(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-20
(45)【発行日】2023-09-28
(54)【発明の名称】がん細胞を標的化するキメラ抗原受容体のための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
C07K 19/00 20060101AFI20230921BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20230921BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230921BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20230921BHJP
C07K 14/725 20060101ALI20230921BHJP
C07K 16/30 20060101ALI20230921BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20230921BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230921BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20230921BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20230921BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
C07K19/00
A61K35/17
A61P35/00
A61P37/04
C07K14/725
C07K16/30
C12N5/0783
C12N5/10
C12N15/13 ZNA
C12N15/62 Z
C12Q1/02
(21)【出願番号】P 2019571213
(86)(22)【出願日】2018-06-19
(86)【国際出願番号】 US2018038289
(87)【国際公開番号】W WO2018236870
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2021-06-18
(32)【優先日】2017-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514299550
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティ オブ ノース カロライナ アット チャペル ヒル
(73)【特許権者】
【識別番号】514291680
【氏名又は名称】ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ドッティ, ジャンピエトロ
(72)【発明者】
【氏名】フェローン, ソルダーノ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ, ホンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン, シンフイ
(72)【発明者】
【氏名】フェローン, クリスティーナ
【審査官】中山 基志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0053017(US,A1)
【文献】国際公開第2017/062672(WO,A2)
【文献】Gynecologic Oncology,2013年11月09日,Vol. 132,pp. 203-210
【文献】Human Melanoma Associated Antigens Identified with Monoclonal Antibodies: Characterization and Potential Clinical Application,Cutaneous Melanoma and Precursor Lesions (Developments in Oncology, Vol.25),1984年,pp. 19-37
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸配列:
【化6】
を含む、キメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項2】
アミノ酸配列:
【化7】
を含む、キメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項3】
検出可能部分をさらに含む、請求項1または2のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項4】
薬物、毒素、小分子、抗体、サイトカイン、腫瘍溶解性ウイルス、酵素、ナノ粒子、バイオマテリアル、スキャフォールドおよびそれらの任意の組合せからなる群より選択されるエフェクター分子をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のCARをコードする核酸分子。
【請求項6】
配列番号3のヌクレオチド配列を含む、請求項5に記載の核酸分子。
【請求項7】
配列番号4のヌクレオチド配列を含む、請求項5に記載の核酸分子。
【請求項8】
請求項5~7のいずれか一項に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項9】
請求項1~4のいずれか一項に記載のCARを含む細胞。
【請求項10】
請求項5~7のいずれか一項に記載の核酸分子および/または請求項8に記載のベクターを含む細胞。
【請求項11】
前記細胞が、αβT細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、制御性T細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、Th17細胞、γδT細胞およびそれらの任意の組合せからなる群より選択される、請求項9または10のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項12】
請求項1~4のいずれか一項に記載のCAR、請求項5~7のいずれか一項に記載の核酸分子、請求項8に記載のベクターおよび/または請求項9~11のいずれか一項に記載の細胞を薬学的に許容され得る担体中に含む、組成物。
【請求項13】
被験体においてB7-H3発現標的細胞集団または組織に対するT細胞媒介免疫応答を刺激するための、請求項5~7のいずれか一項に記載の核酸分子、請求項8に記載のベクター、および/または請求項9~11のいずれか一項に記載の細胞を含む組成物。
【請求項14】
被験体に抗腫瘍免疫を提供するための、請求項5~7のいずれか一項に記載の核酸分子、請求項8に記載のベクター、および/または請求項9~11のいずれか一項に記載の細胞を含む組成物。
【請求項15】
B7-H3(CD276)の発現の増加に関連する疾患または障害を有する被験体を、前記被験体の細胞によって処置するための、請求項5~7のいずれか一項に記載の核酸分子、請求項8に記載のベクター、および/または請求項9~11のいずれか一項に記載の細胞を含む組成物。
【請求項16】
被験体において遺伝子操作された細胞の集団を生成するための、請求項1~4のいずれか一項に記載のCARを発現するように遺伝子操作された細胞を含む組成物であって、前記組成物は前記被験体に投与されることを特徴とし、遺伝子操作された細胞の前記集団が投与後の一定期間、前記被験体において存続する、組成物。
【請求項17】
被験体において遺伝子操作された細胞の集団を拡大増殖するための、請求項1~4のいずれか一項に記載のCARを発現するように遺伝子操作された細胞を含む組成物であって、前記組成物は前記被験体に投与されることを特徴とし、前記組成物が前記被験体において子孫細胞の集団を生成する、組成物。
【請求項18】
被験体においてがんを処置するための、請求項5~7のいずれか一項に記載の核酸分子、請求項8に記載のベクター、および/または請求項9~11のいずれか一項に記載の細胞を含む組成物。
【請求項19】
前記被験体が、がんの治療を受けたことがある、かつ/またはがんの治療を受けている、請求項13~18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
B7-H3(CD276)抗原を有するがん細胞および/またはがん始原細胞(CIC)を標的化する方法において使用するための、請求項1~4のいずれか一項に記載のCARを含む細胞を含む組成物であって、前記方法は、前記がん細胞および/または前記CICに、前記細胞を提供することを含む、組成物。
【請求項21】
前記がん細胞および/またはCICが、インビトロまたはインビボにある、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記がん細胞および/または前記CICが被験体内にある、請求項20に記載の組成物。
【請求項23】
細胞試料中のがん細胞および/またはがん始原細胞(CIC)を検出する方法であって、
a)結合複合体が形成し得る条件下で前記細胞試料と請求項1~4のいずれか一項に記載のCARとを接触させるステップと;
b)前記結合複合体の形成を検出するステップであって、前記結合複合体の検出が、前記細胞試料中のがん細胞および/またはCICを示す、ステップと
を含む、方法。
【請求項24】
被験体においてがん細胞および/またはがん始原細胞(CIC)を検出する方法であって、
a)結合複合体が形成し得る条件下で前記被験体から得た細胞試料と請求項1~4のいずれか一項に記載のCARとを接触させるステップと;
b)前記結合複合体の形成を検出するステップであって、前記結合複合体の検出が、前記被験体におけるがん細胞および/またはCICの存在を示す、ステップと
を含む、方法。
【請求項25】
前記細胞が、αβΤ細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、制御性T細胞、NKT細胞、Th17細胞、γδT細胞およびそれらの任意の組合せからなる群より選択される、請求項13~19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
前記細胞が自己細胞である、請求項13~22また
は25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
B7-H3(CD276)の発現の増加に関連する疾患または障害の処置において使用するための、請求項1または請求項2に記載のキメラ抗原受容体を含む組成物。
【請求項28】
被験体におけるB7-H3発現標的細胞集団または組織に対するT細胞媒介免疫応答の刺激において使用するための、請求項1または請求項2に記載のキメラ抗原受容体を含む組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の陳述
本願は、米国特許法第35条119条(e)項の下、2017年6月21日付で出願された米国特許仮出願第62/523,105号の利益を主張する。この米国特許仮出願は参照によりその全文が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、キメラ抗原受容体(CAR)組成物およびがん免疫療法におけるそれらの使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
B7-H3(CD276)は、I型膜貫通タンパク質であり、T細胞に対する阻害効果を有するリガンドのB7スーパーファミリーのメンバーである。B7-H3はいくつかのヒト悪性疾患で高度に発現し、その発現は不良な生存と相関している。B7-H3は、腫瘍細胞で発現するが、正常組織での分布が限定されているため、キメラ抗原受容体(CAR)再指向化T細胞の標的として注目されている。B7-H3の広範な腫瘍発現を考えると、B7-H3の適用可能性に多くの関心が集まっている。CARは、多くの固形および液性のヒト腫瘍の処置のための特定のモノクローナル抗体に由来する。本発明は、B7-H3(CD276)膜貫通タンパク質を標的化するキメラ抗原受容体(CAR)のための組成物および方法を記載する。
【0004】
本発明は、B7-H3(CD276)膜貫通タンパク質を標的化するキメラ抗原受容体(CAR)およびがんの処置におけるその使用方法を提供することにより、当技術分野における以前の欠点を克服する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、免疫療法を用いるがんの処置をはじめとする、がんの処置のための方法および組成物を提供する。特定の例では、免疫療法には、特定のがんを標的化するように操作されたTリンパ球が含まれる。
【0006】
よって、一実施形態では、本発明は、アミノ酸配列:
【化1】
を含むキメラ抗原受容体(CAR)を提供する。
【0007】
もう一つの実施形態では、本発明は、アミノ酸配列:
【化2】
を含むキメラ抗原受容体(CAR)を提供する。
【0008】
さらなる実施形態では、本発明は、本発明のCARをコードする核酸分子を提供し、それには、一部の実施形態では、配列番号1のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む配列番号3のヌクレオチド配列、および、一部の実施形態では、配列番号2のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む配列番号4のヌクレオチド配列が含まれる。本発明はさらに、本発明の核酸分子を含むベクターおよび細胞を提供する。本発明は、配列番号5のヌクレオチド配列を有する核酸分子も提供する。
【0009】
さらなる実施形態では、本発明は、被験体に有効量の本発明の核酸分子、ベクターおよび/または細胞を投与し、それにより被験体においてB7-H3発現標的細胞集団または組織に対するT細胞媒介免疫応答を刺激することを含む、被験体においてB7-H3発現標的細胞集団または組織に対するT細胞媒介免疫応答を刺激する方法を提供する。
【0010】
さらなる実施形態では、本発明は、被験体に有効量の本発明の核酸分子、ベクター、および/または細胞を投与し、それにより被験体に抗腫瘍免疫を提供することを含む、被験体に抗腫瘍免疫を提供する方法を提供する。
【0011】
本発明は、被験体に有効量の本発明の核酸分子、ベクター、および/または細胞を投与し、それによりB7-H3の発現の増加に関連する疾患または障害を有する被験体を被験体の細胞によって処置することを含む、B7-H3(CD276)の発現の増加に関連する疾患または障害を有する被験体を被験体の細胞によって処置する方法をさらに提供する。
【0012】
さらなる実施形態では、本発明は、本発明のCARを発現するように遺伝子操作されたT細胞を被験体に投与することを含む、被験体(例えば、がんと診断された被験体)において、遺伝子操作されたT細胞の持続性集団を生成する方法を提供し、ここで、遺伝子操作されたT細胞の持続性集団は、投与後に被験体において存続する。
【0013】
さらなる実施形態では、本発明は、本発明のCARを発現するように遺伝子操作されたT細胞を被験体に投与することを含む、被験体(例えば、がんと診断された被験体)において、遺伝子操作されたT細胞の集団を拡大増殖する(expand)方法を提供し、ここで、投与された遺伝子操作されたT細胞は被験体において後代T細胞の集団を生成する。
【0014】
さらなる実施形態では、本発明は、被験体に有効量の本発明の核酸分子、ベクターおよび/または細胞を投与し、それにより被験体においてがんを処置することを含む、被験体においてがんを処置する方法を提供する。
【0015】
本発明はまた、がん細胞および/またはがん始原細胞(cancer initiating cell)(CIC)を本発明のCARを含む細胞と接触させることを含む、B7-H3(CD276)抗原を有するがん細胞および/またはCICを標的化する方法も提供する。
【0016】
また、a)結合複合体が形成し得る条件下で細胞試料と本発明のCARとを接触させるステップ;およびb)結合複合体の検出が細胞試料中のがん細胞および/またはCICを示す、結合複合体の形成を検出するステップを含む、細胞試料においてがん細胞および/またはがん始原細胞(CIC)を検出する方法も本明細書において提供される。
【0017】
本発明のもう一つの実施形態は、a)結合複合体が形成し得る条件下で、被験体から得た細胞試料と本発明のCARとを接触させるステップ;およびb)結合複合体の検出が被験体におけるがん細胞および/またはCICの存在を示す、結合複合体の形成を検出するステップを含む、被験体においてがん細胞および/またはがん始原細胞(CIC)を検出する方法である。
【0018】
本発明のさらなる実施形態は、関連する核酸分子、組み換え発現ベクター、宿主細胞、細胞集団、抗体またはその抗原結合部分、抗体断片および本発明のCARに関連する医薬組成物を提供する。
特定の実施形態では、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
アミノ酸配列:
【化6】
を含む、キメラ抗原受容体(CAR)。
(項目2)
アミノ酸配列:
【化7】
を含む、キメラ抗原受容体(CAR)。
(項目3)
検出可能部分をさらに含む、項目1または2のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体(CAR)。
(項目4)
薬物、毒素、小分子、抗体、サイトカイン、腫瘍溶解性ウイルス、酵素、ナノ粒子、バイオマテリアル、スキャフォールドおよびそれらの任意の組合せからなる群より選択されるエフェクター分子をさらに含む、項目1~3のいずれか一項に記載のCAR。
(項目5)
項目1~4のいずれか一項に記載のCARをコードする核酸分子。
(項目6)
配列番号3のヌクレオチド配列を含む、項目5に記載の核酸分子。
(項目7)
配列番号4のヌクレオチド配列を含む、項目5に記載の核酸分子。
(項目8)
項目5~7のいずれか一項に記載の核酸分子を含むベクター。
(項目9)
項目1~4のいずれか一項に記載のCARを含む細胞。
(項目10)
項目5~7のいずれか一項に記載の核酸分子および/または項目8に記載のベクターを含む細胞。
(項目11)
前記細胞が、αβT細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、制御性T細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、Th17細胞、γδT細胞およびそれらの任意の組合せからなる群より選択される、項目9または10のいずれか一項に記載の細胞。
(項目12)
項目1~4のいずれか一項に記載のCAR、項目5~7のいずれか一項に記載の核酸分子、項目8に記載のベクターおよび/または項目9~11のいずれか一項に記載の細胞を薬学的に許容され得る担体中に含む、組成物。
(項目13)
被験体においてB7-H3発現標的細胞集団または組織に対するT細胞媒介免疫応答を刺激する方法であって、前記被験体に有効量の項目5~7のいずれか一項に記載の核酸分子、項目8に記載のベクター、および/または項目9~11のいずれか一項に記載の細胞を投与し、それにより前記被験体において前記B7-H3発現標的細胞集団または組織に対するT細胞媒介免疫応答を刺激することを含む、方法。
(項目14)
被験体に抗腫瘍免疫を提供する方法であって、前記被験体に有効量の項目5~7のいずれか一項に記載の核酸分子、項目8に記載のベクター、および/または項目9~11のいずれか一項に記載の細胞を投与し、それにより前記被験体に抗腫瘍免疫を提供することを含む、方法。
(項目15)
B7-H3(CD276)の発現の増加に関連する疾患または障害を有する被験体を、前記被験体の細胞によって処置する方法であって、前記被験体に有効量の項目5~7のいずれか一項に記載の核酸分子、項目8に記載のベクター、および/または項目9~11のいずれか一項に記載の細胞を投与し、それによりB7-H3の発現の増加に関連する前記疾患または障害を有する前記被験体を前記被験体の前記細胞によって処置することを含む、方法。
(項目16)
被験体において遺伝子操作された細胞の集団を生成する方法であって、項目1~4のいずれか一項に記載のCARを発現するように遺伝子操作された細胞を前記被験体に投与することを含み、遺伝子操作された細胞の前記集団が投与後の一定期間、前記被験体において存続する、方法。
(項目17)
被験体において遺伝子操作された細胞の集団を拡大増殖する方法であって、項目1~4のいずれか一項に記載のCARを発現するように遺伝子操作された細胞を前記被験体に投与することを含み、投与された前記遺伝子操作された細胞が前記被験体において子孫細胞の集団を生成する、方法。
(項目18)
被験体においてがんを処置する方法であって、前記被験体に有効量の項目5~7のいずれか一項に記載の核酸分子、項目8に記載のベクター、および/または項目9~11のいずれか一項に記載の細胞を投与し、それにより前記被験体においてがんを処置することを含む、方法。
(項目19)
前記被験体が、がんの治療を受けたことがある、かつ/またはがんの治療を受けている、項目13~18のいずれか一項に記載の方法。
(項目20)
B7-H3(CD276)抗原を有するがん細胞および/またはがん始原細胞(CIC)を標的化する方法であって、前記がん細胞および/または前記CICに項目1~4のいずれか一項に記載のCARを含む細胞を提供することを含む、方法。
(項目21)
前記がん細胞および/またはCICが、インビトロまたはインビボにある、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記がん細胞および/または前記CICが被験体内にある、項目20に記載の方法。
(項目23)
細胞試料中のがん細胞および/またはがん始原細胞(CIC)を検出する方法であって、
a)結合複合体が形成し得る条件下で前記細胞試料と項目1~4のいずれか一項に記載のCARとを接触させるステップと;
b)前記結合複合体の形成を検出するステップであって、前記結合複合体の検出が、前記細胞試料中のがん細胞および/またはCICを示す、ステップと
を含む、方法。
(項目24)
被験体においてがん細胞および/またはがん始原細胞(CIC)を検出する方法であって、
a)結合複合体が形成し得る条件下で前記被験体から得た細胞試料と項目1~4のいずれか一項に記載のCARとを接触させるステップと;
b)前記結合複合体の形成を検出するステップであって、前記結合複合体の検出が、前記被験体におけるがん細胞および/またはCICの存在を示す、ステップと
を含む、方法。
(項目25)
前記細胞が、αβΤ細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、制御性T細胞、NKT細胞、Th17細胞、γδT細胞およびそれらの任意の組合せからなる群より選択される、項目13~19のいずれか一項に記載の方法。
(項目26)
前記細胞が自己細胞である、項目13~22または24~25のいずれか一項に記載の方法。
(項目27)
B7-H3(CD276)の発現の増加に関連する疾患または障害の処置における、項目1または項目2に記載のキメラ抗原受容体の使用。
(項目28)
被験体におけるB7-H3発現標的細胞集団または組織に対するT細胞媒介免疫応答の刺激における、項目1または項目2に記載のキメラ抗原受容体の使用。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1A】
図1A~Cは、B7-H3が膵臓がんにおいて高度に発現していることを示す図である。(1A)正常なヒト膵臓と、膵管腺癌(PDAC)の凍結組織の免疫組織化学。染色は、B7-H3.CARが由来した抗B7-H3 mAb376.96を使用して実施した。mAbの最終濃度は1μg/mLであった。スケールバーは100μmである。ヒトPDAC腫瘍細胞株(1B)およびPDX由来の原発性膵臓腫瘍細胞株(1C)も抗B7-H3 mAb376.96で染色し、抗原の発現をフローサイトメトリーによって評価した。
【
図1B-C】
図1A~Cは、B7-H3が膵臓がんにおいて高度に発現していることを示す図である。(1A)正常なヒト膵臓と、膵管腺癌(PDAC)の凍結組織の免疫組織化学。染色は、B7-H3.CARが由来した抗B7-H3 mAb376.96を使用して実施した。mAbの最終濃度は1μg/mLであった。スケールバーは100μmである。ヒトPDAC腫瘍細胞株(1B)およびPDX由来の原発性膵臓腫瘍細胞株(1C)も抗B7-H3 mAb376.96で染色し、抗原の発現をフローサイトメトリーによって評価した。
【0020】
【
図2】
図2は、正常ヒト組織におけるB7-H3の制限された発現を示す図である。正常なヒト組織の凍結マイクロアレイの免疫組織化学。染色は、抗B7-H3 mAb376.96を使用して実施した。Abの最終濃度は1μg/mLであった。代表的な顕微鏡写真が示されている。黒枠は拡大された切り抜き図を示す。データは、組織あたり少なくとも3つの切片を表す。スケールバーは200μmである。
【0021】
【
図3A-C】
図3A~Gは、B7-H3.CAR-T細胞がヒトおよびマウスB7-H3を認識することを示す図である。(3A)CD28かまたは4-1BB共刺激ドメインのいずれかを含むB7-H3.CARをコードするレトロウイルスベクターSFGの模式的構造。(3B)形質導入されたヒトT細胞におけるB7-H3.CARの代表的な発現。CAR発現は、抗マウス-FAB抗体を使用して検出し、フローサイトメトリーによって分析した。(3C)ヒトリンパ腫腫瘍細胞株Rajiを、レトロウイルス遺伝子導入によって、B7-H3の2つのヒトアイソフォーム(2Ig-hB7-H3または4Ig-hB7-H3)かまたはマウスアイソフォーム(mB7-H3)のいずれかを発現するように操作した。次に、単一のクローンを選択した。抗B7-H3 mAb376.96は、フローサイトメトリーで評価されるように、ヒトとマウスの両方のB7-H3を認識する。(3D)野生型(WT)Raji細胞と、ヒトまたはマウスのいずれかのB7-H3を発現するように改変されたRaji細胞を、対照T細胞またはB7-H3.CAR-Tsのいずれかと共培養した(1:1比)。5日目までに、腫瘍細胞(CD19+)およびB7-H3.CAR-Ts(CD3+)をフローサイトメトリーで数えた。(3E)共培養の5日目までの腫瘍細胞頻度の統計(n=4)。ELISAで測定した、Raji細胞とともに24時間共培養した後に、対照T細胞およびB7-H3.CAR-T細胞によって放出されたIFNγ(3F)およびIL2(3G)(n=4)。
【
図3D】
図3A~Gは、B7-H3.CAR-T細胞がヒトおよびマウスB7-H3を認識することを示す図である。(3A)CD28かまたは4-1BB共刺激ドメインのいずれかを含むB7-H3.CARをコードするレトロウイルスベクターSFGの模式的構造。(3B)形質導入されたヒトT細胞におけるB7-H3.CARの代表的な発現。CAR発現は、抗マウス-FAB抗体を使用して検出し、フローサイトメトリーによって分析した。(3C)ヒトリンパ腫腫瘍細胞株Rajiを、レトロウイルス遺伝子導入によって、B7-H3の2つのヒトアイソフォーム(2Ig-hB7-H3または4Ig-hB7-H3)かまたはマウスアイソフォーム(mB7-H3)のいずれかを発現するように操作した。次に、単一のクローンを選択した。抗B7-H3 mAb376.96は、フローサイトメトリーで評価されるように、ヒトとマウスの両方のB7-H3を認識する。(3D)野生型(WT)Raji細胞と、ヒトまたはマウスのいずれかのB7-H3を発現するように改変されたRaji細胞を、対照T細胞またはB7-H3.CAR-Tsのいずれかと共培養した(1:1比)。5日目までに、腫瘍細胞(CD19+)およびB7-H3.CAR-Ts(CD3+)をフローサイトメトリーで数えた。(3E)共培養の5日目までの腫瘍細胞頻度の統計(n=4)。ELISAで測定した、Raji細胞とともに24時間共培養した後に、対照T細胞およびB7-H3.CAR-T細胞によって放出されたIFNγ(3F)およびIL2(3G)(n=4)。
【
図3E-G】
図3A~Gは、B7-H3.CAR-T細胞がヒトおよびマウスB7-H3を認識することを示す図である。(3A)CD28かまたは4-1BB共刺激ドメインのいずれかを含むB7-H3.CARをコードするレトロウイルスベクターSFGの模式的構造。(3B)形質導入されたヒトT細胞におけるB7-H3.CARの代表的な発現。CAR発現は、抗マウス-FAB抗体を使用して検出し、フローサイトメトリーによって分析した。(3C)ヒトリンパ腫腫瘍細胞株Rajiを、レトロウイルス遺伝子導入によって、B7-H3の2つのヒトアイソフォーム(2Ig-hB7-H3または4Ig-hB7-H3)かまたはマウスアイソフォーム(mB7-H3)のいずれかを発現するように操作した。次に、単一のクローンを選択した。抗B7-H3 mAb376.96は、フローサイトメトリーで評価されるように、ヒトとマウスの両方のB7-H3を認識する。(3D)野生型(WT)Raji細胞と、ヒトまたはマウスのいずれかのB7-H3を発現するように改変されたRaji細胞を、対照T細胞またはB7-H3.CAR-Tsのいずれかと共培養した(1:1比)。5日目までに、腫瘍細胞(CD19+)およびB7-H3.CAR-Ts(CD3+)をフローサイトメトリーで数えた。(3E)共培養の5日目までの腫瘍細胞頻度の統計(n=4)。ELISAで測定した、Raji細胞とともに24時間共培養した後に、対照T細胞およびB7-H3.CAR-T細胞によって放出されたIFNγ(3F)およびIL2(3G)(n=4)。
【0022】
【
図4A】
図4A~Fは、B7-H3.CAR-TsがインビトロでPDAC細胞株を標的化することを示す図である。(4A)6つのPDAC細胞株を、対照(NT)またはB7-H3.CAR-Tsとともに、T細胞とPDACの比が1:5または1:10で共培養した。PDAC腫瘍細胞株を緑色蛍光タンパク質(GFP)で標識した。7日目までに、PDAC(GFP+)およびB7-H3.CAR-T細胞(CD3+)をフローサイトメトリーで数えた。(4B)T細胞とPDACの比が1:5の場合および(4C)T細胞とPDACの比が1:10(n=4)の場合の腫瘍細胞頻度の統計。ELISAで測定した、PDACと24時間共培養した後に、対照およびB7-H3.CAR-Tsによって放出されたIFNγ(4D)およびIL2(4E)(n=4)。(4F)CFSE標識されたB7-H3.CAR-TsをPDACとともに1:1の比で5日間共培養した。CAR-T細胞の増殖をフローサイトメトリーによってCFSE希釈により測定した。CFSE標識されたB7-H3.CAR-T細胞のみを対照として使用した。これは塗りつぶされた灰色のピークとして示されている。
【
図4B-C】
図4A~Fは、B7-H3.CAR-TsがインビトロでPDAC細胞株を標的化することを示す図である。(4A)6つのPDAC細胞株を、対照(NT)またはB7-H3.CAR-Tsとともに、T細胞とPDACの比が1:5または1:10で共培養した。PDAC腫瘍細胞株を緑色蛍光タンパク質(GFP)で標識した。7日目までに、PDAC(GFP+)およびB7-H3.CAR-T細胞(CD3+)をフローサイトメトリーで数えた。(4B)T細胞とPDACの比が1:5の場合および(4C)T細胞とPDACの比が1:10(n=4)の場合の腫瘍細胞頻度の統計。ELISAで測定した、PDACと24時間共培養した後に、対照およびB7-H3.CAR-Tsによって放出されたIFNγ(4D)およびIL2(4E)(n=4)。(4F)CFSE標識されたB7-H3.CAR-TsをPDACとともに1:1の比で5日間共培養した。CAR-T細胞の増殖をフローサイトメトリーによってCFSE希釈により測定した。CFSE標識されたB7-H3.CAR-T細胞のみを対照として使用した。これは塗りつぶされた灰色のピークとして示されている。
【
図4D-E】
図4A~Fは、B7-H3.CAR-TsがインビトロでPDAC細胞株を標的化することを示す図である。(4A)6つのPDAC細胞株を、対照(NT)またはB7-H3.CAR-Tsとともに、T細胞とPDACの比が1:5または1:10で共培養した。PDAC腫瘍細胞株を緑色蛍光タンパク質(GFP)で標識した。7日目までに、PDAC(GFP+)およびB7-H3.CAR-T細胞(CD3+)をフローサイトメトリーで数えた。(4B)T細胞とPDACの比が1:5の場合および(4C)T細胞とPDACの比が1:10(n=4)の場合の腫瘍細胞頻度の統計。ELISAで測定した、PDACと24時間共培養した後に、対照およびB7-H3.CAR-Tsによって放出されたIFNγ(4D)およびIL2(4E)(n=4)。(4F)CFSE標識されたB7-H3.CAR-TsをPDACとともに1:1の比で5日間共培養した。CAR-T細胞の増殖をフローサイトメトリーによってCFSE希釈により測定した。CFSE標識されたB7-H3.CAR-T細胞のみを対照として使用した。これは塗りつぶされた灰色のピークとして示されている。
【
図4F】
図4A~Fは、B7-H3.CAR-TsがインビトロでPDAC細胞株を標的化することを示す図である。(4A)6つのPDAC細胞株を、対照(NT)またはB7-H3.CAR-Tsとともに、T細胞とPDACの比が1:5または1:10で共培養した。PDAC腫瘍細胞株を緑色蛍光タンパク質(GFP)で標識した。7日目までに、PDAC(GFP+)およびB7-H3.CAR-T細胞(CD3+)をフローサイトメトリーで数えた。(4B)T細胞とPDACの比が1:5の場合および(4C)T細胞とPDACの比が1:10(n=4)の場合の腫瘍細胞頻度の統計。ELISAで測定した、PDACと24時間共培養した後に、対照およびB7-H3.CAR-Tsによって放出されたIFNγ(4D)およびIL2(4E)(n=4)。(4F)CFSE標識されたB7-H3.CAR-TsをPDACとともに1:1の比で5日間共培養した。CAR-T細胞の増殖をフローサイトメトリーによってCFSE希釈により測定した。CFSE標識されたB7-H3.CAR-T細胞のみを対照として使用した。これは塗りつぶされた灰色のピークとして示されている。
【0023】
【
図5A】
図5A~Fは、B7-H3.CAR-T細胞がPDXに由来する原発性PDAC細胞株を標的化することを示す図である。(5A)PDX由来の3つの原発性PDAC細胞株を、対照T細胞(NT)またはB7-H3.CAR-T細胞とともに、T細胞とPDACの比1:5で共培養した。PDAC腫瘍細胞株をGFPで標識した。7日目までに、腫瘍細胞(GFP+)およびB7-H3.CAR-T細胞(CD3+)をフローサイトメトリーで数えた。(5B)T細胞とPDACの比が1:5の場合の、対照またはB7-H3.CAR-T細胞のいずれかとともに7日間の共培養した後の腫瘍細胞頻度の統計(n=6)、および(5C)T細胞とPDACの比が1:10の場合の統計(n=4)。ELISAで測定した、PDACと24時間共培養した後に、T細胞またはB7-H3.CAR-Tsのいずれかによって放出されたIFNγ(5D)およびIL2(5E)(n=4)。(5F)CFSE標識されたB7-H3.CAR-T細胞をPDACとともに1:1の比で5日間共培養した。B7-H3.CAR-T細胞の増殖をCFSE希釈により測定し、フローサイトメトリーによって分析した。CFSE標識されたB7-H3.CAR-T細胞のみを対照として使用した。これは塗りつぶされた灰色のピークとして示されている。
【
図5B-C】
図5A~Fは、B7-H3.CAR-T細胞がPDXに由来する原発性PDAC細胞株を標的化することを示す図である。(5A)PDX由来の3つの原発性PDAC細胞株を、対照T細胞(NT)またはB7-H3.CAR-T細胞とともに、T細胞とPDACの比1:5で共培養した。PDAC腫瘍細胞株をGFPで標識した。7日目までに、腫瘍細胞(GFP+)およびB7-H3.CAR-T細胞(CD3+)をフローサイトメトリーで数えた。(5B)T細胞とPDACの比が1:5の場合の、対照またはB7-H3.CAR-T細胞のいずれかとともに7日間の共培養した後の腫瘍細胞頻度の統計(n=6)、および(5C)T細胞とPDACの比が1:10の場合の統計(n=4)。ELISAで測定した、PDACと24時間共培養した後に、T細胞またはB7-H3.CAR-Tsのいずれかによって放出されたIFNγ(5D)およびIL2(5E)(n=4)。(5F)CFSE標識されたB7-H3.CAR-T細胞をPDACとともに1:1の比で5日間共培養した。B7-H3.CAR-T細胞の増殖をCFSE希釈により測定し、フローサイトメトリーによって分析した。CFSE標識されたB7-H3.CAR-T細胞のみを対照として使用した。これは塗りつぶされた灰色のピークとして示されている。
【
図5D-E】
図5A~Fは、B7-H3.CAR-T細胞がPDXに由来する原発性PDAC細胞株を標的化することを示す図である。(5A)PDX由来の3つの原発性PDAC細胞株を、対照T細胞(NT)またはB7-H3.CAR-T細胞とともに、T細胞とPDACの比1:5で共培養した。PDAC腫瘍細胞株をGFPで標識した。7日目までに、腫瘍細胞(GFP+)およびB7-H3.CAR-T細胞(CD3+)をフローサイトメトリーで数えた。(5B)T細胞とPDACの比が1:5の場合の、対照またはB7-H3.CAR-T細胞のいずれかとともに7日間の共培養した後の腫瘍細胞頻度の統計(n=6)、および(5C)T細胞とPDACの比が1:10の場合の統計(n=4)。ELISAで測定した、PDACと24時間共培養した後に、T細胞またはB7-H3.CAR-Tsのいずれかによって放出されたIFNγ(5D)およびIL2(5E)(n=4)。(5F)CFSE標識されたB7-H3.CAR-T細胞をPDACとともに1:1の比で5日間共培養した。B7-H3.CAR-T細胞の増殖をCFSE希釈により測定し、フローサイトメトリーによって分析した。CFSE標識されたB7-H3.CAR-T細胞のみを対照として使用した。これは塗りつぶされた灰色のピークとして示されている。
【
図5F】
図5A~Fは、B7-H3.CAR-T細胞がPDXに由来する原発性PDAC細胞株を標的化することを示す図である。(5A)PDX由来の3つの原発性PDAC細胞株を、対照T細胞(NT)またはB7-H3.CAR-T細胞とともに、T細胞とPDACの比1:5で共培養した。PDAC腫瘍細胞株をGFPで標識した。7日目までに、腫瘍細胞(GFP+)およびB7-H3.CAR-T細胞(CD3+)をフローサイトメトリーで数えた。(5B)T細胞とPDACの比が1:5の場合の、対照またはB7-H3.CAR-T細胞のいずれかとともに7日間の共培養した後の腫瘍細胞頻度の統計(n=6)、および(5C)T細胞とPDACの比が1:10の場合の統計(n=4)。ELISAで測定した、PDACと24時間共培養した後に、T細胞またはB7-H3.CAR-Tsのいずれかによって放出されたIFNγ(5D)およびIL2(5E)(n=4)。(5F)CFSE標識されたB7-H3.CAR-T細胞をPDACとともに1:1の比で5日間共培養した。B7-H3.CAR-T細胞の増殖をCFSE希釈により測定し、フローサイトメトリーによって分析した。CFSE標識されたB7-H3.CAR-T細胞のみを対照として使用した。これは塗りつぶされた灰色のピークとして示されている。
【0024】
【
図6A-B】
図6A~Jは、B7-H3.CAR-Tsが異種移植片モデルにおいて抗腫瘍活性を示したことを示す図である。(6A)同所性マウスモデルのスキーマ。FFluc標識されたPanc-1(2×10
5/マウス)またはBxPC-3(1×10
5/マウス)ヒトPDAC腫瘍細胞株を、NSGマウスの膵臓に植込んだ。12日目までに、対照CD19.CAR-T細胞か、あるいはCD28または4-1BB共刺激ドメインのいずれかをコードするB7-H3.CAR-T細胞のいずれかをマウスに注入した(静脈内(i.v.)経路で10
7細胞/マウス)。腫瘍増殖は、T細胞注入後に毎週、発光イメージングによってモニタリングされた。(6B)Panc-1同所性モデルの生物発光。(6C)CD19.CAR-T細胞で処置したマウスの腫瘍移植後50日目までのPanc-1の代表的な超音波(US)測定。(6D)Panc-1の生物発光シグナル測定。(6E)BxPC-3同所性モデルの生物発光。(6F)BxPC-3の生物発光シグナル測定。(6G)BxPC-3同所性モデルのカプラン・マイヤー生存曲線分析。(6H)Panc-1の転移モデルのスキーマ。(6I)Panc-1転移モデルの生物発光。(6J)転移性Panc-1の生物発光シグナル測定。
【
図6C-D】
図6A~Jは、B7-H3.CAR-Tsが異種移植片モデルにおいて抗腫瘍活性を示したことを示す図である。(6A)同所性マウスモデルのスキーマ。FFluc標識されたPanc-1(2×10
5/マウス)またはBxPC-3(1×10
5/マウス)ヒトPDAC腫瘍細胞株を、NSGマウスの膵臓に植込んだ。12日目までに、対照CD19.CAR-T細胞か、あるいはCD28または4-1BB共刺激ドメインのいずれかをコードするB7-H3.CAR-T細胞のいずれかをマウスに注入した(静脈内(i.v.)経路で10
7細胞/マウス)。腫瘍増殖は、T細胞注入後に毎週、発光イメージングによってモニタリングされた。(6B)Panc-1同所性モデルの生物発光。(6C)CD19.CAR-T細胞で処置したマウスの腫瘍移植後50日目までのPanc-1の代表的な超音波(US)測定。(6D)Panc-1の生物発光シグナル測定。(6E)BxPC-3同所性モデルの生物発光。(6F)BxPC-3の生物発光シグナル測定。(6G)BxPC-3同所性モデルのカプラン・マイヤー生存曲線分析。(6H)Panc-1の転移モデルのスキーマ。(6I)Panc-1転移モデルの生物発光。(6J)転移性Panc-1の生物発光シグナル測定。
【
図6E-F】
図6A~Jは、B7-H3.CAR-Tsが異種移植片モデルにおいて抗腫瘍活性を示したことを示す図である。(6A)同所性マウスモデルのスキーマ。FFluc標識されたPanc-1(2×10
5/マウス)またはBxPC-3(1×10
5/マウス)ヒトPDAC腫瘍細胞株を、NSGマウスの膵臓に植込んだ。12日目までに、対照CD19.CAR-T細胞か、あるいはCD28または4-1BB共刺激ドメインのいずれかをコードするB7-H3.CAR-T細胞のいずれかをマウスに注入した(静脈内(i.v.)経路で10
7細胞/マウス)。腫瘍増殖は、T細胞注入後に毎週、発光イメージングによってモニタリングされた。(6B)Panc-1同所性モデルの生物発光。(6C)CD19.CAR-T細胞で処置したマウスの腫瘍移植後50日目までのPanc-1の代表的な超音波(US)測定。(6D)Panc-1の生物発光シグナル測定。(6E)BxPC-3同所性モデルの生物発光。(6F)BxPC-3の生物発光シグナル測定。(6G)BxPC-3同所性モデルのカプラン・マイヤー生存曲線分析。(6H)Panc-1の転移モデルのスキーマ。(6I)Panc-1転移モデルの生物発光。(6J)転移性Panc-1の生物発光シグナル測定。
【
図6G-H】
図6A~Jは、B7-H3.CAR-Tsが異種移植片モデルにおいて抗腫瘍活性を示したことを示す図である。(6A)同所性マウスモデルのスキーマ。FFluc標識されたPanc-1(2×10
5/マウス)またはBxPC-3(1×10
5/マウス)ヒトPDAC腫瘍細胞株を、NSGマウスの膵臓に植込んだ。12日目までに、対照CD19.CAR-T細胞か、あるいはCD28または4-1BB共刺激ドメインのいずれかをコードするB7-H3.CAR-T細胞のいずれかをマウスに注入した(静脈内(i.v.)経路で10
7細胞/マウス)。腫瘍増殖は、T細胞注入後に毎週、発光イメージングによってモニタリングされた。(6B)Panc-1同所性モデルの生物発光。(6C)CD19.CAR-T細胞で処置したマウスの腫瘍移植後50日目までのPanc-1の代表的な超音波(US)測定。(6D)Panc-1の生物発光シグナル測定。(6E)BxPC-3同所性モデルの生物発光。(6F)BxPC-3の生物発光シグナル測定。(6G)BxPC-3同所性モデルのカプラン・マイヤー生存曲線分析。(6H)Panc-1の転移モデルのスキーマ。(6I)Panc-1転移モデルの生物発光。(6J)転移性Panc-1の生物発光シグナル測定。
【
図6I-J】
図6A~Jは、B7-H3.CAR-Tsが異種移植片モデルにおいて抗腫瘍活性を示したことを示す図である。(6A)同所性マウスモデルのスキーマ。FFluc標識されたPanc-1(2×10
5/マウス)またはBxPC-3(1×10
5/マウス)ヒトPDAC腫瘍細胞株を、NSGマウスの膵臓に植込んだ。12日目までに、対照CD19.CAR-T細胞か、あるいはCD28または4-1BB共刺激ドメインのいずれかをコードするB7-H3.CAR-T細胞のいずれかをマウスに注入した(静脈内(i.v.)経路で10
7細胞/マウス)。腫瘍増殖は、T細胞注入後に毎週、発光イメージングによってモニタリングされた。(6B)Panc-1同所性モデルの生物発光。(6C)CD19.CAR-T細胞で処置したマウスの腫瘍移植後50日目までのPanc-1の代表的な超音波(US)測定。(6D)Panc-1の生物発光シグナル測定。(6E)BxPC-3同所性モデルの生物発光。(6F)BxPC-3の生物発光シグナル測定。(6G)BxPC-3同所性モデルのカプラン・マイヤー生存曲線分析。(6H)Panc-1の転移モデルのスキーマ。(6I)Panc-1転移モデルの生物発光。(6J)転移性Panc-1の生物発光シグナル測定。
【0025】
【
図7-1】
図7は、CARのCD28バージョンをコードするプラスミドのプラスミドマップおよびヌクレオチド配列(配列番号3)と、アミノ酸配列(配列番号1)への翻訳を示す図である。
【
図7-2】
図7は、CARのCD28バージョンをコードするプラスミドのプラスミドマップおよびヌクレオチド配列(配列番号3)と、アミノ酸配列(配列番号1)への翻訳を示す図である。
【
図7-3】
図7は、CARのCD28バージョンをコードするプラスミドのプラスミドマップおよびヌクレオチド配列(配列番号3)と、アミノ酸配列(配列番号1)への翻訳を示す図である。
【
図7-4】
図7は、CARのCD28バージョンをコードするプラスミドのプラスミドマップおよびヌクレオチド配列(配列番号3)と、アミノ酸配列(配列番号1)への翻訳を示す図である。
【
図7-5】
図7は、CARのCD28バージョンをコードするプラスミドのプラスミドマップおよびヌクレオチド配列(配列番号3)と、アミノ酸配列(配列番号1)への翻訳を示す図である。
【0026】
【
図8-1】
図8は、CARの4-1-BBバージョンをコードするプラスミドのプラスミドマップおよびヌクレオチド配列(配列番号4)と、アミノ酸配列(配列番号2)への翻訳を示す図である。
【
図8-2】
図8は、CARの4-1-BBバージョンをコードするプラスミドのプラスミドマップおよびヌクレオチド配列(配列番号4)と、アミノ酸配列(配列番号2)への翻訳を示す図である。
【
図8-3】
図8は、CARの4-1-BBバージョンをコードするプラスミドのプラスミドマップおよびヌクレオチド配列(配列番号4)と、アミノ酸配列(配列番号2)への翻訳を示す図である。
【
図8-4】
図8は、CARの4-1-BBバージョンをコードするプラスミドのプラスミドマップおよびヌクレオチド配列(配列番号4)と、アミノ酸配列(配列番号2)への翻訳を示す図である。
【
図8-5】
図8は、CARの4-1-BBバージョンをコードするプラスミドのプラスミドマップおよびヌクレオチド配列(配列番号4)と、アミノ酸配列(配列番号2)への翻訳を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明を以下でさらに詳細に説明する。この説明は、本発明を実施することのできるすべての異なる方法の詳細なカタログ、または本発明に追加することのできるすべての特徴であることを意図していない。例えば、一実施形態に関して例示される特徴は、他の実施形態に組み込まれてもよく、特定の実施形態に関して例示される特徴はその実施形態から削除されてもよい。その上、本発明から逸脱しない本開示に照らして、本明細書中で提案される様々な実施形態に対する多数の変形および追加が当業者には明らかであろう。したがって、以下の明細書は、本発明のいくつかの特定の実施形態を例示することを意図し、そのすべての置換、組合せ、および変形を網羅的に指定することを意図していない。
【0028】
文脈がそうでないことを示していない限り、本明細書に記載される本発明の様々な特徴は任意の組み合わせで使用され得ることが特に意図される。さらに、本発明は、本発明の一部の実施形態において、本明細書に記載の任意の特徴または特徴の組み合わせが除外または省略され得ることも企図する。
【0029】
以下の説明では、本明細書に開示される本実施形態の完全な理解を提供するために、特定の量、サイズなどの特定の詳細が示される。しかしながら、このような特定の詳細がなくても本開示を実施することができることは当業者には明らかであろう。多くの場合、そのような詳細などは、本開示の完全な理解を得るために必要ではなく、関連技術分野の当業者の技術の範囲内にあるため、そのような考慮事項などに関する詳細は省略されている。
【0030】
本発明は、B7-H3抗原を有するがん細胞および/またはがん始原細胞(CIC)を標的化するキメラ抗原受容体(CAR)の発見に基づく。したがって、本発明は、B7-H3抗原を有するがん細胞および/またはCICを標的化するキメラ抗原受容体(CAR)を提供し、ここで、CARは、本明細書に記載される成分を含む、それから本質的になる、かつ/またはそれからなる。
【0031】
よって、一実施形態では、本発明は、アミノ酸配列:
【化3】
(CD28共刺激ドメインを含むB7-H3.CAR)を含む、それから本質的になる、またはそれからなるキメラ抗原受容体(CAR)を提供する。
【0032】
もう一つの実施形態では、本発明は、アミノ酸配列:
【化4】
(4-1BB共刺激ドメインを含むB7-H3.CAR)を含む、それから本質的になる、またはそれからなるキメラ抗原受容体(CAR)を提供する。
【0033】
特定の実施形態では、本発明のキメラ抗原受容体(CAR)は、1、2、3、4、またはそれを超える成分を有し、一部の実施形態では、1、2、3、4またはそれを超える成分は、B7-H3抗原を含むがん細胞および/またはCICに対するCARの標的化および/または結合を促進するが、場合によっては、1またはそれを超える成分は、CARを含む細胞の成長および/または成熟を促進かつ/または維持するのに有用であり得る。
【0034】
本発明はさらに、本発明のCARをコードする核酸分子を提供する。一部の実施形態では、核酸分子は、CD28共刺激ドメインを含むB7-H3 CARをコードする配列番号3のヌクレオチド配列を含むことができる。一部の実施形態では、核酸分子は、4-1BB共刺激ドメインを含むB7-H3 CARをコードする配列番号4のヌクレオチド配列を含むことができる。
【0035】
本明細書でさらに提供されるのは、本発明の核酸分子を含むベクターである。
【0036】
一部の実施形態では、本発明は、本発明のCARを含む細胞を提供し、一部の実施形態では、本発明は、本発明の核酸分子を含む細胞を提供する。
【0037】
本発明の細胞の限定されない例としては、αβΤ細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、制御性T細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、Th17細胞、γδT細胞、およびそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0038】
一部の実施形態では、本発明は、B7-H3抗原を認識して結合するCARを含む細胞傷害性Tリンパ球を提供する。細胞傷害性Tリンパ球は、ウイルスベクターで形質導入するか、あるいは本発明のCARをコードするヌクレオチド配列を含むプラスミドまたは核酸構築物でトランスフェクトすることができ、一部の実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号3および/または配列番号4であり得る。
【0039】
特定の実施形態では、本発明には、B7-H3、細胞質シグナル伝達ドメインの一部または全部、および/あるいは1またはそれを超える共刺激分子の一部または全部(例えば共刺激分子のエンドドメイン)に特異的な抗体、抗原結合断片および/または操作された抗体を有するキメラ抗原受容体を含むように操作されたTリンパ球が含まれる。具体的な実施形態では、B7-H3に対する抗体は、一本鎖可変断片(scFv)であるが、特定の態様では、抗体は、例えばHER2またはCD19などの細胞表面上の他の標的抗原に指向され得る。特定の実施形態では、細胞質シグナル伝達ドメイン、例えばT細胞受容体ζ鎖に由来するものなどを、キメラ抗原受容体と標的抗原の係合(engagement)の後にTリンパ球の増殖およびエフェクター機能の刺激シグナルを生成するために、キメラ抗原受容体の少なくとも一部として含めることができる。例としては、限定されるものではないが、CD28、4-1BB、およびOX40などの共刺激分子由来のエンドドメイン、またはインターロイキン7(IL7)、インターロイキン15(IL15)およびインターロイキン12(IL12)などのサイトカイン受容体のシグナル伝達成分が含まれることになる。特定の実施形態では、共刺激分子は、抗原係合の後にCARによって産生されるT細胞の活性化、増殖、および/または細胞毒性を高めるために用いられる。具体的な実施形態では、共刺激分子は、CD28、OX40、および4-1BBならびにサイトカイン受容体であり得る。本発明のサイトカイン受容体の限定されない例としては、IL7およびIL15が挙げられる。
【0040】
腫瘍指向性キメラ抗原受容体(CAR)を発現させるためのヒトTリンパ球の遺伝子操作により、タンパク質-抗原のプロセシングおよび提示の異常に起因する腫瘍免疫エスケープ機構を迂回する抗腫瘍エフェクター細胞を産生することができる。
【0041】
特定の実施形態では、本発明は、B7-H3抗原に特異的な細胞を提供し、前記細胞は、B7-H3特異的抗体376.96由来の細胞外抗原結合ドメインを、T細胞受容体ζ鎖由来の細胞質シグナル伝達ドメイン、および限定されない例として、共刺激分子CD28および/または4-1BBのエンドドメインと連結することにより生成される、キメラ抗原受容体を細胞表面に有する。
【0042】
一部の実施形態では、本発明のCARは、T細胞受容体ζ鎖のエフェクタードメインまたはT細胞受容体由来の関連するシグナル伝達エンドドメインを含む、それから本質的になる、かつ/またはそれからなることができる。一部の実施形態では、キメラ抗原受容体は配列番号3または配列番号4のヌクレオチド配列にコードされる。よって、本発明は、配列番号3および/または配列番号4のヌクレオチド配列を含むベクター(例えば、ウイルスベクター)をさらに提供し、本発明のTリンパ球は、キメラ抗原受容体がTリンパ球で産生される条件下で、配列番号3および/または配列番号4のヌクレオチド配列を含むウイルスベクターで形質導入することができる。
【0043】
本明細書において使用される、用語「共刺激分子」とは、抗原特異的受容体の係合の後のT細胞の活性化、増殖およびエフェクター機能を促進する分子成分を指す。一部の実施形態では、本発明のCARは、1またはそれを超える(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10など)共刺激分子および/またはその活性断片を含むことができ、その限定されない例には、CD28、OX40、4-1BBまたは現在公知であるかまたは後に同定される任意のその他の共刺激分子および/またはその活性断片が単独でまたは任意の組合せで含まれる。
【0044】
さらなる実施形態では、本発明のキメラ抗原受容体(CAR)は、当技術分野で公知であるような検出可能部分および/またはエフェクター分子をさらに含むことができ、その限定されない例には、薬物、毒素、小分子、抗体、および/または抗体断片が単独でまたは任意の組合せで含まれる。
【0045】
本明細書において使用される、用語「細胞質シグナル伝達ドメイン」とは、細胞の内部に存在し、細胞の内部代謝過程に対して受け取った外部シグナルを伝達し、それによりその表現型および機能を変える役割を担う、共刺激分子またはサイトカイン受容体の成分を指す。
【0046】
本発明の一部の実施形態では、がん細胞によるB7-H3の過剰発現により、これらの細胞はインビトロおよびインビボでB7-H3 CAR発現T細胞によって標的化されることが可能になり、一部の実施形態では、エンドドメイン(例えば、CD28とOX40分子の両方に由来、および/またはCD28に由来、および/または4-1BBに由来)の取り込みにより、Tリンパ球の共刺激が媒介され、T細胞の活性化、増殖、ならびに/あるいはB7-H3陽性のがんおよび/またはCIC細胞に対する細胞毒性が誘導される。
【0047】
本発明の特定の実施形態では、抗原B7-H3に指向されたキメラ抗原受容体(CAR)を発現する遺伝子操作されたT細胞を使用してがん細胞を死滅させるための方法がある。一部の実施形態では、このCARの係合(抗原結合)は、連結されたT細胞受容体C鎖と、共刺激分子CD28および4-1BBの活性化を導く。
【0048】
本発明の特定の実施形態では、CAR受容体は、B7-H3を認識する一本鎖可変断片(scFv)を含む。当業者は、scFvが、免疫グロブリンの重鎖(VH)および軽鎖(VL)の可変領域の融合タンパク質であり、10~約25アミノ酸の短いリンカーペプチドで接続されていることを認識する。リンカーは、可撓性のためにグリシンが豊富であることがあり、かつ/あるいは特定の例では溶解度のためにセリンまたはトレオニンを含むことがある。特定の実施形態では、376.96scFv抗体が本発明のCARで使用される。scFvは、当技術分野で公知の方法によって作製してよい。
【0049】
特定の態様では、サイトカイン細胞外ドメイン、または細胞外ドメインとしてその他のリガンド/受容体分子を使用して、腫瘍細胞への標的化をもたらすことができる。
【0050】
当業者は、T細胞が、完全に活性化した状態になるために、抗原非特異的である共刺激シグナルを利用することを認識する。特定の場合、それらは、抗原提示細胞(APC)の膜に発現される共刺激分子とT細胞との相互作用によって提供される。具体的な実施形態では、キメラ抗原受容体の1またはそれを超える共刺激分子は、B7/CD28ファミリー、TNFスーパーファミリー、またはシグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAM)ファミリーに由来する。例となる共刺激分子には、以下の1または複数が任意の組合せで含まれる:B7-1/CD80;CD28;B7-2/CD86;CTLA-4;B7-H1/PD-L1;ICOS;B7-H2;PD-1;B7-H3;PD-L2;B7-H4;PDCD6;BTLA;4-1BB/TNFRSF9/CD137;CD40リガンド/TNFSF5;4-1BBリガンド/TNFSF9;GITR/TNFRSF18;BAFF/BLyS/TNFSF13B;GITRリガンド/TNFSF18;BAFFR/TNFRSF13C;HVEM/TNFRSF14;CD27/TNFRSF7;LIGHT/TNFSF14;CD27リガンド/TNFSF7;OX40/TNFRSF4;CD30/TNFRSF8;OX40リガンド/TNFSF4;CD30リガンド/TNFSF8;TACl/TNFRSF13B;CD40/TNFRSF5;2B4/CD244/SLAMF4;CD84/SLAMF5;BLAME/SLAMF8;CD229/SLAMF3;CD2CRACC/SLAMF7;CD2F-10/SLAMF9;NTB-A/SLAMF6;CD48/SLAMF2;SLAM/CD150;CD58/LFA-3;CD2;イカロス;CD53;インテグリンα4/CD49d;CD82/Kai-1;インテグリンα4β1;CD90/Thy1;インテグリンα4β7/LPAM-1;CD96;LAG-3;CD160;LMIR1/CD300A;CRTAM;TCL1A;DAP12;TIM-1/KIM-1/HAVCR;デクチン-1/CLEC7A;TIM-4;DPPIV/CD26;TSLP;EphB6;TSLP R;およびHLA-DR。
【0051】
エフェクタードメインは、Tリンパ球を部分的に活性化する細胞内シグナルに受容体リガンドが結合する事象を伝達するシグナル伝達ドメインである。適切な共刺激シグナルがなければ、この事象は有用なT細胞活性化および増殖には不十分である。本発明のエフェクタードメインの限定されない例は、T細胞受容体ζ鎖のエフェクタードメインである。
【0052】
本発明は、アミノ酸配列および/またはヌクレオチド配列が、本明細書に記載されるアミノ酸配列および/またはヌクレオチド配列と少なくとも60%(例えば、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94 95、96、97、98、99または100%)の同一性を有する本発明のアミノ酸配列およびヌクレオチド配列の実施形態をさらに提供する。本発明はさらに、本明細書に記載されるアミノ酸配列をコードするすべてのヌクレオチド配列を包含する。
【0053】
さらなる実施形態では、本発明は、薬学的に許容され得る担体中の本発明のCAR、本発明の核酸分子、本発明のベクターおよび/または本発明の細胞を含む、それから本質的になる、および/またはそれからなる組成物(例えば、医薬組成物)を提供する。
【0054】
本発明はまた、本発明のCARを用いる方法を提供する。よって、一実施形態では、本発明は、被験体に有効量の本発明のCAR、本発明の核酸分子、本発明のベクター、および/または本発明の細胞を投与し、それにより被験体においてB7-H3発現標的細胞集団および/または組織に対するT細胞媒介免疫応答を刺激することを含む、被験体においてB7-H3発現標的細胞集団および/または組織に対するT細胞媒介免疫応答を刺激する方法を提供する。
【0055】
もう一つの実施形態では、本発明は、被験体に有効量の本発明のCAR、本発明の核酸分子、本発明のベクター、および/または本発明の細胞を投与し、それにより被験体に抗腫瘍免疫を提供することを含む、被験体に抗腫瘍免疫(例えば、腫瘍細胞に対する免疫応答)を提供する方法を提供する。
【0056】
さらなる実施形態では、本発明は、被験体に有効量の本発明のCAR、本発明の核酸分子、本発明のベクター、および/または本発明の細胞を投与し、それによりB7-H3の発現の増加に関連する疾患または障害を有する被験体を被験体の細胞によって処置することを含む、B7-H3(CD276)の発現の増加に関連する疾患または障害を有する被験体を被験体の細胞によって処置する方法を提供する。
【0057】
その上、本発明は、被験体に本発明のCARを発現するように遺伝子操作されたT細胞を投与することを含む、遺伝子操作されたT細胞の集団を被験体(例えば、がんと診断された被験体および/または他の点でそれを必要とする被験体)において生成する方法を提供し、ここで、遺伝子操作されたT細胞の集団は、被験体への投与後に一定期間(例えば、少なくとも1週間、1カ月間 2カ月間、3カ月間、4カ月間、5カ月間、9カ月間、1年間、2年間、5年間など)被験体において存続する。
【0058】
本明細書でさらに提供されるのは、本発明のCARを発現するように遺伝子操作された細胞を被験体に投与することを含む、遺伝子操作された細胞の集団を被験体(例えば、がんと診断された被験体および/またはそれを必要とする被験体)において拡大増殖する方法であり、ここで、投与された遺伝子操作された細胞は被験体において後代細胞集団を生成する。
【0059】
本発明のさらなる実施形態では、被験体に有効量の本発明のCAR、本発明の核酸分子、本発明のベクター、および/または本発明の細胞を投与し、それにより被験体においてがんを処置することを含む、被験体(例えば、それを必要とする被験体)においてがんを処置する方法が提供される。一部の実施形態では、この方法の被験体は、がんの治療を受けたことがある、かつ/またはがんの治療を受けている。
【0060】
よって、本発明のさらなる実施形態では、本発明は、被験体に、がん細胞および/またはがん始原細胞(CIC)の表面のB7-H3抗原を認識するキメラ抗原受容体を有する細胞傷害性Tリンパ球を投与することを含む、被験体においてがんを処置する方法を提供する。
【0061】
本発明のさらなる実施形態では、被験体に有効量の本発明のCAR、本発明の核酸分子、本発明のベクター、および/または本発明の細胞を投与し、それにより被験体においてがんを予防することを含む、被験体(例えば、それを必要とする被験体)においてがんを処置する方法が提供される。
【0062】
一実施形態では、本発明は、がん細胞および/またはがん始原細胞(CIC)に本発明のCARを含む細胞を提供すること、あるいはがん細胞および/またはCICと本発明のCARを含む細胞を接触させることを含む、B7-H3(CD276)抗原を有するがん細胞および/またはCICを標的化する方法を提供する。
【0063】
本発明の一部の実施形態では、本発明の細胞(例えば、αβΤ細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、制御性T細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、Th17細胞、γδT細胞)は、処置が投与される被験体由来の自己細胞であり得る。一部の実施形態では、本発明の細胞は、処置を受ける被験体と同じ種の異なる個体に由来してもよいし、処置を受ける被験体とは異なる種の個体に由来してもよい。
【0064】
本発明の方法において、がん細胞および/またはCICは、インビトロ、エクスビボ、および/またはインビボであり得る。一部の実施形態では、細胞は被験体内にあり得る。一部の実施形態では、細胞は自己細胞であり得る。一部の実施形態では、細胞は自己細胞ではない。一部の実施形態では、細胞は被験体と同じ種の細胞である。一部の実施形態では、被験体の種とは異なる種の細胞である。
【0065】
さらなる実施形態では、本発明は、a)結合複合体が形成し得る条件下で細胞試料と本発明のCARとを接触させるステップ;およびb)結合複合体の検出が細胞試料中のがん細胞および/またはCICを示す、結合複合体の形成を検出するステップを含む、細胞試料においてがん細胞および/またはがん始原細胞(CIC)を検出する方法を提供する。
【0066】
もう一つの実施形態では、本発明は、a)結合複合体が形成し得る条件下で、被験体から得た細胞試料と本発明のCARとを接触させるステップ;およびb)結合複合体の検出が被験体におけるがん細胞および/またはCICの存在を示す、結合複合体の形成を検出するステップを含む、被験体においてがん細胞および/またはがん始原細胞(CIC)を検出する方法を提供する。
【0067】
本発明の方法において、細胞は、αβΤ細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、制御性T細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、Th17細胞、γδT細胞およびそれらの任意の組合せであり得る。一部の実施形態では、細胞は自己細胞であり得る。一部の実施形態では、細胞は被験体と同じ種の細胞であり得、一部の実施形態では、細胞は被験体の種とは異なる種の細胞であり得る。
【0068】
一部の実施形態では、本発明のがんは、B7-H3抗原の発現増加または過剰発現に関連するがんであり得、一部の実施形態では、本発明のがん細胞およびCICは、B7-H3抗原の発現増加または過剰発現に関連しないがんの非がん性細胞またはがん細胞と比較してB7-H3抗原を過剰発現し得る。
【0069】
一部の実施形態では、本発明のがん細胞および/またはCICは、本発明のCARとの接触の前、最中および/または後に、ソニックヘッジホッグホモログ(SHH)経路の阻害剤であるLDE225と接触させることができる。
【0070】
本明細書で使用される用語「がん」は、異常な細胞の急速かつ制御されない増殖を特徴とする疾患として定義される。がん細胞は、局所的に、または血流およびリンパ系を介して身体の他の部分に広がることができる、
【0071】
本発明の方法に従って処置することのできるがんの限定されない例としては、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、骨髄腫、白血病、造血系新生物、胸腺腫、リンパ腫、肉腫、肺がん、肝がん、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、皮膚がん、子宮がん、子宮頸がん(cervical cancer)、子宮内膜がん、腺癌、乳がん、膵臓がん、結腸直腸がん、肛門がん、肺がん、腎がん、膀胱がん、肝がん、前立腺がん、卵巣がん、原発性または転移性黒色腫、扁平上皮癌、基底細胞癌、脳がん、血管肉腫(angiosarcoma)、血管肉腫(hemangiosarcoma)、頭頚部癌、甲状腺癌、軟部組織肉腫、骨肉腫、精巣がん、胃腸がん、および現在公知であるかまたは後に同定される任意のその他のがんが挙げられる(例えば、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Rosenberg(1996)Ann.Rev.Med.47:481-491参照)。
【0072】
本明細書において使用される用語「自己免疫疾患」は、自己免疫応答から生じる障害として定義される。自己免疫疾患は、自己抗原に対する不適切で過剰な反応の結果である。自己免疫疾患の例としては、限定されるものではないが、アディソン(Addision)病、円形脱毛症(alopecia greata)、強直性脊椎炎、自己免疫性肝炎、自己免疫性耳下腺炎、クローン病、糖尿病(1型)、栄養障害型表皮水疱症、精巣上体炎、糸球体腎炎、グレーブス病、ギラン・バレー症状群、橋本病、溶血性貧血、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、乾癬、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症状群、脊椎関節症、甲状腺炎、血管炎、白斑、粘液水腫、悪性貧血、潰瘍性大腸炎が特に挙げられる。
【0073】
本発明の特定の実施形態では、臨床態様のための本発明の方法は、抗がん剤などの過剰増殖性疾患の処置に有効な他の薬剤と組み合わされる。「抗がん」剤は、例えば、がん細胞を死滅させる、がん細胞においてアポトーシスを誘発する、がん細胞の増殖速度を低下させる、転移の発生率または数を低下させる、腫瘍サイズを縮小する、腫瘍増殖を阻害する、腫瘍またはがん細胞への血液供給を減少させる、がん細胞または腫瘍に対する免疫応答を促進する、がんの進行を防ぐまたは阻害する、および/またはがんを有する被験体の寿命を延長することによって、被験体においてがんに悪影響を及ぼすことができる。より一般的には、これらの他の組成物は、がん細胞を死滅させるかまたはその増殖を阻害するために有効な組み合わせ量で提供されることになる。このプロセスは、がん細胞と、本発明の核酸分子、ベクターおよび/または細胞、ならびに1または複数の薬剤あるいは1または複数の因子とを同時に接触させることを伴うことがある。これは、両方の薬剤を含む単一の組成物または薬理学的製剤と細胞とを接触させることによるか、あるいは2つの別個の組成物または製剤と細胞とを同時に接触させることによって達成することができ、ここで、一方の組成物には本発明の核酸分子、ベクターおよび/または細胞が含まれ、他方の組成物には1または複数の第2の薬剤が含まれる。
【0074】
化学療法剤および放射線療法剤に対する腫瘍細胞の耐性は、臨床腫瘍学における主要な問題を表す。現在のがん研究の1つの目標は、化学療法および放射線療法の有効性を、遺伝子療法と組み合わせることによって改善する方法を見出すことである。例えば、単純ヘルペスチミジンキナーゼ(HS-tK)遺伝子は、レトロウイルスベクター系によって脳腫瘍に送達されると、抗ウイルス剤ガンシクロビルに対する感受性の誘導に成功した。本発明の状況において、細胞治療は、他のアポトーシス促進剤または細胞周期調節剤に加えて、化学療法、放射線療法、または免疫療法の介入と併用して同様に使用され得ると企図される。
【0075】
あるいは、本発明の治療法は、数分から数週間の範囲の間隔で1回または複数回の他の薬剤処置の前および/または後に行うことができる。他の薬剤と本発明が別々に個体に適用される実施形態では、一般に、薬剤と本発明の治療法が細胞に対して有利な併用効果をなお発揮することが可能なように、各送達の時間の間にかなりの時間が経って期限が過ぎないようにするものである。そのような場合、互いに約12~24時間以内、より好ましくは、互いに約6~12時間以内に細胞を複数のモダリティと接触させ得ることが企図される。しかし、一部の状況では、それぞれの投与の間に数日(2、3、4、5、6または7日)から数週間(1、2、3、4、5、6、7または8週間)が経過する場合には、処置の期間を大幅に延長することが望ましいことがある。
【0076】
処置サイクルは、必要に応じて繰り返されると予測される。また、様々な標準的治療、ならびに外科的介入を本発明の細胞治療と組み合わせて適用することができることも企図される。
【0077】
がん治療には、化学に基づく処置および放射線に基づく処置の両方と組み合わせた多様な併用療法も含まれる。併用化学療法には、例えば、アブラキサン、アルトレタミン、ドセタキセル、ハーセプチン、メトトレキサート、ノバントロン、ゾラデックス、シスプラチン(CDDP)、カルボプラチン、プロカルバジン、メクロレタミン、シクロホスファミド、カンプトテシン、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、ニトロソウレア(nitrosurea)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン(plicomycin)、マイトマイシン、エトポシド(VP16)、タモキシフェン、ラロキシフェン、エストロゲン受容体結合剤、タキソール、ゲムシタビン(gemcitabien)、ナベルビン、ファルネシル-タンパク質トランスフェラーゼ(tansferase)阻害剤、トランス白金(transplatinum)、5-フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチンおよびメトトレキサート、あるいは前述の任意の類似体または誘導改変体が含まれる。
【0078】
具体的な実施形態では、B7-H3陽性がんのための化学療法は本発明と併用して、例えば本発明の投与の前、最中および/または後に用いられる。
【0079】
DNA損傷を引き起こし、広範に使用されているその他の因子には、ガンマ線、X線、および/または腫瘍細胞への放射性同位体の指向性送達として一般に公知のものが含まれる。マイクロ波および紫外線照射などのDNA損傷因子のその他の形態も企図される。これらの因子はすべて、DNA、DNAの前駆体、DNAの複製および修復、ならびに染色体の集合および維持に対する広範囲の損傷に影響を与える可能性が最も高い。X線の線量範囲は、長期間(3~4週間)に対する50~200レントゲンの一日線量から2000~6000レントゲンの単回線量までの範囲である。放射性同位体の線量範囲は大きく異なり、同位体の半減期、放出される放射線の強度および種類、ならびに新生物細胞による取り込みに依存する。
【0080】
用語「接触させる」、「提供される」および「曝露させる」は、細胞に適用される場合、本明細書において、例えば、標的細胞内および/または標的細胞上の標的抗原へのCARとの結合を促進する条件下で、治療薬(例えば、CAR)が標的細胞に送達され、かつ/または標的細胞と直接並置されるプロセスを説明するために使用される。一部の実施形態では、化学療法および/または放射線療法は、細胞の死滅または静止を達成するためのステップとの接触または曝露または提供の前、後および/または最中に含めることもでき、ここで、両方の薬剤は、細胞を死滅させるかまたは細胞が分裂することを防ぐのに有効な合計量で細胞に送達される。
【0081】
免疫療法は一般に、がん細胞を標的化して破壊するために免疫エフェクター細胞および分子の使用に依拠する。免疫エフェクターは、例えば、腫瘍細胞の表面上の一部のマーカーに特異的な抗体であり得る。抗体は、単独で治療のエフェクターとして働く場合もあれば、細胞の死滅に実際に影響を及ぼすために他の細胞を動員する場合もある。抗体はまた、薬物または毒素(化学療法薬、放射性核種、リシンA鎖、コレラ毒素、百日咳毒素など)とコンジュゲートされ、単に標的化剤として働く場合がある。あるいは、エフェクターは、腫瘍細胞標的と直接的または間接的に相互作用する表面分子を保有するリンパ球であってよい。様々なエフェクター細胞には、細胞傷害性T細胞およびNK細胞が含まれる。
【0082】
免疫療法は、従って本発明の細胞治療と併用して併用療法の一部として用いることができ得る。併用療法の一般的なアプローチは本明細書において考察されている。一般に、腫瘍細胞は、標的化に適している、すなわち他の細胞の大部分には存在しない、いくつかのマーカーを有していなければならない。多くの腫瘍マーカーが存在し、これらのいずれもが、本発明の状況での標的化に好適であり得る。一般的な腫瘍マーカーとしては、癌胎児抗原、前立腺特異的抗原、泌尿器腫瘍関連抗原、胎児抗原、チロシナーゼ(p97)、gp68、TAG-72、HMFG、シアリルルイス抗原、MucA、MucB、PLAP、エストロゲン受容体、ラミニン受容体、erb Bおよびp155が挙げられる。
【0083】
本発明のがんのための免疫療法には、例えば、インターロイキン-2(IL-2)またはインターフェロン(IFN)が含まれてよい。
【0084】
さらに別の実施形態では、二次処置は、治療用ポリヌクレオチドが本発明の臨床的実施形態の前、後、および/または同時に投与される遺伝子療法であり得る。細胞増殖の誘導因子、細胞増殖の阻害因子、またはプログラム細胞死の調節因子をはじめとする、多様な発現産物が本発明の範囲内に包含される。
【0085】
がんを有する人の約60%は何らかの種類の手術を受けることになる、それには予防手術、診断的または病期決定手術、根治手術および待期手術が含まれる。根治手術は、他の治療法、例えば本発明の処置、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、遺伝子療法、免疫療法および/または代替療法などと併用して使用されてよいがんの処置である。
【0086】
根治手術には、がん性組織の全部または一部を物理的に除去、切除、および/または破壊する切除術が含まれる。腫瘍切除術とは、腫瘍の少なくとも一部の物理的な除去を指す。腫瘍切除術に加えて、手術による処置には、レーザー手術、凍結手術、電気手術、および顕微鏡制御手術(モース術)が含まれる。本発明は、表在性がん、前がん、または偶発的な量の正常組織の除去と併用して使用され得ることがさらに企図される。
【0087】
がん性細胞、組織、または腫瘍のすべての一部を切除すると、体内に空洞が形成されることがある。処置は、追加の抗がん療法による領域の灌流、直接注射、または局所適用によって達成されてよい。そのような処置は、例えば、1、2、3、4、5、6、または7日ごと、あるいは1、2、3、4、および5週ごと、あるいは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12カ月ごとに繰り返すことができる。これらの処置も同様に様々な投与量のものであってよい。
【0088】
処置の治療効果を改善するために、他の薬剤を本発明と組み合わせて使用され得ることが企図される。これらの追加の薬剤としては、免疫調節剤、細胞表面受容体およびギャップジャンクションのアップレギュレーションに影響を及ぼす薬剤、細胞分裂阻害剤および分化剤、細胞接着の阻害剤、またはアポトーシス誘導物質に対する過剰増殖性細胞の感受性を高める薬剤が挙げられる。免疫調節剤としては、腫瘍壊死因子;インターフェロンα、β、およびγ;IL-2およびその他のサイトカイン;F42Kおよび他のサイトカイン類似体;またはMIP-1、MIP-1β、MCP-1、RANTES、およびその他のケモカインが挙げられる。さらに、細胞表面受容体またはそれらのリガンド(例えば、Fas/Fasリガンド、DR4またはDR5/TRAIL)のアップレギュレーションは、過剰増殖性細胞に対するオートクリンまたはパラクリン効果の確立によって本発明のアポトーシス誘導能を増強することになることが企図される。ギャップジャンクションの数を増やすことによって細胞間シグナル伝達を増加させると、隣接する過剰増殖性細胞集団に対する抗過剰増殖効果が増加することになる。その他の実施形態では、細胞分裂阻害剤または分化剤を本発明と組み合わせて使用して、処置の抗過剰増殖効力を改善することができる。細胞接着の阻害剤は、本発明の有効性を改善することが企図される。細胞接着阻害剤の例は、焦点接着キナーゼ(FAK)阻害剤およびロバスタチンである。さらに、アポトーシスに対する過増殖性細胞の感受性を増加させる他の薬剤、例えば抗体c225などを、本発明と組み合わせて使用して、処置効力を改善することができ得ることが企図される。
【0089】
定義
本明細書において使用される、「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、使用される文脈に応じて、1つまたは複数を意味し得る。例えば、「1つの」細胞は、1個の細胞または複数個の細胞を意味し得る。
【0090】
また、本明細書において使用される、「および/または」とは、1またはそれを超える関連するリスト項目のありとあらゆる可能性のある組合せと、もう一つの選択肢(「または」)で解釈される場合の組合せの欠如を指し、包含する。
【0091】
さらに、本発明の化合物または薬剤の量、用量、時間、温度などの測定可能な値に言及する場合に本明細書において使用される用語「約」は、指定された量の±20%、±10%、±5%、±1%、±0.5%、またはさらには±0.1%の変動を包含することを意味する。
【0092】
本明細書において使用される、移行句「から本質的になる」は、特許請求の範囲が、特許請求される本発明の請求項に列挙された特定の材料またはステップ、「および1または複数の基本的かつ新規な特性に実質的に影響を及ぼさない材料またはステップ」を包含すると解釈されるべきであることを意味する。In re Herz,537 F.2d 549,551-52,190 USPQ 461,463(CCPA 1976)(オリジナルの強調)を参照されたい;MPEP§2111.03も参照されたい。よって、本発明の請求項で使用される場合の用語「から本質的になる」は、「含む」と同等であると解釈されることを意図しない。
【0093】
また、本明細書において使用される、「1またはそれを超える」とは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20などを意味する。
【0094】
本発明により治療され得る被験体には、医学的および/または治療目的のヒト被験体と、獣医学および薬物スクリーニングおよび開発目的の動物被験体の両方が含まれる。その他の適切な動物被験体は、一般に、霊長類、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ウサギ類、げっ歯類(例えば、ラットおよびマウス)などの哺乳動物被験体である。ヒト被験体が最も好ましい。ヒト被験体には、胎児、新生児、乳幼児、若年、成人および老年被験体が含まれる。
【0095】
用語「抗腫瘍効果」とは、本明細書において、腫瘍体積の減少、腫瘍細胞の数の減少、増殖速度の低下、転移数の減少、平均余命の増加、および/またはがん性状態に関連する様々な生理学的症状の改善によって表されることのできる生物学的効果を指す。「抗腫瘍効果」は、本発明のペプチド、ポリヌクレオチド、細胞および抗体が最初に腫瘍の発生を予防および/または遅延させる能力によっても表され得る。
【0096】
用語「自己抗原」とは、本発明によれば、免疫系によって異物と誤って認識される任意の自己抗原を意味する。自己抗原は、限定されるものではないが、細胞タンパク質、リンタンパク質、細胞表面タンパク質、細胞脂質、核酸、および糖タンパク質(細胞表面受容体を含む)を含む。
【0097】
本明細書において使用される、用語「自己」は、その物質が後に再導入される同じ個体に由来する任意の物質を指すことを意味する。
【0098】
「同種」とは、同じ種の異なる動物に由来する移植片を指す。
【0099】
「異種」とは、異なる種の動物に由来する移植片を指す。
【0100】
本明細書において使用される「処置する」または「処置すること」とは、疾患または障害を有するか、あるいは疾患または障害を有するかまたは発症するリスクのある被験体に利益を与えるあらゆる種類の処置を指し、それには、例えば、被験体の状態(例えば、1またはそれを超える症状)の改善および/または症状の進行の減速などが含まれる。
【0101】
本明細書において使用される、「予防する」、「予防すること」または「予防」には、例えば、障害に関連する症状の発現の欠如または遅延によって決定される、障害の発症または進展を予防するための被験体の予防的処置が含まれる。本明細書において使用される、「予防する」、「予防すること」または「予防」は、必ずしも症状の完全な消滅を意味しない。
【0102】
本明細書において使用される「処置有効量」、「有効量」、「処置するために有効な量」または同種のものは、本発明の疾患、障害および/または状態を有する患者に望ましい効果をもたらすのに十分な、本発明の抗体またはその断片またはCARまたは細胞の量を意味する。これには、患者の状態(例えば、1またはそれを超える症状)の改善、疾患の進行の遅延などが含まれる。
【0103】
本明細書において使用される「薬学的に許容され得る」は、化合物または組成物が、疾患の重症度および処置に必要性に照らして過度に有害な副作用なく、本明細書に記載される処置を達成するための被験体への投与に適していることを意味する。
【0104】
1つまたは複数の「抗体」とは、本明細書において、IgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEを含むすべての種類の免疫グロブリンを指す。用語「免疫グロブリン」には、これらの免疫グロブリンのサブタイプ、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4などが含まれる。抗体は、(例えば)マウス、ラット、ウサギ、ウマ、またはヒトを含む任意の種の起源のものであってもよく、あるいはキメラまたはヒト化抗体であってもよい。本明細書において使用される用語「抗体」には、標的抗原との結合能を保持する抗体断片、例えば、Fab、F(ab’)2、およびFv断片、ならびにIgG以外の抗体から得られた対応する断片が含まれる。そのような断片は、既知の技法によっても生成される。一部の実施形態では、抗体は、既知の技術に従って、検出可能基または治療基にカップリングまたはコンジュゲートされ得る。
【0105】
さらに、用語「抗体」は、本明細書において、ジスルフィド結合によって相互接続された4つのポリペプチド鎖、2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む免疫グロブリン分子を指すことが意図される。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書においてHCVRまたはVHと略される)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2およびCH3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書においてLCVRまたはVLと略される)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメイン(CL1)を含む。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保存された領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分化され得る。本発明の抗体またはその抗原結合断片の様々な実施形態では、FRは、ヒト生殖系列配列と同一であってもよいし、天然または人工的に改変されていてもよい。各VHおよびVLは、3つのCDRおよび4つのFRで構成され、次の順序でアミノ末端からカルボキシ末端に配置される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。
【0106】
一般的に、本発明の抗体およびその抗原結合断片は、非常に高い親和性を有し、一般に、細胞表面に提示された抗原との結合によって測定した場合に、約10-8から約10-12Mまたはそれより高い、例えば、少なくとも10-8M、少なくとも10-9M、少なくとも10-10M、少なくとも10-11M、または少なくとも10-12MのKD値を有する。
【0107】
本発明の抗体およびその抗原結合断片は、非常に高い親和性を有し、一般に、細胞表面に提示された抗原との結合によって測定した場合に、約10-8から約10-12Mまたはそれより高い、例えば、少なくとも10-8M、少なくとも10-9M、少なくとも10-10M、少なくとも10-11M、または少なくとも10-12MのEC50値を有する。
【0108】
抗体の「抗原結合部分」または「抗原結合断片」(または単に「抗体部分」または「抗体断片」)という用語は、本明細書において、抗原と特異的に結合する能力を保持する抗体の1またはそれを超える断片、部分またはドメインを指す。全長抗体の断片は、抗体の抗原結合機能を行うことができることが示されている。抗体の「抗原結合部分」という用語に含まれる結合断片の例には、(i)Fab断片、VL、VH、CL1およびCH1ドメインからなる一価の断片;(ii)F(ab’)2断片、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのF(ab)’断片を含む二価の断片;(iii)VHおよびCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単一アームのVLおよびVHドメインからなるFv断片;(v)VHドメインからなるdAb断片(Wardら(1989)Nature 241:544-546);および(vi)分離された相補性決定領域(CDR)が含まれる。さらに、Fv断片の2つのドメイン、VLおよびVHは、別々の遺伝子によってコードされているが、それらは、組み換え法を使用して、VL領域とVH領域が対になって一価分子を形成している単一の連続鎖として作製することを可能にする合成リンカーによって連結することができる(一本鎖Fv(scFv)として公知;例えば、Birdら(1988)Science 242:423-426;およびHustonら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883参照)。そのような一本鎖抗体も、抗体の「抗原結合部分」という用語に包含されることが意図される。一本鎖抗体のその他の形態、例えばダイアボディ(diabody)なども包含される(例えば、Holligerら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448を参照)。
【0109】
用語「エピトープ」とは、パラトープとして公知の抗体分子の可変領域の特定の抗原結合部位と相互作用する抗原決定基を指す。1つの抗原は、2またはそれを超えるエピトープを有することがある。エピトープはコンフォメーションまたは線状のいずれかであってよい。コンフォメーションエピトープは、1つ(または複数)の線状ポリペプチド鎖の異なるセグメント由来の、空間的に並置されたアミノ酸によって生成される。線状エピトープは、ポリペプチド鎖中の隣接するアミノ酸残基によって生成されるエピトープである。特定の実施形態では、エピトープには、他の部分、例えば糖類、ホスホリル基、またはスルホニル基などが抗原上に含まれてよい。
【0110】
用語「抗体断片」とは、無傷の抗体の一部分を指し、無傷の抗体の抗原決定可変領域を指す。抗体断片の例としては、限定されるものではないが、Fab、Fab’、F(ab’)2、およびFv断片、線状抗体、scFv抗体、および抗体断片から形成された多重特異性抗体が挙げられる。
【0111】
「抗体重鎖」とは、本明細書において、その天然に存在するコンフォメーションにあるすべての抗体分子に存在する2種類のポリペプチド鎖のうちの大きい方を指す。
【0112】
「抗体軽鎖」とは、本明細書において、その天然に存在するコンフォメーションにあるすべての抗体分子に存在する2種類のポリペプチド鎖のうちの小さい方を指し、κおよびλ軽鎖とは、2つの主な抗体軽鎖アイソタイプを指す。
【0113】
本明細書において使用される「合成抗体」という用語は、例えば本明細書に記載されるバクテリオファージによって発現される抗体などの組換えDNA技術を使用して生成される抗体を意味する。この用語はまた、抗体をコードするDNA分子の合成によって生成され、そのDNA分子が抗体タンパク質、または抗体を特定するアミノ酸配列を発現する抗体を意味すると解釈されるべきであり、ここで、DNAまたはアミノ酸配列は、利用可能であって当技術分野で周知の合成DNAまたはアミノ酸配列技術を使用して得られている。
【0114】
本明細書において使用される用語「抗原」または「Ag」は、免疫応答を誘発する分子と定義される。この免疫応答には、抗体産生、または特定の免疫学的に適格な細胞の活性化、またはその両方のいずれかが含まれ得る。実質的にすべてのタンパク質またはペプチドを含むどんな高分子も抗原として働くことができることを当業者は理解するであろう。さらに、抗原は、組み換えDNAまたはゲノムDNAに由来し得る。免疫応答を誘発するタンパク質をコードするヌクレオチド配列または部分ヌクレオチド配列を含む任意のDNAが、そのため、その用語が本明細書において使用される「抗原」をコードすることを当業者は理解するであろう。さらに、抗原が遺伝子の全長ヌクレオチド配列によってのみコードされる必要がないことを当業者は理解するであろう。本発明が、限定されるものではないが、複数の遺伝子の部分ヌクレオチド配列の使用を含むこと、およびこれらのヌクレオチド配列が所望の免疫応答を誘発するために様々な組合せで配置されることは容易に明らかである。さらに、抗原が「遺伝子」によってコードされる必要が全くないことを当業者は理解するであろう。抗原を合成によって生成することができること、または生体試料から誘導することができることは容易に明らかである。そのような生体試料としては、限定されるものではないが、組織試料、腫瘍試料、細胞または生物学的流体を挙げることができる。
【0115】
本明細書で使用されるアミノ酸とは、遊離カルボキシル基および遊離非置換アミノ基をα炭素上に有する化合物を指し、これはペプチド結合により連結されて、本明細書に記載されるペプチド活性剤を形成することができる。アミノ酸は、標準または非標準、天然または合成であってよく、例(およびその略語)としては、限定されるものではないが、以下が含まれる:
Asp=D=アスパラギン酸
Ala=A=アラニン
Arg=R=アルギニン
Asn=N=アスパラギン
Cys=C=システイン
Gly=G=グリシン
Glu=E=グルタミン酸
Gln=Q=グルタミン
His=H=ヒスチジン
Ile=I=イソロイシン
Leu=L=ロイシン
Lys=K=リジン
Met=M=メチオニン
Phe=F=フェニルアラニン
Pro=P=プロリン
Ser=S=セリン
Thr=T=トレオニン
Trp=W=トリプトファン
Tyr=Y=チロシン
Val=V=バリン
Orn=オルニチン
Nal=2-ナフチルアラニン
Nva=ノルバリン
Nle=ノルロイシン
Thi=2-チエニルアラニン
Pcp=4-クロロフェニルアラニン
Bth=3-ベンゾチエニルアラニン(benzothienyalanine)
Bip=4,4’-ビフェニルアラニン
Tic=テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸
Aib=アミノイソ酪酸
Anb=α-アミノノルマル酪酸
Dip=2,2-ジフェニルアラニン
Thz=4-チアゾリルアラニン
【0116】
本明細書において言及されるすべてのペプチド配列は、N末端アミノ酸が左側にあり、C末端アミノ酸が右側にある通常の慣例に従って書かれている。2つのアミノ酸残基間の短い線(または線なし)は、ペプチド結合を示す。
【0117】
塩基性アミノ酸」とは、pH6.0で正に帯電している任意のアミノ酸を指し、それには、限定されるものではないが、R、K、およびHが挙げられる。
【0118】
芳香族アミノ酸」とは、α炭素に結合した側鎖に芳香族基を有する任意のアミノ酸を指し、それには、限定されるものではないが、F、Y、W、およびHが挙げられる。
【0119】
疎水性アミノ酸」とは、α炭素に結合した疎水性側鎖を有する任意のアミノ酸を指し、それには、限定されるものではないが、I、L、V、M、F、WおよびC、最も好ましくはI、L、およびVが挙げられる。
【0120】
中性アミノ酸」とは、非荷電アミノ酸、例えばM、F、W、CおよびAなどを指す。
【0121】
ポリペプチドに適用される場合、「実質的な類似性」または「実質的に類似している」という用語は、2つのペプチド配列が、デフォルトのギャップ重みを使用するプログラムGAPまたはBESTFITなどによって最適にアライメントされた場合に、少なくとも95%の配列同一性、さらにより好ましくは少なくとも98%または99%の配列同一性を共有することを意味する。好ましくは、同一ではない残基位置は、保存的アミノ酸置換によって異なる。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、類似の化学的性質(例えば、電荷または疎水性)をもつ側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基で置換されるものである。一般に、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能特性を実質的に変更しない。2またはそれを超えるアミノ酸配列が保存的置換によって互いに異なる場合、類似性のパーセントまたは程度を上方に調整して、置換の保存的性質を修正することができる。この調整を行う手段は、当業者に周知である。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Pearson(1994)Methods Mol.Biol.24:307-331を参照されたい。同様の化学的性質をもつ側鎖を有するアミノ酸の基の例としては、1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシン;2)脂肪族ヒドロキシル側鎖:セリンおよびトレオニン;3)アミド含有側鎖:アスパラギンおよびグルタミン;4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファン;5)塩基性側鎖:リジン、アルギニン、およびヒスチジン;6)酸性側鎖:アスパラギン酸およびグルタミン酸、ならびに7)硫黄含有側鎖:システインおよびメチオニンが挙げられる。好ましい保存的アミノ酸置換基は、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、グルタミン酸-アスパラギン酸、およびアスパラギン-グルタミンである。あるいは、保存的置換は、参照により本明細書に組み込まれる、Gonnetら(1992)Science 256:1443 45に開示されているPAM250対数尤度行列において正の値を持つ任意の変更である。「適度に保存的な」置換は、PAM250対数尤度行列において負ではない値を持つ任意の変更である。
【0122】
ポリペプチドの配列類似性は、一般に、配列分析ソフトウェアを使用して測定される。タンパク質分析ソフトウェアは、保存的アミノ酸置換を含む、様々な置換、欠失、およびその他の修飾に割り当てられた類似性の尺度を使用して、類似の配列をマッチさせる。例えば、GCGソフトウェアには、GAPおよびBESTFITなどのプログラムが含まれており、これらのプログラムは、異なる種の生物由来の相同ポリペプチドなどの密接に関連したポリペプチド間、あるいは野生型タンパク質とその変異タンパク質との間の配列相同性または配列同一性を決定するためにデフォルトパラメータと共に使用することができる。例えば、GCGバージョン6.1を参照されたい。ポリペプチド配列は、FASTAを使用してデフォルトパラメータまたは推奨パラメータと比較することもできる(GCGバージョン6.1のプログラム)。FASTA(例えば、FASTA2およびFASTA3)は、クエリ配列と検索配列との間の最良のオーバーラップ領域のアライメントおよび配列同一性パーセントを提供する(ピアソン(2000)前出)。本発明の配列を異なる生物由来の多数の配列を含むデータベースと比較する場合のもう一つの好ましいアルゴリズムは、デフォルトパラメータを使用するコンピュータプログラムBLAST、特にBLASTPまたはTBLASTNである。例えば、Altschulら(1990)J.Mol.Biol.215:403 410およびAltschulら(1997)Nucleic Acids Res.25:3389 402を参照されたい。これらの各々は、参照によりその全文が本明細書に組み込まれる。
【0123】
「治療基」とは、任意の適した治療基を意味し、それには、限定されるものではないが、放射性核種、化学療法剤および細胞傷害性薬剤が含まれる。
【0124】
本明細書に記載される「放射性核種」は、治療線量の放射線を腫瘍またはがん細胞に送達するのに適した任意の放射性核種であってよく、それには、限定されるものではないが、227Ac、211At、131Ba、77Br、109Cd、51Cr、67Cu、165Dy、155Eu、153Gd、198Au、166Ho、113mIn、115mIn、123I、125I、131I、189Ir、191Ir、192Ir、194Ir、52Fe、55Fe、59Fe、177Lu、109Pd、32P、226Ra、186Re、188Re、153Sm、46Sc、47Sc、72Se、.75Se、105Ag、89Sr、35S、177Ta、117mSn、121Sn、166Yb、169Yb、90Y、212Bi、119Sb、197Hg、97Ru、100Pd、101mRh、および212Pbが含まれる。
【0125】
本明細書において使用される「細胞傷害性薬剤」には、限定されるものではないが、リシン(またはより具体的にはリシンA鎖)、アクラシノマイシン、ジフテリア毒素が含まれる。モネンシン、ベルカリンA、アブリン、ビンカアルカロイド、トリコテセン、およびシュードモナス外毒素A。
【0126】
本明細書において使用される「検出可能基」には、当技術分野で周知であり、既知技法に従って使用される、任意の適した検出可能基、例えば放射性標識(例、35S、125I、131Iなど)、酵素標識(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼなど)、蛍光標識(例えば、フルオレセイン、緑色蛍光タンパク質など)などが含まれる。
【0127】
製剤および投与
以下に記載される使用方法で投与するために、活性剤(例えば、本発明の抗体またはその抗原結合断片、細胞、核酸分子および/またはベクター)は、一般に、投与前に、無毒の薬学的に許容され得る担体物質(例えば、生理食塩水またはリン酸緩衝食塩水)と混合され、任意の医学的に適切な手順、例えば、静脈内または動脈内注射などによる非経口投与(例えば、注射)を使用して投与されることになる。
【0128】
上記の活性剤は、既知技法に従って薬学的担体での投与のために処方され得る。例えば、Remington、The Science And Practice of Pharmacy(最新版)を参照されたい。本発明による薬学的製剤の製造では、活性化合物(その生理学的に許容され得る塩を含む)は、一般に、とりわけ許容され得る担体と混合される。担体は、当然、製剤中の任意のその他の構成成分と適合性があるという意味で許容され得なければならず、被験体に有害であってはならない。担体は液体であってもよく、好ましくは、0.01重量%または0.5重量%~95重量%または99重量%の活性化合物を含有し得る単位用量製剤として化合物とともに処方される。担体は、無菌であるか、他の点で被験体への投与または送達に望ましくない汚染物質を含まないであろう。
【0129】
非経口投与に適した本発明の製剤は、活性化合物の無菌の水性および非水性注射液を含み、その調製物は、好ましくは対象とする被験体の血液と等張である。これらの調製物は、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、および製剤を、対象とする被験体の血液と等張にする溶質を含有してよい。
【0130】
活性剤は、任意の医学的に適切な手順、例えば、通常の静脈内または動脈内投与により投与することができる。特定の例では、腫瘍および/または体腔、開口部および/または腫瘍を含有する組織への直接投与が望ましいことがある。
【0131】
活性剤は、無菌の(sterile aseptic)容器に凍結乾燥形態で提供されてもよいし、無菌発熱物質非含有水または無菌発熱物質非含有生理食塩溶液などの薬学的に許容され得る担体と組み合わせた医薬製剤で提供されてもよい。
【0132】
本発明のCAR改変T細胞はまた、本発明の被験体におけるエクスビボ免疫化および/またはインビボ治療法のための一種のワクチンとして働くことができる。
【0133】
エクスビボ免疫化を伴う一部の実施形態では、細胞を被験体に投与する前に、以下の少なくとも1つがインビトロで行われる:i)細胞の拡大増殖、ii)本発明のCARをコードする核酸の細胞への導入、および/またはiii)細胞の凍結保存。
【0134】
エクスビボ手順は当技術分野で周知であり、以下でさらに詳しく考察される。手短に言えば、細胞を哺乳動物(好ましくはヒト)から単離し、本発明のCARを発現しているベクターを用いて遺伝的に改変する(すなわちインビトロで形質導入またはトランスフェクトする)。得られるCAR改変細胞を本発明の被験体に投与して、治療的利益を提供することができる。一部の実施形態では、被験体はヒトであり得、CAR改変細胞は、CAR改変細胞のレシピエントである被験体に関して自己であり得る。あるいは、細胞は、CAR改変細胞のレシピエントである被験体に関して同種、同系または異種であり得る。
【0135】
エクスビボ免疫のための細胞系ワクチンの使用に加えて、本発明はまた、本発明の被験体の抗原に指向される免疫応答を誘発および/または増強するインビボ免疫化のための組成物および方法も提供する。
【0136】
一般に、本明細書に記載されるように活性化および拡大増殖させた細胞は、被験体(例えば、免疫無防備状態であるか、免疫無防備状態になるリスクのある被験体)に生じる疾患および/または障害の処置および/または予防に使用することができる。
【0137】
本発明のCAR改変T細胞は、単独で、あるいは希釈剤と、かつ/またはIL-2および/または他のサイトカイン類および/または細胞集団などの他の成分と組み合わせて医薬組成物として投与されてよい。手短に言えば、本発明の医薬組成物は、本明細書に記載される標的細胞集団を、1またはそれを超える薬学的にまたは生理的に許容され得る担体、希釈剤または賦形剤を組み合わせて含むことができる。そのような組成物は、中性緩衝食塩水、リン酸緩衝食塩水、滅菌食塩水などの緩衝液;グルコース、マンノース、スクロースまたはデキストラン、マンニトールなどの炭水化物;タンパク質;ポリペプチドまたはグリシンなどのアミノ酸;抗酸化剤;EDTAおよび/またはグルタチオンなどのキレート剤;アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム)および/または保存料を、単独でまたは任意の組合せで含んでよい。
【0138】
本発明の医薬組成物は、処置および/または予防される疾患に適切な方法で投与することができる。投与の量および頻度は、被験体の状態、ならびに被験体の疾患の種類および重症度などの要因によって決定されることになるが、一部の実施形態では、適切な投与量は、臨床試験によって決定される場合がある。
【0139】
「免疫学的有効量」、「抗腫瘍有効量」、「腫瘍阻害有効量」、または「治療量」が示されている場合、投与される本発明の組成物の正確な量は、年齢、体重、腫瘍サイズ、感染または転移の程度、および患者(被験体)の状態の個々の差を考慮して医師が決定することができる。一部の実施形態では、本発明の細胞を含む医薬組成物は、約103~約1010細胞/kg体重の投与量で投与することができ、一部の実施形態では、投与量は、約105~約106細胞/kg体重であり得る(その範囲内のすべての整数値(例えば、104、105、106、107、108、109)を含む)。
【0140】
本発明の細胞組成物は、これらの投与量で複数回投与することもできる(例えば、1時間ごと、1日4回、1日3回、1日2回、毎日、週2回、週3回、毎週、毎月、隔月、半年ごと、毎年など)。
【0141】
本発明の細胞は、免疫療法で一般的に公知の注入技法を使用することによって投与され得る(例えば、Rosenbergら、New Eng.J.of Med.319:1676(1988)を参照)。特定の被験体に対する最適な投与量および処置レジメンは、被験体を疾患の徴候についてモニタリングし、それに応じて処置を調整することにより、医学分野の当業者によって容易に決定することができる。
【0142】
一部の実施形態では、活性化T細胞を被験体に投与し、その後に再び採血(またはアフェレシスを実施)し、本明細書に記載されるようにそこからT細胞を活性化し、これらの活性化し拡大増殖したT細胞を被験体に再注入することが望ましいことがある。このプロセスは、複数回、例えば、毎週または数週間ごとに実行することができる。特定の実施形態では、T細胞は、約10cc~約400ccの採血から活性化することができる。特定の実施形態では、T細胞は、20cc、30cc、40cc、50cc、60cc、70cc、80cc、90cc、または100ccの採血から活性化される。理論に縛られるものではないが、この複数回の採血/複数回の再注入プロトコルを使用することは、T細胞の特定の集団を選択するのに役立ち得る。
【0143】
本発明の組成物の投与は、エアロゾル吸入、注射、経口摂取、輸血、植込みおよび/または移植を含む、任意の方法で行うことができる。本発明の組成物は、患者の皮下、皮内、腫瘍内(mtratumorally)、結節内、髄内、筋肉内に、静脈内(i.v.)注射によって、かつ/または腹腔内に投与することができる。一部の実施形態では、本発明のT細胞組成物は、皮内または皮下注射により被験体に投与することができる。もう一つの実施形態では、本発明のT細胞組成物は、i.v.注射により投与することができる。一部の実施形態では、T細胞の組成物は、腫瘍、リンパ節および/または感染部位に直接注射することができる。
【0144】
本発明の一部の実施形態では、本明細書に記載される方法、またはT細胞が治療レベルまで拡大増殖される当技術分野で公知の他の方法を用いて活性化および拡大増殖された細胞は、任意の数の関連する処置様式と併用して(例えば、その前、それと同時および/またはその後に)被験体に投与することができる。
【0145】
一部の実施形態では、本発明のT細胞は、化学療法、放射線、免疫抑制剤、例えばシクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキサート、ミコフェノレート、およびFK506など、抗体、またはCAM PATHなどのその他の免疫アブレーション剤、抗CD3抗体またはその他の抗体療法、細胞毒素、フルダラビン(fludaribine)、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノール酸、ステロイド、FR901228、サイトカイン、ならびに/または(and/o)照射法と組み合わせて使用することができる。
【0146】
一部の実施形態では、本発明の細胞組成物は、骨髄移植、フルダラビンなどのいずれかの化学療法剤を使用するT細胞除去療法、外部照射放射線療法(external-beam radiation therapy)(XRT)、シクロホスファミド、または抗体、例えば、OKT3またはCAMPATHと併用して(例えば、その前、それと同時および/またはその後に)患者に投与することができる。もう一つの実施形態では、本発明の細胞組成物は、CD20と反応する薬剤、例えばリツキサンなどのB細胞除去療法の後に投与することができる。例えば、一実施形態では、被験体は、高用量化学療法とそれに続く末梢血幹細胞移植による標準的な処置を受ける場合がある。特定の実施形態では、移植の後、被験体は本発明の拡大増殖された免疫細胞の注入を受けることができる。さらなる実施形態では、拡大増殖された細胞は、手術の前および/または後に投与することができる。
【0147】
がんまたは腫瘍の処置において、本発明のCARおよび/またはCARをコードする核酸分子は、必要に応じて、本明細書に記載される障害または状態の処置に有用な、他の異なる細胞傷害性薬剤、例えば、化学療法剤または抗腫瘍性化合物または放射線療法と併用して投与されてよい(例えば、化学療法剤または抗腫瘍性化合物)。その他の化合物が、本発明の抗体またはその抗原結合断片の投与の前に、同時におよび/または後に投与されてもよい。本明細書において使用される、「同時に」という語は、併用効果を生じるほど十分に時間が近いことを意味する(すなわち、同時には、同時点であってもよいし、互いに前後する2またはそれを超える投与であってもよい)。
【0148】
本明細書において、語句「放射線療法」には、限定されるものではないが、ビームなどの外部から適用される線源から送達されるか、または小型の放射性線源の植込みによって送達される、X線またはガンマ線が含まれる。
【0149】
本明細書に記載される抗体または抗原結合断片、細胞、核酸分子および/またはベクターとともに投与されてよい適した化学療法剤の限定されない例としては、ダウノマイシン、シスプラチン、ベラパミル、シトシンアラビノシド、アミノプテリン、デメコルチン(democolcine)、タモキシフェン、アクチノマイシンD、アルキル化剤(限定されないが、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、アルキルスルホネート、ニトロソウレアおよびトリアゼンを含む):ウラシルマスタード、クロルメチン、シクロホスファミド(シトキサン(登録商標))、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ピポブロマン、トリエチレン-メラミン、トリエチレンチオホスホラミン、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、ダカルバジン、およびテモゾロミド;代謝拮抗剤(限定されないが、葉酸拮抗剤、ピリミジン類似体、プリン類似体およびアデノシンデアミナーゼ阻害剤を含む):メトトレキサート、5-フルオロウラシル、フロクスウリジン、シタラビン、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、リン酸フルダラビン、ペントスタチン、およびゲムシタビン、天然産物およびそれらの誘導体(例えば、ビンカアルカロイド、抗腫瘍抗生物質、酵素、リンホカインおよびエピポドフィロトキシン):ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、Ara-C、パクリタキセル(パクリタキセルは、タキソール(登録商標)として市販されている)、ミトラマイシン、デオキシコホルマイシン、マイトマイシン-C、L-アスパラギナーゼ、インターフェロン(特にIFN-a)、エトポシド、およびテニポシドが挙げられる;その他の抗増殖性細胞傷害性薬剤は、ナベルビン(navelbene)、CPT-11、アナストラゾール、レトラゾール(letrazole)、カペシタビン、レロキサフィン(reloxafine)、シクロホスファミド、イホスファミド(ifosamide)、およびドロロキサフィン(droloxafine)である。さらなる抗増殖性細胞傷害性薬剤としては、限定されるものではないが、メルファラン、ヘキサメチルメラミン、チオテパ、シタラビン、エダトレキサート(idatrexate)、トリメトレキサート、ダカルバジン、L-アスパラギナーゼ、カンプトテシン、トポテカン、ビカルタミド、フルタミド、ロイプロリド、ピリドベンゾインドール誘導体、インターフェロン、およびインターロイキンが挙げられる。好ましいクラスの抗増殖性細胞傷害性薬剤は、EGFR阻害剤、Her-2阻害剤、CDK阻害剤、およびハーセプチン(登録商標)(トラスツズマブ)である。(例えば、米国特許第6,537,988号;米国特許第6,420,377号を参照されたい)。そのような化合物は、その投与に関して現在公知の技法に従って与えられてよい。
【0150】
本発明の抗体には、抗体がその結合部位と特異的に結合することが共有結合によって妨げられないように、改変された、すなわち、任意の種類の分子と抗体との共有結合によって改変された抗体が含まれる。例えば、本発明の抗体は、例えば、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化によって、またはその他の保護基/ブロッキング基、タンパク質分解性切断、細胞リガンドまたは他のタンパク質との連結などによって改変されてよい。多数の化学修飾のいずれかが既知技法によって実行されてよく、それには、限定されるものではないが、特異的化学切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝合成などが含まれる。さらに、抗体は、1またはそれを超える非古典的アミノ酸を含有し得る。
【0151】
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ、組換え、およびファージディスプレイ技術、またはそれらの組み合わせの使用を含む幅広い種類の技法を使用して調製することができる。例えば、モノクローナル抗体は、例えば、Harlowら、Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.1988);およびHammerlingら、Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas 563-681(Elsevier,N.Y.,1981)に教示されるものを含む、ハイブリドーマ法を使用して産生することができる。本明細書において使用される用語「モノクローナル抗体」は、ハイブリドーマ技術によって産生される抗体に限定されない。用語「モノクローナル抗体」とは、任意の真核生物、原核生物、またはファージクローンを含む単一のクローンに由来する抗体を指し、それが産生される方法ではない。
【0152】
ハイブリドーマ技術を使用して特定の抗体を産生し、それについてスクリーニングするための方法は日常的であり、公知である。手短に言えば、マウスを抗原またはかかる抗原を発現する細胞で免疫化する。免疫応答が検出されると、例えば、抗原に特異的な抗体がマウス血清中で検出されると、マウス脾臓を回収し、脾細胞を単離する。次に、脾細胞を既知技法によって任意の適した骨髄腫細胞、例えばATCCより入手可能な細胞株SP20由来の細胞と融合させる。ハイブリドーマを選択し、限界希釈によってクローニングする。次に、ハイブリドーマクローンを、本発明のポリペプチドまたは抗原に結合することのできる抗体を分泌する細胞について当技術分野で公知の方法によりアッセイする。一般に高レベルの抗体を含有する腹水は、マウスを陽性のハイブリドーマクローンで免疫化することによって生成することができる。
【0153】
一本鎖Fvs(scFv)および抗体を産生するために使用することのできる技法の例としては、米国特許第4,946,778号および同第5,258,498号;Hustonら、Methods in Enzymology 203:46-88(1991);Shuら、PNAS 90:7995-7999(1993);およびSkerraら、Science 240:1038-1040(1988)に記載されるものが挙げられる。
【0154】
本明細書において使用される用語「ヒト化」とは、ヒトで自然に産生される抗体改変体との類似性を高めるためにそのアミノ酸配列が改変されている非ヒト種由来の抗体を指す。よって、ヒト化抗体は、望ましい抗原に結合する非ヒト種抗体由来の抗体分子であり、非ヒト種由来の1またはそれを超える相補性決定領域(CDR)と、ヒト免疫グロブリン分子由来のフレームワーク領域を有する。しばしば、ヒトフレームワーク領域のフレームワーク残基は、ドナー抗体由来の対応する残基で置換されて、被験体におけるヒト化抗体の抗原結合を変化させ、好ましくは改善し、かつ/あるいは免疫原性を低下させる。これらのフレームワーク置換は、抗原結合および/または免疫原性および特定の位置の異常なフレームワーク残基を識別するための配列比較に重要なフレームワーク残基を識別するために、当技術分野で周知の方法によって、例えば、CDRとフレームワーク残基の相互作用をモデリングすることによって識別される。(例えば、参照によりその全文が本明細書に組み込まれる、Queenら、米国特許第5,585,089号;Riechmannら、Nature 332:323 (1988)を参照。) 抗体は、例えば、CDRグラフティング(例えば、米国特許第5,225,539号;同第5,530,101号;および同第5,585,089号参照。)、ベニアリング(veneering)またはリサーフェシング(resurfacing)(例えば、欧州特許第592,106号;欧州特許第519,596号;Padlan, Molecular Immunology 28(4/5):489-498(1991);Studnickaら、Protein Engineering 7(6):805-814(1994);Roguskaら、PNAS 91:969-973(1994)参照)、および鎖シャッフリング(米国特許第5,565,332号)をはじめとする当技術分野で公知の多様な技法を使用してヒト化することができる。本発明のヒト化モノクローナル抗体の産生および特徴付けの詳細な説明は、本明細書中の実施例の項に記載されている。
【0155】
ヒト被験体の治療的処置、診断、および/または検出には、完全ヒト抗体が望ましい。ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン配列に由来する抗体ライブラリーを使用して、上記のファージディスプレイ法を含む、当技術分野で公知の多様な方法によって作製することができる。例えば、米国特許第4,444,887号および同第4,716,111号を参照されたい。
【0156】
ヒト抗体は、機能的な内因性免疫グロブリンを発現することはできないが、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現することのできるトランスジェニックマウスを使用して産生することもできる。例えば、ヒト重鎖および軽鎖免疫グロブリン遺伝子複合体を、ランダムに、または相同組換えによってマウス胚性幹細胞に導入してもよい。あるいは、ヒト重鎖および軽鎖遺伝子に加えて、ヒト可変領域、定常領域、および多様性領域をマウス胚性幹細胞に導入してもよい。マウスの重鎖および軽鎖免疫グロブリン遺伝子は、相同組換えによるヒト免疫グロブリン遺伝子座の導入とは別々にまたは同時に非機能性にすることができる。特に、JH領域のホモ接合型欠失は、内因性の抗体産生を妨げる。改変された胚性幹細胞は拡大増殖され、胚盤胞に微量注入されて、キメラマウスを生成する。次に、キメラマウスを交配させて、ヒト抗体を発現するホモ接合子孫を生成する。トランスジェニックマウスは、選択された抗原、例えば本発明のポリペプチドの全部または一部によって通常の方法で免疫化される。抗原に対して指向されるモノクローナル抗体は、従来のハイブリドーマ技術を使用して、免疫化されたトランスジェニックマウスから得ることができる。トランスジェニックマウスが有するヒト免疫グロブリン導入遺伝子は、B細胞の分化中に再配列し、その後クラススイッチングと体細胞変異を受ける。よって、そのような技法を使用して、治療上有用なIgG、IgA、IgMおよびIgE抗体を産生することが可能である。ヒト抗体を産生するためのこの技術の概要については、Lonberg and Huszar(1995,Int.Rev.Immunol.13:65-93)を参照されたい。ヒト抗体およびヒトモノクローナル抗体を産生するためのこの技術ならびにそのような抗体を産生するためのプロトコルの詳細な考察については、例えば、米国特許第5,413,923号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;同第5,569,825号;同第5,661,016号;同第5,545,806号;同第5,814,318号および同第5,939,598号を参照されたい。
【0157】
選択されたエピトープを認識する完全ヒト抗体は、「ガイド付き選択(guided selection)」と呼ばれる技法を使用して生成することができる。このアプローチでは、選択された非ヒトモノクローナル抗体、例えばマウス抗体を使用して、同じエピトープを認識する完全ヒト抗体の選択をガイドする。(Jespersら、Bio/technology12:899-903(1988))。
【0158】
さらに、今度は本発明のポリペプチドに対する抗体を利用して、当業者に周知の技法を使用して本発明のポリペプチドを「模倣する」抗イディオタイプ抗体を生成することができる。(例えば、Greenspan & Bona,FASEB J.7(5):437-444;(1989)およびNissinoff,J.Immunol.147(8):2429-2438(1991)を参照)。例えば、結合して、ポリペプチドの多量体化および/または本発明のポリペプチドとリガンドとの結合を競合的に阻害する抗体を使用して、ポリペプチドの多量体化および/または結合ドメインを「模倣」し、その結果、ポリペプチドおよび/またはそのリガンドに結合して中和する抗イディオタイプを生成することができる。そのような中和抗イディオタイプまたはそのような抗イディオタイプのFab断片は、ポリペプチドリガンドを中和するための治療レジメンで使用することができる。例えば、そのような抗イディオタイプ抗体を使用して、本発明のポリペプチドに結合し、かつ/またはそのリガンド/受容体に結合し、それによりその生物活性を遮断することができる。
【0159】
本発明はさらに、上記の本発明のキメラ抗原受容体をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを提供する。当技術分野で公知の任意の方法によって、ポリヌクレオチドを得ることができ、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が決定され得る。例えば、キメラ抗原受容体の成分のヌクレオチド配列が既知の場合、成分をコードするポリヌクレオチドは、化学的に合成されたオリゴヌクレオチドから組み立てられてよく、それには、キメラ抗原受容体の成分をコードする配列の部分を含有する重複オリゴヌクレオチドの合成、それらのオリゴヌクレオチドのアニーリングおよびライゲーション、その後のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によるライゲーションされたオリゴヌクレオチドの増幅を伴う。あるいは、キメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドは、適した供給源からの核酸から生成され得る。次に、PCRによって生成された増幅核酸は、当技術分野で周知の任意の方法を使用して複製可能なクローニングベクターにクローニングされ得る。
【0160】
本発明は、以下の限定されない実施例においてさらに詳細に説明される。以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態をより完全に例示するために提示される。しかし、それらは決して本発明の広い範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0161】
実施例1.
B7-H3(CD276)は、I型膜貫通タンパク質であり、T細胞に対する阻害効果を有するリガンドのB7スーパーファミリーのメンバーである。B7-H3はいくつかのヒト悪性疾患で高度に発現し、その発現は不良な生存と相関している。B7-H3は、腫瘍細胞で発現するが、正常組織での分布が限定されているため、本発明者らはB7-H3をキメラ抗原受容体(CAR)再指向化T細胞の標的として選択した。注目すべきは、B7-H3特異的CARを誘導したmAb 376.96は、正常組織では検出できない規定のB7-H3エピトープを標的化するため、「標的ではあるが腫瘍以外」の認識に起因する潜在的な副作用をさらに最小限に抑える。さらに、このエピトープは、がん始原細胞および腫瘍関連脈管構造および線維芽細胞で高度に発現される。本発明者らは、mAb376.96から得た一本鎖Fv(scFv)からCARを生成した。B7-H3.CARは遺伝子導入されるとヒトTリンパ球によって安定して発現されることができ、B7-H3.CAR改変T細胞はB7-H3陽性細胞を特異的に認識して効率的に排除し、ヒトおよびマウスB7-H3の両方と交差反応することができることを本発明者らは見出した。本発明者らは、B7-H3が膵臓がん(PDAC)細胞株で高度に発現し、インビトロでB7-H3.CAR-Tsによって効率的に除去され得る(CD28または4-1-BBのいずれかを共刺激ドメインとして使用)ことを見出した。インビボ実験では、B7-H3.CAR-T細胞が、NSGマウスの全身性転移モデルと同所性膵臓モデルの両方で膵臓腫瘍細胞を有効に標的化することが示された。B7-H3の広範な腫瘍発現を考慮して、本発明者らは、多くの種類の固形および液性ヒト腫瘍の処置のための、mAb376.96に由来するB7-H3.CARの適用可能性を見込んでいる。
【0162】
細胞株。ヒト膵臓腫瘍細胞株Panc-1、BxPC-3、Panc-10.05、Capan-1、Hpaf-IIおよびAsPC-1を、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)より購入した。293T、Phenix EcoおよびCapan-1細胞株は、10% FBS(シグマ)、2mM GlutaMax(Gibco)を補充したIMDM(Gibco、インビトロジェン)で培養した。BxPC-3、Panc-10.05、KPC-4662は、10% FBSおよび2mM GlutaMaxを補充したRPMI1640(Gibco)で培養した。AsPC-1は、10% FBS、2mM GlutaMaxおよび1mMピルビン酸ナトリウム(Gibco)を補充したRPMI1640(Gibco)で培養した。Panc-1細胞は、10% FBSおよび2mM GlutaMaxを補充したDMEM(GIBCO)で培養した。Hpaf-IIは、10% FBSおよび2mM GlutaMaxを補充したMEM(Gibco)で培養した。ペニシリン(100単位/mL)(Gibco)およびストレプトマイシン(100μg/mL)(Gibco)をすべての細胞培養培地に添加した。細胞は、37℃の、5%CO2を含有する加湿雰囲気下で維持された。Panc-1、Panc-10.05、BxPC-3、Hpaf-II、Capan-1およびAspc-1細胞は、eGFPをコードするレトロウイルスベクターで形質導入し、Raji細胞は、ヒトまたはマウスB7-H3cdnaのいずれかをコードするレトロウイルスベクターで形質導入した。マウス膵臓腫瘍細胞株KPC-4662は、マウスB7-H3cdnaをコードするレトロウイルスベクターで形質導入した。Panc-1およびBxPC-3細胞も、eGFP-ホタル-ルシフェラーゼ(eGFP-FFluc)遺伝子をコードするレトロウイルスベクターで形質導入した。すべての細胞株は実験の過程で日常的にチェックされ、常にマイコプラズマがないことが見いだされ、必要に応じて表面マーカーのフローサイトメトリーおよび機能的読み出しによって日常的に検証された。
【0163】
プラスミドの構築およびレトロウイルスの産生。全長ヒト2Ig-B7-H3(受託番号NM_001329628)および4Ig-B7-H3(受託番号NM_001024736)遺伝子を、Panc-1細胞株から生成したcDNAからPCRによって増幅し、NcoIおよびXhoI制限部位を使用してレトロウイルスベクターSFGにクローニングした。マウスB7-H3(受託番号NM_133983)を、InVivogene(San Diego、CA)から得たプラスミドからPCRによって増幅し、NcoIおよびMluI制限部位を使用してレトロウイルスベクターSFGにクローニングした。ヒトB7-H3に特異的なscFv.376.96を、NcoIおよびMluI制限部位を使用してレトロウイルスベクターSFGにクローニングした。B7-H3.CARのカセット全体を
図3Aに例示する。レトロウイルス上清を前述の通り調製した。手短に言えば、GeneJuiceトランスフェクション試薬(Novagen)を使用して、293T細胞に3つのプラスミド(レトロウイルス構築物、gag-polをコードするPeg-Pam-e、およびRD114エンベロープをコードするRDF)を同時導入し、48時間および72時間後に上清を回収した。
【0164】
T細胞の形質導入および拡大増殖。健康なドナーのバフィーコートは、テキサス州ヒューストンのガルフコースト地域血液センターから入手した。末梢血単核細胞(PBMC)をLymphoprep密度分離(Fresenius Kabi Norge)で分離し、1μg/mL 抗CD3(Miltenyi Biotec)および1μg/mL 抗CD28(BD Biosciences)抗体被覆プレートを使用して活性化させた。3日目に、レトロネクチン被覆プレート(タカラバイオ株式会社、滋賀、日本)を使用して、Tリンパ球にレトロウイルス上清を形質導入した。レトロネクチンプレートから取り出した後、T細胞を、IL-7(10ng/mL;PeproTech)およびIL-15(5ng/mL;PeproTech)を含む、完全培地(45% RPMI-1640および45% クリック培地(Irvine Scientific)、10%FBS(Hyclone)、2mM GlutaMAX、100単位/mLのペニシリンおよび100μg/mLのストレプトマイシン)で拡大増殖させ、2~3日毎に培地を交換した。12~14日目に、インビトロまたはインビボ実験のために細胞を回収した。T細胞を、IL-7/IL-15枯渇培地で2日間培養し、その後機能アッセイを行った。
【0165】
免疫組織化学。凍結正常ヒト組織マイクロアレイおよび正常マウス組織マイクロアレイをUS Biomaxより購入した。凍結膵臓がん試料は、UNCラインバーガー総合がんセンターの組織調達施設から入手した。組織は、ノースカロライナ大学の組織学研究のコア施設で切片化された。スライドを、PBS中4% PFAで15分間固定し、室温で30分間乾燥させ、0.05% tween-20を含むPBS中1% BSAおよび10% ウマ血清(Company)でブロッキングした。スライドを、ヒトB7-H3に特異的な一次抗体(クローン376.96、1:1000希釈)を用いて4℃で一晩染色し、HRPポリマーをコンジュゲートしたヤギ抗マウス二次抗体(Dako、コードK4000、25℃で1.5時間1:8希釈)でプローブした。DAB色素原(Vector Labs)を使用してスライドを発色させ、CATヘマトキシリン(Biocare medical)で対比染色し、エタノールで脱水し、キシレン(Fisher chemical)で透徹した。組織封入剤(Fisher、トルエン溶液)を使用してカバーガラスを加えた。染色したTMAスライドを、Aperio ScanScope XT(ライカ)を使用して、20倍の対物レンズでデジタルイメージングした。組織マイクロアレイスライドの整列を解除して(de-array)個々のコアを可視化し、各コアを目視検査した。折り畳まれた組織は、ネガティブペン(negative pen)を使用する分析から除外され、他の全てのアーティファクトはAperio Genieソフトウェアで自動的に除外された。B7-H3染色は、Aperio membrane v9(細胞定量化)アルゴリズムを使用して測定した。各強度レベル(負、低、中、高)でこのアルゴリズムで得た陽性細胞の百分率を使用して、次式を用いてHスコアを計算した:Hスコア=(1+の%)*1+(2+の%)*2+(3+の%)*3。Genie分類指標を用いるAperioカラーデコンボリューションv9アルゴリズムも適用して、陽性染色の面積および強度を計算し、スコア(0~300)を生成した。
【0166】
ELISA T細胞(5×105または1×105)を外因性サイトカインを含まない24ウェルプレートで、腫瘍細胞(5×105)とともに共培養した。24時間後、上清を回収し、ELISAキット(R&D system)を製造業者の指示に従って使用することにより、サイトカイン(インターフェロンガンマ(IFNγ)およびインターロイキン2(IL2))を測定した。各上清は、三連で測定した。
【0167】
フローサイトメトリー。本発明者らは、BV421、AF488、FITC、PE、PE-cy7、PerCP-cy5.5、APC、およびAPC-cy7蛍光色素とコンジュゲートした、CD45、CD56、CD8、CD4、CD3、CD45RA、CD45RO、CD62L、hB7-H3(クローン7-517)、mB7-H3(クローンMIH32)、mCD3、mCD4、mCD8、mCD11b、mCD11c、mLy6cG、mCD19(すべてBecton Dickinson、カリフォルニア州サンノゼ)およびCCR7(E&D)に特異的なAbsを使用してフローサイトメトリーを実施した。腫瘍細胞株におけるB7-H3の発現は、抗B7-H3特異的Ab(BDのクローン7-517、およびクローン376.96)により評価した。B7-H3.CARの発現は、Protein-L(Genscript)および抗Fab抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories社)を使用して検出した。試料は、BD Divaソフトウェア(BD Biosciences)を含むBD FACScanto IIまたはBD FACSfortessaで分析し、各試料について本発明者らは最低10,000個の事象を取得し、Flojo 10を使用してデータを分析した。
【0168】
長期インビトロ細胞傷害活性。腫瘍細胞を24ウェルプレートに5×105/ウェルの濃度で播種した。T細胞を、外因性サイトカインを添加せずに異なる比(E:Tが1:1、1:5、または1:10)で培養に添加した。細胞を5~7日目までに分析して、残留腫瘍細胞およびT細胞をFACSにより測定した。死細胞をZombie Aqua(Biolegend)染色によって除去し、T細胞および腫瘍細胞を、CD3、GFP(膵臓がん細胞株および線維芽細胞)、CD19(Raji、Raji-2IgB7-H3、Raji-4IgB7-H3およびRaji-mB7-H3)およびmB7-H3(KPC-4662およびKPC-4662-mB7-H3)の発現によって識別した。
【0169】
増殖アッセイ。T細胞を1.5mMカルボキシフルオレセインジアセテートスクシンイミジルエステル(CFSE;インビトロジェン)で標識し、腫瘍細胞標的を1:1のE:T比で蒔いた。CFSE希釈は、5日目までにフローサイトメトリーを使用してCD3+T細胞で測定した。
【0170】
異種マウスモデル。NSGマウスを使用して、対照および形質導入したT細胞のインビボ抗腫瘍効果を評価した。すべてのマウス実験は、ノースカロライナ大学チャペルヒル校の動物実験委員会によって承認された。全身性転移モデルに対し、8~10週齢の雄および雌NSGマウス(UNC動物施設)に、FFlucを形質導入したPanc-1(1×10
6)かまたはBxPC-3(1×10
6)腫瘍細胞を静脈内注射し、腫瘍細胞接種の14日後に、形質導入していないT細胞、B7-H3.CAR-28またはB7-H3.CAR-BB T細胞を静脈内注射した(マウスあたり1×10
7細胞)(
図6H)。膵臓同所性モデルには、FFlucを形質導入したPanc-1(2×10
5)またはBxPC-3(1×10
5)腫瘍細胞を、25μL DPBSに懸濁し、25μL マトリゲル(コーニング)と混合し、次に28ゲージ針を使用して、8~10週齢の雄マウスの膵臓に外科的に植込んだ。手短に言えば、左脇腹に切開を行い、28ゲージ針を使用して、マトリゲルと混合した腫瘍細胞を膵臓の尾部に注入した。創傷は、連続する4-0のVicryl、および創傷クリップまたは皮膚用のポリプロピレン縫合糸で2枚の層で閉じた。腫瘍細胞接種の12日後、CD19.CAR-T(対照)またはB7-H3.CAR-T細胞を静脈注射した(マウスあたり1×10
7細胞)(
図6A)。ランダム化は使用しなかった。調査者は盲検化されていなかったが、マウスは対照群または処置群に割り当てる前に腫瘍細胞のシグナルに基づいて一致させた。腫瘍増殖は、IVIS lumina IIインビボイメージングシステム(パーキンエルマー)を使用して、毎週、生物発光イメージングによってモニタリングした。マウスは、調査者によって不快感の徴候が検出された時、またはマウスを週3回モニタリングする獣医が推奨した時、または動物の生存を調べるルシフェラーゼシグナルが2×10
11光子/秒/cm
2に達した時に、安楽死させた。腫瘍標本を収集し、IHC染色のために急速凍結してB7-H3発現を検出した。
【0171】
統計分析。特に断りのない限り、データは平均値±標準偏差として報告した。スチューデントのt検定(両側)を使用して、試料間の統計的有意差を決定した。P<0.05は有意差を示す。Prismバージョン5.0dソフトウェア(GraphPad、カリフォルニア州ラ・ホーヤ)を使用して、グラフ生成および統計分析を実施した。
【0172】
B7-H3は膵臓がん組織で高度に発現するが正常ヒト組織では発現しない。正常ヒト組織でのB7-H3の発現を評価するため、凍結正常ヒト組織マイクロアレイ(TMA)スライドを376.96mAbで染色した。凍結ヒト膵管腺癌(PDAC)組織を陽性対照として使用した。
図1Aに示されるように、PDAC組織はB7-H3陽性であった。抗原は腫瘍細胞と間質線維芽細胞の両方で発現するが、正常膵臓はB7-H3陰性である。同様に、6つのヒトPDAC腫瘍細胞株およびPDXモデル由来の3つの原発性膵臓腫瘍細胞株は、B7-H3陽性である(
図1B~C)。心臓、肺、肝臓、腎臓、脾臓、筋肉、大脳、小脳、脊髄および末梢神経を含む正常ヒト組織は、B7-H3陰性であった(
図2)。副腎、唾液腺、前立腺の上皮細胞、および皮膚の基底層で弱い陽性が検出された(
図2)。
【0173】
B7-H3.CAR-Tsは、B7-H3陽性細胞を特異的に標的とし、ヒトおよびマウスB7-H3の両方と交差反応する。本発明者らは、376.96mAbを使用してB7-H3.CARを生成した。ハイブリドーマ376.96から得たscFv配列を、ヒトCD8αヒンジおよび膜貫通ドメイン、CD28または4-1-BB細胞内共刺激ドメインおよびCD3ζ細胞内シグナル伝達ドメインを含む、以前に検証済みのCAR形式にクローニングした。B7-H3.CARカセットをレトロウイルスベクターSFGにクローニングした。これを
図3Aに示す。B7-H3.CAR-Tsの形質導入効率は65%~85%である(
図3B)。B7-H3.CAR-Tsの特異性を検証するために、B7-H3陰性である腫瘍細胞株Rajiを、ヒトB7-H3の2つのアイソフォーム(4Ig-B7-H3および2Ig-B7-H3)かまたは対応するマウスB7-H3(mB7-H3)のいずれかを発現するように遺伝的に改変した。これらの細胞の単細胞クローンを得た(
図3C)。次に、対照と、B7-H3を発現しているRaji細胞を、対照かまたはB7-H3.CAR-Tsとともに共培養した。
図3Dに示されるように、CD28かまたは4-1-BB共刺激ドメインのいずれかをコードするB7-H3.CAR-Tsは、B7-H3を発現しているRaji細胞を特異的に標的化した。B7-H3.CAR-Tsはまた、mB7-H3を発現しているRaji細胞も標的化し、376.96mAbに由来するscFvがヒトおよびマウスB7-H3分子の両方を標的化することを実証している(
図3D~E)。抗腫瘍効果は、IFNγおよびIL-2の放出でも類似していた(
図3F~G)。
【0174】
B7-H3.CAR-TsがインビトロでPDAC細胞株を標的化する。B7-H3を天然に発現する腫瘍細胞株に対するB7-H3.CAR-Tsの効果を評価するために、本発明者らは、6つのPDAC細胞株を、CD19.CAR-Ts(陰性対照)およびB7-H3.CAR-Tsとともに異なるT細胞:腫瘍細胞比で共培養した。
図4Aに示されるように、B7-H3.CAR-Tsは、1:10のT細胞:腫瘍細胞比であっても、PDAC細胞を有効に除去した(
図4B~C)。2つのPDAC腫瘍細胞株、BxPC-3およびPanc-10.05に関して、4-1BBをコードするB7-H3.CAR-Tsは、CD28をコードするB7-H3.CAR-Tsよりも効率的であるように思われた(
図4C)。B7-H3.CAR-Tsの細胞溶解活性は、サイトカイン放出(IFNγおよびIL2)(
図4D~E)および増殖(
図4F)によって裏付けられた。B7-H3.CAR-TsをPDX由来のPDAC細胞株と共培養した場合にも、同様の結果が得られた(
図5A~F)。
【0175】
B7-H3.CAR-Tsは、異種移植片モデルにおける抗腫瘍活性を示す。インビボでのB7-H3.CAR-Tsの抗腫瘍効果を調べるために、FFlucを形質導入したPanc-1およびBxPC-3腫瘍細胞を、膵臓同所性モデルについての手術によりNSGマウスの膵臓に植込み、対照CD19.CAR-TsおよびB7-H3.CAR-Tsで処置した(
図6A)。
図6B~Dに示されるように、B7-H3.CAR-Tsは、Panc-1腫瘍細胞を有効に除去し、マウスは処置後80日目まで腫瘍がないままであった。BxPC-3同所性モデルでは、B7-H3.CAR-Tsも腫瘍を制御したが、このモデルでは4-1BBをコードするB7-H3.CAR-TsはCD28をコードするB7-H3.CAR-Tsよりも有効であった(
図6E~G)。転移モデルでは、FFlucを形質導入したPanc-1腫瘍細胞を静脈注射によりNSGマウスに植込んだ(
図6H)。その後、マウスをCD19.CAR-TsおよびB7-H3.CAR-Tsによる尾静脈注射で処置した。
図6I~Jに示されるように、B7-H3.CAR-Tsは、実験が終了した処置後70日目までPanc-1腫瘍増殖を制御した。このモデルでは、CD28かまたは4-1BBのいずれかをコードするB7-H3.CAR-Tsの両方が同様の活性を示した。
【0176】
本明細書において引用したすべての刊行物、特許出願、特許、特許公報、およびその他の参考文献は、参照が提示されている文および/または段落に関連する教示について、参照によりその全文が組み込まれる。
【0177】
【配列表】