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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-20
(45)【発行日】2023-09-28
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/00 20060101AFI20230921BHJP
   F16C 11/04 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
B60H1/00 102J
B60H1/00 102H
F16C11/04 F
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019115307
(22)【出願日】2019-06-21
(65)【公開番号】P2021000907
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】近川 法之
【審査官】大野 明良
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-189115(JP,A)
【文献】特開2012-201229(JP,A)
【文献】特開2008-265366(JP,A)
【文献】特開2001-1740(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00
F16C 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に取り付けられる車両用空調装置であって、
空気を冷却するエバポレータと、
空気を加熱するヒータコアと、
前記エバポレータ及び前記ヒータコアを収容し、該エバポレータから供給される空気と該ヒータコアから供給される空気とを混合するエアミックス空間を画成するとともに、該エアミックス空間で混合された空気を流通させる複数の流路が形成されたユニットケースと、
前記複数の流路の開閉状態を切り換える複数のダンパと、
前記複数のダンパをそれぞれ前記ユニットケースに対して回動可能に支持するとともに、該ダンパの回動軸と平行に延びるピンを有する複数のダンパレバーと、
前記ピンがはめ込まれる案内溝が形成され、軸線回りに回動することで前記ピンを案内して前記ダンパレバーを回動させるメインレバーと、
を備え、
前記メインレバーは、
前記案内溝が形成されているメインレバー本体と、
前記軸線位置に設けられ、前記メインレバー本体を前記ユニットケースに対して前記軸線回りに回動可能に支持するとともに、該ユニットケースに対して脱落不能に係合する爪部が設けられた軸部と、
を有し、
前記軸部は、前記メインレバー本体よりも高い靭性を有するとともに、前記ユニットケースとは異なる材料で形成されており、
前記ダンパレバーは、前記軸部と同一の材料によって形成されている車両用空調装置。
【請求項2】
前記軸部、及び前記ダンパレバーは、ポリアセタール、及びポリブチレンテレフタレートを含む群から選択された一の材料によって形成され、
前記メインレバー本体は、ポリプロピレンによって形成されている請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記軸部における前記爪部とは反対側の端部には、前記軸線に対する径方向に張り出す張出部が形成されている請求項1又は2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記複数のダンパのうち少なくとも1つの前記ダンパは、前記エアミックス空間に設けられ、前記エバポレータから供給される空気と前記ヒータコアから供給される空気との混合状態を調節するエアミックスダンパである請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば下記特許文献1に記載されているように、自動車等に用いられる車両用空調装置は、加熱用熱交換器であるヒータコアと、冷却用熱交換器であるエバポレータと、これらヒータコア及びエバポレータを通過した温風、又は冷風を混合するエアミックス空間を画成するユニットケースと、エアミックス空間内における温風と冷風との混合割合を変化させるエアミックスダンパと、を備えている。このような装置では、エアミックスダンパの回動量を調整することで、冷風と温風との混合の割合が変化して、所望の温度の風を得ることができる。
【0003】
エアミックスダンパは、ユニットケースに対して、ダンパレバーと呼ばれる部材を介して回動可能に支持されている。ダンパレバーには当該ダンパレバーの回動方向に直交する方向に突出するピンが一体に設けられている。このピンは、ダンパレバーとは別に設けられたメインレバーの案内溝に嵌め込まれている。メインレバーは、駆動源(アクチュエータ)によって駆動されることで自身の軸線回りに回動する。メインレバーが回動することによって、ダンパレバーのピンが案内溝に沿って案内され、当該ダンパレバーの姿勢(回動角度)が変化する。
【0004】
メインレバーは、ユニットケース、及びダンパレバーに対して摺動する摺動部分を有している。上記の例では、メインレバーは、ユニットケースに形成された孔部に挿入された状態で回動する。また、メインレバーに形成された案内溝は、ダンパレバーのピンに摺接した状態となっている。したがって、メインレバー、ダンパレバー、及びユニットケースの間で生じる摩擦を低減する必要がある。ここで、従来、メインレバー、及びダンパレバーは、ポリアセタール(POM)や、ポリブチレンテレフタレート(PBT)によってそれぞれ形成されることが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-13733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のようにメインレバーとダンパレバーとは互いに摺動することから、これらを互いに同一の部材で形成している場合、両者の間で生じる摩擦力が大きくなってしまう。その結果、メインレバーとダンパレバーの摺動部で損耗や劣化が早期に進んでしまう可能性がある。その結果、車両用空調装置の耐久性が限定的となってしまう。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、低廉かつ耐久性の高い車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る車両空調装置は、車両に取り付けられる車両用空調装置であって、空気を冷却するエバポレータと、空気を加熱するヒータコアと、前記エバポレータ及び前記ヒータコアを収容し、該エバポレータから供給される空気と該ヒータコアから供給される空気とを混合するエアミックス空間を画成するとともに、該エアミックス空間で混合された空気を流通させる複数の流路が形成されたユニットケースと、前記複数の流路の開閉状態を切り換える複数のダンパと、前記複数のダンパをそれぞれ前記ユニットケースに対して回動可能に支持するとともに、該ダンパの回動軸と平行に延びるピンを有する複数のダンパレバーと、前記ピンがはめ込まれる案内溝が形成され、軸線回りに回動することで前記ピンを案内して前記ダンパレバーを回動させるメインレバーと、を備え、前記メインレバーは、前記案内溝が形成されているメインレバー本体と、前記軸線位置に設けられ、前記メインレバー本体を前記ユニットケースに対して前記軸線回りに回動可能に支持するとともに、該ユニットケースに対して脱落不能に係合する爪部が設けられた軸部と、を有し、前記軸部は、前記メインレバー本体よりも高い靭性を有するとともに、前記ユニットケースとは異なる材料で形成されており、前記ダンパレバーは、前記軸部と同一の材料によって形成されている。
【0009】
上記構成によれば、メインレバーは、メインレバー本体と、軸部と、を有している。このうち、軸部は、メインレバー本体よりも高い靭性を有するとともに、ユニットケースとは異なる材料で形成されている。したがって、軸部とユニットケースとを互いに同一の材料で形成した構成に比べて、両者の間で生じる摩擦力を低減することができる。さらに、メインレバー本体と、軸部とが互いに異なる材料で形成されていることから、メインレバー本体と摺動するダンパレバーを軸部と同一の材料で形成することができる。この場合にも、ダンパレバーとメインレバー本体との間で生じる摩擦力を低減することができる。さらに、安価な材料を選択しやすくするため、コスト削減を実現することもできる。
【0010】
上記車両用空調装置では、前記軸部、及び前記ダンパレバーは、ポリアセタール、及びポリブチレンテレフタレートを含む群から選択された一の材料によって形成され、前記メインレバー本体は、ポリプロピレンによって形成されていてもよい。
【0011】
上記構成によれば、軸部、及びダンパレバーの靭性を、メインレバー本体の靭性よりも高くすることができる。
【0012】
上記車両用空調装置では、前記軸部における前記爪部とは反対側の端部には、前記軸線に対する径方向に張り出す張出部が形成されていてもよい。
【0013】
上記構成によれば、軸部は、爪部を介して一方側からユニットケースに係合し、当該爪部とは反対側の端部に設けられた張出部によって他方側からユニットケースに固定される。つまり、張出部が設けられていることによって、軸部が一方側から他方側に脱落してしまう可能性を排除することができる。
【0014】
上記車両空調装置では、前記複数のダンパのうち少なくとも1つの前記ダンパは、前記エアミックス空間に設けられ、前記エバポレータから供給される空気と前記ヒータコアから供給される空気との混合状態を調節するエアミックスダンパであってもよい。
【0015】
ここで、エアミックスダンパは、送風の温度調節に際して、他のダンパよりも頻繁に回動することが一般的である。つまり、エアミックスダンパとユニットケースとの間では摺動による摩擦力の低減が特に肝要となる。上記構成によれば、このエアミックスダンパとユニットケースとの間で生じる摩擦力を低減し、車両用空調装置をより安定的に運転することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、低廉かつ耐久性の高い車両用空調装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る車両用空調装置の構成を示す断面図である。
図2図1のII-II線における矢視断面図である。
図3図2の要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。図1に示すように、本実施形態に係る車両用空調装置100は、エバポレータ1及びヒータコア2と、これらを収容するユニットケース3と、ユニットケース3内部の空気の流れを調整する複数のダンパD(エアミックスダンパ4、フット切換ダンパ5、デフ切換ダンパ6、及びフェイスダンパ9)と、ダンパDをユニットケース3に対して支持するメインレバー20、及びダンパレバー24と、を備えている。なお、図1は、車両用空調装置100が搭載される車両の走行方向に交差する方向である幅方向から当該車両用空調装置100を見た断面図である。
【0019】
エバポレータ1としては、一例として、蒸気圧縮式冷凍サイクルを採用した冷却用熱交換器が用いられる。エバポレータ1内を流れる低圧の冷媒が、当該エバポレータ1の周囲を流れる空気からの吸熱によって蒸発することで、この空気を冷却する。本実施形態では、エバポレータ1は厚肉板状に形成されている。
【0020】
ヒータコア2としては、不図示の車両用のエンジン等からの温水(すなわち、エンジン冷却水)により空気を加熱する温水式の加熱用熱交換器が用いられる。ヒータコア2の周囲を流れる空気に対して、ヒータコア2内を流れる温水からの熱量が与えられることで、この空気を加熱する。本実施形態では、ヒータコア2も、エバポレータ1と同様に、厚肉板状に形成されている。
【0021】
ユニットケース3は、これらエバポレータ1とヒータコア2とを収容するとともに、内部に空気流路を画成する。より具体的には、このユニットケース3の内側には、冷房空間7と、暖房空間8と、フット吹出流路92と、エアミックス空間91と、中継空間93と、センター吹出流路94Aと、サイド吹出流路94Bと、デフ吹出流路95(デフロスター吹出流路)と、が形成されている。
【0022】
冷房空間7には、エバポレータ1が収容されている。エバポレータ1は、冷房空間7内を2つの空間に区画している。より具体的には、冷房空間7は、導入空間71と、冷風供給空間72と、を有している。車両の走行方向においてエバポレータ1の一方側に形成される空間は、不図示のファン等によって導入された空気が流通する導入空間71とされている。エバポレータ1の他方側の空間(すなわち、エバポレータ1を挟んで導入空間71とは反対側に形成される空間)は、エバポレータ1によって冷却された空気が流通する冷風供給空間72とされている。すなわち、導入空間71内の空気は、ファンからの送風によってエバポレータ1に接触することで冷却されて、冷風供給空間72内に流入する。
【0023】
暖房空間8には、ヒータコア2が収容される。暖房空間8は、後述するエアミックス空間91の一部を介して冷房空間7と互いに連通されている。より具体的には、暖房空間8は上記の冷房空間7に冷風供給空間72側から対向する位置に設けられている。ヒータコア2は、暖房空間8内を3つの空間に区画している。暖房空間8は、第二導入空間81と、温風供給空間82と、リターン空間83と、を有している。車両の走行方向においてヒータコア2を挟んで一方側(すなわち、ヒータコア2から冷房空間7を向く側)の空間は、上記の冷風供給空間72から供給された空気が導かれる第二導入空間81とされている。ヒータコア2の他方側の空間(ヒータコア2を挟んで第二導入空間81とは反対側に形成される空間)は、ヒータコア2によって加熱された空気が流通する温風供給空間82とされている。すなわち、第二導入空間81内の空気は、ヒータコア2に接触することで加熱されて、温風供給空間82内に流入する。
【0024】
さらに、暖房空間8内において、ヒータコア2の上側端部と、ユニットケース3の内壁との間には空間が形成されている。この空間は、上記の第二導入空間81、及び温風供給空間82を順次通過した空気を、後述のエアミックス空間91に戻すためのリターン空間83とされている。
【0025】
以上のように構成された冷房空間7と暖房空間8とは、エアミックス空間91に介して互いに連通されている。エアミックス空間91内では、冷房空間7で冷却された空気(冷風)と、暖房空間8で加熱された空気(温風)とが混合される。より具体的には、エアミックス空間91は、冷房空間7の冷風供給空間72と、暖房空間8の温風供給空間82とに連通するとともに、上方に向かって延びる流路である。エアミックス空間91における冷房空間7側には、当該エアミックス空間91内を流通する空気を上方に向かって案内する案内隔壁部10が設けられている。
【0026】
エアミックス空間91には、上記の冷房空間7、及び暖房空間8から導入される空気の混合の割合(混合状態)を調整するエアミックスダンパ4が設けられている。エアミックスダンパ4は、エアミックス空間91と暖房空間8との境界上でユニットケース3によって回転可能に支持されている板状の部材である。より具体的には、このエアミックスダンパ4は、車両の幅方向に延びる中心軸A1回りに回転する回転軸41と、この回転軸41を挟んで、それぞれ幅方向と交差する平面上に延びるエアミックスダンパ本体42と、再熱防止ダンパ43と、を有している。
【0027】
本実施形態では、回転軸41は、エアミックス空間91と暖房空間8の境界上における上側の端部(第一端部t1)と下側の端部(第二端部t2)とを結ぶ直線上に設けられている。さらに、回転軸41は、断面視でヒータコア2の上側端部と上下方向において一致する位置に設けられている。加えて、回転軸41から上記の案内隔壁部10の下側端部(第三端部t3)までの寸法は、回転軸41から第二端部t2までの寸法と略同一である。
【0028】
エアミックスダンパ本体42は、断面視で回転軸41から上記の第二端部t2までの寸法(同様に、回転軸41から案内隔壁部10の第三端部t3までの寸法)の分だけ延びている。一方で、再熱防止ダンパ43は、回転軸41を挟んでこのエアミックスダンパ本体42とは反対の方向に延びている。より詳細には、再熱防止ダンパ43は、エアミックスダンパ本体42の延びる平面を基準として、エアミックス空間91側に向かって傾斜して延びている。
【0029】
以上のように構成されたエアミックスダンパ4は、図1に示す最大冷房位置と、最大暖房位置(不図示)との間で回動可能とされている。最大冷房位置では、エアミックスダンパ本体42の先端部(回転軸41とは反対側の端部)は、第二端部t2に対してエアミックス空間91側から当接する。同時に、再熱防止ダンパ43は、回転軸41から第一端部t1に対して上下方向から対向する位置で保持される。これにより、最大冷房位置では、エアミックスダンパ本体42によって冷房空間7と暖房空間8とが区画されるとともに、冷房空間7とエアミックス空間91とが連通される。
【0030】
一方で、詳しくは図示を省略するが、最大暖房位置では、エアミックスダンパ本体42の先端部は、案内隔壁部10の第三端部t3に対してエアミックス空間91側から当接する。同時に、再熱防止ダンパ43は、ヒータコア2の上端にリターン空間83側から当接する。これにより、冷房空間7と暖房空間8とが連通されるとともに、暖房空間8とエアミックス空間91とがリターン空間83を介して連通される。
【0031】
エアミックス空間91内において、上記の案内隔壁部10に対して走行方向から対向する領域(すなわち、暖房空間8の上方)には、ユニットケース3の内壁によってフット吹出流路92が形成されている。このフット吹出流路92は、車両の内部で乗員の足元に空気を送るためのフット吹出口(不図示)と連通されている。
【0032】
フット吹出流路92の端部(エアミックス空間91側の端部)は、エアミックス空間91からの空気を導入するためのフット導入口E1とされている。フット導入口E1は断面視で上下方向に広がる開口である。フット導入口E1の上側の端部は第五端部t5とされ、下側の端部は第六端部t6とされている。
【0033】
フット吹出流路92内には、フット切換ダンパ5が設けられている。フット切換ダンパ5は、フット吹出流路92内で回転可能に支持されている板状の部材である。より具体的には、フット切換ダンパ5は、車両の幅方向に延びる中心軸A2(第二中心軸)回りに回転する回転軸51(第二回転軸)と、この回転軸51を挟んで幅方向と交差する平面上に延びるフット切換ダンパ本体52(フットダンパ本体)と、を有している。フット切換ダンパ本体52は、フット吹出流路92の断面積と同等の面積を有している。
【0034】
フット吹出流路92の内面には、上方に向かって凹むフット切換ダンパ5を収容する収容空間5Vが形成されている。即ち、フット切換ダンパ5が開放位置にある時、当該フット切換ダンパ5は、収容空間5V内に収容される。フット吹出流路92の延びる方向から見て、収容空間5Vに収容されたフット切換ダンパ5は、フット吹出流路92中に突出していない。言い換えると、この状態において、フット切換ダンパ5の表面は、フット吹出流路92の他の内面と面一をなしている。
【0035】
エアミックス空間91の上側には、さらに他の空間が形成されている。この空間は、中継空間93とされている。中継空間93は、エアミックス空間91から供給された空気を、後述するデフ吹出流路95と、センター吹出流路94Aと、サイド吹出流路94Bと、に向けて分配するための空間である。
【0036】
フット導入口E1に対して走行方向から対向する領域には、ユニットケース3の内壁によってデフ吹出流路95が形成されている。このデフ吹出流路95は、上下方向に延びており、車両の内側からウインドシールド(フロントウインドウ)に向けてデフロスト(除霜)用の空気を送るためのデフロスター吹出口(不図示)と連通されている。
【0037】
デフ吹出流路95の端部(中継空間93側の端部)は、中継空間93からの空気を導入するためのデフ導入口E2とされている。デフ導入口E2は断面視で上下方向に広がる開口である。デフ導入口E2の上側の端部は第七端部t7とされ、下側の端部は第八端部t8とされている。
【0038】
このデフ吹出流路95には、デフ切換ダンパ6が設けられている。デフ切換ダンパ6は、デフ導入口E2上で回転可能に支持されている板状の部材である。より具体的には、デフ切換ダンパ6は、車両の幅方向に延びる中心軸A3回りに回転する回転軸61と、この回転軸61から幅方向と交差する平面上に延びるデフ切換ダンパ本体62と、を有している。
【0039】
中継空間93の上側には、さらに他の空間が形成されている。この空間は、センター吹出流路94A、サイド吹出流路94Bとされている。センター吹出流路94Aは、中継空間93から供給された空気を取り込んで、車両のインスツルメントパネル中央部に設けられたセンター吹出口(不図示)に送るための流路である。サイド吹出流路94Bは、車両のインスツルメントパネル両端部に設けられたサイド吹出口(不図示)に空気を送るための流路である。センター吹出口、及びサイド吹出口は、主に乗員の上半身に向けて冷風又は温風を送るために設けられる。
【0040】
センター吹出流路94Aとサイド吹出流路94Bとは、車両の走行方向に隣接して配列されている。センター吹出流路94Aとサイド吹出流路94Bとは、互いに異なる方向に延びている。具体的には、センター吹出流路94Aは、車両の走行方向前方側から後方側に向かうに従って、上下方向における下側から上側に向かうにように延びている。サイド吹出流路94Bは、上下方向に延びている。センター吹出流路94Aは、サイド吹出流路94Bに対して、車両の走行方向後方側に設けられている。
【0041】
センター吹出流路94Aは、ユニットケース3の一部である筒状のセンター吹出流路形成部3Aによって形成されている。センター吹出流路形成部3Aの中継空間93側の端部は、中継空間93に向かって開口するセンター側開口部E3とされている。サイド吹出流路94Bは、ユニットケース3の一部である筒状のサイド吹出流路形成部3Bによって形成されている。サイド吹出流路形成部3Bの中継空間93側の端部は、中継空間93に向かって開口するサイド側開口部E4とされている。
【0042】
センター吹出流路94Aとサイド吹出流路94Bとの間には、フェイスダンパ9が取り付けられている。より詳細には、フェイスダンパ9は、センター吹出流路94Aの内面とサイド吹出流路94Bの内面とが交差する第九端部t9に設けられている。フェイスダンパ9は、センター吹出流路94A、及びサイド吹出流路94Bの開閉状態を切り換える。
【0043】
フェイスダンパ9は、車両の幅方向に延びる中心軸A4回りに回転可能な回転軸31と、回転軸31に設けられ、中心軸A4に対する径方向外側に向かって互いに異なる方向に延びる第一ダンパ本体32、及び第二ダンパ本体33と、を有している。回転軸31は、上記の第九端部t9で回転可能に支持されている。第一ダンパ本体32は、回転軸31からセンター吹出流路94A側に向かって延びる板状をなしている。第二ダンパ本体33は、回転軸31からサイド吹出流路94B側に向かって延びる板状をなしている。
【0044】
回転軸31から第一ダンパ本体32の先端部までの寸法は、第九端部t9から第五端部t5までの寸法に等しい。回転軸31から第二ダンパ本体33の先端部までの寸法は、第九端部t9から第七端部t7までの寸法に等しい。さらに、フェイスダンパ9が閉塞位置P2にあるとき、第一ダンパ本体32は、センター吹出流路94Aの延びる方向に直交する平面上に広がっている。また、フェイスダンパ9が閉塞位置P2にあるとき、第二ダンパ本体33は、サイド吹出流路94Bの延びる方向に直交する、第一ダンパ本体32とは異なる他の平面上に広がっている。つまり、フェイスダンパ9が閉塞位置P2にあるとき、センター吹出流路94Aのセンター側開口部E3及びサイド吹出流路94Bのサイド側開口部E4は、フェイスダンパ9の第一ダンパ本体32と第二ダンパ本体33とによって閉塞するように設けられている。なお、ここで言う「流路の延びる方向」とは、各流路の開口面に対する法線方向を指している。さらに、「直交」とは、必ずしも厳密な直交状態を指すものではなく、直交状態を志向して構成されていれば、わずかな製造誤差や公差等は許容される。
【0045】
以上のような構成のもとで、エアミックスダンパ4、フット切換ダンパ5、デフ切換ダンパ6、及びフェイスダンパ9をそれぞれ回動させることにより、冷房空間7からの冷風と暖房空間8からの温風との混合の割合が調整されるとともに、各流路(フット吹出流路92、デフ吹出流路95、センター吹出流路94A、及びサイド吹出流路94B)への空気の分配状態が切り替えられる。
【0046】
ここで、上述のエアミックスダンパ4、フット切換ダンパ5、デフ切換ダンパ6、及びフェイスダンパ9は、図2に示す構成によって、ユニットケース3に支持されている。なお、図2の例では、エアミックスダンパ4、フット切換ダンパ5、デフ切換ダンパ6、及びフェイスダンパ9を総称してダンパDとして図示している。言い換えると、以下で説明する構成は、エアミックスダンパ4、フット切換ダンパ5、デフ切換ダンパ6、及びフェイスダンパ9のいずれか2つ以上を含むいかなる組み合わせに対しても適用することが可能である。また、図2では、2つのダンパDのみを図示しているが、3つ以上のダンパDに、以下で説明する構成を適用することも可能である。
【0047】
図2に示すように、各ダンパDは、ユニットケース3に対して、ダンパレバー24によって回動可能に支持されている。より具体的には、ダンパレバー24は、ダンパレバー本体24Aと、ピン24Bと、ダンパ支持部24Cと、板状部24Dと、を有している。ダンパレバー本体24Aは、ユニットケース3の壁面(ユニットケース内面3S、又はユニットケース外面3T)に直交する方向に延びるダンパ軸線Ad回りに回動可能とされている。
【0048】
ダンパレバー本体24Aにおけるユニットケース内面3S側の端部には、ダンパDを支持固定するためのダンパ支持部24Cが一体に設けられている。ダンパレバー本体24Aにおけるユニットケース外面3T側の端部には、ダンパ軸線Adに直交する面内に広がる板状部24Dが一体に設けられている。この板状部24Dにおけるダンパ軸線Adから偏心した位置には、ピン24Bが設けられている。ピン24Bは、板状部24DからダンパDの回動軸(ダンパ軸線Ad)と平行な方向に突出する棒状をなしている。つまり、このピン24Bに対して力を加えることで、ダンパレバー24、及びダンパDはダンパ軸線Ad回りに回動することが可能である。なお、ここで言う「平行」とは、実質的な平行を指すものであって、製造上の公差や誤差は許容される。
【0049】
各ダンパレバー24は、これらのピン24Bを介してメインレバー20によって回動させられる。メインレバー20は、ユニットケース3に形成された貫通孔(支持孔H1)によって当該ユニットケース3に支持されている。具体的には、メインレバー20は、ユニットケース外面3T側から上記のダンパレバー24をそれぞれ覆う板状のメインレバー本体21と、このメインレバー本体21を軸線Ax回りに回動可能に支持する軸部22と、を有している。
【0050】
メインレバー本体21におけるユニットケース外面3T側を向く面上であって、外周側の端縁には、上述したダンパレバー24のピン24Bがはめ込まれる案内溝Rが形成されている。詳しくは図示しないが、この案内溝Rは、ピン24Bのダンパ軸線Ad回りの回転軌跡に沿って延びている。即ち、メインレバー20を軸線Ax回りに回動させることによって、案内溝Rに沿ってにピン24Bが案内され、ダンパDの姿勢(回動角度)が変化する。
【0051】
メインレバー本体21の中央部には、当該メインレバー本体21を軸線Ax方向に貫通する貫通孔H2(図3参照)が形成されている。この貫通孔H2には、軸部22が固定されている。軸部22は、軸線Axを中心とする円柱状の軸部本体22Aと、軸部本体22Aの外周側に設けられた複数の爪部22Bと、軸部本体22Aにおける爪部22Bとは反対側に設けられた張出部22Pと、を有している。複数の爪部22Bは、ユニットケース3に形成された支持孔H1よりもわずかに大きな外径寸法を有している。支持孔H1に対して爪部22Bを弾性変形を伴って圧入した後、これら爪部22Bをユニットケース内面3S側に露出させることで、軸部22が支持孔H1に脱落不能に係合した状態となる。
【0052】
さらに、軸部22における爪部22Bとは反対側の端部には、軸線Axに対する径方向に張り出す張出部22Pが一体に形成されている。この張出部22Pは、メインレバー本体21の貫通孔H2と同軸に形成された収容凹部Rsに収容されている。さらに、軸部22における爪部22Bとは反対側の端部には、軸線Axを中心とする筒状の接続部Cが一体に設けられている。この接続部Cには、不図示の駆動源(アクチュエータ)が接続されている。つまり、当該駆動源から付加された回転力によって、メインレバー20が軸線Ax回りに回動する。
【0053】
上記の構成では、メインレバー20は、ユニットケース3に形成された支持孔H1に挿入された状態で回動する。また、メインレバー20に形成された案内溝Rは、ダンパレバー24のピン24Bに摺接した状態となっている。したがって、メインレバー20、ダンパレバー24、及びユニットケース3の間で生じる摩擦を低減する必要がある。ここで、従来、メインレバー20、及びダンパレバー24は、ポリアセタール(POM)や、ポリブチレンテレフタレート(PBT)によってそれぞれ一体に形成されることが一般的である。
【0054】
しかしながら、上述のようにメインレバー20とダンパレバー24とは互いに摺動することから、これらを互いに同一の部材で形成している場合、両者の間で生じる摩擦力が大きくなってしまう。その結果、メインレバー20とダンパレバー24の摺動部で損耗や劣化が早期に進んでしまう可能性がある。その結果、車両用空調装置の耐久性が限定的となってしまう。
【0055】
そこで、本実施形態では、メインレバー20を2つの部材(即ち、メインレバー本体21、及び軸部22)に分けるとともに、これら部材を互いに異なる材料によって形成している。より具体的には、軸部22はメインレバー本体21よりも高い靭性を有し、かつユニットケース3とは異なる材料によって形成されている。このような材料の具体例として、軸部22、及びダンパレバー24は、ポリアセタール(POM)、及びポリブチレンテレフタレート(PBT)を含む群から選択された一の材料によって形成され、メインレバー本体21、及びユニットケース3は、ポリプロピレン(PP)によって形成されている。したがって、軸部22とユニットケース3との間、ダンパレバー24とユニットケース3との間、及びダンパレバー24とメインレバー20との間で生じる摺接部分を、互いに異なる材料によって形成することができる。その結果、例えばこれら摺接部分が互いに同一の材料で形成されている場合に比べて、両者の磨耗や劣化を低減することができる。
【0056】
以上、説明したように、上記構成によれば、メインレバー20は、メインレバー本体21と、軸部22と、を有している。このうち、軸部22は、メインレバー本体21よりも高い靭性を有するとともに、ユニットケース3とは異なる材料で形成されている。したがって、軸部22とユニットケース3とを互いに同一の材料で形成した構成に比べて、両者の間で生じる摩擦力を低減することができる。さらに、メインレバー本体21と軸部22とが互いに異なる材料で形成されていることから、メインレバー本体21と摺動するダンパレバー24を軸部22と同一の材料(一例としてPOM)で形成することができる。この場合にも、ダンパレバー24とメインレバー本体21との間で生じる摩擦力を低減することができる。さらに、必要となる材料の種類を削減することができるため、コスト削減を実現することもできる。
【0057】
さらに、上記構成によれば、軸部22は、爪部22Bを介して軸線Ax方向の一方側からユニットケース3に係合し、当該爪部22Bとは反対側の端部に設けられた張出部22Pによって他方側からユニットケース3に固定される。つまり、張出部22Pが設けられていることによって、軸部22が一方側から他方側に脱落してしまう可能性を排除することができる。
【0058】
また、本実施形態では、ダンパDとしてエアミックスダンパ4に上記の構成を適用することが可能である。ここで、エアミックスダンパ4は、送風の温度調節に際して、他のダンパよりも頻繁に回動することが一般的である。つまり、エアミックスダンパ4とユニットケース3との間では摺動による摩擦力の低減が特に肝要となる。上記構成によれば、このエアミックスダンパ4とユニットケース3との間で生じる摩擦力を低減し、車両用空調装置100をより安定的に運転することが可能となる。
【0059】
以上、本発明の実施形態について説明した。なお、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 エバポレータ
2 ヒータコア
3 ユニットケース
3A センター吹出流路形成部
3B サイド吹出流路形成部
3S ユニットケース内面
3T ユニットケース外面
4 エアミックスダンパ
5 フット切換ダンパ
6 デフ切換ダンパ
7 冷房空間
8 暖房空間
9 フェイスダンパ
10 案内隔壁部
20 メインレバー
21 メインレバー本体
22 軸部
22A 軸部本体
22B 爪部
22P 張出部
24 ダンパレバー
24A ダンパレバー本体
24B ピン
24C ダンパ支持部
24D 板状部
31 回転軸
32 第一ダンパ本体
33 第二ダンパ本体
41 回転軸
42 エアミックスダンパ本体
43 再熱防止ダンパ
51 回転軸
52 フット切換ダンパ本体
61 回転軸
62 デフ切換ダンパ本体
71 導入空間
72 冷風供給空間
81 第二導入空間
82 温風供給空間
83 リターン空間
91 エアミックス空間
92 フット吹出流路
93 中継空間
94A センター吹出流路
94B サイド吹出流路
95 デフ吹出流路
100 車両用空調装置
Ad ダンパ軸線
Ax 軸線
C 接続部
D ダンパ
H1 支持孔
H2 貫通孔
R 案内溝
Rs 収容凹部
t1 第一端部
t2 第二端部
t3 第三端部
t5 第五端部
t6 第六端部
t7 第七端部
t8 第八端部
t9 第九端部
図1
図2
図3