b及び時間変動算出部402cによって、実消費電力蓄積部である実消費電力管理モジュールが構成され、総電力使用量取得部402a,電力波形情報取得部402b及び時間変動算出部402cによって得られた各種情報は、実際に消費された電力に関する実消費電力情報D5としてストレージ401に蓄積される。この実消費電力情報D5は、推定履歴情報D2とともに電力予測部402fの人工知能を学習させる教師データとして用いられる。
【0043】
稼動電気機器特定部402dは、需要家内において実績データ生成部であるスマートメーター41よりも電気機器(負荷)側に設置され、スマートメーター41によって需要家単位で測定され、時間変動算出部402cで算出された総消費電力の時間的変動を分析して、需要家内で稼動している個別機器とその消費電力である個別消費電力とを推定する個別機器推定部としての機能を果たすモジュールである。また、稼動電気機器特定部402dは、生成した推定結果の履歴である推定履歴D2を、特定の期間を表す情報と関連付けてストレージ401に記憶する。この稼働電気機器特定部402dによる推定の尤度については、尤度推定部402eによって検証される。
【0044】
ここで、仮想した個別機器とは、住宅内に実際に存在する電気機器の1つ1つであってもよく、推定分解電力の大きさに対応した仮想上の電気機器であってもよい。例えば、総電力測定装置300により測定された総消費電力がある周期において50W上昇している場合、50Wの消費電力を有する電気機器(具体的な機器を特定する必要はない)が稼動したと分析する。また、スマートメーター41により測定された総消費電力がある周期において100W下降している場合、100Wの消費電力を有する電気機器が停止したと分析する。すなわち、この場合における仮想した個別機器とは、推定分解電力50Wの電気機器、推定分解電力100Wの電気機器をいう(以下、これらを個別機器[50W]、個別機器[100W]などと表記する)。
【0045】
また、分析の対象とする特定の期間とは、個別住宅での電気機器の使用パターン(1日の使用パターン、週間の使用パターンなど)をカバーする期間であり、例えば、季節ごとに3~7日周期とするなどが挙げられる。また、電源状態パラメータを算出する所定の時間単位とは、1日を複数の時間帯に分けたものであり、例えば、家庭内の1日の電力使用パターンを考慮して、朝、昼、夕方、夜の4個の時間帯とすることが可能である。なお、これは一例に過ぎない。例えば、所定の時間単位を1時間としてもよいし、それより短い時間単位としてもよい。或いは、所定の時間単位を1日よりも長い単位、例えば数日としてもよい。要は、どのくらいの粒度で将来の総消費電力を予測したいかに応じて、所定の時間単位を決めればよい。
【0046】
さらに稼動電気機器特定部402dは、総電力使用量取得部402aにより取得され総消費電力に対し、ストレージ401に記憶された機器リストT1を利用して、各個別機器の電源オン状態を推定する。また、稼動電気機器特定部402dは、総電力使用量取得部402aにより取得された総消費電力に対して機器リストを適用することによって、実時間の総消費電力から予測開始時点での個別機器の稼動台数を推定する。
【0047】
電力予測部402fは、学習部402gにより生成された学習データを用いて、将来の予測したい期間(予測期間)における個別機器の消費電力(以下、個別消費電力という)を予測するモジュールである。
【0048】
詳述すると、電力予測部402fは、仮想した個別機器とその消費電力である個別消費電力とを推定することによって機器リストT1を得るとともに、この機器リストT1を用いて個別機器の稼動台数を推定し、この推定結果をもとに個別機器の電源の状態を表す電源状態パラメータを所定の時間単位で算出することにより、個別機器の消費電力に関する学習データを生成する。また、電力予測部402fは、ストレージ401に記録された推定履歴情報D2を用いて、実時間で測定された総消費電力について実時間の総消費電力から予測開始時点での個別機器の稼動台数を推定するとともに、予測期間に対応する期間の電源状態パラメータを用いて、予測開始時点からの予測期間における個別消費電力の推移を予測する個別電力予測部としての機能も果たす。
【0049】
さらに、電力予測部402fは、総電力使用量取得部402a及び電力波形情報取得部402bにより実時間で測定された総消費電力及び電力波形等に対して、時間変動算出部402cによりこれらの時間変動を算出させる。そして、予測期間に対応する期間に関してストレージ401に記憶された機器リストT1(仮想した個別機器とその個別消費電力)を適用することによって、実時間の総消費電力から予測開始時点での個別機器の稼動台数を推定する。そして、電力予測部402fは、予測期間に対応する期間について電源状態パラメータを用い、上記予測開始時点からの予測期間における個別消費電力の推移を予測する。
【0050】
また、本実施形態において電力予測部402fは、稼動電気機器特定部402dにより予測された予測期間における個別消費電力の推移をもとに、当該予測期間における総消費電力の推移を予測する。具体的には、電力予測部402fは、稼動電気機器特定部402dにより予測された予測期間の各時刻における個別消費電力をそれぞれの時刻ごとに合計することにより、当該予測期間における総消費電力の推移を予測する。
【0051】
充放電制御部402hは、出力インターフェース405を通じてPV43や蓄電池42に対して発電や充放電を制御する他、例えば、電力予測部402fにより予測された総消費電力をユーザーに通知する機能も備えている。又は、電力予測部402fにより予測された総消費電力がしきい値を超える場合に、どの時間帯にどの程度しきい値を超えるかの情報を含めて、警告メッセージを通知するようにしてもよい。
【0052】
(4)AI学習
ここで学習部402gについて詳述する。
図5及び
図6は、学習部402gの構成を示すブロック図である。学習部402gは、電力予測部402fの人工知能であるディープラーニング認識部402iが適正な判定をするように学習させるモジュールであり、本実施形態では、情報収集部24aによって収集された実績データD1や推定履歴D2、外部情報D3、相関情報D4から教師データを生成し、この教師データに基づいてディープラーニング認識部402iを学習させる。
【0053】
学習部402gは、ディープラーニング認識部402iに対し、入力された実績データD1や推定履歴D2について、ディープラーニング認識部402iによる判定結果である推定履歴と実績データとを対比する比較部としての役割を果たす。具体的にこの学習部402gは、ディープラーニング認識部402iに教師データとして入力された同一事象(対象需要家、機器、発生時刻等)についての判定結果D77と、そのとき実際に制御された実績データD1とを対比し、その対比した結果が一致するかどうか、異なるとすればどの選択肢が誤っていたかを確認することによって、電力予測した際に電力予測部402fが選択した各種選択肢の正当性を帰納法的に検証し、電力予測部402fに対してフィードバックする。
【0054】
ディープラーニング認識部402iは、いわゆるディープラーニング(深層学習)により、判定を行うモジュールであり、電力管理する際の各種選択肢を自動設定するための学習データ(教師データ)として機能検証に利用する。具体的には、ディープラーニング認識部402iでは、所定のディープラーニングのアルゴリズムに従って、各推定履歴D2と実績データD1との相関、及び外部情報D3及び相関情報D4を解析し、その解析結果であるディープラーニング認識結果(価格予測AIモデル)を電力予測部402fに設定する。
【0055】
ディープラーニング認識部402iに実装されたアルゴリズムとしては、本実施形態では、ニューラルネットワークの多層化、特に3層以上のものを備え、人間の脳のメカニズムを模倣した学習及び認識システムである。この認識システムに画像等のデータを入力すると、第1層から順番にデータが伝搬され、後段の各層で順番に学習が繰り返される。この過程では画像内部の特徴量が自動で計算される。
【0056】
この特徴量とは問題の解決に必要な本質的な変数であり、特定の概念を特徴づける変数である。ディープラーニング認識部402iにおいても、実績データD1、推定履歴D2、外部情報D3、及び相関情報D4が入力されて、これらのデータ中の特徴点を階層的に複数抽出し、抽出された特徴点の階層的な組合せパターンによりパターンを認識する。この認識処理の概要を
図6に示す。同図に示すように、ディープラーニング認識部402iの認識機能モジュールは、多クラス識別器であり、複数の事象が設定され、複数の物体の中から特定の特徴点を含むオブジェクトである特徴ベクトル702(ここでは、例えば「家電機器Aのオン/オフ」)を検出する。この認識機能モジュールは、入力ユニット(入力層)707、第1重み係数708、隠れユニット(隠れ層)709、第2重み係数710、及び出力ユニット(出力層)711を有する。
【0057】
このとき入力ユニット707には複数個の特徴ベクトル702が入力される。第1重み係数708は、入力ユニット707からの出力に重み付けする。隠れユニット709は、入力ユニット707からの出力と第1重み係数708との線形結合を非線形変換する。第2重み係数710は隠れユニット709からの出力に重み付けをする。出力ユニット711は、各クラス(例えば、使用機器、使用状態等)の識別確率を算出する。ここでは出力ユニット711を3つ示すが、これに限定されない。出力ユニット711の数は、パターン識別器が検出可能な事象の数と同じである。出力ユニット711の数を増加させることによって、認識可能な機器種別等の事象識別器が検出可能な事象が増加する。
【0058】
具体的に、学習部402gは、項目抽出部402jと、教師データ作成部402kと、キーワード処理部402lとを備えている。項目抽出部402jは、ディープラーニング認識を行うために、認識対象となる実施データや外部情報などの中の文字列や数値の領域分割(セグメンテーション)を行うモジュールである。詳述すると、ディープラーニング認識を行うためには、実施データ及び推定情報中の特定の項目や関連キーワードを抽出する必要があり、電力管理に影響する各種事象に対応している。
【0059】
キーワード処理部402lは、各々のキーワードと特定の情報ソース(領域分割された文字列や数値)との関連付けを行うモジュールである。この関連付けには、特定の情報ソースに関連付けられた特定のキーワードに対して関連する情報(メタデータ)を注釈として付与することであり、XML等の記述言語を用いてメタデータをタグ付けし、多様な情報を「情報の意味」と「情報の内容」に分けて記述する。
【0060】
(電力管理システムの動作)
以上説明した電力管理システムを動作させることによって、本発明の電力管理方法を実施することができる。
図8は電力管理システムの動作を示すフロー図である。なお、以下で説明する処理手順は一例に過ぎず、各処理は可能な限り変更されてもよい。また、以下で説明する処理手順について、実施の形態に応じて、適宜、ステップの省略、置換及び追加が可能である。
【0061】
図8に示すように、需要家側のユーザーシステム4内では、常時、システム内で発電、蓄電又は消費されている電力を計測している(S101)。この電力の計測では、電力波形の時間的変動も計測され、随時記録されている。一方、管理サーバー側では、この需要家側での消費電力計測に併せて、外部情報の収集及び分類を常時行っている(S201)。そして、周期的に、或いは所定量の情報が蓄積され次第、収集・分類された外部情報を各需要家側の電力制御端末40に提供する(S202)。この外部情報の提供を受けて、需要家側では、総消費電力の分析と個別消費電力との推定が行われる(S102)。
【0062】
具体的には、稼動電気機器特定部402dが、需要家単位で測定された総消費電力の時間的変動を分析して、ユーザーシステム4内で稼動している個別機器とその消費電力である個別消費電力とを推定する。この推定履歴情報を用いて、実時間で測定された総消費電力について、実時間の総消費電力から予測開始時点での個別機器の稼動台数を推定する。このとき、稼動電気機器特定部402dは、スマートメーター41で計測された電力波形及びその時間的な変化を分析し、周波数成分及び電力の変動パターンの特性を抽出することによって、稼動している個別機器とその消費電力である個別消費電力及びその継続時間を推定する。
【0063】
次いで、予測期間に対応する期間の電源状態パラメータを用いて、予測開始時点からの予測期間における個別消費電力の推移を予測するとともに、稼動電気機器特定部402dにより予測された予測期間における個別消費電力の推移に基づいて予測期間における総消費電力の推移を予測する(S103)。また、この稼動電気機器特定部402dによる推定結果に基づいて、個別機器の電源の状態を時系列で記録した推定履歴情報を記録する(S104)。
【0064】
このように予測された総消費電力の推移に基づいて、ユーザーシステム内の発電及び蓄電池の充放電を制御するDR制御を実行する(S105)。この電力制御では、推定された個別機器の特性や、過去の使用形態に基づいて、どの機器がどの程度の電力をその程度の時間だけ消費するかに基づいて、きめ細かな電力予測に基づいて蓄電池の充放電、太陽光発電のオン・オフが制御される。また、この電力制御では、いわゆる契約電力量を瞬間的に超えてしまうの回避させる制御いわゆる「ピークカット」が行われており、推定された個別機器の種類に応じて、どの機器がどの程度の時間、どの程度の電力を継続して使用するかを予測し、ピークが生じるようであれば、その間の蓄電を停止したり、或いは蓄電されていた電力を放電したりなどして、瞬間的に使用電力量が高くなるのを回避する。
【0065】
また、この電力制御の一環として、例えば、推定された電気器が使用中である場合に、契約電力のピークが発生しそうなときには、その機器の使用を控えたり、使用開始時間を変更するように勧めるなどのレコメンドメッセージを出力させるようにしてもよい。このレコメンドメッセージの出力は、需要家内にあるディスプレイに表示させたり、スマートスピーカーから音声で出力したり等の方法が挙げられる。また、電力制御端末を使用して蓄電池を利用した自動制御を行うことでもピークカットを実現できる。
【0066】
この制御結果は実績データD1としてスマートメーター41で収集され、また、推定履歴情報はストレージ401に蓄積され(S106)、これらの実績データ及び推定履歴情報は、各ユーザーシステムからそれぞれ管理サーバー2へ送信され(S107)、管理サーバー2にて収集される(S203)。ここで収集された実績データと推定履歴情報について、外部情報と照合して、これらの相関関係を抽出して相関情報を生成する(S204)。
【0067】
そして、収集された実績データ、推定履歴情報、相関情報及び外部情報に基づいて、教師データを生成し、前記電力予測部402fの人工知能を学習させるための機械学習を実行する(S108)。この機械学習による学習結果は学習履歴として更新される(S205)とともに、教師データとして各需要家の電力制御端末40に提供され、次回からの電力予測に反映される(S109)。
【0068】
(作用・効果)
以上説明した本実施形態によれば、需要家のユーザーシステムなど、ローカルにおいて総消費電力の時間変動や、電力波形(周波数)を計測して分析し、ユーザー-システム内で稼動している個別機器とその消費電力を推定し、それぞれの個別機器の特性に基づいて、その後の総消費電力を予測する。このため、本実施形態によれば、スマートグリッドを利用した電力制御や、個別住宅又は小規模ビルなどの小単位の施設で消費される将来の電力の予測精度をローカル側で電力制御端末を使い自立的に行わせて、各需要家に個別的且つ短期的に生じる各需要家固有の状態変化をカバーできる。
【0069】
また、個別機器の推定履歴や、総消費電力の予測については、外部情報との相関も分析し、周波数成分及び電力の変動パターンの特性を抽出することによって、稼動している個別機器とその消費電力である個別消費電力とを推定し、機械学習を通じて次の予測処理に反映させることから、各需要家に固有の電力の消費パターンに応じて個別的な電力制御を実現することができ、さらに予測の精度を高めることができる。
【符号の説明】
【0070】
D1…実績データ
D2…推定履歴
D3…外部情報
D4…相関情報
D77…判定結果
1…電力管理システム
2…管理サーバー
3…通信ネットワーク
4…ユーザーシステム
5…外部情報源
11…CPU
21a…外部情報データベース
21b…ユーザーデータベース
21c…実績管理データベース
21d…学習情報データベース
22…認証部
23…通信インターフェース
24…外部情報管理部
24a…情報収集部
24b…相関抽出部
24c…相関情報提供部
25…学習実行部
25a…学習履歴管理部
25b…システム連携部
26…データ管理部
26a…実績データ収集部
26b…推定履歴収集部
40…電力制御端末
41…スマートメーター
42…蓄電池
43…PV
400…CPUバス
401…ストレージ
402…CPU
402a…総電力使用量取得部
402b…電力波形情報取得部
402c…時間変動算出部
402d…稼動電気機器特定部
402e…尤度推定部
402f…電力予測部
402g…学習部
402h…充放電制御部
402i…ディープラーニング認識部
403…メモリ
404…入力インターフェース
405…出力インターフェース
406…通信インターフェース
441~44n…負荷