(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-20
(45)【発行日】2023-09-28
(54)【発明の名称】電動車両の電源システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20230921BHJP
B60L 58/20 20190101ALI20230921BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20230921BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20230921BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20230921BHJP
B60L 1/00 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
H02J7/00 B
B60L58/20
B60L50/16
H02J7/00 P
H02J7/00 X
H02J7/00 303C
H01M10/48 P
H01M10/44 Q
B60L1/00 L
(21)【出願番号】P 2019169522
(22)【出願日】2019-09-18
【審査請求日】2022-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大介
(72)【発明者】
【氏名】加藤 拓馬
【審査官】右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-034288(JP,A)
【文献】特開2016-028543(JP,A)
【文献】特開2000-021455(JP,A)
【文献】特開2018-111456(JP,A)
【文献】特開2014-180080(JP,A)
【文献】特開2009-241633(JP,A)
【文献】特開2004-072927(JP,A)
【文献】特開2000-125415(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
B60L 58/20
B60L 50/16
H01M 10/48
H01M 10/44
B60L 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行モータと内燃機関とを有する電動車両に搭載される電動車両の電源システムであって、
前記内燃機関を再始動しかつ走行エネルギーの一部を電力に変換可能な再始動モータに電力を供給する第1バッテリと、
前記走行モータに電力を供給する第2バッテリと、
前記再始動モータと前記第1バッテリとを接続する第1電源ラインと、
前記第2バッテリの電力が伝送される第2電源ラインと、
前
記第1電源ラインと前
記第2電源ラインとを
接続又は切断可能なスイッチと、
前記内燃機関及び前記再始動モータが停止している前記走行モータの駆動による走行中に、
前記スイッチを切断することにより前記第1電源ラインに前記第1バッテリの充電電流及び放電電流が流れない状態にした後、前記第1バッテリの内部抵抗を計測する制御部と、
を備え、
前記制御部は、計測された
前記内部抵抗に基づいて前記第1バッテリの充電率を制御する、
電動車両の電源システム。
【請求項2】
走行モータと内燃機関とを有する電動車両に搭載される電動車両の電源システムであって、
前記内燃機関を始動するスタータモータと、前記内燃機関を再始動しかつ走行エネルギーの一部を電力に変換可能な再始動モータとに電力を供給する第1バッテリと、
前記走行モータに電力を供給する第2バッテリと、
前記スタータモータと前記再始動モータと前記第1バッテリとを接続する第1電源ラインと、
前記第2バッテリの電力が伝送される第2電源ラインと、
前記第1電源ラインと、前記第2電源ラインとを接続又は切断可能なスイッチと、
前記内燃機関、前記スタータモータ及び前記再始動モータが停止している前記走行モータの駆動による走行中に、前記スイッチを切断することにより前記第1電源ラインに前記第1バッテリの充電電流及び放電電流が流れない状態にした後、前記第1バッテリの内部抵抗を計測する制御部と、
を備え、
前記制御部は、計測された前記内部抵抗に基づいて前記第1バッテリの充電率を制御する、
電動車両の電源システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1バッテリの充電率が第1閾値以上の場合に、前記内部抵抗の計測を実行し、前記第1バッテリの充電率が前記第1閾値未満の場合に、前記内部抵抗の計測を行わないことを特徴とする請求項1
又は2記載の電動車両の電源システム。
【請求項4】
前記第1閾値は、
計測された前記内部抵抗が大きいほど高くなり、前記内燃機関の再始動が可能か否かを判定する閾値であることを特徴とする請求項
3記載の電動車両の電源システム。
【請求項5】
前記制御部は、
前記第1バッテリの充電率が前記第1閾値未満の場合に、前記第2バッテリの電力並びに回生制動による前記
再始動モータの電力を用いた前記第1バッテリへの充電を許可する一方、
前記第1バッテリの充電率が前記第1閾値以上の場合に、前記第2バッテリの電力を用いた前記第1バッテリへの充電を禁止し、かつ、回生制動による前記
再始動モータの電力を用いた
前記第1バッテリへの充電を許可することを特徴とする請求項
3又は請求項
4に記載の電動車両の電源システム。
【請求項6】
前記制御部には、前記スイッチが切断されたときに前記第2電源ラインから電力が供給されることを特徴とする請求項1から請求項
5のいずれか一項に記載の電動車両の電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1バッテリと第2バッテリとを有する電動車両の電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃費の向上を図る技術としてアイドリングストップ機能、回生制動機能などがある。回生制動機能により車両の制動時に回生電力をバッテリに溜め、アイドリングストップ機能により車両の停止時にアイドリング運転を停止することで燃費の向上を図れる。
【0003】
特許文献1には、バッテリの電圧の挙動に基づいてアイドリングストップの可否判定を行う技術が示されている。特許文献2には、電動車両の動作時にバッテリの内部抵抗を計測し、内部抵抗に基づいてバッテリの放電と充電とを交互に行うことで、内部抵抗の増大を抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-270496号公報
【文献】特開2017-123748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両に備わる様々な機能の中には、バッテリの充電率が低いと実施できないものがある。例えばアイドリングストップ機能は、その後にエンジンを再始動させるために、バッテリの出力可能電力が所定値以上である必要がある。一方、バッテリの充電率が高く、充電可能電力が小さくなると、任意の制動タイミングにおいて、回生電力をバッテリに送れなくなるという課題が生じる。したがって、回生制動の観点からは、バッテリの充電率は高くない方が好ましい。
【0006】
バッテリの出力可能電力を正確に制御できれば、バッテリの充電量を必要とする機能と、バッテリの充電率を低くしたい機能との両立を図ることができる。しかしながら、バッテリの使用中にはバッテリの内部抵抗を正確に計測することは難しく、正確な内部抵抗を取得できないと出力可能電力の正確な制御は難しい。
【0007】
本発明は、バッテリの充電量を必要とする機能と、バッテリの充電率を低くしたい機能との両立を図って、燃費の向上を図ることのできる電動車両の電源システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様の電動車両の電源システムは、
走行モータと内燃機関とを有する電動車両に搭載される電動車両の電源システムであって、
前記内燃機関を再始動しかつ走行エネルギーの一部を電力に変換可能な再始動モータに電力を供給する第1バッテリと、
前記走行モータに電力を供給する第2バッテリと、
前記再始動モータと前記第1バッテリとを接続する第1電源ラインと、
前記第2バッテリの電力が伝送される第2電源ラインと、
前記第1電源ラインと前記第2電源ラインとを接続又は切断可能なスイッチと、
前記内燃機関及び前記再始動モータが停止している前記走行モータの駆動による走行中に、前記スイッチを切断することにより前記第1電源ラインに前記第1バッテリの充電電流及び放電電流が流れない状態にした後、前記第1バッテリの内部抵抗を計測する制御部と、
を備え、
前記制御部は、計測された前記内部抵抗に基づいて前記第1バッテリの充電率を制御する。
【0009】
本発明のもう一つの態様の電動車両の電源システムは、
走行モータと内燃機関とを有する電動車両に搭載される電動車両の電源システムであって、
前記内燃機関を始動するスタータモータと、前記内燃機関を再始動しかつ走行エネルギーの一部を電力に変換可能な再始動モータとに電力を供給する第1バッテリと、
前記走行モータに電力を供給する第2バッテリと、
前記スタータモータと前記再始動モータと前記第1バッテリとを接続する第1電源ラインと、
前記第2バッテリの電力が伝送される第2電源ラインと、
前記第1電源ラインと、前記第2電源ラインとを接続又は切断可能なスイッチと、
前記内燃機関、前記スタータモータ及び前記再始動モータが停止している前記走行モータの駆動による走行中に、前記スイッチを切断することにより前記第1電源ラインに前記第1バッテリの充電電流及び放電電流が流れない状態にした後、前記第1バッテリの内部抵抗を計測する制御部と、
を備え、
前記制御部は、計測された前記内部抵抗に基づいて前記第1バッテリの充電率を制御する。
【発明の効果】
【0013】
第1機器の電力を供給する第1バッテリと、走行エネルギーの一部を電力に変換可能な回生部を有する電動車両では、第1バッテリには、第1機器に電力を出力可能な充電率が担保されつつ、回生部からの電力を充電可能な充電率の余剰が残されていると好ましい。そこで、本発明によれば、制御部が、走行モータの駆動による走行中に、第1電源ラインと第2電源ラインとをスイッチにより切断して、第1バッテリの内部抵抗を計測する。スイッチが切断されることで、第1バッテリの充放電を無くすことができるので、この間に、第1バッテリの内部抵抗を正確に計測することができる。さらに、制御部は、計測された内部抵抗に基づいて第1バッテリの充電率を制御するので、正確な内部抵抗に基づき、第1バッテリの充電率を適正な範囲に制御できる。このような制御により、第1バッテリの充電量を必要とする第1機器の機能と、第1バッテリの充電率が低い方が好ましい回生部との両立を図って、燃費の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態の電動車両及び電源システムを示すブロック図である。
【
図2】制御部が実行する充電率制御処理を示すフローチャートである。
【
図3】内部抵抗と目標充電率との関係の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態の電動車両1及び電源システムを示すブロック図である。実施形態の電動車両1は、内燃機関であるエンジン14と、エンジン14を始動するスタータモータ23と、エンジン14の再始動と発電とを行うISG(integrated starter generator)22と、主にエンジン14の始動と再始動の電力を供給する第1バッテリ21と、第1バッテリ21の状態を計測する計測部24と、駆動輪2の動力を発生する走行モータ11と、走行モータ11に電力を供給する第2バッテリ26と、第2バッテリ26と走行モータ11との間で電力を変換するインバータ12と、走行モータ11用の第2バッテリ26の電圧を他の機器用の電圧に変換するDC/DCコンバータ27と、電動車両1の制御を行う制御部28と、第1バッテリ21が接続される第1電源ラインL1と、DC/DCコンバータ27が接続されて第2バッテリ26の電力が伝送される第2電源ラインL2と、第1電源ラインL1と第2電源ラインL2とを切断可能なスイッチSW1とを備える。
【0016】
上記の構成要素のうち、第1バッテリ21、ISG22、計測部24、第2バッテリ26、DC/DCコンバータ27、制御部28、第1電源ラインL1、第2電源ラインL2及びスイッチSW1が、本発明に係る電動車両の電源システムの一例に相当する。回生運転されるISGが、本発明に係る回生部の一例に相当し、エンジン14を再始動するISGが、本発明に係る第1機器及び再始動モータの一例に相当する。
【0017】
電動車両1は、エンジン14と走行モータ11とを有するHEV(Hybrid Electric Vehicle)である。電動車両1は、エンジン14の動力を駆動輪2に出力可能なパラレル方式又はスプリット方式のHEVであってもよいし、エンジン14の動力が発電のために行われるシリーズ方式のHEVであってもよい。
【0018】
ISG22は、力行運転と回生運転とが可能であり、エンジン14の停止中に力行運転されることでエンジン14を再始動し、エンジン14の駆動中に回生運転されることで走行エネルギーの一部を電力に変換して発電を行う。また、ISG22は、電動車両1の制動時に、回生運転されることで、電動車両1の車輪に回生制動トルクを発生させる。
【0019】
第1バッテリ21は、例えば鉛蓄電池、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素二次電池などであり、例えば12V系の電源電圧を供給する。第1バッテリ21は、第1電源ラインL1に接続され、主に、スタータモータ23及びISG22に電力を供給する。第1バッテリ21は、第2電源ラインL2とスイッチSW1を介して接続され、第2バッテリ26の電力が不足している場合に、制御部28へ電力を供給できる。
【0020】
計測部24は、第1バッテリ21の内部抵抗を計測する機器を含む。内部抵抗を計測する機器は、例えばパルス放電を行わせる手段と、パルス放電のときの電圧降下を計測する手段とを含む。計測部24は、その他、第1バッテリ21の電圧、電流及び充電率の計測を行う。計測部24は、各計測値を制御部28へ送る。
【0021】
第1電源ラインL1には、ISG22、第1バッテリ21及びスタータモータ23が接続されている。
【0022】
第2バッテリ26は、例えばリチウムイオン二次電池、又はニッケル水素二次電池などであり、走行モータ11にインバータ12を介して走行用の電圧を供給する。
【0023】
インバータ12及び走行モータ11は、力行運転時に第2バッテリ26の電力を受けて駆動輪2の動力を発生する。
【0024】
DC/DCコンバータ27は、第2バッテリ26の電圧と、第2電源ラインL2の低い電源電圧(例えば12V系)とを変換する。
【0025】
第2電源ラインL2には、DC/DCコンバータ27と制御部28とが接続されている。制御部28と第2電源ラインL2との間には、12V系の電源電圧を、制御系の電源電圧に降圧するレギュレータ回路が設けられていてもよい。
【0026】
スイッチSW1は、第1電源ラインL1と第2電源ラインL2との接続又は切断する。スイッチSW1は、オフの際にも第1電源ラインL1から第2電源ラインL2へ電流を供給できるダイオードD1が付加されていてもよい。スイッチSW1は、制御部28によって切り替えられる。
【0027】
制御部28は、電動車両1の制御を行う。制御部28、1つのECU(Electronic Control Unit)から構成されてもよいし、互いに通信を行って連携して動作する複数のECUから構成されてもよい。ECUのCPU(Central Processing Unit)が制御プログラムを実行することで、制御部28により各種の制御処理が実行される。例えば、制御部28は、アクセルペダルの操作に応じて走行モータ11の力行運転とエンジン14の駆動制御とを行って駆動輪2に駆動力を発生させる走行制御と、ブレーキペダルの操作に応じてISG22の回生運転と油圧ブレーキの制御とを行って電動車両1に制動力を発生させる制動制御と、を実行する。さらに、制御部28は、電動車両1の停止の際にエンジン14のアイドリング運転を停止するアイドリングストップ制御と、アイドリングストップ後の停止終了時にエンジン14を再始動する再始動制御とを行う。制御部28は、さらに、第1バッテリ21の充電率を制御する充電率制御を行う。各制御を実現する制御プログラムは、制御部28の記憶部に格納されている。
【0028】
上記制動制御において、制御部は、第1バッテリ21の充電可能電力に余裕があれば、回生制動の割合を多くする一方、第1バッテリ21の充電可能電力に余裕がなければ、油圧ブレーキによる制動力の割合を多くする。
【0029】
上記アイドリングストップ制御では、制御部28は、第1バッテリ21の充電率と第1閾値とを比較し、充電率が第1閾値以上であれば、エンジン14の再始動が可能と判定して、エンジン14のアイドリング運転を停止する。一方、制御部28は、充電率が第1閾値未満であれば、エンジン14の再始動が不可と判定して、アイドリング運転の停止を行わない。第1閾値は、エンジン14の再始動に必要な最小の充電率にマージンを加えた値に設定される。第1閾値は、第1バッテリ21の内部抵抗に応じて変化する。
【0030】
上記充電率制御は、第1バッテリ21の充電率の適正化を図る制御である。充電率の適正化とは、アイドリングストップ時においてエンジン14の再始動が可能な充電率を担保しつつ、任意の制動タイミングにおける回生制動が制限されないように、充電率を低く抑えることを意味する。充電率制御において、制御部28は、走行中に第1バッテリ21の内部抵抗を正確に計測し、計測結果に応じてエンジン14の再始動が可能な正確な充電率を決定し、これに基づき充電率の適正化を図る。続いて、充電率制御について詳細に説明する。
【0031】
<充電率制御処理>
図2は、制御部28が実行する充電率制御処理を示すフローチャートである。
図3は、内部抵抗と目標充電率との関係の一例を示すグラフである。
【0032】
充電率制御処理は、電動車両1のシステム起動後に開始され、電動車両1のシステム動作中に継続して実行される。充電率制御処理が開始されると、制御部28は、先ず、初期化処理を行う(ステップS1)。初期化処理では、制御部28は、起動時の第1バッテリ21の内部抵抗を読み込み、内部抵抗に基づきエンジン14の再始動を可能とする充電率の第1閾値をデータテーブルから求め、制御パラメータとして保持する。起動時における第1バッテリ21の内部抵抗は、起動前に計測されて記憶部に記憶されている最新の値としてもよいし、起動時に制御部28が計測部24を動作させて得られた最新の値としてもよい。ここで、計測部24は、例えばパルス放電を行わせて、第1バッテリ21の内部抵抗を計測する。
【0033】
図3に示すように、第1バッテリ21の内部抵抗が変化すると、エンジン14の再始動を担保できる第1バッテリ21の目標充電率は変化する。内部抵抗が小さいと、第1バッテリ21内での電圧降下が小さくなるため、エンジン14の再始動を可能とする目標充電率は低くなる。一方、内部抵抗が大きいと、第1バッテリ21内での電圧降下が大きくなるため、エンジン14の再始動を可能とする目標充電率は高くなる。制御部28の記憶部には、
図3のグラフに示すような第1バッテリ21の内部抵抗と目標充電率との関係を示すマップデータが格納されており、ステップS1において、制御部28は、第1バッテリ21の内部抵抗の値に応じた目標充電率を取得し、この値から第1閾値を決定する。
【0034】
次に、制御部28は、第1バッテリ21の充電率を算出し(ステップS2)、第1バッテリ21の充電率が適正範囲にあるか否かを判別する(ステップS3)。適正範囲とは、例えば第1閾値から第1閾値にヒステリシス分の変動幅αを加えた値までの範囲を意味する。
【0035】
ステップS3の判別の結果、第1バッテリ21の充電率が第1閾値未満であれば、制御部28は、充電率を上げるために、スイッチSW1が切断されていればスイッチSW1を接続する(ステップS4)。これにより、DC/DCコンバータ27からスイッチSW1を介して第1バッテリ21に充電が行われる。すなわち、ステップS4のスイッチSW1の切替えは、第2バッテリ26から第1バッテリ21への充電を許可することに相当する。また、制御部28は、エンジン14駆動中か判別し(ステップS5)、エンジン14駆動中であれば、ISG22に回生動作を行わせて、第1バッテリ21を充電させてもよい(ステップS6)。そして、所定期間の充電が行われたら、制御部28は、処理をステップS2に戻す。
【0036】
一方、ステップS3の判別の結果、第1バッテリ21の充電率が適正範囲であれば、制御部28は、スイッチSW1が接続されていればスイッチSW1を切断し(ステップS7)、処理をステップS2に戻す。スイッチSW1が切断されることで、DC/DCコンバータ27から第1バッテリ21への充電が停止され、第1バッテリ21の充電率が過大になることが抑制される。すなわち、ステップS7のスイッチSW1の切替えは、第2バッテリ26から第1バッテリ21への充電を禁止することに相当する。なお、ステップS2、S3、S7のループ処理中にも、並行して実行されている別の制御により、第1バッテリ21の放電又は充電が行われるので、第1バッテリ21の充電率は変化する。
【0037】
ステップS3の判別の結果、第1バッテリ21の充電率が適正範囲(第1閾値+α)を超過していれば、制御部28は、先ず、スイッチSW1が接続されていればスイッチSW1を切断する(ステップS8)。スイッチSW1が切断されることで、DC/DCコンバータ27から第1バッテリ21への充電を停止できる。すなわち、ステップS8のスイッチSW1の切替えは、第2バッテリ26から第1バッテリ21への充電を禁止することに相当する。
【0038】
次に、制御部28は、走行モータ11による走行中(エンジン14及びISG22が停止)か判別し(ステップS9)、NOであれば、ステップS2に処理を戻す。ここで、走行モータ11による走行中とは、走行モータ11を駆動する回路が動作中であることを示し、走行モータ11を用いた走行中に電動車両1が一時停止している期間も含まれるものとする。なお、ステップS9でNOと判別された場合には、制御部28が並行して実行している駆動制御処理に対して、モータ走行の要求を発行するようにしてもよい。
【0039】
一方、ステップS9でYESと判別されたら、ステップS8でスイッチSW1が切断され、かつ、エンジン14及びISG22が停止しているので、第1バッテリ21に電流(充電電流及び放電電流)は流れず、第1バッテリ21は静止状態が維持される。このとき制御部28は、DC/DCコンバータ27から電力が供給されて動作する。続いて、制御部28は、計測部24を動作させて、第1バッテリ21の内部抵抗を計測させる(ステップS10)。ステップS10で計測された内部抵抗は、第1バッテリ21が静止状態のときに計測された最新で正確な値となる。なお、制御部28は、より正確な内部抵抗を求めるために、第1バッテリ21の静止状態が設定時間継続するのを待機して、内部抵抗の計測を開始してもよい。
【0040】
ステップS10で内部抵抗が計測されたら、次に、制御部28は、エンジン14の再始動を担保する充電率の第1閾値を最新の内部抵抗に応じて更新する(ステップS11)。続いて、制御部28は、第1バッテリ21の充電率が、更新された第1閾値に基づく適正範囲を超えているか再度確認し(ステップS12)。その結果、超えていれば、第1バッテリ21の電力をISG22の力行運転(走行アシスト放電)又はその他の必要な電気機器への電力供給により使用して、充電率を低下させる(ステップS13)。そして、再び、ステップS2へ処理を戻す。なお、ステップS2、S3、S8~S13が繰り返される場合、ステップS10の計測処理が必要以上の頻度で行われないように、設定期間を開けてステップS10の計測処理が実行されるように構成されてもよい。
【0041】
電動車両1のシステム動作中、第1バッテリ21の充電率に応じて、ステップS2、S3~S6のループ処理、ステップS2、S3、S7のループ処理、ステップS2、S3、S8~S13のループ処理が、それぞれ繰り返され、第1バッテリ21の充電率が適正範囲に調整される。
【0042】
図4は、充電率制御処理の作用を説明する図である。
図4(A1)、(A2)は本実施形態の説明図、
図4(B1)、(B2)は比較例の説明図である。比較例は、第1バッテリ21の内部抵抗を表わす制御データに比較的に大きな誤差が含まれる場合の動作例を示す。
図4(A1)、(B1)は、走行中の状態を示し、
図4(A2)、(B2)は制動中の状態を示す。
図4では、第1バッテリ21の充電率を電力容器B内に蓄えられる液体に例えて説明する。
【0043】
図4(B1)の比較例に示すように、電動車両1のシステム動作中に第1バッテリ21の内部抵抗が計測されないと、その間に、内部抵抗が上昇している可能性がある。そのため、エンジン14の再始動性を担保するには、内部抵抗を大きめに見積もって充電率を制御する必要がある。したがって、比較例の場合には、エンジン14再始動を担保する第1バッテリ21の充電率の閾値Th1が高めに設定され、走行中、第1バッテリ21の充電率は閾値Th1の周辺に制御される。
【0044】
図4(B2)の比較例に示すように、充電率が閾値Th1の周辺まで上昇した状態で、ブレーキ操作により回生制動が何度も行われると、ISG22の回生制動の充電により第1バッテリ21の充電率が上がりすぎて(充電可能電力が小さくなって)、回生制動で制動力を担うことができなくなる。この場合、油圧ブレーキが使用されて必要な制動力が達成されることとなり、その分、燃費が低下する。
【0045】
一方、本実施形態では、
図4(A1)に示すように、電動車両1のシステム動作中、走行モータ11を用いた走行中に、第1バッテリ21の放電も充電もなされない期間が作られ、この期間に第1バッテリ21の内部抵抗が計測される。したがって、制御部28は、正確な内部抵抗を計測でき、正確な内部抵抗の値を用いて、エンジン14の再始動性を担保する充電率の第1閾値Th0を設定できる。よって、第1閾値Th0が比較例のように高めに設定されることがない。そして、走行中、第1バッテリ21の充電率は第1閾値Th0の周辺に制御される。
【0046】
図4(A2)に示すように、充電率が第1閾値Th0の周辺に調整された状態で、ブレーキ操作により回生制動が何度も行われると、ISG22の回生制動の充電のより第1バッテリ21の充電率が上昇する。しかし、回生制動前の第1バッテリ21の充電率が低めに設定されるので、その分、第1バッテリ21は回生制動による充電を比較例よりも多く吸収できる。したがって、油圧ブレーキが必要となる状況が低減され、燃費を向上できる。
【0047】
以上のように、本実施形態の電動車両1及びその電源システムにおいては、第1バッテリ21は、エンジン14の再始動が可能な充電率が担保されつつ、回生制動の電力を受けることのできる充電率の余剰が残されていると好ましい。そこで、本実施形態によれば、制御部28が、走行モータ11による電動車両1の走行中に、スイッチSW1を切断して、第1バッテリ21の充放電を無くし、この状態で、第1バッテリ21の内部抵抗を計測する。したがって、制御部28は、電動車両1の走行中でも、第1バッテリ21の正確な内部抵抗を取得できる。さらに、制御部28は、計測された内部抵抗を用いて、第1バッテリ21の充電率を適正な範囲に制御するので、エンジン14の再始動と、回生制動の電力の入力との両方を担保できる充電率が実現され、結果として、燃費の向上を図ることができる。
【0048】
さらに、本実施形態の電動車両1及びその電源システムによれば、制御部28は、第1バッテリ21の充電率が第1閾値以上の適正範囲であるかを比較する。そして、第1閾値以上の適正範囲を超えている場合に、第1バッテリ21の内部抵抗の計測を行い、第1閾値未満の場合に、第1バッテリ21の内部抵抗の計測を行わない。したがって、第1バッテリ21の充電が必要なときに、スイッチSW1が切断されて第1バッテリ21の充電が停止してしまうという不都合を避けることができる。そして、第1バッテリ21の充電率が高く、第1バッテリ21の放電が必要なときに、第1バッテリ21の内部抵抗の測定が行われることで、第1バッテリ21の放電量の適正化を図ることができる。
【0049】
さらに、本実施形態の電動車両1及びその電源システムによれば、第1閾値は、エンジン14の再始動を担保する閾値に設定されている。したがって、このような第1バッテリの充電率の制御により、アイドリングストップ機能が制限されることを抑制でき、その結果、燃費の向上を図ることができる。
【0050】
さらに、本実施形態の電動車両1及びその電源システムによれば、第1バッテリ21の充電率が第1閾値未満の場合には、制御部28は、第2バッテリ26から第1バッテリ21への充電と、回生制動によるISG22から第1バッテリ21への充電とを許容する。一方、制御部28は、第1バッテリ21の充電率が第1閾値を超える場合に、回生制動によるISG22から第1バッテリ21への充電は許容し、かつ、第2バッテリ26から第1バッテリ21への充電を禁止する(スイッチSW1を切断)。したがって、第1バッテリの充電率を低く抑えつつ、回生制動の際には、第1バッテリ21に充電を行って、燃費の向上を図ることができる。
【0051】
さらに、本実施形態の電動車両1及びその電源システムによれば、制御部28は、第2電源ラインL2から電力を受ける。スイッチSW1が切断されて、第1バッテリ21の内部抵抗を計測する際にも、制御部28への電力供給を継続できる。したがって、上記のような第1バッテリ21の充電率の制御を実現できる。
【0052】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限られない。例えば、上記実施形態では、第1バッテリの内部抵抗の計測方法として、パルス放電方式の方法を例にとって説明したが、例えばリップル電流を利用した計測方式など、様々な方式の計測方法を適用してもよい。また、上記実施形態では、第1バッテリの充電量を必要とする第1機器の機能として、ISG22によるエンジン14の再始動の機能を適用した例を示した。しかし、第1機器の機能としては、第1バッテリの充電量を必要とする機能であれば、様々な機能が適用されてもよい。また、上記実施形態では、第1バッテリの充電率を低くしたい機能として、ISGによる回生制動の機能を適用した例を示したが、ISG以外のモータによる回生制動であってもよい。あるいは、制動に限られず、例えばシリーズ方式のHEVにおいてエンジン14の駆動と発電との要求が任意なタイミングで生じる構成において、この発電機能が、第1バッテリの充電率を低くしたい機能として適用されてもよい。また、第2電源ラインに接続される電力供給装置としては、オルタネータが含まれてもよい。その他、実施形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 電動車両
2 駆動輪
11 走行モータ
12 インバータ
14 エンジン
21 第1バッテリ
22 ISG
23 スタータモータ
24 計測部
26 第2バッテリ
27 DC/DCコンバータ
28 制御部
L1 第1電源ライン
L2 第2電源ライン
SW1 スイッチ
Th0 第1閾値