(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-20
(45)【発行日】2023-09-28
(54)【発明の名称】サイクロトロン
(51)【国際特許分類】
H05H 13/00 20060101AFI20230921BHJP
H05H 7/10 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
H05H13/00
H05H7/10
(21)【出願番号】P 2019155843
(22)【出願日】2019-08-28
【審査請求日】2022-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【氏名又は名称】柳 康樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【氏名又は名称】近藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】森江 孝明
(72)【発明者】
【氏名】樋口 晃人
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-270199(JP,A)
【文献】国際公開第2013/098089(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 13/00-13/02
H05H 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子を周回軌道で加速して荷電粒子線を出射するサイクロトロンであって、
前記荷電粒子を加速するために必要な磁場を発生させる磁極と、
前記周回軌道の外周部に配置され前記荷電粒子線を引出軌道に誘導すると共に前記荷電粒子線を集束するマグネティックチャンネルを有するマグネティックチャンネル部と、を備え、
前記マグネティックチャンネル部は、前記磁極に対して取り付けられ
、
前記マグネティックチャンネル部は、
前記磁極の径方向において前記磁極に対する前記マグネティックチャンネルの相対位置を位置決めする径方向位置決め部と、
前記磁極の周方向において前記磁極に対する前記マグネティックチャンネルの相対位置を位置決めする周方向位置決め部と、を有し、
前記マグネティックチャンネル部は、前記磁極の外周側面に対して取り付けられるプレートを更に備え、
前記マグネティックチャンネルが前記プレートの上面に配置される、サイクロトロン。
【請求項2】
前記マグネティックチャンネル部は、前記磁極に対する前記マグネティックチャンネルの相対位置を調整可能である、請求項1に記載のサイクロトロン。
【請求項3】
前記周回軌道の最外周部に対応する位置に配置される第一のマグネティックチャンネルと、
前記周回軌道において、前記第一のマグネティックチャンネルから下流側へ離間して配置される第二のマグネティックチャンネルと、
前記第一のマグネティックチャンネルに対し、前記磁極の中心位置を基準として対称の位置に配置される第一のカウンタマグネティックチャンネルと、
前記第二のマグネティックチャンネルに対し、前記磁極の中心位置を基準として対称の位置に配置される第二のカウンタマグネティックチャンネルと、を備え、
前記マグネティックチャンネル部は、
前記第一のマグネティックチャンネル、前記第二のマグネティックチャンネル、前記第一のカウンタマグネティックチャンネル、又は前記第二のカウンタマグネティックチャンネルを前記マグネティックチャンネルとして有する、請求項1又は2に記載のサイクロトロン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はサイクロトロンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、下記特許文献1に記載のサイクロトロンが知られている。このサイクロトロンは、荷電粒子線を集束すると共に引出軌道に移行させるためのマグネティックチャンネルを備えている。荷電粒子の加速空間の外側にマグネティックチャンネルの位置調整機構が設けられており、位置調整機構は、例えば、真空容器の筐体で保持されている。位置調整機構は加速空間の外周側で径方向に延在しており、位置調整機構の内周側の端部にマグネティックチャンネルが取り付けられている。すなわち、マグネティックチャンネルは、位置調整機構を介して、例えば真空容器の筐体で保持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この種のマグネティックチャンネルは、所定の磁気勾配を高精度で発生させるために、その設置位置を高精度に位置決めする必要がある。本発明は、マグネティックチャンネルの位置精度を高めるサイクロトロンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のサイクロトロンは、荷電粒子を周回軌道で加速して荷電粒子線を出射するサイクロトロンであって、荷電粒子を加速するために必要な磁場を発生させる磁極と、周回軌道の外周部に配置され荷電粒子線を引出軌道に誘導すると共に荷電粒子線を集束するマグネティックチャンネルを有するマグネティックチャンネル部と、を備え、マグネティックチャンネル部は、磁極に対して取り付けられる。当該磁極に対するマグネティックチャンネルの相対位置を調整可能であってもよい。
マグネティックチャンネル部は、磁極の外周側面に対して取り付けられるプレートを更に備え、マグネティックチャンネルがプレートの上面に配置される、こととしてもよい。
本発明のサイクロトロンは、周回軌道の最外周部に対応する位置に配置される第一のマグネティックチャンネルと、周回軌道において、第一のマグネティックチャンネルから下流側へ離間して配置される第二のマグネティックチャンネルと、第一のマグネティックチャンネルに対し、磁極の中心位置を基準として対称の位置に配置される第一のカウンタマグネティックチャンネルと、第二のマグネティックチャンネルに対し、磁極の中心位置を基準として対称の位置に配置される第二のカウンタマグネティックチャンネルと、を備え、マグネティックチャンネル部は、第一のマグネティックチャンネル、第二のマグネティックチャンネル、第一のカウンタマグネティックチャンネル、又は第二のカウンタマグネティックチャンネルをマグネティックチャンネルとして有する、こととしてもよい。
【0006】
マグネティックチャンネル部は、磁極の径方向において磁極に対するマグネティックチャンネルの相対位置を位置決めする径方向位置決め部と、磁極の周方向において磁極に対するマグネティックチャンネルの相対位置を位置決めする周方向位置決め部と、を有することとしてもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、マグネティックチャンネルの位置精度を高めるサイクロトロンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係るサイクロトロンの内部の平面図である。
【
図2】
図1のサイクロトロンが備える一対の磁極の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ本発明に係るマグネティックチャンネル、及びサイクロトロンの実施形態について詳細に説明する。本実施形態のサイクロトロン1では、荷電粒子の螺旋状の周回軌道Bが水平面上にあるものとする。なお、本発明のサイクロトロンは、周回軌道Bが鉛直面上にあるように配置してもよい。
【0010】
図1に示されるように、サイクロトロン1は、真空容器3、ディ電極5A,5B、静電デフレクタ90、及びマグネティックチャンネル9を有する。真空容器3は、荷電粒子の加速空間を高真空状態に保持するための容器である。真空容器3内には、粒子加速に必要な磁場を形成するための一対の磁極21,23が設けられている。磁極21,23は、平面視で円形をなし、加速平面であるメディアンプレーンに対して上下面対称の形状を成している。また、磁極21,23は、荷電粒子の周回軌道Bを挟んで、上下方向(
図1の紙面に直交する方向)に対面して配置されている。磁極21,23のそれぞれの周囲にコイルが配置され、磁極21と磁極23との間に磁場が発生される。
【0011】
図2は、磁極21,23のみを模式的に示す斜視図である。図に示されるように、磁極21,23は円柱状をなしている。以下で用いる「径方向」及び「周方向」との文言は、
図1の方向から見た磁極21,23の輪郭形状である円の径方向及び周方向を意味するものとする。磁極21の上面には、螺旋状に湾曲した4つの凸部21aと、4つの凹部21bとが、周方向に交互に配列され形成されている。そして、磁極23の下面にも、螺旋状に湾曲した4つの凸部23aと、4つの凹部23bとが、周方向に交互に配列され形成されている。凸部21aと凸部23a、凹部21bと凹部23bは、互いにメディアンプレーンに対して面対称をなすようにギャップをあけて配置されている。
【0012】
なお、ここで磁極21,23の凸部21a,23aとは、メディアンプレーンに向けて突出している部分であり、凹部21b,23bとは、メディアンプレーンから離れるように凹んでいる部分である。また、メディアンプレーンとは、荷電粒子ビームが加速して進行する周回軌道Bが位置する平面である。厳密には、荷電粒子ビームは、磁極21,23が対向する方向(
図2における上下方向)に振動しながら進行するので、振動する荷電粒子ビームの、磁極21,23が対向する方向の位置のおよそ中央値を取った平面がメディアンプレーンとなる。なお、凸部21a,23a及び凹部21b,23bの形状は、上記のような螺旋状に湾曲した形状に限られず、扇形であってもよい。
【0013】
磁極21と磁極23との間には、凸部21aと凸部23aとで挟まれた狭いギャップのヒル領域25hと、凹部21bと凹部23bとで挟まれた広いギャップのバレー領域25vとが形成されている。磁極21,23との対称面上に、荷電粒子の螺旋状の周回軌道Bが形成される。
【0014】
ディ電極5A,5Bは、真空容器3の内部で荷電粒子を加速するための電場を発生させる電極である。ディ電極5A,5Bは、両方ともバレー領域25vに配置され、互いに径方向に対向するように配置されている。ディ電極5A,5Bは、平面視でバレー領域25vの形状に沿った形状に形成されている。磁極21の中心部には、サイクロトロン1の外部又は内部に設けられたイオン源(図示せず)から送られてきた荷電粒子を偏向して、メディアンプレーン上に送るインフレクタ11が配置される。ただし、内部イオン源の場合、メディアンプレーン上に荷電粒子が出るため、インフレクタ11は設けられない。
【0015】
静電デフレクタ90は、磁場中で周回軌道Bを周回する荷電粒子を偏向させて、引出軌道Fに引き出す機能を有する。マグネティックチャンネル9としては、マグネティックチャンネル9A,9B、及びカウンタマグネティックチャンネル9C,9Dの4つが設けられている。
【0016】
マグネティックチャンネル9A,9Bは、所定の磁場勾配によって荷電粒子線を水平方向に集束する機能と、平均磁場自体を弱めて荷電粒子線を引出軌道Fに誘導し移行させる機能と、の両方の機能を有している。なお、マグネティックチャンネル9A,9Bが、荷電粒子線を集束する方向としての上記「水平方向」とは、ほぼ径方向であり、より厳密には、荷電粒子線の進行方向に直交する方向であって、且つ磁極21,23の対向方向に直交する方向である。マグネティックチャンネル9Aは、平面視で、周回軌道Bの最外周部に対応する位置に配置されている。マグネティックチャンネル9Bは、荷電粒子の周回軌道Bにおいて、マグネティックチャンネル9Aから下流側へ離間して設けられている。マグネティックチャンネル9Bは、平面視において磁極21,23の外側に位置している。
【0017】
カウンタマグネティックチャンネル9Cは、マグネティックチャンネル9Aに対し、磁極21の中心位置(例えばインフレクタ11の位置)を基準として略対称の位置に配置されている。同様に、カウンタマグネティックチャンネル9Dは、マグネティックチャンネル9Bに対し、磁極21の中心位置を基準として略対称の位置に配置されている。マグネティックチャンネル9A,9Bに対して上記のようにカウンタマグネティックチャンネル9C,9Dが設けられることにより、周回軌道Bの磁場の二回対称性が保たれる。
【0018】
サイクロトロン1では、磁極21と磁極23との間に磁場を発生させると共に、ディ電極5A,5Bに高周波電圧が付与されることで、荷電粒子が、加速されつつ、メディアンプレーン上の螺旋状の周回軌道Bを進行する。磁極21,23の外周部の位置に達した荷電粒子は、静電デフレクタ90で周回軌道から分けられ、更にマグネティックチャンネル9A,9Bの導入ギャップを通過して偏向と集束を繰り返し、ビーム引出ダクトを通じて外部に引き出され出射される。
【0019】
続いて、マグネティックチャンネル9A,9B及びカウンタマグネティックチャンネル9C,9Dの構成について説明する。なお、これら4つのマグネティックチャンネル9の構成は互いに同様であるので、以下では、マグネティックチャンネル9Bについて説明し重複説明を省略する。
【0020】
図3は、マグネティックチャンネル9Bの要部を示す斜視図である。
図3に示すように、マグネティックチャンネル9Bは、湾曲した内周側磁性部材40と、内周側磁性部材40よりも外周側に位置し内周側磁性部材40と同様に湾曲した外周側磁性部材50と、を備える。外周側磁性部材50は、上下方向に並んだ2本の磁性部材50a,50bで構成される。上記の内周側磁性部材40と外周側磁性部材50との間に形成される湾曲した隙間Gが、荷電粒子線の通過路である。このような内周側磁性部材40及び外周側磁性部材50によれば、隙間Gを通過する荷電粒子線を径方向に収束させる収束タイプ(Radial forcusing type)のマグネティックチャンネルが構成される。内周側磁性部材40及び外周側磁性部材50は、例えば、純鉄、コバルト鉄などの磁性材料によって構成される。なお、実際には、マグネティックチャンネル9Bには、内周側磁性部材40及び外周側磁性部材50を支持する支持構造体やこれらを冷却するための冷却媒体流路等が含まれるが、これらの図示及び説明は省略する。
【0021】
マグネティックチャンネル9A,9B及びカウンタマグネティックチャンネル9C,9Dは、磁極21,23によるメイン磁場を受けて所定の磁気勾配を高精度で発生させる必要がある。従って、マグネティックチャンネル9A,9B及びカウンタマグネティックチャンネル9C,9Dの磁極21,23に対する相対位置を高精度(例えば、誤差0.1mm以内)に位置決めすることが要求される。そこで、サイクロトロン1においては、マグネティックチャンネル9A,9B及びカウンタマグネティックチャンネル9C,9Dのうちの少なくとも1つにおいて、磁極21,23に対する相対位置を高精度に位置決めするための設置構造が採用される。本実施形態においては、マグネティックチャンネル9B及びカウンタマグネティックチャンネル9Dの2つについて、上記設置構造が採用されているものとする。
【0022】
以下、マグネティックチャンネル9B及びカウンタマグネティックチャンネル9Dに採用されている上記の設置構造について説明する。なお、両者の設置構造は互いに同様であるので、以下では、マグネティックチャンネル9Bについて設置構造を説明し重複説明を省略する。
図4は、マグネティックチャンネル9Bが配置された、磁極21の外周側の端部を示す平面図である。
図4においては、マグネティックチャンネル9Bについて、詳細な部位の描写を省略し、主に輪郭のみを図示している。
【0023】
サイクロトロン1においては、マグネティックチャンネル9Bを含むマグネティックチャンネル部61が、磁極21に取り付けられ支持されている。具体的には、
図4に示すように、円柱面をなす磁極21の外周側面22に、マグネティックチャンネル部61が取り付けられている。マグネティックチャンネル部61は、外周側面22に取り付けられたSUSプレート63と、SUSプレート63の上面に設置されたマグネティックチャンネル9Bと、を備えている。
【0024】
また、マグネティックチャンネル部61は、磁極21に対するマグネティックチャンネル9Bの位置決め及び位置調整をするため、次のような機構を備えている。以下の説明では、平面視において磁極21の中心位置を原点とするRθ極座標系を想定し、径方向を「R方向」、周方向を「θ方向」とする。
【0025】
SUSプレート63の上面には、θ位置決め部材65(周方向位置決め部)が磁極21側に突出するように取り付けられている。このθ位置決め部材65が磁極21の外周部の所定の位置(例えば、磁極21のセクター側面)に密着するようにして、磁極21に対する相対的なSUSプレート63のθ位置が精度良く位置決めされる。また、マグネティックチャンネル9BとSUSプレート63とを上下方向(
図4の紙面に直交する方向)に共に貫通するピン67が設けられている。このピン67が、θ方向において精度良くマグネティックチャンネル9BとSUSプレート63とに嵌め合わされる。これにより、SUSプレート63に対する相対的なマグネティックチャンネル9Bのθ位置が精度良く位置決めされる。以上により、磁極21に対する相対的なマグネティックチャンネル9Bのθ位置が精度良く位置決めされる。
【0026】
SUSプレート63に形成されたピン67の貫通孔はR方向に延びる長孔63aであり、SUSプレート63に対するマグネティックチャンネル9Bの相対的なR位置は、ピン67によっては拘束されていない。SUSプレート63の上面にはガイド69が固定されており、ガイド69には略R方向に延びるネジ71が螺合されており、ネジ71の先端がピン67の側面に当接している。ネジ71を回すと、ピン67は、ネジ71の先端に追従すると共に長孔63aにガイドされて、マグネティックチャンネル9B全体と一緒にR方向に移動する。このような機構によって、マグネティックチャンネル9BをR方向のみに細かく移動させることができる。
【0027】
更に、磁極21に対する相対的なマグネティックチャンネル9BのR方向の位置決めを行うため、マグネティックチャンネル9Bには、2箇所にR位置決め部73,75(径方向位置決め部)が設けられている。R位置決め部73,75はθ方向に並んでおり、R位置決め部73,75の間には、前述のピン67が存在している。R位置決め部73は、マグネティックチャンネル9Bから磁極21側に向けてR方向に突き出した棒材77を備えている。棒材77の先端は、磁極21の外周側面22に突き当てられる。棒材77に係合するナット79を回すことで、棒材77の突き出し量を調整することができる。なお、ナット81を締め付けることで、棒材77の突き出し量を固定することができる。R位置決め部75も、R位置決め部73と同様の上記の構成を備えている。以上のように、R位置決め部73,75において棒材77の突き出し量が調整され、各棒材77の先端が磁極21の外周側面22に突き当てられることで、磁極21に対する相対的なマグネティックチャンネル9BのR位置が精度良く位置決めされる。
【0028】
また、R位置決め部73,75における各棒材77の突き出し量がそれぞれ個別に調整可能であるので、例えばピン67の位置を中心としたマグネティックチャンネル9BのRθ平面内の回転方向の位置についても、高精度の位置決め及び位置調整が可能である。
【0029】
続いて、サイクロトロン1による作用効果について説明する。前述の特許文献1にあるように、仮に、加速空間の外側に設けられた位置調整機構を介してマグネティックチャンネルが保持される方式を採用した場合には、例えば位置調整機構の各部位の位置誤差が蓄積することで、磁極に対する相対的なマグネティックチャンネルの位置精度が十分に得られないと考えられる。これに対し、サイクロトロン1では、マグネティックチャンネル部61が、磁極21に対して取り付けられるので、磁極21に対するマグネティックチャンネル9Bの相対位置(R位置、θ位置)を、直接的に位置決めすることができ、その結果、高精度で位置決めすることができる。
【0030】
また、仮にマグネティックチャンネル9Bが真空容器3の筐体に保持される場合を考える。前述のとおり、荷電粒子の加速空間を高真空状態にするために、真空容器3内は真空引きされる。そうすると、真空引きによって真空容器3の筐体には歪みが発生し、筐体に保持されるマグネティックチャンネル9Bの位置精度にも影響する。これに対し、サイクロトロン1では、マグネティックチャンネル部61が、磁極21に対して取り付けられる。そして、磁極21は、真空容器3の筐体に比較して極めて剛性が高く、真空引きに起因する歪み等は極めて小さい。従って、サイクロトロン1の使用時においても、マグネティックチャンネル9Bの高い位置精度を維持することができる。
【0031】
本発明は、上述した実施形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した様々な形態で実施することができる。また、上述した実施形態に記載されている技術的事項を利用して、変形例を構成することも可能である。各実施形態の構成を適宜組み合わせて使用してもよい。例えば、マグネティックチャンネル部61が、磁極21ではなく磁極23に取り付けられてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1…サイクロトロン、9A,9B…マグネティックチャンネル、9C,9D…カウンタマグネティックチャンネル、21,23…磁極、61…マグネティックチャンネル部、65…θ位置決め部材(周方向位置決め部)、67…ピン(周方向位置決め部)、73,75…R位置決め部(径方向位置決め部)、B…周回軌道、F…引出軌道。