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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-20
(45)【発行日】2023-09-28
(54)【発明の名称】熱伝導性粒子充填ファイバー
(51)【国際特許分類】
   D01F 1/10 20060101AFI20230921BHJP
   D01F 6/52 20060101ALI20230921BHJP
   D01D 5/06 20060101ALI20230921BHJP
   C08L 33/06 20060101ALI20230921BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20230921BHJP
   C08K 3/01 20180101ALI20230921BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20230921BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20230921BHJP
   C08K 3/28 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
D01F1/10
D01F6/52
D01D5/06 Z
C08L33/06
C08L63/00 C
C08K3/01
C08K3/04
C08K3/22
C08K3/28
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019144601
(22)【出願日】2019-08-06
(65)【公開番号】P2021025163
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000157119
【氏名又は名称】関東電化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】吉山 和秀
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/044045(WO,A1)
【文献】特開2014-162914(JP,A)
【文献】特開2019-065354(JP,A)
【文献】特開2010-285569(JP,A)
【文献】国際公開第2014/112464(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F1/00- 6/96
9/00- 9/04
D01F8/00- 8/18
D01D1/00- 13/02
D04H1/00- 18/04
C08K3/00- 13/08
C08L1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝導性粒子、及び重量平均分子量30,000~300,000のエポキシ樹脂及びアクリル樹脂から選ばれる1種以上の樹脂を含有する熱伝導性粒子充填ファイバーであって、
熱伝導性粒子は、粒径10~900nmの熱伝導性粒子(X)を含み、
熱伝導性粒子(X)中、粒径100nm以上の粒子〔以下、粒子(X100)という〕の割合が5~50質量%である、
熱伝導性粒子充填ファイバー。
【請求項2】
熱伝導性粒子中、熱伝導性粒子(X)の割合が90質量%以上である、請求項1に記載の熱伝導性粒子充填ファイバー。
【請求項3】
熱伝導性粒子(X)を、70~95質量%含有する、請求項1又は2に熱伝導性粒子充填ファイバー。
【請求項4】
平均繊維径が50~10,000nmである、請求項1~3のいずれか一項に記載の熱伝導性粒子充填ファイバー。
【請求項5】
平均繊維長が100μm以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱伝導性粒子充填ファイバー。
【請求項6】
熱伝導性粒子が、金属酸化物粒子、金属窒化物粒子、及び炭素粒子から選ばれる1種以上である、請求項1から5のいずれか一項に記載の熱伝導性粒子充填ファイバー。
【請求項7】
熱伝導性粒子が、酸化マグネシウム粒子、酸化アルミニウム粒子、窒化ホウ素粒子、窒化アルミニウム粒子、窒化ケイ素粒子、ナノダイヤ、カーボンナノチューブ、及びグラフェン粒子から選ばれる1種以上である、請求項1から6のいずれか一項に記載の熱伝導性粒子充填ファイバー。
【請求項8】
熱伝導性粒子が、酸化マグネシウム粒子である、請求項1から7のいずれか一項に記載の熱伝導性粒子充填ファイバー。
【請求項9】
平均粒径100nm未満の熱伝導性粒子(X1)、平均粒径100nm以上900nm以下の熱伝導性粒子(X2)、及び重量平均分子量30,000~300,000の樹脂を混合する、請求項1~のいずれか一項に記載の熱伝導性粒子充填ファイバーの製造方法。
【請求項10】
熱伝導性粒子(X1)と熱伝導性粒子(X2)とを、質量比(X1):(X2)が1:1~25:1で混合する、請求項に記載の熱伝導性粒子充填ファイバーの製造方法。
【請求項11】
熱伝導性粒子(X1)と熱伝導性粒子(X2)と前記樹脂とを、熱伝導性粒子(X1)及び熱伝導性粒子(X2)の混合量が、熱伝導性粒子(X1)、熱伝導性粒子(X2)及び樹脂の混合量の合計に対して、70~95質量%となるように混合する、請求項又は10に記載の熱伝導性粒子充填ファイバーの製造方法。
【請求項12】
樹脂、熱伝導性粒子(X1)、熱伝導性粒子(X2)及び溶媒を含有するポリマー溶液
を用いて電界紡糸法により紡糸する工程を有する、請求項から11のいずれか一項に記載の熱伝導性粒子充填ファイバーの製造方法。
【請求項13】
請求項1~のいずれか1項に記載の熱伝導性粒子充填ファイバーと、マトリックス樹脂とを含有する、樹脂組成物。
【請求項14】
マトリックス樹脂中に、更に熱伝導性粒子(Y)を含有する、請求項13に記載の樹脂組成物。
【請求項15】
熱伝導性粒子(Y)が、金属酸化物粒子、金属窒化物粒子、及び炭素粒子から選ばれる1種以上である、請求項13又は14に記載の樹脂組成物。
【請求項16】
請求項1~のいずれか一項に記載の熱伝導性粒子充填ファイバーの製造工程(I)と、前記工程(I)で得られた熱伝導性粒子充填ファイバーを樹脂に配合する工程(II)とを有する樹脂組成物の製造方法であって、前記工程(I)が、樹脂、熱伝導性粒子(X1)、熱伝導性粒子(X2)及び溶媒を含有するポリマー溶液を用いて電界紡糸法により紡糸する工程を有する、樹脂組成物の製造方法。
【請求項17】
前記工程(II)で熱伝導性粒子充填ファイバーを樹脂の構成モノマーと混合し、該構成モノマーを重合させることで、熱伝導性粒子充填ファイバーを樹脂に配合する、請求項16に記載の樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性粒子充填ファイバー及びその製造方法、並びに、樹脂組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂、カーボン、金属酸化物などを用いた微細繊維は、一般に、ナノファイバーと称される、繊維径がナノスケールの繊維である。微細繊維は、表面積が非常に大きく、種々の用途(例えば、高性能フィルター、電池セパレーター、電磁波シールド材、人工皮革、細胞培養基材、ICチップ、有機EL、太陽電池、等)に応用されることが期待されている。
【0003】
微細繊維の特性、例えば、物理的特性や電気的特性などを変えるために、また、所定の機能を付与するために、目的に応じた材料を当該微細繊維と複合化させることが提案されている。
特許文献1には、有機樹脂中に繊維状アルミナフィラーが分散した、所定の熱伝導率を有するフィラー分散有機樹脂複合体が開示されている。
特許文献2には、樹脂中に樹脂繊維を配合してなる材料で構成された樹脂シートであって、前記樹脂繊維は、樹脂にフィラーを分散して構成されたものである、樹脂シートが開示されている。
特許文献3には、樹脂中に樹脂繊維を配合してなる材料で構成された樹脂シートであって、前記樹脂繊維は、樹脂に極性基を有するポリエステル樹脂を表面に有するフィラーを含むものである、樹脂シートが開示されている。
特許文献4には、熱伝導性無機粒子とセルロースナノファイバーの複合材からなる放熱材であって、前記セルロースナノファイバーは、その表面をエステル化及び/又はエーテル化して修飾してある、放熱材が開示されている。
特許文献5には、樹脂とフィラーとを含有する高熱伝導性樹脂硬化物であって、前記フィラーは、所定の小粒径フィラー、所定の中粒径フィラー、及び所定の大粒径フィラーを所定範囲の質量%でそれぞれ含有し、前記フィラーの最大粒子径、及び前記大粒径フィラーの平均粒子径が、前記高熱伝導性樹脂硬化物の膜厚に対してそれぞれ所定の範囲内であり、前記フィラーの含有量が、前記高熱伝導性樹脂硬化物全体の所定の範囲内である、高熱伝導性樹脂硬化物が開示されている。
特許文献6には、樹脂と平均粒径が10~1000nmの熱伝導性粒子とを含有し、平均繊維径が50~10000nmである、熱伝導性粒子充填ファイバーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-86270号公報
【文献】特開2014-118429号公報
【文献】特開2014-162921号公報
【文献】特開2016-79202号公報
【文献】特開2013-189625号公報
【文献】国際公開第2019/044045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、熱伝導性粒子の充填量が多く、優れた熱伝導性を示すとともに、樹脂に配合する際の作業性にも優れた熱伝導性粒子充填ファイバー、及びこれを含む樹脂組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、熱伝導性粒子、及び重量平均分子量30,000~300,000の樹脂を含有する熱伝導性粒子充填ファイバーであって、熱伝導性粒子は、粒径10~900nmの熱伝導性粒子(X)を含み、熱伝導性粒子(X)中、粒径100nm以上の粒子〔(以下、粒子(X100)という〕の割合が5~50質量%である、熱伝導性粒子充填ファイバーに関するものである。
【0007】
また本発明は、平均粒径100nm未満の熱伝導性粒子(X1)、平均粒径100nm以上900nm以下の熱伝導性粒子(X2)、及び重量平均分子量30,000~300,000の樹脂を混合する、本発明の熱伝導性粒子充填ファイバーの製造方法に関するものである。
【0008】
また本発明は、本発明の熱伝導性粒子充填ファイバーとマトリックス樹脂とを含有する樹脂組成物に関するものである。
【0009】
更に本発明は、本発明の熱伝導性粒子充填ファイバーの製造工程(I)と、前記工程(I)で得られた熱伝導性粒子充填ファイバーと熱伝導性粒子(Y)とをマトリックス樹脂に配合する工程(II)とを有する樹脂組成物の製造方法であって、前記工程(I)が、樹脂、熱伝導性粒子(X1)、熱伝導性粒子(X2)及び溶媒を含有するポリマー溶液を用いて電界紡糸法により紡糸する工程である樹脂組成物の製造方法に関するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、熱伝導性粒子の充填量が多く、優れた熱伝導性を示すとともに、樹脂に配合する際の作業性にも優れた熱伝導性粒子充填ファイバー、及びこれを含む樹脂組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<熱伝導性粒子充填ファイバー及びその製造方法>
本発明の熱伝導性粒子充填ファイバーは、熱伝導性粒子、及び重量平均分子量30,000~300,000の樹脂を含有する熱伝導性粒子充填ファイバーであって、熱伝導性粒子は、粒径10~900nmの熱伝導性粒子(X)を含み、熱伝導性粒子(X)中、粒径100nm以上の粒子(X100)の割合が5~50質量%である。
【0012】
本発明の熱伝導性粒子充填ファイバーは、熱伝導性粒子の含有量を多くできる、すなわち熱伝導性粒子が高充填されたファイバーとすることができるため、ファイバー内のパーコレーション効果が増大し熱伝導率が向上すると推察される。また、ファイバー表面にも熱伝導性粒子が露出し、無機フィラーを含有する樹脂組成物に配合した際に、無機フィラーとの接触も増えて樹脂組成物片全体のパーコレーション効果が増大し、熱伝導率はより良好となる。
また、本発明の熱伝導性粒子充填ファイバーは、製法にもよるが、綿状で得ることができるため、例えば、樹脂組成物に配合する場合は、マトリックス樹脂の浸透性が良くなり、樹脂組成物中での本発明の熱伝導性粒子充填ファイバーの分散性が向上し、偏在も少なくなる。
このような効果は、本発明において、所定粒径の熱伝導性粒子(X)を用い、且つ粒子(X)中、粒径が相対的に大きい粒子(X100)の量を特定範囲として、重量平均分子量が前記範囲の樹脂と組み合わせることで得られる。
これに対して、本発明の粒度分布を満たさない熱伝導性粒子を用いた場合は、ファイバー中に高充填しようとすると、使用する分散液の濃度を上げなくてはならず、それに伴い粒子凝集が生じやすくなり、凝集した塊がファイバーに多く導入されてしまうため、均一なパーコレーション効果が得られず、本発明の効果も得られないものと推察される。
【0013】
本発明において、熱伝導性粒子とは、熱伝導率が、1.0W/m・K以上である粒子をいう。
【0014】
本発明の熱伝導性粒子充填ファイバーは、熱伝導性粒子として、粒径が10~900nmの熱伝導性粒子(X)を含有する。本発明者らは、微細な樹脂ファイバーに充填する熱伝導性粒子として、粒径が10~900nmの範囲にある粒子(熱伝導性粒子(X))が、充填量を多くした場合のファイバー形状の保持に影響することを見出した。そして、そのような所定の粒径を有する熱伝導性粒子(X)中、粒径100nm以上の粒子(X100)の割合を5~50質量%として、所定の重量平均分子量の樹脂と組み合わせることで、熱伝導性粒子の充填量が多く、優れた熱伝導性を示すとともに、樹脂に配合する際の作業性にも優れた熱伝導性粒子充填ファイバーを得たものである。
【0015】
なお、熱伝導性粒子は、平均粒径が10~900nmであってよい。
また、熱伝導性粒子の粒径分布は、下限値は、5nm、更に10nm、そして、上限値は1,000nm、更に800nmから選択されてよい。
【0016】
また、本発明では、ファイバー中に熱伝導性粒子を高充填するための観点から、熱伝導性粒子(X)中、粒径100nm以上の粒子(X100)の割合が、5~50質量%であり、好ましくは5~30質量%、より好ましくは5~15質量%である。
したがって、本発明では、熱伝導性粒子(X)中、粒径100nm未満の粒子の割合は、95~50質量%であり、好ましくは95~70質量%、より好ましくは95~85質量%である。
【0017】
また、本発明では、ファイバー中に熱伝導性粒子を高充填する際に繊維形状を維持するための観点から、熱伝導性粒子中、熱伝導性粒子(X)の割合は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは90~100質量%、更に好ましくは95~100質量%である。
【0018】
本発明の熱伝導性粒子充填ファイバーは、パーコレーション構造が増え熱伝導率を向上するための観点から、熱伝導性粒子(X)を70~95質量%、好ましくは80~95質量%、より好ましくは85~95質量%含有する。
【0019】
本発明の熱伝導性粒子充填ファイバーは、パーコレーション構造が増え熱伝導率を向上するための観点から、熱伝導性粒子を、好ましくは80~95質量%、より好ましくは85~95質量%含有する。
【0020】
熱伝導性粒子、更に熱伝導性粒子(X)の粒径は、動的光散乱法(DLS:Dynamic Light Scattering Measurement)により測定されたものである。具体的には、熱伝導性粒子を分散媒にマグネチックスターラーで24時間程度撹拌することにより分散し、得られた分散液をダイナミック光散乱光度計(例えば、大塚電子株式会社製、型番:DLS-7000HL)を用いて測定することができる。
【0021】
熱伝導性粒子としては、具体的には、酸化マグネシウム粒子、酸化アルミニウム粒子、酸化ケイ素粒子等の金属酸化物粒子、窒化ホウ素粒子、窒化アルミニウム粒子、窒化ケイ素粒子等の金属窒化物粒子、及び活性炭粒子、ナノダイヤ粒子、カーボンナノ粒子、フラーレン粒子、グラフェン粒子等の炭素粒子から選ばれる1種以上が挙げられる。熱伝導性がよい点で、酸化マグネシウム粒子、酸化アルミニウム粒子、窒化ホウ素粒子、窒化アルミニウム粒子、ナノダイヤ粒子、カーボンナノチューブ粒子、及びグラフェン粒子から選ばれる1種以上が好ましく、酸化マグネシウム粒子がより好ましい。
【0022】
上記のような粒径をもつ熱伝導性粒子、例えば酸化マグネシウム粒子は、例えば気相酸化法により入手できる。
【0023】
本発明の熱伝導性粒子充填ファイバーは、重量平均分子量30,000~300,000の樹脂を含有する。樹脂は、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、アミド・イミド樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂などから選ばれる1種以上の樹脂が挙げられる。後述する熱伝導性粒子充填ファイバー製造の際の作業性がよい点で、エポキシ樹脂かアクリル樹脂が少なくとも1種含まれることが好ましい。より具体的には、ポリグリシジルメタクリレートが含まれることが好ましい。
【0024】
樹脂の重量平均分子量は、熱伝導性粒子の充填量を高め、熱伝導性がよい点及び樹脂に配合する際の作業性がよい点で、30,000~300,000であり、50,000~300,000がより好ましく、100,000~250,000が更に好ましい。ここで、樹脂の重量平均分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により測定されたものである。
【0025】
本発明の熱伝導性粒子充填ファイバーは、平均繊維径が、好ましくは50~10,000nm、より好ましくは100~5,000nm、更に好ましくは100~1,000nmである。
ここで、熱伝導性粒子充填ファイバーの平均繊維径は、得られたナノファイバーを走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製SU1510)により撮影して得た画像から、ランダムに50箇所を選んで平均値を求めることにより測定できる。
【0026】
本発明の熱伝導性粒子充填ファイバーは、平均繊維長が、好ましくは100μm以上、より好ましくは500μm以上、更に好ましくは1,000μm以上である。
ここで、熱伝導性粒子充填ファイバーの平均繊維長は、得られたナノファイバーを走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製SU1510)により撮影して得た画像から、ランダムに50箇所を選んで平均値を求めることにより測定できる。
【0027】
本発明は、平均粒径100nm未満の熱伝導性粒子(X1)、平均粒径100nm以上900nm以下の熱伝導性粒子(X2)、及び重量平均分子量30,000~300,000の樹脂を混合する、本発明の熱伝導性粒子充填ファイバーの製造方法を提供する。
【0028】
本発明の熱伝導性粒子充填ファイバーの製造方法では、熱伝導性粒子(X1)と熱伝導性粒子(X2)とを混合することで、熱伝導性粒子、更に熱伝導性粒子(X)を含み、熱伝導性粒子(X)中の粒子(X100)の割合が所定範囲にある本発明のファイバーを製造することができる。
【0029】
本発明の熱伝導性粒子充填ファイバーの製造方法では、熱伝導性粒子(X1)と熱伝導性粒子(X2)とを、質量比(X1):(X2)が1:1~25:1で混合することが、熱伝導性粒子の充填量を高め熱伝導性がよい点及び樹脂に配合する際の作業性がよい点で好ましく、1:1~15:1がより好ましく、1:1~10:1が更に好ましい。
【0030】
熱伝導性粒子(X1)の平均粒径は、好ましくは10~99nm、より好ましくは10~70nm、更に好ましくは10~50nmである。熱伝導性粒子(X1)は、粒径10以上100nm未満の粒子から構成されていてよい。
また、熱伝導性粒子(X2)の平均粒径は、好ましくは100~900nm、より好ましくは100~700nm、更に好ましくは100~500nmである。熱伝導性粒子(X2)は、粒径100以上900nm以下の粒子から構成されていてよい。
ここで、熱伝導性粒子(X1)、(X2)の「平均」粒径は、熱伝導性粒子(X)の粒径(平均でない)と同様に測定することができる。
【0031】
本発明では、熱伝導性粒子(X1)と熱伝導性粒子(X2)と前記樹脂とを、熱伝導性粒子(X1)及び熱伝導性粒子(X2)の混合量が、熱伝導性粒子(X1)、熱伝導性粒子(X2)及び樹脂の混合量に対して、70~95質量%、更に80~95質量%、更に85~95質量%となるように混合することが好ましい。
【0032】
本発明の熱伝導性粒子充填ファイバーは、熱伝導性粒子の凝集を抑制するため、少なくとも一部が樹脂の繊維内部に高分散していることが好ましい。このような状態を得るために、本発明の熱伝導性粒子充填ファイバーの製造方法では、電界紡糸法を用いることが好ましい。電界紡糸法は、前記樹脂、熱伝導性粒子(X1)、熱伝導性粒子(X2)及び溶媒を含有するポリマー溶液を用いて行うことができる。
【0033】
樹脂は、前記のものが使用されるが、製造工程及び加工工程での作業性がよい点で、熱硬化性、UV硬化性など硬化性である樹脂が少なくとも1種含まれることが好ましく、エポキシ基を含有する樹脂が少なくとも1種含まれることが更に好ましい。樹脂が硬化性である場合は、硬化剤はポリマー溶液に含有させることができる。
【0034】
ポリマー溶液の溶媒は、樹脂を溶解させるものであれば特に限定はなく、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン等のケトン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルアルコール等のアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミドが挙げられる。
【0035】
ポリマー溶液は、例えば、熱伝導性粒子(X1)と熱伝導性粒子(X2)と溶媒の混合物を樹脂と混合することにより調製することができる。その際、熱伝導性粒子(X1)と熱伝導性粒子(X2)の含有量の総和は、熱伝導性がよい点で、熱伝導性粒子(X1)、熱伝導性粒子(X2)及び樹脂の含有量の総和に対して、好ましくは50~99質量%、より好ましく70~99質量%、更に好ましくは80~99質量%である。
【0036】
ポリマー溶液は、分散剤を含有してもよい。分散剤としては、多価カルボン酸を含む脂肪酸や不飽和脂肪酸などを含むアニオン系分散剤、高分子系イオン性分散剤、リン酸エステル系化合物などが挙げられる。分散剤は、熱伝導性粒子(X1)と熱伝導性粒子(X2)の含有量の総和に対して、1~25質量%の割合で用いられることが好ましい。
【0037】
樹脂としてエポキシ基を含有する樹脂を用い、エポキシ基の硬化剤を併用することが製造工程の操作が簡便な点で好ましい。具体的には、グリシジル基を有する樹脂と、硬化剤であるアミン化合物との組み合わせを用いることができる。より具体的には、ポリグリシジルメタクリレートと、鎖状脂肪族ポリアミン、例えばジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロプレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン等との組み合わせが挙げられる。硬化剤であるアミン化合物は、ポリマーに対して、1~10質量%の割合で用いられることが好ましい。
【0038】
得られたポリマー溶液を用いた電界紡糸法は、公知の方法に準じて行うことができる。
【0039】
<樹脂組成物及びその製造方法>
本発明の樹脂組成物は、本発明の熱伝導性粒子充填ファイバーと、マトリックス樹脂とを含有する。本発明の熱伝導性粒子充填ファイバーを用いると、マトリックス樹脂と混練する際の粘度の過度な上昇を抑制できるため、取り扱い性や該ファイバーのマトリックス樹脂への分散性が良好となる。
樹脂組成物におけるマトリックス樹脂は、熱伝導性粒子充填ファイバーを構成する樹脂と同一でも異なっていてもよい。樹脂組成物におけるマトリックス樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、アミド・イミド樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂などから選ばれる1種以上の樹脂が挙げられる。熱伝導性及び熱伝導性粒子充填ファイバー製造工程での作業性がよい点で、エポキシ樹脂が好ましいが、エポキシ基を含有する樹脂でもよい。より具体的には、ビスフェノールAジグリシジルエーテルを構成モノマーとして含むエポキシ樹脂が好ましい。
【0040】
用途によっては、本発明の樹脂組成物は、マトリックス樹脂中に更に熱伝導性粒子(Y)を含有していてもよい。熱伝導性粒子(Y)としては本発明の熱伝導性粒子充填ファイバー中の熱伝導性粒子(X)と同じ種類のものでも異なる種類のものでもいずれでもよく、具体的には酸化マグネシウム粒子、酸化アルミニウム粒子、酸化ケイ素粒子等の金属酸化物粒子、窒化アルミニウム粒子、窒化ホウ素粒子、窒化ケイ素粒子等の金属窒化物粒子、及び活性炭粒子、ナノダイヤ粒子、カーボンナノ粒子、フラーレン粒子、グラフェン粒子等の炭素粒子から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0041】
熱伝導性粒子(Y)の平均粒径は、添加目的に応じて選定できるが、0.1~10μmであることが、熱伝導性がよい点で好ましい。熱伝導性粒子(Y)の平均粒径は、前記の方法で測定することができる。
【0042】
本発明の樹脂組成物は、熱伝導性粒子(Y)を、好ましくは1~99質量%、より好ましくは25~99質量%含有する。
【0043】
本発明の樹脂組成物は、マトリックス樹脂100質量部に対して、本発明の熱伝導性粒子充填ファイバーを、好ましくは1~90質量部、より好ましくは25~80質量部、更に好ましくは30~75質量部含有する。
【0044】
本発明の樹脂組成物の一例として、以下のような組成が挙げられる。
マトリックス樹脂 5~99質量部
熱伝導性粒子(Y) 0~95質量部
本発明の熱伝導性粒子充填ファイバー 1~90質量部
【0045】
本発明の樹脂組成物が熱伝導性粒子(Y)を含有する場合、マトリックス樹脂と熱伝導性粒子(Y)の合計100質量部に対して、本発明の熱伝導性粒子充填ファイバーを、好ましくは1~90質量部、より好ましくは1~50質量部、更に好ましくは1~25質量部含有する。更に熱伝導性粒子充填ファイバー中の熱伝導性粒子(X)が熱伝導性粒子(Y)に対して、1~75質量%となるように用いることが好ましい。
【0046】
本発明の樹脂組成物の用途として、各種電子デバイスの放熱材料、熱交換材料などが挙げられる。
【0047】
本発明の樹脂組成物は、本発明の熱伝導性粒子充填ファイバーを製造する工程(I)と、得られた熱伝導性粒子充填ファイバーをマトリックス樹脂に配合する工程(II)を順次行うことにより製造することができる。
【0048】
本発明は、本発明の熱伝導性粒子充填ファイバーの製造工程(I)と、前記工程(I)で得られた熱伝導性粒子充填ファイバーを樹脂に配合する工程(II)とを有する樹脂組成物の製造方法であって、前記工程(I)が、樹脂、熱伝導性粒子(X1)、熱伝導性粒子(X2)及び溶媒を含有するポリマー溶液を用いて電界紡糸法により紡糸する工程を有する、樹脂組成物の製造方法を提供する。
【0049】
工程(I)は、前記樹脂、熱伝導性粒子(X1)、熱伝導性粒子(X2)及び溶媒を含有するポリマー溶液を用いた電界紡糸法により紡糸する、本発明の熱伝導性粒子充填ファイバーの製造方法と同じである。
【0050】
工程(II)では、熱伝導性粒子充填ファイバーをマトリックス樹脂の構成モノマーと混合し、該構成モノマーを重合させることで、熱伝導性粒子充填ファイバーをマトリックス樹脂に配合することができる。また、熱伝導性粒子充填ファイバーとマトリックス樹脂とを混練して配合することもできる。
【0051】
また、工程(II)では、熱伝導性粒子(Y)をマトリックス樹脂に配合することができる。
【0052】
工程(II)では、例えば、工程(I)で得られた熱伝導性粒子充填ファイバー、及びマトリックス樹脂の構成モノマー、任意に熱伝導性粒子(Y)を混合し、該構成モノマーを重合させることで、熱伝導性粒子充填ファイバーと任意に熱伝導性粒子(Y)とをマトリックス樹脂に配合することができる。
工程(II)では、工程(I)で得られた熱伝導性粒子充填ファイバー、マトリックス樹脂の構成モノマー、及び熱伝導性粒子(Y)を混合し、該構成モノマーを重合させることで、熱伝導性粒子充填ファイバーと熱伝導性粒子(Y)とをマトリックス樹脂に配合することができる。
【0053】
更に工程(II)の後に、得られた樹脂組成物を成型する工程(III)を設けることができる。すなわち、本発明により、工程(I)、工程(II)及び工程(III)から成る樹脂成型品の製造方法が提供される。工程(II)において、マトリックス樹脂の構成モノマーを重合させる方法を採用する場合は、重合用の混合物を型枠に充填したり支持体に塗布したりした後、硬化させて、樹脂組成物の製造と成型を同時に行っても良い。例えば、工程(I)で得られた熱伝導性粒子充填ファイバー、熱伝導性粒子(Y)、及びマトリックス樹脂の構成モノマーを混合し、得られた混合物を型枠に充填し、該型枠中で前記構成モノマーを重合させることで、工程(II)と工程(III)を同時に行い、熱伝導性粒子充填ファイバーと熱伝導性粒子(Y)とを含有する樹脂組成物を成型することができる。また、工程(II)で得られた前記混合物の塗膜を硬化させて薄膜を形成する工程も工程(III)に含んでいてもよい。
【0054】
また、本発明の熱伝導性粒子充填ファイバー又は本発明の樹脂組成物と、他の部材とを複合させた複合物品を得ることもできる。例えば、本発明の熱伝導性粒子充填ファイバーと、シート、密着性フィルムなどとを複合させた物品が挙げられる。
【0055】
本発明により、本発明の熱伝導性粒子充填ファイバーとマトリックス樹脂用の構成モノマーと混合し、該混合物中の前記モノマーを硬化させる、成型品の製造方法が提供される。
更に、本発明により、本発明の熱伝導性粒子充填ファイバーとマトリックス樹脂用の構成モノマーと混合し、該混合物を薄膜とした後、該薄膜中の前記モノマーを硬化させる、硬化薄膜の製造方法が提供される。前記混合物を薄膜にする方法は、例えば、支持体に前記混合物を塗布する方法が挙げられる。
【実施例
【0056】
<熱伝導性粒子充填ファイバーの製造>
ポリマー溶液の調製
熱伝導性粒子(X1)として平均粒径35nmの酸化マグネシウム粒子と溶媒であるメチルエチルケトンとを混合して分散液を調製した。分散液中の酸化マグネシウム粒子の濃度は、35質量%であった。また、熱伝導性粒子(X2)として平均粒径500nmの酸化マグネシウムとメチルエチルケトンとを混合して分散液を調製した。分散液中の酸化マグネシウム粒子の濃度は、35質量%であった。なお、前記平均粒径35nmの酸化マグネシウム粒子は、10nm以上100nm未満の粒子で構成されていた。また、前記平均粒径500nmの酸化マグネシウムは、粒径が100nm以上900nm以下の粒子で構成されていた。
樹脂として、本発明の樹脂である、粉末状のポリグリシジルメタクリレート(重量平均分子量200,000)(PGMA(1)とする)と、比較の樹脂である、粉末状のポリグリシジルメタクリレート(重量平均分子量12,000)(比較PGMAとする)を用いた。
樹脂の硬化剤としてトリエチレンテトラミン(TETA)を用いた。
前記2種の分散液を、熱伝導性粒子(X1)と熱伝導性粒子(X2)の混合比が表1の通りとなるように用い、該分散液と前記樹脂を、表1の組成となるように組み合わせて、及び前記硬化剤と共にシェイカーを用いて混合し、電解紡糸法に用いるポリマー溶液を調製した。
一例として、実施例1のポリマー溶液の組成は、酸化マグネシウム粒子32.0質量%、メチルエチルケトン59.6質量%、PGMA8.0質量%、TETA0.4質量%であった。
【0057】
(2)電界紡糸法による熱伝導性粒子充填ファイバーの製造
前記(1)で調製したポリマー溶液を用いて、電界紡糸用装置(NEUナノファイバーエレクトロスピニングユニット、カトーテック株式会社)で電界紡糸し、溶媒であるメチルエチルケトンを揮発させて、平均繊維径が865nm及び平均繊維長500μm以上の熱伝導性粒子充填ファイバーを製造した。電界紡糸用装置の条件は、シリンジ速度:0.60mm/分、ノズル内径:0.82mm、回転式ターゲット(捕集体):ステンレス製ドラム(直径10cm)、回転式ターゲット速度:3.00m/分、ノズルへの印加電圧:25kV、ノズル先端から回転式ターゲットまでの距離:10cmとした。
この熱伝導性粒子充填ファイバーでは、酸化マグネシウム粒子の少なくとも一部が繊維内部に存在していた。電解紡糸法後の熱伝導性粒子充填ファイバーの組成は、一例として、実施例1では、酸化マグネシウム粒子80質量%、PGMAの架橋樹脂20質量%(PGMA19質量%とTETA1質量%に相当)であった。熱伝導性粒子充填ファイバーの平均繊維径と平均繊維長は、一例として、実施例1では、平均繊維径800nm、平均繊維長500μmであった。
表1に、実施例、比較例の熱伝導性粒子充填ファイバー中のMgOの含有量(熱伝導性粒子の含有量)、熱伝導性粒子(X)の含有量、及び熱伝導性粒子(X)中の粒子(X100)の割合を示した。
【0058】
(3)作業性の評価
前記(2)で得られた熱伝導性粒子充填ファイバーにおいて、マトリックス樹脂に混練する際の取り扱いやすさを、以下の基準で評価した。
◎:熱伝導性粒子充填ファイバーを添加した際に粘度が大きく上昇せず、マトリックス樹脂に分散しやすかった。
○:熱伝導性粒子充填ファイバーを添加した際に粘度がやや上昇したが、マトリックス樹脂への分散には支障がなかった。
△:熱伝導性粒子充填ファイバーを添加した際の粘度上昇があり、マトリックス樹脂へ分散しづらかった。
×:熱伝導性粒子充填ファイバーを添加した際に大きな粘度上昇があり、マトリックス樹脂中に分散せずファイバーの塊として残った。
【0059】
<評価用フィルムの製造>
得られた熱伝導性粒子充填ファイバーと、マトリックス樹脂用モノマーであるビスフェノールAジグリシジルエーテル(BPADGE)と、熱伝導性粒子(Y)である酸化アルミニウム(平均粒径3μm)とを超音波ホモジナイザーで混合し、モノマー溶液を調製した。調製したモノマー溶液にトリエチレンテトラミンを添加し、テフロン(登録商標)枠へ流し込み、100℃で1時間加熱後、室温まで冷却して、15mm×30mm四方の評価用フィルムを製造した。
本評価では、BPADGEと酸化アルミニウム(Al)の合計中、酸化アルミニウムの量が50質量%である組成を採用した。また、熱伝導性粒子充填ファイバーは、酸化マグネシウム粒子の含有量が10~90質量%のものを任意に選択して採用した。そして、BPADGEと酸化アルミニウムの合計100質量部に対して、熱伝導性粒子充填ファイバーを10質量部添加してフィルムを製造した。実施例のフィルムでは、マトリックス樹脂中に熱伝導性粒子充填ファイバーが分散していた。
なお、本評価では、便宜的に、BPADGEと酸化アルミニウムとを合わせて、マトリックス樹脂と表記した。
【0060】
<フィルムの評価>
得られた評価用フィルムの熱拡散率、比熱、密度を測定し、熱伝導率(W/m・K)を下記の式により算出した。
熱伝導率=熱拡散率×比熱×密度
熱拡散率は熱物性測定装置(ベテルハドソン研究所:サーモウェーブアナライザTA3)を使用し測定した。フィルムの垂直方向に対して中心と、そこから左前、右前、左奥、右奥に1mmずつずらした計5か所を測定し、垂直平均を算出した。
比熱は示差走査熱量計(株式会社島津製作所製:DSC-60)を使用し測定した。
比重は電子比重計(アルファーミラージュ株式会社製:EW-300SG)を使用し測定した。
結果を表1に示した。なお、表1には、参考例として、熱伝導性粒子充填ファイバーを添加せずに製造したフィルムの熱伝導率も示した。
【0061】
【表1】
【0062】
添加量は、マトリックス樹脂(BPADGEと酸化アルミニウムの合計)100質量部に対する添加量である。
【0063】
表1の実施例1~4の結果から、重量平均分子量200,000のPGMA(1)をマトリックス樹脂として用い、粒径100nm~900nmの熱伝導粒子(X100)を5~50質量%含むファイバーを作成することにより、熱伝導率が高く作業性にも優れた熱伝導性ファイバーが製造できることがわかった。一方、比較例1及び2のように粒子(X)中の粒子(X100)の割合が50質量%よりも大きいと、重量平均分子量200,000のPGMA(1)をマトリックス樹脂として用いても熱伝導率及び作業性が実施例に比べて劣ることがわかった。また、重量平均分子量が12,000の比較PGMAをマトリックス樹脂とした比較例3の熱伝導率及び作業性は、MgOの含有量、粒子(X)の含有量、粒子(X)中の粒子(X100)の割合が同じ実施例3に比べていずれも劣ることがわかった。このことから、重量平均分子量200,000のPGMA(1)をマトリックス樹脂として用いることの効果が明白であるといえる。