IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社小松製作所の特許一覧

特許7352463作業機械を制御するためのシステムおよび方法
<>
  • 特許-作業機械を制御するためのシステムおよび方法 図1
  • 特許-作業機械を制御するためのシステムおよび方法 図2
  • 特許-作業機械を制御するためのシステムおよび方法 図3
  • 特許-作業機械を制御するためのシステムおよび方法 図4
  • 特許-作業機械を制御するためのシステムおよび方法 図5A
  • 特許-作業機械を制御するためのシステムおよび方法 図5B
  • 特許-作業機械を制御するためのシステムおよび方法 図6
  • 特許-作業機械を制御するためのシステムおよび方法 図7A
  • 特許-作業機械を制御するためのシステムおよび方法 図7B
  • 特許-作業機械を制御するためのシステムおよび方法 図8
  • 特許-作業機械を制御するためのシステムおよび方法 図9
  • 特許-作業機械を制御するためのシステムおよび方法 図10
  • 特許-作業機械を制御するためのシステムおよび方法 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-20
(45)【発行日】2023-09-28
(54)【発明の名称】作業機械を制御するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/84 20060101AFI20230921BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20230921BHJP
   E02F 9/26 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
E02F3/84 A
E02F9/20 N
E02F9/26 B
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019233051
(22)【出願日】2019-12-24
(65)【公開番号】P2021101078
(43)【公開日】2021-07-08
【審査請求日】2022-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】平山 雅己
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-196630(JP,A)
【文献】特開2018-021347(JP,A)
【文献】特開2018-021348(JP,A)
【文献】特開2019-097529(JP,A)
【文献】特開平09-107717(JP,A)
【文献】国際公開第2019/187770(WO,A1)
【文献】特開2008-067617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/84
E02F 9/20
E02F 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械を制御するためのシステムであって、
前記作業機械の位置を示す位置データを出力する位置センサと、
前記位置センサから前記位置データを取得するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
ワークサイトの現況地形を示す現況地形データを取得し、
少なくとも一部が前記現況地形よりも下方に位置する目標設計面を取得し、
前記現況地形の上方から前記目標設計面に向けて、順次、仮の掘削面を決定し、
前記現況地形において前記仮の掘削面よりも上方に位置する部分を目標掘削部分として決定し、
前記目標掘削部分の土量を算出し、
前記目標掘削部分の土量が閾値以上であるかを判定し、
前記目標掘削部分の土量が前記閾値以上であるときに前記仮の掘削面を目標掘削面として決定し、
前記ワークサイトの上面視で所定の作業方向にそれぞれ延び、前記ワークサイトの上面視で前記所定の作業方向と交差する方向に互いに並び、前記目標掘削面上において前記目標掘削部分と重なる複数の掘削パスを決定し、
前記複数の掘削パスに従って前記作業機械を制御する、
システム。
【請求項2】
前記コントローラは、前記目標掘削部分の土量が前記閾値より小さいときには、前記仮の掘削面を下方に変位させる、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記作業機械は、ブレードを含み、
前記閾値は、前記ブレードの容量よりも大きい、
請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記コントローラは、
前記複数の掘削パスと前記目標掘削部分との交点に基づいて、掘削の開始位置を決定し、
前記作業機械を前進させて、前記開始位置から掘削を開始させる、
請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記コントローラは、
前記複数の掘削パスと前記目標掘削部分との交点に基づいて、排土位置を決定し、
前記作業機械が前記排土位置に到達したかを判定し、
前記作業機械が前記排土位置に到達したときには、前記作業機械を後退させる、
請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記複数の掘削パスは、第1掘削パスと第2掘削パスとを含み、
前記コントローラは、
前記第1掘削パスに従って、前記作業機械を制御し、
前記第1掘削パスの後に前記第2掘削パスに従って、前記作業機械を制御する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記コントローラは、
前記現況地形において前記目標掘削部分が無くなったかを判定し、
前記現況地形において前記目標掘削部分が無くなったときには、前記目標掘削面を更新する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記仮の掘削面は、前記目標設計面に平行な平面である、
請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
作業機械を制御するための方法であって、
ワークサイトの現況地形を示す現況地形データを取得することと、
少なくとも一部が前記現況地形よりも下方に位置する目標設計面を取得することと、
前記現況地形の上方から前記目標設計面に向けて、順次、仮の掘削面を決定することと、
前記現況地形において前記仮の掘削面よりも上方に位置する部分を目標掘削部分として決定することと、
前記目標掘削部分の土量を算出することと、
前記目標掘削部分の土量が閾値以上であるかを判定することと、
前記目標掘削部分の土量が前記閾値以上であるときに前記仮の掘削面を目標掘削面として決定することと、
前記ワークサイトの上面視で所定の作業方向にそれぞれ延び、前記ワークサイトの上面視で前記所定の作業方向と交差する方向に互いに並び、前記目標掘削面上において前記目標掘削部分と重なる複数の掘削パスを決定することと、
前記複数の掘削パスに従って前記作業機械を制御すること、
を備える方法。
【請求項10】
前記目標掘削部分の土量が前記閾値より小さいときには、前記仮の掘削面を下方に変位させることをさらに備える、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記作業機械は、ブレードを含み、
前記閾値は、前記ブレードの容量よりも大きい、
請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記複数の掘削パスと前記目標掘削部分との交点に基づいて、掘削の開始位置を決定することと、
前記作業機械を前進させて、前記開始位置から掘削を開始させること、
をさらに備える、
請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記複数の掘削パスと前記目標掘削部分との交点に基づいて、排土位置を決定することと、
前記作業機械が前記排土位置に到達したかを判定することと、
前記作業機械が前記排土位置に到達したときには、前記作業機械を後退させること、
をさらに備える、
請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記複数の掘削パスは、第1掘削パスと第2掘削パスとを含み、
前記第1掘削パスに従って、前記作業機械を制御することと、
前記第1掘削パスの後に前記第2掘削パスに従って、前記作業機械を制御すること、
をさらに備える、
請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記現況地形において前記目標掘削部分が無くなったかを判定することと、
前記現況地形において前記目標掘削部分が無くなったときには、前記目標掘削面を更新すること、
をさらに備える、
請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記仮の掘削面は、前記目標設計面に平行な平面である、
請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械を制御するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機械には、整地作業を行うものがある。例えば、鉱山では、発破により、規定の区画の土砂が粉砕された後に、バルクプッシュが行われる。バルクプッシュは、地表を掘削し、掘削された土砂を所定の排土位置に運ぶ作業である。バルクプッシュが繰り返されることで、地表面が徐々に下がる。発破により土砂が粉砕された直後は、地表面は不均一である。そのため、地表面を均一にならす整地作業が行われる。或いは、鉱山以外のワークサイトにおいても、作業機械によって整地作業が行われることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第7,509,198号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、整地作業は、熟練したオペレータが、周囲の状況を判断しながら、作業機械を手動で操作することで行われている。整地作業は、熟練した技術を必要とする。そのため、経験の少ないオペレータにとっては、整地作業は、容易ではない。本開示は、作業機械の自動制御によって容易に整地作業を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の態様に係るシステムは、作業機械を制御するためのシステムである。本態様に係るシステムは、位置センサとコントローラとを備える。位置センサは、作業機械の位置を示す位置データを出力する。コントローラは、位置センサから位置データを取得する。コントローラは、ワークサイトの現況地形を示す現況地形データを取得する。コントローラは、現況地形の上方から目標設計面に向けて、順次、仮の掘削面を決定する。コントローラは、現況地形において仮の掘削面よりも上方に位置する部分を、目標掘削部分として決定する。コントローラは、目標掘削部分の土量を算出する。コントローラは、目標掘削部分の土量が閾値以上であるかを判定する。コントローラは、目標掘削部分の土量が閾値以上であるときに仮の掘削面を目標掘削面として決定する。コントローラは、複数の掘削パスを決定する。複数の掘削パスのそれぞれは、所定の作業方向に延びている。複数の掘削パスは、所定の作業方向と交差する方向に互いに並んでいる。複数の掘削パスは、目標掘削面上において目標掘削部分と重なる。コントローラは、複数の掘削パスに従って作業機械を制御する。
【0006】
本開示の第2の態様は、作業機械を制御するための方法である。本態様に係る方法は、以下の処理を備える。第1の処理は、ワークサイトの現況地形を示す現況地形データを取得することである。第2の処理は、現況地形の上方から目標設計面に向けて、順次、仮の掘削面を決定することである。第3の処理は、現況地形において仮の掘削面よりも上方に位置する部分を、目標掘削部分として決定することである。第4の処理は、目標掘削部分の土量を算出することである。第5の処理は、目標掘削部分の土量が閾値以上であるかを判定することである。第6の処理は、目標掘削部分の土量が閾値以上であるときに、仮の掘削面を目標掘削面として決定することである。第7の処理は、複数の掘削パスを決定することである。複数の掘削パスのそれぞれは、所定の作業方向に延びている。複数の掘削パスは、所定の作業方向と交差する方向に互いに並んでいる。複数の掘削パスは、目標掘削面上において目標掘削部分と重なる。第8の処理は、複数の掘削パスに従って作業機械を制御することである。なお、上記の処理が実行される順番は、上記の記載の順番に限らず、変更されてもよい。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、作業機械の自動制御によって容易に整地作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る作業機械を示す側面図である。
図2】作業機械の駆動系と制御システムとの構成を示すブロック図である。
図3】ワークサイトの現況地形の一例を示す側面図である。
図4】作業機械の自動制御の処理を示すフローチャートである。
図5A】目標掘削部分の一例を示すワークサイトの上面図である。
図5B】目標掘削部分を示すワークサイトの側面図である。
図6】掘削パスの一例を示す図である。
図7A】第1掘削パス上の開始位置を示す図である。
図7B】第1掘削パス上の排土位置を示す図である。
図8】作業機械の自動制御の処理を示すフローチャートである。
図9】更新された目標掘削面の一例を示す図である。
図10】他の実施形態に係る作業機械の駆動系と制御システムとの構成を示すブロック図である。
図11】他の実施形態に係る掘削パスの決定方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態に係る作業機械1の制御システムおよび制御方法について、図面を参照しながら説明する。図1は、実施形態に係る作業機械1を示す側面図である。本実施形態に係る作業機械1は、ブルドーザである。作業機械1は、車体11と、走行装置12と、作業機13と、を備えている。
【0010】
車体11は、運転室14とエンジン室15とを有する。運転室14には、図示しない運転席が配置されている。エンジン室15は、運転室14の前方に配置されている。走行装置12は、車体11の下部に取り付けられている。走行装置12は、左右一対の履帯16を有している。なお、図1では、左側の履帯16のみが図示されている。履帯16が回転することによって、作業機械1が走行する。
【0011】
作業機13は、車体11に取り付けられている。作業機13は、リフトフレーム17と、ブレード18と、リフトシリンダ19と、を有する。リフトフレーム17は、上下に動作可能に車体11に取り付けられている。リフトフレーム17は、ブレード18を支持している。
【0012】
ブレード18は、車体11の前方に配置されている。ブレード18は、リフトフレーム17の上下動に伴って上下に動作する。リフトシリンダ19は、車体11とリフトフレーム17とに連結されている。リフトシリンダ19が伸縮することによって、リフトフレーム17は、上下に動作する。
【0013】
図2は、作業機械1の駆動系2と制御システム3との構成を示すブロック図である。図2に示すように、駆動系2は、エンジン22と、油圧ポンプ23と、動力伝達装置24と、を備えている。
【0014】
油圧ポンプ23は、エンジン22によって駆動され、作動油を吐出する。油圧ポンプ23から吐出された作動油は、油圧アクチュエータ25に供給される。油圧アクチュエータ25は、上述したリフトシリンダ19を含む。なお、図2では、1つの油圧ポンプ23が図示されているが、複数の油圧ポンプが設けられてもよい。
【0015】
油圧アクチュエータ25と油圧ポンプ23との間には、制御弁26が配置されている。制御弁26は、比例制御弁であり、油圧ポンプ23からリフトシリンダ19に供給される作動油の流量を制御する。なお、制御弁26は、圧力比例制御弁であってもよい。或いは、制御弁26は、電磁比例制御弁であってもよい。
【0016】
動力伝達装置24は、エンジン22の駆動力を走行装置12に伝達する。動力伝達装置24は、例えば、トルクコンバーター、或いは複数の変速ギアを有するトランスミッションであってもよい。或いは、動力伝達装置24は、HST(Hydro Static Transmission)などの他の方式の動力伝達装置であってもよい。
【0017】
制御システム3は、コントローラ31と、機械位置センサ32と、通信装置33と、ストレージ34と、入力装置35とを備える。コントローラ31は、取得したデータに基づいて作業機械1を制御するようにプログラムされている。コントローラ31は、メモリ38とプロセッサ39とを含む。メモリ38は、例えばRAM(Random Access Memory)とROM(Read Only Memory)とを含む。ストレージ34は、例えば、半導体メモリ、或いはハードディスクなどを含む。メモリ38とストレージ34とは、作業機械1を制御するためのコンピュータ指令およびデータを記録している。
【0018】
プロセッサ39は、例えばCPUであるが、他の種類のプロセッサ39であってもよい。プロセッサ39は、メモリ38或いはストレージ34に記憶されたコンピュータ指令およびデータに基づいて、作業機械1を制御するための処理を実行する。通信装置33は、例えば無線通信用のモジュールであり、作業機械1の外部の機器と通信を行う。通信装置33は、モバイル通信ネットワークを利用するものであってもよい。或いは、通信装置33は、LAN(Local Area Network)、或いはインターネットなどの他のネットワークを利用するものであってもよい。
【0019】
機械位置センサ32は、作業機械1の位置を検出する。機械位置センサ32は、例えば、GPS(Global Positioning System)などのGNSS(Global Navigation Satellite System)レシーバを含む。機械位置センサ32は、車体11に搭載されている。或いは、機械位置センサ32は、作業機13などの他の位置に搭載されてもよい。コントローラ31は、作業機械1の現在位置を示す現在位置データを機械位置センサ32から取得する。
【0020】
入力装置35は、オペレータによって操作可能である。入力装置35は、例えばタッチスクリーンを含む。或いは、入力装置35は、ハードキーなどの他の操作子を含んでもよい。入力装置35は、オペレータによる操作を受け付け、オペレータの操作を示す信号をコントローラ31に出力する。
【0021】
コントローラ31は、エンジン22、油圧ポンプ23、動力伝達装置24、及び制御弁26に指令信号を出力することで、これらの装置を制御する。例えば、コントローラ31は、油圧ポンプ23の容量、及び、制御弁26の開度を制御することで、油圧アクチュエータ25を動作させる。これにより、作業機13を動作させることができる。
【0022】
コントローラ31は、エンジン22の回転速度、及び、動力伝達装置24を制御することで、作業機械1を走行させる。例えば、動力伝達装置24がHSTの場合、コントローラ31は、HSTの油圧ポンプの容量と油圧モータの容量とを制御する。動力伝達装置24が複数の変速ギアを有するトランスミッションの場合、コントローラ31は、ギアシフト用のアクチュエータを制御する。また、コントローラ31は、左右の履帯16に速度差が生じるように、動力伝達装置24を制御することで、作業機械1を旋回させる。
【0023】
次に、コントローラ31によって実行される、作業機械1の自動制御について説明する。コントローラ31は、エンジン22及び動力伝達装置24を制御することで、作業機械1を自動的に走行させる。また、コントローラ31は、エンジン22、油圧ポンプ23、及び制御弁26を制御することで、作業機13を自動的に制御する。
【0024】
以下、ワークサイトにおいて作業機械1によって行われる作業の一例として、整地作業の自動制御について説明する。図3は、ワークサイトの現況地形40の側面図である。図4は、作業機械1の自動制御の処理を示すフローチャートである。図4に示すように、ステップS101では、コントローラ31は、現在位置データを取得する。コントローラ31は、機械位置センサ32から現在位置データを取得する。
【0025】
ステップS102では、コントローラ31は、現況地形データを取得する。現況地形データは、ワークサイトの現況地形40を示すデータである。例えば、現況地形データは、現況地形40の表面の平面座標と高さとを含む。現況地形データは、予めストレージ34に記憶されていてもよい。コントローラ31は、作業機13、或いは走行装置12の底部の軌跡を記録することで、現況地形データを取得してもよい。或いは、現況地形データは、ライダ(LIDAR:Laser Imaging Detection and Ranging)或いは、カメラなどの測定機器によって測定されてもよい。コントローラ31は、測定機器から現況地形データを取得してもよい。測定機器は、作業機械1に搭載されてもよい。測定機器は、作業機械1の外部に配置されてもよい。
【0026】
ステップS103では、コントローラ31は、目標設計面50を取得する。図3に示すように、目標設計面50の少なくとも一部は、現況地形40よりも下方に位置する。目標設計面50は、水平面に対して所定角度で傾斜している。ただし、目標設計面50は、水平であってもよい。目標設計面50は、予め定められて、ストレージ34に記憶されていてもよい。目標設計面50は、入力装置35を介して、オペレータによって入力されてもよい。或いは、コントローラ31は、通信装置33を介して、外部のコンピュータから目標設計面50を取得してもよい。
【0027】
ステップS104では、コントローラ31は、仮の掘削面60を決定する。コントローラ31は、目標設計面50に基づいて、仮の掘削面60を決定する。図3に示すように、仮の掘削面60は、目標設計面50に平行な平面である。例えば、コントローラ31は、目標設計面50に平行で現況地形40よりも所定距離だけ上方に位置する平面を、初期の仮の掘削面60として決定する。ただし、仮の掘削面60は、目標設計面50と異なる角度で傾斜していてもよい。
【0028】
ステップS105では、コントローラ31は、目標掘削部分を決定する。コントローラ31は、目標掘削部分は、現況地形40において仮の掘削面60よりも上方に位置する部分を、目標掘削部分として決定する。ステップS106では、コントローラ31は、目標掘削部分の土量を算出する。ステップS107では、コントローラ31は、目標掘削部分の土量が閾値以上であるかを判定する。閾値は、例えばブレード18の容量よりも大きい。
【0029】
図3に示すように、初期の仮の掘削面60は、現況地形40において仮の掘削面60よりも上方に位置する部分を有していない。そのため、目標掘削部分の土量は0である。従って、処理は、ステップS104に戻る。コントローラ31は、前回の仮の掘削面60から下方に所定距離だけ変位した平面を、次の仮の掘削面61として決定する。そして、目標掘削部分の土量が閾値以上になるまで、コントローラ31は、ステップS104からステップS107までの処理を繰り返す。それにより、コントローラ31は、仮の掘削面62-65を順次、決定する。
【0030】
図5Aは、目標掘削部分70を示すワークサイトの上面図である。図5Bは、目標掘削部分70を示すワークサイトの側面図である。図5Aおよび図5Bでは、仮の掘削面65の少なくとも一部が、現況地形40よりも下方に位置している。ステップS105では、図5Aに示すように、コントローラ31は、ワークサイトの所定の作業範囲100内の現況地形40において、仮の掘削面65よりも上方に位置する部分を、目標掘削部分70として決定する。コントローラ31は、目標掘削部分70の形状および位置を示す掘削部分データを取得する。コントローラ31は、現況地形40と仮の掘削面60とに基づいて、目標掘削部分70の形状および位置を算出することで、掘削部分データを取得する。
【0031】
なお、作業機械1の所定の作業範囲100は、予め決定されて、ストレージ34に保存されていてもよい。或いは、作業機械1の所定の作業範囲100は、入力装置35を介して、オペレータによって入力されてもよい。
【0032】
ステップS106で、コントローラ31は、目標掘削部分70の土量を算出する。ステップS107で、コントローラ31は、目標掘削部分70の土量が閾値以上であるかを判定する。
【0033】
ステップS107で、目標掘削部分70の土量が閾値以上であるときには、処理は、ステップS108に進む。ステップS108では、図5Bに示すように、コントローラ31は、目標掘削部分70の土量が閾値以上であるときの仮の掘削面65を目標掘削面80として決定する。
【0034】
ステップS108で、コントローラ31は、複数の掘削パスP1-P7を決定する。図6に示すように、複数の掘削パスP1-P7のそれぞれは、所定の作業方向A1に延びている。所定の作業方向A1は、予め決められて、ストレージ34に保存されている。或いは、所定の作業方向A1は、入力装置35を介してオペレータによって決定されてもよい。
【0035】
複数の掘削パスP1-P7は、横方向に互いに並んでいる。横方向は、所定の作業方向A1と交差する方向である。複数の掘削パスP1-P7は、目標掘削面80上において目標掘削部分70と重なる。例えば、コントローラ31は、横方向に一定間隔で並ぶように、複数の掘削パスP1-P7を決定してもよい。或いは、コントローラ31は、掘削される土量を考慮して、複数の掘削パスP1-P7を決定してもよい。
【0036】
ステップS109では、コントローラ31は、複数の掘削パスP1-P7に従って、作業機械1を制御する。図6に示すように、コントローラ31は、複数の掘削パスP1-P7のそれぞれに対して、掘削の開始位置S1-S7と排土位置E1-E7とを決定する。コントローラ31は、目標掘削面80上において、各掘削パスP1-P7と目標掘削部分70との交点から、開始位置S1-S7と排土位置E1-E7とを決定する。所定の作業方向A1において、開始位置S1-S7は、排土位置E1-E7よりも上流側に位置する。所定の作業方向A1において、排土位置E1-E7は、開始位置S1-S7よりも下流側に位置する。
【0037】
例えば、図6に示す例では、複数の掘削パスP1-P7は、第1~第7掘削パスP1-P7を含む。図7Aおよび図7Bは、第1掘削パスP1上の開始位置S1と排土位置E1とを示す図である。コントローラ31は、第1掘削パスP1に従って、作業機械1を走行させる。図7Aに示すように、コントローラ31は、作業機械1を前進させて、開始位置S1から掘削を開始させる。コントローラ31は、作業機13が排土位置E1に到達したかを判定する。図7Bに示すように、作業機13が排土位置E1に到達したときには、コントローラ31は、作業機械1を後退させる。それにより、第1掘削パスP1に従った作業が終了する。
【0038】
コントローラ31は、第1掘削パスP1の後に第2掘削パスP2に従って、作業機械1を制御する。第1掘削パスP1と同様に、コントローラ31は、第2掘削パスP2に従って、作業機械1を走行させる。コントローラ31は、第2掘削パスP2の開始位置S2から掘削を開始させる。コントローラ31は、作業機13が第2掘削パスP2の排土位置E2に到達すると、作業機械1を後退させる。それにより、第2掘削パスP2に従った作業が終了する。その後、コントローラ31は、第1、第2掘削パスP2に従った作業と同様に、第3~第7掘削パスP3-P7に従った作業を順次、作業機械1に実行させる。
【0039】
図8に示すように、ステップS111で、コントローラ31は、現況地形40において目標掘削部分70が無くなったかを判定する。コントローラ31は、現況地形40において目標掘削面80よりも上方に位置する部分が無くなったときに、目標掘削部分70が無くなったと判定する。或いは、コントローラ31は、全ての掘削パスP1-P7に従う作業が完了したときに、目標掘削部分70が無くなったと判定してもよい。或いは、コントローラ31は、現況地形40において目標掘削面80よりも上方に位置する目標掘削部分70の土量が所定量以下となったときに、目標掘削部分70が無くなったと判定してもよい。現況地形40において目標掘削部分70が残っているときには、処理は、ステップS110に戻る。現況地形40において目標掘削部分70が無くなったときには、処理は、ステップS112に進む。
【0040】
ステップS112では、コントローラ31は、現況地形40が規定勾配に到達したかを判定する。規定勾配は、上述した目標設計面50であってもよい。或いは、コントローラ31は、目標設計面50に基づいて規定勾配を決定してもよい。規定勾配は、目標設計面50よりも上方に位置してもよい。現況地形40が規定勾配に到達していないときには、処理は、ステップS104に戻る。そして、コントローラ31は、ステップS104~S108の処理を、新たな現況地形41に基づいて実行することで、目標掘削面80を更新する。図9に示すように、コントローラ31は、新たな現況地形41に基づいて、更新された目標掘削面81と更新された目標掘削部分71を決定する。
【0041】
ステップS109で、コントローラ31は、上述した処理と同様に、更新された目標掘削面81から、掘削パスを決定する。コントローラ31は、ステップS110で、上述した処理と同様に、掘削パスに従って作業機械1を制御する。以上のように、現況地形40が規定勾配に到達するまで、ステップS101~S112が繰り返される。
【0042】
以上説明した本実施形態に係る作業機械1の制御システムおよび制御方法では、掘削される土量に基づいて、目標掘削部分70と目標掘削面80とが決定される。そして、目標掘削面80に基づいて、掘削パスP1-P7が決定される。そのため、作業機械1の自動制御によって、容易に整地作業を行うことができる。
【0043】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。作業機械1は、ブルドーザに限らず、ホイールローダ等の他の機械であってもよい。走行装置12は、履帯に限らず、タイヤを含んでもよい。作業機械1は、遠隔操縦可能な車両であってもよい。その場合、作業機械1から運転室が省略されてもよい。
【0044】
制御システム3の一部は、作業機械1の外部に配置されてもよい。例えば、コントローラ31は、互いに別体の複数のコントローラを有してもよい。図10に示すように、コントローラ31は、作業機械1の外部に配置されるリモートコントローラ311と、作業機械1に搭載される車載コントローラ312とを含んでもよい。リモートコントローラ311と車載コントローラ312とは通信装置33,36を介して無線により通信可能であってもよい。そして、上述したコントローラ31の機能の一部がリモートコントローラ311によって実行され、残りの機能が車載コントローラ312によって実行されてもよい。例えば、掘削パスP1-P7を決定する処理がリモートコントローラ311によって実行され、作業機械1を動作させる処理が車載コントローラ312によって実行されてもよい。
【0045】
作業機械1の自動制御は、オペレータによる手動操作と合わせて行われる半自動制御であってもよい。或いは、自動制御は、オペレータによる手動操作無しで行われる完全自動制御であってもよい。例えば、図10に示すように、作業機械1の外部に配置された操作装置37をオペレータが操作することによって作業機械1が遠隔操作されてもよい。
【0046】
整地作業を行うための処理は、上述した処理に限らず、変更されてもよい。例えば、上記の処理の一部が、変更、或いは省略されてもよい。整地作業を行うための処理に、上記の処理と異なる処理が追加されてもよい。
【0047】
掘削パスを決定するための処理が変更されてもよい。例えば、図11に示すように、コントローラ31は、掘削パスの複数の候補M(n)(n=1,2,3,・・・)を決定してもよい。例えば、コントローラ31は、複数の参照点R(n)を通る直線を、掘削パスの複数の候補M(n)として決定してもよい。複数の参照点R(n)は、目標掘削部分70の輪郭に沿って所定距離ごとに位置してもよい。コントローラ31は、複数の候補M(n)のそれぞれに対して、評価関数を算出してもよい。評価関数は、例えば掘削される土量に関する関数を含んでもよい。コントローラ31は、掘削部分データから、評価関数を算出してもよい。
【0048】
例えば、コントローラ31は、複数の候補M(n)のそれぞれに対して、評価関数を演算する。評価関数は、A*アルゴリズムにおける関数であってもよい。或いは、評価関数は、他の経路探索アルゴリズムにおける関数であってもよい。評価関数は、目標掘削部分70の残りの土量を示す関数を含む。なお、評価関数は、作業機械1による作業時間、燃料消費量、或いは走行距離を示す関数を含んでもよい。或いは、評価関数は、現況地形40の勾配に応じた作業機械1の転倒確率などの他のパラメータを示す関数を含んでもよい。コントローラ31は、複数の候補M(n)のうち評価関数を最小とするものを掘削パスとして決定してもよい。
【0049】
或いは、コントローラ31は、作業方向に沿って延び、目標掘削面と直交する第2の仮想面を設定してもよい。コントローラ31は、目標掘削面と、第2の仮想面と、現況地形とから算出される土量に基づいて、掘削パスを決定しても良い。
【0050】
複数の作業機械によって同時に整地作業が行われてもよい。その場合、複数の作業機械に搭載されたコントローラがそれぞれ自律的に上記の制御を実行してもよい。或いは、複数の作業機械に共通のコントローラが、複数の作業機械に対して上記の制御を実行してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本開示によれば、作業機械の自動制御によって容易に整地作業を行うことができる。
【符号の説明】
【0052】
1 作業機械
12 走行装置
13 作業機
31 コントローラ
32 位置センサ
50 目標設計面
60-65 仮の掘削面
70,71 目標掘削部分
80,81 目標掘削面
P1-P7 掘削パス
S1-S7 開始位置
E1-E7 排土位置
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11