(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-20
(45)【発行日】2023-09-28
(54)【発明の名称】シールド用セグメントシステム
(51)【国際特許分類】
E21D 11/04 20060101AFI20230921BHJP
【FI】
E21D11/04 Z
(21)【出願番号】P 2019134079
(22)【出願日】2019-07-19
【審査請求日】2022-04-11
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000148346
【氏名又は名称】株式会社錢高組
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼見 昂亮
(72)【発明者】
【氏名】坂本 博明
(72)【発明者】
【氏名】竹中 計行
(72)【発明者】
【氏名】西田 与志雄
(72)【発明者】
【氏名】尾関 孝人
(72)【発明者】
【氏名】原田 尚幸
(72)【発明者】
【氏名】八重島 吉典
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-100066(JP,A)
【文献】特開2008-057148(JP,A)
【文献】特開2004-084375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールドトンネルの円筒壁に用いられシールドマシンにより切削されるシールド用セグメントシステムであって、
前記シールドトンネルの周方向に互いに突き合わせて配置された第1セグメント及び第2セグメントを備え、
前記第1セグメント及び前記第2セグメントは、
プラスチック発泡体を無機繊維で補強した板状の複数の複合材が、前記複数の複合材の厚さ方向が前記シールドトンネルの径方向に沿って配置され、前記円筒壁の一部を形成するように前記径方向に重ねて配置され、前記径方向において互いに隣り合う前記複合材同士が互いに接合されてなる接合体と、
前記接合体の前記周方向の端面を覆い、前記複数の複合材を互いに固定する樹脂層と、をそれぞれ備え、
前記第1セグメントが備える前記接合体における前記第2セグメントに対向する前記端面には、前記端面から凹んだ凹部が形成され、
前記第2セグメントが備える前記接合体における前記第1セグメントに対向する前記端面には、前記端面から突出し、前記凹部に対して前記径方向の両側にそれぞれ係合する凸部が形成され、
前記凹部は、前記第1セグメントが備える前記複数の複合材に跨って形成され、
前記第1セグメントは、前記複数の複合材それぞれ
の全てに
わたって形成された
複数の貫通孔
全て内に配置され、前記複数の複合材を互いに固定する軸部材を備え、
前記凹部の前記径方向の長さに対する、前記第1セグメントが備える前記複数の複合材における前記第2セグメントに対向する前記端面と前記
複数の貫通孔の軸線との距離の比は、0.5以上3以下であるシールド用セグメントシステム。
【請求項2】
前記凸部の前記径方向の長さに対する、前記第2セグメントの端面と前記軸線との距離の比は、0.5以上3以下である請求項1に記載のシールド用セグメントシステム。
【請求項3】
前記第2セグメントが備える前記複数の複合材における、前記凸部に対して前記径方向に隣り合う凸部隣接部は、前記第2セグメントが備える前記複数の複合材に跨ってそれぞれ形成されている請求項1に記載のシールド用セグメントシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド用セグメントシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シールドマシンを用いてシールドトンネルを構築するシールド工法において、シールドトンネルの円筒壁にシールド用セグメント(セグメント)が用いられている(例えば、特許文献1参照)。シールド用セグメントには、シールドマシンにより切削されるものがある。一対のシールド用セグメントが接続されて構成されるシールド用セグメントシステムは、第1セグメントと、第2セグメントと、を備えている。
【0003】
第1セグメント及び第2セグメントは、複数の複合材と、複数の複合材を互いに固定する連結ボルト(軸部材)と、をそれぞれ備えている。各複合材は、プラスチック発泡体を無機繊維で補強してなる板状に形成され、複合材の厚さ方向がシールドトンネルの軸方向に沿うように配置されて、この軸方向に積層されている。
第1セグメントが備える複数の複合材における第2セグメントに対向する(周方向の)端面には、端面から凹んだ凹部が形成されている。第2セグメントが備える複数の複合材における第1セグメントに対向する端面には、端面から突出し、凹部に対してシールドトンネルの径方向の両側にそれぞれ係合する凸部が形成されている。凹部と凸部とが係合することで、第1セグメントと第2セグメントとが接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、各セグメントにおいて、複数の複合材が、各複合材の厚さ方向がシールドトンネルの径方向に沿うように配置されて積層されている場合には、各セグメント間の接続を凹部と凸部との係合により行うと、以下のような問題がある。すなわち、シールド用セグメントシステムに径方向のせん断力が作用した場合に、各セグメントの複数の複合材が径方向に剥がれ易くなる。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、各セグメントの複数の複合材を径方向に剥がれ難くしたシールド用セグメントシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明のシールド用セグメントシステムは、シールドトンネルの円筒壁に用いられシールドマシンにより切削されるシールド用セグメントシステムであって、前記シールドトンネルの周方向に互いに突き合わせて配置された第1セグメント及び第2セグメントを備え、前記第1セグメント及び前記第2セグメントは、プラスチック発泡体を無機繊維で補強した板状の複数の複合材が、前記複数の複合材の厚さ方向が前記シールドトンネルの径方向に沿って配置され、前記円筒壁の一部を形成するように前記径方向に重ねて配置され、前記径方向において互いに隣り合う前記複合材同士が互いに接合されてなる接合体と、前記接合体の前記周方向の端面を覆い、前記複数の複合材を互いに固定する樹脂層と、をそれぞれ備え、前記第1セグメントが備える前記接合体における前記第2セグメントに対向する前記端面には、前記端面から凹んだ凹部が形成され、前記第2セグメントが備える前記接合体における前記第1セグメントに対向する前記端面には、前記端面から突出し、前記凹部に対して前記径方向の両側にそれぞれ係合する凸部が形成され、前記凹部は、前記第1セグメントが備える前記複数の複合材に跨って形成され、前記第1セグメントは、前記複数の複合材それぞれの全てにわたって形成された複数の貫通孔全て内に配置され、前記複数の複合材を互いに固定する軸部材を備え、前記凹部の前記径方向の長さに対する、前記第1セグメントが備える前記複数の複合材における前記第2セグメントに対向する前記端面と前記複数の貫通孔の軸線との距離の比は、0.5以上3以下であることを特徴としている。
【0008】
この発明によれば、凹部は第1セグメントが備える複数の複合材に跨って形成されているために、凹部の径方向の長さを調節できて凹部の径方向の強度が高くなる。また、第1セグメントを構成する複数の複合材の端面が樹脂層により覆われることで、複数の複合材が互いに固定されている。このように構成することで、径方向に作用するせん断力が集中しやすい凹部周辺の強度を高め、さらに互いに接合されている複数の複合材を樹脂層により固定して一体化し、第1セグメントの複数の複合材を径方向に剥がれ難くすることができる。
一方で、凸部が形成された第2セグメントについても、樹脂層により複数の複合材を互いに固定して一体化することで、第2セグメントの複数の複合材を径方向に剥がれ難くすることができる。
このように、各セグメントの複数の複合材が径方向に積層されている場合に、各セグメントの複数の複合材を径方向に剥がれ難くすることができる。
また、比を0.5以上にすることで、貫通孔により複数の複合材の周方向の端面の強度が低下するのを抑制することができる。そして、比を3以下にすることで、貫通孔内に配置される軸部材により複数の複合材の周方向の端面を径方向により剥がれ難くすることができる。
【0009】
また、上記のシールド用セグメントシステムにおいて、前記凸部の前記径方向の長さに対する、前記第2セグメントの端面と前記軸線との距離の比は、0.5以上3以下であってもよい。
【0010】
また、上記のシールド用セグメントシステムにおいて、前記第2セグメントが備える前記複数の複合材における、前記凸部に対して前記径方向に隣り合う凸部隣接部は、前記第2セグメントが備える前記複数の複合材に跨ってそれぞれ形成されていてもよい。
この発明によれば、凸部隣接部は複数の複合材に跨って形成されているために、凸部隣接部の径方向の長さを調節できて凸部隣接部の径方向の強度が高くなる。また、第2セグメントの複数の複合材の端面が樹脂層により覆われることで、複数の複合材が互いに固定されている。このように構成することで、径方向のせん断力が集中しやすい凸部隣接部周辺の強度を高めて樹脂層により複数の複合材を互いに固定して一体化し、第2セグメントの複数の複合材を径方向に剥がれ難くすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のシールド用セグメントシステムによれば、各セグメントの複数の複合材を径方向に剥がれ難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態のシールド用セグメントシステムが含まれるトンネルの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るシールド用セグメントシステムの一実施形態を、
図1から
図5を参照しながら説明する。
図1及び
図2に示すように、本実施形態のシールド用セグメントシステム(以下、単にセグメントシステムと言う)1は、シールドマシン110を用いてシールドトンネル100を構築するシールド工法において、シールドトンネル100の円筒壁に用いられるセグメント環状体101,101Aに含まれる構造である。例えば、シールドトンネル100では、セグメント環状体101と、セグメント環状体101とは構成が異なるセグメント環状体101Aと、がシールドトンネル100の長手方向に交互に並べて配置されている。
以下ではまず、セグメント環状体101の構成について説明する。
【0014】
以下では、シールドトンネル100の軸線に直交するシールドトンネル100の径方向を単に径方向と言い、この軸線回りに周回するシールドトンネル100の周方向を単に周方向と言う。この軸線に沿うシールドトンネル100の軸方向を、単に軸方向と言う。
セグメント環状体101は、円筒状に形成されている。例えば、セグメント環状体101の外径は3m~20mである。セグメント環状体101の厚さ(径方向の長さ)は、100mm~600mmである。セグメント環状体101の軸方向の長さは、500mm~1500mmである。
【0015】
例えば、セグメント環状体101は、切削不能構造102と、セグメントシステム1と、を備えている。
切削不能構造102は、鉄又は鉄筋コンクリート等で形成され、軸方向に見てC字状を呈している。切削不能構造102は、シールドマシン110により切削されない、もしくは切削が困難である。一方で、セグメントシステム1は、シールドマシン110により切削される。すなわち、セグメント環状体101は、周方向の一部がシールドマシン110により切削され、周方向の残部がシールドマシン110により切削されない。
なお、セグメント環状体101,101Aは、シールドトンネル100の長手方向の一部に用いられればよい。シールドトンネル100の長手方向の残部には、周方向のいずれの部分でもシールドマシン110により切削されないセグメント環状体が用いられる。
【0016】
セグメントシステム1は、周方向に互いに突き合わせて配置された第1セグメント10及び第2セグメント20を備えている。すなわち、セグメントシステム1は、2つのセグメント10,20を備えている。なお、セグメントシステムは、3つ以上のセグメントを備えていてもよい。
図3及び
図4に示すように、第1セグメント10は、板状に形成された複数の複合材11と、複数の複合材11を互いに固定するピン12及び樹脂層13と、を備えている。なお、
図3では第1セグメント10と第2セグメント20とを分解した状態を示している。第1セグメント10は、2以上の自然数であるN
1の複合材11を備えている。第1セグメント10は、6以上の複合材11を備えていることが好ましい。
【0017】
複合材11は、プラスチック発泡体を無機繊維で補強してなる。例えば、プラスチック発泡体は、硬質ウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂の発泡体である。無機繊維は、ガラス長繊維等である。複合材11は、エスロンネオランバーFFU(登録商標、積水化学工業株式会社製)で形成することが好ましい。複合材11は、複合材11の厚さ方向に見たときに矩形状を呈する板状に形成されている。複合材11には、複合材11の厚さ方向に貫通する貫通孔11aが形成されている。例えば、貫通孔11aの内径は24mmである。
複合材11は、複合材11の厚さ方向が径方向に沿って配置されている。複合材11は、切削不能構造102に沿って湾曲した形状に形成されている。
複数の複合材11は、円筒壁の一部を形成するように径方向に重ねて配置され(積層され)ている。複数の複合材11全体の厚さ(径方向の長さ)、及び切削不能構造102の厚さは、互いに同程度である。複数の複合材11のうち、最も径方向内側に配置された複合材11の径方向内側の表面の曲率半径、及び切削不能構造102の径方向内側の表面の曲率半径は、互いに同程度である。複数の複合材11のうち、最も径方向外側に配置された複合材11の径方向外側の表面の曲率半径、及び切削不能構造102の径方向外側の表面の曲率半径は、互いに同程度である。
【0018】
複数の複合材11に、さらにFRP板15が積層されていてもよい。複数の複合材11及びFRP板15で、接合体11Aが構成される。
この例では、複数の複合材11のさらに径方向内側、複数の複合材11のさらに径方向外側、複数の複合材11の間に適宜FRP板15が配置されている。例えば、FRP板15は、ガラス繊維及びエポキシ樹脂を用いて形成されている。FRP板15中のガラス繊維の含有量は、65~85質量%であることが好ましい。FRP板15は、シールドマシン110により切削される。
接合体11Aにおける第2セグメント20に対向する(周方向の)端面11Aaには、端面11Aaから複数の複合材11及の内側に向かって凹んだ第1凹部(凹部)11Abが形成されている。第1凹部11Abは、複数の複合材11及び複数のFRP板15の周方向の長さを調節することで形成されている。この例では、第1凹部11Abは、第1セグメント10の径方向の中間部に、径方向に隣り合う複数の複合材11に跨って(わたって)形成されている。より詳しくは、第1凹部11Abは、接合体11Aが備える複数の複合材11全体の一部であって、複数(2以上(N1-2)以下)の複合材11に跨って形成されている。第1凹部11Abは、2以上(N1-4)以下の複合材11に跨って形成されていることが好ましい。
【0019】
接合体11Aにおいて、第1凹部11Abに対して径方向に隣り合う部分には、凹部隣接部11Acがそれぞれ形成されている。この例では、各凹部隣接部11Acは、接合体11Aが備える複数の複合材11及び複数のFRP板15全体の一部である、複合材11複数及びFRP板15複数に跨ってそれぞれ形成されている。より詳しくは、凹部隣接部11Acは、接合体11Aが備える複数の複合材11全体の一部であって、複数(2以上((N1-2)/2)以下)の複合材11に跨って形成されている。
凹部隣接部11Acは、第1凹部11Abの底面よりも周方向に突出している。
【0020】
径方向に隣り合う複合材11同士、複合材11とFRP板15とは、エポキシ系等の接着剤(不図示)により互いに接合されている。この接着剤における主剤と硬化剤との配合比率は、質量比で1:1であることが好ましい。
【0021】
ピン12は、複数の複合材11の貫通孔11a内及び複数のFRP板15の貫通孔(符号省略)内にそれぞれ配置されている。ピン12は、FRP板15と同一の材料で形成されている。例えば、ピン12の外径は、(23.8±0.3)mmである。すなわち、ピン12の外径は23.5mm~24.1mmである。
ピン12は、複数の複合材11及びFRP板15を径方向に貫通している。
図4に示すように、ピン12は軸方向に互いに間隔を空けて複数(本実施形態では3つ)配置されている。ピン12の周囲に設けてピン12と複合材11及びFRP板15とを接合する接着剤には、前記複合材11同士等を接合する接着剤等が用いられる。
なお、第1セグメント10における軸方向の各端部には、リングピン16が配置されている。
【0022】
樹脂層13は、比較的強度が高く形成されている。例えば、樹脂層13は、ポリオール及びイソシアネートを含むウレタン樹脂に、水酸化アルミニウム粉末等のフィラーを加えた塗料を、端面11Aa及び第1凹部11Abを規定する複数の複合材11の表面(以下、第1凹部11Abの内面と言う)に塗布して形成されている。ポリオール、イソシアネート、フィラー配合比率は、質量比で1:0.3~0.7:1.5~2程度であることが好ましい。樹脂層13の厚さは、5mm以上であることが好ましい。
図3に示すように、樹脂層13は、端面11Aa及び第1凹部11Abの内面を覆っている。樹脂層13には、第1凹部11Abに対応して、第2凹部13aが形成されている。
第1セグメント10は、第1セグメント10の厚さ方向が径方向に沿うように配置されている。
【0023】
ここで、第1凹部11Abの周方向の長さをD1(mm)とし、第1凹部11Abの径方向の長さをH1(mm)とする。端面11Aaと、複合材11に形成された貫通孔11aの軸線との距離を、L1(mm)とする。ピン12は、複数の複合材11の貫通孔11a内及び複数のFRP板15の貫通孔(符号省略)内にそれぞれ配置されている。ピン12は、複合材11及び複数のFRP板15を互いに固定する。
このとき、長さH1は30mm以上250mm以下であることが好ましい。長さD1に対する長さH1の比(H1/D1)は、1以上3以下であることが好ましい。長さH1に対する距離L1の比(L1/H1)は、0.5以上3以下であることが好ましい。
【0024】
図3及び
図4に示すように、第2セグメント20は、第1セグメント10と同様に構成されている。第2セグメント20は、第1セグメント10の複合材11、ピン12、樹脂層13、FRP板15、リングピン16と同様に構成された複合材21、ピン22、樹脂層23、FRP板25、リングピン26をそれぞれ備えている。
第2セグメント20は、2以上の自然数であるN
2の複合材21を備えている。第2セグメント20は、6以上の複合材21を備えることが好ましい。複数の複合材21及びFRP板25で、接合体21Aが構成される。
樹脂層23、FRP板25の周方向の長さは、樹脂層13、FRP板15の周方向の長さよりもそれぞれ短い。すなわち、第2セグメント20の周方向の長さは第1セグメント10の周方向の長さよりも短い(
図1参照)。
接合体21Aにおける第1セグメント10に対向する(周方向の)端面21Aaには、端面21Aaから突出したほぞである第1凸部(凸部)21Abが形成されている。第1凸部21Abは、複数の複合材21及び複数のFRP板25の周方向の長さを調節することで形成されている。この例では、第1凸部21Abは、第2セグメント20の径方向の中間部に、複数の複合材21に跨って形成されている。より詳しくは、第1凸部21Abは、第2セグメント20が備える複数の複合材21全体の一部であって、複数(2以上(N
2-2)以下)の複合材21に跨って形成されている。
【0025】
接合体21Aにおいて、第1凸部21Abに対して径方向に隣り合う部分には、凸部隣接部21Acがそれぞれ形成されている。この例では、各凸部隣接部21Acは、接合体21Aが備える複数の複合材21及び複数のFRP板25全体の一部である、複合材11複数及びFRP板15複数に跨ってそれぞれ形成されている。より詳しくは、凸部隣接部21Acは、接合体21Aが備える複数の複合材21全体の一部であって、複数(2以上((N2-2)/2)以下)の複合材21に跨って形成されている。
ピン22は、複数の複合材21の貫通孔21a内及び複数のFRP板25の貫通孔(符号省略)内にそれぞれ配置されている。ピン22は、複数の複合材21及び複数のFRP板25を互いに固定している。
【0026】
ここで、第1凸部21Abの周方向の長さをD2(mm)とし、第1凸部21Abの径方向の長さをH2(mm)とする。端面21Aaと、複合材21に形成された貫通孔21aの軸線との距離を、L2(mm)とする。ピン22は、複数の複合材21の貫通孔21a内及び複数のFRP板25の貫通孔(符号省略)内にそれぞれ配置されている。ピン22は、複合材21及び複数のFRP板25を互いに固定する。
このとき、長さH2は30mm以上250mm以下であることが好ましい。長さD2に対する長さH2の比(H2/D2)は、1以上3以下であることが好ましい。長さH2に対する距離L2の比(L2/H2)は、0.5以上3以下であることが好ましい。
樹脂層23は、端面21Aa及び第1凸部21Abの表面に、前記塗料を塗布して形成されている。樹脂層23は、端面21Aa及び第1凸部21Abの表面を覆っている。樹脂層23には、第1凸部21Abに対応して、第2凸部23aが形成されている。
【0027】
図5に示すように、第2セグメント20の第2凸部23aは、第1セグメント10の第2凹部13a内に配置されている。第2凸部23aは、第2凹部13a(第2凹部13aを規定する樹脂層13の表面)に対して径方向の両側にそれぞれ係合する。すなわち、第1凸部21Abは、樹脂層13,23を介して第1凹部11Ab(第1凹部11Abの内面)に対して径方向の両側にそれぞれ係合する。第2凸部23aが第2凹部13aに係合することで、第1セグメント10と第2セグメント20とが接続されている。
【0028】
第1セグメント10における第2凹部13aとは周方向の反対側の端部は、切削不能構造102における周方向の第1端部に固定されている。第2セグメント20における第2凸部23aとは周方向の反対側の端部は、切削不能構造102における周方向の第1端部とは反対の第2端部に固定されている。
【0029】
次に、セグメント環状体101Aについて説明する。
図2に示すように、セグメント環状体101Aは円筒状に形成されている。セグメント環状体101Aは、セグメント環状体101と同様に、切削不能構造102及びセグメントシステム1を備えているが、切削不能構造102に対するセグメントシステム1の配置がセグメント環状体101とは異なる。
セグメント環状体101Aでは、切削不能構造102の第1端部には、第2セグメント20における第2凸部23aとは周方向の反対側の端部が固定されている。切削不能構造102の第2端部には、第1セグメント10における第2凹部13aとは周方向の反対側の端部が固定されている。セグメント環状体101とセグメント環状体101Aとでは、切削不能構造102の周方向の位置が変わらないように配置されている。第1セグメント10の周方向の長さと第2セグメント20の周方向の長さとは互いに異なるため、セグメント環状体101における第1セグメント10と第2セグメント20とが接続されている周方向の位置と、セグメント環状体101Aにおける第1セグメント10と第2セグメント20とが接続されている周方向の位置とがずれている。
これにより、セグメント環状体101,101Aにおける、他の部分よりも強度が低下すると考えられる第1セグメント10と第2セグメント20とが接続されている部分が、軸方向に連続しないように構成することができる。
【0030】
次に、以上のように構成されたセグメントシステム1を用いた施工の手順について説明する。
まず、シールドマシン110の発進時について説明する。シールドトンネル100に用いられるセグメント環状体101,101Aにおけるセグメントシステム1をシールドマシン110で切削する。そして、シールドトンネル100の外側の地盤をシールドマシン110で切削し、地盤にシールドトンネルを形成する。例えば、予め分割されている一般的なセグメント環状体をシールドマシン110内で組立て、施工する。このようにシールドマシン110で地盤を切削しつつ施工し、地中にシールドトンネル100から延びる別のシールドトンネルを施工していく。
次に、シールドマシン110の到達時について説明する。シールドマシン110は、シールドトンネル100、具体的にはその円筒壁を構成するセグメントシステム1に向けて、地盤を切削し別のシールドトンネルを形成しながら進む。シールドマシン110がシールドトンネル100の外方から突き当たると、セグメントシステム1を切削する。そして、シールドトンネル100と別のシールドトンネルとを連通させる。
【0031】
以上説明したように、本実施形態のセグメントシステム1によれば、第1凸部21Abは第2セグメント20が備える複数の複合材21に跨って形成されているために、第1凸部21Abの径方向の長さを調節できて第1凸部21Abの径方向の強度が高くなる。また、第2セグメント20を構成する複数の複合材21の端面21Aaが樹脂層23により覆われることで、複数の複合材21が互いに固定されている。このように構成することで、径方向に作用するせん断力が集中しやすい第1凸部21Ab周辺の強度を高め、さらに互いに接合されている複数の複合材21を樹脂層23により固定して一体化し、第2セグメント20の複数の複合材21を径方向に剥がれ難くすることができる。
一方で、第1凹部11Abが形成された第1セグメント10についても、樹脂層13により複数の複合材11を互いに固定して一体化することで、第1セグメント10の複数の複合材11を径方向に剥がれ難くすることができる。
このように、セグメント10,20の複数の複合材11,21が径方向にそれぞれ積層されている場合に、セグメント10,20の複数の複合材11,21を径方向に剥がれ難くすることができる。
【0032】
セグメントシステム1が接合体11A,21Aの端面11Aa,21Aaを覆う樹脂層13,23を備えることで、セグメント10,20の周方向の端面が比較的高い精度の平滑面に仕上がる。従って、第2凸部23aの片当たりを防止し、セグメント環状体101に軸方向に作用する圧縮力を確実に伝達させることができる。
セグメントシステム1のセグメント10,20間では、せん断力及び軸方向の圧縮力を伝達できる。さらにセグメント10,20間が精度良く接続されているため、セグメント10,20間の止水性が確保できる。また、セグメント10,20間を接着剤を用いずに接続できるため、セグメントシステム1の組立てに要する時間を短縮することができる。
第2セグメント20がピン22を備えることで、径方向に作用するせん断力により第2セグメント20にクラック(亀裂)が発生するのを防止して、第2セグメント20の耐力を向上させることができる。
【0033】
凹部隣接部11Acは複数の複合材11に跨って形成されているために、凹部隣接部11Acの径方向の長さを調節できて凹部隣接部11Acの径方向の強度が高くなる。また、第1セグメント10を構成する接合体11Aの端面11Aaが樹脂層13により覆われることで、複数の複合材11が互いに固定されている。このように構成することで、径方向のせん断力が集中しやすい凹部隣接部11Ac周辺の強度を高めて樹脂層13により複数の複合材11を互いに固定して一体化し、第1セグメント10の複数の複合材11を径方向に剥がれ難くすることができる。
第1凸部21Abの径方向の長さH2に対する端面21Aaと貫通孔21aの軸線との距離L2の比(L2/H2)は、0.5以上3以下である。この比を0.5以上にすることで、貫通孔21aにより複数の複合材21の周方向の端面の強度が低下するのを抑制することができる。そして、比を3以下にすることで、貫通孔21a内に配置されるピン22により複数の複合材21の周方向の端面を径方向により剥がれ難くすることができる。
【0034】
凸部隣接部21Acは複数の複合材21に跨って形成されているために、凸部隣接部21Acの径方向の長さを調節できて凸部隣接部21Acの径方向の強度が高くなる。また、第2セグメント20の複数の複合材21の端面21Aaが樹脂層23により覆われることで、複数の複合材21が互いに固定されている。このように構成することで、径方向のせん断力が集中しやすい凸部隣接部21Ac周辺の強度を高めて樹脂層23により複数の複合材21を互いに固定して一体化し、第2セグメント20の複数の複合材21を径方向に剥がれ難くすることができる。
第1凹部11Abの径方向の長さH2に対する端面11Aaと貫通孔11aの軸線との距離L1の比(L1/H1)は、0.5以上3以下である。この比を0.5以上にすることで、貫通孔11aにより複数の複合材11の周方向の端面の強度が低下するのを抑制することができる。そして、比を3以下にすることで、貫通孔11a内に配置されるピン12により複数の複合材11の周方向の端面を径方向により剥がれ難くすることができる。
【0035】
以上、本発明の一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせ、削除等も含まれる。
例えば、前記実施形態では、凹部隣接部は、第1セグメント10が備える1の複合材11により形成されてもよい。凸部隣接部についても、同様である。
比(L1/H1)は、0.5未満であってもよいし、3を超えてもよい。比(L2/H2)についても、同様である。
軸部材はピン12,22であるとしたが、軸部材はボルト等であってもよい。
第1セグメント10はピン12、FRP板15、及びリングピン16を備えなくてもよいし、第2セグメント20はピン22、FRP板25、及びリングピン26を備えなくてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 セグメントシステム(シールド用セグメントシステム)
10 第1セグメント
11,21 複合材
11a 貫通孔
11A,21A 接合体
11Ab 第1凹部(凹部)
12 ピン(軸部材)
13,23 樹脂層
20 第2セグメント
21Ab 第1凸部(凸部)
21Ac 凸部隣接部
100 シールドトンネル
110 シールドマシン