(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-20
(45)【発行日】2023-09-28
(54)【発明の名称】情報処理システム、情報処理装置、プログラム及び情報処理方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/047 20230101AFI20230921BHJP
【FI】
G06Q10/047
(21)【出願番号】P 2019211635
(22)【出願日】2019-11-22
【審査請求日】2022-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】507214083
【氏名又は名称】メタウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(72)【発明者】
【氏名】松岡 遼
(72)【発明者】
【氏名】川原 恭介
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏幸
(72)【発明者】
【氏名】河瀬 雄司
【審査官】▲高▼瀬 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-006612(JP,A)
【文献】特開2001-307279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 -99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1台以上の給水車によって複数の施設に応急給水を行う際に、前記給水車による前記施設への給水の順序を設定する情報処理システムであって、
初動給水として、前記
複数の施設がいずれかの前記給水車によって1回ずつ給水を受けるように、前記初動給水における前記給水車による前記施設への給水の順序である初動給水順序を設定する初動給水設定手段と、
前記初動給水の後に行われる補充給水において、前記初動給水を終了した前記給水車が、
前記初動給水が終了した前記複数の施設の中から次に給水する前記施設を設定する補充給水設定手段と、
を備える、情報処理システム。
【請求項2】
請求項
1に記載の情報処理システムにおいて、
前記
複数の施設の水残量と水消費量とに基づいて、前記
複数の施設に給水された水の残存時間を算出する残存時間算出手段をさらに備え、
前記補充給水設定手段は、
前記初動給水が終了した前記複数の施設における前記残存時間に基づいて、前記給水車が次に給水する前記施設を設定する、情報処理システム。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の情報処理システムにおいて、
前記初動給水設定手段は、前記給水車の積載水量、前記施設の必要水量、及
び配水池から前記施設までの距離のうちの少なくともいずれか一つに基づいて、前記初動給水順序を設定する、情報処理システム。
【請求項4】
請求項1
から3のいずれか一項に記載の情報処理システムにおいて、
前記初動給水設定手段は、前記初動給水における給水を最後に受ける前記施設に前記給水車が到着するまでの時間が最短になるように、前記初動給水順序を設定する、情報処理システム。
【請求項5】
1台以上の給水車によって複数の施設に応急給水を行う際に、前記給水車による前記施設への給水の順序を設定する情報処理装置であって、
初動給水として、前記
複数の施設がいずれかの前記給水車によって1回ずつ給水を受けるように、前記初動給水における前記給水車による前記施設への給水の順序である初動給水順序を設定する初動給水設定手段と、
前記初動給水の後に行われる補充給水において、前記初動給水を終了した前記給水車が、
前記初動給水が終了した前記複数の施設の中から次に給水する前記施設を設定する補充給水設定手段と、
を備える、情報処理装置。
【請求項6】
1台以上の給水車によって複数の施設に応急給水を行う際に、前記給水車による前記施設への給水の順序を設定する情報処理システムであって、初動給水として、前記
複数の施設がいずれかの前記給水車によって1回ずつ給水を受けるように、前記初動給水における前記給水車による前記施設への給水の順序である初動給水順序を設定する初動給水設定手段と、
前記初動給水の後に行われる補充給水において、前記初動給水を終了した前記給水車が、
前記初動給水が終了した前記複数の施設の中から次に給水する前記施設を設定する補充給水設定手段と、を備える情報処理システムを構成するために、
前記初動給水設定手段及び前記補充給水設定手段の少なくとも一方を備える、情報処理装置。
【請求項7】
1台以上の給水車によって複数の施設に応急給水を行う際に、前記給水車による前記施設への給水の順序を設定する情報処理装置を、
初動給水として、前記
複数の施設がいずれかの前記給水車によって1回ずつ給水を受けるように、前記初動給水における前記給水車による前記施設への給水の順序である初動給水順序を設定する初動給水設定手段と、
前記初動給水の後に行われる補充給水において、前記初動給水を終了した前記給水車が、
前記初動給水が終了した前記複数の施設の中から次に給水する前記施設を設定する補充給水設定手段と、
として機能させる、プログラム。
【請求項8】
通信可能に接続された複数の情報処理装置によって構成され、1台以上の給水車によって複数の施設に応急給水を行う際に、前記給水車による前記施設への給水の順序を設定する情報処理システムであって、初動給水として、前記
複数の施設がいずれかの前記給水車によって1回ずつ給水を受けるように、前記初動給水における前記給水車による前記施設への給水の順序である初動給水順序を設定する初動給水設定手段と、
前記初動給水の後に行われる補充給水において、前記初動給水を終了した前記給水車が、
前記初動給水が終了した前記複数の施設の中から次に給水する前記施設を設定する補充給水設定手段と、を備える情報処理システムにおける、前記複数の情報処理装置のうち1つの情報処理装置を、
前記初動給水設定手段及び前記補充給水設定手段の少なくとも一方として機能させる、プログラム。
【請求項9】
1台以上の給水車によって複数の施設に応急給水を行う際に、前記給水車による前記施設への給水の順序を設定する情報処理方法であって、
初動給水として、前記
複数の施設がいずれかの前記給水車によって1回ずつ給水を受けるように、前記初動給水における前記給水車による前記施設への給水の順序である初動給水順序を設定するステップと、
前記初動給水の後に行われる補充給水において、前記初動給水を終了した前記給水車が、
前記初動給水が終了した前記複数の施設の中から次に給水する前記施設を設定するステップと、
を含む、情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理システム、情報処理装置、プログラム及び情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
災害の発生などにより水道管の管路に損傷が発生した場合、避難所などのような重要施設に応急給水を行うことが必要となる場合がある。ここで、応急給水とは、水道管によって水を供給できない場合に、給水車などによって水を運搬して水を供給することをいう。
【0003】
応急給水を行うためには、応急給水の水源となる配水池などに水を確保すること、及び水を運搬することが必要となる。
【0004】
例えば、特許文献1には、災害発生時における水道管の損傷により水道水が流出することを防ぐために、緊急遮断弁を制御する技術が開示されている。特許出願1に記載の技術によれば、緊急遮断弁を閉じることで水道水の流出を防ぎ、配水池などの水を確保することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水道事業者は、災害発生時などにおいても、生活に欠かせない安全な水を、住民に対して安定して供給する必要がある。そのため、このような場合には、配水池などの水を確保するだけでは足りず、避難所等への応急給水によって住民に水を供給することになる。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の技術によれば、応急給水をどの施設にどの順序で行うかを、迅速な対応を求められる中で、人が経験則等により判断せざるを得ない。しかしながら、被災状況の把握が難しい場合も多く、しかもこのような緊急事態も稀であることから、過去の経験則や知見を活用することは難しい場合も多く、迅速に適切な判断をすることが極めて困難であった。
【0008】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、応急給水を行う順序を決定する技術を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態に係る情報処理システムは、
1台以上の給水車によって複数の施設に応急給水を行う際に、前記給水車による前記施設への給水の順序を設定する情報処理システムであって、
初動給水として、前記施設がいずれかの前記給水車によって1回ずつ給水を受けるように、前記初動給水における前記給水車による前記施設への給水の順序である初動給水順序を設定する初動給水設定手段と、
前記初動給水を終了した前記給水車が、次に給水する前記施設を設定する補充給水設定手段と、
を備える。
【0010】
本発明の一実施形態に係る情報処理装置は、
1台以上の給水車によって複数の施設に応急給水を行う際に、前記給水車による前記施設への給水の順序を設定する情報処理装置であって、
初動給水として、前記施設がいずれかの前記給水車によって1回ずつ給水を受けるように、前記初動給水における前記給水車による前記施設への給水の順序である初動給水順序を設定する初動給水設定手段と、
前記初動給水を終了した前記給水車が、次に給水する前記施設を設定する補充給水設定手段と、
を備える。
【0011】
本発明の一実施形態に係る情報処理装置は、
1台以上の給水車によって複数の施設に応急給水を行う際に、前記給水車による前記施設への給水の順序を設定する情報処理システムであって、初動給水として、前記施設がいずれかの前記給水車によって1回ずつ給水を受けるように、前記初動給水における前記給水車による前記施設への給水の順序である初動給水順序を設定する初動給水設定手段と、前記初動給水を終了した前記給水車が、次に給水する前記施設を設定する補充給水設定手段と、を備える情報処理システムを構成するために、
前記初動給水設定手段及び前記補充給水設定手段の少なくとも一方を備える。
【0012】
本発明の一実施形態に係るプログラムは、
1台以上の給水車によって複数の施設に応急給水を行う際に、前記給水車による前記施設への給水の順序を設定する情報処理装置を、
初動給水として、前記施設がいずれかの前記給水車によって1回ずつ給水を受けるように、前記初動給水における前記給水車による前記施設への給水の順序である初動給水順序を設定する初動給水設定手段と、
前記初動給水を終了した前記給水車が、次に給水する前記施設を設定する補充給水設定手段と、
として機能させる。
【0013】
本発明の一実施形態に係るプログラムは、
通信可能に接続された複数の情報処理装置によって構成され、1台以上の給水車によって複数の施設に応急給水を行う際に、前記給水車による前記施設への給水の順序を設定する情報処理システムであって、初動給水として、前記施設がいずれかの前記給水車によって1回ずつ給水を受けるように、前記初動給水における前記給水車による前記施設への給水の順序である初動給水順序を設定する初動給水設定手段と、前記初動給水を終了した前記給水車が、次に給水する前記施設を設定する補充給水設定手段と、を備える情報処理システムにおける、前記複数の情報処理装置のうち1つの情報処理装置を、
前記初動給水設定手段及び前記補充給水設定手段の少なくとも一方として機能させる。
【0014】
本発明の一実施形態に係る情報処理方法は、
1台以上の給水車によって複数の施設に応急給水を行う際に、前記給水車による前記施設への給水の順序を設定する情報処理方法であって、
初動給水として、前記施設がいずれかの前記給水車によって1回ずつ給水を受けるように、前記初動給水における前記給水車による前記施設への給水の順序である初動給水順序を設定するステップと、
前記初動給水を終了した前記給水車が、次に給水する前記施設を設定するステップと、
を含む。
【0015】
本発明の一実施形態に係る情報処理システムは、
1以上の移動体によって複数の地点を訪問する際に、前記移動体による訪問の順序を設定する情報処理システムであって、
一次訪問として、前記地点がいずれかの前記移動体によって1回ずつ訪問を受けるように、前記一次訪問における前記移動体による訪問の順序である一次訪問順序を設定する一次訪問設定手段と、
前記一次訪問を終了した前記移動体が、次に訪問する前記地点を設定する二次訪問設定手段と、
を備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一実施形態によれば、応急給水を行う順序を決定する技術が改善する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る情報処理システムの使用例を説明するための図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る情報処理システムの概略構成を示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る情報処理システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0019】
図1を参照して、本発明の一実施形態に係る情報処理システム1の使用例について説明する。情報処理システム1は、ネットワーク6を介して端末装置4-1~4-5と通信可能に接続されている。端末装置4-1~4-5は、それぞれ施設3-1~3-5に設置されている端末装置である。
【0020】
ネットワーク6は、無線通信可能なネットワークであってもよいし、有線通信可能なネットワークであってもよい。または、ネットワーク6は、無線通信可能なネットワークと、有線通信可能なネットワークとの両方を含むネットワークであってよい。
【0021】
図1において、5つの施設3-1~3-5が示されているが、施設3の数は2以上の任意の数であってよい。施設3-1~3-5について特に区別する必要がない場合、単に施設3と称して説明する。
【0022】
図1において、5つの端末装置4-1~4-5が示されているが、端末装置4は施設3-1~3-5のそれぞれに1つ以上設置されていればよく、端末装置4の数は2以上の任意の数であってよい。端末装置4-1~4-5について特に区別する必要がない場合、単に端末装置4と称して説明する。
【0023】
施設3は、災害が発生した場合など、水道管による水の供給ができなくなったときに、応急給水の対象となる施設である。施設3は、例えば、避難所として避難者を受け入れている学校、及び病院などである。
【0024】
施設3は、応急給水を受ける際、配水池2から水を運搬してきた給水車5から給水を受ける。施設3は、貯水槽を有している場合、給水車5からの給水を貯水槽に貯めておいてよい。あるいは、施設3は、給水車5から受けた給水を、避難者が有するポリタンクなどに直接配給してもよい。
【0025】
図1において、3台の給水車5-1~5-3が示されているが、給水車5の台数は1台以上の任意の台数であってよい。給水車5-1~5-3について特に区別する必要がない場合、単に給水車5と称して説明する。
【0026】
配水池2は、消毒済みの浄水が蓄えられている設備である。給水車5は、配水池2に蓄えられている水を運搬して施設3に給水することで、災害発生時に施設3に応急給水を行うことができる。
【0027】
端末装置4は、施設3に設置されている端末装置である。端末装置4は、通信機能を有する汎用のコンピュータであってよい。
【0028】
端末装置4は、施設3の管理者などによる操作を受け付けて、施設3に滞在している人の人数を情報処理システム1に送信する。例えば、施設3が避難所である場合、端末装置4は、避難所に滞在している避難者の人数を情報処理システム1に送信する。例えば、施設3が病院である場合、端末装置4は、病院に滞在している患者、医師及び看護師などの合計人数を情報処理システム1に送信する。
【0029】
情報処理システム1は、1台以上の給水車5によって複数の施設3に応急給水を行う際に、給水車5による施設3への給水の順序を設定するシステムである。情報処理システム1によって応急給水の際の給水の順序が設定されると、給水車5は、設定された順序に基づいて配水池2から施設3まで水を運搬し、応急給水をおこなう。情報処理システム1は、例えば、給水車5に対して給水先を指令する機関に設置されていてよい。情報処理システム1は、例えば、水道局などに設置されていてよい。
【0030】
続いて、
図2を参照して、本発明の一実施形態に係る情報処理システム1について説明する。情報処理システム1は、表示装置10と、入力装置20と、情報処理装置30とを備える。
【0031】
(表示装置のハードウェア構成)
表示装置10のハードウェア構成について説明する。表示装置10は、例えば液晶ディスプレイ又はOEL(Organic Electro-luminescence)ディスプレイ等のディスプレイである。本実施形態において、表示装置10は、情報処理装置30に接続される。
【0032】
(入力装置のハードウェア構成)
入力装置20のハードウェア構成について説明する。入力装置20は、例えばキーボード又はマウス等の、ユーザによる操作を受け付ける入力インタフェースである。本実施形態において、入力装置20は、情報処理装置30に接続される。
【0033】
(情報処理装置のハードウェア構成)
情報処理装置30のハードウェア構成について詳細に説明する。情報処理装置30は、通信部31と、記憶部32と、制御部33と、を備える。
【0034】
通信部31は、無線又は有線を介して外部装置と通信する1つ以上の通信インタフェースである。通信部31は、ネットワーク6を介して端末装置4と通信する通信インタフェースを含む。また、通信部31は、表示装置10及び入力装置20のそれぞれと通信する通信インタフェースを含む。
【0035】
記憶部32は、1つ以上のメモリである。メモリは、例えば半導体メモリ、磁気メモリ、又は光メモリ等であるが、これらに限られず任意のメモリとすることができる。記憶部32は、例えば一次記憶装置又は二次記憶装置として機能する。記憶部32は、例えば情報処理装置30に内蔵されるが、任意のインタフェースを介して情報処理装置30に外部から接続される構成も可能である。
【0036】
制御部33は、1つ以上のプロセッサである。プロセッサは、例えば汎用のプロセッサ、又は特定の処理に特化した専用プロセッサであるが、これらに限られず任意のプロセッサとすることができる。制御部33は、情報処理装置30全体の動作を制御する。
【0037】
(情報処理装置のソフトウェア構成)
情報処理装置30のソフトウェア構成について説明する。情報処理装置30の動作の制御に用いられる1つ以上のプログラムが記憶部32に記憶されている。当該1つ以上のプログラムは、制御部33によって読み込まれると、制御部33を初動給水設定手段331、補充給水設定手段332及び残存時間算出手段333として機能させる。
【0038】
制御部33の各手段の概要について説明する。初動給水設定手段331は、初動給水の段階における給水車5による施設3への給水の順序を設定する手段である。「初動給水」については後述する。補充給水設定手段332は、補充給水の段階において、給水車5が補充給水として次に給水する施設3を設定する手段である。「補充給水」については後述する。残存時間算出手段333は、施設3に貯められている水の残存時間を算出する手段である。「残存時間」については後述する。各手段の具体的な動作については後述する。
【0039】
(情報処理システムの動作)
情報処理システム1の動作について説明する。情報処理装置30の制御部33は、災害の発生時などにおいて、施設3に応急給水をすることが必要になると、「初動給水」及び「補充給水」の2つの段階で応急給水を行うように、給水車5による施設3への給水の順序を、ユーザの操作に応じて設定する。
【0040】
ここで、「初動給水」は、応急給水が必要になった場合に最初に行われる給水のことを意味する。初動給水設定手段331は、初動給水として、各施設3がいずれかの給水車5によって1回ずつ給水を受けるように、給水車5による施設3への給水の順序を設定する。以後、初動給水設定手段331が設定する、初動給水における給水車5による施設3への給水の順序を「初動給水順序」と称する場合もある。
【0041】
また、「補充給水」は、初動給水の後に行われる給水のことを意味する。補充給水設定手段332は、初動給水における施設3への給水を全て終了して配水池2に戻った給水車5が、補充給水として次に給水する施設3を設定する。ここで、給水車5が初動給水を全て終了して配水池2に戻るとは、初動給水設定手段331によって設定された初動給水順序において行き先として設定された各施設3に対して、給水車5が給水を終了し、配水池2に戻ったことを意味する。
【0042】
例えば、初動給水順序において給水車5が1つの施設3-1のみに対して給水を行うことを設定されていた場合、給水車5が配水池2において水を補給し、その水を施設3-1まで運搬して施設3-1で給水し、配水池2に戻ると、給水車5は、初動給水を全て終了したことになる。
【0043】
また例えば、初動給水順序において、給水車5が施設3-1、施設3-2の順序で給水を行うことを設定されていた場合、給水車5が配水池2において水を補給し、その水を施設3-1まで運搬して施設3-1で給水し、配水池2に戻って水を補給し、その水を施設3-2まで運搬して施設3-2で給水し、配水池2に戻ると、給水車5は、初動給水を全て終了したことになる。
【0044】
なお、初動給水の終了は、給水車5が配水池2に戻ったタイミングで終了したとしてもよく、最後に運搬する施設3での給水を給水車5が完了したタイミングで終了したとしてもよい。また、複数の給水車5で初動給水する場合には、給水車5ごとに初動給水の終了を判定してもよく、全ての給水車5が配水池2に戻った場合に初動給水が終了したとしてもよい。
【0045】
以後、情報処理システム1の動作について、具体例を適宜挙げながら説明する。本実施形態においては、災害の発生により、
図1に示す施設3-1~3-5において応急給水が必要になったものとして説明する。なお、施設3-1~3-5を、それぞれ施設A~Eと称して説明する場合がある。
【0046】
本実施形態においては、災害発生時における施設A~Eの状況が
図3に示すような状況であるものとする。記憶部32は、災害発生時に、施設3のそれぞれについて、
図3に示すような項目の内容、すなわち、人数、必要水量、距離、片道時間、及び水消費量を記憶する。
【0047】
図3に示す「人数」との項目は、施設3に滞在している人の人数を示す。情報処理システム1は、この「人数」の情報を施設A~Eに設置されている端末装置4-1~4-5からそれぞれ受信して取得する。制御部33は、取得した「人数」の値を記憶部32に記憶する。
【0048】
ここで、滞在している人の人数は、各施設で計測・管理している実人数の情報を用いるようにしてもよい。この場合には、正確な情報に基づいて、精度の高い給水処理が実現できる。あるいは、各施設3に避難している人数を、当該施設3の近隣の住居数等から推定した推定人数としてもよい。この場合には、簡易的に、迅速な給水処理が実現できる。また、迅速性が求められる初動給水においては推定人数を用い、補充給水においては実人数を用いるようにしてもよい。
【0049】
図3に示す「必要水量」との項目は、応急給水として1日に必要とされる水の量を示す。
図3に示す例においては、1人あたり1日に3[L]の水が必要であるとして算出されている。制御部33は、施設A~Eに設置されている端末装置4-1~4-5から「人数」の情報を取得すると、応急給水として1日に必要とされる水の量の値を乗算して「必要水量」を算出する。制御部33は、算出した「必要水量」の値を記憶部32に記憶する。なお、1人あたり1日に必要な水量は、例えば厚生労働省が定める「地震対策マニュアル策定指針」に基づいて設定することができる。
【0050】
図3に示す「距離」との項目は、配水池2から施設3までの距離を示す。この距離は、簡易的に配水池2から施設3までの直線距離に基づいて算出してもよいが、公知の経路探索手段などによって探索された、給水車5が走行する経路に沿った距離とするのが好ましい。特に、災害時の応急給水の場合には、給水車5が実際に走行可能な経路の距離とするのがより好ましい。記憶部32は、この「距離」の値を予め記憶部32に記憶していてよく、または、給水先を設定する際に算出したされた値を記憶してもよい。
【0051】
図3に示す「片道時間」との項目は、配水池2から施設3まで給水車5が走行したときにかかる時間を示す。「片道時間」は、例えば、配水池2から施設3まで給水車5が走行したときに通常かかると想定される時間であってよい。この場合、記憶部32は、この「片道時間」の値を予め記憶部32に記憶していてよい。あるいは、「片道時間」は、経路探索手段などによって交通状況を反映して算出された、配水池2から施設3まで給水車5が走行したときにかかる時間であってよい。この場合、経路探索手段から取得した「片道時間」を、制御部33が定期的に記憶部32に記憶して、記憶部32に記憶されている「片道時間」の値を定期的に更新してもよく、給水先を設定する際に算出された値を記憶してもよい。
【0052】
図3に示す「水消費量」との項目は、施設3において1時間あたりに消費される水の量を示す。制御部33は、「必要水量」の値を、例えば1日の時間である24で割ることで「水消費量」を算出する。制御部33は、「必要水量」の値を24以外の数字で割ることで「水消費量」を算出してもよい。制御部33は、例えば、睡眠時間を8時間と想定して、24から8を引いた16で「必要水量」の値を割ることで、「水消費量」を算出してもよい。制御部33は、算出した「水消費量」の値を記憶部32に記憶する。
【0053】
また、本実施形態においては、災害発生時において応急給水に使用可能な給水車5が、
図1に示すように、給水車5-1~5-3の3台であるものとして説明する。なお、給水車5-1~5-3を、それぞれ給水車A~Cと称して説明する場合がある。
【0054】
記憶部32は、給水車5の「積載水量」を記憶している。記憶部32は、給水車5の「積載水量」の値を予め記憶部32に記憶していてよい。本実施形態においては、給水車A~Cの積載水量として、
図4に示すような値が記憶部32に記憶されているものとして説明する。
【0055】
<初動給水>
初動給水設定手段331は、給水車5の積載水量、施設3の必要水量、及び配水池2から施設3までの距離のうちの少なくともいずれか一つに基づいて、初動給水順序を設定する。
【0056】
初動給水設定手段331は、例えば、必要水量が多い施設3に対しては積載水量の多い給水車5が給水に行くように、初動給水順序を設定してよい。以下、具体例を挙げて説明する。
【0057】
本実施形態において、応急給水が必要な施設3は、
図3に示すような施設A~Eであるものとする。また、施設A~Eに対して応急給水を行う給水車5は、
図4に示すような給水車A~Cであるものとする。
【0058】
図3を参照すると、施設A~Eの必要水量は以下の通りである。
施設Aの必要水量:3000[L]
施設Bの必要水量:3300[L]
施設Cの必要水量:3600[L]
施設Dの必要水量:3900[L]
施設Eの必要水量:4200[L]
このように、施設D及び施設Eにおいて必要水量が多くなっている。
【0059】
また、
図4を参照すると、給水車A~Cの積載水量は以下の通りである。
給水車Aの積載水量:1000[L]
給水車Bの積載水量:1500[L]
給水車Cの積載水量:2000[L]
このように、給水車B及び給水車Cにおいて積載水量が多くなっている。
【0060】
上記のように、施設D及び施設Eにおいて必要水量が多くなっており、給水車B及び給水車Cにおいて積載水量が多くなっている。従って、初動給水設定手段331は、必要水量が多い施設D及びEに対して、積載水量の多い給水車B及びCが給水に行くように、初動給水順序を設定してよい。この際、施設Dよりも施設Eの必要水量が多く、給水車Bよりも給水車Cの積載水量が多い。従って、初動給水設定手段331は、施設Dに対して給水車Bが給水に行き、施設Eに対して給水車Cが給水に行くように、初動給水順序を設定してよい。
【0061】
初動給水設定手段331は、残りの施設A~Cについては、給水車Aが給水に行くように初動給水順序を設定してよい。この際、初動給水設定手段331は、例えば、配水池2から施設3までの片道時間が短い順に、給水車Aが給水に行く初動給水順序を設定してよい。
【0062】
図3を参照すると、配水池2から施設A~Cまでの片道時間は以下の通りである。
施設Aまでの片道時間:0.5[h]
施設Bまでの片道時間:1.0[h]
施設Cまでの片道時間:1.5[h]
従って、初動給水設定手段331は、給水車Aが、施設A、施設B、施設Cの順序で給水に行くように、初動給水順序を設定してよい。
【0063】
まとめると、初動給水設定手段331は、給水車A~Cによる施設A~Eへの初動給水順序を、以下のように設定してよい。
給水車A:施設A→施設B→施設C
給水車B:施設D
給水車C:施設E
このように初動給水順序が設定された場合の給水車A~Cによる施設A~Eへの給水の様子について、
図5を参照して説明する。
【0064】
図5において、横軸は、初動給水設定手段331によって初動給水順序が設定され、その初動給水順序に基づいて給水車A~Cが初動給水を開始してからの時間の経過を示す。
【0065】
給水車Aは、初動給水設定手段331によって初動給水順序が設定されると配水池2から施設Aに向かって出動する。
図3に示すように、配水池2から施設Aまでの移動にかかる片道時間は0.5[h]であるため、給水車Aは、0.5[h]後に施設Aに到着し、施設Aへの給水を行う。給水車Aは、施設Aへの給水が終わると配水池2に引き返す。移動には0.5[h]かかるため、給水車Aは、1.0[h]後に配水池2に帰局する。ここで、「帰局する」とは、配水池2に戻ることを意味する。
【0066】
給水車Aは、配水池2に帰局すると水を補給し、施設Bに向かって出動する。
図3に示すように、配水池2から施設Bまでの移動にかかる片道時間は1.0[h]であるため、給水車Aは、2.0[h]後に施設Bに到着し、施設Bへの給水を行う。給水車Aは、施設Bへの給水が終わると配水池2に引き返す。移動には1.0[h]かかるため、給水車Aは、3.0[h]後に配水池2に帰局する。
【0067】
給水車Aは、配水池2に帰局すると水を補給し、施設Cに向かって出動する。
図3に示すように、配水池2から施設Cまでの移動にかかる片道時間は1.5[h]であるため、給水車Aは、4.5[h]後に施設Cに到着し、施設Cへの給水を行う。給水車Cは、施設Cへの給水が終わると配水池2に引き返す。移動には1.5[h]かかるため、給水車Aは、6.0[h]後に配水池2に帰局する。この段階で、給水車Aは、初動給水が全て終了したことになる。
【0068】
給水車Bは、初動給水設定手段331によって初動給水順序が設定されると配水池2から施設Dに向かって出動する。
図3に示すように、配水池2から施設Dまでの移動にかかる片道時間は2.0[h]であるため、給水車Bは、2.0[h]後に施設Dに到着し、施設Dへの給水を行う。給水車Bは、施設Dへの給水が終わると配水池2に引き返す。移動には2.0[h]かかるため、給水車Bは、4.0[h]後に配水池2に帰局する。この段階で、給水車Bは、初動給水が全て終了したことになる。
【0069】
給水車Cは、初動給水設定手段331によって初動給水順序が設定されると配水池2から施設Eに向かって出動する。
図3に示すように、配水池2から施設Eまでの移動にかかる片道時間は2.5[h]であるため、給水車Cは、2.5[h]後に施設Eに到着し、施設Eへの給水を行う。給水車Cは、施設Eへの給水が終わると配水池2に引き返す。移動には2.5[h]かかるため、給水車Cは、5.0[h]後に配水池2に帰局する。この段階で、給水車Cは、初動給水が全て終了したことになる。
【0070】
なお、
図5において、給水車A~Cが配水池2において水を補給するためにかかる時間は省略している。また、
図5において、給水車A~Cが施設A~Eのいずれかに給水をするためにかかる時間は省略している。
【0071】
制御部33は、初動給水設定手段331が設定した初動給水順序を表示装置10に表示させてよい。初動給水設定手段331が設定した初動給水順序の情報の出力先は、表示装置10に限定されない。例えば、制御部33は、初動給水設定手段331が設定した初動給水順序を、通信部31を介して給水車5に送信し、給水車5が備えるカーナビに表示させてもよく、カーナビ上での経路案内情報として出力させてもよい。
【0072】
<初動給水の他の例1>
初動給水設定手段331は、例えば、初動給水における給水を最後に受ける施設3に給水車5が到着するまでの時間が最短になるように、初動給水順序を設定してもよい。
【0073】
応急給水が必要な施設3が
図3に示すような施設A~Eであり、応急給水を行う給水車5が
図4に示すような給水車A~Cである場合、初動給水設定手段331は、給水車A~Cによる施設A~Eへの初動給水順序を、例えば、以下のように設定してよい。
給水車A:施設B→施設C
給水車B:施設A→施設D
給水車C:施設E
【0074】
このように初動給水順序が設定された場合、給水車Aは、初動給水設定手段331によって初動給水順序が設定されると、配水池2から施設Bに向かって出動し、施設Bへ到着して給水を行うと配水池2に帰局する。配水池2から施設Bまでの移動にかかる片道時間は1.0[h]であるため、給水車Aは、2.0[h]後に配水池2に帰局する。
【0075】
給水車Aは、配水池2に帰局すると水を補給し、施設Cに向かって出動する。給水車Aは、施設Cへ到着して給水を行うと配水池2に帰局する。配水池2から施設Cまでの移動にかかる片道時間は1.5[h]であるため、給水車Aは、2.0[h]後の3.0[h]後である5.0[h]後に配水池2に帰局する。この段階で、給水車Aは、初動給水が全て終了したことになる。
【0076】
給水車Bは、初動給水設定手段331によって初動給水順序が設定されると、配水池2から施設Aに向かって出動し、施設Aへ到着して給水を行うと配水池2に帰局する。配水池2から施設Aまでの移動にかかる片道時間は0.5[h]であるため、給水車Aは、1.0[h]後に配水池2に帰局する。
【0077】
給水車Bは、配水池2に帰局すると水を補給し、施設Dに向かって出動する。給水車Bは、施設Dへ到着して給水を行うと配水池2に帰局する。配水池2から施設Dまでの移動にかかる片道時間は2.0[h]であるため、給水車Bは、1.0[h]後の4.0[h]後である5.0[h]後に配水池2に帰局する。この段階で、給水車Bは、初動給水が全て終了したことになる。
【0078】
給水車Cは、初動給水設定手段331によって初動給水順序が設定されると、配水池2から施設Eに向かって出動し、施設Eへ到着して給水を行うと配水池2に帰局する。配水池2から施設Eまでの移動にかかる片道時間は2.5[h]であるため、給水車Aは、5.0[h]後に配水池2に帰局する。この段階で、給水車Cは、初動給水が全て終了したことになる。
【0079】
初動給水設定手段331は、このように「初動給水の他の例1」で説明したような初動給水順序を設定することで、初動給水における給水を最後に受ける施設3に給水車5が到着するまでの時間を最短にすることができる。具体的には、初動給水設定手段331が「初動給水の他の例1」で説明したような初動給水順序を設定した場合、初動給水における給水を最後に受ける施設3は施設Cであり、施設Cに給水車Aが到着するまでの時間は、3.5[h]である。
【0080】
<初動給水の他の例2>
初動給水設定手段331は、例えば、遠方の施設3に搭載水量が多い給水車5が優先的に向かうように初動給水順序を設定してもよい。例えば、
図3及び
図4に示すような例の場合、初動給水設定手段331は、施設Eには、給水車Cが優先的に向かうように初動給水順序を設定してよい。
【0081】
<初動給水の他の例3>
これまで、施設3への給水を終えた給水車5が配水池2に一旦戻ることを前提として初動給水順序が設定されるものとして説明してきたが、初動給水設定手段331は、給水車5が配水池2に一旦戻ることを前提としないで初動給水順序を設定してもよい。すなわち、初動給水設定手段331は、配水池2で水を補給した給水車5が複数の施設3に給水を行ってから配水池2に戻るように初動給水順序を設定してもよい。
【0082】
この場合、初動給水設定手段331は、給水車5が各施設3に行く順序だけでなく、給水車5が各施設3に給水する水の量も設定してよい。初動給水設定手段331は、例えば、給水車5が各施設3に給水する水の量が均等になるように、各施設3に給水する水の量を設定してよい。具体的には、例えば、給水車Aが施設Aと施設Bに給水する場合、初動給水設定手段331は、給水車Aが施設A及び施設Bにそれぞれ500[L]給水するように、施設A及び施設Bへの給水の量を設定してよい。
【0083】
または、初動給水設定手段331は、例えば、給水車5が各施設3に給水する水の量が各施設3の必要水量に比例した値になるように、各施設3に給水する水の量を設定してよい。具体的には、例えば、給水車Aが施設Aと施設Bに給水する場合、初動給水設定手段331は、給水車Aが1000[L]の水を施設A及び施設Bに3000:3300の比率で給水するように、給水車Aによる施設A及び施設Bへの給水の量を設定してよい。
【0084】
また、初動給水設定手段331は、給水車5が複数の施設3に給水を行ってから配水池2に戻るように初動給水順序を設定する場合、必要水量が多い施設3と必要水量が少ない施設3とを組み合わせて初動給水順序を設定してもよい。このように必要水量を平準化して組み合わせることで、給水車5は効率的に施設3に給水することができる。
【0085】
<補充給水>
補充給水設定手段332は、初動給水における施設3への給水を全て終了し配水池2に戻った給水車5が、補充給水として次に給水する施設3を設定する。
【0086】
図5を具体例として参照して説明すると、補充給水設定手段332は、初動給水における施設A、施設B及び施設Cへの給水を終了し、6.0[h]後に配水池2に戻った給水車Aが、補充給水として次に給水する施設3を設定する。また、補充給水設定手段332は、初動給水における施設Dへの給水を終了し、4.0[h]後に配水池2に戻った給水車Bが、補充給水として次に給水する施設3を設定する。また、補充給水設定手段332は、初動給水における施設Eへの給水を終了し、5.0[h]後に配水池2に戻った給水車Cが、補充給水として次に給水する施設3を設定する。
【0087】
補充給水設定手段332は、各施設3に給水された水の残存時間に基づいて、給水車5が補充給水として次に給水する施設3を設定する。ここで、「残存時間」は、施設3に給水された水の量がゼロになるまでの時間を意味する。この「残存時間」は、残存時間算出手段333が算出する。補充給水設定手段332は、残存時間が最も短い施設3を、給水車5が補充給水として次に給水する施設3として設定する。
【0088】
残存時間算出手段333は、各施設3の水残量と水消費量とに基づいて、各施設3に給水された水の残存時間を算出する。まず、残存時間算出手段333は、各施設3の水残量を算出する。水残量は、例えば、センサ(水位計)によって管理することができる。又は、施設3の初動給水後の水残量を、初動給水において給水された水の量と、補充給水での給水があれば補充給水された水の量と、給水を受けてからの経過時間と、水消費量(単位時間あたりの必要水量)とに基づいて算出する。残存時間算出手段333は、例えば、以下の式のようにして、初動給水後の水残量を算出する。
水残量=給水された水の量-給水を受けてからの経過時間×水消費量
次に、残存時間算出手段333は、算出した施設3の水残量を、水消費量(単位時間あたりの必要水量)で除算することで残存時間を算出する。なお、以下の説明においては、初動給水が行われる前は各施設3における水残量はゼロであることを前提としている。
【0089】
図5を具体例として参照して説明すると、施設Aは、1.0[h]後に積載水量が1000[L]の給水車Aによって1000[L]の水が給水されているため、施設Aの1.0[h]後における水残量は1000[L]である。また、
図3を参照すると、施設Aの水消費量は、125[L/h]である。従って、残存時間算出手段333は、残存時間を以下のように計算する。
残存時間=1+1000/125=9
すなわち、残存時間算出手段333は、施設Aにおいては、9[h]後に水の量がゼロになると算出する。
【0090】
図5に示す例について、残存時間算出手段333が、施設B~Eについても同様の算出方法により残存時間を算出すると、施設A~Eにおいて、給水された水の量がゼロになる時間は、以下のようになる。
施設A:9[h]後
施設B:9.3[h]後
施設C:11.2[h]後
施設D:11.2[h]後
施設E:13.9[h]後
【0091】
従って、
図5に示す例においては、初動給水が終わった段階で、施設Aにおいて、給水された水の量が最も早くゼロになる。すなわち、施設Aの残存時間が最も短い。この場合、補充給水設定手段332は、初動給水を終えて4.0[h]後に配水池2に戻った給水車Bが次に給水に行く施設3を施設Aに設定する。
【0092】
また、補充給水設定手段332は、初動給水を終えて5.0[h]後に配水池2に戻った給水車Cが次に給水に行く施設3を、施設Bに設定する。この際、補充給水設定手段332は、既に給水車Bが施設Aに向かっているため、施設Aを除いた施設B~Eの中で残存時間が最も短い施設Bを、給水車Cが次に給水に行く施設3として設定する。
【0093】
補充給水設定手段332は、初動給水を終えて配水池2に戻った給水車5及び補充給水を終えて配水池2に戻った給水車5に対して上述の処理を繰り返し、補充給水として次に給水に行く施設3を設定する。
【0094】
制御部33は、補充給水設定手段332が給水先として設定した施設3の情報を表示装置10に表示させてよい。補充給水設定手段332が給水先として設定した施設3の情報の出力先は、表示装置10に限定されない。例えば、制御部33は、補充給水設定手段332が給水先として設定した施設3の情報を、通信部31を介して給水車5に送信し、給水車5が備えるカーナビに表示させてもよく、カーナビ上での経路案内情報として出力させてもよい。
【0095】
なお、上述した実施形態では、補充給水設定手段332は、施設3に給水された水の量に基づいて水残量の情報を取得しているが、補充給水設定手段332はこれ以外の方法で水残量の情報を取得してよい。例えば、施設3の貯水槽に水位計が設置されていて、水位計が貯水槽に貯まっている水の量を検出可能である場合、補充給水設定手段332は、水位計による測定結果が入力された端末装置4が送信する水残量の情報を、通信部31を介して取得してもよい。
【0096】
<補充給水の他の例1>
補充給水設定手段332は、給水を終えて配水池2に戻った給水車5の行き先を、残存時間のみに基づいて設定するのではなく、給水車5の積載水量及び施設3の必要水量にもさらに基づいて設定してもよい。
【0097】
補充給水設定手段332は、例えば、積載数量の多い給水車5が必要水量の多い施設3に優先的に給水に行くように、残存時間に基づいて定まる補充給水の行き先を入れ替えてもよい。
【0098】
<補充給水の他の例2>
補充給水設定手段332は、給水を終えて配水池2に戻った給水車5の行き先を設定する際に、施設3に優先度の重み付けを付けて、優先度の高い施設3が優先的に給水されるように、給水車5の行き先を設定してもよい。
【0099】
補充給水設定手段332は、例えば、けが人が多い施設3、又は災害の復旧要員として作業している人が多い施設3など、水の消費量が多いと想定される施設3の優先度の重み付けを大きくしてよい。
【0100】
続いて、
図6に示すフローチャートを参照して、本発明の一実施形態に係る情報処理システム1の動作について説明する。
【0101】
災害が発生すると、情報処理システム1は、施設3に設置された端末装置4から施設3に関する情報を取得する。施設3に関する情報は、例えば、施設3に避難している避難者の人数などを含む。また、情報処理システム1は、入力装置20へのユーザの入力を受け付けて、応急給水に使用可能な給水車5の情報を取得する(ステップS101)。
【0102】
初動給水設定手段331は、初動給水として、全ての施設3がいずれかの給水車5によって1回ずつ給水を受けるように初動給水順序を設定する(ステップS102)。
【0103】
補充給水設定手段332は、初動給水における施設3への給水を全て終了し配水池2に戻った給水車5が、補充給水として次に給水する施設3を設定する(ステップS103)。
【0104】
補充給水設定手段332は、配水池2に戻った給水車5に対して、ステップS103の処理を繰り返し実行する。補充給水設定手段332は、施設3に設置された端末装置4から、水道管の復旧などにより応急給水が不要になった旨の情報を受信すると、該施設3を補充給水の行き際の候補から除く。応急給水を行っている全ての施設3について、水道管の復旧などにより応急給水が不要になった旨の情報を端末装置4から受信すると、補充給水設定手段332は、ステップS103の処理を終了する。
【0105】
以上述べたように、本実施形態に係る情報処理システム1は、1台以上の給水車5によって複数の施設3に応急給水を行う際に、給水車5による施設3への給水の順序を設定する。情報処理システム1は、初動給水として施設3がいずれかの給水車5によって1回ずつ給水を受けるように初動給水順序を設定する初動給水設定手段331と、初動給水を終了した給水車5が、次に給水する施設3を設定する補充給水設定手段332と、を備える。これにより、災害の発生などにより応急給水が必要となった場合に、初動給水設定手段331及び補充給水設定手段332によって、1台以上の給水車5による複数の施設3への給水の順序を自動的に設定することができる。また、情報処理システム1は、初動給水と補充給水という2段階の給水によって給水を行うため、最初に初動給水によって全ての施設3に1回ずつ給水を行うことができ、全ての施設3に短時間で水を供給することができる。従って、本実施形態に係る情報処理システム1は、応急給水を行う順序を決定する技術を改善することができる。
【0106】
本発明を諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形及び修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形及び修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各手段、各ステップ等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段及びステップ等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0107】
例えば、上述した実施形態に係る表示装置10、入力装置20、及び情報処理装置30のうち少なくとも2つが、1つの装置として構成されてもよい。また例えば、情報処理装置30の各構成又は各手段が、複数の情報処理装置に分散配置された構成も可能である。当該複数の情報処理装置のうち少なくとも1つが、例えばインターネット等のネットワークに接続されたサーバとして実現される構成も可能である。
【0108】
また、上述した実施形態において、
図6を参照して情報処理システム1の動作の例について説明した。しかしながら、上述した動作に含まれる一部のステップ、又は1つのステップに含まれる一部の動作が、論理的に矛盾しない範囲内において省略された構成も可能である。また、上述した動作に含まれる複数のステップの順番が、論理的に矛盾しない範囲内において入れ替わった構成も可能である。
【0109】
また、上述した実施形態において、情報処理装置30の制御部33によって実現される各種の手段をソフトウェア構成として説明したが、これらのうち少なくとも一部の手段は、ソフトウェア資源及び/又はハードウェア資源を含む概念であってもよい。例えば、初動給水設定手段331は、1つ以上のプロセッサを含んでもよい。
【0110】
また、上述した実施形態に係る情報処理装置30として機能させるために、コンピュータ又は携帯電話等の装置を用いることができる。当該装置は、実施形態に係る情報処理装置30の各機能を実現する処理内容を記述したプログラムを、当該装置のメモリに格納し、当該装置のプロセッサによって当該プログラムを読み出して実行させることによって実現可能である。
【0111】
また、上述した実施形態では、災害時などにおいて、給水車5による施設3への給水の順序を設定する場合を例に挙げて説明したが、情報処理システム1が設定する順序はこれに限定されない。例えば、水の代わりに食料又は物資を施設3に届ける場合にも、情報処理システム1による順序の設定は適用可能である。また、陸路に限定されず、例えば、ヘリコプター又は船舶等による場合も、情報処理システム1による順序の設定は適用可能である。さらに、災害時など緊急時の物資補給に限定されず、例えば、営業車両又は訪問販売員などの移動体によって日常的な場面で複数の地点を訪問する場合にも、情報処理システム1による順序の設定は適用可能である。
【符号の説明】
【0112】
1 情報処理システム
2 配水池
3 施設
4 端末装置
5 給水車
6 ネットワーク
10 表示装置
20 入力装置
30 情報処理装置
31 通信部
32 記憶部
33 制御部
331 初動給水設定手段
332 補充給水設定手段
333 残存時間算出手段