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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-20
(45)【発行日】2023-09-28
(54)【発明の名称】ナースコールシステム
(51)【国際特許分類】
   A61G 12/00 20060101AFI20230921BHJP
   H04M 9/00 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
A61G12/00 E
H04M9/00 H
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019221832
(22)【出願日】2019-12-09
(65)【公開番号】P2021090511
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000100908
【氏名又は名称】アイホン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136630
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 祐啓
(74)【代理人】
【識別番号】100201514
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 悦
(72)【発明者】
【氏名】楠 浩和
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-358218(JP,A)
【文献】特開2014-171191(JP,A)
【文献】特開2003-085274(JP,A)
【文献】国際公開第2018/110295(WO,A1)
【文献】特開2009-022590(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 12/00
H04M 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者が看護師を呼び出す子機と、前記子機からの呼び出しに看護師が応答する親機と、前記看護師が携帯する携帯端末と、患者の行動に関する行動情報を記憶する記憶手段と、システム全体を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段が、前記行動情報を分析して前記携帯端末に通知する通知情報を生成する分析手段と、前記通知情報を前記携帯端末に送信する送信手段と、を含み、
前記行動情報が、前記子機からの前記親機を呼び出した呼出情報を含み、
前記分析手段は、前記呼出情報に基づいて、呼出時刻および呼出理由ごとの呼出回数を集計し、集計結果が所定の閾値を超えた場合に、前記通知情報を生成することを特徴とするナースコールシステム。
【請求項2】
患者周辺を撮影するカメラと、患者の居場所を報知する無線発信機と、を備え、
前記行動情報が、前記カメラから入力した画像情報と、前記無線発信機から入力した位置情報と、を含み、
前記分析手段は、前記画像情報および/または前記位置情報に基づいて患者の行動パターンを分析し、前記行動パターンに基づいて前記通知情報を生成する請求項1に記載のナースコールシステム。
【請求項3】
前記携帯端末が、看護師のスケジュールを管理するスケジュール管理手段を含み、
前記スケジュール管理手段は、前記通知情報を前記携帯端末に表示する請求項1または2に記載のナースコールシステム。
【請求項4】
前記送信手段は、複数の前記携帯端末に前記通知情報を送信し、
前記携帯端末が、前記通知情報を確認した看護師が前記制御手段に応答するための応答手段を含み、
前記制御手段は、前記通知情報を送信した携帯端末のうち、応答しなかった携帯端末に、対応完了通知を送信する請求項1~3のいずれか一項に記載のナースコールシステム。
【請求項5】
前記分析手段は、前記行動情報に基づいて次回の行動が予測される予測時刻を算出し、
前記送信手段は、前記予測時刻まで所定の時間、前記通知情報を継続送信し、前記予測時刻までに前記応答手段からの応答がなかった場合に、送信を停止する請求項に記載のナースコールシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の様子からナースコールが必要となる状態を予測して、看護師の携帯端末に通知するナースコールシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、患者が看護師を呼び出すため、病室に子機を配置し、ナースステーションに親機を配置したナースコールシステムの技術が知られている。例えば、過去のナースコールの実績に基づいて次回のナースコールを予測し、看護師に通知する技術(特許文献)や、点滴センサを設け、点滴が少なくなると、廊下灯にアラームを出力する技術などが知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-186823号公報
【文献】特開2016-63466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の技術によれば、子機からの呼び出し実績のみに基づいて予測しているため、特に、トイレ利用など患者が看護師の呼び出しを躊躇するような場合に、必要な看護や処置を施せないという問題があった。また、特許文献2の技術によれば、別途センサを導入し、設置し、管理する必要が生じるため、コストや手間が増大するという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、導入コストを抑えつつ、看護師がナースコールに先立って患者の様子を見に行くことが可能なナースコールシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のナースコールは、患者が看護師を呼び出す子機と、子機からの呼び出しに看護師が応答する親機と、看護師が携帯する携帯端末と、患者の行動を示す行動情報を記憶する記憶手段と、システム全体を制御する制御手段と、を備え、制御手段が、行動情報を分析して携帯電話に通知する通知情報を生成する分析手段と、通知情報を携帯端末に送信する送信手段と、を含み、行動情報が、子機からの親機を呼び出した呼出情報を含み、分析手段は、呼出情報に基づいて、呼出時刻および呼出理由ごとの呼出回数を集計し、呼出回数が所定の閾値を超えた場合に、通知情報を生成することを特徴とする。また、患者周辺を撮影するカメラと、患者の居場所を報知する無線発信機と、を備え、行動情報が、カメラから入力した画像情報と、無線発信機から入力した位置情報と、を含み、分析手段は、画像情報および/または位置情報に基づいて患者の行動パターンを分析し、行動パターンに基づいて通知情報を生成する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のナースコールシステムによれば、ナースコールや、病室や共用エリアに配置したカメラや無線発信機などの既存設備から患者の行動情報を入手し、行動情報を分析して看護師を必要とする状況を予測するため、患者が遠慮したり、躊躇したりして看護師を呼ばない場合であっても、細やかに看護できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明のナースコールシステムを示す概略図である。
図2図1のナースコールシステムのブロック図である。
図3】行動情報の例を示す表である。
図4】(a)通知情報、(b)担当看護師情報、(c)看護師位置情報の例を示す表である。
図5】携帯端末に表示される通知情報の表示例を示す模式図である。
図6】ナースコールシステムの動きを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のナースコールシステムを具体化した実施形態を、図面に基づいて説明する。図1に示すように、本発明のナースコールシステム1は、患者Pbが看護師Paを呼び出すプレート子機などの子機2と、子機2からの呼び出しに看護師Paが応答する親機3と、看護師Paが携帯する携帯端末4と、患者Pbに発生した行動情報を記憶する記憶部22としてのクラウドサーバ9と、ナースコールシステム1の全体を制御する制御部21として機能する制御機5と、患者Pbに投薬時間や看護師Paや医師の回診を通知するベッドサイドモニタ11と、患者Pbの画像や映像などの画像情報を撮影する患者用カメラ12bと、各病室ごとの廊下に設置された廊下灯13と、看護師Paや患者Pbが各々身に着けている無線発信機14と、無線発信機からの電波を受信する無線受信機15と、病院内に無線環境を提供するアンテナ基地局と、電話交換機(IP-BPX)と、共用部を撮影する共用部カメラ12aと、患者Pbや看護師Paの位置を特定するための位置情報システム10と、LAN7と、公衆ネットワークNに配置されたクラウドサーバ9から構成される。なお、無線受信機15は病院内各所に5m間隔で設置され、無線発信機14からの信号を位置情報システム10に送信している。また、制御部21は、ナースコールサーバ8や、クラウドサーバ9などにも配置でき、記憶部22は、制御機5やナースコールサーバ8などにも配置することも可能である。
【0010】
親機3はナースステーション、廊下灯13は病室外、子機2とベッドサイドモニタ11と患者用カメラ12bは病室内に、各々配置されている。子機2とベッドサイドモニタ11と患者用カメラ12bは、各々廊下灯13に接続されている。また、親機3と、制御機5と、廊下灯13と、IP-PBXと、共用部カメラ12aと、位置情報システム10は、各々HUB6を介してLAN7に接続され、LAN7は、公衆ネットワークNを介してクラウドサーバ9に接続されている。
【0011】
図2は、LAN7とHUB6を省略して記載したブロック図である。制御部21は、各種演算を実施するCPUと、行動情報を分析して携帯端末4を呼び出す通知情報を生成する分析部23と、通知情報を携帯端末4に送信する送信部24を含む。また、携帯端末4は、通知情報を表示する表示部42と、表示された通知情報に従って患者Pbに対応した看護師Paが、対応完了したことを制御部21に応答するための応答部41と、看護師Paのスケジュールを管理するためのスケジュール管理部43を備える。
【0012】
図3に示すように、行動情報は、患者Pbが子機2からの親機3を呼び出した呼出情報としての行動情報を含み、行動情報は、例えば、患者Pbを一意に特定する患者ID、呼出理由などを種別ごとに分類した呼出種別を含む発生種別、呼出時刻を含む発生時刻、呼出理由を含む発生理由などの情報を含み、発生種別ごとに蓄積される。なお、行動情報は、看護師Paによって後から入力したり、編集することができる。看護師Paが選択入力できるように、ユーザインターフェースを構成することも好適である。また、行動情報に、患者Pbの担当看護師Paの情報を含むように構成しても良い。
【0013】
また、行動情報は、共用部カメラ12aおよび患者用カメラ12bなどのカメラ12から入力した画像情報と、無線発信機14から入力した位置情報など、患者Pbに関する様々な情報を含む。具体的には、病室内で、ベッドから離れた場合、廊下を歩いている場合、トイレの個室に出入りした場合など、患者Pbの習慣的な行動を、画像/映像情報や位置情報とともに行動情報として記憶部22に保存する。
【0014】
分析部23は、行動情報に基づいて、統計処理などが実施され、いつ、どのような種別の呼び出しが多くなされているかを分析する。例えば、発生時刻と発生理由ごとに発生回数を集計し、発生回数が所定の閾値を超えた場合に、通知情報を生成する。閾値は、「5、6、7、・・・n」などの固定値でも、看護師Paなどが適宜設定することとしても良い。図3の例では、3回を閾値とし、3回目のトイレコールが発生した場合に、通知情報(図4参照)を生成している。閾値を設けることにより、1-2回程度の単発的なナースコールを除外でき、看護師Paに過剰な負担とならないようにすることが可能となる。
【0015】
また、分析部23は、画像情報または位置情報、あるいは、画像情報および位置情報の双方に基づいて、患者Pbの習慣的な行動など、患者Pbの行動パターンを予測し、予測した行動パターンに基づいて通知情報を生成する。実際に、患者Pbが看護師Paを呼ぶことを躊躇したために、患者Pbがトイレの個室から出る際に転倒した事故例なども報告されており、このような場合であっても、事前に看護師Paが個室前で待機することで、事故を回避することが可能となる。
【0016】
図4に示すように、通知情報は、患者Pbを一意に特定する患者ID、通知先の携帯端末4を一意に特定する通知先の携帯端末ID、患者Pbの位置情報、予測理由、予測時刻52、予測時刻52よりも所定時間前である通知時刻51などを含む。通知時刻51は、例えば、予測時刻52より10分前など、適宜設定することが可能である。通知先の携帯端末4は、患者Pbの担当看護師を含めて複数選択可能であるが、通知時刻51に、最も患者Pbの位置情報に近い位置にいる看護師Paの携帯端末4も選択できる。例えば、予測理由に応じて、担当看護師Paを呼び出すか、近くにいる看護師Paを呼び出すかを切り分けても良い。
【0017】
送信部24は、分析部23が生成した通知情報を、分析部23が通知先として選択した携帯端末4に送信する。
【0018】
図5に示すように、制御部21は、通知時刻51から予測時刻52までの間、携帯端末4に通知を実施し、携帯端末4は、表示部42に通知情報のポップアップ44を表示する。患者Pbのもとに向かった看護師Paが、所定の処置を終え、通知情報のアイコンをタップすると、応答部41である確認ボタン45が表示される。看護師Paが確認ボタン45をタップすると、応答情報が制御部21に送信される。
【0019】
制御部21は、通知情報を送信した携帯端末4の一つから応答情報を受信すると、通知情報を送信したその他の携帯端末4への通知を停止する。また、制御部21は、通知時刻51から予測時刻52まで通知を継続し、応答情報の受信が無いまま予測時刻52となった場合には、すべての携帯端末4への通知を停止する。
【0020】
スケジュール管理部43は、記憶部22から分析部23により生成された通知情報を読み出し、今後どの看護師Paがどの時刻に通知を受けるかについての、通知予定情報を表示部42に表示する。看護師Paは、通知予定情報を確認することにより、看護師全体の作業状況を確認することが可能となる。
【0021】
続いて、本願発明のナースコールシステム1の動作を、図6に基づいて説明する。ナースコールシステム1では、常時、患者Pbの行動や子機2からのナースコールなどの行動情報を取得し、所定のタイミングで、記憶部22に保存する(S1)。分析部23は、所定のタイミングで行動情報を分析する(S2)。分析部23は、発生回数が閾値を超えていたら、通知情報を生成する(S3)。送信部24は、通知時刻51が到来したら、通知情報を送信先の携帯端末4に送信する(S4)。通知情報を受信した携帯端末4は、通知情報を表示部42に表示する(S5)。このとき、通知情報は、複数の携帯端末4に対して行われる。通知情報を見た看護師Paの一人が患者Pbへの対処を行い、確認ボタン45をタップした場合(S6:Yes)、制御部21は、該看護師Pa以外の看護師Paが携帯する携帯端末4に対して、対応完了通知を実施する(S7)。一方、確認ボタン45がタップされない場合には(S6:No)、制御部21は、予測時刻52となるまで、携帯端末4への通知を継続する(S8:No)。そして、予測時刻52が到来した場合に(S8:Yes)、制御部21は、携帯端末4への通知を停止する(S9)。
【0022】
以上の構成のナースコールシステム1によれば、患者Pbの行動情報を細やかに記録し、記録した行動情報を分析して看護が必要となる状況を予測するため、患者Pbがナースコールを躊躇した場合や、ナースコールできない状況に置かれても、事前に看護師Paを向かわせて、細やかに対処することができるという効果を奏する。また、ナースコールや、病室および共用エリアに配置したカメラ12や無線発信機14などの既存設備を利用するため、新たに設備を導入する必要がなく、コストを抑えることも可能である。
【0023】
その他、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、各部の構成を任意に変更して実施することも可能である。
【符号の説明】
【0024】
1 ナースコールシステム
2 子機
3 親機
4 携帯端末
5 制御機
6 HUB
7 LAN
8 ナースコールサーバ
9 クラウドサーバ
10 位置情報システム
11 ベッドサイドモニタ
12 カメラ(患者用カメラ:12a、共用部カメラ:12b)
13 廊下灯
14 無線発信機
15 無線受信機
21 制御部
22 記憶部
23 分析部
24 送信部
41 応答部
42 表示部
43 スケジュール管理部
44 通知情報のポップアップ
45 確認ボタン
51 通知時刻
52 予測時刻
N 公衆ネットワーク
Pa 看護師
Pb 患者
図1
図2
図3
図4
図5
図6