(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-20
(45)【発行日】2023-09-28
(54)【発明の名称】水性被覆材組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 133/00 20060101AFI20230921BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20230921BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
C09D133/00
C09D5/02
C09D175/04
(21)【出願番号】P 2019112736
(22)【出願日】2019-06-18
【審査請求日】2022-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】599071496
【氏名又は名称】ベック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】橋本 悠介
(72)【発明者】
【氏名】北脇 和智
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-013615(JP,A)
【文献】特開2012-162713(JP,A)
【文献】国際公開第2008/136467(WO,A1)
【文献】特開2007-296459(JP,A)
【文献】特開2013-249473(JP,A)
【文献】特開2009-091452(JP,A)
【文献】特開2007-120281(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)架橋型水性アクリル樹脂、
(B)水性ウレタン樹脂、
を含有し、
該(A)成分は、カルボキシル基を含むものであり、
該(B)成分は、ポリオール化合物とイソシアネート化合物の反応によって得られる樹脂であり、該ポリオール化合物が、ポリカーボネートポリオールであり、
さらに架橋剤として、金属化合物を含み、
粘度が0.5Pa・s以上5Pa・s以下、
TI値(チクソトロピーインデックス)が1以上3以下、
であることを特徴とする水性被覆材組成物。
{なお、粘度は、温度23℃において、BH型粘度計で測定した20rpmにおける粘度(4回転目の指針値)であり、TI値は、BH型粘度計を用い、下記式により求められる値である。いずれも測定温度は23℃である。
<式>TI値=η1/η2
(式中、η1は2rpmにおける粘度(Pa・s:2回転目の指針値)。η2は20rpmにおける粘度(Pa・s:4回転目の指針値))}
【請求項2】
前記粘度が0.5Pa・s以上3Pa・s以下であることを特徴とする請求項1に記載の水性被覆材組成物。
【請求項3】
前記TI値(チクソトロピーインデックス)が1.8以上3以下であることを特徴とする請求項1に記載の水性被覆材組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐汚染性、意匠性等に優れる水性被覆材組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
被塗物の保護や美観性の向上等を目的として、各種の被覆材によって塗装仕上げが行われている。
被塗物の保護するためには、例えば、水分、酸・アルカリや汚染物質等から保護するための手段として、緻密な塗膜が要求される場合がある。
また、塗膜表面に凹凸が存在する場合、その凹凸によって意匠性が損なわれたり、またその凹凸によって汚染物質が付着しやすくなるため、被塗物の意匠性向上のためには平滑な塗膜表面が要求される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、特許文献1には、保護や装飾などを目的とした水性被覆材が記載されている。
該水性被覆材は、エマルジョン樹脂、架橋剤等を含有し、特定の粘度、特定のチクソトロピックインデックスを有することが記載されている。
【0005】
しかし、特許文献1の技術では、緻密な塗膜が形成できる反面、平滑な塗膜表面が形成できないおそれがあり、場合によっては、耐汚染性、意匠性に劣るおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、このような問題に対し鋭意検討した結果、(A)架橋型水性アクリル樹脂と、(B)水性ウレタン樹脂を含む、特定の粘度、特定のTI値を有する水性被覆材組成物が、緻密で平滑な塗膜が形成でき、耐汚染性、意匠性等に優れていることを見出し、本発明の完成に至った。
【0007】
即ち、本発明は、以下の特徴を有するものである。
1.(A)架橋型水性アクリル樹脂、
(B)水性ウレタン樹脂、
を含有し、
該(A)成分は、カルボキシル基を含むものであり、
該(B)成分は、ポリオール化合物とイソシアネート化合物の反応によって得られる樹脂であり、該ポリオール化合物が、ポリカーボネートポリオールであり、
さらに架橋剤として、金属化合物を含み、
粘度が0.5Pa・s以上5Pa・s以下、
TI値(チクソトロピーインデックス)が1以上3以下、
であることを特徴とする水性被覆材組成物。
{なお、粘度は、温度23℃において、BH型粘度計で測定した20rpmにおける粘度(4回転目の指針値)であり、TI値は、BH型粘度計を用い、下記式により求められる値である。いずれも測定温度は23℃である。
<式>TI値=η1/η2
(式中、η1は2rpmにおける粘度(Pa・s:2回転目の指針値)。η2は20rpmにおける粘度(Pa・s:4回転目の指針値))}
2.前記粘度が0.5Pa・s以上3Pa・s以下であることを特徴とする1.に記載の水性被覆材組成物。
3.前記TI値(チクソトロピーインデックス)が1.8以上3以下であることを特徴とする1.に記載の水性被覆材組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明の水性被覆材組成物は、耐汚染性、意匠性等に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0009】
すなわち、本発明は、以下の特徴を有するものである。
1.(A)架橋型水性アクリル樹脂、
(B)水性ウレタン樹脂、
を含有し、
該(A)成分は、カルボキシル基を含むものであり、
さらに架橋剤として、金属化合物を含み、
粘度が0.5Pa・s以上5Pa・s以下、
TI値(チクソトロピーインデックス)が1以上3以下、
であることを特徴とする水性被覆材組成物。
2.前記粘度が0.5Pa・s以上3Pa・s以下であることを特徴とする1.に記載の水性被覆材組成物。
3.前記TI値(チクソトロピーインデックス)が1.8以上3以下であることを特徴とする1.に記載の水性被覆材組成物。
4.前記(B)成分が、ポリオール化合物とイソシアネート化合物の反応によって得られる樹脂であり、該ポリオール化合物が、ポリカーボネートポリオールであることを特徴とする1.に記載の水性被覆材組成物。
【0010】
本発明の水性被覆材組成物は、(A)架橋型水性アクリル樹脂(以下、「(A)成分」ともいう。)、(B)水性ウレタン樹脂(以下、「(B)成分」ともいう。)を含有し、粘度が0.5Pa・s以上5Pa・s以下、TI値(チクソトロピーインデックス)が1以上3以下であることを特徴とする。
【0011】
本発明の(A)成分は、架橋型水性アクリル樹脂であり、(A)成分どうしで架橋反応するもの、あるいは、(A)成分と架橋剤とで架橋反応するもの等が挙げられ、(A)成分はこれら架橋反応する反応性官能基を有することを特徴とするものである。
架橋反応する官能基の組み合わせとしては、例えば、カルボキシル基とカルボジイミド基、カルボキシル基とエポキシ基、カルボキシル基とアジリジン基、カルボキシル基とオキサゾリン基、ヒドロキシル基とイソシアネート基、カルボニル基とヒドラジド基、エポキシ基とヒドラジド基、エポキシ基とアミノ基、アルド基とセミカルバジド基、ケト基とセミカルバジド基、アルコキシシリル基どうし、カルボキシル基と金属化合物等の組み合わせが挙げられる。
【0012】
また本発明の(A)成分は、水可溶タイプ、水分散(エマルション)タイプ等特に限定されないが、本発明ではエマルションタイプのものが好ましい。
さらにエマルションタイプでは、エマルション粒子内部で架橋反応するタイプ、エマルション粒子同士で架橋反応するタイプ、エマルション粒子と架橋剤とで架橋反応するタイプ等が挙げられ、これらのうち1種以上を用いることができる。
【0013】
(A)成分は、主に後述するモノマーから構成されるもので、公知の重合法により製造することができる。
【0014】
モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸またはそのモノアルキルエステル、イタコン酸またはそのモノアルキルエステル、フマル酸またはそのモノアルキルエステル等のカルボキシル基含有モノマー;
2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール―ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールアリルエーテル、ポリプロピレングリコールアリルエーテル、ポリエチレングリコール―ポリプロピレングリコールアリルエーテル等のヒドロキシル基含有モノマー、
ジアセトン(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、アクロレイン、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニル(イソ)ブチルケトン、アセトニルアクリレート、アクリルオキシアルキルプロパナール類、メタクリルオキシアルキルプロパナール類、2ーヒドロキシプロピルアクリレートアセチルアセテート、タンジオールアクリレートアセチルアセテート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシアリルエステル等のカルボニル基含有モノマー、
(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-n-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-シクロプロピル(メタ)アクリルアミド、N-(メタ)アクロイルピロリジン、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-n-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル](メタ)アクリルアミド、ビニルアミド、N,N-メチレンビスアクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー、
グリシジル(メタ)アクリレート、ジグリシジル(メタ)アクリレート、ジグリシジルフマレート、3,4-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシビニルシクロヘキサン、アリルグリシジルエーテル、ε-カプロラクトン変性グリシジル(メタ)アクリレート、β-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有モノマー、
(メトキシ)ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、(メトキシ)ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、(メトキシ)ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、(メトキシ)ポリエチレングリコールアリルエーテル、(メトキシ)ポリプロピレングリコールアリルエーテル、(メトキシ)ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールアリルエーテル等のアルキレンオキサイド鎖含有モノマー、
アミノメチル(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、アミノブチル(メタ)アクリレート、ブチルビニルベンジルアミン、ビニルフェニルアミン、p-アミノスチレン、N-メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N-〔2-(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ピペリジン、N-〔2-(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ピロリジン、N-〔2-(メタ)アクリロイルオキシエチル〕モルホリン、4-〔N,N-ジメチルアミノ〕スチレン、4-〔N,N-ジエチルアミノ〕スチレン、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、N-(2-ジメチルアミノエチル)アクリルアミド、N-(2-ジメチルアミノエチル)メタクリルアミド等のアミノ基含有モノマー;
アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル基含有モノマー;
N-メチロ-ル(メタ)アクリルアミド等のメチロール基含有モノマー;
メタクリロイルイソシアネートなどのイソシアネート基含有モノマー;
プロピレン-1,3-ジヒドラジン及びブチレン-1,4-ジヒドラジンなどのヒドラジド基含有モノマー;
ビニルオキサゾリン、2-ビニル-2-オキサゾリン、2-プロペニル2-オキサゾリン等のオキサゾリン基含有モノマー;
フッ化ビニリデン等のハロゲン基含有モノマー;
スルホエチル(メタ)アクリレート、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、メタクリロイルオキシスルホン酸ナトリウム、プロペニル基を導入したポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステル塩等のスルホン酸基、硫酸基含有モノマー;
アシッドホスホキシエチル(メタ)アクリレート、アシッドホスホキシプロピル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-アシッドホスホキシプロピル(メタ)アクリレート、アシッドホスホキシポリオキシアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アシッドホスホキシエチルフェニル(メタ)アクリレート等のリン酸基含有モノマー;
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等のアルコキシシリル基含有モノマー;
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-フェニルエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、4-メトキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;
スチレン、2-メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、t-ブチルスチレン、ビニルアニソール、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル系モノマー;
エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルケトン等のモノマー;
等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0015】
本発明では、架橋反応する官能基の組み合わせとしては、例えば、カルボニル基とヒドラジド基、アルコキシシリル基どうし、カルボキシル基と金属化合物から選ばれる1種以上の組み合わせが好ましく、(A)成分としては、カルボニル基含有モノマー、ヒドラジド基含有モノマー、アルコキシシリル基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマーから選ばれる1種以上のモノマーを含むものが好ましい。
【0016】
本発明の(B)成分は、水性ウレタン樹脂であり、少なくともポリオール化合物とイソシアネート化合物の反応によって得られる樹脂である。また、水可溶性、水分散性等特に限定されないが、本発明では水分散性のウレタン樹脂を用いることが好ましい。
【0017】
ポリオール化合物としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリテトラメチレングリコールポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール、ポリオキシプロピレンエチレンポリオール、エポキシポリオール、アルキドポリオール、フッ素含有ポリオール、ケイ素含有系ポリオール、セルロース及び/またはその誘導体、アミロース等の多糖類等が挙げられる。
【0018】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル等のポリアルキレングリコールの他、エチレンオキシド-プロピレンオキシド共重合体などの単量体成分として複数のアルキレンオキシドを含む(アルキレンオキサイド-他のアルキレンオキサイド)共重合体、ビスフェノールAを開始剤としてアルキレンオキサイド(例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等の少なくとも1種以上。以下同様。)を付加することで得られるビスフェノールA型ポリエーテルポリオール、芳香族アミン(例えば、トルエンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、p-フェニレンジアミン、o-フェニレンジアミン、ナフタレンジアミン、トリエタノールアミン、マンニッヒ縮合物等)を開始剤としてアルキレンオキサイドを付加することで得られる芳香族アミン系ポリエーテルポリオール、グリセリンを開始剤としてアルキレンオキサイドを付加することで得られるポリエーテルポリオール、低分子量アミン(例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ネオペンチルジアミン等)を開始剤としてアルキレンオキサイドを付加したアミノ基含有ポリエーテルポリオール等が挙げられる。
【0019】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、多価アルコールと多価カルボン酸との縮合重合物、環状エステル(ラクトン)の開環重合物、多価アルコール、多価カルボン酸及び環状エステルの3種類の成分による反応物等が挙げられる。
【0020】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,3-テトラメチレンジオール、1,4-テトラメチレンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-テトラメチレンジオール、2-メチル-1,3-トリメチレンジオール、1,5-ペンタメチレンジオール、トリメチルペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキシレングリコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,6-ヘキサメチレンジオール、3-メチル-1,5-ペンタメチレンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタメチレンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、メタキシレングリコール、パラキシレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、ビスヒドロキシエチルテレフタレート、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ビスフェノール類(ビスフェノールAなど)、糖アルコール類(キシリトール、ソルビトール、シュークロースなど)、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、2-メチロールプロパンジオール、エトキシ化トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0021】
多価カルボン酸としては、例えば、マロン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸;
1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;
テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、無水フタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、パラフェニレンジカルボン酸、トリメリット酸等の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0022】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、多価アルコールとホスゲン、クロル蟻酸エステル、ジアルキルカーボネートまたはジアリルカーボネートとの重合縮合物、環状炭酸エステル(アルキレンカーボネート等)の開環重合物等が挙げられる。
本発明では、ポリオール化合物として、特に、ポリカーボネートポリオールを用いることが好ましい。
【0023】
イソシアネート化合物としては、例えば、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するものであれば限定されないが、例えば、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート等、及び、これらをアロハネート化、ビウレット化、2量化(ウレチジオン)、3量化(イソシアヌレート)、アダクト化、カルボジイミド反応等によって誘導体化したもの、及びそれらの混合物、及び、それらと共重合可能なモノマーとの共重合体、ポリオキシアルキレン化合物付与物等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。
本発明では、水性のイソシアネート化合物として、例えば、カルボキシル基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、アルキレンオキサイド鎖含有モノマー等のモノマーとイソシアネート化合物との共重合体、ポリオキシアルキレン化合物が付与されたイソシアネート化合物等を用いることができる。
【0024】
脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、1,3-トリメチレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,3-ペンタメチレンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2-メチル-1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、3-メチル-1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアネートメチルカプロエート、リジンジイソシアネ-ト、ダイマー酸ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等が挙げられる。
【0025】
脂環式ジイソシアネートとしては、例えば、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4´-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルナンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0026】
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート(TDI)、2,6-トリレンジイソシアネート(TDI)、ナフチレン-1,4-ジイソシアネート、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、4,4´-ジフェニルジイソシアネート、4,4´-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4´-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4´-ジフェニルエ-テルジイソシアネート、2-ニトロジフェニル-4,4´-ジイソシアネート、2,2´-ジフェニルプロパン-4,4´-ジイソシアネート、3,3´-ジメチルジフェニルメタン-4,4´-ジイソシネート、4,4´-ジフェニルプロパンジイソシアネート、3,3´-ジメトキシジフェニル-4,4´-ジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、テトラメチレンキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0027】
芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、1,3-キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,4-キシリレンジイソシアネ-ト(XDI)、ω,ω´-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン、1,3-ビス(1-イソシアネート-1-メチルエチル)ベンゼン、1,4-ビス(1-イソシアネート-1-メチルエチル)ベンゼン、1,3-ビス(α,α-ジメチルイソシアネートメチル)ベンゼン等が挙げられる。
【0028】
ポリオール化合物とイソシアネート化合物との混合比率は、特に限定されないが、NCO/OHモル比率で0.5~8.0、さらには0.7~7.0、さらには0.8~5.0となる範囲で混合することが好ましい。
【0029】
本発明は(A)成分と(B)成分を含むものであり、(A)成分と(B)成分をブレンドするタイプ、同一樹脂粒子内に(A)成分と(B)成分を含む異相構造(コアシェル構造、海島状構造、多粒子型構造、ラズベリー状構造等)樹脂粒子タイプ等特に限定されない。
(A)成分と(B)成分の含有比率は、特に限定されないが、(A)成分の固形分100重量部に対し、(B)成分の固形分0.1重量部以上10重量部以下、さらには0.5重量部以上5重量部以下であることが好ましい。
【0030】
本発明の水性塗料組成物は、粘度が0.5Pa・s以上5Pa・s以下(好ましくは1Pa・s以上4Pa・s以下、さらに好ましくは1.5Pa・s以上3Pa・s以下)、TI値(チクソトロピーインデックス)が1以上3以下(好ましくは1.2以上2.5以下、さらに好ましくは1.4以上2以下)である。
なお、粘度は、温度23℃において、BH型粘度計で測定した20rpmにおける粘度(4回転目の指針値)である。
TI値は、BH型粘度計を用い、下記式により求められる値である。いずれも測定温度は23℃である。
<式>TI値=η1/η2
(式中、η1は2rpmにおける粘度(Pa・s:2回転目の指針値)。η2は20rpmにおける粘度(Pa・s:4回転目の指針値))
【0031】
本発明は、(A)成分と(B)成分を含み、かつ、上記粘度、TI値とすることによって、緻密で平滑な塗膜が形成でき、優れた耐汚染性、意匠性等を示すことができる。
粘度が低すぎるとタレが発生し平滑な塗膜が形成できない場合がある。一方粘度が高すぎると、レベリング性に劣り、平滑な塗膜が形成できない場合がある。
TI値が高すぎると、レベリング性に劣り、平滑な塗膜が形成できない場合がある。
【0032】
本発明の水性被覆材組成物は、上記(A)成分、(B)成分以外に、架橋剤やその他の添加剤を用いることができる。
添加剤としては、例えば、顔料、骨材、溶剤、可塑剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、消泡剤、粘性調整剤、可塑剤、レベリング剤、顔料分散剤、沈降防止剤、たれ防止剤、艶消し剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、抗菌剤、防藻剤、湿潤剤、消泡剤、吸着剤、光安定剤、光触媒等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0033】
架橋剤としては具体的に、カルボジイミド基含有架橋剤として、例えば、特開平10-60272号公報、特開平10-316930号公報、特開平11-60667号公報等に記載のもの等、エポキシ基含有架橋剤として、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリヒドロキシアルカンポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等、ヒドラジド基含有架橋剤として、例えば、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド等、オキサゾリン基含有架橋剤として、例えば、2-ビニル-2-オキサゾリン、2-ビニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン等の重合性オキサゾリン化合物を該化合物と共重合可能な単量体と共重合した樹脂等、金属化合物として、例えば、カルシウム、マグネシウム、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、アルミニウム、ジルコニウム、錫、アンチモン等の多価金属と、硫酸イオン、酢酸イオン、炭酸イオン、塩化物イオン、アンモニウムイオン、シュウ酸イオン、リンゴ酸イオン、酒石酸イオン、乳酸イオン、サリチル酸イオン、安息香酸イオン、エチレンジアミン、ジメチルアミノエタノール、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等との化合物等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0034】
本発明の水性被覆材組成物は、住宅、工場、倉庫等の建築物、建屋鉄骨、鉄扉、手摺、柵、門扉、架台、軽量鉄骨、ガードレール、橋梁、鉄塔等の土木構築物の、主に上塗材用として好適に用いることができる。
適用できる基材としては、例えば、コンクリート、モルタル、繊維混入セメント板、セメント珪酸カルシウム板、スラグセメントパーライト板、スレート板、PC板、ALC板、サイディング板、セラミック板、珪酸カルシウム板、石膏ボード、磁器タイル、木材、合板、有機フォーム板、押出成形板、あるいは、冷延鋼、アルミニウム鋼、銅鋼、ブリキ鋼、ステンレス鋼、溶融亜鉛メッキ鋼、溶融亜鉛・アルミニウム合金メッキ鋼、電気亜鉛メッキ鋼、電気合金メッキ鋼、合金メッキ鋼、銅メッキ鋼、錫メッキ鋼等の金属板等が挙げられる。
また、基材には各種シーラー、下地調整剤、パテ剤等が施されたものでもよい。
【0035】
水性被覆材組成物の塗装は、公知の方法を採用することができる。
塗装方法としては、例えば、スプレー塗り、ローラー塗り、刷毛塗り等が可能である。水性被覆材組成物の塗付け量は、好ましくは50g/m2以上1000g/m2以下、さらに好ましくは80g/m2以上500g/m2以下程度である。
【実施例】
【0036】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0037】
表1に示す原料を用い、表2に示す配合量にて、原料を混合攪拌し、水性被覆材を製造した。粘度(Pa・s)、TI値は表2も示す。
【0038】
(意匠性試験)
得られた水性被覆材を、ブリキ鋼板(500×300×3mm)に塗付け量100g/m2で塗装し、標準状態(温度23度、相対湿度50%)で24時間乾燥させ試験体を得た。意匠性試験では、試験体の表面を目視にて観察、評価した。評価は次のとおりである。結果は表2に示す。
◎:表面が平滑で、ムラがなく、優れた意匠性を有していた。
○:表面が平滑で、ほとんどムラがなく、良好な意匠性を有していた。
△:平滑性に劣り、表面の一部にムラがみられた。
×:平滑性に劣り、ムラがみられた。
【0039】
(汚染性試験)
意匠性試験で得られた試験体を、標準状態で14日間静置後、試験体表面に油(オレイン酸/パーム油)3mlをスポットし24時間後に拭き取り、スポット部及び非スポット部の塗膜硬度(鉛筆硬度)の測定、及び表面を目視にて観察し、評価した。評価は次のとおりである。結果は表2に示す。
◎:非スポット部の硬度とスポット部の硬度が同じレベルであり、表面の光沢も同一であった。
○:非スポット部の硬度に比べ、スポット部の硬度の低下が1段階以下であり、表面の光沢もほぼ同一であった。
△:非スポット部の硬度に比べ、スポット部の硬度の低下が2段階以下であり、一部塗膜の収縮がみられ、表面の光沢に一部違いがみられた。
×:非スポット部の硬度に比べ、スポット部の硬度の低下が3段階以上であり、塗膜の収縮がみられ、表面の光沢に違いがみられた。
【0040】
【0041】