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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-20
(45)【発行日】2023-09-28
(54)【発明の名称】過熱蒸気発生装置
(51)【国際特許分類】
   F22G 3/00 20060101AFI20230921BHJP
   F22B 1/28 20060101ALI20230921BHJP
   H05B 6/10 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
F22G3/00 Z
F22B1/28 Z
H05B6/10 311
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019185254
(22)【出願日】2019-10-08
(65)【公開番号】P2021060161
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】390008497
【氏名又は名称】日本電熱株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】依田 聡
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-035811(JP,A)
【文献】特開2009-156484(JP,A)
【文献】特開2002-022107(JP,A)
【文献】特開2011-080721(JP,A)
【文献】特開2002-043490(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 1/00-37/78
F22G 1/00-7/14
H05B 6/10,6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体もしくは気体の状態の水を加熱して過熱蒸気を発生させる過熱蒸気発生装置であって、
電磁誘導加熱を行う通電コイルと、
電磁誘導加熱により加熱される金属材料を用いて形成される第1管と、を備え、
前記第1管は、相対的に大きい内径の直線状に形成されると共に、外周には相対的に小さい内径の第2管が前記第1管の軸方向に沿ってコイル状に巻回されて構成されており、
前記第2管と前記第1管とが連通するように配設されており、前記通電コイルに所定周波数の交流電流を通電して前記第1管を加熱させた状態で、前記水を前記第2管から前記第1管の順に通流させて加熱することにより所定の過熱蒸気の状態にして前記第1管から送出させる構成であり、
前記第1管および前記第2管が内側に配置される筒状の絶縁・断熱体をさらに備え、
前記通電コイルは、金属材料を用いて中空の管状に形成されており、内部に前記水を通流させる配管を兼用する構成であると共に、前記絶縁・断熱体の外周において前記第1管の軸方向に沿って巻回されて構成されており、
前記通電コイルと前記第2管とが連通するように配設されており、前記水を前記通電コイルに通流させて前記絶縁・断熱体の外周からの放熱により加熱した状態にして前記第2管に流入させる構成であり、
前記通電コイルとして、前記第1管の径方向に対して二層となるように内層の第1コイルおよび外層の第2コイルが間に絶縁体を介在させて設けられており、
前記第2コイルと前記第1コイルとが連通し、前記第1コイルと前記第2管とが連通するように配設されており、前記水を前記第2コイルから前記第1コイルの順に通流させて前記絶縁・断熱体の外周からの放熱により加熱した状態にして前記第2管に流入させる構成であり、
前記第1コイルおよび前記第2コイルは、流入口および流出口の位置が軸方向において一致するように配設されると共に、周方向において同一方向に巻回されて構成されており、前記水を前記第1コイルおよび前記第2コイルの間で軸方向および周方向において同一方向に通流させる構成であり、
前記通電コイルおよび前記第1管は、流入口および流出口の位置が軸方向において一致するように構成されており、前記水を前記通電コイルおよび前記第1管の間で軸方向において同一方向に通流させる構成であること
を特徴とする過熱蒸気発生装置。
【請求項2】
前記第1管は、通流する前記水に乱流を生じさせる乱流発生機構を内部に有すること
を特徴とする請求項記載の過熱蒸気発生装置。
【請求項3】
前記第1管は、筐体内において、軸方向が水平に対して所定角度傾斜させて配置されていること
を特徴とする請求項1または請求項2記載の過熱蒸気発生装置。
【請求項4】
前記第2管は、電磁誘導加熱により加熱されない金属材料を用いて形成されていること
を特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の過熱蒸気発生装置。
【請求項5】
前記第1管は、前記第2管の内径に対して2~6倍の内径を有すること
を特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の過熱蒸気発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁誘導加熱により過熱蒸気を発生させる過熱蒸気発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
過熱蒸気は、水を沸騰させて発生した飽和蒸気をさらに加熱して得られる高温の蒸気である。過熱蒸気は、加熱、乾燥等の作用を有し、様々な分野で利用されている。
【0003】
従来の過熱蒸気発生装置として、特許文献1(特開2003-21303号公報)に例示されるような、装置外から供給された水から過熱蒸気を発生させる装置が知られている。また、特許文献2(特許第5149302号公報)に例示されるような、装置外から供給された飽和蒸気から過熱蒸気を発生させる装置も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-21303号公報
【文献】特許第5149302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、過熱蒸気の加熱作用を利用した食品の加工や調理等が注目されている。こうした比較的簡易な用途で過熱蒸気を利用しようとする施設では、ボイラ等の飽和蒸気の供給設備を有していない場合が多く、水から過熱蒸気を発生させる装置が必要になる。しかしながら、従来の水から過熱蒸気を発生させる過熱蒸気発生装置では、水を沸騰させるための加熱源および飽和蒸気を加熱するための加熱源の二つの加熱源を有する構成によって装置全体が大型化してしまうという課題があり、また、三相200[V]電源等の専用設備が必要とされることによって簡易に設置することができないという課題があった。
【0006】
また、食品の加工や調理等には、一定温度(少なくとも300[℃]程度)の過熱蒸気が必要であり、当該過熱蒸気が安定して且つ安全に供給されることが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、水から過熱蒸気を発生させる構成であって、一定温度の過熱蒸気を安定して安全に供給することができ、且つ小型で簡易に設置することができる過熱蒸気発生装置を提供することを目的とする。
【0008】
本発明は、一実施形態として以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0009】
本発明に係る過熱蒸気発生装置は、液体もしくは気体の状態の水を加熱して過熱蒸気を発生させる過熱蒸気発生装置であって、電磁誘導加熱を行う通電コイルと、電磁誘導加熱により加熱される金属材料を用いて形成される第1管と、を備え、前記第1管は、相対的に大きい内径の直線状に形成されると共に、外周には相対的に小さい内径の第2管が前記第1管の軸方向に沿ってコイル状に巻回されて構成されており、前記第2管と前記第1管とが連通するように配設されており、前記通電コイルに所定周波数の交流電流を通電して前記第1管を加熱させた状態で、前記水を前記第2管から前記第1管の順に通流させて加熱することにより所定の過熱蒸気の状態にして前記第1管から送出させる構成であり、前記第1管および前記第2管が内側に配置される筒状の絶縁・断熱体をさらに備え、前記通電コイルは、金属材料を用いて中空の管状に形成されており、内部に前記水を通流させる配管を兼用する構成であると共に、前記絶縁・断熱体の外周において前記第1管の軸方向に沿って巻回されて構成されており、
前記通電コイルと前記第2管とが連通するように配設されており、前記水を前記通電コイルに通流させて前記絶縁・断熱体の外周からの放熱により加熱した状態にして前記第2管に流入させる構成であり、前記通電コイルとして、前記第1管の径方向に対して二層となるように内層の第1コイルおよび外層の第2コイルが間に絶縁体を介在させて設けられており、前記第2コイルと前記第1コイルとが連通し、前記第1コイルと前記第2管とが連通するように配設されており、前記水を前記第2コイルから前記第1コイルの順に通流させて前記絶縁・断熱体の外周からの放熱により加熱した状態にして前記第2管に流入させる構成であり、前記第1コイルおよび前記第2コイルは、流入口および流出口の位置が軸方向において一致するように配設されると共に、周方向において同一方向に巻回されて構成されており、前記水を前記第1コイルおよび前記第2コイルの間で軸方向および周方向において同一方向に通流させる構成であり、前記通電コイルおよび前記第1管は、流入口および流出口の位置が軸方向において一致するように構成されており、前記水を前記通電コイルおよび前記第1管の間で軸方向において同一方向に通流させる構成であることを要件とする。
【0010】
これによれば、電磁誘導加熱により加熱される第1管の外周にその放熱で加熱される第2管を配設し、水を第2管から第1管の順に通流させて加熱することにより所定の過熱蒸気の状態にして送出させることができる。したがって、電磁誘導加熱により生じる熱を高い効率で水の加熱に利用することができ、相対的に短い流路において水から過熱蒸気を発生させることが可能となるため、装置全体の小型化を実現することができる。また、水を相対的に小さい内径の第2管から大きい内径の第1管の順に通流させることによって、第1管を圧力変動の緩衝機構として機能させることができる。したがって、第1管よりも上流で突沸が発生した場合であっても、第1管に流入する際に突沸による圧力変動が緩衝されるため、過熱蒸気を安定して且つ安全に供給することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、水から過熱蒸気を発生させることができる構成であって、一定温度の過熱蒸気を安定して安全に供給することができ、且つ小型化が実現された過熱蒸気発生装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る過熱蒸気発生装置の外部構成例を示す概略図(正面側斜視図)である。
図2】本発明の実施形態に係る過熱蒸気発生装置の内部構成例を示す概略図(正面側斜視図)である。
図3】本発明の実施形態に係る過熱蒸気発生装置の内部構成例を示す概略図(正面図)である。
図4】本発明の実施形態に係る過熱蒸気発生装置における蒸気発生機構の構成例を示す概略図(正面側斜視図)である。
図5図4に示す蒸気発生機構における配管の構成例について説明する説明図である。
図6図4に示す蒸気発生機構における水の通流について説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳しく説明する。図1は、本実施形態に係る過熱蒸気発生装置10の外部構成例を示す概略図(正面側斜視図)である。また、図2は、本実施形態に係る過熱蒸気発生装置10の内部構成例を示す概略図(正面側斜視図)である。また、図3は、本実施形態に係る過熱蒸気発生装置の内部構成例を示す概略図(正面図)である。また、図4は、本実施形態に係る過熱蒸気発生装置における蒸気発生機構20の構成例を示す概略図(正面側斜視図)である。このうち、図4(a)は外観図を示し、図4(b)は図4(a)の部分断面図を示す。また、図5は、図4に示す蒸気発生機構20における配管の構成例について説明する説明図である。具体的には、各配管の連結部位が分かるように、図5(a)に図4(a)とは異なる角度からの正面側斜視図を示し、図5(b)に正面側断面図を示す。また、図6は、図4に示す蒸気発生機構20における水の通流について説明する説明図である。図6(a)~図6(d)に各配管における水の通流する方向を示す。
【0014】
本実施形態に係る過熱蒸気発生装置10(以下、単に「装置10」と表記する場合がある)は、装置10の外部から水を導入し、電磁誘導加熱により当該水を加熱して過熱蒸気を発生させる装置である。本実施形態においては、液体の状態の水を導入する構成としているが、気体の状態、あるいは気液混合状態の水を導入する構成としてもよい。したがって、本願における「水」は、「液体の状態、気体の状態、もしくは気液混合状態の水」を意味する場合がある。
【0015】
図1に示すように、過熱蒸気発生装置10は、卓上に設置可能な筐体12を備えている。図2および図3に示すように、筐体12の内部には、供給された水を加熱して過熱蒸気を発生させる蒸気発生機構20と、装置10の外部から水を導入すると共に蒸気発生機構20へ供給する送液ポンプ22と、電磁誘導加熱を行う電源回路24とが配設されている。また、図1に示すように、筐体12の外部には、電源のON・OFF等の操作を行う操作部14と、発生させた過熱蒸気を送出する送出ノズル16とが配設され、さらに任意の構成として導入する水の量を測定する流量計18が配設されている。
【0016】
続いて、蒸気発生機構20の構成について詳しく説明する。
【0017】
図4(a)および図4(b)に示すように、蒸気発生機構20は、電磁誘導加熱を行う通電コイル32と、電磁誘導加熱により加熱される金属材料を用いて形成される第1管26と、を備えて、電磁誘導加熱を行う機構として構成されている。具体的には、第1管26が直線状に形成されると共に、通電コイル32が第1管26の外周において第1管26の軸方向に沿ってコイル状に巻回されて形成され、さらに電源回路24と通電コイル32とが電気配線(不図示)によって接続されている。これによって、電源回路24を通じて所定周波数(一例として、数十[kHz]程度)の交流電流を通電コイル32に通電して電磁誘導加熱により第1管26を加熱することができる。また、本実施形態では、通電コイル32を銅(銅合金を含む)を用いて形成しているが、他の導電性材料を用いて形成してもよい。また、本実施形態では、第1管26をステンレス鋼(SUS430)を用いて形成しているが、電磁誘導加熱により加熱される金属材料であれば他の材料を用いて形成してもよい。
【0018】
また、第1管26は、相対的に大きい内径の直線状に形成されると共に、外周には相対的に小さい内径の第2管28が第1管26の軸方向に沿ってコイル状に巻回されて構成されている。また、第2管28と第1管26とが連通するように配設されて構成されている。これによって、通電コイル32に所定周波数の交流電流を通電して第1管26を加熱させた状態で第1管26の外周からの放熱により第2管28を加熱することができる。
【0019】
本実施形態では、第2管28を第1管26の外周に接触させて巻回する構成として、第1管26の熱が第2管28に対してより伝わりやすくなるようにしているが、第1管26と第2管28とは所定の隙間を有していてもよい。
【0020】
また、第2管28の材料は限定されず、第1管26と同じく電磁誘導加熱により加熱される金属材料を用いて形成してもよく、あるいは電磁誘導加熱により加熱されない金属材料を用いて形成してもよい。本実施形態では、第2管28を電磁誘導加熱により加熱されないステンレス鋼(SUS304)を用いて形成し、電磁誘導加熱により第1管26を加熱して第1管26からの放熱により第2管28を加熱する構成としている。これによって、中心に位置する第1管26を最も高温とする径方向の温度勾配を生じさせることができる。なお、ここでの電磁誘導加熱により加熱されない金属材料とは、電磁誘導加熱により加熱される金属材料との対比における相対的な性質を意味する。したがって、完全な非磁性体のみに限定されず、比較的弱い磁性を帯びるものを含む。
【0021】
一方、水の流路に係る機構に関して、電磁誘導を行う通電コイル32は、中空の管状に形成されており、内部に水を通流させる配管を兼用する構成であると共に、その一端が水供給管(不図示)と連通し、その他端が第2管28と連通するように配設されている。また、当該水供給管は、装置10の外部で水供給源に連結されると共に、その中途には送液ポンプ22(図2参照)が配設されて構成されている。これによって、送液ポンプ22を動作させて装置10の外部からの水を導入し、次いで導入した水を通電コイル32、第2管28、第1管26の順に通流させることができる。したがって、通電コイル32に所定周波数の交流電流を通電して第1管26を加熱させた状態で、水を通電コイル32、第2管28、第1管26の順に通流させて加熱することにより所定の過熱蒸気の状態にして第1管26から送出させることができる。第1管26における過熱蒸気の流出口26bには、送出ノズル16(図2参照)が取付けられており、装置10の外部に突出する送出ノズル16から過熱蒸気を送出させる構成となっている。
【0022】
このとき、水を相対的に小さい内径の第2管28から大きい内径の第1管26の順に通流させることによって、第1管26を圧力変動の緩衝機構として機能させることができる。したがって、第1管26よりも上流で突沸が発生した場合であっても、第1管26に流入する際に突沸による圧力変動が緩衝されるため、第1管26(送出ノズル16)から過熱蒸気を安定して且つ安全に供給することができる。なお、第1管26は、第2管28の内径に対して2~6倍程度の内径に設定している。一例として、本実施形態では第1管26の内径を約18[mm]、第2管28の内径を約4[mm]に設定している。
【0023】
また、第1管26は、通流する水に乱流を生じさせる乱流発生機構40を内部に有している。これによって、内部を通流する水の径方向位置による温度差を解消して、均一な状態の過熱蒸気を送出させることができ、過熱蒸気を安定して供給することができる。本実施形態では、乱流発生機構40としてコイルバネを配置する構成としているが、当該構成に限定されるものではない。
【0024】
このように、蒸気発生機構20によれば、電磁誘導加熱により加熱される第1管26を中心としてその周囲に水の流路を配設すると共に、周囲の通電コイル32から中心の第1管26に向けて水を通流させる構成によって、径方向における配管と水との温度勾配を一致させることができる。したがって、相対的に高温の配管である程、より高温となった水が通流されるため、各配管における温度低下の少ない効率的な昇温機構が実現できると共に、外側への放熱も水の加熱に利用することができる。その結果、中心から周囲に向けて水を通流させる構成と比較して水の流路をより短く構成することができ、装置10を小型にすることができる。なお、「配管」とは、蒸気発生機構20における水の流路を形成する通電コイル32、第2管28、および第1管26を意味する。
【0025】
また、通電コイル32を、内部に水を通流させる配管を兼用する構成によって、通電コイル32の熱で水を加熱すると同時に通電コイル32を冷却することができる。すなわち、通電コイル32の通電による発熱を水の加熱に利用した効率的な昇温機構が実現できる。したがって、例えば水を水供給管から直接、第2管28に流入させる構成と比較して水の流路をより短く構成することができ、装置10を小型にすることができる。また、通電コイル32の発熱を防止することができる。したがって、適宜設けられる断熱機構を簡素化させることができ、装置10を小型にすることができる。さらに、通電コイル32、断熱機構に用いられる断熱性材料の選択が容易になることから安価な材料を用いて製造コストを抑えることも可能になる。
【0026】
ここで、断熱機構の例について説明する。本実施形態では、断熱機構として第1管26および第2管28が内側に配置される筒状の電気絶縁・断熱体30(以下、単に「絶縁・断熱体30」と表記する)を備え、絶縁・断熱体30の外周には通電コイル32が第1管26の軸方向に沿って巻回されて構成されている。
【0027】
このように、第1管26および第2管28と、通電コイル32との間に筒状の絶縁・断熱体30を設ける構成によって、先ず、第1管26および第2管28と、通電コイル32とを確実に電気的に絶縁することができる。また、第1管26および第2管28の周囲を所定程度断熱して筐体12の内部の発熱を防止することができる。したがって、送液ポンプ22、電源回路24等への熱害を防止することができる。
【0028】
一方、絶縁・断熱体30そのものは第1管26および第2管28の外周からの放熱により温度上昇する。したがって、絶縁・断熱体30の外周からの放熱により通電コイル32が加熱されるが、前述の通り、この熱によって内部に通流する水を加熱することができる。なお、本実施形態では、絶縁・断熱体30をセラミックスを用いて形成しているが、他の材料を用いて形成してもよい。
【0029】
その他任意の構成として、水供給管の中途に流量計18(図1参照)を設けることによって、通電コイル32に流入する水の量を測定することができる。したがって、送出ノズル16から送出される過熱蒸気の相対的な量を把握することができる。
【0030】
以上のように、本実施形態に係る蒸気発生機構20は、水から飽和蒸気を発生させる機構と飽和蒸気から過熱蒸気を発生させる機構とが一体した構成によって、単一の加熱源を用いて水から過熱蒸気を発生させる構成を実現することができる。その結果、過熱蒸気発生装置10の小型化を実現することができる。本実施形態によれば、例えば、水供給源として水道管等に接続し、電源として単相100[V]電源に接続して装置10を稼動させることができる。したがって、例えば、ボイラ等の飽和蒸気の供給設備や三相200[V]電源等の専用設備を有していない施設であったり、装置を設置するための十分な室内空間を備えていない施設であっても、適用可能になる。
【0031】
なお、本実施形態において最大出力1[kW]の電源回路24を用いた場合には、800[mL/h]の水を導入し、出口温度300~400[℃]の過熱蒸気の出力が可能である。したがって、例えば、より高い出力の電源回路24を用いること等によって、出口温度300~500[℃]程度の過熱蒸気の出力が可能になる。
【0032】
続いて、本実施形態に係る蒸気発生機構20の特徴的な構成について、さらに説明する。
【0033】
先ず、通電コイル32は、第1管26の径方向に対して二層となるように内層の第1コイル34および外層の第2コイル36が間に電気絶縁体(不図示)を介在させて設けられている。このように、通電コイル32を二層に形成することによって、各コイル34、36の巻数を減らして軸方向寸法を短く形成することができる(一例として、本実施形態では第1コイル34を40巻、第2コイル36を20巻程度に形成している)。したがって、蒸気発生機構20の長手寸法を短く形成することができるため、装置10を小型にすることができる。なお、二層のコイル(第1コイル34および第2コイル36)は電気配線(不図示)によって電気的に直列接続される。
【0034】
本実施形態では、第1コイル34と第2コイル36とを仕切る電気絶縁体をポリイミドを用いたシート状に形成し、第1コイル34の外周に巻回する構成としている。また、絶縁・断熱体30に対して第1コイル34、電気絶縁体(ポリイミドシート)、第2コイル36の順で外周に巻回されていく各構成を相互に接触するように配置している。このようにして、各構成からの放熱がその外周に配置される構成に伝わりやすくなるようにしている。ただし、当該構成に限定されず、各構成の間の一部または全部には隙間を有していてもよい。また、電気絶縁体もポリイミドを用いて形成しているが、他の材料を用いて形成してもよい。
【0035】
一方、水の流路としての二層のコイル(第2コイル36および第1コイル34)は、図5に示すように、流入口36a、34aおよび流出口36b、34bの位置が軸方向において一致するように配設されると共に、周方向において同一方向に巻回されて構成されている。具体的には、通電コイル32は、二層のコイル36、34が連結管37を介して連結されることによって、いずれのコイル36、34も、流入口36a、34aが一端20A側に配置され、流出口36b、34bが他端20B側に配置されると共に、同一方向(矢印Cの方向)に巻回される構成となっている。
【0036】
これによって、図6に示すように、一端20A側の流入口36aから第2コイル36に流入した水は、コイル36の巻回方向に通流して他端20B側の流出口36bから流出することによって軸方向で見ると全体として矢印Aの方向に通流する(図6(a)参照)。次いで連結管37を通流して一端20A側の流入口34aから第1コイル34に流入した水は、コイル34の巻回方向に通流して他端20B側の流出口34bから流出することによって軸方向で見ると全体として矢印Aの方向に通流する(図6(b)参照)。このように、水を二層のコイル36、34で周方向および軸方向において同一方向に通流させることによって温度勾配の向きを一致させるようにして、各コイル36、34における温度低下の少ない効率的な昇温機構が実現できる。
【0037】
加えて、通電コイル32(第2コイル36および第1コイル34)と第1管26との間についても、流入口36a、34a、26aおよび流出口36b、34b、26bの位置が軸方向において一致するように配設される。具体的には、図5に示すように、第1管26の流入口26aが一端20A側に配置されていると共に、流出口26bが他端20B側に配置されている。また、第1コイル34の流出口34bと第2管28の流入口28aとが他端20B側で連結管38を介して連結され、第2管28の流出口28bと第1管26の流入口26aとが一端20A側で連結管39を介して連結されている。
【0038】
これによって、図6に示すように、第1コイル34から流出した後、連結管38を通流して他端20B側の流入口28aから第2管28に流入した水は、第2管28を通流して一端20A側の流出口28bから流出する(図6(c)参照)。次いで連結管39を通流して一端20A側の流入口26aから第1管26に流入した水は、矢印Aの方向に通流して他端20B側の流出口26bから過熱蒸気として送出する(図6(d)参照)。このように、水を通電コイル32と第1管26とで軸方向において同一方向に通流させることによって温度勾配の向きを一致させるようにして、通電コイル32および第1管26における温度低下の少ない効率的な昇温機構が実現できる。蒸気発生機構20は全体として矢印Aの方向に温度勾配がつくことから、過熱蒸気の流出口26bがある他端20B側の温度が一端20A側よりも高くなる。そのため、流出口26bから送出される過熱蒸気の温度が下がることを防止できる。
【0039】
以上のように、水を各配管でできるだけ同一方向に通流させるように各配管を配置することによって各配管を高温に維持することができるため、過熱蒸気を安定して供給することが可能になる。当該構成は、通電コイル32を一層に構成した場合であっても適用することができ、水を一層の通電コイル32と、第2管28もしくは第1管26とで同一方向に通流させることによって、同様に各配管における温度低下の少ない効率的な昇温機構が実現できる。
【0040】
なお、各配管を連通させる連結管37、38、39のうち、通電コイル32と第2管28とは電気的に絶縁されなければならないため、これらを連通させる連結管38は電気絶縁性材料を用いて形成しなければならない。一方、これ以外の連結管、すなわち各コイル36、34を連通させる連結管37、および第2管28と第1管26とを連通させる連結管39はいずれの材料を用いて形成してもよい。仮に連結管37を導電性材料を用いて形成する場合には、連結管37によって各コイル36、34が電気的に直列接続された通電回路が形成されるため、コイル36、34間の電気配線(不図示)が不要になる。本実施形態では、一例として、連結管37および連結管38を電気絶縁性材料を用いて形成し、連結管39を金属材料を用いて形成している。本実施形態における電気絶縁性材料にはシリコーンを用いているが、テフロン(登録商標)、ゴム等を用いてもよい。
【0041】
その他、特徴的な構成として、図3に示すように、蒸気発生機構20(第1管26)は、筐体12の内部において、軸方向が水平に対して所定角度傾斜させて配置されている。これによって、装置10の長手寸法を短くすることができ、装置10の小型化に寄与することができる。
【0042】
以上、説明した通り、本発明に係る過熱蒸気発生装置によれば、電磁誘導加熱により加熱される第1管の外周にその放熱で加熱される第2管を配設し、水を第2管から第1管の順に通流させて加熱することにより所定の過熱蒸気の状態にして送出させることができる。したがって、電磁誘導加熱により生じる熱を高い効率で水の加熱に利用することができ、相対的に短い流路において過熱蒸気を発生させることが可能となるため、装置全体の小型化を実現することができる。また、水を相対的に小さい内径の第2管から大きい内径の第1管の順に通流させることによって、第1管を圧力変動の緩衝機構として機能させることができる。したがって、第1管よりも上流で突沸が発生した場合であっても、第1管に流入する際に突沸による圧力変動が緩衝されるため、過熱蒸気を安定して且つ安全に供給することができる。
【0043】
なお、本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【符号の説明】
【0044】
10 過熱蒸気発生装置
12 筐体
14 操作部
16 送出ノズル
18 流量計
20 蒸気発生機構
22 送液ポンプ
24 電源回路
26 第1管
28 第2管
30 電気絶縁・断熱体
32 通電コイル
34 第1コイル
36 第2コイル
37、38、39 連結管
40 乱流発生機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6