(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-20
(45)【発行日】2023-09-28
(54)【発明の名称】ランフラットタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 17/00 20060101AFI20230921BHJP
B60C 5/14 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
B60C17/00 B
B60C5/14 Z
(21)【出願番号】P 2019207476
(22)【出願日】2019-11-15
【審査請求日】2022-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福沢 和之
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0112496(US,A1)
【文献】特開2011-042239(JP,A)
【文献】特開平09-048209(JP,A)
【文献】国際公開第96/030221(WO,A1)
【文献】特開2018-130977(JP,A)
【文献】特開2015-039926(JP,A)
【文献】特開2010-111173(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0160388(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪の外縁部を形成するリムに嵌合する部位に設けられ、タイヤ周方向に沿って環状に形成された一対のビードコアと、
前記一対のビードコアを跨るように形成され、タイヤ径方向外側においてタイヤ幅方向に沿って延在されたカーカス中央部と前記カーカス中央部のタイヤ幅方向両端部から前記一対のビードコアのタイヤ幅方向内側へ向けて各々延在された一対のカーカス側部と前記一対のカーカス側部と連続して形成されると共に前記一対のビードコアの周りをタイヤ幅方向内側から外側へ向けて各々折り返された一対の折返し部を備えたカーカスと、
前記カーカス中央部のタイヤ径方向外側の面に沿って設けられたベルトと、
前記ベルトのタイヤ径方向外側に設けられたトレッド部と、
前記カーカス側部のタイヤ幅方向内側の面に沿って設けられると共にタイヤ軸方向に沿った断面においてタイヤ径方向内側とタイヤ径方向外側へ向かうにつれて各々先細りする形状に形成されたサイド補強ゴムと、
前記カーカス中央部のタイヤ径方向内側の面と前記サイド補強ゴムのタイヤ幅方向内側の面に沿って設けられると共にタイヤ回転軸方向に沿った断面における輪郭に沿った両端部が前記サイド補強ゴムのタイヤ径方向内側の端部よりもタイヤ径方向外側に各々形成された第1インナライナと、
前記第1インナライナの前記カーカス中央部と反対側の面に沿って延在されると共に、タイヤ回転軸方向に沿った断面における輪郭に沿って、両端部が前記第1インナライナの両端部よりもタイヤ径方向内側に各々形成された第2インナライナと、を備え、
前記第1インナライナと前記第2インナライナは一体で形成された
ランフラットタイヤ。
【請求項2】
前記第1インナライナのタイヤ回転軸方向に沿った断面における輪郭に沿った両端部は、タイヤ回転軸に沿った断面視で、前記ベルトのタイヤ幅方向の両端部を各々通ると共に前記カーカスに対して垂直に各々延在された一対の第1仮想線と、前記トレッド部のタイヤ幅方向の両端部を各々通ると共に前記カーカスに対して垂直に各々延在された一対の第2仮想線の間に各々位置する請求項1に記載のランフラットタイヤ。
【請求項3】
前記第1インナライナのタイヤ回転軸方向に沿った断面における輪郭に沿った両端部は各々タイヤ径方向内側へ向かうにつれて厚さが漸減するテーパ状とされ、前記第2インナライナのタイヤ回転軸方向に沿った断面における輪郭に沿った両端部は各々タイヤ径方向内側へ向かうにつれて厚さが漸減するテーパ状とされた請求項1
又は請求項2に記載のランフラットタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランフラットタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、タイヤの内圧が低下した状態でも一定距離を走行可能なランフラットタイヤの一例としてサイドウォール強化タイプのランフラットタイヤが開示されている。具体的には、ランフラットタイヤのタイヤサイド部にサイド補強ゴムが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ランフラットタイヤは、タイヤサイド部をサイド補強ゴムで補強されるため、ランフラット構造を備えていないタイヤと比較して転がり抵抗が増加しやすいことが知られている。そこで、例えば、粘性の低いゴムを用いてサイド補強ゴムを構成することも考えられるが、このようなランフラットタイヤではタイヤの内圧が低下した状態で走行する際の耐久性であるランフラット耐久性が低下する可能性がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、転がり抵抗を低減しかつランフラット耐久性を確保することができるランフラットタイヤを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載のランフラットタイヤは、車輪の外縁部を形成するリムに嵌合する部位に設けられ、タイヤ周方向に沿って環状に形成された一対のビードコアと、前記一対のビードコアを跨るように形成され、タイヤ径方向外側においてタイヤ幅方向に沿って延在されたカーカス中央部と前記カーカス中央部のタイヤ幅方向両端部から前記一対のビードコアのタイヤ幅方向内側へ向けて各々延在された一対のカーカス側部と前記一対のカーカス側部と連続して形成されると共に前記一対のビードコアの周りをタイヤ幅方向内側から外側へ向けて各々折り返された一対の折返し部を備えたカーカスと、前記カーカス中央部のタイヤ径方向外側の面に沿って設けられたベルトと、前記ベルトのタイヤ径方向外側に設けられたトレッド部と、前記カーカス側部のタイヤ幅方向内側の面に沿って設けられると共にタイヤ軸方向に沿った断面においてタイヤ径方向内側とタイヤ径方向外側へ向かうにつれて各々先細りする形状に形成されたサイド補強ゴムと、前記カーカス中央部のタイヤ径方向内側の面と前記サイド補強ゴムのタイヤ幅方向内側の面に沿って設けられると共にタイヤ回転軸方向に沿った断面における輪郭に沿った両端部が前記サイド補強ゴムのタイヤ径方向内側の端部よりもタイヤ径方向外側に各々形成された第1インナライナと、前記第1インナライナの前記カーカス中央部と反対側の面に沿って延在されると共に、タイヤ回転軸方向に沿った断面における輪郭に沿って、両端部が前記第1インナライナの両端部よりもタイヤ径方向内側に各々形成された第2インナライナと、を備え、前記第1インナライナと前記第2インナライナは一体で形成されている。
【0007】
このランフラットタイヤによれば、インナライナとして第1インナライナと第2インナライナが備えられている。また、第1インナライナのタイヤ回転軸方向に沿った断面における輪郭に沿った両端部は、サイド補強ゴムのタイヤ径方向内側の端部よりもタイヤ径方向外側に各々形成されている。このため、例えば、第1インナライナがサイド補強ゴムのタイヤ径方向内側の端部の側まで各々延長されたタイヤと比較して転がり抵抗を低減することができる。
【0008】
さらに、このランフラットタイヤによれば、第1インナライナのカーカス中央部と反対側の面に沿って延在されると共に、タイヤ回転軸方向に沿った断面における輪郭に沿って、両端部が第1インナライナの両端部よりもタイヤ径方向内側に各々形成された第2インナライナが設けられている。このため、転がり抵抗を低減する上で必要な剛性を確保しかつタイヤ幅方向内側から外側への気体の透過を抑制又は防止することができる。これにより、転がり抵抗を低減しかつランフラット走行時のビード部及びタイヤサイド部の過度の倒れ込みを抑制又は防止するといったランフラット耐久性を確保することができる。
【0009】
請求項2に記載のランフラットタイヤは、請求項1に記載のランフラットタイヤにおいて、前記第1インナライナのタイヤ回転軸方向に沿った断面における輪郭に沿った両端部は、タイヤ回転軸に沿った断面視で、前記ベルトのタイヤ幅方向の両端部を各々通ると共に前記カーカスに対して垂直に各々延在された一対の第1仮想線と、前記トレッド部のタイヤ幅方向の両端部を各々通ると共に前記カーカスに対して垂直に各々延在された一対の第2仮想線の間に各々位置する。
【0010】
このランフラットタイヤによれば、第1インナライナのタイヤ回転軸方向に沿った断面における輪郭に沿った両端部は、第1仮想線と第2仮想線の間に各々位置している。このため、第2インナライナによって必要な剛性を確保すると共にタイヤ幅方向内側から外側への気体の透過を抑制又は防止した上で、第1インナライナを小さく形成することができる。これにより、転がり抵抗を低減しかつランフラット耐久性を確保することができる。
【0011】
請求項3に記載のランフラットタイヤは、車輪の外縁部を形成するリムに嵌合する部位に設けられ、タイヤ周方向に沿って環状に形成された一対のビードコアと、前記一対のビードコアを跨るように形成され、タイヤ径方向外側においてタイヤ幅方向に沿って延在されたカーカス中央部と前記カーカス中央部のタイヤ幅方向両端部から前記一対のビードコアのタイヤ幅方向内側へ向けて各々延在された一対のカーカス側部と前記一対のカーカス側部と連続して形成されると共に前記一対のビードコアの周りをタイヤ幅方向内側から外側へ向けて各々折り返された一対の折返し部を備えたカーカスと、前記カーカス中央部のタイヤ径方向外側の面に沿って設けられたベルトと、前記ベルトのタイヤ径方向外側に設けられたトレッド部と、前記カーカス側部のタイヤ幅方向内側の面に沿って設けられると共にタイヤ軸方向に沿った断面においてタイヤ径方向内側とタイヤ径方向外側へ向かうにつれて各々先細りする形状に形成されたサイド補強ゴムと、前記カーカス中央部のタイヤ径方向内側の面と前記サイド補強ゴムのタイヤ幅方向内側の面に沿って設けられると共にタイヤ回転軸方向に沿った断面における輪郭に沿った両端部が前記サイド補強ゴムのタイヤ径方向内側の端部よりもタイヤ径方向内側に各々形成された第1インナライナと、前記第1インナライナの前記カーカス中央部と反対側の面に沿って延在されると共に、タイヤ回転軸方向に沿った断面における輪郭に沿って、両端部が前記第1インナライナの両端部よりもタイヤ径方向外側に各々形成された第2インナライナと、を備えている。
【0012】
このランフラットタイヤによれば、第2インナライナのタイヤ回転軸方向に沿った断面における輪郭に沿った両端部は、第1インナライナのタイヤ回転軸方向に沿った断面における輪郭に沿った両端部よりもタイヤ径方向外側に各々形成されている。このため、例えば、第2インナライナがサイド補強ゴムのタイヤ径方向内側の両端部側まで各々延長されたタイヤと比較して転がり抵抗を低減することができる。さらに、このランフラットタイヤによれば、第1インナライナはタイヤ回転軸方向に沿った断面における輪郭に沿った両端部がサイド補強ゴムのタイヤ径方向内側の端部よりもタイヤ径方向内側に各々形成されている。このため、転がり抵抗を低減する上で必要な剛性を確保すると共にタイヤ幅方向内側から外側への気体の透過を抑制又は防止することができる。これにより、転がり抵抗を低減しかつランフラット走行時のビード部及びタイヤサイド部の過度の倒れ込みを抑制又は防止するといったランフラット耐久性を確保することができる。
【0013】
請求項4に記載のランフラットタイヤは、請求項3に記載のランフラットタイヤにおいて、前記第2インナライナのタイヤ回転軸方向に沿った断面における輪郭に沿った両端部は、タイヤ回転軸に沿った断面視で、前記ベルトのタイヤ幅方向の両端部を各々通ると共に前記カーカスに対して垂直に各々延在された一対の第1仮想線と前記トレッド部のタイヤ幅方向の両端部を各々通ると共に前記カーカスに対して垂直に各々延在された一対の第2仮想線の間に各々位置する。
【0014】
このランフラットタイヤによれば、第2インナライナのタイヤ回転軸方向に沿った断面における輪郭に沿った両端部は、第1仮想線と第2仮想線の間に各々位置している。このため、第1インナライナによって必要な剛性を確保すると共にタイヤ幅方向内側から外側への気体の透過を抑制又は防止した上で、第2インナライナを小さく形成することができる。これにより、転がり抵抗を低減しかつランフラット耐久性を確保することができる。
【0015】
請求項5に記載のランフラットタイヤは、請求項1から請求項4の何れか1項に記載のランフラットタイヤにおいて、前記第1インナライナのタイヤ回転軸方向に沿った断面における輪郭に沿った両端部は各々タイヤ径方向内側へ向かうにつれて厚さが漸減するテーパ状とされ、前記第2インナライナのタイヤ回転軸方向に沿った断面における輪郭に沿った両端部は各々タイヤ径方向内側へ向かうにつれて厚さが漸減するテーパ状とされている。
【0016】
このランフラットタイヤによれば、第1インナライナのタイヤ回転軸方向に沿った断面における輪郭に沿った両端部はテーパ状に形成されると共に第2インナライナのタイヤ回転軸方向に沿った断面における輪郭に沿った両端部はテーパ状に形成されている。このため、タイヤが変形した場合に、第1インナライナと第2インナライナのタイヤ回転軸方向に沿った断面における輪郭に沿った両端部がサイド補強ゴムを押圧する力を、例えば、第1インナライナと第2インナライナをテーパ状に形成しないタイヤと比べて小さくすることができる。これにより、ランフラット走行時にサイド補強ゴムにかかる力が増加することを抑制又は防止することができ、ランフラットタイヤの耐久性を向上させることができる。
【0017】
請求項1に記載のランフラットタイヤは、前記第1インナライナと前記第2インナライナは一体で形成されている。
【0018】
このランフラットタイヤによれば、第1インナライナと第2インナライナは一体で形成されている。このため、第1インナライナと第2インナライナを別個に設けた場合と比較してインナライナを設けるための作業工数及び製造コストの増加を抑制した上で、転がり抵抗を低減しかつランフラット耐久性を確保することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明に係るランフラットタイヤは、転がり抵抗を低減しかつランフラット耐久性を確保することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態に係るランフラットタイヤをタイヤ軸方向に沿って切断した切断面の片側を示す半断面図である。
【
図2】第1実施形態に係る第1インナライナと第2インナライナをタイヤ軸方向に沿って切断した切断面を示す半断面図である。
【
図3】第1実施形態の第1変形例に係るランフラットタイヤをタイヤ軸方向に沿って切断した切断面の片側を示す半断面図である。
【
図4】第1実施形態の第2変形例に係る第1インナライナと第2インナライナをタイヤ軸方向に沿って切断した切断面を示す半断面図である。
【
図5】第1実施形態の第2変形例に係るランフラットタイヤをタイヤ軸方向に沿って切断した切断面の片側を示す半断面図である。
【
図6】第2実施形態に係るランフラットタイヤをタイヤ軸方向に沿って切断した切断面の片側を示す半断面図である。
【
図7】第2実施形態の変形例に係るランフラットタイヤをタイヤ軸方向に沿って切断した切断面の片側を示す半断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
以下、
図1~
図5を用いて、本発明の第1実施形態に係るランフラットタイヤ10について説明する。本実施形態では、乗用車用のランフラットタイヤ10について説明する。
【0022】
ここで、図中矢印TWはランフラットタイヤ10のタイヤ幅方向を示し、矢印TRはランフラットタイヤ10のタイヤ径方向を示す。
【0023】
ここでいうタイヤ幅方向とは、ランフラットタイヤ10の回転軸と平行な方向を指し、タイヤ軸方向ともいう。また、タイヤ径方向とは、ランフラットタイヤ10の回転軸と直交する方向をいう。
【0024】
また、符号CLはランフラットタイヤ10の赤道面(タイヤ赤道面)を表す。さらに、本実施形態では、タイヤ径方向に沿ってランフラットタイヤ10の回転軸側を「タイヤ径方向内側」、タイヤ径方向に沿ってランフラットタイヤ10の回転軸とは反対側を「タイヤ径方向外側」と記載する。
【0025】
一方、タイヤ幅方向に沿ってランフラットタイヤ10の赤道面CL側を「タイヤ幅方向内側」、タイヤ幅方向に沿ってランフラットタイヤ10の赤道面CLとは反対側を「タイヤ幅方向外側」と記載する。
【0026】
また、以下の説明において、車輪12の外縁部を形成するリム14(どちらも
図1参照)とは、下記規格に記載されている適用サイズにおける標準リム(または、”Approved Rim”、”Recommended Rim”)のことである。規格は、タイヤが生産又は使用される地域に有効な産業規格によって決められている。例えば、アメリカ合衆国では、”The Tire and Rim Association Inc.のYear Book ”で、欧州では”The European Tire and Rim Technical OrganizationのStandards Manual”で、日本では日本自動車タイヤ協会の“JATMA Year Book”にて規定されている。
【0027】
図1には、リム14に組み付けて内圧を充填していない状態(外気と同じ気圧)のランフラットタイヤ10のタイヤ回転軸に沿った断面図の片側だけが示されている。ランフラットタイヤ10は、一対のビード部16と、カーカス20と、ベルト24と、ベルト補強層26と、トレッド部28と、タイヤサイド部30と、を含んで構成されている。また、ランフラットタイヤ10は、サイド補強ゴム34と、インナライナ部44と、を備えている。
【0028】
ビード部16は、タイヤ幅方向に間隔を空けて左右一対で設けられている。一対のビード部16には、タイヤ周方向に沿って環状に形成された一対のビードコア18が各々埋設されている。一対のビードコア18は、金属コード(例えば、スチールコード)、有機繊維コード、樹脂被覆した有機繊維コード、または硬質樹脂などのビードコード(いずれも図示省略)により各々構成されている。一対のビードコア18の間には、これらを跨るように形成されたカーカス20が配置されている。
【0029】
なお、ここでは、ビード部16の外側面に、ビード部16の過度の変形(タイヤ幅方向外側への倒れ)を抑制するための突起状のリムガード(リムプロテクション)を設けていないタイヤについて説明するが、これに限らず、ビード部の外側面にリムガードが設けられていてもよい。
【0030】
(カーカス)
カーカス20は、1枚のカーカスプライ22により形成されている。カーカスプライ22は、図示しない複数本のコード(例えば、有機繊維コードや金属コード等)を被覆ゴムで被覆することにより構成されている。カーカス14は、一対のビードコア18の間でタイヤ径方向外側へ向けて凸とされた略トロイド状に形成されている。カーカス14の略トロイド状に形成された部分のうち、タイヤ径方向外側においてタイヤ幅方向に沿って延在された部分がカーカス中央部20Aとされている。また、カーカス中央部20Aのタイヤ幅方向両端部から一対のビードコア18のタイヤ幅方向内側へ向けて各々延在された部分が一対のカーカス側部20Bとされている。カーカス14は、カーカス側部20Bのビードコア18側の両端部においてビードコア18の周りをタイヤ幅方向内側から外側へ向けて各々折り返されて一対の折返し部20Cが形成されている。折返し部20Cの端部20CEは、ベルト24のタイヤ幅方向外端24Eの近傍において、ベルト24とカーカス中央部20Aとの間に挟持されている。このように形成されたカーカス20は、タイヤの骨格を構成している。
【0031】
なお、本実施形態に係るランフラットタイヤ10は、ラジアル構造のタイヤとされており、カーカスプライ22のコード(図示省略)は、カーカス側部20B側ではタイヤ径方向(ラジアル方向)に沿って延在されている。また、カーカスプライ22のコードは、カーカス中央部20A側(タイヤ外周部側)においてはタイヤ赤道面CLに対して交差する方向に延在されている。
【0032】
ビード部16には、ビードコア18の側からタイヤ径方向外側へ延在されたビードフィラー36がカーカス20のカーカス側部20Bと折返し部20Cにより形成された空間を埋設するように設けられている。ビードフィラー36は、タイヤ径方向外側の端部36Aへ向かうにつれて厚みが減少するように形成されている。ビードフィラー36は、折返し部20Cのタイヤ幅方向外側に配置されたサイドゴム40よりも硬いゴムで形成されている。なお、ビードフィラー36の形状、及び材質は、本実施形態のものに限定されない。
【0033】
なお、ここでは、カーカス20は1枚のカーカスプライ22によって構成されているとして説明したが、これに限らず、カーカスは複数枚のカーカスプライによって構成されていてもよい。
【0034】
(ベルト)
カーカス20のタイヤ径方向外側には、カーカス中央部20Aのタイヤ径方向外側の面に沿ってベルト24が配設されている。ベルト24は、1枚又は複数枚のベルトプライ24A、24Bによって構成されている。ここでは、ベルト24は、一例として、タイヤ径方向内側の第1ベルトプライ24A、及び第1ベルトプライ24Aのタイヤ径方向外側に配置されて第1ベルトプライ24Aよりも幅狭の第2ベルトプライ24Bとを含んで構成されている。
【0035】
ベルトプライ24A、24Bは、互いに平行に並列された図示しない複数本のコード(例えば、スチールコード)を被覆ゴムで被覆することにより構成されている。ベルトプライ24A、24Bを構成するコードは、タイヤ周方向に対して傾斜して配設されており(例えば、タイヤ周方向に対し15度~30度の傾斜角度で傾斜している。)。ここでは、第1ベルトプライ24Aのコードと第2ベルトプライ24Bのコードは、タイヤ赤道面CLに対して互いに反対方向に傾斜するように配設されている。即ち、当該ベルト24は、いわゆる交差ベルトとされている。
【0036】
ベルト24のタイヤ径方向外側には、ベルト補強層26が配設されている。ベルト補強層26は、例えば、ベルト24の全体を覆うようにタイヤ周方向に沿って巻回された図示しないコードを含んで構成されている。
【0037】
ベルト24及びベルト補強層26のタイヤ径方向外側には、トレッド部28を構成するトレッドゴム38が配置されている。トレッド部28は、走行中に路面に接地する部位であり、トレッド部28の表面には、タイヤ周方向に沿って延在された周方向溝28Aが形成されている。また、トレッド部28には、タイヤ幅方向に延びる図示しない幅方向溝が形成されている。なお、周方向溝28A及び幅方向溝の形状や本数は、ランフラットタイヤ10に要求される排水性や操縦安定性等の性能に応じて適宜設定される。
【0038】
なお、ここでは、ベルト24は2枚のベルトプライによって構成された所謂交錯ベルトとして説明したが、これに限らず、ベルトは、所謂スパイラルベルトや樹脂層内にコードを埋設した構造等の他の構造を有するベルトが構成されてもよい。
【0039】
(タイヤサイド部)
ランフラットタイヤ10のタイヤ幅方向外側においてビード部16とトレッド部28のタイヤ幅方向端部との間には、タイヤサイド部30が設けられている。具体的には、タイヤサイド部30を構成すると共にタイヤ径方向に沿って延在されたサイドゴム40が、カーカス20のタイヤ幅方向外側においてビード部16とトレッド部28のタイヤ幅方向端部を連結するように配置されている。
【0040】
(サイド補強ゴム)
タイヤサイド部30のタイヤ幅方向内側には、ランフラット走行時にランフラットタイヤ10に作用する荷重に対してタイヤサイド部30を補強するためのサイド補強ゴム34が配設されている。具体的には、カーカス20のカーカス側部20Bのタイヤ幅方向内側に単一のゴム材料からなるサイド補強ゴム34が配設されている。サイド補強ゴム34を設けることにより、パンクなどでランフラットタイヤ10の内圧が減少した場合に車両及び乗員の重量を支えた状態で所定の距離を走行させることができる。
【0041】
サイド補強ゴム34は、カーカス側部20Bの内面に沿ってタイヤ径方向に延在されている。また、サイド補強ゴム34は、ビードコア18側及びトレッド部28側へ向かうにつれて厚さTHが減少する(先細りする)形状に形成されている。具体的には、例えば、タイヤ軸方向に沿った断面形状が略三日月状に形成されている。ここで、厚さTHとは、ランフラットタイヤ10をリム14に組み付けて内圧を零とした状態において、サイド補強ゴム34のタイヤ幅方向内側とタイヤ幅方向外側の面の間隔(長さ)を、タイヤ幅方向内側の面に垂直な線に沿って測定した長さを指している。
【0042】
サイド補強ゴム34のタイヤ径方向内側の端部となる内側端部34A側は、カーカス20を挟んでビードフィラー36と重なっている。具体的には、サイド補強ゴム34の内側端部34A側は、ビードフィラー36とタイヤ径方向に沿ってオーバーラップするように配設されている。一方、サイド補強ゴム34のタイヤ径方向外側の端部となる外側端部34B側は、カーカス20を挟んでベルト24と重なっている。具体的には、サイド補強ゴム34の外側端部34B側は、ベルト24とタイヤ幅方向に沿ってオーバーラップするように配設されている。
【0043】
なお、ここでは、サイド補強ゴム34は単一のゴム材料により構成されているとして説明するが、これに限らず、サイド補強ゴムは、例えば、熱可塑性樹脂等の他の材料を主成分として構成されていてもよい。
【0044】
さらに、ここでは、サイド補強ゴム34は、1種類のゴム部材で構成されているとして説明したが、これに限らず、例えば、硬さの異なる複数のゴム部材で構成されてもよい。
【0045】
また、サイド補強ゴム34は、サイド補強ゴム34は、1種類のゴム部材で構成されているとして説明したが、これに限らず、サイド補強ゴムは、ゴム部材が主成分であれば、例えば、他にフィラー、短繊維、樹脂等の材料を含んで構成されてもよい。
【0046】
さらに、サイド補強ゴム34は、サイド補強ゴム34は、1種類のゴム部材で構成されているとして説明したが、これに限らず、サイド補強ゴムは、ランフラット走行時の耐久力を高めるためにデュロメータ硬さ試験機を用いて20℃で測定したJIS硬度が70~85のゴム部材を含んで構成してもよい。また、粘弾性スペクトロメータ(例えば、東洋精機製作所製スペクトロメータ)を用いて周波数20Hz、初期歪み10%、動歪み±2%、温度60℃の条件で測定した損失係数(ゴムの粘性の大きさを示す係数)tanδが0.10以下の物性を有するゴム部材を含んで構成されてもよい。
【0047】
(インナライナ)
図1及び
図2に示されるように、カーカス中央部20Aのタイヤ径方向内側かつサイド補強ゴム34のタイヤ幅方向内側には、これらに沿ってインナライナ部44が設けられている。インナライナ部44は、第1インナライナ46と第2インナライナ48を備えている。具体的には、カーカス中央部20Aのタイヤ径方向内側の面とサイド補強ゴム34のタイヤ幅方向内側の面に沿って第1インナライナ46が配設されている。第1インナライナ46のタイヤ回転軸方向に沿った断面における輪郭に沿った両側の第1端部46A(
図1には片側のみ図示)は、サイド補強ゴム34の内側端部34Aよりもタイヤ径方向外側に各々形成されている。なお、ここでは、第1端部46Aは内側端部34Aよりもタイヤ径方向外側に各々形成されているとして説明するが、これに限らず、タイヤ赤道面CLとカーカス中央部20Aが交差する部分からビードコア18側までの長さの約60~90%の長さの部位に第1端部46Aが形成されてもよい。また、第1インナライナ46のカーカス中央部20Aと反対側の面に沿って第1インナライナ46よりも厚さを薄く形成された第2インナライナ48が配設されている。ここで、第2インナライナ48の厚さは、第1インナライナ46の厚さの約30~65%に形成されてもよい。
【0048】
第2インナライナ48は、サイド補強ゴム34の両方の内側端部34A側まで各々延在されており、第2インナライナ48のタイヤ回転軸方向に沿った断面における輪郭に沿った両側の第2端部48A(
図1には片側のみ図示)は第1インナライナ46の第1端部46Aよりもタイヤ径方向内側に形成されている。ここで、第1端部46Aは、ランフラットタイヤ10をリム14に組み付けて内圧を零とした状態において、サイド補強ゴム34のタイヤ幅方向内側の全長のうち外側端部34Bから約45%~85%の部位に設けられてもよい。
【0049】
第1インナライナ46の両方の第1端部46Aは、各々タイヤ径方向内側へ向かうにつれて厚さが漸減するテーパ状とされている。具体的には、タイヤ軸方向に沿った断面視で第1インナライナ46のサイド補強ゴム34側からタイヤ径方向内側かつサイド補強ゴム34と反対側へ向けて勾配が形成されている。また、第2インナライナ48の両方の第2端部48Aは、各々タイヤ径方向内側へ向かうにつれて厚さが漸減するテーパ状とされている。具体的には、タイヤ軸方向に沿った断面視で第2インナライナ48のサイド補強ゴム34側からタイヤ径方向内側かつサイド補強ゴム34と反対側へ向けて勾配が形成されている。
【0050】
第1インナライナ46及び第2インナライナ48を構成するゴムは、ランフラットタイヤ10を構成する他のゴム(例えば、トレッドゴム38、サイドゴム40等)よりも、気体が透過し難くかつヒステリシスロス(損失履歴)が大きいものが用いられている。具体的には、第1インナライナ46及び第2インナライナ48は、例えば、ブチルゴムを主成分とするゴムにより構成されている。ここでいうヒステリシスロスは、ゴムの粘性の大きさを示す損失係数tanδに比例することが知られている。
【0051】
なお、ここでは、第1インナライナ46及び第2インナライナ48はブチルゴムを主成分として形成されているとして説明するが、これに限らず、第1インナライナ及び第2インナライナは、他のゴム部材、樹脂及び樹脂フィルムを主成分としたものでもよい。
【0052】
(作用、効果)
次に、本実施形態に係るランフラットタイヤ10の作用並びに効果について説明する。
【0053】
本実施形態に係るランフラットタイヤ10によれば、インナライナ部44は、第1インナライナ46と第1インナライナ46よりも厚さを薄く形成された第2インナライナ48が配設されている。また、第1インナライナ46の両方の第1端部46Aは、サイド補強ゴム34の内側端部34Aよりもタイヤ径方向外側に各々形成されている。このため、第1インナライナ46をサイド補強ゴム34の内側端部34A側まで延長したタイヤと比較して転がり抵抗を低減することができる。また、転がり抵抗を低減することによって、燃費性能を向上させることができる。
【0054】
何らかの理由によってタイヤの内圧が低下すると、タイヤ幅方向外側を形成するタイヤサイド部30が変形する。具体的には、タイヤサイド部30の中立軸(図示省略)よりもタイヤ幅方向外側の部分はタイヤ径方向に引張力が作用する。このため、ランフラット構造を備えていないタイヤでは、タイヤはタイヤ径方向に沿って伸張変形する(伸びる)。また、タイヤサイド部30の中立軸よりもタイヤ幅方向内側の部分ではタイヤ径方向に圧縮力が作用する。このため、ランフラット構造を備えていないタイヤでは、タイヤはタイヤ径方向に圧縮変形する。
【0055】
本実施形態に係るランフラットタイヤ10によれば、サイド補強ゴム34のタイヤ幅方向内側の面には、第1インナライナ46とサイド補強ゴム34の両方の内側端部34A側まで延在された第2インナライナ48が設けられている。このため、転がり抵抗を低減する上で必要な剛性を確保すると共にタイヤ幅方向内側から外側への気体の透過を抑制又は防止することができる。これにより、転がり抵抗を低減しかつランフラット走行時のビード部16及びタイヤサイド部30の過度の倒れ込みを抑制又は防止するといったランフラット耐久性を確保することができる。
【0056】
さらに、本実施形態に係るランフラットタイヤ10によれば、第1インナライナ46の第1端部46Aはテーパ状に形成されると共に第2インナライナ48の第2端部48Aはテーパ状に形成されている。このため、ランフラットタイヤ10が変形した場合に、第1インナライナ46と第2インナライナ48の第1端部46Aと第2端部48Aがサイド補強ゴムを押圧する力を、タイヤ回転軸方向に沿った断面における輪郭に沿った端部がテーパ状に形成されていない場合と比べて小さくすることができる。これにより、ランフラット走行時にサイド補強ゴム34にかかる力が増加することを抑制又は防止することができ、ランフラットタイヤ10の耐久性を向上させることができる。
【0057】
以上説明したように、本実施形態に係るランフラットタイヤ10は、転がり抵抗を低減しかつランフラット耐久性を確保することができる。
【0058】
さらに、本実施形態のランフラットタイヤ10によれば、ランフラットタイヤ10の通常走行時の縦ばね定数(タイヤが装着された車両の上下方向の弾力性が小さい状態を表す指標)を低減することができる。このため、乗り心地を向上させることができると共にランフラット走行時のランフラット耐久性を確保することができる。
【0059】
(第1変形例)
次に、
図3を用いて、本発明に係るランフラットタイヤ50の第1変形例について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0060】
本変形例に係るランフラットタイヤ50によれば、
図3に示されるように、第1インナライナ46の両方の第1端部46Aは、タイヤ回転軸に沿った断面視で一対の第1仮想線VL1と一対の第2仮想線VL2の間に各々位置している。ここで、一対の第1仮想線VL1は、タイヤ回転軸に沿った断面視で、ベルトのタイヤ幅方向の外端24Eを各々通ると共にカーカス20に対して垂直に各々延在された線とされている。また、一対の第2仮想線VL2は、トレッド部28のタイヤ幅方向の外端28Eを各々通ると共にカーカス20に対して垂直に各々延在された線とされている。ここで、第1端部46Aは、ランフラットタイヤ10をリム14に組み付けて内圧を零とした状態において、第1仮想線VL1から第2仮想線VL2までのサイド補強ゴム34のタイヤ幅方向内側の長さのうち第1仮想線VL1から当該長さの約15%幅方向内側の部位の間に形成されてもよい。また、第1端部46Aは、ランフラットタイヤ10をリム14に組み付けて内圧を零とした状態において、第1仮想線VL1から第2仮想線VL2までのサイド補強ゴム34のタイヤ幅方向内側の長さのうち第1仮想線VL1から当該長さの約30%幅方向外側の部位の間に形成されてもよい。
【0061】
本変形例に係るランフラットタイヤ50によれば、第1インナライナ46のタイヤ回転軸方向に沿った断面における輪郭に沿った両端部は、第1仮想線VL1と第2仮想線VL2の間に各々位置している。このため、第2インナライナ48によって転がり抵抗を低減するために必要な剛性を確保すると共にタイヤ幅方向内側から外側への気体の透過を抑制又は防止した上で、第1インナライナ46を小さく形成することができる。これにより、転がり抵抗を低減しかつランフラット耐久性を確保することができる。
【0062】
(第2変形例)
次に、
図4及び
図5を用いて、本発明に係るランフラットタイヤ60の第2変形例について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0063】
本変形例に係るランフラットタイヤ60によれば、
図4に示されるように、インナライナ部62は、一体で形成されている。具体的には、第1インナライナ46に相当する外側部分62Aと第2インナライナ48に相当する内側部分62Bが一体で形成されている。
【0064】
外側部分62Aのタイヤ回転軸方向に沿った断面における輪郭に沿った両方の第1端部62A1は、タイヤ軸方向に沿った断面視でインナライナ部62のタイヤ回転軸方向に沿った断面における輪郭に沿った方向の外側へ向け凹とされた略円弧状に形成されている。また、
図5に示されるように、内側部分62Bのタイヤ回転軸方向に沿った断面における輪郭に沿った両方の第2端部62B1は、タイヤ軸方向に沿った断面視でインナライナ部62のサイド補強ゴム34側からタイヤ径方向内側かつサイド補強ゴム34と反対側へ向けて勾配が形成されている。
【0065】
本変形例に係るランフラットタイヤ60によれば、インナライナ部62は外側部分62Aと内側部分62Bが一体で形成されている。このため、インナライナ部62を設けるための作業工数及び製造コストの増加を抑制した上で、転がり抵抗を低減しかつランフラット耐久性を確保することができる。
【0066】
(第2実施形態)
次に、
図6を用いて、本発明に係るランフラットタイヤ70の第2実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0067】
本変形例に係るランフラットタイヤ70によれば、カーカス中央部20Aのタイヤ径方向内側の面とサイド補強ゴム34のタイヤ幅方向内側の面に沿って第1インナライナ74が配設されている。第1インナライナ74はサイド補強ゴム34の両方の内側端部34Aまで延在されており、タイヤ回転軸方向に沿った断面における輪郭に沿った両端部となる第1端部74Aはサイド補強ゴム34の両方の内側端部34A側に各々形成されている。また、第1インナライナ74のカーカス中央部20Aと反対側の面に沿って第1インナライナ74よりも厚さを厚く形成された第2インナライナ76が延在されている。第2インナライナ76のタイヤ回転軸方向に沿った断面における輪郭に沿った両端部となる第2端部76Aは、第1インナライナ74の第1端部74Aよりもタイヤ径方向外側に各々形成されている。ここで、第1インナライナ74の厚さは、第2インナライナ76の厚さの約30~65%に形成されてもよい。
【0068】
このランフラットタイヤ70によれば、第2インナライナ76の第2端部76Aは、第1インナライナ74の第1端部74Aよりもタイヤ径方向外側に各々形成されている。このため、第2インナライナ76がサイド補強ゴム34の両方の内側端部34A側まで各々延長されたタイヤと比較して転がり抵抗を低減することができる。さらに、このランフラットタイヤ70によれば、第1インナライナ74はサイド補強ゴム34の両方の内側端部34A側までサイド補強ゴム34のタイヤ幅方向内側の面に沿って設けられている。このため、転がり抵抗を低減する上で必要な剛性を確保すると共にタイヤ幅方向内側から外側への気体の透過を抑制又は防止することができる。これにより、転がり抵抗を低減しかつランフラット走行時のビード部16及びタイヤサイド部30の過度の倒れ込みを抑制又は防止するといったランフラット耐久性を確保することができる。
【0069】
(第2実施形態の変形例)
次に、
図7を用いて、本発明に係るランフラットタイヤ80の第2実施形態について説明する。なお、前述した第2実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0070】
本変形例に係るランフラットタイヤ80によれば、
図7に示されるように、第2インナライナ76の両方の第2端部76Aは、タイヤ回転軸に沿った断面視で一対の第1仮想線VL1と一対の第2仮想線VL2の間に各々位置している。ここで、一対の第1仮想線VL1は、タイヤ回転軸に沿った断面視で、ベルトのタイヤ幅方向の外端24Eを各々通ると共にカーカス20に対して垂直に各々延在された線とされている。また、一対の第2仮想線VL2は、トレッド部28のタイヤ幅方向の外端28Eを各々通ると共にカーカス20に対して垂直に各々延在された線とされている。ここで、第2端部76Aは、ランフラットタイヤ10をリム14に組み付けて内圧を零とした状態において、第1仮想線VL1から第2仮想線VL2までのサイド補強ゴム34のタイヤ幅方向内側の長さのうち第1仮想線VL1から当該長さの約15%幅方向内側の部位の間に形成されてもよい。また、第2端部76Aは、ランフラットタイヤ10をリム14に組み付けて内圧を零とした状態において、第1仮想線VL1から第2仮想線VL2までのサイド補強ゴム34のタイヤ幅方向内側の長さのうち第1仮想線VL1から当該長さの約30%幅方向外側の部位の間に形成されてもよい。
【0071】
本変形例に係るランフラットタイヤ80によれば、第2インナライナ76の両方の第2端部76Aは、第1仮想線VL1と第2仮想線VL2の間に各々位置している。このため、第1インナライナ74によって転がり抵抗を低減するために必要な剛性を確保すると共にタイヤ幅方向内側から外側への気体の透過を抑制又は防止した上で、第2インナライナ76を小さく形成することができる。これにより、転がり抵抗を低減しかつランフラット耐久性を確保することができる。
【0072】
[その他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0073】
なお、ここでは、本発明の適用例として、乗用車用のランフラットタイヤ10、50、60、70、80について説明したが、これに限らず、本発明は乗用車用以外の車両に用いるランフラットタイヤについても適用することができる。
【0074】
なお、ここでは、第1インナライナ74及び第2インナライナ48は、サイド補強ゴム34の両方の内側端部34A側まで各々延在されているとして説明したが、これに限らず、第1インナライナの第1端部及び第2インナライナの第2端部は、ベルト24の端部付近、例えば、タイヤ回転軸に沿った断面視で一対の第1仮想線VL1と一対の第2仮想線VL2の間に各々形成されてもよい。
【符号の説明】
【0075】
10、50、60、70、80…ランフラットタイヤ、14…リム、18…ビードコア、20…カーカス、20A…カーカス中央部、20B…カーカス側部、20C…折り返し部、24…ベルト、28…トレッド部、34…サイド補強ゴム、46、74…第1インナライナ、48、76…第2インナライナ、VL1…第1仮想線、VL2…第2仮想線