(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-20
(45)【発行日】2023-09-28
(54)【発明の名称】駆動装置
(51)【国際特許分類】
F16H 37/12 20060101AFI20230921BHJP
【FI】
F16H37/12 Z
(21)【出願番号】P 2020018031
(22)【出願日】2020-02-05
【審査請求日】2022-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390000996
【氏名又は名称】株式会社ハイレックスコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 知也
(72)【発明者】
【氏名】田中 英樹
【審査官】山本 健晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-082223(JP,A)
【文献】特開2017-163921(JP,A)
【文献】特開2016-128703(JP,A)
【文献】特公昭47-046528(JP,B1)
【文献】特開2004-263615(JP,A)
【文献】実開昭63-026395(JP,U)
【文献】実開平01-011469(JP,U)
【文献】実開昭51-154574(JP,U)
【文献】特開2020-144708(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 37/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する長尺部材と、
前記長尺部材の一端が接続して前記長尺部材を巻取りおよび繰り出しする巻取部材と、
前記巻取部材の回転と共に同一方向に回転する回転部材と、
前記巻取部材を前記回転部材に対して相対回転させることにより、前記回転部材を前記巻取部材に対して離間するように、前記巻取部材の軸方向に移動させる移動機構と、
前記巻取部材を前記回転部材に対して相対回転させるために、前記回転部材の回転に対して負荷を与える負荷部材と、
前記回転部材によって作動する作動部材と
を備え、
前記回転部材は、前記巻取部材に対して近接した近接位置と、前記巻取部材に対して離間した離間位置との間で、前記軸方向に移動可能であり、
前記作動部材は、前記回転部材が離間位置に位置するときに、前記回転部材の回転によって作動し、
前記負荷部材は、
前記回転部材の外周と係合して、前記回転部材の回転を抑制する係合部を有し、
前記係合部は、前記回転部材が前記近接位置にあるときに前記回転部材の外周と係合し、前記回転部材が前記離間位置にあるときに、前記回転部材の外周と非係合状態となるように設けられている、駆動装置。
【請求項2】
前記負荷部材は、前記係合部を回転軸周りに軸支する軸支部を有し、
前記回転部材が前記近接位置にあるときに、前記係合部は、前記回転部材の一方向の回転を規制し、前記回転部材が他方向に回転する際には、前記回転軸周りに回転して、前記回転部材の他方向の回転を阻害しないように構成されている、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記作動部材は、前記回転部材と係合離脱可能な係合離脱部を有し、
前記回転部材が、前記係合離脱部と前記回転部材の回転方向に係合可能な回転部材側係合離脱部を有し、
前記回転部材が前記離間位置に位置するときに、前記係合離脱部および前記回転部材側係合離脱部が係合して、前記回転部材の回転力が前記作動部材に伝達される、請求項1または2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記移動機構は、
前記回転部材を前記巻取部材に対して軸方向に離間させる離間機構と、前記回転部材と前記巻取部材とが係合状態と相対移動許容状態とを遷移可能な遊嵌機構とを有し、
前記離間機構は、前記回転部材を軸方向において前記巻取部材から相対的に離間する方向に案内する案内部と、前記案内部と接続して相対移動する接続部とを有し、
前記巻取部材が前記長尺部材の繰り出し操作によって一方へ回転する際に、
前記遊嵌機構の相対移動許容状態において、前記負荷部材による前記巻取部材の、前記回転部材に対する一方への相対回転によって、前記案内部が前記接続部を案内することで、前記回転部材が前記巻取部材から離間する方向に移動し、
前記回転部材が前記離間位置に移動したときに、前記遊嵌機構が係合状態となることで前記巻取部材の一方への回転によって前記回転部材が一方に回転し、
前記回転部材の一方への回転によって、前記作動部材が回転する、請求項3に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記駆動装置がさらに、
前記巻取部材を前記長尺部材が巻取られる方向に付勢する巻取部材付勢部材と、
前記回転部材を前記巻取部材側へと付勢する回転部材付勢部材と
を備えている、
請求項1~4のいずれか1項に記載の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特許文献1には、電磁クラッチ機構を備えた駆動装置が開示されている。この駆動装置は、ハウジングと、ハウジングに対して回転可能に支持されたアーマチュアと、アーマチュアに対向配置されてハウジングに対して回転可能に支持されたロータ及びコイルを有してハウジングに収容された電磁クラッチ機構とを備えている。
【0003】
特許文献1の駆動装置は、コイルへの通電に伴い、アーマチュア及びロータの間に発生する電磁吸引力により、アーマチュア及びロータの間で動力の伝達が可能となるように、アーマチュア及びロータを摩擦係合させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のような電磁クラッチ機構を備えた駆動装置の場合、電磁クラッチ機構を作動させる際に、コイルへの通電が必要となるため、駆動装置の駆動時の消費電力が大きくなる。また、特許文献1のような駆動装置の場合、コイルの巻線部分やアーマチュアなど、金属材料を用いる部分が多くなり、駆動装置全体の重量が大きくなる。
【0006】
本発明は、消費電力が大きくならず、軽量化が可能な駆動装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の駆動装置は、可撓性を有する長尺部材と、前記長尺部材の一端が接続して前記長尺部材を巻取りおよび繰り出しする巻取部材と、前記巻取部材の回転と共に同一方向に回転する回転部材と、前記巻取部材を前記回転部材に対して相対回転させることにより、前記回転部材を前記巻取部材に対して離間するように、前記巻取部材の軸方向に移動させる移動機構と、前記巻取部材を前記回転部材に対して相対回転させるために、前記回転部材の回転に対して負荷を与える負荷部材と、前記回転部材によって作動する作動部材と
を備え、前記回転部材は、前記巻取部材に対して近接した近接位置と、前記巻取部材に対して離間した離間位置との間で、前記軸方向に移動可能であり、前記作動部材は、前記回転部材が離間位置に位置するときに、前記回転部材の回転によって作動し、前記負荷部材は、前記回転部材の外周と係合して、前記回転部材の回転を抑制する係合部を有し、前記係合部は、前記回転部材が前記近接位置にあるときに前記回転部材の外周と係合し、前記回転部材が前記離間位置にあるときに、前記回転部材の外周と非係合状態となるように設けられている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の駆動装置によれば、消費電力が大きくならず、軽量化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態の駆動装置を備えた昇降部材操作装置を示す側面図である。
【
図2】
図1に示される駆動装置の分解斜視図である。
【
図3】
図2の駆動装置に用いられる巻取部材と回転部材とが近接した状態を示す概略図である。
【
図4】
図3に示される状態から、巻取部材と回転部材とが互いからわずかに離間した状態を示す概略図である。
【
図5】
図4に示される状態から、巻取部材と回転部材とが互いから離間し、回転部材と作動部材とが互いに係合可能となった状態を示す概略図である。
【
図6】
図5に示される状態から、互いに係合した回転部材と作動部材とが連動して回転している状態を示す概略図である。
【
図7】
図2に示される駆動装置において、伝達ギヤが作動ギヤに接続された第一接続状態を示す概略図である。
【
図8】
図2に示される駆動装置において、伝達ギヤが中間ギヤに接続された第二接続状態を示す概略図である。
【
図9】負荷部材の係合部が、近接位置にある回転部材に係合した状態を示す斜視図である。
【
図10】負荷部材の係合部が、離間位置にある回転部材の外周と係合していない非係合状態を示す斜視図である。
【
図11】負荷部材の係合部が、近接位置にある回転部材によって揺動した状態を示す斜視図である。
【
図12】負荷部材の係合部の変形例を示す概略図である。
【
図13】負荷部材の係合部の他の変形例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態の駆動装置を説明する。なお、以下の実施形態はあくまで一例であり、本発明の駆動装置は、以下の実施形態に限定されるものではない。以下、駆動装置が昇降部材操作装置に適用された例をあげて説明する。しかし、本発明の駆動装置は、昇降部材操作装置以外の装置に適用されてもよい。
【0011】
図1に示されるように、本実施形態では、昇降部材操作装置Aは、昇降部材Wを備えた昇降機構Mと、昇降機構Mに接続された駆動装置1とを備えている。昇降部材操作装置Aは、駆動装置1により生じる駆動力によって、昇降部材Wを操作する。
【0012】
昇降部材操作装置Aにより操作される昇降部材Wは、本実施形態では遮蔽棹であるが、昇降部材Wの種類は特に限定されず、たとえば、防護柵、防護ロープなど他の遮蔽体であってもよい。昇降部材Wは所定の軸周りに回転するように構成されている。本実施形態では、
図1に示されるように、昇降部材Wは水平軸周りに回転するように構成されているが、垂直軸周りに回転してもよい。また、昇降部材Wは、所定の軸周りに回転するものに限定されず、水平方向や鉛直方向に沿ってスライドするように構成されていてもよい。
【0013】
昇降機構Mは、駆動装置1により生じる駆動力によって、昇降部材Wを昇降する。昇降機構Mは、駆動装置1から出力された操作力を、昇降部材Wの昇降動作に変換して昇降部材Wを昇降する。本実施形態では、昇降機構Mは、駆動装置1から回転力が伝達されて、その回転力により昇降部材Wを昇降する。
【0014】
昇降機構Mは、
図1に示されるように、基体Fに設けられた昇降部材Wと、昇降部材Wを初期位置と作動終了位置とに移動させる昇降作動部材M1と、駆動装置1により生じる駆動力を昇降作動部材M1に伝達する伝達機構M2とを備えている。本実施形態では、昇降部材Wの初期位置は、
図1に実線で示されるように、昇降部材Wが筐体である基体Fに設けられた上下方向に延びる開口から、基体Fの内側から外側へと水平に延びる位置である。昇降部材Wの作動終了位置は、
図1に二点鎖線で示されるように、昇降部材Wが基体Fの上側の所定の位置まで到達した位置である。昇降部材Wは、作動終了位置へと移動した後に初期位置へと再び移動して、降下位置である初期位置と上昇位置である作動終了位置との間で昇降する。なお、昇降部材Wの初期位置および作動終了位置は、昇降部材Wの作動範囲や作動方法に応じて適宜変更される。
【0015】
昇降作動部材M1の構造は、伝達機構M2により伝達された駆動力を用いて、昇降部材Wを初期位置と作動終了位置との間で移動させることができれば、特に限定されない。本実施形態では、昇降作動部材M1は、
図1に示されるように、作動アームM11と昇降部材Wと連結した連結部M12と、連結部M12について連結した昇降部材Wを移動させる作動アームM11と、作動アームM11の回転軸となる軸部M13と昇降部材Wとを有している。なお、昇降作動部材M1は、上述したようなアーム機構の他、伝達機構M2により出力される回転動作を直線動作に変換して昇降部材Wを直線動作させるように構成してもよいし、伝達機構M2により出力される回転動作を昇降部材Wの回転軸周りの回転動作として伝達するように構成してもよい。また、伝達機構M2から直線動作による操作力が出力される場合、昇降作動部材M1は、伝達機構M2からの直線動作による操作力を直線動作として伝達してもよいし、回転動作として伝達してもよい。
【0016】
伝達機構M2は、駆動装置1により生じる駆動力を昇降作動部材M1に伝達する。本実施形態では、伝達機構M2は、駆動装置1により生じる回転力を昇降作動部材M1に伝達する。なお、駆動装置1は、直線動作など回転動作以外による操作力を出力してもよく、その場合、伝達機構M2は回転動作以外の操作力を昇降作動部材M1に伝達すればよい。
【0017】
伝達機構M2の構造は、駆動装置1により生じる駆動力を昇降作動部材M1に伝達することができれば、特に限定されない。本実施形態では、伝達機構M2は、
図1に示されるように、昇降作動部材M1に接続される第一伝達歯車M21と、第一伝達歯車M21と噛合する第二伝達歯車M22とを備えている。第二伝達歯車M22は、駆動装置1側に設けられた作動軸Ax(
図1参照)に直接または間接的に接続される。本実施形態では、第一伝達歯車M21が回転することにより、作動アームM11を揺動させて昇降部材Wを昇降させる。第二伝達歯車M22は、第一伝達歯車M21と噛み合って第一伝達歯車M21を回転させる。第二伝達歯車M22は、作動軸Axに接続され、作動軸Axの回転により回転する。本実施形態では、第一伝達歯車M21はセクタギヤであり、第二伝達歯車M22はウォームギヤとして示されている。第一伝達歯車M21および第二伝達歯車M22の形状や構造は、作動軸Axの回転によって、第二伝達歯車M22および第一伝達歯車M21を介して昇降作動部材M1を移動させることができれば、特に限定されない。たとえば、第一伝達歯車M21および第二伝達歯車M22の組み合わせは、ウォームギヤ、平歯車、傘歯車等の各種歯車から適宜選択することができる。
【0018】
駆動装置1は、
図2に示されるように、可撓性を有する長尺部材2と、長尺部材2の一端が接続して長尺部材2を巻取りおよび繰り出しする巻取部材3と、巻取部材3の回転と共に同一方向に回転する回転部材4とを備えている。また、駆動装置1は、巻取部材3を回転部材4に対して相対回転させることにより、回転部材4を巻取部材3に対して離間するように、巻取部材3の軸X方向に移動させる移動機構5(
図3~
図6参照)と、巻取部材3を回転部材4に対して相対回転させるために、回転部材4の回転に対して負荷を与える負荷部材6と、回転部材4によって作動する作動部材7とを備えている。回転部材4は、後述するように、巻取部材3に対して近接した近接位置(
図3参照)と、巻取部材3に対して離間した離間位置(
図5および
図6参照)との間で、軸X方向に移動可能となっている。作動部材7は、後述するように、回転部材4が離間位置に位置するときに、回転部材4の回転によって作動する。
【0019】
駆動装置1は、長尺部材2の操作によって、巻取部材3、回転部材4を介して作動部材7を作動させることによって、昇降部材W等の作動対象を直接または間接的に操作する。なお、本実施形態では、駆動装置1による作動対象は昇降部材Wであるが、作動対象は昇降部材Wに限定されない。たとえば、作動対象は、作動部材7自体であってもよいし、作動部材7に直接接続された部材であってもよいし、作動部材7に間接的に接続された部材であってもよい。
【0020】
詳細は後述するが、駆動装置1において、長尺部材2が操作されると、巻取部材3が軸X(
図2参照)周りに回転する。巻取部材3が軸X周りに回転するときに、巻取部材3は、負荷部材6および移動機構5(
図3~
図6参照)によって、近接位置にある回転部材4に対して相対回転するとともに、回転部材4が離間位置に移動する。回転部材4が離間位置に移動すると、回転部材4の回転によって作動部材7が作動する。本実施形態では、回転部材4が離間位置にあるときに、巻取部材3の軸X周り方向の回転力が回転部材4に伝達されるように構成されており、回転部材4の回転によって、作動部材7が回転するように構成されている。
【0021】
本実施形態では、駆動装置1は、
図2に示されるように、作動部材7と作動対象との間に伝動部8を有している。より具体的には、伝動部8は、作動部材7と作動軸Axとの間に設けられている。伝動部8は、作動部材7に伝達された操作力を作動対象に向けて伝達する。伝動部8の構造は、作動部材7に伝わった操作力を作動対象に向けて伝達することができれば、特に限定されない。伝動部8は、例えば、歯車等の複数の伝動部材を有しており、複数の伝動部材を介して、作動部材7の操作力を作動対象に伝達する。具体的には、伝動部8は、
図2に示されるように、作動部材7の回転によって回転する駆動ギヤ81と、駆動ギヤ81の回転力が伝達され、作動軸Axを回転させる作動ギヤ82とを有している。
【0022】
本実施形態では、伝動部8は、作動部材7の一方向の回転によって、作動軸Ax(または作動対象)の回転方向を一方向D1(
図2参照)および他方向D2(
図2参照)に切り替え可能に構成されている。具体的には、伝動部8は、
図2に示されるように、駆動ギヤ81および作動ギヤ82に加えて、作動ギヤ82に接続されて作動軸Axを他方向へ回転させる中間ギヤ83と、駆動ギヤ81の回転を伝達する伝達ギヤ84とを有している。さらに、駆動装置1は、伝達ギヤ84を移動させることで作動ギヤ82との接続による作動軸Axを一方向へ回転させる第一接続状態と中間ギヤ83との接続による作動軸Axを他方向に回転させる第二接続状態とに切り替える切替部材9を有している。作動軸Axは、図に示した実施形態では軸部材を用いているが、軸部材に替えてギヤドケーブルやトルクケーブルを回転軸として用い、その回転軸を伝達ギヤ84で伝達された駆動力によって回転させて、作動対象を作動させてもよい。
【0023】
本実施形態の駆動装置1は、長尺部材2を操作することによって出力として作動軸Axを回転させることができ、切替部材9に接続されたアウターチューブ等の操作部材Tを操作することによって、長尺部材2の操作による作動軸Axの回転方向を切り替える。詳細は後述するが、アウターチューブ等の操作部材Tによって操作される切替部材9によって、伝達ギヤ84と作動ギヤ82とが接続される第一接続状態と、伝達ギヤ84と中間ギヤ83とが接続される第二接続状態との間で伝達ギヤ84の接続状態を切り替えることによって、作動軸Axの回転方向が切り替えられる。これによって、駆動装置1は、簡単な操作で、昇降部材W等の作動対象を2つの方向に操作する。なお、駆動装置1の動作の詳細については後述する。
【0024】
長尺部材2は、作動部材7を作動させるために巻取部材3を操作するための部材である。本実施形態では、長尺部材2によって、巻取部材3が操作されることにより、作動部材7を介して、作動軸Axおよび作動対象である昇降部材Wが操作される。長尺部材2の構造は、巻取部材3を操作することができれば特に限定されない。本実施形態では、長尺部材2は、操作ワイヤ、より具体的には可撓性を有するインナーケーブルである。
【0025】
本実施形態では、長尺部材2は、
図2に示されるように、巻取部材3に接続され、巻取部材3への巻き取りおよび巻取部材3からの繰り出しが可能であり、長尺部材2を引き操作することによって、巻取部材3に操作力を伝達する。長尺部材2は、巻取部材3に接続される一端(図示せず)と、長尺部材操作部Pを有する他端とを有し、長尺部材操作部Pを有する他端側は、ケースC(本実施形態では、第1ケース部材C1および第2ケース部材C2によって構成されている)から外部に導出されている。長尺部材操作部Pが操作されて、長尺部材2が引き操作されることにより、巻取部材3から長尺部材2が繰り出され、巻取部材3が軸X周りに回転する。
【0026】
操作部材Tは、後述する切替部材9を操作する部材である。本実施形態では、操作部材Tは、長尺部材2の外周を被覆するアウターチューブである(以下、アウターチューブTとも呼ぶ)。アウターチューブTは、両端が開口した筒状部材であり、長尺部材2がアウターチューブTに対して軸方向に移動できるように長尺部材2を収容している。本実施形態では、アウターチューブTは、作動軸Axの回転方向を切り替えるために操作される。アウターチューブTの一端Taは、切替部材9(後述する従動部材91)に接続されてケースC内部に位置し、アウターチューブTの他端Tbは、ケースCの外部に位置している。アウターチューブTの他端Tb側には、アウターチューブTを操作するための操作部材操作部(アウターチューブ操作部)P2を有している。なお、操作部材Tは、切替部材9を操作可能であれば、アウターチューブに限定されず、たとえば長尺部材2を収容せずに別途設けられた軸部材等、アウターチューブとは異なる形状・構造を有する部材であってもよい。
【0027】
巻取部材3は、長尺部材2の一端が接続され、長尺部材2が引き操作されることによって回転するように構成されている。長尺部材2が引き操作されると、巻取部材3が一方向に回転して、巻取部材3に巻回された長尺部材2が巻取部材3から繰り出される。本実施形態では、駆動装置1はさらに、巻取部材付勢部材S1を有しており、巻取部材3は、巻取部材付勢部材S1によって長尺部材2が巻き取られる方向に付勢されている。
【0028】
巻取部材3の構造は、長尺部材2の操作によって回転して、作動部材7に回転動作を伝達することができれば特に限定されない。本実施形態では、巻取部材3は、ケースCに対して回転可能に設けられたドラムであり、長尺部材2が巻回される巻回溝31と、巻取部材付勢部材S1を収容する収容部32とを有している。
【0029】
巻取部材付勢部材S1は、巻取部材3を長尺部材2が巻き取られる方向へと付勢する。巻取部材付勢部材S1は、長尺部材2が引き操作され、長尺部材2が巻取部材3から繰り出されるように巻取部材3が回転すると、巻取部材付勢部材S1に付勢力が蓄積される。長尺部材2の操作が解除されると、巻取部材付勢部材S1に蓄積された付勢力により巻取部材3が長尺部材2を巻き取る方向に回転し、長尺部材2が初期位置に戻る。
【0030】
巻取部材付勢部材S1の構造は、長尺部材2を巻き取る方向に巻取部材3が回転するように巻取部材3を付勢することができれば、特に限定されない。本実施形態では、
図2に示されるように、巻取部材付勢部材S1は渦巻きバネである。渦巻きバネである巻取部材付勢部材S1は、巻取部材3の一方の端面に設けられた凹部としての収容部32に収容され、一端がケースC側に取り付けられ、他端が巻取部材3に取り付けられている。なお、巻取部材付勢部材S1は、長尺部材2を巻き取る方向に巻取部材3が回転するように付勢することができれば、他のバネ等の付勢部材であってもよい。
【0031】
本実施形態では、駆動装置1は、後述するように、回転部材4と作動部材7とを含むクラッチ機構CLを有している。クラッチ機構CLは、長尺部材2の操作により回転する巻取部材3の回転力を作動対象側(本実施形態では、駆動ギヤ81)に伝達する。クラッチ機構CLの構造は、長尺部材2の操作により回転する巻取部材3の回転力を作動対象側に伝達することができれば、特に限定されない。本実施形態では、クラッチ機構CLは、長尺部材2が引き操作されたときに作動対象側に巻取部材3の一方向の回転力を伝達し、長尺部材2への操作が解除されて長尺部材2が巻取部材3に巻き取られるときには、作動対象側に巻取部材3の他方向の回転力が伝達されないように構成されている。具体的には、クラッチ機構CLは、
図2に示されるように、巻取部材3の回転と共に同一方向に回転する回転部材4と、回転部材4の回転に対して負荷を与える負荷部材6と、回転部材4と係合離脱可能な係合離脱部71が設けられた作動部材7と、回転部材4を巻取部材3側へと付勢する回転部材付勢部材S2とを備えている。
【0032】
詳細は後述するが、長尺部材2を操作することにより、巻取部材3が長尺部材2の繰り出し方向に回転する。巻取部材3が繰り出し方向に回転すると、回転部材4が巻取部材3に対して軸X方向に離間し、回転部材4が巻取部材3と同方向に回転する。回転部材4は、巻取部材3から軸X方向で離間することにより、作動部材7と係合して、作動部材7を回転部材4と同方向に回転させる。作動部材7が回転部材4と同方向に回転すると、作動部材7の回転によって、駆動ギヤ81が回転する。一方、長尺部材2の操作が解除されたときには、回転部材4が軸X方向で巻取部材3側に移動して、回転部材4と作動部材7との係合が解除され、巻取部材3の長尺部材2を巻き取る方向の回転力は、駆動ギヤ81に伝達されない。
【0033】
回転部材4は、巻取部材3の回転に応じて、巻取部材3と同一方向に回転するように構成されている。本実施形態では、回転部材4は、
図2に示されるように、巻取部材3と同軸上に配置され、ケースCに回転可能に設けられている。回転部材4は、後述するように、巻取部材3に対して所定の角度で相対回転可能であり、所定の角度で相対回転した後は、巻取部材3とともに回転するように構成されている。
【0034】
回転部材4は、巻取部材3に対して軸X方向に近接および離間するように取り付けられている。回転部材4は、
図2に示されるように、回転部材付勢部材S2によって、巻取部材3側に付勢されている。回転部材4は、長尺部材2が操作されていない初期状態において、回転部材付勢部材S2の付勢力によって、軸X方向で巻取部材3側に近接した近接位置に位置している(
図3参照)。回転部材4は、後述する移動機構5によって、
図3~
図6に示されるように、巻取部材3が回転部材4に対して相対回転しながら、回転部材付勢部材S2の付勢力に抗して巻取部材3に対して軸X方向に離間するように移動する。回転部材4が巻取部材3に対して軸X方向に離間するように移動すると、回転部材4は巻取部材3と共に回転し、作動部材7と係合して作動部材7を回転部材4と同方向に回転させる。なお、本実施形態では、回転部材4は、作動部材7の係合離脱部71と回転部材4の回転方向に係合可能な回転部材側係合離脱部41(
図3~
図6参照)を有し、作動部材7の係合離脱部71と、回転部材4の回転部材側係合離脱部41とが軸X周り方向に係合することによって、作動部材7が回転部材4と同方向に回転する。なお、巻取部材3と回転部材4の相対回転は、巻取部材3が回転する際に、回転部材4が巻取部材3の回転速度よりも低い速度で回転するものだけでなく、回転部材4が回転せずに巻取部材3のみが回転するものも含まれる。
【0035】
回転部材4は、図示する構造に限定されないが、本実施形態では、外周に、後述する負荷部材6の係合部61に回転部材4の回転方向に係合する被係合部42を有する円盤状の部材である。より具体的には、回転部材4は、外周に凹部と凸部とが交互に形成されており、被係合部42は、凹部と凸部との段差部として構成されている。なお、回転部材4の外周は、歯車の歯列として形成されていてもよい。また、回転部材4は、後述するように、回転部材4の巻取部材3側の端面から突出する突部PR(
図2参照)を有し、作動部材7側の端面には、回転部材側係合離脱部41(
図3~
図6参照)を有している。
【0036】
回転部材付勢部材S2は、本実施形態では、
図2に示されるように、互いに対向する作動部材7の端面と回転部材4の端面との間に設けられている。回転部材付勢部材S2は、回転部材4を巻取部材3側に付勢することができれば、設置される位置は特に限定されない。たとえば、回転部材付勢部材S2は、互いに対向する回転部材4の端面と巻取部材3の端面との間に設けられて、回転部材4を巻取部材3側に付勢してもよいし、それ以外の位置に設けられていてもよい。本実施形態では、回転部材付勢部材S2としてコイルバネが用いられているが、回転部材付勢部材S2の構造は特に限定されない。
【0037】
負荷部材6は、回転部材4の回転方向に対してその回転方向への回転を抑制する負荷を与える部材である。負荷部材6は、回転部材4に対して負荷を与えることにより、巻取部材3が回転を開始しだしたときに、回転部材4の回転を抑制する。負荷部材6は、本実施形態では、回転部材4に直接的に接続されているが、他部材を介して間接的に回転部材4に接続されていてもよい。また、負荷部材6は、本実施形態では、従動部材91に接続されているが、ケースC等、他の部位に接続されていてもよい。なお、負荷部材6の詳細については後述する。
【0038】
移動機構5は、巻取部材3を回転部材4に対して相対回転させることにより、回転部材4を巻取部材3に対して離間するように軸X方向に移動させる。具体的には、
図3~
図6に示されるように、負荷部材6によって回転部材4に回転方向の負荷を加えることにより、巻取部材3を回転部材4に対して相対回転させるとともに、巻取部材3と回転部材4との間の相対回転を、回転部材4の軸X方向の直線動作に変換して、回転部材4を軸X方向に移動させる。さらに、移動機構5は、回転部材4が所定の距離で軸X方向に移動した後は、巻取部材3と回転部材4とが共に軸X周りに回転することを許容する。
【0039】
移動機構5の構造は、巻取部材3を回転部材4に対して相対回転させることにより、回転部材4を巻取部材3に対して離間するように軸X方向に移動させることができれば、特に限定されない。本実施形態では、移動機構5は、巻取部材3と回転部材4との間に設けられ、回転部材4を巻取部材3に対して軸X方向に離間させる離間機構Sと、回転部材4と巻取部材3とが係合状態と相対移動許容状態とを遷移可能な遊嵌機構Lとを有している。
【0040】
離間機構Sは、回転部材4を作動部材7に係合させるために、回転部材4を巻取部材3に対して軸X方向に離間させる。離間機構Sは、
図3~
図6に示されるように、回転部材4を軸X方向において巻取部材3から相対的に離間する方向に案内する案内部Saと、案内部Saと接続して相対移動する接続部Sbとを有している。
【0041】
案内部Saは、巻取部材3の一方向D1への回転時に接続部Sbと接続されて、巻取部材3の一方向D1への回転時に案内部Saと接続部Sbとの間に作用する力を、回転部材4が巻取部材3から軸X方向に離間させる力に変換して回転部材4を巻取部材3から離間させる。
図3~
図6に示されるように、巻取部材3が回転して、接続部Sbが案内部Saに接触して接続した後、接続部Sbが案内部Saに沿って案内されながら、巻取部材3と回転部材4とが相対回転して、回転部材4を巻取部材3から離間させる。
【0042】
本実施形態では、離間機構Sの案内部Saは、回転部材4に設けられている。具体的には、案内部Saは、巻取部材3に向かって突出する突部PRに設けられている。なお、案内部Saは、巻取部材3に設けられていてもよい。たとえば、巻取部材3から回転部材4に向かって突出する、案内部を有する突部を設けてもよい。突部PRは、本実施形態では、
図3~
図6に示されるように、案内部Saを有する軸方向突部PR1と、後述する遊嵌機構開口部に嵌合する嵌合突部PR2とを有している。なお、軸方向突部PR1と嵌合突部PR2とは、本実施形態では、回転部材4の周方向で隣接して一体的に設けられているが、周方向で離間して別々に設けられていてもよい。
【0043】
本実施形態では、離間機構Sの案内部Saは、軸方向突部PR1の傾斜面Sa1である。軸方向突部PR1の傾斜面Sa1は、たとえば、巻取部材3が回転部材4よりも相対的に速く回転することによって巻取部材3が回転部材4に対して相対回転したときに、接続部Sbが傾斜面Sa1に案内されることにより、回転部材4が巻取部材3に対して軸X方向で離間するように傾斜していればよい。本実施形態では、回転部材4から突出する軸方向突部PR1に設けられた傾斜面Sa1は、長尺部材2の操作により一方向D1に回転する巻取部材3および回転部材4の回転方向(一方向D1)に進むに従って、回転部材4の端面からの高さ(軸X方向での端面からの離間距離)が高くなるように傾斜している(
図2参照)。なお、巻取部材3側に案内部(傾斜面)が設けられる場合、たとえば、傾斜面は、長尺部材2の操作により回転する巻取部材3および回転部材4の回転方向とは反対側に進むに従って、巻取部材3の端面からの高さ(軸X方向での端面からの離間距離)が高くなるように傾斜していればよい。
【0044】
なお、案内部Saの軸X方向における高さは、回転部材4と作動部材7とが係合できる軸X方向の移動が実現できるように構成されていればよい。
【0045】
接続部Sbは、案内部Saに接触して接続され、巻取部材3の一方向D1への回転時に接続部Sbが案内部Saに沿って相対移動することにより、回転部材4を巻取部材3から軸X方向で離間させて、回転部材4を作動部材7に近付ける。これにより、回転部材4は、作動部材7と係合して、回転部材4の回転力を作動部材7に伝達する。
【0046】
接続部Sbは、案内部Saが回転部材4に設けられている場合は、巻取部材3に設けられ、案内部Saが巻取部材3に設けられている場合は、回転部材4に設けられる。本実施形態では、接続部Sbは、巻取部材3に設けられている。本実施形態では、
図3~
図6に示されるように、案内部Saと接続する接続部Sbは、軸方向突部PR1が挿入される開口部33の縁部33aである。なお、接続部が回転部材4側に設けられる場合、接続部は、巻取部材3から突出する軸方向突部PR1が挿入される、回転部材4に設けられた開口部の縁部とすることができる。接続部Sbの構造は、案内部Saと接触して巻取部材3の一方向D1への回転により案内部Saに沿って接続部Sbが相対移動することができれば、特に限定されない。たとえば、巻取部材3および回転部材4の互いに対向する両方の端面に、互いに周方向で係合する突部を設け、いずれか一方の突部に案内部Saを設け、他方の突部に接続部Sbを設けてもよい。
【0047】
遊嵌機構Lは、巻取部材3と回転部材4とを係合状態と相対移動許容状態とで遷移可能にする機構である。相対移動許容状態は、
図3および
図4に示されるように、巻取部材3と回転部材4との間の回転速度の差によって、巻取部材3と回転部材4とが互いに対して相対回転する状態である。また、係合状態は、
図5および
図6に示されるように、巻取部材3と回転部材4とが回転方向で係合することにより、巻取部材3と回転部材4との間の相対回転が抑制され、巻取部材3と回転部材4とが連動して同方向に回転する状態である。
【0048】
遊嵌機構Lは、巻取部材3と回転部材4とが相対移動許容状態のときに、
図3および
図4に示されるように、離間機構Sにより接続部Sbが案内部Saに案内される。離間機構Sにより、回転部材4が巻取部材3に対して軸X方向に離間して、回転部材4が作動部材7に係合した際に、遊嵌機構Lにおいて、巻取部材3と回転部材4とが係合状態となる。これにより、回転部材4と係合した作動部材7は巻取部材3の回転に連動して一方向D1に回転することができる。本実施形態では、作動部材7を回転させることにより、伝動部8、作動軸Ax、昇降機構M等を介して、昇降部材Wの操作が行われる。
【0049】
遊嵌機構Lは、本実施形態では、軸X方向に突出する嵌合突部PR2と、嵌合突部PR2を空間内に収容する遊嵌機構開口部とを有している。遊嵌機構開口部は、本実施形態では、軸方向突部PR1が挿入される開口部33と一体的に形成されている。
【0050】
嵌合突部PR2は、
図3および
図4に示されるように、巻取部材3が所定の回転角度で回転する間、回転部材4と巻取部材3とが相対回転可能なように、遊嵌機構開口部内の空間で遊嵌状態とされる。また、嵌合突部PR2は、巻取部材3と回転部材4とが相対移動許容状態で、巻取部材3が所定の角度回転した後は、
図5および
図6に示されるように、遊嵌機構開口部の少なくとも一部と回転方向で係合する。嵌合突部PR2と遊嵌機構開口部の少なくとも一部が回転方向で係合すると、巻取部材3と回転部材4との間の相対回転が抑制され、巻取部材3と回転部材4とが連動して共に回転する。
【0051】
本実施形態では、嵌合突部PR2と遊嵌機構開口部内の内壁とは、係合状態において面接触して係合している(
図5および
図6参照)。しかし、嵌合突部PR2と遊嵌機構開口部内の係合部位とは、巻取部材3と回転部材4との間の相対回転が抑制されて連動して回転することができるように係合すればよい。
【0052】
本実施形態では、嵌合突部PR2は回転部材4に設けられ、遊嵌機構開口部は巻取部材3に設けられている。なお、嵌合突部PR2が巻取部材3に設けられ、遊嵌機構開口部が回転部材4に設けられていてもよい。嵌合突部PR2の形状は、遊嵌機構開口部の少なくとも一部と係合することができれば、特に限定されない。本実施形態では、嵌合突部PR2は、
図2に示されるように、略矩形板状の突部として設けられている。また、本実施形態では、嵌合突部PR2は軸方向突部PR1と一体的に突部PRに設けられている。突部PRは、回転部材4が回転部材付勢部材S2により巻取部材3側に押圧されることにより、巻取部材3に設けられた開口部33に収容されるように挿入される。なお、軸方向突部PR1および嵌合突部PR2は、本実施形態では、
図2に示されるように、周方向に離間してそれぞれ3つ設けられている。しかし、軸方向突部PR1および嵌合突部PR2の数は特に限定されず、それぞれ1つであってもよいし、複数であってもよい。
【0053】
遊嵌機構開口部の形状は、嵌合突部PR2を収容することができ、巻取部材3と回転部材4とを係合状態と相対移動許容状態とで遷移可能とすることができれば、特に限定されない。本実施形態では、遊嵌機構開口部は、軸方向突部PR1を収容する離間機構開口部と一体的に開口部33として形成されている。本実施形態では、開口部33は、巻取部材3の端面において、回転部材4側に開口した開口部である。開口部33は、巻取部材3の周方向に所定の長さおよび所定の軸方向深さを有している。開口部33は、本実施形態では、周方向で間隔をあけて複数設けられている。開口部33の数は特に限定されず、1つであっても複数であってもよい。また、嵌合突部PR2を空間内に収容する遊嵌機構開口部と、軸方向突部PR1とが挿入される開口部(離間機構開口部)とは、別々に設けられていてもよい。
【0054】
本実施形態では、
図3および
図4に示されるように、巻取部材3が長尺部材2の繰り出し操作によって一方(一方向D1)へ回転する際に、回転部材4は、遊嵌機構Lの相対移動許容状態において、負荷部材6による巻取部材3の、回転部材4に対する一方(第一方向D1)への相対回転によって、案内部Saが接続部Sbを案内する。これにより、回転部材4が巻取部材3から離間する方向に移動し、回転部材4が離間位置に移動したときに、遊嵌機構Lが係合状態となることで巻取部材3の一方への回転によって回転部材4が一方に回転し、回転部材4の一方への回転によって、作動部材7が回転する。具体的には、回転部材4が離間位置に移動したときに、係合離脱部71が回転部材4の回転部材側係合離脱部41と係合し、且つ遊嵌機構Lが係合状態となることで巻取部材3の相対回転が抑制される。したがって、長尺部材2の操作をすると、巻取部材3が回転するとともに、回転部材4および作動部材7が第一方向D1に回転して、作動部材7から伝達される回転力により、駆動装置1の作動対象の作動が可能となる。
【0055】
作動部材7は、回転部材4と係合したときに、回転部材4の回転力によって作動する。本実施形態では、
図2に示されるように、作動部材7は、ケースC内で回転可能に支持され、巻取部材3および回転部材4と同軸上に設けられている。作動部材7は、長尺部材2が操作されていない初期状態においては、回転部材4に対して軸X方向に離間して配置されている(
図3参照)。
【0056】
また、作動部材7は、離間機構Sにより軸X方向に移動した回転部材4と周方向に係合することにより、巻取部材3および回転部材4と共に回転する。作動部材7は、回転部材4と係合離脱可能な係合離脱部71を有している。係合離脱部71は、本実施形態では、
図2に示されるように、作動部材7の回転部材4に対向する端面に設けられている。係合離脱部71は、回転部材4の回転部材側係合離脱部41(
図3~
図6参照)と係合する。回転部材4が離間位置に位置するときに、係合離脱部71および回転部材側係合離脱部41が係合して、回転部材4の回転力が作動部材7に伝達される。係合離脱部71は、本実施形態では、回転部材4と対向する作動部材7の端面において周方向に離間して配置された複数の突起により構成されている。なお、係合離脱部71は、作動部材7と回転部材4とが近接したときに係合して、回転部材4の回転力を作動部材7に伝達することができれば、その構造は特に限定されない。
【0057】
作動部材7は、本実施形態では、作動部材7が回転したときに駆動ギヤ81を共に回転させることができるように、駆動ギヤ81と接続されている。これにより、本実施形態では、回転部材4と作動部材7とが係合して共に回転したときに駆動ギヤ81も共に回転する。また、回転部材4と作動部材7との間の係合が解除されたときには、駆動ギヤ81には回転力が伝達されず、駆動ギヤ81は回転しない。
【0058】
駆動ギヤ81は、作動部材7の回転によって回転する。駆動ギヤ81は、ケースC内に回転可能に支持されている。本実施形態では、駆動ギヤ81は、
図2および
図7に示されるように、作動部材7と同軸に配置され、作動部材7と軸X周り方向で係合し、作動部材7と共に回転するように構成されている。駆動ギヤ81は伝達ギヤ84に直接または間接的に接続され、伝達ギヤ84に回転力を伝達できるように構成されている。本実施形態では、駆動ギヤ81は、駆動ギヤ81の歯が伝達ギヤ84の歯に噛合して、駆動ギヤ81の回転力を直接伝達している。
【0059】
伝達ギヤ84は、駆動ギヤ81の回転を作動ギヤ82に向かって伝達する。本実施形態では、伝達ギヤ84は、切替部材9によって、
図7に示される、作動ギヤ82と接続された第一接続状態と、
図8に示される、中間ギヤ83と接続された第二接続状態との間を移動するように構成されている。本実施形態では、伝達ギヤ84は、駆動ギヤ81よりも小径に形成された1つのギヤである。しかし、伝達ギヤ84の大きさや数は、駆動ギヤ81の回転力を作動ギヤ82に向かって伝達することができれば、特に限定されない。
【0060】
中間ギヤ83は、作動ギヤ82に接続されており、伝達ギヤ84が中間ギヤ83と接続された第二接続状態(
図8参照)のときに、駆動ギヤ81の回転によって回転する伝達ギヤ84の回転力を作動ギヤ82に伝達する。伝達ギヤ84が作動ギヤ82に接続され、伝達ギヤ84の回転が中間ギヤ83を介さずに作動ギヤ82に伝達される第一接続状態(
図7参照)において、作動軸Axは、駆動ギヤ81、伝達ギヤ84、および作動ギヤ82を介して伝達された回転力によって一方向D1に回転する。一方、伝達ギヤ84が中間ギヤ83と接続され、伝達ギヤ84の回転が中間ギヤ83を介して作動ギヤ82に伝達される第二接続状態(
図8参照)においては、作動軸Axは、駆動ギヤ81、伝達ギヤ84、中間ギヤ83、および作動ギヤ82を介して回転し、作動軸Axの回転方向は一方向D1とは反対方向の他方向D2となる。なお、
図7および
図8においては、作動軸Axが示されていないが、作動軸Axは作動ギヤ82と同方向に回転するため、作動軸Axが一方向D1に回転するときの作動ギヤ82の一方向の回転を同一の参照符号D1で示し、作動軸Axが他方向D2に回転するときの作動ギヤ82の他方向の回転を同一の参照符号D2で示している。
【0061】
作動ギヤ82は、作動部材7の回転によって回転し、作動軸Axを回転させる。作動ギヤ82は、駆動ギヤ81の回転を伝達する伝達ギヤ84の回転力によって回転し、伝達ギヤ84の接続状態(第一接続状態または第二接続状態)に応じて、正回転(一方向D1への回転)または逆回転(他方向D2への回転)するように構成されている。作動ギヤ82は、作動軸Axに直接または間接的に接続されている。本実施形態では、作動ギヤ82が一方向D1へ回転した際に、作動軸Axを同方向となる一方向D1へと回転させる。一方、作動ギヤ82が他方向D2へ回転した際に、作動軸Axを同方向となる他方向D2へと回転させる。なお、作動ギヤ82と作動軸Axとは他部材を介して間接的に接続されて、互いに逆方向に回転してもよい。作動ギヤ82は、本実施形態では、中間ギヤ83と噛合している。
【0062】
作動軸Axは、所定の軸周りに回転して、駆動装置1の作動対象を作動させる。作動軸Axの作動対象は特に限定されない。本実施形態では、作動対象は昇降部材Wであり、上述したように、ケースCに設けられた開口部Ca(
図2参照)を介して、ケースCの外部へと延び、昇降機構Mに接続され、昇降部材Wを昇降させる。作動軸Axは、作動ギヤ82に直接または間接的に接続され、作動ギヤ82の回転によって回転する。本実施形態では、作動軸Axは、作動ギヤ82の中央に設けられた係合孔82a(
図7参照)に係合して、作動ギヤ82と同方向に回転する。
【0063】
切替部材9は、伝達ギヤ84を移動させて、伝達ギヤ84が作動ギヤ82と接続する第一接続状態(
図7参照)と、伝達ギヤ84が中間ギヤ83と接続する第二接続状態(
図8参照)との間で、伝達ギヤ84の接続状態を切り替える。本実施形態では、操作部材Tが切替部材9に接続し、
図7および
図8に示されるように、操作部材Tを操作することにより作動軸Axが一方向D1または他方向D2へ回転する。すなわち、操作部材Tが操作されることによって、操作部材Tに接続された切替部材9が動作して、伝達ギヤ84の接続状態が第一接続状態(
図7参照)と第二接続状態(
図8参照)との間で切り替えられる。これにより、
図7に示されるように、伝達ギヤ84と作動ギヤ82とが接続された第一接続状態において、長尺部材2が操作されると、巻取部材3、回転部材4および作動部材7を介して回転する駆動ギヤ81の回転が、伝達ギヤ84、作動ギヤ82を介して作動軸Axに伝達され、作動軸Axが一方向D1に回転する。一方、
図8に示されるように、伝達ギヤ84と中間ギヤ83とが接続された第二接続状態において、長尺部材2が操作されると、巻取部材3、回転部材4および作動部材7を介して回転する駆動ギヤ81の回転が、伝達ギヤ84、中間ギヤ83、作動ギヤ82を介して作動軸Axに伝達され、作動軸Axが他方向D2に回転する。このように、操作部材Tの操作によって、作動軸Axの回転方向を所望の回転方向に切り替えた後、長尺部材2を操作することによって、作動対象に所望の方向の操作を加えることができる。また、作動軸Axの回転方向の切り替え操作を行う操作部材Tは、長尺部材2と同軸上に設けられたアウターチューブである。この場合、別々の操作(回転方向の切り替え操作および作動軸Axを回転させるための操作)を行う2本の長尺部材が別々に設けられている場合に比べて、使用者は操作をしやすく、駆動装置1の操作する部分をコンパクトにすることができる。
【0064】
切替部材9の構造は、伝達ギヤ84の接続状態を上述した第一接続状態および第二接続状態との間で切り替えることができれば、特に限定されない。本実施形態では、切替部材9は、
図2、
図7および
図8に示されるように、カム部92とカム部92の移動を支持する支持部93とを有している。また、本実施形態では、切替部材9は、操作部材Tの一端Taが接続された従動部材91を有している。
【0065】
カム部92は、操作部材Tの操作によって、伝達ギヤ84を第一接続状態とする第一位置(
図7参照)と伝達ギヤ84を第二接続状態とする第二位置(
図8参照)へと移動する。カム部92は、本実施形態では、駆動ギヤ81の軸周りに回転するように構成され、伝達ギヤ84を回転可能に保持している。カム部92が第一位置に位置することにより、伝達ギヤ84の接続状態は、伝達ギヤ84と作動ギヤ82とが接続された状態である第一接続状態となる。一方、カム部92が第二位置に移動することにより、伝達ギヤ84の接続状態は、伝達ギヤ84と中間ギヤ83とが接続された状態である第二接続状態となる。本実施形態では、カム部92は、第一位置と第二位置のそれぞれにおいて、支持部93によって支持されて、伝達ギヤ84が作動ギヤ82または中間ギヤ83との噛合状態(第一接続状態または第二接続状態)を維持できるように構成されている。
【0066】
カム部92の構造は、カム部92が第一位置または第二位置へと移動して、伝達ギヤ84を第一接続状態または第二接続状態とすることができれば、特に限定されない。本実施形態では、カム部92は、駆動ギヤ81の軸心から駆動ギヤ81の径方向外側に向かって、駆動ギヤ81の外周を越えて延びている。本実施形態では、カム部92は、カム部92の回転軸の周辺の部位である軸部921と、軸部921から径方向外側に延びる延在部922とを有している。伝達ギヤ84は、延在部922のうち、駆動ギヤ81の外周を越えて延びている部分に回転可能に取り付けられている。延在部922は、少なくとも伝達ギヤ84の回転軸を越えて延び、軸部921側から径方向外側に延びる一対の側部922a、922bを有している。また、本実施形態では、
図2に示されるように、カム部92は、駆動ギヤ81および伝達ギヤ84を軸方向で挟持する2枚の板状カム部材92a、92bを有している。本実施形態では、カム部92は、カム部材付勢部材S3によって、軸周り方向で、支持部93が設けられている方向へ付勢されている。
【0067】
支持部93は、カム部92が第一位置または第二位置に位置することを支持する。本実施形態では、支持部93は、伝達ギヤ84が第一接続状態または第二接続状態となっている際に、伝達ギヤ84の第一接続状態または第二接続状態が解除されないように、カム部92を支持してカム部92の移動を規制する。本実施形態では、支持部93は、カム部92の第一位置および第二位置のそれぞれの位置において、カム部92を支持することができるように、カム部92の第一位置に対応する第一支持位置(
図7参照)と、カム部92の第二位置に対応する第二支持位置(
図8参照)との間で移動するように構成されている。
【0068】
本実施形態では、支持部93は、操作部材Tが操作されることによって、第一支持位置と第二支持位置との間で移動できるように構成されている。本実施形態では、切替部材9に操作部材Tの端部(一端Ta)が係止する係止部91aが設けられ、操作部材Tの操作によって、係止部91aを介して切替部材9が動作して、支持部93が第一支持位置と第二支持位置に移動する。これにより、支持部93は、カム部92を第一位置および第二位置のそれぞれの位置で支持する。この場合、伝達ギヤ84がカム部92によって移動する構造としても、伝達ギヤ84の第一接続状態または第二接続状態のそれぞれの接続状態で、作動ギヤ82または中間ギヤ83との噛合状態が解除されずに、駆動ギヤ81から作動ギヤ82までの回転力の伝達状態を維持することができる。
【0069】
なお、支持部93は、操作部材Tを操作することによって、第一支持位置と第二支持位置との間で移動することができれば、支持部93の作動方法は特に限定されない。本実施形態では、切替部材9がケースC内を移動し、操作部材Tの一端Taが係止される係止部91aを有する従動部材91を有し、支持部93が従動部材91の移動に応じて、軸周りに回転して、第一支持位置と第二支持位置との間で移動するように構成されている。支持部93は、カム部92の回転軸と平行な方向に延びる回転軸周りに回転するように構成され、回転軸部93aと、回転軸部93aから従動部材91の移動軌跡上に突出する突出部93bと、回転軸部93aから所定の長さで延設され、カム部92と当接する当接体93cとを備えている。一方、従動部材91は、操作部材Tの操作によって、ケースC内で移動可能(本実施形態では直線移動可能)に構成され、突出部93bと係合する係合体91bを有している。従動部材91は、支持部93の第一支持位置に対応する第一動作位置(または後退位置。
図7参照)と、支持部93の第二支持位置に対応する第二動作位置(または前進位置。
図8参照)との間を移動する。なお、本実施形態では、従動部材91は、従動部材付勢部材S4と、図示しない公知のハートカム機構とを有しており、操作部材Tの操作毎に、第一動作位置と第二動作位置との間を往復動作できるように構成されている。
【0070】
本実施形態では、支持部93は、カム部92に対して、駆動ギヤ81から伝達ギヤ84に対して負荷が加わり、伝達ギヤ84に加わった負荷によって伝達ギヤ84が接続されたカム部92が回転しようとする方向側に位置している。この場合、駆動ギヤ81と伝達ギヤ84とが噛み合って回転力が伝わる際に、作動ギヤ82と伝達ギヤ84との噛合状態が解除されることが抑制される。また、支持部93は、カム部92に対して、カム部材付勢部材S3による付勢力によってカム部92が回転する方向に位置している。
【0071】
本実施形態では、支持部93の当接体93cは、支持部93の回転軸部93aから離れる方向に延びる一対の側部LT1、LT2と、一対の側部LT1、LT2のそれぞれの先端側を互いに接続する先端部Tiとを有している。しかし、当接体93cの形状は特に限定されない。本実施形態では、支持部93の回転軸に垂直な方向の断面において略矩形形状を呈しており、先端部Tiは、互いに略平行な一対の側部LT1、LT2の先端側を結ぶ平坦面を形成している。また、一対の側部LT1、LT2も平坦面を有している。
【0072】
本実施形態では、
図7に示される第一位置にあるカム部92を支持部93によって支持する際に、支持部93の当接体93cの先端部Tiがカム部92の側部922aに当接して、カム部92を第一位置で保持している。このとき、駆動ギヤ81と伝達ギヤ84との噛合いによって、カム部92から支持部93に対して矢印ARで示される力が加わる。本実施形態では、支持部93の当接体93cがカム部92と当接する先端部Tiと、支持部93の回転軸(回転軸部93aにおける回転中心)とを結んだ線(
図7の一点鎖線参照)が、カム部92から支持部93に対して加わる力の方向ARに沿って延びている。そのため、カム部92から支持部93に対して方向ARの力が加わっても、支持部93が回転軸周りに回転することが抑制され、カム部92を第一位置で保持することが容易になる。
【0073】
また、カム部92が第二位置に移動したときには、
図8に示されるように、支持部93は回転軸周りに回転して、第二支持位置でカム部92を支持する。この状態において、支持部93は、移動規制部Rによって第二支持位置で保持される。移動規制部Rは、支持部93が第一支持位置から第二支持位置へ移動した際に支持部93と接触して支持部93の移動を規制する部位である。移動規制部Rの構造は特に限定されないが、本実施形態では、移動規制部Rは、ケースCに設けられた壁部として示されており、支持部93の当接体93cの側部LT1が当接するように構成されている。駆動ギヤ81と伝達ギヤ84との噛合いによって、カム部92から支持部93に対して矢印AR2で示される力が加わるが、移動規制部Rが設けられていることにより、カム部92の移動が規制され、カム部92を第二位置で保持することができる。支持部93の当接体93cは、伝達ギヤ84の第一接続状態を維持させるための第一位置でのカム部92との当接部と伝達ギヤ84の第二接続状態を維持させるための第二位置でのカム部92との当接部とを有している。
【0074】
図7に示される伝達ギヤ84の第一接続状態において、第一位置にあるカム部92は、第一支持位置にある支持部93によって支持されて、伝達ギヤ84の位置が保持されて、駆動ギヤ81と伝達ギヤ84との間の噛合状態、伝達ギヤ84と作動ギヤ82との間の噛合状態が確保されている。カム部92には、駆動ギヤ81と伝達ギヤ84との間の回転力の伝達時に、駆動ギヤ81から矢印ARで示される時計方向の力が加わる。また、カム部92には、カム部材付勢部材S3の付勢力によっても、時計方向の力が加わる。
【0075】
本実施形態では、
図7に示されるように、支持部93がカム部92を回転させようとする力を支持することによって、カム部92を第一位置に保持して、カム部92に接続された伝達ギヤ84の、駆動ギヤ81との噛合状態、および、作動ギヤ82との噛合状態を維持することができる。
【0076】
作動対象の作動方向を、例えば
図7に示された状態から
図8に示される状態へと切り替える場合は、操作部材Tを操作することにより、伝達ギヤ84を中間ギヤ83と接続させる第二接続状態へと切り替える。
【0077】
具体的には、
図7に示される状態から、
図2に示される操作部材操作部P2を操作して、操作部材Tを引き操作する。操作部材Tが引き操作されると、操作部材Tの一端Taが係止部91aにおいて係止された従動部材91が、
図7において下方に移動する。ハートカム機構によって
図7に示す第一動作位置に保持されていた従動部材91は、操作部材Tの引き操作によって、
図8に示す第二動作位置に移動する。従動部材91が第二動作位置に移動すると、従動部材91の係合体91bが支持部93の突出部93bと係合するとともに、回転軸部93a周りに支持部93を、
図7において反時計回りに回転させる(
図8参照)。支持部93が第二支持位置に向かって回転すると、カム部材付勢部材S3によって付勢されたカム部92は、支持部93の回転に合わせて
図7において時計回りに回転して、第二位置へと移動する(
図8参照)。第二支持位置へ移動した支持部93と、カム部92とは、支持部93が移動規制部Rと当接して停止することによって、
図8に示される位置で保持される。
【0078】
カム部92が第二位置へと移動すると、カム部92に接続された伝達ギヤ84は、作動ギヤ82との噛合状態が解除されて、
図8に示されるように、中間ギヤ83と噛み合う。これにより、伝達ギヤ84の接続状態が切り替えられる。
【0079】
図8の第二接続状態において、長尺部材2が操作されると、第一接続状態のときと同様に、巻取部材3、回転部材4、作動部材7、および、作動部材7に接続された駆動ギヤ81が同方向(
図8においては時計方向)に回転する。
【0080】
駆動ギヤ81が回転すると、駆動ギヤ81と噛み合う伝達ギヤ84、伝達ギヤ84と噛み合う中間ギヤ83、および、作動ギヤ82が回転する。
図7の第一接続状態においては、作動ギヤ82は一方向D1に回転するが、
図8の第二接続状態においては、駆動ギヤ81から作動ギヤ82までに、中間ギヤ83を介して回転力が伝達されるので、第一接続状態のときの作動ギヤ82の回転方向とは逆方向の他方向D2に回転する。したがって、作動軸Axに接続された作動対象を、第一接続状態のときとは逆方向に作動させることができる。
【0081】
次に、負荷部材6の詳細について説明する。負荷部材6は、上述したように、回転部材4の回転を抑制する負荷を与える部材であり、具体的には、巻取部材3が回転を開始しだしたときに、回転部材4の回転を抑制する。本実施形態では、
図9~
図11に示されるように、負荷部材6は、回転部材4の外周と係合して、回転部材4の回転を抑制する係合部61を有している。
【0082】
係合部61は、
図3、
図4および
図9に示されるように、回転部材4が近接位置にあるときに回転部材4の外周と係合する。具体的には、係合部61は、回転部材4が近接位置にある状態で、回転部材4を離間位置に向かって移動させる際に巻取部材3が回転する方向と同じ方向(一方向D1)の、回転部材4の回転を抑制するように、回転部材4の外周に設けられた被係合部42と係合する。これにより、回転部材4が近接位置にある状態で、回転部材4の回転が抑制され、移動機構5(離間機構S)によって、回転部材4は巻取部材3に対して離間するように軸X方向に移動することが可能となる。
【0083】
また、係合部61は、
図5、
図6および
図10に示されるように、回転部材4が離間位置にあるときに、回転部材4の外周と非係合状態となるように設けられている。本実施形態では、回転部材4が近接位置から離間位置へ向かって軸X方向に所定の距離移動した後は、係合部61が回転部材4の外周と非係合状態となり、回転部材4の回転によって、容易に作動部材7を作動させることができる。
【0084】
係合部61の軸X方向の幅は、近接位置にある回転部材4と係合し、離間位置にある回転部材4と非係合状態となるように構成されていれば、特に限定されない。本実施形態では、係合部61は、近接位置にある回転部材4の回転軌跡上に位置し、離間位置にある回転部材4の回転軌跡からは外れるような、軸X方向の所定の幅を有している。本実施形態では、係合部61の軸X方向の幅は、回転部材4の軸X方向の厚さと略同等であるが、係合部61の幅は、回転部材4の軸X方向の厚さより小さくてもよいし、大きくてもよい。なお、係合部61は、本実施形態では、回転部材4の外周に形成された凹部に入り込むことが可能なロッド状の部分を有しているが、係合部61の形状は、回転部材4が近接位置にあるときに回転部材4の外周と係合して回転部材4の回転を抑制することができれば、特に限定されない。
【0085】
係合部61は、本実施形態では、
図9~
図11に示されるように、回転部材4の外周の径方向外側から回転部材4の外周に向かって軸Xに略垂直な方向に向かって延びている。係合部61は、例えば、近接位置にある回転部材4の外周に係合するように、巻取部材3側から軸Xに略平行に延びていてもよい(例えば、
図12参照)。
【0086】
本実施形態では、長尺部材2と、巻取部材3と、回転部材4と、移動機構5と、負荷部材6と、作動部材7とを備え、負荷部材6が、回転部材4の外周と係合して回転部材4の回転を抑制する係合部61を有している。本実施形態の駆動装置1において、長尺部材2が操作され、巻取部材3が軸X(
図2参照)周りに回転すると、巻取部材3は、負荷部材6および移動機構5(
図3~
図6参照)によって、近接位置にある回転部材4に対して相対回転して、回転部材4が離間位置に移動する。回転部材4が離間位置に移動すると、回転部材4の回転によって作動部材7を作動させることができる。このように、本実施形態では、駆動装置1は、構成要素を機械的に連動させることにより、回転部材4によって作動部材7を作動させることができるため、電磁石など電力を用いて構成要素を連動させる機構(例えば電動によるクラッチ機構)が不要となる。したがって、駆動装置1の消費電力を小さくすることができ、駆動装置1を軽量化することができる。
【0087】
また、本実施形態では、係合部61は、回転部材4が近接位置にあるときには、回転部材4の外周と係合し、回転部材4が離間位置にあるときには、回転部材4の外周と非係合状態となる。したがって、回転部材4が離間位置にあるときには、回転部材4は、負荷部材6から回転方向の抵抗を受けることがなく、駆動装置1による作動対象を動作させる際の抵抗を減らし、駆動装置1の操作性を向上させることができる。また、作動部材7によって作動対象(例えば昇降部材W)を動作させるためには、長尺部材2を操作し続けて、巻取部材3および回転部材4を所定量回転させて、作動部材7を作動させる必要がある。通常、回転部材4を近接位置から離間位置まで移動させるときの長尺部材2の操作量に比べて、回転部材4が離間位置に移動した後、作動対象を操作し続けるときの長尺部材2の操作量の方が長い。このように、長尺部材2を長く操作する必要のある状況において、回転部材4に負荷部材6からの負荷が加わらないため、作動対象の操作が非常に快適となる。
【0088】
負荷部材6の形状および構造は、回転部材4の外周と係合することができ、回転部材4が離間位置に移動したときに、回転部材4の外周と非係合状態となればよく、特に限定されない。本実施形態では、
図9~
図11に示されるように、負荷部材6は、係合部61を回転軸X2周りに軸支する軸支部62を有し、回転部材4が近接位置にあるときに、係合部61は、回転部材4の一方向D1の回転を規制し、回転部材4が他方向D2に回転する際には、回転軸X2周りに回転して、回転部材4の他方向D2の回転を阻害しないように構成されている。この場合、回転部材4は、近接位置において、一方向D1への回転は規制されるが、他方向D2へは回転可能となる。したがって、長尺部材2によって巻取部材3を一方向D1に回転させる際には、回転部材4の一方向D1への回転を規制して、回転部材4を離間位置に移動させて作動部材7を作動させることができる。一方、作動部材7の作動が完了して回転部材4が離間位置から近接位置に戻ったときに、回転部材4は他方向D2に回転することができる。したがって、例えば、巻取部材3が他方向D2に回転して、引き出された長尺部材2が巻取部材3に巻き取られるときに、回転部材4および巻取部材3の他方向D2への回転が阻害されず、長尺部材2の巻き取りが容易となる。本実施形態では、巻取部材3は、巻取部材付勢部材S1によって、長尺部材2を巻き取る方向である他方向D2に付勢されている。長尺部材2への操作が解除され、巻取部材3が巻取部材付勢部材S1の付勢力によって他方向D2に回転するときに、回転部材4は、係合部61によって他方向D2への回転が阻害されない。したがって、回転部材4は、巻取部材3とともに他方向D2に回転することができ、長尺部材2の巻き取り動作を円滑に行うことができる。
【0089】
軸支部62は、本実施形態では、
図9~
図11に示されるように、軸Xと略平行に延びる回転軸X2周りに係合部61が回転できるように、係合部61を支持している。なお、軸支部62の回転軸X2の延在方向は、回転部材4の一方向D1の回転を規制し、他方向D2の回転を阻害しないように構成されていれば、例えば
図12または
図13に示されるように、軸Xに対して略垂直に設けられていてもよい。なお、
図12に示される変形例は、係合部61が軸支部62から軸Xに略平行に延びている以外は、
図9~
図11に示される係合部61と基本的な動作は同じである。また、
図13に示される変形例は、回転部材4の一方向D1の回転の規制は、
図9~
図11に示される係合部61と同様であるが、回転部材4の外周および/または係合部61は、回転部材4が他方向D2に回転する際に相手方部材に当接する部位にテーパー部などが設けられることによって、回転部材4の他方向D2への回転時に、回転部材4の回転軌跡上から係合部61が外れて(
図13の二点鎖線参照)揺動するように構成されている。
【0090】
また、本実施形態では、係合部61は、軸支部62に対して揺動可能に設けられているとともに、
図9~
図11に示されるように、係合部付勢部材S5によって、回転部材4の被係合部42と係合可能な位置へと移動するように付勢されている。また、係合部付勢部材S5によって付勢された係合部61が回転部材4と係合可能な位置で保持されるように、本実施形態の駆動装置1は、係合部61の揺動方向で一方の方向の移動を規制するストッパ部STを有している。駆動装置1が(負荷部材6が)係合部付勢部材S5およびストッパ部STを有している場合、係合部61が回転軸X2周りに揺動しても、係合部付勢部材S5により係合部61が回転部材4と係合可能な位置へと戻り、ストッパ部STにより所定の位置で停止する。したがって、係合部61と回転部材4との間の係合を確実にすることができる。
【0091】
なお、ストッパ部STは、本実施形態では、従動部材91に設けられた壁部であるが、係合部61の揺動方向で一方の方向の移動を規制することができれば、ケースCなどに設けられていてもよい。係合部付勢部材S5は、本実施形態では、一端が軸支部62、他端が従動部材91に取り付けられたトーションバネである。係合部付勢部材S5の種類は、係合部61を回転部材4の被係合部42と係合可能な位置へと付勢することができれば、特に限定されない。なお、本実施形態では、係合部付勢部材S5は、巻取部材3を回転部材4に対して相対回転させるための負荷には寄与していない。そのため、係合部付勢部材S5に大きな付勢力は必要なく、係合部付勢部材S5は、係合部61を回転部材4の被係合部42と係合可能な位置へと移動させる最小限の付勢力を有していればよい。したがって、上述したように、巻取部材3および回転部材4が巻取部材付勢部材S1の付勢力によって他方向D2に回転して、長尺部材2の巻き取り動作を行う際に、巻取部材3および回転部材4に加わる負荷を小さくすることができ、円滑に長尺部材2の巻き取り動作を行うことができる。
【0092】
つぎに、本実施形態の駆動装置1の負荷部材6の作用について、
図3~
図6および
図9~
図11を用いて説明する。
【0093】
昇降部材W等の作動対象を操作する場合、
図9に示される状態から、
図9における下方へと長尺部材2を引き操作して、巻取部材3を軸X周りで一方向D1に回転させる。巻取部材3の回転によって、巻取部材3と接続された回転部材4も一方向D1に回転しようとするが、
図3および
図9に示されるように、負荷部材6の係合部61と回転部材4の被係合部42とが軸X周り方向で係合しており、回転部材4の一方向D1への回転が抑制されている。
【0094】
回転部材4の回転が抑制された状態で、巻取部材3が回転すると、上述したように、離間機構Sによって、回転部材4は回転部材付勢部材S2の付勢力に抗して、離間位置へ向かって移動する(
図4および
図5参照)。回転部材4が離間位置に移動すると、
図5および
図6に示されるように、回転部材4の回転部材側係合離脱部41と、作動部材7の係合離脱部71とが軸X周り方向で係合して、回転部材4の回転によって作動部材7が回転する。係合部61は、回転部材4が離間位置にあるときに、
図5、
図6および
図10に示されるように、回転部材4の外周と非係合状態となって、回転部材4の回転を阻害しない。したがって、例えば、回転部材4の近接位置から離間位置まで回転部材と負荷部材とが係合し続ける構造を有する駆動装置と比較して、本実施形態の駆動装置1は、作動部材7を回転させるときの抵抗が大きく低減する。よって、長尺部材2を軽い操作力で操作することができ、駆動装置1の操作性が向上する。
【0095】
作動対象の操作が完了し、長尺部材2への操作を解除すると、回転部材4は、回転部材付勢部材S2によって、
図11に示されるように、作動部材7から離れるように巻取部材3側となる近接位置へと移動する。本実施形態では、巻取部材3は、巻取部材付勢部材S1によって長尺部材2を巻取部材3に巻き取る方向に付勢され、回転部材4は、突部PRによって巻取部材3と軸X周り方向に係合しているので、回転部材4は、巻取部材3の回転とともに、作動部材7の作動時とは反対方向となる他方向D2に回転しようとする。このとき、係合部61は、軸支部62によって回転軸X2周りに揺動可能であるので、回転部材4の他方向D2への回転を阻害しない。したがって、巻取部材3および回転部材4が他方向D2に回転して、引き出された長尺部材2を巻取部材3に巻き取るときに、回転部材4と回転方向で係合する巻取部材3の回転も阻害されない。具体的には、係合部61は、係合部付勢部材S5によって、回転部材4の外周と係合する方向に付勢されているが、回転部材4が他方向D2へ回転した際には、
図11に示されるように、回転部材4の外周の軌跡から外れるように、係合部付勢部材S5の付勢力に抗して軸支部62に対して揺動する。回転部材4の他方向D2への回転は阻害されない。したがって、長尺部材2への操作が解除されたときに、巻取部材3が巻取部材付勢部材S1の付勢力によって他方向D2に回転するとともに、回転部材4も他方向D2に回転することができ、長尺部材2の巻き取り動作を円滑に行うことができる。
【符号の説明】
【0096】
1 駆動装置
2 長尺部材
3 巻取部材
31 巻回溝
32 収容部
33 開口部
33a 開口部の縁部
4 回転部材
41 回転部材側係合離脱部
42 被係合部
5 移動機構
6 負荷部材
61 係合部
62 軸支部
7 作動部材
71 係合離脱部
8 伝動部
81 駆動ギヤ
82 作動ギヤ
82a 係合孔
83 中間ギヤ
84 伝達ギヤ
9 切替部材
91 従動部材
91a 係止部
91b 係合体
92 カム部
92a、92b 板状カム部材
921 軸部
922 延在部
922a、922b 側部
93 支持部
93a 回転軸部
93b 突出部
93c 当接体
A 昇降部材操作装置
Ax 作動軸
C ケース
Ca ケースに設けられた開口部
C1 第1ケース部材
C2 第2ケース部材
CL クラッチ機構
D1 一方向
D2 他方向
F 基体
L 遊嵌機構
LT1、LT2 側部
M 昇降機構
M1 昇降作動部材
M11 作動アーム
M12 連結部
M13 軸部
M2 伝達機構
M21 第一伝達歯車
M22 第二伝達歯車
P 長尺部材操作部
P2 操作部材操作部(アウターチューブ操作部)
PR 突部
PR1 軸方向突部
PR2 嵌合突部
R 移動規制部
S 離間機構
Sa 案内部
Sa1 傾斜面
Sb 接続部
S1 巻取部材付勢部材
S2 回転部材付勢部材
S3 カム部材付勢部材
S4 従動部材付勢部材
S5 係合部付勢部材
ST ストッパ部
T 操作部材(アウターチューブ)
Ta 操作部材(アウターチューブ)の一端
Tb 操作部材(アウターチューブ)の他端
Ti 先端部
W 昇降部材
X 巻取部材の軸
X2 回転軸