(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-20
(45)【発行日】2023-09-28
(54)【発明の名称】外科手術システム及びポジショナの操作方法
(51)【国際特許分類】
A61B 34/35 20160101AFI20230921BHJP
【FI】
A61B34/35
(21)【出願番号】P 2019212332
(22)【出願日】2019-11-25
【審査請求日】2022-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】514063179
【氏名又は名称】株式会社メディカロイド
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸田 悠治
【審査官】鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-515522(JP,A)
【文献】特開2018-139813(JP,A)
【文献】国際公開第2018/096902(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術支援ロボット、外科医コンソール、及び制御装置を備えた外科手術システムであって、
前記手術支援ロボットは、
遠位端部に外科用器具が装着される複数のマニピュレータアームと、
前記複数のマニピュレータアームの近位端部が連結されるプラットフォームと、
関節を介して連設された複数のリンク、及び、前記関節の各々に設けられた関節駆動装置を有し、前記プラットフォームを支持するとともに当該プラットフォームの位置及び姿勢を変化させるポジショナと、
前記ポジショナに関する操作の入力を受け付けるユーザインターフェースとを
有し、
前記外科医コンソールは、前記複数のマニピュレータアームを操作するための操作入力部を有し、
前記ユーザインターフェースは、前記プラットフォームの位置及び姿勢を変化させるための複数種類の動作モードから1つを選択する操作の入力を受け付ける第1操作具と、位置及び姿勢に関する操作情報の入力を受け付ける単一の第2操作具とを有し、
前記制御装置は、前記第2操作具が受け付けた前記操作情報と選択された前記動作モードとに基づいて前記プラットフォームの位置及び姿勢に関する指令を生成し、生成した前記指令に基づいて前記ポジショナを動作させる、
外科手術システム。
【請求項2】
前記ユーザインターフェースは、第3操作具を更に有し、
前記制御装置は、前記第3操作具が操作されている間にのみ、前記操作情報を取得する、
請求項1に記載の
外科手術システム。
【請求項3】
前記ユーザインターフェースは、ディスプレイを有し、前記ディスプレイは、前記複数種類の動作モードを選択可能に表示するように構成されている、
請求項1又は2に記載の
外科手術システム。
【請求項4】
前記ユーザインターフェースは、ディスプレイを有し、
前記ディスプレイは、選択された一つの前記動作モードが他の前記動作モードから識別された態様で、前記複数種類の動作モードを提示する、
請求項1又は2に記載の
外科手術システム。
【請求項5】
前記ディスプレイは、タッチパネルディスプレイであり、前記第1操作具は、前記タッチパネルディスプレイに表示された前記複数種類の動作モードに対応するモード選択ボタンである、
請求項3又は4に記載の
外科手術システム。
【請求項6】
前記ディスプレイは、選択された一つの前記動作モードに対応する操作画面を表示し、
前記操作画面は、前記ポジショナ、並びに、前記プラットフォーム及び前記複数のマニピュレータアームのうち少なくとも一方を含むモデルと、前記モデルにおける前記プラットフォームの移動方向を表す第1標示と、前記第2操作具の操作方向を表す第2標示とを含む、
請求項3~5のいずれか一項に記載の
外科手術システム。
【請求項7】
前記ポジショナを支持する台車を更に備え、前記ユーザインターフェースが前記台車に設けられている、
請求項1~6のいずれか一項に記載の
外科手術システム。
【請求項8】
遠位端部に外科用器具が装着される複数のマニピュレータアームと、前記複数のマニピュレータアームの近位端部が連結されるプラットフォームと、関節を介して連設された複数のリンク、及び、前記関節の各々に設けられた関節駆動装置を有し、前記プラットフォームを支持するとともに当該プラットフォームの位置及び姿勢を変化させるポジショナと、
前記ポジショナに関する操作の入力を受け付ける第1操作具及び第2操作具を具備するユーザインターフェースとを有する手術支援ロボット、前記複数のマニピュレータアームを操作するための操作入力部を有する外科医コンソール、及び、前記複数のマニピュレータアーム及び前記ポジショナを動作させる制御装置
を備える
外科手術システムにおける前記ポジショナの操作方法であって、
前記制御装置により行われる、
前記第1操作具から入力された前記プラットフォームの位置及び姿勢を変化させるための複数種類の動作モードから選択された1つを取得すること、
前記第2操作具から入力された前記プラットフォームの位置及び姿勢に関する操作情報を取得すること、
取得した前記操作情報と選択された前記動作モードとに基づいて前記プラットフォームの位置及び姿勢に関する指令を生成すること、及び、
生成した前記指令に基づいて前記ポジショナを動作させること、を含む、
ポジショナの操作方法。
【請求項9】
前記ユーザインターフェースは第3操作具を備えており、前記操作情報の取得が、
前記第3操作具が操作されているときに制限される、
請求項8に記載のポジショナの操作方法。
【請求項10】
前記ユーザインターフェースは、ディスプレイを備えており、選択された前記動作モードに対応した操作画面を
前記ディスプレイに表示すること、を更に含む、
請求項8又は9に記載のポジショナの操作方法。
【請求項11】
前記操作画面は、前記ポジショナ、並びに、前記プラットフォーム及び前記複数のマニピュレータアームのうち少なくとも一方を含むモデルと、前記モデルにおける前記プラットフォームの移動方向を表す第1標示と、前記第2操作具の操作方向を表す第2標示とを含む、
請求項10に記載のポジショナの操作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術支援ロボットを具備する外科手術システムに関し、より詳細には、手術支援ロボットにおいてマニピュレータを支持するポジショナへの操作を入力するユーザインターフェースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、低侵襲外科手術を行うためのロボット手術システムが知られている。特許文献1は、この種のロボット手術システムを開示する。
【0003】
特許文献1のロボット手術システムは、外科医用コンソールと、外科医用コンソールによって遠隔操作される手術支援ロボット(遠隔操作アセンブリ)とを備える。手術支援ロボットは、ベースと、ベースに支持された伸縮式コラムと、コラムから水平に伸びる伸縮式ブームと、ブームの先端に支持されたプラットフォームと、プラットフォームに取り付けられた複数のマニピュレータアームと、各マニピュレータアームの先端に装着された手術用器具とを備える。
【0004】
特許文献1に示す手術支援ロボットでは、複数のマニピュレータアームが1つのプラットフォームに装着されている。プラットフォームの位置及び姿勢が変化することにより、複数のマニピュレータアームの近位端部の位置及び姿勢が変化する。手術支援ロボットのコラムには、ユーザインターフェースとしてのタッチパッドが設けられている。タッチパッドには、コラム、ブーム及びマニピュレータアームの動作に関する指令が入力されうる。
【0005】
非特許文献1~4では、特許文献1のようなタッチパッドの操作入力方法が開示されている。タッチパッドには、タッチパネル式ディスプレイと、電源ボタンと、非常ボタンと、ジョイスティックと、昇降レバーとが設けられている。ディスプレイには、Deployボタン、Stowボタン、及び、Enable Joystickボタンが表示されている。ユーザがDeployボタンを押している間、プラットフォームは患者が載置される手術台へ向かって前進し、複数のマニピュレータアームは折り畳まれた状態から展開する。ユーザがStowボタンを押している間、プラットフォームは手術台から後退し、複数のマニピュレータアームは展開された状態から折り畳まれた状態へ格納される。ユーザが、一方の手でEnable Joystickボタンを押しながら、他方の手でジョイスティックを回転や傾倒させることにより、プラットフォームが旋回したり水平方向へ移動したりする。ユーザが、一方の手でEnable Joystickボタンを押しながら、他方の手でレバーを傾倒させることにより、コラムが伸縮してプラットフォームが昇降する。ディスプレイには、患者のモデルと手術部位とが表示される。ユーザが、手術台の傍らであって複数のマニピュレータアームの近傍に居る補助者に案内されながら、ジョイスティックやレバーを操作して、各マニピュレータアームをドッキング位置まで移動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【文献】IntuitiveSurgical,Inc.、“DriveandPosition-P5_OR_PC_HelmInteractions-XiVideoTraining-US”、 "Demonstrates how to drive the Patient Cart and work with OR Staff patient side to position the Patient Cart for docking."、[online]、2016年、[2019年6月6日検索]、インターネット<URL:"https://us.davincisurgerycommunity.com/detail/videos/p5_or_pc_helm-interactions/video/5211406414001/drive-and-position?autoStart=true&=&index=0">
【文献】IntuitiveSurgical,Inc.、“DriveandPosition-P5_OR_PC_HelmInteractions-XiVideoTraining-US”、 "Demonstrates how to Sterile Stow the Patient Cart Arms."、[online]、2016年、[2019年6月6日検索]、インターネット<URL:"https://us.davincisurgerycommunity.com/detail/videos/p5_or_pc_helm-interactions/video/5211440511001/sterile-stow-button?autoStart=true&=&index=1">
【文献】IntuitiveSurgical,Inc.、“DriveandPosition-P5_OR_PC_HelmInteractions-XiVideoTraining-US”、 "Demonstrates how to adjust the Patient Cart boom via the Patient Cart touchpad and the boom position and boom height joysticks."、[online]、2016年、[2019年6月6日検索]、インターネット<URL:"https://us.davincisurgerycommunity.com/detail/videos/p5_or_pc_helm-interactions/video/5210213315001/adjust-boom-via-touchpad?autoStart=true&=&index=0">
【文献】IntuitiveSurgical,Inc.、“DriveandPosition-P5_OR_PC_HelmInteractions-XiVideoTraining-US”、"Demonstrates how to stow and shut down the da Vinci Xi System."、[online]、2016年、[2019年6月6日検索]、インターネット<URL:"https://us.davincisurgerycommunity.com/detail/videos/p5_or_pc_helm-interactions/video/5211443798001/stow-hutdown?autoStart=true&=&index=3">
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記非特許文献1~4のタッチパッドは、プラットフォームの高さ移動と水平移動とで操作の入力を受け付ける操作具が異なる。そのため操作が煩雑となるおそれがある。
【0009】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、手術支援ロボットに搭載されるユーザインターフェースにおいて、ユーザの操作をより容易とするものを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る外科手術システムは、手術支援ロボット、外科医コンソール、及び制御装置を備えた外科手術システムであって、
手術支援ロボットは、
遠位端部に外科用器具が装着される複数のマニピュレータアームと、
前記複数のマニピュレータアームの近位端部が連結されるプラットフォームと、
関節を介して連設された複数のリンク、及び、前記関節の各々に設けられた関節駆動装置を有し、前記プラットフォームを支持するとともに当該プラットフォームの位置及び姿勢を変化させるポジショナと、
前記ポジショナに関する操作の入力を受け付けるユーザインターフェースとを有し、
前記外科医コンソールは、前記複数のマニピュレータアームを操作するための操作入力部を有する。
そして、前記ユーザインターフェースは、
前記プラットフォームの位置及び姿勢を変化させるための複数種類の動作モードから1つを選択する操作の入力を受け付ける第1操作具と、
位置及び姿勢に関する操作情報の入力を受け付ける単一の第2操作具とを有する。
前記制御装置は、前記第2操作具が受け付けた前記操作情報と選択された前記動作モードとに基づいて前記プラットフォームの位置及び姿勢に関する指令を生成し、生成した前記指令に基づいて前記ポジショナを動作させる。
【0011】
また、本発明の一態様に係るポジショナの操作方法は、
遠位端部に外科用器具が装着される複数のマニピュレータアームと、前記複数のマニピュレータアームの近位端部が連結されるプラットフォームと、関節を介して連設された複数のリンク、及び、前記関節の各々に設けられた関節駆動装置を有し、前記プラットフォームを支持するとともに当該プラットフォームの位置及び姿勢を変化させるポジショナと、前記ポジショナに関する操作の入力を受け付ける第1操作具及び第2操作具を具備するユーザインターフェースと、を有する手術支援ロボット、前記複数のマニピュレータアームを操作するための操作入力部を有する外科医コンソール、及び、前記複数のマニピュレータアーム及び前記ポジショナを動作させる制御装置を備える外科手術システムにおける前記ポジショナの操作方法であって、
前記制御装置により行われる、
前記第1操作具から入力された前記プラットフォームの位置及び姿勢を変化させるための複数種類の動作モードから選択された1つを取得すること、
前記第2操作具から入力された前記プラットフォームの位置及び姿勢に関する操作情報を取得すること、
取得した前記操作情報と選択された前記動作モードとに基づいて前記プラットフォームの位置及び姿勢に関する指令を生成すること、及び、
生成した指令に基づいて前記ポジショナを動作させること、を含む。
【0012】
上記手術支援ロボット及びポジショナの操作方法では、動作モードに関わらず、位置及び姿勢に関する操作情報の入力は単一の第2操作具で行われる。つまり、プラットフォームの高さ移動と、水平移動とで操作具を使い分けない。よって、ユーザインターフェースに設けられる操作具の数を減らすことができる。更に、操作具の取り違いなどの誤操作を防止することができるうえ、操作が単純となる。このように、本発明によれば、従来のユーザインターフェースを用いる場合と比較して、ユーザの操作を総じて容易とすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、手術支援ロボットに搭載されるユーザインターフェースにおいて、ユーザの操作をより容易とするものを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る手術支援ロボットを備える外科手術システムの全体的な構成を示す図である。
【
図3】
図3は、手術支援ロボットの制御系統の構成を示す図である。
【
図5】
図5は、操作入力装置の制御系統の構成を示す図である。
【
図6】
図6は、操作入力装置を用いたポジショナの操作方法の流れ図である。
【
図7】
図7は、高さ移動モード選択中の操作画面の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、水平移動モード選択中の操作画面の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、水平回転モード選択中の操作画面の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、左右傾き回転モード選択中の操作画面の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、前後傾き回転モード選択中の操作画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る手術支援ロボット1を備える外科手術システム100の全体的な構成を示す図である。
図1に示す外科手術システム100は、外科医203によって遠隔操作される手術支援ロボット1を用いて患者201に施術する、内視鏡外科手術に利用される。
【0016】
外科手術システム100は、患者側システムである手術支援ロボット1と、外科医側システムであるコンソール2とを備える。コンソール2は、手術支援ロボット1から離れて配置され、施術時において手術支援ロボット1はコンソール2によって遠隔操作される。外科医203は手術支援ロボット1に行わせる動作をコンソール2に入力し、コンソール2は入力された動作指令を手術支援ロボット1に送信する。手術支援ロボット1は、動作指令を取得し、この動作指令に基づいて手術支援ロボット1が具備する長軸状の外科用器具4等を動作させる。外科用器具4は、内視鏡アセンブリや、鉗子等の外科手術器具を含む。
【0017】
〔コンソール2〕
コンソール2は、外科手術システム100と外科医203との間のインターフェースを構成し、手術支援ロボット1を操作するための装置である。コンソール2は、手術室内、或いは、手術室外に設置される。コンソール2は、外科医203が動作指令を入力するための操作用マニピュレータアーム51及び操作ペダル52等の操作入力部と、外科用器具4の一つである内視鏡アセンブリで撮影された画像を表示するモニタ54と、制御部55とを含む。外科医203は、モニタ54で患部(施術部位)を視認しながら、操作入力部に操作を入力する。制御部55は、操作入力部が受け付けた操作の入力を取得して動作指令を生成し、それを有線又は無線を介して手術支援ロボット1の後述するロボット制御装置600へ伝達する。
【0018】
〔手術支援ロボット1〕
手術支援ロボット1は、外科手術システム100と患者201とのインターフェースを構成する。手術支援ロボット1は、手術室内において患者201が横たわる手術台202の傍らに配置される。手術室内は滅菌された滅菌野である。
【0019】
図2は、手術支援ロボット1の側面図である。
図1及び2に示す手術支援ロボット1は、台車70と、台車70に支持されたポジショナ7と、ポジショナ7の遠位端部に取り付けられたプラットフォーム5と、プラットフォーム5に着脱可能に取り付けられた複数の患者側マニピュレータアーム(以下、単に「アーム3」という)と、各アーム3の遠位端部に装着された外科用器具4と、ロボット制御装置600とを備える。ポジショナ7及びプラットフォーム5は、施術時には滅菌ドレープ(図示せず)で覆われる。上記の手術支援ロボット1では、台車70から外科用器具4までの要素が一連に繋がっている。本明細書では、上記一連の要素において、台車70へ向かう側の端部を「近位端部」と称し、その反対側の端部を「遠位端部」と称することとする。
【0020】
〔台車70〕
台車70は、台車本体71、前輪72、後輪73、及び、ハンドル74を備える。ユーザ0(外科医203又は施術補助者)は、ハンドル74を把持して台車70を操舵する。ハンドル74の上方には、ユーザインターフェースである操作入力装置48が設けられている。本実施形態において、手術室内のユーザ0が視認及び操作しうるように、操作入力装置48は台車70に設けられているが、操作入力装置48は手術支援ロボット1の別の場所に配置されていてもよい。操作入力装置48は、手術支援ロボット1の状態に関連する情報データ、特定の手術に関する情報、及び、外科手術システム100の全体に関する情報を表示するように構成されうる。また、操作入力装置48は、手術支援ロボット1に関する操作の入力を受け付ける入力装置として構成されうる。操作入力装置48については、後ほど詳述する。
【0021】
〔ポジショナ7〕
本実施の形態に係るポジショナ7は、7軸垂直多関節ロボットアームとして構成されている。ポジショナ7は、台車70に対してプラットフォーム5の位置を3次元的に移動させる。但し、ポジショナ7の態様は本実施形態に限定されず、7軸以外の多軸垂直多関節ロボットアーム、多軸水平多関節ロボットアームなどがポジショナ7として採用されうる。
【0022】
ポジショナ7は、台車70に固定されたベース90と、ベース90から直列的に接続された複数のポジショナリンク91~96とを備える。複数のポジショナリンク91~96は、ベース90に第1関節J71を介して旋回可能に連結された第1リンク91、第1リンク91に第2関節J72を介して揺動可能に連結された第2リンク92、第2リンク92に第3関節J73を介して揺動可能に連結された第3リンク93、第3リンク93に第4関節J74を介して旋回可能に連結された第4リンク94、第4リンク94に第5関節J75を介して揺動可能に連結された第5リンク95、第5リンク95に第6関節J76を介して旋回可能に連結された第6リンク96、及び、第6リンク96に第7関節J77を介して旋回可能に連結されたメカニカルインターフェース97を含む。メカニカルインターフェース97にはプラットフォーム5が連結される。
【0023】
ポジショナ7の各関節J71~J77には、関節J71~J77を動作させる関節駆動装置D71~D77が設けられている。
図3に示すように、関節駆動装置D71~D77は、サーボモータM71~M77、サーボモータM71~M77の回転角を検出するエンコーダE71~E77、サーボモータM71~M77の出力トルクを増幅させる減速機R71~R77、及び、サーボモータM71~M77の出力をポジショナリンクへ伝達する動力伝達機構(図示略)を含む。動力伝達機構は、複数のギア、動力伝達ベルト、又は、それらの組み合わせで構成されてよい。
【0024】
〔プラットフォーム5〕
図1及び2に示すように、プラットフォーム5は、複数のアーム3の拠点となるハブとしての機能を有する。プラットフォーム5は、複数のアーム3が取り付けられることからアームベースとも称される。本実施形態では、台車70、ポジショナ7及びプラットフォーム5の組み合わせによって、複数のアーム3を移動可能に支持するマニピュレータアーム支持体Sが構成されている。
【0025】
プラットフォーム5は、本体50と、本体50の近位端部に設けられたポジショナ連結部50aと、本体50の遠位端部に設けられた複数のアーム連結部50bとを備える。ポジショナ連結部50aは、ポジショナ7のメカニカルインターフェース97と連結される。本体50は、或る長手方向を有し、長手方向を弦の延伸方向とするアーチ形状を呈する。本体50に対し、複数のアーム連結部50bは本体50の長手方向に分散して配置されている。本実施の形態においては4つのアーム連結部50bが設けられている。各アーム連結部50bにはアーム3の近位端部が着脱可能に連結される。
【0026】
〔患者側マニピュレータアーム3〕
複数のアーム3の各々は実質的に同一の構造を有する。
図2に示すように、アーム3は、アーム本体30と、アーム本体30の遠位端部に連結された並進ユニット35とを備える。各アーム3は、遠位端部が近位端部に対して3次元的に移動可能なように構成されている。アーム3の遠位端部には、外科用器具4が装着されるホルダ36が設けられている。本実施形態においてホルダ36は並進ユニット35に設けられている。複数のアーム3のうち1本には、内視鏡アセンブリが連結される。また、複数のアーム3のうち少なくとも一本は外科手術器具が連結される。外科手術器具は、動作する関節を有する器具(例えば、鉗子、ハサミ、グラスパー、ニードルホルダ、マイクロジセクター、ステープルアプライヤー、タッカー、吸引洗浄ツール、スネアワイヤ、及び、クリップアプライヤー等)、並びに、関節を有しない器具(例えば、切断刃、焼灼プローブ、洗浄器、カテーテル、及び、吸引オリフィス等)を含む群より選択される。
【0027】
アーム本体30は、プラットフォーム5に着脱可能に取り付けられるベース80と、ベース80から遠位端部に向けて順次連結された複数のアームリンク81~86とを備える。複数のアームリンク81~86は、ベース80に第1関節J31を介して旋回可能に連結された第1リンク81、第1リンク81に第2関節J32を介して揺動可能に連結された第2リンク82、第2リンク82に第3関節J33を介して旋回可能に連結された第3リンク83、第3リンク83に第4関節J34を介して揺動可能に連結された第4リンク84、第4リンク84に第5関節J35を介して旋回可能に連結された第5リンク85、第5リンク85に第6関節J36を介して揺動可能に連結された第6リンク86を含む。第6リンク86には、第7関節J37を介して並進ユニット35が揺動可能に連結されている。
【0028】
アーム本体30の各関節J31~J37には、関節J31~J37を動作させる関節駆動装置D31~D37が設けられている。
図3に示すように、関節駆動装置D31~D37は、サーボモータM31~M37、サーボモータM31~M37の回転角を検出するエンコーダE31~E37、サーボモータM31~M37の出力トルクを増幅させる減速機R31~R37、及び、サーボモータM31~M37の出力をポジショナリンクへ伝達する動力伝達機構(図示略)を含む。動力伝達機構は、複数のギア、動力伝達ワイヤ、又は、それらの組み合わせで構成されてよい
【0029】
図2に戻って、並進ユニット35は、第6リンク86と連結された第1並進リンク61と、第1並進リンク61に対して並進する第2並進リンク62と、第2並進リンク62に設けられたホルダ36とを備える。第2並進リンク62は、第1並進リンク61の長手方向に沿って第1並進リンク61上をスライドする。これにより、ホルダ36に連結された外科用器具4を、第1並進リンク61の長手方向と平行に移動させることができる。
【0030】
さらに、並進ユニット35には、並進動作のためのサーボモータM38、ホルダ36の回転軸64回りの回動動作のためのサーボモータM39、サーボモータM38,M39の回転角を検出するエンコーダE38,E39、及び、サーボモータM38,M39の出力を減速させてトルクを増大させる減速機R38,39が設けられる(
図3、参照)。
【0031】
〔ロボット制御装置600〕
手術支援ロボット1は、ロボット制御装置600により動作制御される。ロボット制御装置600は、コンピュータやサーボコントローラ等により構成される。本実施形態においてロボット制御装置600は、台車70の内部に設置されている。
【0032】
図3に示すように、ロボット制御装置600は、複数のアーム3の動作を制御するアーム制御部601、及び、ポジショナ7の動作を制御するポジショナ制御部603を含む。アーム制御部601にはサーボコントローラC31~C39が電気的に接続され、サーボコントローラC31~C39には図示されない増幅回路等を介してサーボモータM31~M39が電気的に接続されている。同様に、ポジショナ制御部603にはサーボコントローラC71~C77が電気的に接続され、サーボコントローラC71~C77には図示されない増幅回路等を介してサーボモータM31~M39が電気的に接続されている。
【0033】
また、ロボット制御装置600は、記憶装置602を含む。記憶装置602には、外科用器具4に関する情報、手術支援ロボット1に関する情報、手術台202に関する情報、コンソール2に関する情報、及び、手術の内容に関する情報などの、ロボット支援手術及びその準備に必要な情報が格納されている。記憶装置602に格納されている情報には、所定の準備位置(プリセット時のプラットフォーム5及び複数のアーム3の位置及び姿勢)が含まれうる。準備位置は、施術の内容(種類)、施術部位等に応じて複数が設定されていてよい。更に、記憶装置602に格納されている情報には、所定の格納位置(格納時のプラットフォーム5及び複数のアーム3の位置及び姿勢)が含まれうる。プラットフォーム5及び複数のアーム3が所定の格納位置にあるとき、台車70による移動時に複数のアーム3等が手術室の壁又は他の手術用具等に接触し難いように、ポジショナ7及び複数のアーム3が折り畳まれた状態となる。なお、準備位置及び格納位置は、ロボット座標上の位置(例えば、台車70を基準とした位置)であってよい。
【0034】
上記構成において、アーム制御部601は、コンソール2又は操作入力装置48が受け付けた操作の入力を取得する。アーム制御部601は、入力された操作とエンコーダE31~E39で検出された回転角とに基づいて、位置指令値を生成する。この位置指令値を取得したサーボコントローラC31~C39は、エンコーダE31~E39で検出された回転角及び位置指令値に基づいて駆動指令値(トルク指令値)を生成する。この駆動指令値を取得した増幅回路は、駆動指令値に対応した駆動電流をサーボモータM31~M39へ供給する。これにより、アーム3の各関節J31~J39が動作して、アーム3の基準点(例えば、アーム3の遠位端部)が入力された操作と対応する移動を行う。
【0035】
ポジショナ制御部603は、コンソール2又は操作入力装置48が受け付けた操作の入力を取得する。ポジショナ制御部603は、入力された操作とエンコーダE71~E77で検出された回転角とに基づいて、位置指令値を生成する。この位置指令値を取得したサーボコントローラC71~C77は、エンコーダE71~E77で検出された回転角及び位置指令値に基づいて駆動指令値(トルク指令値)を生成する。この駆動指令値を取得した増幅回路は、駆動指令値に対応した駆動電流をサーボモータM71~M77へ供給する。これにより、ポジショナ7の各関節J71~J77が動作して、ポジショナ7の基準点(例えば、メカニカルインターフェース97、或いは、メカニカルインターフェース97と連結されたプラットフォーム5)が入力された操作と対応する移動を行う。
【0036】
これ以上の手術支援ロボット1に関する詳細な説明は、特願2018-243422、特願2018-243425、特願2018-243445、特願2018-243446、及び、特願2018-243454の各出願の公開を参照により引用する。
【0037】
〔手術支援ロボット1のプリセット方法〕
手術支援ロボット1を用いた施術の前に、手術支援ロボット1のプリセットが行われる。プリセットでは、外科用器具4が装着されるアーム3のホルダ36を、患者201の体表に留置されたスリーブに挿入された当該外科用器具4に適したドッキング位置まで移動させる。
【0038】
先ず、ユーザ0が台車70を運転することにより、手術支援ロボット1が手術台202の近くまで動かされる。このとき、プラットフォーム5及び複数のアーム3は格納位置にある。
【0039】
台車70が停止した後、ユーザ0は、操作入力装置48を用いて患者201の手術内容に応じた準備位置の選択入力を行う。これに応答して、ロボット制御装置600は、記憶装置602から対応する準備位置の情報を読み出し、ポジショナ7及びアーム3を動作させることにより、プラットフォーム5及び複数のアーム3を準備位置へ移動させる。
【0040】
続いて、ユーザ0は、操作入力装置48を用いて、プラットフォーム5及び複数のアーム3を準備位置から個別に移動させる。また、ユーザ0は、アーム3に直接的に外力を与えることにより、プラットフォーム5及び複数のアーム3を準備位置から個別に移動させてもよい。このようにプラットフォーム5及び複数のアーム3の位置を個別に調整して、各アーム3のホルダ36をドッキング位置まで移動させる。そして、ユーザ0によって、ドッキング位置にあるホルダ36に外科用器具4が連結される。
【0041】
上記の手術支援ロボット1のプリセットの間は、ロボット制御装置600はコンソール2による操作を受け付けない。手術支援ロボット1がプリセットされた後、ロボット制御装置600は、コンソール2による操作を受け付け可能となる。施術時において、手術支援ロボット1は、原則としてポジショナ7を静止させた状態で、コンソール2からの動作指令に応じて、各アーム3を動作させて外科用器具4の位置及び姿勢を適宜変化させる。
【0042】
〔操作入力装置48〕
ここで、操作入力装置48(請求の範囲のユーザインターフェースと対応)について詳細に説明する。
図4は、操作入力装置48の斜視図であり、
図5は、操作入力装置48の制御系統の構成を示す図である。
図4及び5に示すように、操作入力装置48は、タッチパネルディスプレイ41、非常停止スイッチ42、電源スイッチ43、トリガスイッチ44(請求の範囲の第3操作具と対応)、単一のジョイスティック45(請求の範囲の第2操作具と対応)、及び、制御部46を備える。
【0043】
制御部46は、演算制御器460と記憶装置462とを備える。演算制御器460は、プロセッサ461、ROM及びRAMなどのメモリ463、及び、I/O部464を備える。演算制御器460には、インターフェース465を介して記憶装置462が接続されている。演算制御器460には、インターフェース465を介してディスプレイ41が接続されている。演算制御器460、非常停止スイッチ42、及びトリガスイッチ44は、ロボット制御装置600と無線又は有線を介して通信可能である。
【0044】
演算制御器460は、集中制御を行う単独のプロセッサ461を備えてもよいし、分散制御を行う複数のプロセッサ461を備えてもよい。演算制御器460は、例えば、コンピュータ、パーソナルコンピュータ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、FPGA(field-programmable gate array)などのPLD(programmable logic device)、PLC(programmable logic controller)、及び、論理回路のうち少なくとも1つ、或いは、2つ以上の組み合わせで構成され得る。メモリ463や記憶装置462には、プロセッサ461が実行する基本プログラムやソフトウエアプログラム等が格納されている。プロセッサ461がプログラムを読み出して実行することによって、演算制御器460は当該ソフトウエアプログラムに構成された機能を実現する。
【0045】
本実施形態に係るディスプレイ41は、タッチパネルディスプレイであって、パネル状の表示器と、接触式の入力器とを併せ備える。ディスプレイ41は、制御部46から出力される画像を表示する。ユーザ0がディスプレイ41に表示されるボタン等の標示が接触(押圧)すると、ディスプレイ41は当該標示に対応した操作の入力を受け付ける。ディスプレイ41が受け付けた操作の入力は制御部46へ伝達される。
【0046】
非常停止スイッチ42の接点は、ノーマルクローズタイプが採用されている。非常停止スイッチ42が押圧されていないときは接点が閉じて安全状態を示す電流が流れ、非常停止スイッチ42が所定時間(例えば、数秒)連続して押圧されることにより接点が開いて電流が遮断される。手術支援ロボット1の使用中に非常停止スイッチ42が押圧されることで、非常停止の指令がロボット制御装置600へ伝達される。ロボット制御装置600は、非常停止の指令を取得して、手術支援ロボット1の動作を停止させる。
【0047】
電源スイッチ43は、所定時間(例えば、数秒)連続して押圧することによりオンとオフとを切り替えることができる。電源スイッチ43がオンに切り替われば、操作入力装置48に電力が供給されて操作入力装置48が起動する。また、電源スイッチ43がオフに切り替われば、操作入力装置48への電力の供給が停止されて操作入力装置48が停止する。
【0048】
トリガスイッチ44は、いわゆるデッドマンスイッチであり、ユーザ0がトリガスイッチ44を押圧している間だけオンとなり、押圧力を除けばオフとなる。トリガスイッチ44がオンの間のみジョイスティック45の操作が有効となり、トリガスイッチ44がオフの間はジョイスティック45の操作が無効となる。ロボット制御装置600は、トリガスイッチ44のオン/オフを検出する。なお、トリガスイッチ44は、3ポジションのイネーブルスイッチであってもよい。
【0049】
ジョイスティック45は、操作量及び移動方向に関する操作情報の入力を受け付ける操作具である。本実施形態においてジョイスティック45は、前後左右の傾倒と、正逆回転との可能なノブ状又はレバー状を呈する。ジョイスティック45の傾倒方向が入力される移動方向に対応し、ジョイスティック45の回転方向が入力される回転方向に対応し、ジョイスティック45のゼロポジション(基準位置)からの傾倒時間及び回転時間が入力される操作量に対応する。ジョイスティック45が受け付けた操作の入力はロボット制御装置600へ伝達される。ロボット制御装置600は、トリガスイッチ44がオンの間のみ、ジョイスティック45からの入力を受け付ける。
【0050】
上記の通り、操作入力装置48に設けられた各種の入力器は、受け付けた操作の入力を取得して、入力された操作に対応した情報をロボット制御装置600へ伝達する。ここで、入力された操作に対応した情報は、入力された操作に基づいて生成された指令であってもよいし、入力された操作に対応する信号であってもよい。ロボット制御装置600は、操作入力装置48から取得した情報に基づいて、手術支援ロボット1を動作させる。
【0051】
〔ポジショナ7の操作方法〕
ここで、上記構成の操作入力装置48を用いたポジショナ7の操作方法を説明する。以下では、前述のプリセットにおいて、操作入力装置48を用いてポジショナ7を操作することにより、プラットフォーム5の位置及び姿勢を調整する場合について説明する。但し、操作入力装置48を用いたポジショナ7の操作は、プリセット時に限定されることなく行うことができる。
【0052】
図6は、本実施形態に係るポジショナ7の操作方法を実現する操作入力装置48の処理の流れ図である。ポジショナ7を操作してプラットフォーム5を移動させるに際し、制御部46は、ディスプレイ41に操作選択ボタン409(
図7、参照)を表示させる。本実施形態において、操作選択ボタン409は、ポジショナ操作ボタン、姿勢制御ボタン、本体操作ボタンを含む。操作選択ボタン409は、次操作の次操作表示415などの情報と共に表示されてよい。ユーザ0が操作選択ボタン409のうちポジショナ操作ボタンに接触すると、ディスプレイ41はポジショナ操作の選択の入力を受け付け、それを制御部46に伝達する。
【0053】
ポジショナ操作の選択を取得した制御部46は、ディスプレイ41にモード選択ボタン401~405(請求の範囲の第1操作具と対応)を表示させる。モード選択ボタン401~405は、次操作の案内などの情報と共に表示されてよい。
【0054】
本実施形態においてプラットフォーム5の動作モードは、高さ移動モード、水平移動モード、水平回転モード、左右傾き回転モード、及び、前後傾き回転モードの5つが設定されている。高さ移動モードは、プラットフォーム5を昇降移動させるポジショナ7の動作体系である。水平移動モードは、プラットフォーム5を水平面内で移動させるポジショナ7の動作体系である。水平回転モードは、プラットフォーム5を垂直な回転軸を中心として回転させるポジショナ7の動作体系である。左右傾き回転モードは、プラットフォーム5を本体50の長手方向と直交する水平な回転軸を中心として揺動させるポジショナ7の動作体系である。前後傾き回転モードは、プラットフォーム5を本体50の長手方向と平行で水平な回転軸を中心として揺動させるポジショナ7の動作体系である。
【0055】
図6に示すように、ユーザ0は、モード選択ボタン401~405のいずれかに接触すると、ディスプレイ41は動作モードの選択の入力を受け付け、それを制御部46に伝達する。動作モードの選択を取得した制御部46は(ステップS01)、選択された動作モードに対応したプリセット時の操作画面400をディスプレイ41に表示させる(ステップS02)。
【0056】
図7には、高さ移動モード選択中の操作画面400の一例が示されている。
図7に示す操作画面400では、下部に操作選択ボタン409が表示されている。ここでは、ポジショナ7を操作することによりプラットフォーム5を移動させるため、ポジショナ操作、姿勢制御、本体操作の各操作選択ボタン409のうちポジショナ操作が選択されている。
【0057】
操作画面400の左側部には、プラットフォーム5の移動のモード選択ボタン401~405が表示されている。本実施形態では5つの動作モードの各々に対応するモード選択ボタン401~405が設けられている。なお、選択されている動作モードのボタンは、選択されていない動作モードのボタンとは違う態様(例えば、異なる色)で画面に表示される。
【0058】
高さ移動モード選択中の操作画面400では、中央に操作入力装置48を操作しているユーザ0から見た手術支援ロボット1のモデル410の正面図が表示され、モデル410に重複してプラットフォーム5の移動方向を表す第1標示411が示されている。モデル410は、少なくともプラットフォーム5及びポジショナ7が示されていればよい。ポジショナ7は、プラットフォーム5が連結される一部分が示されていてもよい。
【0059】
操作画面400においてモデル410の下方には、次の操作(ここでは、ジョイスティック45の操作)を促す次操作表示415が表示される。加えて、画面400の右側部には、ジョイスティック45のモデル412と、選択中の動作モードに対応したジョイスティック45の操作方向を表す第2標示413とが表示される。本実施形態において、第1標示411及び第2標示413はともに矢印であるが、これらの標示は矢印に限定されない。但し、第1標示411と第2標示413との対応が明確となるように、第1標示411と第2標示413は同一種類或いは関連する画像で表されることが望ましい。
【0060】
次に、ユーザ0は、ジョイスティック45の操作を有効とするために、トリガスイッチ44を押す。ロボット制御装置600は、トリガスイッチ44のオンを検出するまで(ステップS03でNO)待機状態にあり、ジョイスティック45による操作の入力を受け付けない状態にある。ロボット制御装置600は、トリガスイッチ44のオンを検出すると(ステップS03でYES)、ジョイスティック45による操作の入力を受け付ける状態となる。そして、ユーザ0は、トリガスイッチ44を押しながら、ジョイスティック45を第2標示413と対応する方向へ動かす。ロボット制御装置600は、トリガスイッチ44のオンが検出されている間のみ、ジョイスティック45からの操作の入力を受け付ける(ステップS04)。ここで、制御部46は、取得した操作の入力に応じて、画面400に示されるモデル410の位置及び姿勢を変化させてもよい。ロボット制御装置600は、取得した操作の入力と選択中の動作モードとから、プラットフォーム5の位置及び姿勢又はポジショナ7の動作に関する指令を生成する(ステップS05)。ロボット制御装置600は、指令に応じてポジショナ7の関節J71~J77を動作させ(ステップS06)、プラットフォーム5を移動させる。
【0061】
図8は、水平移動モードが選択されている場合の、操作画面400の一例を示す図である。水平移動モード選択中の操作画面400には、手術支援ロボット1のモデル410の平面図が表示され、モデル410に重複してプラットフォーム5の移動方向が十字状の第1標示411で示され、モデル410の右側にジョイスティック45の移動方向が十字状の第2標示413で示される。モード選択ボタン401~405、操作選択ボタン409、ジョイスティック45のモデル412、及び、次の操作を促す次操作表示415は、各動作モードの画面で共通である。
【0062】
図9は、水平回転モード選択中の操作画面400の一例を示す図である。水平回転モードの選択中、操作画面400には、手術支援ロボット1のモデル410の平面図が表示され、モデル410に重複してプラットフォーム5の移動方向が半円弧(又は、部分円弧)状の第1標示411で示され、モデル410の右側にジョイスティック45の移動方向が半円弧(又は、部分円弧)状の第2標示413で示される。
【0063】
図10は、左右傾き回転モード選択中の操作画面400の一例を示す図である。左右傾き回転モードの選択中、操作画面400の中央には操作入力装置48を操作しているユーザ0から見た手術支援ロボット1のモデル410の正面図が表示され、モデル410に重複してプラットフォーム5の移動方向が半円弧(又は、部分円弧)状の第1標示411で示され、モデル410の右側にジョイスティック45の移動方向が画面左右方向の第2標示413で示される。
【0064】
図11は、前後傾き回転モード選択中の操作画面400の一例を示す図である。前後傾き回転モードの選択中、操作画面400の中央には操作入力装置48を操作しているユーザ0から見た手術支援ロボット1のモデル410の正面図が表示され、モデル410に重複してプラットフォーム5の移動方向が半円弧(又は、部分円弧)状の第1標示411で示され、モデル410の右側にジョイスティック45の移動方向が画面上下方向の第2標示413で示される。
【0065】
上記のように、動作モードのいずれかを選択中の操作画面400には、動作モードに対応した手術支援ロボット1のモデル410が表示され、そのモデル410におけるプラットフォーム5の移動方向が第1標示411で示され、プラットフォーム5を移動させるためのジョイスティック45の操作方向が第2標示413で示される。プラットフォーム5の移動方向を表す第1標示411と、ジョイスティック45の操作方向を表す第2標示413とが、操作画面400上で実質的に同じ方向となるように、手術支援ロボット1のモデル410が表示される。
【0066】
モデル410と共にプラットフォーム5の移動方向が第1標示411で示されるので、ユーザ0は現在選択中の動作モードにおいてプラットフォーム5を移動させる方向を直感的に把握することができる。ジョイスティック45の操作方向を表す第2標示413によって、ジョイスティック45の操作すべき方向を直感的に把握することができる。そして、操作画面400上において、プラットフォーム5の移動方向と、ジョイスティック45の操作方向とが、同一であるか類似している。そのため、ユーザ0は画面400を視認することにより、ジョイスティック45を直感的に操作して、プラットフォーム5の移動方向に関する指令を入力することができる。
【0067】
以上に説明したように、本実施形態に係る手術支援ロボット1は、遠位端部に外科用器具4が装着される複数のマニピュレータアーム3と、複数のマニピュレータアーム3の近位端部が連結されるプラットフォーム5と、関節J71~J77を介して連設された複数のリンク91~96、及び、関節J71~J77の各々に設けられた関節駆動装置D71~D77を有し、プラットフォーム5を支持するとともに当該プラットフォーム5の位置及び姿勢を変化させるポジショナ7と、プラットフォーム5が指令された位置及び姿勢となるようにポジショナ7を動作させる制御装置600と、ポジショナ7に関する操作の入力を受け付ける操作入力装置48(ユーザインターフェース)とを備える。
【0068】
操作入力装置48は、プラットフォーム5の位置及び姿勢を変化させるための複数種類の動作モードから1つを選択する操作の入力を受け付けるモード選択ボタン401~405(第1操作具)と、位置及び姿勢に関する操作情報の入力を受け付ける単一のジョイスティック45(第2操作具)とを有する。制御装置600は、ジョイスティック45が受け付けた操作情報と選択された動作モードとに基づいてプラットフォーム5の位置及び姿勢に関する指令を生成し、生成した指令に基づいてポジショナ7を動作させる。
【0069】
また、本実施形態に係るポジショナ7の操作方法は、遠位端部に外科用器具4が装着される複数のマニピュレータアーム3と、複数のマニピュレータアーム3の近位端部が連結されるプラットフォーム5と、関節J71~J77を介して連設された複数のリンク91~96、及び、関節J71~J77の各々に設けられた関節駆動装置D71~D77を有し、プラットフォーム5を支持するとともに当該プラットフォーム5の位置及び姿勢を変化させるポジショナ7と、プラットフォーム5が指令された位置及び姿勢となるようにポジショナ7を動作させる制御装置600とを備える手術支援ロボット1におけるポジショナ7の操作方法であって、
モード選択ボタン401~405(第1操作具)から入力されたプラットフォーム5の位置及び姿勢を変化させるための複数種類の動作モードから選択された1つを取得すること、ジョイスティック45(第2操作具)から入力されたプラットフォーム5の位置及び姿勢に関する操作情報を取得すること、取得した操作情報と選択された動作モードとに基づいてプラットフォーム5の位置及び姿勢に関する指令を生成すること、及び、生成した指令に基づいてポジショナ7を動作させること、を含む。
【0070】
上記手術支援ロボット1及びポジショナ7の操作方法では、動作モードに関わらず、位置及び姿勢に関する操作情報の入力は単一のジョイスティック45で行われる。つまり、プラットフォーム5の高さ移動と、水平移動とで操作具を使い分けない。よって、操作入力装置48に設けられる操作具の数を減らすことができる。更に、操作具の取り違いなどの誤操作を防止することができるうえ、操作が単純となる。このように、本発明によれば、従来のユーザインターフェースを用いる場合と比較して、ユーザ0の操作を総じて容易とすることができる。
【0071】
また、本実施形態に係る手術支援ロボット1では、操作入力装置48(ユーザインターフェース)は、トリガスイッチ44(第3操作具)を更に有し、制御装置600は、トリガスイッチ44が操作されている間(即ち、トリガスイッチ44がオンの間)にのみ、ジョイスティック45(第2操作具)を介して入力された操作情報を取得する。
【0072】
同様に、本実施形態に係るポジショナ7の操作方法では、入力された操作情報の取得が、トリガスイッチ44(第3操作具)が操作されている間(即ち、トリガスイッチ44がオンの間)に制限されることを特徴としている。
【0073】
このように、トリガスイッチ44が操作されている間にのみジョイスティック45による操作の入力が有効となるので、誤操作の入力を防ぎ安全性を高めることができる。
【0074】
また、本実施形態に係る手術支援ロボット1において、ユーザインターフェースは、ディスプレイ41を有する。操作入力装置48(ユーザインターフェース)は、ディスプレイ41に、複数種類の動作モードを選択可能に表示させるように構成されている。或いは、操作入力装置48(ユーザインターフェース)は、ディスプレイ41に、選択された一つの動作モードが他の動作モードから識別された態様で、複数種類の動作モードを提示させるように構成されている。
【0075】
ここで、ディスプレイ41は、タッチパネルディスプレイであって、第1操作具は、タッチパネルディスプレイに表示された複数種類の動作モードに対応するモード選択ボタン401~405であってよい。
【0076】
同様に、本実施形態に係るポジショナ7の操作方法では、選択された動作モードに対応した操作画面400をディスプレイ41に表示すること、を更に含む。
【0077】
上記手術支援ロボット1及びポジショナ7の操作方法では、モード選択ボタン401~405の操作によりプラットフォーム5の動作モードの選択が入力され、選択された動作モードに対応した操作画面400がディスプレイ41に表示される。これにより、ユーザ0はプラットフォーム5の動作モード(即ち、ジョイスティック45の操作によるプラットフォーム5の移動方向)を一目で把握することができ、意図せぬ方向への操作の入力といった誤操作を抑制することができる。
【0078】
更に、本実施形態に係る手術支援ロボット1及びポジショナ7の操作方法では、ディスプレイ41に表示される操作画面400は、ポジショナ7、並びに、プラットフォーム5及び1前記複数のマニピュレータアームのうち少なくとも一方を含むモデル410と、モデル410におけるプラットフォーム5の移動方向を表す第1標示411と、ジョイスティック45(第2操作具)の操作方向を表す第2標示413とを含む。望ましくは、操作画面400上において、第1標示411が示す方向と第2標示413が示す方向とが平行である。
【0079】
これにより、ユーザ0は操作画面400を観ることにより、プラットフォーム5の移動方向とジョイスティック45の操作方向とを直感的に把握することができる。そして、操作画面400において、第1標示411と第2標示413とが対応しているので、ジョイスティック45の操作ミスを防ぐことができる。
【0080】
また、本実施形態に係る手術支援ロボット1は、ポジショナ7を支持する台車70を更に備え、操作入力装置48(ユーザインターフェース)が台車70に設けられている。
【0081】
ポジショナ7は、台車70に相対してプラットフォーム5を移動させるように構成されている。よって、操作入力装置48を用いてポジショナ7を操作することによりプラットフォーム5を移動させるに際し、台車70に操作入力装置48が設けられていることにより、操作入力装置48を操作するユーザ0は直感的に操作入力装置48上の操作具を操作することができる。
【0082】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、本発明の思想を逸脱しない範囲で、上記実施形態の具体的な構造及び/又は機能の詳細を変更したものも本発明に含まれ得る。上記の手術支援ロボット1の構成は、以下のように変更しうる。
【0083】
例えば、上記実施形態において、動作モードを選択するための第1操作具はタッチパネルディスプレイ41に表示されるモード選択ボタン401~405であるが、第1操作具の態様はこれに限定されない。モード選択ボタン401~405は、物理的な操作具(例えば、ボタンスイッチ、ピンスイッチ、レバー)であってもよい。また、タッチパネル方式ではないディスプレイにモード選択ボタン401~405が表示され、それがマウスやタッチパッド等の第1操作具で選択されることによって、動作モードの選択が成されてもよい。
【0084】
また、例えば、上記実施形態において、ジョイスティック45に代えて、位置及び姿勢の操作量と移動方向に関する操作情報を入力できる他の操作具(例えば、トラックボール、十字キーなど)が採用されてもよい。
【符号の説明】
【0085】
1 :手術支援ロボット
2 :コンソール
3 :患者側マニピュレータアーム
4 :外科用器具
5 :プラットフォーム
7 :ポジショナ
30 :アーム本体
35 :並進ユニット
36 :ホルダ
39 :減速機
41 :タッチ式ディスプレイ
42 :非常停止スイッチ
43 :電源スイッチ
44 :トリガスイッチ(第3操作具の一例)
45 :方向操作具(第2操作具の一例)
46 :制御部
48 :操作入力装置
50 :本体
50a :ポジショナ連結部
50b :アーム連結部
51 :操作用マニピュレータアーム
52 :操作ペダル
54 :モニタ
55 :制御部
61,62 :並進リンク
70 :台車
71 :台車本体
72 :前輪
73 :後輪
74 :ハンドル
80 :ベース
81~86:アームリンク
90 :ベース
91~96:ポジショナリンク
97 :メカニカルインターフェース
100 :外科手術システム
202 :手術台
400 :操作画面
401~405:モード選択ボタン(第1操作具の一例)
409 :操作選択ボタン
410 :(手術支援ロボットの)モデル
411 :第1標示(プラットフォームの移動方向を示す矢印)
412 :(方向操作具の)モデル
413 :第2標示(方向操作具の操作方向を示す矢印)
460 :演算制御器
461 :プロセッサ
462 :記憶装置
463 :メモリ
464 :I/O部
465 :インターフェース
600 :ロボット制御装置
601 :アーム制御部
602 :記憶装置
603 :ポジショナ制御部
C31~C39、C71~C77:サーボコントローラ
D31~D37、D71~D77:関節駆動装置
E31~E39、E71~E77:エンコーダ
J31~J39、J71~J77:関節
M31~M39、M71~M77:サーボモータ
R31~R39、R71~R77:減速機
S :マニピュレータアーム支持体