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特許7352497水質計測装置用の校正液、水質計測装置用の校正液入り容器、及び水質計測装置用の校正液を用いる校正方法。
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  • 特許-水質計測装置用の校正液、水質計測装置用の校正液入り容器、及び水質計測装置用の校正液を用いる校正方法。 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-20
(45)【発行日】2023-09-28
(54)【発明の名称】水質計測装置用の校正液、水質計測装置用の校正液入り容器、及び水質計測装置用の校正液を用いる校正方法。
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/26 20060101AFI20230921BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
G01N27/26 381A
G01N27/26 381D
G01N27/416 351J
G01N27/416 351A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020039707
(22)【出願日】2020-03-09
(65)【公開番号】P2021139837
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】亀井 駿典
(72)【発明者】
【氏名】田島 佳祐
(72)【発明者】
【氏名】大澤 敬正
(72)【発明者】
【氏名】玉井 一誠
(72)【発明者】
【氏名】小島 淳二
(72)【発明者】
【氏名】岩本 恵和
(72)【発明者】
【氏名】永井 博
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-253409(JP,A)
【文献】特表2008-511837(JP,A)
【文献】特開平02-112750(JP,A)
【文献】登録実用新案第3046992(JP,U)
【文献】特開昭61-020850(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26-27/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象液に自身を接触させて前記計測対象液中に含まれる対象成分の濃度を計測するセンサを複数備え、複数種類の前記対象成分の濃度を計測する水質計測装置の、複数種類の前記対象成分の濃度に対する特性の校正に用いられる校正液であって、
複数種類の前記対象成分の各々が前記対象成分毎に定められた濃度で含有される溶液を備え、
前記溶液のpHは、予め定められたpH範囲内とされており、
複数種類の前記対象成分のうちの1種以上は、自身に対応するpH安定域が定められ且つ自身が含有される液のpHが自身に対応するpH安定域を外れる場合にガス化が促進されるガス化イオンであり、
前記溶液のpHは、前記溶液に含まれる全ての種類の前記ガス化イオンのpH安定域内とされており、
複数種類の前記対象成分のうちの1種以上は、自身に対応するpH安定域が定められ且つ自身が含有される液のpHが自身に対応するpH安定域を外れる場合に化合物化が促進される化合物化イオンであり、
前記溶液のpHは、前記溶液に含まれる全ての種類の前記化合物化イオンのpH安定域内とされており、
前記計測対象液は、水生生物の養殖管理に用いる水である、水質計測装置用の校正液。
【請求項2】
計測対象液に自身を接触させて前記計測対象液中に含まれる対象成分の濃度を計測するセンサを複数備え、複数種類の前記対象成分の濃度を計測する水質計測装置の、複数種類の前記対象成分の濃度に対する特性の校正に用いられる校正液であって、
複数種類の前記対象成分の各々が前記対象成分毎に定められた濃度で含有される溶液を備え、
前記溶液のpHは、予め定められたpH範囲内とされており、
複数種類の前記対象成分のうちの1種以上は、自身に対応するpH安定域が定められ且つ自身が含有される液のpHが前記pH安定域を外れる場合にガス化が促進されるガス化イオンであり、
前記溶液のpHは、前記溶液に含まれる全ての種類の前記ガス化イオンの前記pH安定域内とされており、
前記溶液は、別個の溶液である第1溶液と第2溶液と、を少なくとも備え、
前記第1溶液及び前記第2溶液には、共通の前記対象成分が複数種類含有され、
前記第1溶液及び前記第2溶液に共通して含有される複数種類の前記対象成分の各々の濃度は、前記第1溶液での濃度と前記第2溶液での濃度とでそれぞれ異なっており、
前記第1溶液のpHと前記第2溶液のpHとが異なっており、
前記計測対象液は、水生生物の養殖管理に用いる水である、水質計測装置用の校正液。
【請求項3】
前記溶液は、別個の溶液である第1溶液と第2溶液と、を少なくとも備え、
前記第1溶液及び前記第2溶液には、共通の前記対象成分が複数種類含有され、
前記第1溶液及び前記第2溶液に共通して含有される複数種類の前記対象成分の各々の濃度は、前記第1溶液での濃度と前記第2溶液での濃度とでそれぞれ異なっており、
前記第1溶液のpHと前記第2溶液のpHとが異なっている
請求項1に記載の水質計測装置用の校正液。
【請求項4】
前記溶液は、少なくともナトリウムイオン、塩化物イオン、カリウムイオンが含有され、
前記対象成分は、前記ナトリウムイオン、前記塩化物イオン、前記カリウムイオン以外の成分を含む
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の水質計測装置用の校正液。
【請求項5】
前記対象成分はアンモニウムイオンと亜硝酸イオンであり、前記溶液のpHは5.5より大きく6.5未満である、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の水質計測装置用の校正液。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の水質計測装置用の校正液と、
前記校正液を収容する収容体と、
を備え、
前記収容体内に前記校正液が収容されつつ密封されている
水質計測装置用の校正液入り容器。
【請求項7】
計測対象液に含まれる複数種類の対象成分の濃度を計測する水質計測装置における複数種類の前記対象成分の濃度特性の校正方法であって、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の水質計測装置用の校正液を用いる校正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水質計測装置用の校正液、水質計測装置用の校正液入り容器、及び水質計測装置用の校正液を用いる校正方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示される陸上養殖装置は、魚介類を養殖するための海水の養殖用水が満たされた養殖水槽と、水中のアンモニア濃度を検出するアンモニアセンサと、水中の特定のイオンの濃度を検出するイオンセンサと、を備えている。イオンセンサは、例えば、硝酸イオンセンサとして構成され、硝酸イオンを検知するイオン電極と比較電極とを接続して被検液中での両電極間の起電力を計測することで、硝酸イオンの濃度を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-52275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、イオン濃度を電気的に計測する装置では、計測の対象となる対象イオンの濃度を正確に計測するために、装置が校正液に基づいて校正される必要がある。その場合、対象イオンを含み且つ液中の対象イオンの濃度が正確に特定された専用校正液が用いられる必要がある。
【0005】
水質計測装置には、計測対象液に含まれる複数種類のイオンの濃度を検出し得る装置もある。この装置は、各対象イオンの濃度を正確に計測するために対象イオン毎に校正を行う必要があり、その方法としては、対象イオン毎に専用校正液を用いる方法が考えられる。しかし、この校正方法では、対象イオンの種類が多いほど、校正に必要な専用校正液の種類が増え、管理負担が増大する。しかも、この校正方法では、各専用校正液を順番に流して各対象イオンに対応した校正を順番に行う必要があり、対象イオンの種類が多いほど校正液を流す回数が増えるため、校正に要する時間が増大する。
【0006】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、校正液の管理負担を抑え、校正時間の短縮を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの解決手段である水質計測装置用の校正液は、計測対象液に自身を接触させて上記計測対象液中に含まれる対象成分の濃度を計測するセンサを複数備え、複数種類の上記対象成分の濃度を計測する水質計測装置の、複数種類の上記対象成分の濃度に対する特性の校正に用いられる校正液であって、複数種類の上記対象成分の各々が上記対象成分毎に定められた濃度で含有される溶液を備え、上記溶液のpHは、予め定められたpH範囲内とされている。
【0008】
上記の校正液は、共通の溶液によって複数種類の対象成分の校正を行うことを可能とする。よって、上記の校正液は、水質計測装置の校正にあたり、対象成分毎に専用校正液を用意する管理負担を軽減することができる。しかも、上記の校正液が用いられれば、対象成分毎の専用校正液を水質計測装置に順次流し込んで順番に校正を行う方法と比べて、校正時間の短縮化が図られやすい。
【0009】
本発明の一つである水質計測装置用の校正液において、複数種類の対象成分のうちの1種以上は、自身に対応するpH安定域が定められ且つ自身が含有される液のpHがpH安定域を外れる場合にガス化が促進されるガス化イオンであってもよい。そして、溶液のpHは、溶液に含まれる全ての種類のガス化イオンのpH安定域内とされていてもよい。
【0010】
上記の校正液は、複数種類の対象成分の校正を行うことを可能とし、その中に上記のガス化イオンを含ませることができる。しかも、上記の校正液は、溶液のpHが溶液に含まれる全ての種類のガス化イオンのpH安定域内とされているため、ガス化イオンのガス化が抑制された状態で安定的に保たれる。
【0011】
本発明の一つである水質計測装置用の校正液において、複数種類の対象成分のうちの1種以上は、自身に対応するpH安定域が定められ且つ自身が含有される液のpHがpH安定域を外れる場合に化合物化が促進される化合物化イオンであってもよい。そして、溶液のpHは、溶液に含まれる全ての化合物化イオンのpH安定域内とされていてもよい。
【0012】
上記の校正液は、複数種類の対象成分の校正を行うことを可能とし、その中に上記の化合物化イオンを含ませることができる。しかも、上記の校正液は、溶液のpHが溶液に含まれる全ての種類の化合物化イオンのpH安定域内とされているため、化合物化イオンの化合物化が抑制された状態で安定的に保たれる。
【0013】
さらに、上記した複数種類の対象成分が上記化合物化イオンだけでなく上記ガス化イオンも含む場合、溶液のpHを全ての化合物化イオンのpH安定域内および全てのガス化イオンのpH安定域内とすることが望ましい。このように構成された校正液は、溶液中にガス化イオンと化合物化イオンが共存する環境下において、対象成分のガス化・化合物化が抑制された状態で安定的に保たれる。
【0014】
本発明の一つである水質計測装置用の校正液では、溶液は、別個の溶液である第1溶液と第2溶液と、を少なくとも備えていてもよい。そして、第1溶液及び第2溶液には、共通の対象成分が複数種類含有されていてもよい。そして、第1溶液及び第2溶液に共通して含有される複数種類の対象成分の各々の濃度は、第1溶液での濃度と第2溶液での濃度とでそれぞれ異なっていてもよい。そして、第1溶液のpHと第2溶液のpHとが異なっていてもよい。
【0015】
上記の校正液のうちの第1溶液を対象として水質計測装置が計測を行う場合、この水質計測装置は、第1溶液に含まれる各々の対象成分についての濃度とセンサが出力する電気的信号(例えば電圧信号)との関係を正確に特定することができる。更に、第2溶液を対象として水質計測装置が計測を行う場合、この水質計測装置は、第2溶液に含まれる各々の対象成分についての濃度とセンサが出力する電気的信号(例えば電圧信号)との関係を正確に特定することができる。よって、上記の校正液によれば、水質計測装置は、各々の対象成分についての濃度と電気的信号との関係式を正確に求めることができる。
【0016】
本発明の一つである水質計測装置用の校正液において、溶液は、少なくともナトリウムイオン、塩化物イオン、カリウムイオンが含有されていてもよい。そして、対象成分は、ナトリウムイオン、塩化物イオン、カリウムイオン以外の成分を含んでいてもよい。
【0017】
上記の校正液は、海水を含む又は海水の成分を含む溶液によって複数種類の対象成分の校正を行うことを可能とする。
【0018】
本発明の一つである水質計測装置用の校正液入り容器は、上記のいずれかの校正液と、校正液を収容する収容体と、を備え、収容体内に校正液が収容されつつ密封されていてもよい。
【0019】
上記の校正液入り容器は、校正液の管理負担を抑えることができ、校正時間の短縮を図ることができる。しかも、上記の校正液入り容器は、複数種類の成分を混在させた校正液を密封性の高い収容体内において管理することができる。
【0020】
本発明の一つである校正方法は、計測対象液に含まれる複数種類の対象成分の濃度を計測する水質計測装置における複数種類の前記対象成分の濃度特性の校正方法であって、上記いずれかの校正液を含む。
【0021】
上記の校正方法は、共通の溶液によって複数種類の対象成分の校正を行うことを可能とする。よって、上記の校正方法は、水質計測装置の校正にあたり、対象成分毎に専用校正液を用意する管理負担を軽減することができる。しかも、上記の校正方法は、対象成分毎の専用校正液を水質計測装置に順次流し込んで順番に校正を行う方法と比べて、校正時間の短縮化が図られやすい。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、校正液の管理負担を抑え、校正時間の短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、第1実施形態の校正液が用いられる水質計測装置を概念的に例示するブロック図である。
図2図2は、図1の水質計測装置の第1センサ部を説明する説明図である。
図3図3は、図1の水質計測装置の第2センサ部を説明する説明図である。
図4図4は、第1実施形態の校正液を収容した校正液入り容器を概念的に示す概念図である。
図5図5は、対象成分の校正方法を説明する説明図である。
図6図6は、対象成分の校正方法を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<第1実施形態>
1.水質計測装置について
図1には、第1実施形態の校正液1が用いられる水質計測装置100が例示される。
図1の水質計測装置100は、生物を飼育するための飼育水(例えば、養殖分野の飼育水など)を対象液として、この対象液の水質を計測するために用いられる装置であってもよく、飼育水とは異なる種類の対象液の水質を計測するための装置であってもよい。水質計測装置100は、養殖施設、アクアリウム、水耕栽培施設などでの水質管理に用いられるものであってもよく、その他の施設での水質管理に用いられるものであってもよく、施設以外での水質管理に用いられるものであってもよい。図1で例示される計測対象液190は、例えば、塩分を含む水(例えば、海水、汽水、人工海水など)であってもよく、塩分を含まない水又は塩分濃度が低い水であってもよい。
【0025】
水質計測装置100は、計測対象液に含まれる対象成分の濃度を計測する装置である。水質計測装置100が対象成分の濃度を計測する方法は、計測対象液に含まれる対象成分(例えば、カルシウムイオン、マグネシウムイオン等の対象イオン)の濃度を直接的に計測する方法と、計測対象液に含まれる対象成分(例えば、亜硝酸イオン、アンモニウムイオン等の対象イオン)をガス化させた成分(例えば、亜硝酸ガス、アンモニアガス)の濃度を計測する方法とを含む。図1の例では、計測対象液が自動的に又は人為的に収容部170に収容され、この収容部170に収容された計測対象液190をセンサ部110に供給してイオン濃度の計測を行うように構成される。
【0026】
水質計測装置100は、収容部170,172,174、供給路130、電磁弁140,142,144,166、三方弁162,168、ポンプ150,154、流量センサ152,156、制御部120などを備える。
【0027】
収容部170は、計測対象液を収容するサンプリング容器として構成されている。収容部172は、校正液1のうちの第1溶液1Aを収容する容器として構成されている。収容部174は、校正液1のうちの第2溶液1Bを収容する容器として構成されている。収容部176Aは、酸(例えば硫酸)を収容する容器である。収容部176Bは、塩基(例えば水酸化ナトリウム水溶液)を収容する容器である。
【0028】
供給路130は、収容部170からセンサ部110へと計測対象液190を流し、その計測対象液190をセンサ部110から排出するように構成された流路である。供給路130のうち、第1センサ部110Aの直近の上流側に配置され、第1センサ部110Aに液を導くように構成された流路が導入路132である。供給路130のうち、第1センサ部110Aと第2センサ部110Bとの間に配置された流路が中間路133である。供給路130のうち、第2センサ部110Bの直近の下流側に配置され、第2センサ部110Bから液を排出するように構成された流路が排出路134である。
【0029】
制御部120は、情報処理装置として構成され、各種制御を行う機能を有し、各種信号を取得する機能や各種情報処理を行う機能をも有する。
【0030】
電磁弁140は、制御部120による制御に応じて開閉する電磁弁であり、供給路130の所定位置(具体的には、第1センサ部110Aの上流側の位置)での流動を許容する状態と遮断する状態とに切り替わる弁である。電磁弁142,144は、収容部172,174の各々と三方弁162との間の流動を許容する状態と遮断する状態とに切り替わる弁である。
【0031】
三方弁162は、制御部120によって制御される弁であり、三方弁162よりも供給路130の下流側に液を送る際の供給元を、収容部170側と、収容部172,174側とに切り替え得る弁である。三方弁162が第1切替状態のときには、収容部170側からセンサ部110側への液の供給が許容され、収容部172,174側からセンサ部110側への液の供給が遮断される。三方弁162が第2切替状態のときには、収容部172,174側からセンサ部110側への液の供給が許容され、収容部170側からセンサ部110側への液の供給が遮断される。
【0032】
電磁弁166は、制御部120によって制御される弁であり、供給路182と供給路130との間の液の流動を許容する開状態と、許容しない閉状態とに切り替わる弁である。電磁弁166が閉状態のときには、供給路182と供給路130との間での液の流動は遮断され、供給路182側から供給路130への酸や塩基の供給は遮断される。電磁弁166が開状態のときには、供給路182側から供給路130側への液の供給は許容される。合流部130Cは、供給路130に対して電磁弁166側からの供給路が接続される部分であり、供給路130を流れる液に対して電磁弁166側からの液が合流し得る部分である。
【0033】
三方弁168は、制御部120によって制御される弁であり、供給路180側に液を送る際の供給元を、収容部176A側と収容部176B側とに切り替える弁である。三方弁168が第1切替状態のときには、収容部176Aと供給路180との間での液の流動を許容し、収容部176Bと供給路180との間での液の流動を遮断し、収容部176Aに収容された酸を供給路180側に供給可能とする。三方弁168が第2切替状態のときには、収容部176Bと供給路180との間での液の流動を許容し、収容部176Aと供給路180との間での液の流動を遮断し、収容部176Bに収容された塩基を供給路180側に供給可能とする。
【0034】
供給路180は、三方弁168から供給される液を流す経路であり、一端が三方弁168に接続されている。供給路180の他端は、ポンプ154に接続されている。供給路182は、供給路180を介してポンプ154側に供給された液を電磁弁166側に供給する経路である。
【0035】
ポンプ150は、公知のポンプとして構成され、供給路130に設けられている。ポンプ150は、自身の動作中に供給路130内の液を下流側に送り出す機能を有し、具体的には、自身の動作中に三方弁162側の液をセンサ部110側に送り出す機能を有する。ポンプ154は、公知のポンプとして構成され、供給路180と供給路182との間に設けられている。ポンプ154は、自身の動作中に供給路180内の液を供給路182側(電磁弁166側)に送り出す機能を有する。
【0036】
流量センサ152は、供給路130を流れる液の流量を計測するセンサである。流量センサ156は、供給路182を流れる液の流量を計測するセンサである。
【0037】
制御部120は、計測対象液190を対象としてイオン濃度の計測を行う場合、三方弁162を上記の第1切替状態とし、さらに電磁弁140も開状態に切り替え、ポンプ150を動作させる。すると、収容部170側からセンサ部110側への液の供給が許容され、収容部172,174側からセンサ部110側への液の供給が遮断され、収容部170に収容された計測対象液190が供給路130を介してセンサ部110に流し込まれる。そして、このように流し込まれた計測対象液190を対象としてセンサ部110が濃度の計測を行う。
【0038】
制御部120は、第1溶液1Aを用いた校正を行う場合、三方弁162を上記の第2切替状態とし、電磁弁142を開状態とし、電磁弁140、144を閉状態とし、ポンプ150を動作させる。すると、収容部170,174からセンサ部110への液の供給が遮断された状態で、収容部172内からセンサ部110へ第1溶液1Aが供給され、収容部172に収容された第1溶液1Aがセンサ部110に流し込まれる。そして、このように流し込まれた第1溶液1Aを対象としてセンサ部110が濃度の計測を行う。
【0039】
制御部120は、第2溶液1Bを用いた校正を行う場合、三方弁162を上記の第2切替状態とし、電磁弁144を開状態とし、電磁弁140、142を閉状態とし、ポンプ150を動作させる。すると、収容部170,172からセンサ部110への液の供給が遮断された状態で、収容部174内からセンサ部110へ第2溶液1Bが供給され、収容部174に収容された第2溶液1Bがセンサ部110に流し込まれる。そして、このように流し込まれた第2溶液1Bを対象としてセンサ部110が濃度の計測を行う。
【0040】
なお、図示はされていないが、供給路130には、供給路130を流れる液体に対して濾過処理を施す濾過部が設けられていてもよく、この濾過部が供給路130を流れる液体から異物を除去するように構成されていてもよい。
【0041】
図2には、第1センサ部110Aの内部構成が模式的に示される。
第1センサ部110Aは、予め計測対象のイオン(対象イオン)が定められており、供給路130を介してセンサ部110に流れ込んだ液に含まれる複数種類の対象イオンの濃度を計測する。収容部170からセンサ部110に計測対象液190が供給される場合には、「センサ部110に流れ込んだ液」は、計測対象液190である。収容部172からセンサ部110に第1溶液1Aが供給される場合には、「センサ部110に流れ込んだ液」は、第1溶液1Aである。収容部174からセンサ部110に第2溶液2Aが供給される場合には、「センサ部110に流れ込んだ液」は、第2溶液2Aである。なお、以下では、供給路130を介してセンサ部110に流れ込んだ液は、供給液とも称される。図1の例では、対象イオンは、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、亜硝酸イオン、アンモニウムイオン、の4種類である。
【0042】
図2のように、第1センサ部110Aは、pHセンサ30、カルシウムイオンセンサ22、マグネシウムイオンセンサ24、参照電極34、を備える。
【0043】
図2で示されるpHセンサ30は、公知の原理で動作するpHセンサとして構成されている。pHセンサ30は、供給路130において、カルシウムイオンセンサ22の上流側に設けられている。さらに詳細には、pHセンサ30は、第1センサ部110Aにおいて、カルシウムイオンセンサ22の上流側に設けられている。pHセンサ30は、電極部30A及び電位差計30Bを備える。電極部30Aは、ガラス電極として構成されている。pHセンサ30は、供給路130内に供給液(例えば、計測対象液190(図1))が充満しているときに電極部30Aの表面が供給液中に浸されて供給液に接触する。このとき、pHセンサ30は、電極部30A近傍の供給液のpHに対応した電位を電極部30Aに発生させる。電位差計30Bは、電極部30Aの電位と参照電極34の電位との差を計測し、その電位差を示す信号(供給液のpHに応じた電圧信号)を制御部120に出力する。
【0044】
図2で示される参照電極34は、公知の参照電極(比較電極)として構成され、pHセンサ30、カルシウムイオンセンサ22、マグネシウムイオンセンサ24、pHセンサ32の電極電位の基準となる基準電位を発生させる。図2の例では、参照電極34は、供給路130においてマグネシウムイオンセンサ24の下流側且つ中間路133の上流側に設けられている。
【0045】
カルシウムイオンセンサ22は、供給路130において、導入路132の下流側(具体的には、pHセンサ30の下流側)に設けられている。カルシウムイオンセンサ22は、イオン電極22A、第1電位差計22Bを備える。イオン電極22Aは、例えば公知の液膜式イオン電極として構成されている。イオン電極22Aは、カルシウムイオンに対して選択的に作用する電極膜を有し、カルシウムイオンのイオン濃度に応じた起電力を発生させる構成をなす。イオン電極22Aは、導入路132の下流側(具体的には、pHセンサ30の下流側)において供給路130を流動する供給液に浸される。イオン電極22Aは、イオン電極22A近傍の供給液中に含まれるカルシウムイオンの濃度に対応した電極電位を発生させる。第1電位差計22Bは、イオン電極22A、参照電極34に電気的に接続されている。第1電位差計22Bは、イオン電極22Aの電極電位と参照電極34の電極電位との電位差を計測し、その電位差を示す信号(センサ部110に供給された供給液中に含有されるカルシウムイオンの濃度に応じた電位差を示す信号)を制御部120に出力する。
【0046】
マグネシウムイオンセンサ24は、供給路130において、カルシウムイオンセンサ22の下流側に設けられている。マグネシウムイオンセンサ24は、イオン電極24A、第2電位差計24Bを備える。イオン電極24Aは、例えば液膜式イオン電極として構成されている。イオン電極24Aは、イオン電極22Aの下流側において供給路130を流動する供給液に浸される。イオン電極24Aは、カルシウムイオンセンサ22を通過した供給液中に含まれるマグネシウムイオンの濃度に対応した電極電位を発生させる。第2電位差計24Bは、イオン電極24A、参照電極34に電気的に接続されている。第2電位差計24Bは、イオン電極24Aの電極電位と参照電極34電極電位との差を計測し、その電位差を示す信号(センサ部110に供給された供給液中に含有されるマグネシウムイオンの濃度に応じた電位差を示す信号)を制御部120に出力する。
【0047】
図3で示されるように、第2センサ部110Bは、pHセンサ32、アンモニウムイオンセンサ(アンモニアセンサ)26、亜硝酸イオンセンサ(亜硝酸センサ)28を備える。
【0048】
図3で示されるpHセンサ32は、pHセンサ30(図2)と同様の構成をなし、同様に機能する。pHセンサ32は、供給路130内に供給液(例えば、計測対象液190(図1))が充満しているときに、電極部32A付近の供給液のpHに対応した電位を電極部32Aに発生させる。電位差計32Bは、電極部32Aの電位と参照電極34(図2)の電位との差を計測し、その電位差を示す信号(供給液のpHに応じた電圧信号)を制御部120に出力する。
【0049】
亜硝酸イオンセンサ28は、亜硝酸イオン又は亜硝酸ガスを計測対象とし、収容部176Aから酸を添加された後の供給液に含まれる計測対象の濃度を計測する。亜硝酸イオンセンサ28は、供給路130において合流部130Cの下流側に設けられ、pHセンサ32の下流側(具体的には、アンモニウムイオンセンサ26の下流側)に設けられている。なお、制御部120は、亜硝酸イオンセンサ28によって亜硝酸ガスの濃度を計測する場合、電磁弁166を開状態として供給路182と供給路130との間での液の流動を許容するように動作させる。更に、制御部120は、三方弁168を第1切替状態として収容部176Aと供給路180との間での液の流動を許容し、ポンプ154を動作させる。このような動作により、収容部176Aに収容された酸が供給路130に供給され、供給液に含まれる亜硝酸イオンを亜硝酸としてガス化させることができる。水質計測装置100は、供給液に酸を添加する場合に、添加後の供給液(合流部130Cの下流側の供給液)のpHが1.5以下になるよう調整される。
【0050】
亜硝酸イオンセンサ28(亜硝酸センサ)は、公知の隔膜式イオンセンサとして構成され、イオン電極28A、第3電位差計28B、参照電極(基準電極)28Cを備える。イオン電極28Aは、公知の隔膜式イオン電極として構成されている。イオン電極28Aは、例えば、隔膜を通過させて電極内部の電解液に亜硝酸ガスを溶け込ませ、この亜硝酸ガスによって変化する内部液のpHに応じた起電力を発生させる構成をなす。このようにして、イオン電極28Aは、亜硝酸ガスを選択的に検知することができる。これにより、依然として水中に含まれるイオン(妨害イオン)が亜硝酸の検出に悪影響を及ぼすことを抑制し、亜硝酸の濃度を精度良く計測することができる。イオン電極28Aは、合流部130Cの下流側において供給路130を流動する供給液に浸される。イオン電極28Aは、合流部130Cを通過した供給液中に含まれる亜硝酸ガス(すなわち、合流部130Cを通過する前から元々供給液に含有されていた亜硝酸ガスと、合流部130Cを通過することで亜硝酸イオンからガス化した亜硝酸ガスと、を合わせた亜硝酸ガス)の濃度に対応した電極電位を発生させる。第3電位差計28Bは、イオン電極28A、参照電極28Cに電気的に接続されている。第3電位差計28Bは、イオン電極28Aの電極電位と参照電極28Cの電極電位との差を計測し、その電位差を示す信号(元々飼育水に含まれていた亜硝酸ガスと、亜硝酸イオンからガス化した亜硝酸ガスと、を合わせたガスの濃度に応じた電位差を示す信号)を制御部120に出力する。
【0051】
アンモニウムイオンセンサ26(アンモニアセンサ)は、アンモニウムイオン又はアンモニアを計測対象とし、収容部176Bから塩基を添加された後の供給液に含まれる計測対象の濃度を計測する。アンモニウムイオンセンサ26は、供給路130において、合流部130Cの下流側に設けられ、pHセンサ32の下流側に設けられる。なお、制御部120は、アンモニウムイオンセンサ(アンモニアセンサ)26によってアンモニアガスの濃度を計測する場合、電磁弁166を開状態として供給路182と供給路130との間での液の流動を許容するように動作させる。更に、制御部120は、三方弁168を第2切替状態として収容部176Bと供給路180との間での液の流動を許容し、ポンプ154を動作させる。このような動作により、収容部176Bに収容された塩基が供給路130に供給され、供給液中に含まれるアンモニウムイオンをアンモニアとしてガス化させることができる。水質計測装置100は、供給液に塩基を供給する場合に、添加後の供給液(合流部130Cの下流側の供給液)のpHが11.5以上になるよう調整される。
【0052】
アンモニウムイオンセンサ26は、公知の隔膜式イオンセンサとして構成され、イオン電極26A、第4電位差計26B、参照電極(基準電極)26Cを備えている。イオン電極26Aは、公知の隔膜式イオン電極として構成されている。イオン電極26Aは、例えば、隔膜を通過させて電極内部の電解液にアンモニアガスを溶け込ませ、このアンモニアガスによって変化する内部液のpHに応じた起電力を発生させる構成となっている。このようにして、イオン電極26Aは、ガス化させたアンモニアを選択的に検知することができる。これにより、依然として水中に含まれるイオン(妨害イオン)がアンモニアの検出に悪影響を及ぼすことを抑制し、アンモニアの濃度を精度良く計測することができる。イオン電極26Aは、合流部130Cの下流側において供給路130を流動する供給液に浸される。イオン電極26Aは、合流部130Cを通過した供給液中に含まれるアンモニアガス(すなわち、合流部130Cを通過する前から元々供給液中に含まれていたアンモニアガスと、合流部130Cを通過することでアンモニウムイオンからガス化したアンモニアガスと、を合わせたアンモニアガス)の濃度に対応した電極電位を発生させる。第4電位差計26Bは、イオン電極26A、参照電極26Cに電気的に接続されている。第4電位差計26Bは、イオン電極26Aの電極電位と参照電極26Cの電極電位との差を計測し、その電位差を示す信号(元々供給液中に含まれていたアンモニアガスと、アンモニウムイオンからガス化したアンモニアガスと、を合わせたガスの濃度に応じた電位差を示す信号)を制御部120に出力する。アンモニウムイオンセンサ26を通過した供給液は、排出路134から排出される。
【0053】
2.校正液について
次の説明は、校正液1の詳細に関する。
校正液1は、水質計測装置用の校正液であり、図1の例では、水質計測装置100の校正に用いられる。具体的には、校正液1は、水質計測装置100において複数種類の対象成分の濃度特性を校正する方法に用いられる。校正液1は、水質計測装置100の計測対象となる複数種類の対象イオンの各々が対象イオン毎に定められた濃度で含有される溶液を備える。
【0054】
図1の例では、校正液1は、第1溶液1Aと第2溶液1Bとを含む。第1溶液1A及び第2溶液1Bには、共通の対象イオンが複数種類含有されている。図1の例では、水質計測装置100の計測対象となる複数種類の対象イオンは、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、亜硝酸イオン、アンモニウムイオンである。従って、第1溶液1Aは、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、亜硝酸イオン、アンモニウムイオンの各々が、対象イオン毎に定められた濃度で含有される。同様に、第2溶液1Bは、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、亜硝酸イオン、アンモニウムイオンの各々が、対象イオン毎に定められた濃度で含有される。
【0055】
第1溶液1A及び第2溶液1Bに共通して含有される各対象イオンは、第1溶液1Aでの濃度と第2溶液1Bでの濃度とがそれぞれ異なっている。例えば、第1溶液1Aに含まれるカルシウムイオンのイオン濃度と、第2溶液2Aに含まれるカルシウムイオンのイオン濃度とは異なる。また、第1溶液1Aに含まれるマグネシウムイオンのイオン濃度と、第2溶液2Aに含まれるマグネシウムイオンのイオン濃度とは異なる。更に、第1溶液1Aに含まれる亜硝酸イオンのイオン濃度と、第2溶液2Aに含まれる亜硝酸イオンのイオン濃度とは異なる。更に、第1溶液1Aに含まれるアンモニウムイオンのイオン濃度と、第2溶液2Aに含まれるアンモニウムイオンのイオン濃度とは異なる。更に、第1溶液1AのpHと第2溶液1BのpHとが異なっている。そして、第1溶液1AのpHも、第2溶液1BのpHも、予め定められたpH範囲内とされている。
【0056】
校正液1に含まれる複数種類の対象イオンの中には、ガス化イオンが1種類以上含まれる。ガス化イオンは、自身に対応するpH安定域が定められ且つ自身が含有される液のpHがpH安定域を外れる場合にガス化が促進されるイオンである。上述した4種類のイオンが含まれる例では、アンモニウムイオン及び亜硝酸イオンがガス化イオンである。そして、第1溶液1AのpHは、第1溶液1Aに含まれる全てのガス化イオン(アンモニウムイオン及び亜硝酸イオン)のpH安定域内とされている。アンモニウムイオンのpH安定域は、pH6.5未満のpH範囲とされている。亜硝酸イオンのpH安定域はpH5.5を超えるpH範囲とされている。従って、第1溶液1AのpHの値をX1phとした場合、5.5<X1ph<6.5となっている。同様に、第2溶液1BのpHは、第2溶液1Bに含まれる全てのガス化イオン(アンモニウムイオン及び亜硝酸イオン)のpH安定域内とされている。従って、第2溶液1BのpHの値X2phとした場合、5.5<X2ph<6.5となっている。
【0057】
校正液1に含まれる複数種類の対象イオンの中には、化合物化イオンが1種類以上含まれる。化合物化イオンは、自身に対応するpH安定域が定められ且つ自身が含有される液のpHがpH安定域を外れる場合に化合物化が促進されるイオンである。上述した4種類のイオンが含まれる例では、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンが化合物化イオンである。そして、第1溶液1AのpHは、第1溶液1Aに含まれる全ての化合物化イオン(カルシウムイオン及びマグネシウムイオン)のpH安定域内とされている。カルシウムイオンのpH安定域は、pH12.8未満のpH範囲とされている。マグネシウムイオンのpH安定域はpH11.6未満のpH範囲とされている。従って、第1溶液1AのpHの値をX1phとした場合、X1ph<11.6となっている。同様に、第2溶液1BのpHは、第2溶液1Bに含まれる全ての化合物化イオン(カルシウムイオン及びマグネシウムイオン)のpH安定域内とされている。従って、第2溶液1BのpHの値をX2phとした場合、X2ph<11.6となっている。
【0058】
第1溶液1A及び第2溶液1Bのいずれも、ガス化イオンに関して望ましい上述のpH範囲及び化合物化イオンに関して望ましい上述のpH範囲をいずれも満たしている。従って、第1溶液1AのpHの値X1phは、5.5<X1ph<6.5であり、第2溶液2AのpHの値X2phは、5.5<X2ph<6.5である。この範囲を満たしつつ、第1溶液1AのpHと第2溶液2AのpHとが異なっている。
【0059】
校正液1の第1溶液1A及び第2溶液1Bは、図4のような収容体9内に収容して管理しておくことができる。第1溶液1Aは、収容体9内に収容されて密封して管理され、使用時に収容体9が水質計測装置100に接続されて収容部172となる。第2溶液1Bは、第1溶液1Aが収容された収容体9とは別の収容体9内に収容されて密封して管理され、使用時に収容体9が水質計測装置100に接続されて収容部174となる。水質計測装置100と各収容体9との接続構造は、例えば、電磁弁142,144の上流側に設けられた各チューブ(電磁弁142,144の各々の上流側の各管路を構成する各チューブ)が各収容体9にそれぞれ差し込まれて、各チューブの端部が各収容体9内の第1溶液1A、第2溶液1B内にそれぞれ配置されるような接続方法が挙げられる。
【0060】
収容体9は、例えばパウチ型容器として構成されており、袋体内に校正液1を密封し得る構成をなしている。収容体9は、例えば、アルミニウム,プラスチックフィルム,蒸着フィルムなどからなるシート材料又はフィルム材料を重ね合わせて外縁部を接着した構成をなしている。収容体9には、収容体9の内部と外部とを連通させる開口部9Aが設けられ、この開口部9Aに対して着脱可能な蓋部9Bが取り付けられている。収容体9は、開口部9Aを介して校正液1を外部に放出し得る構成をなしており、また、開口部9Aを介して例えばチューブなどを接続することで、校正液1を水質計測装置100に供給し得る構成をなしている。収容体9の外郭部を構成する部分は、遮光性・ガスバリア性を有する構成であってもよい。
【0061】
次の説明は、校正液1の効果の例に関する。
上述の校正液1は、共通の溶液(第1溶液1A又は第2溶液1B)によって複数種類の対象成分の校正を行うことを可能とする。よって、校正液1は、水質計測装置100の校正にあたり、対象成分毎に専用校正液を用意する管理負担を軽減することができる。しかも、校正液1が用いられれば、対象成分毎の専用校正液を水質計測装置100に順次流し込んで順番に校正を行う方法と比べて、校正時間の短縮化が図られやすい。
【0062】
校正液1は、複数種類の対象成分の校正を行うことを可能とし、その中にガス化イオン(アンモニウムイオン、亜硝酸イオン)を含ませることができる。しかも、校正液1は、溶液のpHが溶液に含まれる全ての種類のガス化イオンのpH安定域内とされているため、ガス化イオンのガス化が抑制された状態で安定的に保たれる。
【0063】
校正液1は、複数種類の対象成分の校正を行うことを可能とし、その中に化合物化イオン(カルシウムイオン、マグネシウムイオン)を含ませることができる。しかも、校正液1は、溶液のpHが溶液に含まれる全ての種類の化合物化イオンのpH安定域内とされているため、化合物化イオンの化合物化が抑制された状態で安定的に保たれる。
【0064】
具体的には、校正液1は、上記の化合物化イオンと上記のガス化イオンとを含んでおり、溶液のpHが、全ての化合物化イオンのpH安定域内および全てのガス化イオンのpH安定域内とされている。この校正液1は、溶液中にガス化イオンと化合物化イオンが共存する環境下において、対象成分のガス化・化合物化が抑制された状態で安定的に保たれる。
【0065】
校正液1のうちの第1溶液1Aを対象として水質計測装置100が計測を行う場合、この水質計測装置100は、第1溶液1Aに含まれる各々の対象成分についての濃度とセンサが出力する電気的信号(例えば電圧信号)との関係を正確に特定することができる。更に、第2溶液1Bを対象として水質計測装置100が計測を行う場合、この水質計測装置100は、第2溶液1Bに含まれる各々の対象イオンについての濃度とセンサが出力する電気的信号(例えば電圧信号)との関係を正確に特定することができる。よって、校正液1によれば、水質計測装置100は、各々の対象成分についての濃度と電気的信号との関係式を正確に求めることができる。
【0066】
例えば、図5のように、第1溶液1Aに含まれるカルシウムイオン(濃度Z1)をカルシウムイオンセンサ22で計測したときに検出値V1が得られ、第2溶液2Aに含まれるカルシウムイオン(濃度Z2)を計測したときに検出値V2が得られた場合、これらによって、カルシウムイオンセンサ22の関係式として、図5の直線のような関係式を得ることができる。他の対象イオンについても、同様の方法で関係式を得ることができる。
【0067】
また、図6のように、第1溶液1A(pH:α)をpHセンサ30によって計測したときのpHの計測値として検出値V3が得られ、第2溶液1B(pH:β)を計測したときのpHの計測値として検出値V4が得られた場合、これらによって、pHセンサ30の関係式として、図6の直線のような関係式を得ることができる。
【0068】
校正液1の溶液(第1溶液1A、第2溶液1B)は、少なくともナトリウムイオン、塩化物イオン、カリウムイオンが含有されていてもよい。この場合、対象イオンは、ナトリウムイオン、塩化物イオン、カリウムイオン以外のイオン(カルシウムイオン、マグネシウムイオン、亜硝酸イオン、アンモニウムイオン)を含むことになる。この校正液1は、海水を含む又は海水の成分を含む溶液に含有される複数種類の対象イオンの濃度を測定する水質計測装置100に対して、複数種類の対象イオンの校正を行うことを可能とする。
【0069】
校正液入り容器10は、校正液1と、校正液1を収容する収容体9と、を備え、収容体9内に校正液1が収容されつつ密封されている。この校正液入り容器10は、複数種類のイオンを混在させた校正液1を密封性の高い収容体9内において安定的に管理することができる。
【0070】
<他の実施形態>
本発明は、上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述又は後述の実施形態の特徴は、矛盾しない範囲であらゆる組み合わせが可能である。また、上述又は後述の実施形態のいずれの特徴も、必須のものとして明示されていなければ省略することもできる。更に、上述した実施形態は、次のように変更されてもよい。
【0071】
上記実施形態では、ガス化イオンとして、アンモニウムイオン及び亜硝酸イオンが例示されたが、ガス化イオンとして炭酸イオンが含まれていてもよい。炭酸イオンのpH安定域は、pH9を超えるpH範囲である。従って、第1溶液及び第2溶液に炭酸イオンを含ませる場合には、溶液のpHをpH9を超えるpH範囲とすることが望ましい。
【0072】
上記実施形態では、化合物化イオンとして、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンが例示されたが、化合物化イオンとして、リン酸イオン、ホウ素、ナトリウムイオン、カリウムイオン、鉄イオン、マンガンイオン、亜鉛イオン、銅イオン、モリブデンイオン、ヨウ化物イオン、塩化物イオン、硫化物イオン、硝酸イオンなどが含まれていてもよい。リン酸イオンが含まれる場合には、校正液の溶液のpHは、リン酸イオンの安定域(pH2.2を超える範囲)であることが望ましい。ホウ素が含まれる場合には、校正液の溶液のpHは、ホウ素イオンの安定域(pH9.2を超える範囲)であることが望ましい。ナトリウムイオンが含まれる場合には、校正液の溶液のpHは、ナトリウム素イオンの安定域(pH13未満の範囲)であることが望ましい。カリウムイオンが含まれる場合には、校正液の溶液のpHは、カリウムイオンの安定域(pH13未満の範囲)であることが望ましい。鉄イオンが含まれる場合には、校正液の溶液のpHは、鉄イオンの安定域(pH5未満の範囲)であることが望ましい。マンガンイオンが含まれる場合には、校正液の溶液のpHは、マンガンイオンの安定域(pH10.6未満の範囲)であることが望ましい。亜鉛イオンが含まれる場合には、校正液の溶液のpHは、亜鉛イオンの安定域(pH7.8未満の範囲)であることが望ましい。銅イオンが含まれる場合には、校正液の溶液のpHは、銅イオンの安定域(pH7.4未満の範囲)であることが望ましい。モリブデンイオンが含まれる場合には、校正液の溶液のpHは、モリブデンイオンの安定域(pH12.8未満の範囲)であることが望ましい。ヨウ素イオンが含まれる場合には、校正液の溶液のpHは、ヨウ化物イオンの安定域(pH10.6未満の範囲)であることが望ましい。塩化物イオンが含まれる場合には、校正液の溶液のpHは、塩化物イオンの安定域(pH12.5未満の範囲)であることが望ましい。硫化物イオンが含まれる場合には、校正液の溶液のpHは、硫化物イオンの安定域(pH12.5未満の範囲)であることが望ましい。
【0073】
上記実施形態では、水質計測装置100において酸と塩基とが共通の経路から導入される構成となっていたが、酸と塩基とが別々の経路を介して選択的に導入されるようになっていてもよい。
【0074】
上記実施形態では、校正液1が第1溶液と第2溶液とを備えていたが、校正液は、第1溶液及び第2溶液と同様の対象イオンが複数種類の含有される第3溶液を更に備えていてもよく、同様の対象イオンが複数種類の含有される4種類以上の溶液を備えていてもよい。そして、複数種類の溶液に共通して含有される複数種類の対象イオンの各々は、溶液毎にイオン濃度が異なっていてもよい。そして、複数種類の溶液は、pHが互いに異なっていてもよい。
【0075】
水質計測装置100の計測対象である計測対象液は、「生産物の生育管理に使用する水」が例示されるが、その具体例は、上述の例に限定されない。例えば、「生産物の生育管理」の具体例としては、「水産業における生育管理」「農業における生育管理」「畜産業における生育管理」「林業における生育管理」などであってもよく、その他の第一次産業における生育管理であってもよい。
【0076】
水質計測装置100の計測対象である計測対象液は、具体的には「水生生物の養殖管理」に用いる水であってもよい。この場合、「水生生物の養殖管理に用いる水」としては、水生生物を飼育する飼育水が例示される。また、「水生生物」としては、エビなどの甲殻類が例示される。ただし、水生生物は、この例に限定されず、エビ以外の十脚目、軟甲綱、甲殻亜門、節足動物門等の生物であってもよい。或いは、水生生物は、鯛などの魚類、ホタテ貝などの貝類、ワカメなどの藻類などであってもよい。
【0077】
なお、今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、今回開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示された範囲内又は特許請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0078】
1…校正液
1A…第1溶液
1B…第2溶液
9…収容体
10…校正液入り容器
100…水質計測装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6