(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-20
(45)【発行日】2023-09-28
(54)【発明の名称】位置調整部材と位置調整方法
(51)【国際特許分類】
B05C 5/02 20060101AFI20230921BHJP
B05C 11/00 20060101ALI20230921BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20230921BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
B05C5/02
B05C11/00
B05D1/26 Z
B05D3/00 D
(21)【出願番号】P 2019150658
(22)【出願日】2019-08-20
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000240341
【氏名又は名称】株式会社ヒラノテクシード
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】榎本 博一
(72)【発明者】
【氏名】上田 和人
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-076811(JP,A)
【文献】特開2006-122884(JP,A)
【文献】特開2013-212492(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C5/00- 5/04
7/00-21/00
B05D1/00- 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1本体と、
第1本体に組み合わさる第2本体と、
前記第1本体の左右方向に設けられた塗工液の液溜め部と、
前記液溜め部から前記第1本体と前記第2本体の間に形成された前記塗工液の液通路と、
前記液通路の前端部にあるスリット状の前記塗工液の吐出口と、
前記第1本体と前記第2本体の間に挟持されたシムと、
前記第1本体の一側部から突出し、前記シムの一側部が当接される位置決め突部と、
前記シムの一側部から突出し、前記位置決め突部の前方に配されるシム突片と、
を有したダイの前記シムの位置調整部材であって、
前記第1本体の前記一側部の前後方向に取り付けられる設置基板と、
前記設置基板の前端部に設けられ、前記第1本体の前端部にある刃先に当接される第1押さえ部材と、
前記設置基板の前記一側部に設けられ、前記位置決め突部が嵌合する凹部と、
前記凹部の前縁部と前記シム突片の後縁部との間に差し込んで前記シムを前記第1押さえ部材の位置まで移動させる調整板と、
を有
し、
前記位置調整部材は、前記第1本体の左右両側部に配されるように左右一対あり、
左側の前記位置調整部材と右側の前記位置調整部材は、左右対称である、
位置調整部材。
【請求項2】
前記設置基板の平面形状は、長方形である、
請求項1に記載の位置調整部材。
【請求項3】
前記第1押さえ部材は、前記設置基板の前部と前記一側部に連続して設けられたくの字状である、
請求項
2に記載の位置調整部材。
【請求項4】
前記位置決め突部は、直方体であり、
前記凹部の平面形状は、長方形である、
請求項
3に記載の位置調整部材。
【請求項5】
前記設置基板の後部には、前記設置基板を前記第1本体の後面に押圧する押圧部材が設けられている、
請求項
4に記載の位置調整部材。
【請求項6】
前記押圧部材は、
前記設置基板から立設された支持板と、
前記支持板に螺合するボルトと、
前記ボルトのネジ部の先端に取り付けられ、前記第1本体の後面を押圧する押さえ片と、
を有する請求項
5に記載の位置調整部材。
【請求項7】
前記押さえ片は、ゴム製である、
請求項
6に記載の位置調整部材。
【請求項8】
前記設置基板の一側部に設けられ、前記第1本体の前記一側部に当接される第2押さえ部材を有する、
請求項1に記載の位置調整部材。
【請求項9】
請求項1に記載の位置調整部材を用いて前記第1本体に対する前記シムの位置を調整する位置調整方法であって、
前記第1本体の前記位置決め突部の前方に前記シム突片が配されるように前記シムを前記第1本体に載置し、
前記シムが載置された状態で、前記第1本体の前記位置決め突部に前記凹部が嵌合し、前記第1本体の前記刃先に前記第1押さえ部材を当接させ、前記設置基板を前記シムの上に被せ、
前記凹部の前記前縁部と前記シム突片の前記後縁部との間に前記調整板を差し込んで、前記シムを前記第1押さえ部材の位置まで移動させる、
位置調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シムの位置調整部材と位置調整方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、バックアップロールを走行するウエブにダイから塗工を行う場合には、バックアップロールの近傍にダイを配し、ダイ内部の液溜め部にポンプから塗工液を圧送し、この液溜め部に通じるダイの吐出口からウエブに塗工液を塗工する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のダイは、上ダイと下ダイとから構成され、上ダイと下ダイの間にはシムが挟持され、吐出口の幅方向を決定するものである。そのため、このシムの位置調整は非常に重要であり、上ダイの刃先としたダイの刃先との位置関係が一致していないと、塗工液を塗工した場合に目的の塗工が行えないという問題点があった。
【0005】
そこで本発明は上記問題点に鑑み、ダイにシムを取り付ける場合にシムの位置調整を行うことができる位置調整部材とその位置調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1本体と、第1本体に組み合わさる第2本体と、前記第1本体の左右方向に設けられた塗工液の液溜め部と、前記液溜め部から前記第1本体と前記第2本体の間に形成された前記塗工液の液通路と、前記液通路の前端部にあるスリット状の前記塗工液の吐出口と、前記第1本体と前記第2本体の間に挟持されたシムと、前記第1本体の一側部から突出し、前記シムの一側部が当接される位置決め突部と、前記シムの一側部から突出し、前記位置決め突部の前方に配されるシム突片と、を有したダイの前記シムの位置調整部材であって、前記第1本体の前記一側部の前後方向に取り付けられる設置基板と、前記設置基板の前端部に設けられ、前記第1本体の前端部にある刃先に当接される第1押さえ部材と、前記設置基板の前記一側部に設けられ、前記位置決め突部が嵌合する凹部と、前記凹部の前縁部と前記シム突片の後縁部との間に差し込んで前記シムを前記第1押さえ部材の位置まで移動させる調整板と、を有し、前記位置調整部材は、前記第1本体の左右両側部に配されるように左右一対あり、左側の前記位置調整部材と右側の前記位置調整部材は、左右対称である、位置調整部材である。
【0007】
また、本発明は、第1の発明の位置調整部材を用いて前記第1本体に対する前記シムの位置を調整する位置調整方法であって、前記第1本体の前記位置決め突部の前方に前記シム突片が配されるように前記シムを前記第1本体に載置し、前記シムが載置された状態で、前記第1本体の前記位置決め突部に前記凹部が嵌合し、前記第1本体の前記刃先に前記第1押さえ部材を当接させ、前記設置基板を前記シムの上に被せ、前記凹部の前記前縁部と前記シム突片の前記後縁部との間に前記調整板を差し込んで、前記シムを前記第1押さえ部材の位置まで移動させる、位置調整方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、位置調整部材を用いることにより、シムの先端をダイの吐出口に正確に一致させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態の塗工装置の説明図である。
【
図4】シムの位置決めを行う場合の分解斜視図である。
【
図6】下ダイにシムを載置した状態の右側の欠裁平面図である。
【
図7】下ダイに右側の位置調整部材を取り付けた状態の欠裁平面図である。
【
図8】下ダイに位置調整部材を取り付け、調整板によってシムの位置決めを行おうとしている状態の一部欠裁右側面図である。
【
図9】下ダイに位置調整部材を取り付け、調整板によってシムの位置決めを行おうとしている状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態の塗工装置10と、塗工装置10に用いられる位置調整部材50について
図1~
図9を参照して説明する。
【0011】
(1)塗工装置10
塗工装置10の構成について説明する。塗工装置10は、長尺状のフィルム、布帛、金属箔、紙などのウエブWに塗工液を塗工する。
【0012】
塗工装置10は、
図1に示すように、水平方向に配されたダイ12と、ダイ12の横近傍に配されたバックアップロール14とを有し、バックアップロール14の下から上に搬送されるウエブWにダイ12から塗工液を塗工する。この場合に、塗工液は、タンク16に貯留され、定量ポンプよりなるポンプ18によって供給管34を介して、ダイ12に単位時間当たり一定の量の塗工液がタンク16から供給される。
【0013】
ダイ12は、
図2に示すように、下ダイ20と、下ダイ20の上方に配される上ダイ22とシム40を有している。
【0014】
下ダイ20には、
図2、
図4に示すように、下ダイ20は、前方に行くほど先細りとなって側面形状が三角形を成し、前端部に刃先36が形成されている。下ダイ20の左右両側面からは、立方体の位置決め突部32がそれぞれ左右方向に突出している。液溜め部24が左右方向(ウエブWの幅方向)に設けられている。液溜め部24の底面の左右方向における中央には、塗工液を供給するための供給口30が開口し、供給管34が接続されている。
【0015】
上ダイ22は、
図2に示すように、前方に行くほど先細りとなって側面形状が三角形を成し、前端部に刃先38が形成されている。
【0016】
シム40は、
図2、
図4に示すように、下ダイ20と上ダイ22の間に挟持されるものであり、後片42、左片44、右片46からなる平面形状がコの字状である。後片42は、液溜め部24の後部に位置し、左片44は液溜め部24の左側に位置し、右片46は液溜め部24の右側に位置している。シム40の左片44と右片46の左右両側からそれぞれ外方に向かってシム突片48が突出している。このシム突片48は、下ダイ20の位置決め突部32の前端部と係合する。
【0017】
図2に示すように、下ダイ20に上ダイ22を、シム40を挟んで取り付けた場合に、シム40の左片44と右片46の間であって、かつ、液溜め部24からダイ12の前端部に向かって液通路26が形成されている。液溜め部24と連通した液通路26の前端部は開口し、吐出口28が形成されている。すなわち、吐出口28は、刃先36,38とシム40の左片44と右片46に囲まれたスリット状の開口部となる。
【0018】
(2)位置調整部材50
次に、シム40の左片44の前端部と右片46の前端部を、下ダイ20の刃先36に一致させるための位置調整部材50について
図3と
図4を参照して説明する。位置調整部材50は、
図4に示すように、左右一対あり、左右対称の構造を有するため、右側の位置調整部材50について説明し、左側の位置調整部材50については説明を省略する。
【0019】
図3に示すように、位置調整部材50は、長方形の設置基板52を有している。この設置基板52は金属板より形成されている。設置基板52の右側面中央部には、下ダイ20の位置決め突部32と係合する断面矩形の凹部54が形成されている。
【0020】
図3に示すように、設置基板52の前部の角部には、くの字状の第1押さえ部材56が設けられている。この第1押さえ部材56の内前壁56aは、設置基板52の前部に平行に設けられ、内側壁52bは設置基板52の右側部に平行に設けられている。第1押さえ部材56は、合成樹脂製、例えばMCナイロン(登録商標)より形成されている。
【0021】
図3に示すように、設置基板52の右側面であって、凹部54よりも後方には、直方体の第2押さえ部材58が設けられている。第1押さえ部材56の内側壁56bと、第2押さえ部材58の内側壁58aとは、前後方向において直線上に設けられている。これは、この位置に下ダイ20の右側面が当接させるからである。第2押さえ部材58は、合成樹脂製、例えばMCナイロン(登録商標)より形成されている。
【0022】
図3に示すように、設置基板52の後部には、前後方向にボルト60が配されている。このボルト60は、設置基板52から立設された支持板62,64に開口したネジ孔に螺合され、前後方向に移動自在となっている。ボルト60の頭は設置基板52の後部側に配され、ボルト60のネジ部の先端には、ゴム製(ラバー製)の直方体の押さえ片66が取り付けられている。
【0023】
(3)シム40の位置決め方法
次に、左右一対の位置調整部材50,50を用いて、シム40を下ダイ20において位置決めする方法(0点調整する方法)について
図3~
図9を参照して説明する。
【0024】
第1に、
図5に示すように、下ダイ20を水平な面に載置し、上面に液溜め部24が露出するようにする。
【0025】
第2に、
図4と
図5に示すように、シム40を下ダイ20の上に載置する。この場合に、シム40の後片42が液溜め部24の後方に位置させ、液溜め部24の左右両側にそれぞれ左片44、右片46を位置させる。そして、左右一対のシム突片48,48は、位置決め突部32の前方に位置させる。シム40の左右方向の位置は、左右一対の位置決め突部32の間にシム40を配し、シム40の左片44の左側部が左側の位置決め突部32に当接させ、シム40の右片46の右側部が右側の位置決め突部32に当接させることにより位置決めされる。
【0026】
第3に、
図4と
図7に示すように、左右一対の位置調整部材50を、それぞれ左右一対の位置決め突部32の位置に被せる。このときには、
図3に示す第1押さえ部材56と第2押さえ部材58が、下方になるように被せる。以下では、右側の位置調整部材50について説明するが、左側の位置調整部材50についても同様である。位置調整部材50を位置決め突部32に被せる場合には、設置基板52に設けられた凹部54が位置決め突部32に嵌合するように対応するように被せる。
【0027】
第4に、
図7に示すように、位置調整部材50の第1押さえ部材56の内側壁56bと、第2押さえ部材58の内側壁58aとを、下ダイ20の右側面が当接する。
【0028】
第5に、
図7に示すように、ボルト60の先端部に設けられた押さえ片66を下ダイ20の後壁に当接させ、第1押さえ部材56の内前壁56aが下ダイ20の刃先36に当接されるように、ボルト60を締結していく。これによって、位置調整部材50が下ダイ20に固定されると共に、第1押さえ部材56の内前壁56aが、刃先36の前端部に位置する。
【0029】
第6に、位置決め突部32の前方に位置する右片46のシム突片48を前後方向に移動させ、右片46の前端部が、第1押さえ部材56の内前壁56aに当接するようにする。この方法は、
図8と
図9に示すように、位置決め突部32の前壁と、凹部54と後縁部の間に長方形の板状の調整板68を上から差し込んで、この調整板68でシム突片48の後部を前方に移動させ、右片46の前端部が第1押さえ部材56の内前壁56aに当たるようにする。
【0030】
第7に、シム40の左片44についても、同様にして位置調整部材50で位置調整を行う。
【0031】
第8に、シム40の左片44、右片46の位置決めが終了すると、左右一対の位置調整部材50,50を下ダイ20から取り外す。この場合にはボルト60を緩め、押さえ片66を下ダイ20の後壁から離すと簡単に位置調整部材50を下ダイ20から取り外すことができる。
【0032】
第9に、シム40の位置決めが終了すると、下ダイ20の上に上ダイ22を載置し固定する。これによって、シム40の左片44と右片46の前端部が、下ダイ20の刃先36と上ダイ22の刃先38の位置と一致した状態となる。
【0033】
(4)効果
本実施形態によれば、左右一対の位置調整部材50,50によって、シム40の左片44の前端部と右片46の前端部を、下ダイ20の刃先36と一致するように位置決めできる。
【0034】
また、位置決め作業をする場合に、位置調整部材50を下ダイ20に取り付け、調整板68によってシム40のシム突片48を移動させるだけであるため、位置決め作業が簡単である。
【0035】
また、下ダイ20の刃先36に当接される第1押さえ部材56は合成樹脂製であって、下ダイ20の右側面にと当接される第2押さえ部材58も合成樹脂製であり、下ダイ20の後面を押圧する押さえ片66はゴム製であるため、下ダイ20が傷付かない。
【0036】
また、位置調整部材50は、押さえ片66をボルト60で移動させることができるため、下ダイ20の前後方向の長さが異なる下ダイ20であってもシム40の位置調整を行うことができる。
【変更例】
【0037】
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0038】
10・・・塗工装置、12・・・ダイ、20・・・下ダイ、22・・・上ダイ、24・・・液溜め部、26・・・液通路、28・・・吐出口、30・・・供給口、32・・・位置決め突部、34・・・供給管、36・・・刃先、38・・・刃先、40・・・シム、42・・・後片、44・・・左片、46・・・右片、48・・・シム突片、50・・・位置調整部材、52・・・設置基板、54・・・凹部、56・・・第1押さえ部材、58・・・第2押さえ部材、60・・・ボルト、66・・・押さえ片、68・・・調整板