(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-20
(45)【発行日】2023-09-28
(54)【発明の名称】頭部用コイル装置およびそれを用いた磁気共鳴撮像装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20230921BHJP
【FI】
A61B5/055 355
A61B5/055 350
(21)【出願番号】P 2020037856
(22)【出願日】2020-03-05
【審査請求日】2023-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】弁理士法人山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩澤 浩二郎
(72)【発明者】
【氏名】西山 高徳
(72)【発明者】
【氏名】加藤 和之
(72)【発明者】
【氏名】羽原 秀太
(72)【発明者】
【氏名】大竹 陽介
(72)【発明者】
【氏名】山下 聡
(72)【発明者】
【氏名】白猪 亨
【審査官】後藤 昌夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-244410(JP,A)
【文献】特開2015-000098(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0065852(US,A1)
【文献】特開2019-216879(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0076358(US,A1)
【文献】特開2008-035987(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルエレメントを有するコイルユニットを少なくとも1つ以上と、当該コイルユニットを被検体の頭部に装着させる機構を備えたコイル支持部とを備え、
前記コイル支持部は、ベース部と、当該ベース部に接続され弾性部材を有する支持体と、前記支持体と前記コイルユニットの少なくとも1つを接続するホルダーと、を備え、
前記ホルダーは、
中央の一か所で前記支持体に対し摺動自在に支持され、両端部で、前記ベースに固定された一対のガイドに対し弾発的に接触しており、前記ベース部に対して直接的または間接的に少なくとも3か所の接触点を有することを特徴とする頭部用コイル装置。
【請求項2】
請求項1に記載の頭部用コイル装置であって、
前記ホルダーは、前記コイルユニットの形状に沿って湾曲した第1ホルダー部及び当該第1ホルダー部と交差する方向に湾曲した第2ホルダー部を有し、
前記支持体は、前記第2ホルダー部を湾曲状に摺動可能に支持する湾曲部を有することを特徴とする頭部用コイル装置。
【請求項3】
請求項
2に記載の頭部用コイル装置であって、
前記第2ホルダー部と前記湾曲部との間に、前記湾曲部に対する前記第2ホルダー部の摺動をロック及びロック解除するロック機構部を備えたことを特徴とする頭部用コイル装置。
【請求項4】
請求項1に記載の頭部用コイル装置であって、
前記コイルユニットは、頭部の前頭部を覆う第1のコイルユニットと、頭部の少なくとも一方の側面を覆う第2のコイルユニットとを含むことを特徴とする頭部用コイル装置。
【請求項5】
請求項
4に記載の頭部用コイル装置であって、
前記ベース部は、被検体の頭部を載せる頭受け部と、前記第2のコイルユニットを固定した側面パネル部とを有し、
前記側面パネル部は、前記頭受け部に対し支持軸を介して固定され、前記支持軸を中心に回動可能であることを特徴とする頭部用コイル装置。
【請求項6】
コイルエレメントを有するコイルユニットを少なくとも1つ以上と、当該コイルユニットを被検体の頭部に装着させる機構を備えたコイル支持部とを備え、
前記コイル支持部は、ベース部と、当該ベース部に接続され弾性部材を有する支持体と、前記支持体と前記コイルユニットの少なくとも1つを接続するホルダーと、を備え、
前記ホルダーは前記ベース部に対して直接的または間接的に少なくとも3か所の接触点を有し、
前記コイルユニットは、頭部の前頭部を覆う第1のコイルユニットと、頭部の少なくとも一方の側面を覆う第2のコイルユニットとを含み、
前記ベース部は、被検体の頭部を載せる頭受け部と、前記第2のコイルユニットを固定した側面パネル部とを有し、
前記側面パネル部は、前記頭受け部に対し支持軸を介して固定され、前記支持軸を中心に回動可能であることを特徴とする頭部用コイル装置。
【請求項7】
請求項6に記載の頭部用コイル装置であって、
前記側面パネル部は、前記ホルダーの摺動に連動して開閉することを特徴とする頭部用コイル装置。
【請求項8】
請求項6に記載の頭部用コイル装置であって、
頭部の左右方向をX方向とし、頭部の上下方向をZ方向とするとき、前記支持軸は、前記ベース部の上面に対し、X方向またはZ方向の少なくとも一方に傾斜を持ち、前記側面パネル部を頭部から離反する方向に付勢していることを特徴とする頭部用コイル装置。
【請求項9】
請求項7に記載の頭部用コイル装置であって、
前記ホルダーは、先端が前記側面パネル部に接触する位置にあり、前記ホルダーの摺動に伴い前記先端が移動し、前記側面パネル部を頭部に密着する方向に回動させることを特徴とする頭部用コイル装置。
【請求項10】
請求項
4に記載の頭部用コイル装置であって、
前記第1のコイルユニットと、前記第2のコイルユニットを含む側面パネル部とが、一部可撓性を備えていることを特徴とする頭部用コイル装置。
【請求項11】
請求項
4に記載の頭部用コイル装置であって、
前記コイルユニットは、被検体の後部を覆う第3のコイルユニットをさらに含むことを特徴とする頭部用コイル装置。
【請求項12】
請求項1に記載の頭部用コイル装置であって、
前記コイルユニットを被検体の頭部に密着させるための固定ベルトをさらに備え、
前記固定ベルトは一端が前記ベース部に固定され、前記ホルダーには前記固定ベルトを通すための切欠け部又は穴が形成されていることを特徴とする頭部用コイル装置。
【請求項13】
請求項1に記載の頭部用コイル装置であって、
前記ホルダーは、前記支持体に支持されている側を後方、その反対側を前方とするとき、前方に鏡面が形成された鏡が、前記ホルダーに対し回動可能に取り付けられていることを特徴とする頭部用コイル装置。
【請求項14】
請求項13に記載の頭部用コイル装置であって、
前記支持体は、前記ベース部に固定された端部と反対の端部の端面が、前記支持体の軸方向に対し所定の角度を有し、前記ホルダーの摺動範囲の下限の位置において、前記端部の端面と前記鏡とが当接しており、前記ホルダーに対する前記鏡の角度を規定することを特徴とする頭部用コイル装置。
【請求項15】
請求項1に記載の頭部用コイル装置であって、
前記コイルユニットは、導体からなるコイルループ部と当該コイルループ部を覆うカバー部材とを有し、前記カバー部材は、前記コイルループ部の導体が存在しない領域に、前記コイルユニットを被検体に装着したときに被検体の視野を確保するための光透過部が設けられていることを特徴とする頭部用コイル装置。
【請求項16】
請求項1に記載の頭部用コイル装置であって、
前記支持体は、前記ベース部に固定された固定部と、当該固定部と連続して形成され、湾曲状の形状を有する湾曲部と、を有し、前記固定部は機械的な弾性を持つ構造を備えたことを特徴とする頭部用コイル装置。
【請求項17】
請求項16に記載の頭部用コイル装置であって、
前記固定部は、板バネ、または、断面波型形状或いは螺旋形状を有することを特徴とする頭部用コイル装置。
【請求項18】
請求項1に記載の頭部用コイル装置であって、
前記コイルユニットは、複数のサブコイルを並べたアレイコイルと、サブコイル間の磁気結合防止する調整要素とを含み、前記サブコイル間の距離が可変であることを特徴とする頭部用コイル装置。
【請求項19】
被検体に高周波磁場を印加する送信コイルと、前記被検体から生じた核磁気共鳴信号を検出する受信コイルと、前記核磁気共鳴信号を用いて前記被検体の画像を再構成する信号処理部と、を備えた磁気共鳴撮像装置であって、
前記受信コイルとして、請求項1ないし18のいずれか一項に記載のコイル装置を用いたことを特徴とする磁気共鳴撮像装置。
【請求項20】
被検体に高周波磁場を印加する送信コイルと、前記被検体から生じた核磁気共鳴信号を検出する受信コイルと、前記核磁気共鳴信号を用いて前記被検体の画像を再構成する信号処理部と、を備えた磁気共鳴撮像装置であって、
前記送信コイルとして、請求項1ないし18のいずれか一項に記載のコイル装置を用いたことを特徴とする磁気共鳴撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴撮像装置(以下、MRI装置という)の受信コイルや送信コイルとして用いられるコイル装置に係り、特に被検体への装着性を改良した頭部用コイル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
MRI装置は、検査対象を横切る任意の断面内の核スピンに磁気共鳴を起こさせ、発生する核磁気共鳴信号からその断面内における断層像を得る医用画像診断装置である。静磁場方向によって、水平磁場型、垂直磁場型のMRI装置などと呼ばれている。
【0003】
MRI撮像では、静磁場中におかれた被検体に傾斜磁場を印加しながら高周波コイルにより高周波磁場を照射する。高周波磁場の照射により被検体内の核スピン、例えば、水素原子の核スピンが励起され、励起された核スピンが平衡状態に戻るときに核磁気共鳴信号として円偏波磁場が発生する。この信号を高周波コイルで検出し、信号処理を施して生体内の水素原子核分布を画像化する。
【0004】
高周波コイルは、その形状によってボリュームコイルと表面コイルの2つに大きく大別される。一般的に、高周波磁場を照射する高周波コイル(送信コイル)には広い範囲を均一に照射できるボリュームコイルが使われる。一方、信号を検出する高周波コイル(受信コイル)には被検体の近傍に配置できる表面コイルが使われる。なぜなら、高周波コイルと被検体との距離が小さいほど信号取得効率が高く、MRI画像の高画質化が可能となるからである。一般的に製品化されている頭部向けの受信コイルは、耐久性を重視してサイズが固定のコイル筐体を有する。一方、サイズを変化可能な機構を備えた頭部向けの受信コイルも検討されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
サイズが固定の一般的な頭部向けの受信コイルは、人口カバー率を上げるために大きな被検体に合わせたサイズで設計される。そのため、多くの被検体にとってはコイルと被検体の距離が大きくなり信号取得効率が低下してしまうという課題がある。また、体動によるMRI画像の画質低下を防止するために行われる被検体頭部の固定作業に時間がかかるという課題もある。一般的に、固定作業ではコイル筐体と被検体の間の空間にスポンジを詰めるという作業が行われる。スポンジを詰める作業では、技師が頭部の大きさに応じてスポンジの数や形を変更することで十分な固定が得られるようにしている。この作業時間を短縮できない主な要因は、コイル筐体と被検体との間の狭い空間で固定作業を行う必要があるためと考えられる。つまり、被検体に対して固定具(ここではスポンジ)、受信コイルの順で空間的に配置するような構造であることが、この固定作業を簡略化できない本質的な課題であると考えられる。
【0007】
特許文献1では、複数のコイル受入れユニットがそれぞれの支持部に支持されたサイズ可変型の頭部向け受信コイルが開示されている。しかしながら、複数の支持部に対して、それぞれのコイルの位置移動と固定の作業に手間がかかり、操作性が低下するという課題がある。また、コイルを外すときには、複数の支持部に対してそれぞれ固定を解除して開位置に移動する作業が必要となり、すみやかに被検体を解放することができないという課題がある。これは特に、被検体の嘔吐時やその他緊急の対応時に大きな課題となる。さらに、コイル受入れユニットは、支持部との接触部一か所でコイルを支持する構造であるため耐久性が低下するという課題がある。十分な耐久性にするために構造を大きくすると操作性がさらに低下してしまう。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、操作性や耐久性を低下させることなく被検体の頭部サイズによらず高画質なMRI画像を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明のコイル装置は、コイルを略T字状の可撓性のあるホルダーで保持し、ホルダーを支持する支持体は、ホルダーのT字の3つの端部のうち一か所をスライド可能に支持するとともに、残りの2か所を移動の自由度を保ちながら支承する支持構造とする。
【0010】
すなわち本発明のコイル装置は、MRI装置に用いる頭部用コイル装置であって、コイルエレメントを有するコイルユニットを少なくとも1つ以上と、当該コイルユニットを被検体の頭部に装着させる機構を備えたコイル支持部とを備え、前記コイル支持部は、ベース部と、当該ベース部に接続され弾性部材を有する支持体と、前記支持体と前記コイルユニットの少なくとも1つを接続するホルダーと、を備え、前記ホルダーは前記ベース部に対して直接的または間接的に少なくとも3か所の接触点を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、被検体に装着されるコイルを支持するホルダーを、ベース部の3点で支承する構造としたことにより、簡単な構造で且つ安定して重いコイルを支持することができるコイル装置が提供される。またベースに被検体の頭部を載せて、ホルダーを支持体の湾曲形状に沿って摺動(スライド)させるという簡単な操作で、ホルダーに固定されたコイルユニットを被検体頭部に装着させることができる。これによりコイル装着時の手間と負担を軽減し、MRI検査の効率を向上できるとともに、頭部とコイルとを密着させることができるので受信あるいは送信感度を上げてMRIの画質の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】(A)、(B)は、それぞれ、本発明が適用されるMRI装置の外観を示す図。
【
図3】MRI装置のRF送信コイル及びRF受信コイルとの関係を示す図。
【
図4】第1実施形態のコイル装置のコイルユニットの概要を示す図で、(A)は正面側から見た図、(B)は側面側から見た図である。
【
図5】第1実施形態のコイルユニットの回路の概略を示す図で、(A)~(C)は、それぞれ、アレイコイル、アレイコイルを構成するサブコイル、及び送受磁気結合防止回路を示す図である。
【
図6】第1実施形態のコイル装置を側面から見た図。
【
図7】第1実施形態のコイル装置のホルダーと支持体との関係を示す図で、(A)は側面から見た図、(B)は正面側から見た図である。
【
図8】ホルダーと支持体先端とのロック機構部を示す図で、(A)はロック状態、(B)はロック解除状態を示す。
【
図9】側部コイルの支持機構を説明する概略図で、(A)は側面から見た図、(B)は正面側から見た図である。
【
図10】側部コイルが開いた状態(コイル装置の退避状態)を正面側から見た図。
【
図11】ホルダーの動きとサイドパネルの動きとの関係を説明する図で、(A)はコイルが退避位置にある状態を示す図、(B)はコイル装着状態を示す図である。
【
図13】鏡を取り付けたホルダーの実施形態を示す図で、(A)はコイル装着状態、(B)は退避状態を示す図である。
【
図14】鏡の動きと支持体(湾曲部)先端形状との関係を説明する図で、(A)は装着状態、(B)はコイル装着状態と退避状態との中間状態、(C)は退避状態を示す。
【
図16】(A)、(B)は、それぞれ支持体の変形例を示す図。
【
図17】第2実施形態のコイル装置(RF送信コイル)のコイルユニットの回路図で、(A)はサブコイルの回路図、(B)は送受磁気結合防止回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0014】
<<MRI装置の実施形態>>
まず、本発明が適用されるMRI装置の全体構成について
図1及び
図2を用いて説明する。
図1は、MRI装置の外観図である。
図1(A)は、ソレノイドコイルで静磁場を生成するトンネル型磁石を用いた水平磁場方式のMRI装置100である。
図1(B)は、開放感を高めるために磁石を上下に分離したハンバーガー型(オープン型)の垂直磁場方式のMRI装置101である。これらのMRI装置100、101は、被検体103を載置するテーブル102を備える。図では、静磁場方向をz方向、それに垂直な2方向を、それぞれx方向およびy方向としている。
【0015】
本実施形態は、水平磁場方式のマグネット110を備えるMRI装置100、および、垂直磁場方式のマグネット111を備えるMRI装置101のいずれも適用可能である。また、本実施形態のMRI装置はこれらの形態に限定されるものではなく、装置の形態やタイプを問わず、公知の各種のMRI装置を用いることができる。以下、水平磁場方式のMRI装置100を例に説明する。
【0016】
図2は、MRI装置100の概略構成を示すブロック図である。本図に示すように、MRI装置100は、水平磁場方式のマグネット110、傾斜磁場コイル131、RF送信コイル151、RF受信コイル161と、傾斜磁場電源132と、シムコイル121、シム電源122と、高周波磁場発生器152と、受信器162と、磁気結合防止回路駆動装置180と、計算機(PC)170と、シーケンサ140と、表示装置171と、を備える。被検体103は、テーブル102に配置されて、マグネット110が形成する静磁場空間に配置される。
【0017】
傾斜磁場コイル131は、傾斜磁場電源132に接続され、傾斜磁場を発生させる。シムコイル121は、シム電源122に接続され、磁場の均一度を調整する。RF送信コイル151は、高周波磁場発生器152に接続され、被検体103に高周波磁場を照射(送信)する。RF受信コイル161は、受信器162に接続され、被検体103からの核磁気共鳴信号を受信する。磁気結合防止回路駆動装置180は、磁気結合防止回路に接続される。磁気結合防止回路は、RF送信コイル151およびRF受信コイル161にそれぞれ接続される、RF送信コイル151とRF受信コイル161との間の磁気結合を防止する回路である。
【0018】
シーケンサ140は、傾斜磁場電源132、高周波磁場発生器152、磁気結合防止回路駆動装置180に命令を送り、それぞれ動作させる。命令は、計算機(PC)170からの指示に従って送出する。また、計算機(PC)170からの指示に従って、受信器162で検波の基準とする磁気共鳴周波数をセットする。例えば、シーケンサ140からの命令に従って、高周波磁場が、RF送信コイル151を通じて被検体103に照射される。高周波磁場を照射することにより被検体103から発生する核磁気共鳴信号は、RF受信コイル161によって検出され、受信器162で検波が行われる。
【0019】
計算機(PC)170は、MRI装置100全体の動作の制御、各種の信号処理を行う信号処理部としても機能する。例えば、受信器162で検波された信号をA/D変換回路を介して受信し、画像再構成などの信号処理を行う。その結果は、表示装置171に表示される。検波された信号や測定条件は、必要に応じて、記憶媒体に保存される。また、予めプログラムされたタイミング、強度で各装置が動作するようシーケンサ140に命令を送出させる。さらに、静磁場均一度を調整する必要があるときは、シーケンサ140により、シム電源122に命令を送り、シムコイル121に磁場均一度を調整させる。
【0020】
次に、本実施形態のRF送信コイル151およびRF受信コイル161の詳細を、
図3を参照して説明する。
図3では、一例として、RF送信コイル151として鳥かご型形状を有するRFコイル(鳥かご型RFコイル)151Aを使用し、RF受信コイル161としてループ形状を有するRFコイル(表面コイル)を複数並べたアレイコイル161Aを使用する場合を示している。なお
図3では、アレイコイル161Aを構成する表面コイル(サブコイル)を二つ示しているが、サブコイルの数は3以上でもよいし、一つの場合もある。
【0021】
RF送信コイル151として用いる鳥かご型RFコイル151Aの共振周波数は、励起対象元素の共鳴周波数、例えば、水素原子核の励起が可能な、水素原子核の磁気共鳴周波数に調整される。RF受信コイル161として用いるアレイコイル161Aは、鳥かご型RFコイル151Aが励起可能な元素の核磁気共鳴信号を検出可能に調整される。
【0022】
また、鳥かご型RFコイル151Aは、
図3に示すように、その軸が、マグネット110の中心軸と同軸となるよう配置され、アレイコイル161Aは、鳥かご型RFコイル151A内に配置される。鳥かご型RFコイル151Aは、高周波磁場発生器152に接続され、アレイコイル161Aは、受信器162に接続される。
【0023】
さらに、鳥かご型RFコイル151Aは、アレイコイル161Aとの磁気結合を防止する磁気結合防止回路210を備える。この磁気結合防止回路210は、RF送信コイル(鳥かご型RFコイル151A)と、RF受信コイル(アレイコイル161A)との間の磁気結合を防止する回路であり、送受間磁気結合防止回路210と呼ぶ。この送受間磁気結合防止回路210は、鳥かご型RFコイル151Aの直線導体に直列に挿入される。
【0024】
アレイコイル161Aは、鳥かご型RFコイル151Aとの磁気結合を防止する磁気結合防止回路220を備える。磁気結合防止回路220も、RF送信コイル(鳥かご型RFコイル151A)と、RF受信コイル(アレイコイル161A)との間の磁気結合を防止する送受間磁気結合防止回路である。この送受間磁気結合防止回路220は、アレイコイル161Aを構成する各表面コイルに直列に挿入される。
【0025】
磁気結合防止回路駆動装置180は、これらの送受間磁気結合防止回路210および送受間磁気結合防止回路220にそれぞれ接続される。送受間磁気結合防止回路210は、例えば、磁気結合防止回路駆動装置180からの制御信号によって、ON/OFFするPINダイオードを含む回路で、制御信号によりPINダイオードが導通状態または開放状態とすることで、鳥かご型RFコイル151Aによる共鳴周波数のRF磁場の照射を行ったり、アレイコイル161Aとの磁気結合を防止したりして、アレイコイル161Aによる磁気共鳴信号の受信を可能にする。アレイコイル161Aの詳細については後述する。
【0026】
図3は、アレイコイル161AがRF受信コイルの場合であるが、鳥かご型RFコイル300は全身用RF送信コイルとして用い、それとは別にアレイコイル161Aを局所用RF送信コイルとして用いる場合もある。この場合は、
図3において、アレイコイル161Aは高周波磁場発生器152に接続され、アレイコイル161Aとは別のRF受信コイルが配置される。或いは、高周波磁場発生器152と受信器162との間に送受切替器を接続し、アレイコイル161Aを送受両用のRFコイルとして用いる場合もある。
【0027】
いずれの場合も、被検体103の検査部位にアレイコイル161Aを装着した後、静磁場空間に配置し、予め設定した検査プロトコルに従って撮像を開始する。
【0028】
本発明のコイル装置は、検査部位が被検体の頭部を含む場合に用いられる頭部用コイル装置であり、上述したアレイコイル161Aの被検体への装着時の操作性及び被検体への密着性を向上させた構造を有する。以下、頭部用コイル装置の実施形態を説明する。
【0029】
<<頭部用コイル装置の実施形態>>
<第1実施形態>
本実施形態では、頭部用コイル装置がNMR信号を受信するRF受信コイルである場合を説明する。
【0030】
頭部用コイル装置(単に、コイル装置ともいう)は、主として、被検体の頭部に密着するように装着されるコイルユニットと、コイルユニットを支持するコイル支持部とからなる。コイル支持部は、ベース部と、コイルユニットを保持するホルダーと、ホルダーをベース部に対し支持する支持体とからなり、被検体の頭部に密着させるための機構を備えている。以下、コイルユニットと、コイル支持部の機構について詳述する。
【0031】
[コイルユニット]
本実施形態のコイル装置は、頭部(前頭部)を覆うコイルユニットを含む少なくとも一つ以上のコイルユニット400を有する。具体的には、
図4に示すように、頭部(前頭部)のみを覆うコイルユニット(第1のコイルユニット)410を有し、さらに、被検体の耳から頸部にかけた部分を覆うコイルユニット(第2のコイルユニット)420、及び、後頭部から肩甲骨あたりまでを覆うコイルユニット(第3のコイルユニット)430のいずれかあるいは両方を追加したものでもよい。以下の説明では便宜上、第1のコイルユニット410をお面コイル、第2のコイルユニット420を側部コイル、第3のコイルユニット430を後部コイルと呼ぶこととするが、これら名称は各コイルユニットの機能を限定するものではない。また各コイルユニットを特に区別しない場合には、総称してコイルユニットという場合もある。
【0032】
コイルユニット400は、基本的に、導体からなるコイルループおよびその共振周波数を調整するためのコンデンサやキャパシタ等の調整要素を含む回路部分と、回路部分を保護するカバー部材とからなる。回路部分の一部は、フレキシブルプリント基板に形成され、受信器162(
図3)に接続するためのフレキシブルケーブルが接続されている。
【0033】
まず、コイルユニット400の回路部分について、
図5を参照して説明する。
図5(A)に示すように、コイルユニット400を構成するアレイコイル400Aは、1ないし複数のサブコイル300を検査対象の形状に沿って平面状に配置した構成を有する。ここではサブコイル300を一列に並べた配置を示しているが、検査対象の形状により二次元的な配置をとることもある。
図5(B)は、このようなアレイコイル400Aの一つのサブコイル300の回路部分の一例を示す図である。
図5(B)に示すように、核磁気共鳴信号を受信するループコイル部320と、給電基板部350とから構成される。給電基板部350は、低(入力)インピーダンス信号処理回路351と、ループコイル部320と低インピーダンス信号処理回路351とを接続する磁気結合調整部352と、を備える。磁気結合調整部352は、キャパシタもしくはインダクタの少なくとも一方から構成される。
【0034】
ループコイル部320のループ321は、導体で形成される。そして、第一のループコイル部320は、ループ321のインダクタ成分に対して直列に挿入されるキャパシタ324を備える。このインダクタ成分とキャパシタ324とは、並列共振回路を構成する。このキャパシタ324を、他のキャパシタと区別するため、並列キャパシタと呼ぶ。
【0035】
また、ループ321には、共振周波数を調整するキャパシタ322と、送受間磁気結合防止回路220(
図3参照)とが直列に挿入される。このキャパシタ322を、他のキャパシタと区別するため、直列キャパシタと呼ぶ。なお、ここでは、直列キャパシタ322を2つ備える場合を例示するが、直列キャパシタ322の数は1以上であればよい。
【0036】
このように、サブコイル300は、調整用の回路素子として、磁気結合調整部352と、ループ321のインダクタ成分に対して直列に挿入される直列キャパシタ322と、前記インダクタ成分に対して直列に挿入され、ループコイル部320を並列共振回路とする並列キャパシタ324と、を備える。
【0037】
低インピーダンス信号処理回路351のループコイル部320側の一方の端子は、磁気結合調整部352を介してループコイル部320の並列キャパシタ324の一方の端に接続される。低インピーダンス信号処理回路351のループコイル部320側のもう一方の端子は、直接ループコイル部320の並列キャパシタ324の他方の端に接続される。低インピーダンス信号処理回路351のループコイル部320側でない他方の端子は、伝送ケーブルを介して受信器162(
図3)に接続される。
【0038】
送受間磁気結合防止回路220は、RF送信コイル151である鳥かご型RFコイル151Aとの間の磁気結合を除去する。送受間磁気結合防止回路220は、
図5(C)に示すように、PINダイオード221とインダクタ222と制御用信号線223とを備える。
【0039】
PINダイオード221とインダクタ222とは直列に接続され、キャパシタ323に並列に接続される。なお、キャパシタ323は、ループ321に挿入されるキャパシタである。また、PINダイオード221の両端には制御用信号線223が接続される。そして、制御用信号線223は磁気結合防止回路駆動装置180に接続される。制御用信号線223には高周波の混入を避けるためチョークコイルが挿入されている(不図示)。インダクタ222とキャパシタ323とは、受信する核磁気共鳴信号の周波数で並列共振するように調整される。
【0040】
並列共振回路は、一般に共振周波数で高インピーダンス(高抵抗)となる特性を持つ。よって、PINダイオード221に電流が流れると、PINダイオード221はオンになり、ループ321のキャパシタ323は、受信する核磁気共鳴信号の周波数でインダクタ222と共に並列共振して高インピーダンス状態となる。従って、受信する核磁気共鳴信号の周波数で、ループコイル部320は、その一部が高インピーダンスとなり、開放状態となり、そのループコイル部320を有するサブコイル300も開放状態となる。
【0041】
このように、PINダイオード221に電流が流れてオンとなることによって、各サブコイルと鳥かご型RFコイル151Aとの磁気結合は除去される。従って、各サブコイルをコイル素子とするアレイコイル161A(400A)と鳥かご型RFコイル151Aとの磁気結合も除去される。
【0042】
なお、サブコイル300に挿入される送受間磁気結合防止回路220の数はこれに限定されない。各ループ321に、二つ以上挿入されても良い。複数挿入することで磁気結合を十分に低下させることができる。
【0043】
また、送受間磁気結合防止回路220の構成は、上記構成に限定されない。例えば、PINダイオード221の代わりに、クロスダイオード(不図示)を用いてもよい。これにより、ループ321を構成する導体に大きな信号が流れた場合、クロスダイオードはオンになり、ループ321のキャパシタ323は、受信する核磁気共鳴信号の周波数でインダクタ222と共に並列共振して高インピーダンス状態となる。この場合、磁気結合防止回路駆動装置180は備えなくてもよい。
【0044】
次に、上述した回路部分を含むコイルユニット400の機械的な特徴を説明する。以下では、主として、種々のサイズの頭部に密着する構造を有しているお面コイル410について説明する。
【0045】
お面コイル410の回路部分は、例えば導体ループやフレキシブルプリント基板やフレキシブルケーブルで構成された部分が可撓性を有している。また回路部分を覆うカバー部材は、FRP(繊維強化プラスチック)やエラストマー等の耐熱性や機械的な強度の優れた樹脂材料からなり、可撓性を有している。お面コイル410は、例えば、真空成型で作製した2枚の薄い樹脂材料で、ループ部及び基板部を挟み、周囲を接着剤による水密構造にすることで作製されている。回路部分から出るケーブル(不図示)は、屈曲の曲率が急激に大きくならないように、例えば、被検体の頭頂部に当たる上部から出すようにしている。
【0046】
このような構造のお面コイル410は、全体として可撓性を有し、外力を加えなければ外形を保持し、外力を加えると変形し、様々な頭部サイズの被検体の頭部に密着させることできる。また、樹脂の弾性変形範囲での屈曲性を利用して形状を維持できる。さらに水密構造であることから嘔吐物や洗浄用薬品等の侵入を防ぐことができる。
【0047】
さらに、お面コイル410は、必須ではないが好適な構造として、光を透過する部分(
図4:透過部415)を備えている。お面コイル410は、被検体に装着したときに、被検体の顔の半分以上を覆うため被検体の視界が閉ざされることになるが、装着時に被検体の目に配置されるお面コイル410の位置に、光を透過する透過部415を設けておくことで、視界を確保し、被検体の不安感を緩和することができる。
【0048】
透過部415として、本実施形態では、お面コイル410の、被検体の目に配置される導体形状をサングラス形状にし、開口部を形成している。開口部のまま透過部415としもよいが、開口部を光透過性の部材で覆い透過部415を形成してもよい。透過部415の材料としては、例えば、透明なプラスチックを用いることができ、特に酸素透過性のプラスチックが好適である。このような部材を開口部に縫合又は貼着、あるいは着脱可能に嵌め込む等により透過部415とすることができる。
【0049】
透過部415によりもたらされる視界の左右方向の視野角は、例えば90度以上が好ましく、開口部を広げることで180度とすることもできる。本実施形態のお面コイル410は、様々な頭部サイズに対しても密着配置することができるため、特に小さな被検体に対して視界の広さが向上する。
【0050】
[コイル支持部]
次に、上述したお面コイル410を含むコイルユニット400を支持するための機構及びコイルユニット400を被検体に密着させるための機構について説明する。最初に、上述したお面コイル410を支持するコイル支持部500の基本的な構造について、
図6及び
図7(A)、(B)を参照して説明する。
【0051】
コイル支持部500は、基本的な構成要素として、
図6に示すように、ベース部520と、一端がベース部520に固定された支持体530と、支持体530の他端側に摺動自在にされたホルダー540と、ベース部520に固定され、ホルダー540の端部と面接触することでホルダー540を支承するガイド部550とを備えている。ホルダー540は、お面コイル410の形状に沿って、湾曲した2つの部分、第1ホルダー部541及び第2ホルダー部542をT字状につなげた形状を有する。第2ホルダー部542は、
図7(A)に示すように、概ね被検体の左右方向に平行な軸を中心に弧を描くように湾曲し、第1ホルダー部541は、
図7(B)に示すように、第2ホルダー部542の湾曲の軸に対し直交する軸を中心に、被検体の左右方向に湾曲している。第2ホルダー部542が支持体530に支持され、第1ホルダー部541の左右の端部541aがガイド部550と面接触している。
【0052】
このようにコイル支持部500は、お面コイル410が固定されたホルダー540を、T字状の形状とするとともに、支持体530で摺動自在に支持し、且つガイド部550で両端を支える構造としたことにより、簡易な構成で比較的重量のあるコイルユニットを支持することができ、後述するように被検体に装着するための動作を安定して行うことができる。
【0053】
以下、コイル支持部500の各部の構造の実施形態を説明する。なお以下の説明において、お面コイル410を装着された被検体の左右方向(横方向)をX方向、前後方向(垂直方向)をY方向、上下方向(縦方向)をZ方向とする。限定されるものではないが、MRI装置が
図1(A)に示すような水平磁場装置の場合、コイル装置はZ方向がMRI装置の静磁場方向と一致するように配置される。
【0054】
ベース部520は、Y方向を厚み方向とする平板上の部材で、その上面に被検体の頭部が配置される。ベース部520には、頭部後方に相当する位置に支持体530が固定され、頭部を挟んで両側に薄板状のガイド部550が固定されている。また必須ではないが、被検体の頭が接する板面に、頭受け部580が固定されていてもよい。
【0055】
支持体530は、ポリアセタール樹脂(POM)等の弾性のある樹脂から構成することができ、ベース部520に固定された部分(固定部)531と、その上方に湾曲状に延びた部分(湾曲部)532とからなる。
図6に示す例では、固定部531と湾曲部532とは一体成型されており、ベース部520に固定された支持体固定用の部材に固定されている。湾曲状の部分(湾曲部)532に、ホルダー540の第2ホルダー部542が摺動自在に連結されている。湾曲部532の湾曲は、第2ホルダー部542の湾曲に沿っており、第2ホルダー部542は湾曲状に摺動することができる。支持体530のベース部520に固定された部分531は、板バネのような機械的な弾性を持つ構造を有している。なお板バネ部分は別部品であってもよい。これにより、板バネ部分のみ交換可能となりメンテナンスを簡素化できる。
【0056】
支持体530はその材料による弾性と固定部531の機械的な弾性構造により、支持体530に支持されたホルダー540のY方向の移動量を確保することができる。すなわち、支持体530が弾性を持つ部材で構成されていることで、複雑な機構なく様々な頭部サイズに対する上下可動範囲(例えば、60mm)を可能とする。また、コイルの退避状態では支持体530の板バネ部分に負荷がかかりにくい重心になり、クリープを防止できる。また、支持体530が曲率を有することで頭頂側に最小限のスペースで待機状態を実現することができる。
【0057】
装着に際しては、例えば、ホルダー540を湾曲部532の弧に沿って移動させながら、或いは移動させた後、被検体の頭の大きさに合わせてホルダー540を上下方向(Y方向)に動かして、お面コイル410を被検体に密着させることができる。被検体が存在しない状態では、同様の操作をして、いずれかの位置で、お面コイル410を下方向に押し付けても、頭受け部580に干渉しないように構成されている。また、密着性を高めるために後述する固定ベルトを用いる場合、固定ベルトによる締め付けを解放すると支持体530の弾性力により瞬時にお面コイル410の密着が解放される。
【0058】
次に、支持体530とホルダー540との連結機構について説明する。
本実施形態では、ホルダー540を摺動自在に連結する機構として、第2ホルダー部542を中空の筒状とし、その内部に湾曲部532が嵌合した構造を採用し、さらにホルダー540の移動をロックし、或いはロックを解除する機構(560等)が設けられている。ロック機構の一例を、
図8を参照して説明する。
【0059】
図8(A)に示すように、筒状の第2ホルダー部542の内壁と、それに接する支持体530の湾曲部532の部分とは、ラックアンドピニオン様の機構が設けられている。具体的には、第2ホルダー部542の内壁にバネ片542aが形成され、バネ片542aには湾曲部532のラック部分532aに係合する突部542bが設けられている。この突起542bがラック部分532aに係合しているときは、第2ホルダー部542の動きはロックされた状態となる。
【0060】
またホルダー540(第2ホルダー部542)には、押しピン561が固定されたハンドル560が軸562を中心に回動可能に固定されている。押しピン
561は第2ホルダー部542の内側まで貫通しており、その端面が第2ホルダー部542の内壁のバネ片542aに当接している。
図8(B)に示すように、操作者がハンドル560を握ることによって、ハンドル560が軸562を中心に回動すると、押しピン561がバネ片542aを押し下げ、突部542bとラック部分532aとの係合を解く。すなわち、
図8(A)のロック状態が解除されて、円滑な第2ホルダー部542の摺動が可能となる。
【0061】
操作者がハンドル560を離すと、ハンドル560は
図8(A)の状態に復帰し、第2ホルダー部542の突部542bが、湾曲部532のラック部分532aと係合し、第2ホルダー部542の動きがロックされる。このようなロック及びロック解除の機構によって、ホルダー540を被検体に合わせて任意の位置に移動させて、その位置に固定することができる。
【0062】
なお、
図8に示す機構は、摺動自在に連結する機構及びロック/ロック解除機構の一例であって、本実施形態のコイル装置は、この構造に限定されない。例えば、一方にガイド溝を設けて、他方にこのガイド溝に係合する突起部を設けてスライド可能にするとともにガイド溝にスライド方向に直交する方向の切欠凹部を設けて、この切欠凹部に突起部を嵌合させてスライドをロックする機構なども採用することができる。
【0063】
次にコイルユニット400を固定したホルダー540の詳細について、再度、
図7を参照して説明する。ホルダー540は、支持体530と同様に、好ましくはPOM等の弾性樹脂(可撓性のある材料)で構成されており、
図7(A)、(B)に示したように、半円状に湾曲した第1ホルダー部541と、その中央に連結され、後方に湾曲した第2ホルダー部542とを有している。これら二つの部分はそれぞれ別の部材を連結してもよいし、一体成型によって形成することも可能である。
【0064】
第1ホルダー部541は、中央にコイルユニット400(ここでは、お面コイル410)を固定するためのブロック部材545が固定されている。お面コイル410はブロック部材545にねじ止めや接着剤等によって固定される。或いはお面コイル410をブロック部材545に着脱可能に取り付けるようにしてもよい。第1ホルダー部541の両端は、
図7(A)に示したように、二股に分かれており、一方の端部541aがホルダー540自体の弾性によってガイド部550に圧接し、ガイド部550に支承されている。他方の端部541bは、
図7(B)に示したように、外側に開いた形状になっており、後述する側部コイル(第2のコイルユニット)を固定した側面パネルを退避状態から密着状態に移動させる機能(連動開閉機能)を有している。
【0065】
第2ホルダー部542は、前述したように、支持体530の湾曲部532が係合する筒が形成された部材で、第1ホルダー部541のブロック部材545が固定された部分の後方に連結されている。
【0066】
ホルダー540は、支持体530に対し第2ホルダー部542を湾曲部532に沿って摺動させる動作だけで、ホルダー540に固定されたお面コイル410を被検体に装着することができる。この際、ホルダー540(第1ホルダー部541の先端)がガイド部550に接していることで、左右ねじれによる破損防止となり耐久性が向上する。また被検体が誤ってホルダー540に寄りかかってしまった場合など、ホルダー540を下方向(Y軸正方向)に押し付ける力がかかっても、第1ホルダー部541の左右の下端がベース部520と直接接触し、お面コイル410の破損を防ぐストッパーとなる。ホルダー540はお面コイル410の左右からの破損を防ぐプロテクターとなり、耐久性が向上する。特に、この効果は、お面コイル410が可撓性を有している場合に有効である。
【0067】
次に、側部コイル(第2のコイルユニット)420に係るコイル支持部の構成を説明する。
側部コイル420は、お面コイル410と同様に、コイルループ導体及びその調整要素を含む回路部分(
図5)と、回路部分を保護するカバー部材とからなり、
図6に示したように、左右一対のサイドパネル(側面パネル部)570L、570Rにそれぞれ固定されている。
【0068】
左右のサイドパネル570L、570Rの構造は、左右の違い以外は同様であるので、これらを区別しないときには、サイドパネル570として説明する。サイドパネル570に固定された側部コイル420には、
図6中、黒く示したように、スポンジ製などの緩衝材
573を固定しておいてもよい。これにより被検体への密着性が向上し、且つ消音或いは防音効果が得られるとともに、被検体が防音用ヘッドホンなどを装着した状態でコイル装着が可能になる。またサイドパネル570は、少なくとも一部が可撓性を有する材料からなり、側部コイル420を被検体に密着させることができる。
【0069】
サイドパネル570は、ベース部520に固定した軸に、或いはベース部520に頭受け部580が固定されている場合には、頭受け部580に固定した軸に取り付けられており、この軸を中心に回動可能である。一例として、サイドパネル570が頭受け部580に固定された実施形態を
図9(A)、(B)に示す。
【0070】
サイドパネル570の取り付け軸571は、ベース部520の上面に対し垂直ではなく、Z方向及びX方向に傾斜している。すなわち、
図9(A)に示すように、Z方向の後方側に傾き、また
図9(B)に示すように、左右のサイドパネル570L、570RがX方向に開くようにX方向に傾いている。これにより、
図9(A)の位置にあるサイドパネル570を、軸571を中心として回転させると、サイドパネル570は、両側に開くとともに後方に後退する。すなわち、被検体にコイル装置500を装着する前の状態では、
図10に示すように、側部コイル420が左右に退避し、大きな空間が開放されている。この状態で頭受け部580に被検体を載せて、サイドパネル570を回転させると、
図9(B)に示すように、サイドパネル570は後方且つ側方の位置から、被検体の両サイドに位置し、装着される。
【0071】
本実施形態のコイル装置500は、サイドパネル570の取り付け軸571を中心とする回動を、ホルダー540の移動により実現する(連動開閉機能)。このための構成を、
図11(A)、(B)を参照して説明する。
【0072】
図11(A)に示すように、ホルダー540が退避状態にあるとき、サイドパネル570も後退位置にあり、第1ホルダー部541の先端541bがサイドパネル570の外側に位置している。この状態から、ホルダー540を支持体530に対して摺動させて装着位置に移動するとき、先端541bもサイドパネル570の裏面を押しながらその中心側に移動する。この先端541bの動きによって、サイドパネル570は取り付け軸571(
図9)を中心として回動し、最初に先端541bが当接していたサイドパネル570の部分は、お面コイル410の内側に入り込み、最終的に
図11(B)に示すように、お面コイル410と側部コイル420とが一体化した状態で、被検体頭部に装着される。このように、お面コイル410を被検体に装着するホルダー540の操作(ハンドル560を介したホルダー操作)のみで、お面コイル410と側部コイル420を被検体に装着することができる。
【0073】
また、
図11には後部コイル430を示していないが、後部コイル430は、頭受け部580からベース部520にかけてコイル装置の筐体内部に連続的に配置される。このように後部コイル430を加えた場合にも同じ操作で、3つのコイル部410~430を被検体に装着することができる。
【0074】
またホルダー540を操作して、退避位置(
図11(A))に移動させると、サイドパネル570は、固定した側部コイル420の重みと自らの重みで、取り付け軸571を中心に回動して開き(
図10)、外側の退避位置に移動する。
【0075】
このように本実施形態のコイル装置は、ホルダーを被検体の頭をベース部520に載せた状態で、ホルダー540に備えられたハンドル560を操作するだけで、側部コイル420も含めた頭部コイルの被検体への装着と脱着を行うことができる。
【0076】
なお図では、側部コイル420を両側に配置する場合を示したが、側部コイルは一方のみの場合もある。例えば、
図11では、被検体を顔面が上になるように(仰臥位で)頭部コイル装置に配置することを想定しているが、顔面が側面を向くように配置することも可能であり、その場合にはベース部520は板面が垂直に配置され、側部コイルは上側となる一つのコイル部のみが用いられる。
【0077】
[固定ベルト]
次に、装着後にコイルユニット(お面コイル)と被検体との密着性を高めるための固定ベルトについて説明する。
【0078】
本実施形態において、固定ベルトは、頭受け部580或いはベース部520に、一端が回動軸を介して取り外し可能に固定されている。これによりメンテナンス時に、固定ベルトを回動軸から上に引き抜いて交換可能である。また他端(自由端)には、面ファスナーが貼付され、面ファスナーによりホルダー540により固定される。具体的には、
図12に示すように、第1ホルダー部541の両端部(二股になっている部分の近傍)に、一対の面ファスナー515の一方を貼付するとともに、2本の固定ベルト510R、510L(両者を区別しないときは510とする)のそれぞれの端部に、面ファスナーのもう一方を貼付し、面ファスナー515どうしの接着でホルダー540と固定ベルト510を固定する。
【0079】
第1ホルダー部541には、その中央部を挟んで両側に固定ベルト510を通す穴(スリット状の穴)541cを形成しておく。左側の固定ベルト510Lは、コイル装置の筐体内側から右側の穴541cを通って第1ホルダー部541の外側に出され、サイドパネル570の外側を通って、右側の先端部に貼付された面ファスナー515に、固定ベルト端部が固定される。同様に右側の固定ベルト510Rは、左側の穴541cを通り、左側のサイドパネル570の外側を通り、左側の先端部に固定される。面ファスナーによる固定位置を調整することにより、コイルユニット400を様々な被検体のサイズの被検体に密着させることができる。このように固定ベルト510の固定に面ファスナーを用いることで、固定ベルト交換のための着脱が可能であり、また、ネジやダイヤルでの固定は被検体の嘔吐など緊急時に解放に時間がかかるのに対して、操作性が向上する。
【0080】
なお穴541cの大きさ(幅)は、固定ベルト510の面ファスナーが固定された先端部分の厚みより小さいものとする。これにより固定ベルト510は穴541cより抜け落ちないようになっている。また第1ホルダー部541には、穴541cからホルダー外側に出た固定ベルト510がずれ落ちないための脱落防止壁(点線:541d)を設けておいてもよい。脱落防止壁541dは、例えば第1ホルダー部541の中央部の前面側(第2ホルダー部542がつながる部分と反対側)にホルダーの面方向に対し垂直方向に、ホルダー本体と一体的にあるいは別部品として設置することができる。
【0081】
以上の構成により、操作性よく固定ベルト510を締結し、被検体に対するコイルユニットの密着性を高めることができ、結果として、信号の受信感度を上げてMR像の画質を向上することができる。
【0082】
なお、本実施形態において、固定ベルト510をホルダー540に固定するために、第1ホルダー部541の左右両側に面ファスナー515を貼付する例を示したが、それに限らない。例えば、2本の固定ベルトを左右のどちらか同じ側にとめてもよい。これにより、技師が立っている反対側へアクセスが低減できる。
【0083】
また、例えば、固定ベルト510を1本として、左右の両側を固定ベルト510が通るようにして、左右いずれかに貼付した面ファスナーにとめてもよい。これにより、技師が立っている反対側へのアクセスが低減できるとともに、片手で固定ベルト510を操作することができる。
【0084】
[コイル装着操作]
次に本実施形態のコイル装置を用いて、コイルユニット400を被検体に装着する操作を、
図11(A)および(B)を参照して、説明する。
図11(A)はコイル装置の退避状態、
図11(B)は装着状態を示す説明図である。ここでは構造が見やすいように被検体は不図示としている。
【0085】
まず、
図11(A)に示す待機状態で、被検体を頭受け部580の上に仰臥位で寝かせる。この状態では、
図10に示したように、サイドパネル570が大きく左右に開いているおり、被検体の後頭部を支えながら寝かす場合でも支える手と干渉するリジッドな構造物がないため寝かせやすい。
図11(A)の状態から
図11(B)の状態までは、コイル操作者がロック解除ハンドル560を片手で掴んでスライドするだけで遷移することができる。このときホルダー540の先端541bがサイドパネル部570を押すため、連動してサイドパネル部570とそれに固定された側部コイル420も被検体の近傍に移動することができる。その後、左右2本の固定ベルト510(
図12)を引き、固定ベルト510をホルダー540に対して面ファスナーなどで固定する。以上で、本実施形態のコイルユニット400の被検体に対する設置と固定作業が一通り完了する。
【0086】
これにより、これまで一般的に行われていたスポンジを詰める固定作業の時間を短縮できる。また、一般的にはコイル筐体と被検体との間の狭い空間で固定作業を行っていたのに対し、本実施形態ではコイルユニット400の外側の広い空間を利用して固定ベルト510を操作できるため、技師の姿勢による身体的負担を軽減できる。また、寝台の左右どちらかに立って作業する技師にとっても、固定ベルト510はホルダー540の上部にある穴541cを通っているため、寝台の反対側の固定ベルト510も届きやすい位置にあり操作がしやすい。また、お面コイル410とホルダー540の間に固定ベルト510の脱落防止壁541dを備えることで、固定ベルト510が被検体の目に落ちるおそれもない。
【0087】
本実施形態のコイル装置において、お面コイル410及び側部コイル420(さらに後部コイル430)を被検体103に対して密着配置した場合に、サブコイル間の磁気結合を防止し画質低下を防止できることを、再度、
図5(B)の回路図を参照して説明する。
【0088】
核磁気共鳴周波数に対する角周波数をω、並列キャパシタ324の容量をCm、低インピーダンス信号処理回路351の入力インピーダンスをZinとすると、ブロックインピーダンスは次式(1)で表される。
(数1)
Zblock=1/(ω2Cm
2Zin) (1)
ループコイル部320と被検体103の距離が小さいほどCmは小さくなるため、密着配置を実現できる構成によってブロックインピーダンスを向上することができる。これにより、サブコイル間の磁気結合防止機能を向上し、画質低下を防止することができる。
【0089】
<第1実施形態の変形例>
第1実施形態のコイル装置500は、上述した構成に加えて、いくつかの要素を追加したり、コイル装置500を構成する部材の一部を、同一機能を有する他の部材で構成したりすることが可能である。以下、本実施形態の変形例を説明する。
【0090】
[変形例1:鏡]
追加要素の一例として、被検体が装置の外側を見ることができる鏡がある。コイル装置が装着される被検体は、MRI装置(
図1)の狭い静磁場空間に挿入され、視野が制限される。この変形例では、コイル装置に所定の角度となるように鏡を取り付けることで、被検体が外側を見ることができるようにする。
【0091】
鏡の取り付け例と、適切な角度にするための構造について、
図13を参照して説明する。鏡590は、
図13(A)に示すように、鏡面が外側を向くように、第1ホルダー部
541の前方に取り付けられている。例えば、鏡590は、第1ホルダー部
541の、お面コイル410を固定するためのブロック部材545(
図7(B))に、X方向の取り付け軸を介して回動可能に取り付けられている。これにより鏡590は、
図13(B)に示すように、第1ホルダー部
541に対する角度を変えることができる。鏡590に外力が加わらない状態では、
図13(A)に示す第1ホルダー部前面との角度が小さい状態に付勢されている。
【0092】
具体的には、
図14(A)に示すように、お面コイルが被検体に装着されるホルダー540の位置では、鏡590は垂直に近い角度である。一方、ホルダー540を摺動させて退避状態に移動させると、第2ホルダー部542が支持体530の湾曲部532に沿って移動し(図
14(B))、湾曲部532の先端が第2ホルダー部542の筒状部分から突き出し、鏡590の背面に到達する(図
14(C))。湾曲部532の先端は、
図8(A)に示したように、傾斜面532sが形成されており、この傾斜面532sが鏡面590を押すことにより、鏡590は取り付け軸を中心として回動し、傾斜面532sと平行な角度になる。傾斜面532sの角度は、例えば、湾曲部532の軸に直交する面に対し、45度程度である。これにより、図
14(C)に示す退避状態において、鏡590の鏡面は第1ホルダー部541に対する角度が開き、被検体から足元側の景色、すなわちMRI装置の外側を見ることができる。
【0093】
ここで鏡590の鏡面を、
図15に示すように、下から上に向かって開いた台形状にしておくことにより、鏡に映し出される景色が長方形に切り取られた景色となり、違和感なく外側を見ることができる。
【0094】
[変形例1:持ち手]
追加要素の別の例として、本実施形態のコイル装置500は、持ち手を追加してもよい。例えば、ベース部520に対してお面コイル410と支持体530の間の空間に持ち手を設けることができる。これにより、頭頂側に必要なスペースを最小限にすることができる。また、首側にはベース部520の上面に穴を設けることで持ち手を追加することもできる。これにより、首側端部に脊椎用コイルが連続して設置されている場合でも、持ち手を掴むことができる。この二つの持ち手はコイルユニット400の重心を挟むように配置されるため、運ぶ場合にバランスを維持しやすい。また、左右の反対側に手を伸ばさなくてもよいため、背の低い技師でも持ち手にアクセスしやすい。以上より、持ち運ぶ場合の操作性が向上する。
【0095】
[変形例3:支持体]
第1実施形態では、支持体530を、ヒンジ軸部分がある場合、すなわち湾曲部532が板バネを備えた固定部531にヒンジ軸で連結されている構成を示したが、支持体530の構造はこれに限定されない。例えば、ヒンジ軸部分がなくてもよい。この場合の支持体の例を
図16に示す。
図16(A)は湾曲部532の下側に波打つ形状を形成した支持体530Bであり、
図16(B)は湾曲部532の下側(ベース部520に固定される側)を左右に二分割し、それぞれ、ベース部520のベース面に平行な方向のらせん形状を形成した支持体530Cである。いずれの例も全体を一体成型で作製することができる。
【0096】
この構造によれば、第1実施形態の構造と同様に、支持体530に固定されたホルダー540及びコイルユニット400の上下方向及び垂直方向の移動範囲を確保することができる。すなわち、ホルダー540を湾曲状にスライドさせた後、被検体の頭部に押し当てて密着させるというコイル装置装着操作が可能になる。
【0097】
さらにこれらの変形例の支持体530B、530Cは、ヒンジ軸がある構造よりも簡易な構造であるため、部品点数が削減でき且つ部材の作製が容易である。
【0098】
<第2実施形態>
第1実施形態は、コイル装置をMRI装置のRF受信コイルに用いた実施形態であるが、この実施形態では、
図3に示す鳥かご型RFコイル300の代わりに、送信RFコイル151として、複数のサブコイルで構成されるアレイコイル(コイルユニット)を用いる。本実施形態のコイル装置において、コイルユニットを除くコイル支持部の構成は第1実施形態と同じであり、重複する説明を省略する。
【0099】
送信RFコイル151として用いるアレイコイルも、
図5(A)に示したように、1ないし複数のサブコイルから構成されるが、各サブコイルの回路部分が異なる。
図17(A)に、アレイコイルを構成する一つのサブコイル700の回路部分を示す。
【0100】
各サブコイル700は、第1実施形態のサブコイル300(
図5(B))と、基本的に同様の構成を有する。ただし、ループコイル部720が、磁気結合調整部741を介して接続されるのは、低入力インピーダンス信号処理回路351ではなく、低出力インピーダンス信号処理回路730である。低(出力)インピーダンス信号処理回路730として、低出力インピーダンスのRFアンプ(低出力インピーダンス信号増幅器)を用いることができる。
【0101】
また、送信アレイコイル700は、送信RFコイルと受信RFコイルとの間の磁気結合を防止する送受信間磁気結合防止回路として、送受信間磁気結合防止回路210を備える。
【0102】
図17(B)は、送受信間磁気結合防止回路210の構成および接続を説明するための図である。送受間磁気結合防止回路210は、PINダイオード211と制御用信号線212とを備える。PINダイオード211は、直線導体721に直列に挿入され、制御用信号線212はPINダイオード211の両端に接続される。制御用信号線212は磁気結合防止回路駆動装置180に接続される。制御用信号線212には、高周波の混入を避けるためチョークコイルが挿入される。
【0103】
PINダイオード211は、通常は高抵抗(オフ)を示し、PINダイオード211の順方向に流れる直流電流の値が一定値以上となると概ね導通状態(オン)となる特性を持つ。本実施形態ではこの特性を利用し、磁気結合防止回路駆動装置180から出力される直流電流によりPINダイオード211のオン/オフを制御する。すなわち、高周波信号送信時には、PINダイオード211を導通状態とする制御電流を流し、アレイコイル(サブコイル700)をRF送信コイル151として機能させる。また、核磁気共鳴信号受信時には、制御電流を停止し、アレイコイル(サブコイル700)を高インピーダンス化し、開放状態とする。
【0104】
このように、本実施形態では、磁気結合防止回路駆動装置180からの直流電流(制御電流)を制御することにより、高周波信号送信時にはアレイコイルをRF送信コイル151として機能させ、核磁気共鳴信号受信時には、開放状態としてRF受信コイル161であるアレイコイル300との磁気結合を除去する。
【0105】
各回路素子の調整も、基本的に第1実施形態のアレイコイル300と同様であり、ループコイル部720のループ721に直列に挿入される直列キャパシタ722と、並列に挿入される並列キャパシタ724と、磁気結合調整部741とにより行われる。
【0106】
信号送信時、送信アレイコイルを構成する各サブコイル700それぞれからみた低出力インピーダンス信号増幅器731は、低インピーダンスである。従って、送信アレイコイルの各サブコイル700は、第一の実施形態の受信アレイコイル400Aの各サブコイル300と同じ電流分布を構成し、例えば、静磁場強度1.5T(テスラ)における水素の核磁気共鳴周波数64MHzで共振する。
【0107】
以上のように、本実施形態の送信アレイコイルを構成する各サブコイル700は、所望の周波数(例えば、64MHz)で共振するため、効率良くRFを送信できる。同時に、様々な頭部形状に密着配置が可能なため、第一の実施形態と同様に感度が向上する。そのため、送信効率が向上し撮像に必要なパワーを低減できる。
また、複数のサブコイル700は互いに結合せず他のサブコイルとは異なる感度領域を有する。このため、マルチチャンネルとして機能する。
【0108】
なお、本実施形態も、第1実施形態同様、水平磁場方式のマグネット110を備えるMRI装置100、および、垂直磁場方式のマグネット111を備えるMRI装置101のいずれも適用可能である。
【0109】
以上説明したように、各実施形態によれば、操作性や耐久性を低下させることなく、また被検体の頭部サイズによらずコイル装置を被検体に密着して装着させることができ、高画質なMRI画像を提供することができる。
【符号の説明】
【0110】
100:MRI装置、210:磁気結合防止回路、220:磁気結合防止回路、300:サブコイル、400:コイルユニット、410:第1のコイルユニット(お面コイル)、415:透過部、420:第2のコイルユニット(側部コイル)、430:第3のコイルユニット(後部コイル)、500:コイル支持部、510:固定ベルト、520:ベース部、530:支持体、531:固定部、532:湾曲部、540:ホルダー、541:第1ホルダー部、542:第2ホルダー部、550:ガイド部、560:ハンドル、570:サイドパネル(側面パネル部)、570L:左側のサイドパネル、570R:右側のサイドパネル、580:頭受け部、590:鏡、700:サブコイル。