(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-20
(45)【発行日】2023-09-28
(54)【発明の名称】磁性粒子、免疫測定用試薬、免疫測定用キット及び免疫測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/543 20060101AFI20230921BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20230921BHJP
G01N 33/553 20060101ALI20230921BHJP
C07K 16/26 20060101ALN20230921BHJP
C07K 17/14 20060101ALN20230921BHJP
【FI】
G01N33/543 541A
G01N33/53 F
G01N33/553
C07K16/26 ZNA
C07K17/14
(21)【出願番号】P 2020055665
(22)【出願日】2020-03-26
【審査請求日】2022-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】池田 祐輝
(72)【発明者】
【氏名】北川 隆啓
(72)【発明者】
【氏名】黒川 祐人
【審査官】下村 一石
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-052905(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0123947(US,A1)
【文献】心機能のバイオマーカー -BNP と NT-proBNP-,SYsmex Journal Web,2013年06月25日,Vol.14, No.2,pp.1-13,https://www.sysmex.co.jp/products_solutions/library/journal/vol14_no2/5097.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
C07K 16/26
C07K 17/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性粒子(B)に、抗体(A)が固定化されてなる磁性粒子であって、
前記抗体(A)が、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するNT-proBNPにおけるアミノ酸番号41~45の抗原部位を認識し、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するNT-proBNPにおけるアミノ酸番号42~49の抗原部位を認識しない抗体である磁性粒子(C)。
【請求項2】
前記磁性粒子(B)が、体積平均粒子径1~20nmの超常磁性金属酸化物(D)を、前記磁性粒子(B)の重量を基準として60~95重量%含有する磁性粒子である請求項1に記載の磁性粒子。
【請求項3】
体積平均粒子径が、0.5~10μmである請求項1又は2に記載の磁性粒子。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の磁性粒子を含有する免疫測定用試薬。
【請求項5】
請求項4に記載の免疫測定用試薬を含む免疫測定用キット。
【請求項6】
請求項5に記載の免疫測定用キットを用いる免疫測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁性粒子、免疫測定用試薬、免疫測定用キット及び免疫測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、生体由来の試料[生体体液(血清、血液、リンパ液、腹水及び尿等)、各種細胞類及び培養液等]が含有するNT-proBNPを検出する手段として特許文献1に記載の技術が知られている。
しかしながら、これらの技術におけるNT-proBNPの検出感度は十分でなかった。検出感度を高くすることで、免疫検査に要する時間を短縮することができ、心不全を発症した患者に対して診断から治療を実施するまでの時間を短縮でき、後遺症及び死亡リスクを低減できることから、更なる検出感度の向上が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、免疫測定に用いることでNT-proBNPを高感度で検出することを可能とする磁性粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
即ち本発明は、磁性粒子(B)に、抗体(A)が固定化されてなる磁性粒子であって、前記抗体(A)が、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するNT-proBNPにおけるアミノ酸番号41~45の抗原部位を認識し、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するNT-proBNPにおけるアミノ酸番号42~49の抗原部位を認識しない抗体である磁性粒子(C);前記の磁性粒子(C)を含有する免疫測定用試薬;前記の免疫測定用試薬を含む免疫測定用キット:前記の免疫測定用キットを用いる免疫測定方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の磁性粒子は、免疫測定に用いることで、NT-proBNPを高感度で検出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明における磁性粒子(C)は、磁性粒子(B)に、抗体(A)が固定化されてなる磁性粒子である。
【0008】
<抗体(A)>
本発明における抗体(A)は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するNT-proBNPにおけるアミノ酸番号41~45の抗原部位を認識し、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するNT-proBNPにおけるアミノ酸番号42~49の抗原部位を認識しない抗体である。
なお、本願においてアミノ酸番号とは、NT-proBNP(配列番号1)を構成する76個のアミノ酸に番号を付与したものであり、N末端に位置するアミノ酸をアミノ酸番号「1」とし、N末端からC末端方向に順番に番号を付与したものである。よって、C末端に位置するアミノ酸のアミノ酸番号は「76」となる。
【0009】
本発明における抗体(A)は、遺伝子操作による修飾によって得られるモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、またはヒト化抗体等が挙げられる。
また、抗体(A)は、F(ab’)2、Fab’及びFabフラグメント等のフラグメントであってもよい。
【0010】
抗体(A)の認識部位は、以下の手法で確認することができる。
以下の方法にて、下記の69種類の8量体のペプチドと、抗体(A)との反応性(%)を以下の方法で確認する。反応性が50%以上である場合、抗体(A)はその8量体のペプチドに対応する配列を認識すると判断する。
ここで、アミノ酸番号38~45の配列を有するペプチド、アミノ酸番号39~46の配列を有するペプチド、アミノ酸番号40~47の配列を有するペプチド、及び、アミノ酸番号41~48の配列を有するペプチドの全ての反応性が50%以上の場合(配列を認識している場合)、抗体(A)はアミノ酸番号41~45の抗原部位を認識しているものと判断する。
また、アミノ酸番号42~49の配列を有するペプチドの反応性が50%未満の場合は、抗体(A)はアミノ酸番号42~49の抗原部位を認識していないものと判断する。
【0011】
[69種類の8量体のペプチド]
配列番号1に示されるNTproBNP(アミノ酸番号1~76の配列を有する)アミド(swissprot:アクセッション番号 P16860; aa27~aa134)に基づいて、1アミノ酸ずつ配列をシフトさせた69種の8量体のペプチド、即ち、配列番号2に示されるアミノ酸番号1~8の配列を有するペプチド、配列番号3に示されるアミノ酸番号2~9の配列を有するペプチド、配列番号4に示されるアミノ酸番号3~10の配列を有するペプチド、配列番号5に示されるアミノ酸番号4~11の配列を有するペプチド、・・・配列番号67に示されるアミノ酸番号66~73の配列を有するペプチド、配列番号68に示されるアミノ酸番号67~74の配列を有するペプチド、配列番号69に示されるアミノ酸番号68~75の配列を有するペプチド及び配列番号70に示されるアミノ酸番号69~76の配列を有するペプチドを準備する。各8量体ペプチドは、公知の方法で合成することで得ることができる。
【0012】
[反応性の確認方法]
下記の反応性測定用試薬、8量体のペプチドを含有する試料、ブランク測定用の試料、標識試薬、及び、発光試薬(後述のルミノール発光試薬及び過酸化水素液)を用いて、8量体のペプチド毎の抗体(A)との反応性を測定する(69種類の8量体のペプチド毎に実施する)。
具体的には、以下の1)~4)の手順で測定する。
1)試験管に後述の反応性測定用試薬を0.025mL投入し、試験管の外側からネオジウム磁石で磁性シリカ粒子を集め、試験管中の液をアスピレーターで除去し、ネオジウム磁石を側面から十分に離す。
2)1)で得た試験管に、後述の免疫測定用の緩衝液0.2mL及び後述の8量体のペプチドを含有する試料0.025mLを投入し、試験管中で37℃3分間反応させ、磁性粒子上に抗体(A)/抗原(proBNP抗原又は8量体ペプチド)の複合体を形成させる。その後、試験管の外側からネオジウム磁石で磁性シリカ粒子を10秒間集め、試験管中の液をアスピレーターで除去し、ネオジウム磁石を側面から十分に離す。
その後、試験管の外側からネオジウム磁石で磁性シリカ粒子を集め、試験管中の液をアスピレーターで除去し、ネオジウム磁石を側面から十分に離す。その後、生理食塩水0.5mLを加えて磁性シリカ粒子を分散させて集磁後、アスピレーターで液を除く洗浄操作を3回行う。
3)2)で得た試験管に、後述の標識試薬0.1mLを投入し、試験管中で37℃3分間反応させ、磁性シリカ粒子上に抗体(A)/抗原(proBNP抗原又は8量体ペプチド)/ペルオキシダーゼ標識抗NT-proBNPモノクローナル抗体の複合体を形成させる。その後、試験管の外側からネオジウム磁石で磁性シリカ粒子を集め、試験管中の液をアスピレーターで除去し、ネオジウム磁石を側面から十分に離す。その後、生理食塩水0.5mLを加えて磁性シリカ粒子を分散させて集磁後、アスピレーターで液を除く洗浄操作を2回行う。
4)後述のルミノール発光試薬0.1mLと後述の過酸化水素液0.1mLとを同時に加え、37℃で発光反応させ、ルミノール発光試薬及び過酸化水素液を添加後40~45秒の一秒当たりの平均発光量をルミノメーター[ベルトールドジャパン社製「Lumat LB9507」等]で測定し、この値を発光量(X1)とする。
5)上記の2)において、8量体のペプチドを含有する試料に代えて、後述のブランク測定用の試料を用いる以外は同様にして上記1)~4)を実施して、平均発光量を測定する。この値を発光量(X0)とする。
6)以下の式から反応性を算出する。
反応性(%)=1-(X1)/(X0)
【0013】
[反応性測定用試薬]
測定対象の抗体(A)を、後述の磁性粒子(B)に固定化した反応性試験用の磁性粒子を準備する[固定化の好ましい方法としては、抗体(A)及び磁性粒子(B)を用いた後述の磁性粒子(C)の製造方法と同様の方法を用いることができる]。この反応性試験用の磁性粒子の濃度が1mg/mLとなるように、1重量%の牛血清アルブミン含有の0.02Mリン酸緩衝液(pH7.0)で希釈したものを反応性測定用試薬とする。
【0014】
[免疫測定用の緩衝液]
ウシ血清アルブミン(Boval Campany製)を0.1重量%、エマルミンL-90-S(三洋化成工業(株)製)を1重量%、塩化ナトリウム(富士フィルム和光純薬(株)製)を0.85重量%含有した0.02Mリン酸緩衝液(pH7.0)
【0015】
[8量体のペプチドを含有する試料]
NT-proBNPを30,000pg/mLの濃度で含有する水溶液と、前記の8量体ペプチドの内1種を200μg/mLの濃度で含有する水溶液とを重量比1:1で混合した混合物
【0016】
[ブランク測定用の試料]
NT-proBNPを30,000pg/mLの濃度で含有する水溶液と、水とを重量比1:1で混合した混合物
【0017】
[標識試薬]
ペルオキシダーゼで標識された抗NT-proBNPモノクローナル抗体(後述の「標識物質を、測定対象物質と特異的に結合する物質に、結合させる」方法を用いて、ペルオキシダーゼを、抗NT-proBNPモノクローナル抗体に、結合させた抗体)を100nMの濃度で含有する水溶液
【0018】
[ルミノール発光試薬]
ルミノールのナトリウム塩[シグマ アルドリッチ ジャパン(株)製]0.7g及び4-(シアノメチルチオ)フェノール0.1gを1,000mLメスフラスコに仕込む。続いて、3-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]プロパンスルホン酸/水酸化ナトリウム緩衝液(10mM、pH8.6)を溶液の容量が1,000mLになるように仕込み、25℃で均一混合して、ルミノール発光試薬を調製する。
【0019】
[過酸化水素液]
過酸化水素[富士フィルム和光純薬(株)製、試薬特級、濃度30重量%]6.6gを1,000mLメスフラスコに仕込む。続いて、脱イオン水を溶液の容量が1,000mLになるように仕込み、25℃で均一混合して、過酸化水素液を調製する。
【0020】
また、本発明における抗体(A)は、以下の関係式(1)を満たすことが好ましい。
P/Q≧0.5 (1)
【0021】
関係式(1)において、Pは、前記の反応性測定において、8量体ペプチドとして、前記抗体(A)の配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するNT-proBNPのアミノ酸番号41~48の配列を有する8量体ペプチドを用いた場合の反応性である。
関係式(1)において、Qは、前記の反応性測定において、8量体ペプチドとして、前記抗体(A)の配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するNT-proBNPのアミノ酸番号39~46の配列を有する8量体ペプチドを用いた場合の反応性である。
【0022】
このような抗体(A)の製造方法としては、以下の方法等が挙げられる。
公知の方法にて、ヒトNT-proBNPを適切な生物(マウス等)に免疫して抗体を得る。上記方法で得た抗体について、認識部位を上記の方法にて確認するスクリーニングを実施することで、前記の抗体(A)を得ることができる。
【0023】
<磁性粒子(B)>
本発明において前記の抗体(A)を固定化させる磁性粒子は、免疫測定における測定時間の短時間化の観点から、例えば特開2014-210680号公報及び特開2013-019889号公報等に記載の磁性シリカ粒子であることが好ましい。
【0024】
前記の磁性シリカ粒子としては、免疫測定において測定時間の短時間化の観点から、シリカのマトリックス中に体積平均粒子径が1~20nmで超常磁性を有する金属酸化物(D)[以降、超常磁性金属酸化物(D)と略記することがある]が分散されているものが好ましい。超常磁性とは、外部磁場の存在下で物質の個々の原子磁気モーメントが整列し誘発された一時的な磁場を示し、外部磁場を取り除くと、部分的な整列が損なわれ磁場を示さなくなることをいう。
なお、金属酸化物の体積平均粒子径は、任意の200個の粒子について走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製「JSM-7000F」)で観察して測定された粒子径の平均値である。
【0025】
平均粒子径が1~20nmで超常磁性を示す超常磁性金属酸化物としては、鉄、コバルト、ニッケル及びこれらの合金等の酸化物が挙げられるが、磁界に対する感応性が優れていることから、酸化鉄が特に好ましい。超常磁性金属酸化物は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
酸化鉄としては、公知の種々の酸化鉄を用いることができる。
酸化鉄の内、特に化学的な安定性に優れることから、マグネタイト、γ-ヘマタイト、マグネタイト-α-ヘマタイト中間酸化鉄及びγ-ヘマタイト-α-ヘマタイト中間酸化鉄からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、大きな飽和磁化を有し、外部磁場に対する感応性が優れていることから、マグネタイトが更に好ましい。
【0026】
前記の磁性粒子(B)中の超常磁性金属酸化物の含有量の下限は、磁性粒子の重量を基準として60重量%が好ましく、更に好ましくは65重量%であり、上限は95重量%が好ましく、更に好ましくは80重量%である。
超常磁性金属酸化物の含有量が60重量%以上であると、得られた磁性粒子(B)の磁性が十分であるため、実際の用途面における分離操作を短時間で行えるので好ましい。95重量%以下のものは合成が容易である。
【0027】
前記の超常磁性金属酸化物(D)の製造方法は、特に限定されないが、Massartにより報告されたものをベースとして水溶性鉄塩及びアンモニアを用いる共沈殿法(R.Massart,IEEE Trans.Magn.1981,17,1247)や水溶性鉄塩の水溶液中の酸化反応を用いた方法により合成することができる。
【0028】
前記の磁性粒子(B)の体積平均粒子径は、好ましくは0.5~10μm、更に好ましくは1~5μm、特に好ましくは1~3μmである。体積平均粒子径が0.5μm以上であると、分離回収の際の時間が比較的短くなる傾向にある。また、10μm以下であると、表面積が比較的大きくなる結果、固定化する物質(測定対象物質と特異的に結合する物質)の結合量も多くなり、結合効率が上昇する傾向にある。
【0029】
前記の磁性粒子(B)の体積平均粒子径は、磁性シリカ粒子である場合、後述の水中油型エマルションを作製する際の混合条件(せん断力等)を調節して水中油型エマルションの粒子径を調整することにより制御することができる。また、磁性粒子(B)製造時の水洗工程の条件変更や通常の分級等の方法によっても体積平均粒子径を所望の値とすることができる。
【0030】
本発明における磁性粒子(B)の体積平均粒子径は、任意の200個の磁性粒子(B)について走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製「JSM-7000F」)で観察して測定された粒子径の平均値である。
【0031】
本発明における磁性シリカ粒子は、例えば体積平均粒子径が1~20nmの超常磁性金属酸化物(D)、超常磁性金属酸化物(D)の重量に基づいて30~500重量%の(アルキル)アルコキシシラン及び必要に応じて分散剤を含有する分散液と、水、水溶性有機溶媒、非イオン性界面活性剤及び(アルキル)アルコキシシランの加水分解用触媒を含有する溶液とを混合して水中油型エマルションを形成後、(アルキル)アルコキシシランの加水分解反応及び縮合反応を行い、超常磁性金属酸化物(D)がシリカに包含された磁性シリカ粒子の水性分散体を得た後、磁性シリカ粒子の水性分散体を遠心分離及び/又は集磁により固液分離し、水又はメタノール等で洗浄することにより得られる。
また、必要に応じて、更に、上記の操作で得た磁性シリカ粒子、(アルキル)アルコキシシラン、水、水溶性有機溶媒、非イオン性界面活性剤及び(アルキル)アルコキシシランの加水分解用触媒を混合し、(アルキル)アルコキシシランの加水分解反応及び縮合反応を実施し、コア-シェル構造を有する磁性シリカ粒子としても良い。
上記及び以下において、(アルキル)アルコキシシランとは、アルキルアルコキシシラン又はアルコキシシランを意味する。
【0032】
<磁性粒子(C)>
本発明において、磁性粒子(B)に抗体(A)を固定化して磁性粒子(C)とする方法としては、上述の磁性粒子(B)に、抗体(A)を物理吸着させる方法又は化学結合を用いる方法が挙げられるが、より効率良く測定対象物質等、具体的には、抗体(A)を固定化させる観点から、グルタルアルデヒド、アルブミン、カルボジイミド、ストレプトアビジン、ビオチン及び官能基(エチレン性不飽和基、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基及びイソシアネート基等)を有するアルキルアルコキシシランからなる群から選ばれる少なくとも1種の有機化合物を磁性粒子(B)の表面に結合させ、それらを介して、抗体(A)を磁性粒子に固定化させるのが好ましい。
このような官能基を有するアルキルアルコキシシランとしては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3-ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0033】
<免疫測定用試薬>
本発明の免疫測定用試薬は、前記の磁性粒子(C)及び必要に応じて緩衝液(リン酸緩衝液等)を含有する。
免疫測定用試薬中の磁性粒子(C)の重量割合は、免疫測定用試薬の重量を基準として、0.001~10重量%が好ましく、更に好ましくは0.01~1重量%である。
前記の免疫測定用試薬は、保存安定性を妨げない範囲で、その他の成分{タンパク質[牛血清アルブミン等]、無機塩(塩化ナトリウム等)、界面活性剤(モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン等)、防腐剤(アジ化ナトリウム等)及び非特異反応防止剤等(正常動物由来のIgG抗体等)からなる群より選ばれる少なくとも1種等}を含有させてもよい。
免疫測定用試薬中、タンパク質、無機塩、界面活性剤、防腐剤及び非特異反応防止剤を含む場合、それぞれの含有量は、免疫測定用試薬の重量に基づいて、タンパク質の含有量は、0.001~30重量%、無機塩の含有量は0.001~5重量%、界面活性剤の含有量は0.001~10重量%、防腐剤の含有量は0.001~0.1重量%、非特異反応防止剤の含有量は0.0001~5重量%が好ましい。
【0034】
免疫測定用試薬に含有させる界面活性剤としては、公知の非イオン界面活性剤、両性界面活性剤及びアニオン界面活性剤等が挙げられるが、界面活性剤としては、非特異的吸着の低減の観点から、水溶性の非イオン界面活性剤が好ましい。
尚、水溶性とは、25℃の水100gに10g溶解することを意味する。
水溶性の非イオン界面活性剤として、具体的には、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(ポリオキシエチレンオクチルエーテル及びポリオキシエチレンラウリルエーテル等)及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪族エステル等が挙げられる。水溶性の非イオン界面活性剤は、グリフィン法[「界面活性剤入門」(2007年三洋化成工業株式会社発行、藤本武彦著)142頁に記載されているグリフィン法]で測定できるHLB値が12以上であることが好ましい。
【0035】
免疫測定用試薬のpHは、保存安定性の観点から、5~10が好ましく、特に5~7が好ましい。
免疫測定用試薬は、上記のpHとなるように緩衝剤(リン酸及び2-モルホリノエタンスルホン酸等)を含有していることが好ましい。
【0036】
<免疫測定用キット>
本発明の免疫測定用キットは、本発明の免疫測定用試薬を含む免疫測定用キットである。
【0037】
本発明の免疫測定用キットには、免疫測定用試薬以外に、免疫測定用標識試薬(S)、化学発光試薬(I)、免疫測定用の緩衝液(免疫反応時に加える緩衝液)、標準試薬(濃度既知の測定対象物溶液等)、希釈用試薬(高濃度検体の希釈用試薬等)、洗浄試薬(反応容器の洗浄用試薬等)等を含んでもよく、さらに取り扱い説明書、測定に必要な治具等(例えば検体容器等)を含んでもよい。
【0038】
免疫測定用標識試薬(S)としては、後述の具体的な免疫測定方法(サンドイッチ法)の説明でも述べるように、標識物質により標識された測定対象物質と特異的に結合する物質を含有する標識試薬を用いることが好ましい。
【0039】
免疫測定用標識試薬(S)において、標識するために用いられる標識物質としては、
例えば酵素免疫測定法(EIA)において用いられるアルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、ペルオキシダーゼ(以下、PODと略記することがある)、マイクロペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコース-6-リン酸脱水素酵素、リンゴ酸脱水素酵素、ルシフェラーゼ、チロシナーゼ、酸性ホスファターゼ等の酵素類;
例えば放射免疫測定法(RIA)において用いられる99mTc、131I、125I、14C、3H、32P等の放射性同位元素;
例えば蛍光免疫測定法(FIA)において用いられるフルオレセイン、ダンシル、フルオレスカミン、クマリン、ナフチルアミン又はこれらの誘導体、グリーン蛍光タンパク質(GFP)等の蛍光性物質;
例えばルシフェリン、イソルミノール、ルミノール、ビス(2,4,6-トリフロロフェニル)オキザレート等の発光性物質;
例えばフェノール、ナフトール、アントラセン又はこれらの誘導体等の紫外部に吸収を有する物質;
例えば4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、3-アミノ-2,2,5,5-テトラメチルピロリジン-1-オキシル、2,6-ジ-t-ブチル-α-(3,5-ジ-t-ブチル-4-オキソ-2,5-シクロヘキサジエン-1-イリデン)-p-トリオキシル等のオキシル基を有する化合物に代表されるスピンラベル化剤としての性質を有する物質等が挙げられる。
これらのうち、感度等の観点から、酵素、蛍光性物質が好ましく、更に好ましいのはアルカリホスファターゼ、POD及びグルコースオキシダーゼであり、特に好ましいのはPODである。
【0040】
標識物質を、測定対象物質と特異的に結合する物質に、結合させるには、一般的にこの分野で用いられる方法、例えば自体公知のEIA、RIA及びFIA等において一般に行われている自体公知の標識方法[例えば、医化学実験講座、第8巻、山村雄一監修、第1版、中山書店、1971;図説 蛍光抗体、川生明著、第1版、(株)ソフトサイエンス社、1983;酵素免疫測定法、石川栄治、河合忠、室井潔編、第2版、医学書院、1982等]等を利用すればよい。
【0041】
標識物質の使用量は、用いる標識物質の種類により異なるため一概には言えないが、例えばPODを標識物質として使用する場合には、測定対象物質と特異的に結合する物質と標識物質とを、例えば1:1~20のモル比が好ましく、更に好ましくは1:1~10のモル比、特に好ましくは1:1~2のモル比となるように、緩衝液(トリス緩衝液、リン酸緩衝液、ベロナール緩衝液、ホウ酸緩衝液、グッド緩衝液等の一般的にこの分野で用いられている緩衝液)中に含有させて用いればよい。
尚、前記の緩衝液のpHは、抗原抗体反応を抑制しない範囲であればよく、5~9が好ましい。
また、このような緩衝液中には、目的の抗原抗体反応を阻害しないものであれば、安定化剤(アルブミン、グロブリン、水溶性ゼラチン、ポリエチレングリコール等)、界面活性剤[前記の免疫測定用試薬の説明で例示した界面活性剤等]及び糖類等を含有させておいてもよい
【0042】
化学発光試薬(I)は、上記の標識物質に基づき選択され、例えば、標識物質がペルオキシダーゼである場合、2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン化合物及び化学発光増強剤を必須構成成分としてなる化学発光試薬第1液と、酸化剤及び水を必須構成成分としてなる化学発光試薬第2液とを含んでなる。
【0043】
2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン化合物としては、例えば、特開平2-291299号公報、特開平10-319015号公報及び特開2000-279196号公報等に記載の公知の2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン化合物及びこれらの混合物等が使用できる。
これらの内、ルミノール、イソルミノール、N-アミノヘキシル-N-エチルイソルミノール(AHEI)、N-アミノブチル-N-エチルイソルミノール(ABEI)及びこれらの金属塩(アルカリ金属塩等)が好ましく、更に好ましいのはルミノール及びその金属塩、特に好ましいのはルミノールのナトリウム塩である。
【0044】
化学発光増強剤としては、例えば、特開昭59-500252号公報、特開昭59-171839号公報及び特開平2-291299号公報等に記載の公知の化学発光増強剤及びこれらの混合物等が使用できる。これらの内、化学発光増強効果等の観点から、フェノールが好ましく、更に好ましいのはp-ヨードフェノール、4-(シアノメチルチオ)フェノール及び4-シアノメチルチオ-2-クロロフェノール、特に好ましいのは4-(シアノメチルチオ)フェノールである。
【0045】
化学発光試薬第1液は、液体であることが好ましく、また、酵素の蛍光強度の観点からはアルカリ性であることが好ましい。第1液のpHは、7~11が好ましく、更に好ましくは8~10である。
なお、pHは、JIS K0400-12-10:2000に準拠して測定される(測定温度25℃)。
【0046】
化学発光試薬第2液が含有する酸化剤としては、例えば、特開平8-261943号公報及び特開2000-279196号公報等に記載の公知の酸化剤等[無機の過酸化物(過酸化水素、過ホウ酸ナトリウム及び過ホウ酸カリウム等)、有機過酸化物(過酸化ジアルキル及び過酸化アシル等)、ペルオクソ酸化合物(ペルオクソ硫酸及びペルオクソリン酸等)等]の水溶液が挙げられる。
これらの内、保存安定性等の観点から、過酸化水素水溶液、過ホウ酸ナトリウム水溶液及び過ホウ酸カリウム水溶液が好ましく、更に好ましいのは過酸化水素水溶液である。
【0047】
化学発光試薬(I)として、感度の観点から、ルミノール発光試薬(I1)及び過酸化水素液(I2)を含むことが好ましい。
【0048】
前記の免疫測定用の緩衝液としては、一般的に免疫測定の分野で用いられている、トリス緩衝液、リン酸緩衝液、ベロナール緩衝液、ホウ酸緩衝液及びグッド緩衝液等が挙げられ、そのpHは、本発明の効果を阻害しない範囲であればよく、5~9が好ましい。
また、このような緩衝液中には、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、塩(塩化ナトリウム等)、アルブミン(ウシ血清アルブミン等)、グロブリン、タンパク質(カゼイン加水分解物)、水溶性ゼラチン、ポリエチレングリコール等の安定化剤、界面活性剤[前記の免疫測定用試薬の説明で例示した界面活性剤等]及び糖類等を含有させておいてもよい。
【0049】
<免疫測定方法>
本発明の免疫測定方法は、本発明の免疫測定用キットを用いる免疫反応測定方法である。
本発明における免疫測定用キットを用いた免疫反応の方法としては、免疫測定の分野で一般的に行われる文献[例えば、酵素免疫測定法第2版(石川栄治ら編集、医学書院)1982年]記載のサンドイッチ法等が挙げられ、具体的には以下の方法が挙げられる。
【0050】
<サンドイッチ法>
磁性粒子(C)(好ましくは磁性シリカ粒子)として、測定対象物質と特異的に結合する物質{測定対象物質結合物質;本発明の場合、抗体(A)}を、磁性粒子(B)[好ましくは磁性粒子(B)の表面]に固定化しているものを用いる。
そして、「測定対象物質を含む試料(例えば生体試料)」と、「磁性粒子(C)」と、「標識物質により標識された測定対象物質と特異的に結合する物質(標識測定対象物質結合物質)」とを接触させる。
これにより、「磁性粒子(C)に固定化した測定対象物質結合物質」と「測定対象物質」と「標識測定対象物質結合物質」との複合体(標識複合体)を形成させる。
その後、標識複合体を担持した磁性粒子(C)をB/F分離して、標識複合体中の標識物質量を測定し、その結果に基づいて試料中の測定対象物質を測定する。
【0051】
本発明における測定対象物質としては、NT-proBNP等が挙げられる。
また、「測定対象物質と特異的に結合する物質」としては、NT-proBNPの抗体(抗NT-proBNPモノクローナル抗体等)等が挙げられる。
【0052】
本発明の免疫測定方法としては、化学発光酵素免疫測定法(CLEIA)、酵素免疫測定法(EIA)、放射免疫測定法(RIA)、電気化学発光免疫測定法(ECLIA)、蛍光酵素免疫測定法(FEIA)、化学発光免疫測定法(CLIA)、ラテックス光学免疫測定法(LPIA)及びラテックス粒子計数免疫凝集測定法(CIA)に用いられる検査の測定方法等が挙げられる。
【実施例】
【0053】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
尚、以下において部は重量部を表す。
【0054】
[製造例1]
<抗体(A)の作製>
本実施例は、抗体(A)の作製と免疫測定に使用する抗体の選択例を示したものである。
人由来proBNP抗原(フナコシ(株)製)を抗体作製の免疫原として用い、マウスの免疫及び細胞融合によるモノクローナル抗体の作製は常法に従い実施した。即ち、以下の方法で実施した。
まず、上記の免疫原100μgを含む0.85重量%塩化ナトリウム水溶液1gをFreundの完全アジュバント(ディフコ社製)を用い、ホモジナイザーで混合・乳化し、乳化液を作成した。
この乳化液0.1gをBALB/cマウスの皮下に投与し、その後2週間間隔で4回追加免疫を行い、更に、上記の乳化液0.1gを尾静脈に注射した。
3日後に、マウスの脾臓を摘出して脾細胞[セルカウンター(商品名:Countess Automated Cell Counter、invitorogen社製)で測定した結果2×108個であった]を採取し、RPMI1640培地15mLで4回洗浄した後、この洗浄後の脾臓細胞と骨髄腫細胞(P3U1)2×107個とを融合した後、HAT培地(ヒポキサンチン、アミノプテリン、10重量%牛胎児血清を含むRPMI1640培地)に懸濁し、96穴マイクロプレート(ヌンク社製、Nunc whiteプレート cat.436110)に分注し培養することによりハイブリドーマを選択培養した。
【0055】
懸濁操作から10日目後に、上記96穴マイクロプレート中の培養液上清の抗体活性をELISAにより測定した。即ち、以下の方法で実施した。
まず、上記の免疫原を1μg/mLの濃度で含む0.85重量%塩化ナトリウム含有リン酸緩衝液(以降、「0.85重量%塩化ナトリウム含有リン酸緩衝液」を「PBS」と略記する)を、96穴ELISAプレート(上記の96穴マイクロプレートとは別のプレート)の各穴に50μLずつ加え、更に、上記の懸濁操作で得た培養液を各穴に50μLずつ加え、4℃で1夜静置した。PBSで洗浄後、ブロックエース[雪印乳業(株)製]を用いてブロッキングし、抗原を固相化した96穴ELISAプレートを得た。このプレートの各ウエルをPBSで洗浄し、ペルオキシダーゼ標識抗マウスIgG(HL鎖)を添加した。室温で1時間反応後、PBSで洗浄し、基質液(o-フェニレンジアミンを10mg/mlの濃度で含む、0.1mol/lりん酸ナトリウムバッファー(pH6.0)100mlと、30重量%H2O2水溶液10μlとの混合液)を各ウエルに50μLずつ添加し、マイクロプレートリーダーで492nmにおける吸光度を測定し、最も吸光度が高い1クローンを選択し、後の工程に用いた。
上記で選択したクローニング後のハイブリドーマを、1週間前にプリスタン腹腔内注射済みのBALB/cマウスの腹腔内に注射し、10日後に腹水を採取した。最終的に、腹水中のIgGはprotein Aにて常法に従い精製し、抗NT-proBNPモノクローナル抗体である抗体(A-1)を得た。
なお、抗体(A-1)の反応性は、後述の方法で確認し、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するNT-proBNPにおけるアミノ酸番号41~45を認識し、アミノ酸番号42~49を認識しないことを確認した。
【0056】
[比較製造例1]
<比較用の抗体(A’-1)の作製>
製造例1と同様の方法により、再度、抗NT-proBNPモノクローナル抗体を製造し、比較用の抗体(A’-1)とした。
なお、抗体(A’-1)の反応性は、後述の方法で確認し、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するNT-proBNPにおけるアミノ酸番号41~45を認識し、アミノ酸番号42~49を認識することを確認した。
【0057】
[比較製造例2]
<比較用の抗体(A’-2)の作製>
製造例1と同様の方法により、再度、抗NT-proBNPモノクローナル抗体を製造し、比較用の抗体(A’-2)とした。
なお、抗体(A’-2)の反応性は、後述の方法で確認し、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するNT-proBNPにおけるアミノ酸番号41~45を認識せず、アミノ酸番号42~49を認識しないことを確認した。
【0058】
[実施例1]
<磁性粒子(C)を含有する免疫測定用試薬の製造>
1重量%γ-アミノプロピルトリエトキシシラン含有水溶液40mLの入った蓋付きポリスチレン瓶に磁性シリカ粒子(商品名:マグラピッド、三洋化成工業(株)製)40mgを加え、25℃で1時間反応させ、ネオジウム磁石で磁性シリカ粒子を集磁後、液をアスピレーターで吸引除去した。
次いで脱イオン水40mLを加えて蓋をし、ポリスチレン瓶をゆっくりと2回倒置攪拌した後、ネオジウム磁石で磁性シリカ粒子を集磁後、液をアスピレーターで吸引除去して磁性シリカ粒子を洗浄した。この洗浄操作を5回行った。
次いで、この洗浄後の磁性シリカ粒子を2重量%グルタルアルデヒド含有水溶液40mLの入った蓋付きポリスチレン瓶に加え、25℃で1時間反応させた。
そして、脱イオン水40mLを加えて蓋をし、ポリスチレン瓶をゆっくりと2回倒置攪拌したのち、ネオジウム磁石で得られた磁性シリカ粒子(B-1)を集磁後、液をアスピレーターで吸引除去して磁性シリカ粒子(B-1)を洗浄した。この洗浄操作を10回行った。
更にこの洗浄後の磁性シリカ粒子(B-1)を、抗体(A-1)を10μg/mLの濃度で含む0.02Mリン酸緩衝液(pH8.7)120mLの入った蓋付きポリスチレン瓶に加え、25℃で1時間反応させた。
反応後、ネオジウム磁石で、抗体(A-1)が表面に固定化されてなる磁性シリカ粒子(C-1)を集磁後、磁性粒子に固定化しなかった抗体(A-1)含有リン酸緩衝液を除去した。
次いで、得られた磁性シリカ粒子(C-1)を1重量%の牛血清アルブミン含有の0.02Mリン酸緩衝液(pH7.0)40mLの入った蓋付きポリエチレン瓶に加え、25℃で12時間浸漬させた。[磁性シリカ粒子(C-1)の濃度が1mg/mLとなるように調製。]
これにより、抗体(A)を表面に固定化されてなる粒子(C-1)を含有する免疫測定用試薬を得た。免疫測定用試薬は、冷蔵(2~10℃)で保管した。
【0059】
[比較例1]
実施例1において、抗体(A-1)に代えて、比較用の(A’-1)を用いた以外は、実施例1と同様にして実施し、比較用の磁性粒子(C’-1)を含有する比較用の免疫測定用試薬を得た。免疫測定用試薬は、冷蔵(2~10℃)で保管した。
【0060】
[比較例2]
実施例1において、抗体(A-1)に代えて、比較用の(A’-2)を用いた以外は、実施例1と同様にして実施し、比較用の磁性粒子(C’-2)を含有する比較用の免疫測定用試薬を得た。免疫測定用試薬は、冷蔵(2~10℃)で保管した。
【0061】
[製造例2]
<標識試薬の作製>
製造例1と同様の操作の方法により、再度、抗NT-proBNPモノクローナル抗体を製造し、抗体(E-1)を得た。
抗体(E-1)及び西洋ワサビ由来POD(東洋紡(株)製)を用い、文献(エス・ヨシタケ、エム・イマガワ、イー・イシカワ、エトール;ジェイ.バイオケム,Vol.92,1982,1413-1424)に記載の方法を用いて、PODで標識された抗NT-proBNPモノクローナル抗体を調整した。
これを0.5重量%の牛血清アルブミン及び界面活性剤として1重量%ナロアクティーCL-100を含有する0.02Mリン酸緩衝液(pH7.0)で、PODで標識された抗NT-proBNPモノクローナル抗体濃度として100nMの濃度に希釈し、標識試薬(S-1)を調製し、冷蔵(2~10℃)で保存した。
【0062】
[製造例3]
<免疫測定用の緩衝液の作製>
ウシ血清アルブミン(Boval Campany製)を0.1重量%、エマルミンL-90-S(三洋化成工業(株)製)を1重量%、塩化ナトリウム(富士フィルム和光純薬(株)製)を0.85重量%含有した0.02Mリン酸緩衝液(pH7.0)を調製し、冷蔵(2~10℃)で保管した。
【0063】
[製造例4]
<ルミノール発光試薬の作製>
ルミノールのナトリウム塩[シグマ アルドリッチ ジャパン(株)製]0.7g及び4-(シアノメチルチオ)フェノール0.1gを1,000mLメスフラスコに仕込んだ。続いて、3-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]プロパンスルホン酸/水酸化ナトリウム緩衝液(10mM、pH8.6)を溶液の容量が1,000mLになるように仕込み、25℃で均一混合してルミノール発光試薬を調製した。測定に用いるまで冷蔵(2~10℃)保存した。
【0064】
[製造例5]
<過酸化水素液の作製>
過酸化水素[富士フィルム和光純薬(株)製、試薬特級、濃度30重量%]6.6gを1,000mLメスフラスコに仕込んだ。続いて、脱イオン水を溶液の容量が1,000mLになるように仕込み、25℃で均一混合して過酸化水素液を調製した。測定に用いるまで冷蔵(2~10℃)保存した。
【0065】
[実施例2]
実施例1で製造した免疫測定用試薬、免疫測定用の緩衝液、ルミノール発光試薬及び過酸化水素液と組み合わせて免疫測定用キットとした。
【0066】
[比較例3~4]
比較例1~2で製造した比較用の免疫測定用試薬、免疫測定用の緩衝液、ルミノール発光試薬及び過酸化水素液と組み合わせて、それぞれ比較用の免疫測定用キットとした。
【0067】
<反応性の測定>
実施例2で製造した免疫測定用キット又は比較例3~4で製造した比較用の免疫測定用試薬を用いて、磁性粒子(C)に固定化した抗体(A)の反応性を測定した。
また、実施例1において、抗体(A-1)に代えて、抗体(E-1)を用いた以外は実施例1と同様に実施して製造した参考用の免疫測定用試薬についても、上記と同様に免疫測定用の緩衝液、ルミノール発光試薬及び過酸化水素液と組み合わせて免疫測定用キットとし、この免疫測定用キットを用いて、磁性粒子に固定化した抗体(E-1)の反応性を測定した。
【0068】
<反応性測定用の合成ペプチドの作製方法>
配列番号1に示されるNTproBNP(アミノ酸番号1~76の配列を有する)アミド(swissprot:アクセッション番号 P16860; aa27~aa134)に基づいて、1アミノ酸ずつ配列をシフトさせた69種の8量体のペプチドを、東レリサーチセンターペプチド合成サービスに依頼し、合成した。即ち、配列番号2に示されるアミノ酸番号1~8の配列を有するペプチド、配列番号3に示されるアミノ酸番号2~9の配列を有するペプチド、配列番号4に示されるアミノ酸番号3~10の配列を有するペプチド、配列番号5に示されるアミノ酸番号4~11の配列を有するペプチド、・・・配列番号67に示されるアミノ酸番号66~73の配列を有するペプチド、配列番号68に示されるアミノ酸番号67~74の配列を有するペプチド、配列番号69に示されるアミノ酸番号68~75の配列を有するペプチド及び配列番号70に示されるアミノ酸番号69~76の配列を有するペプチドを合成した。
【0069】
<8量体のペプチドを含有する試料の調製>
NT-proBNPとして、proBNP抗原(フナコシ(株)製)を30,000pg/mLの濃度で含有する水溶液(F)と、8量体ペプチドの内の1種を200μg/mLの濃度で含有する水溶液とを重量比1:1で混合した混合物(G)を、8量体のペプチドを含有する試料として調製した。この試料を69種類の8量体ペプチド毎に調整し、69種類の試料を調製した。
また、上記の混合物(G)の調製において、8量体ペプチド水溶液に代えて、水を用いて調整し、ブランク測定用の試料を得た。
【0070】
混合物(G)について、免疫測定用キットを用いて、以下の方法で、標識の発光量から、8量体のペプチド毎の抗体(A)との反応性を測定した。
【0071】
○工程(1)
免疫測定用キットの免疫測定用試薬をそれぞれ0.025mL、試験管に入れ、試験管の外側からネオジウム磁石で磁性シリカ粒子を10秒間集め、試験管中の液をアスピレーターで除き、ネオジウム磁石を側面から十分に離した。
その後、免疫測定用の緩衝液0.2mLと、混合物(G)0.025mLとを試験管に入れて混合、試験管中で37℃3分間反応させ、磁性シリカ粒子(C)上に抗体(A)/抗原(proBNP抗原又は8量体ペプチド)の複合体を形成させた。反応後、試験管の外側からネオジウム磁石で磁性シリカ粒子を10秒間集め、試験管中の液をアスピレーターで除き、ネオジウム磁石を側面から十分に離した。その後、生理食塩水0.5mLを加えて磁性シリカ粒子を分散させて集磁後、アスピレーターで液を除く洗浄操作を3回行った。
【0072】
○工程(2)
続いて、それぞれの免疫測定用キットの標識試薬0.1mLをそれぞれ試験管に注入し、試験管中で37℃3分間反応させ、磁性シリカ粒子(C)上に抗体(A)/抗原(proBNP抗原又は8量体ペプチド)/POD標識抗NT-proBNPモノクローナル抗体の複合体を形成させた。反応後、試験管の外側からネオジウム磁石で磁性シリカ粒子を10秒間集め、試験管中の液をアスピレーターで除き、ネオジウム磁石を側面から十分に離した。その後、生理食塩水0.5mLを加えて磁性シリカ粒子を分散させて集磁後、アスピレーターで液を除く洗浄操作を2回行った。
【0073】
○化学発光・検出工程
最後に、ルミノール発光試薬0.1mLと過酸化水素液0.1mLとを同時に加え、37℃で発光反応させ、ルミノール発光試薬及び過酸化水素液を添加後40~45秒の一秒当たりの平均発光量をルミノメーター[ベルトールドジャパン社製「Lumat LB9507」]で測定し、この値を発光量(X1)とした。
また、上記の工程(1)、工程(2)及び化学発光・検出工程において、混合物(G)に代えて、ブランク測定用の測定試料を用いて、同様に平均発光量を測定し、この値を発光量(X0)とした。
【0074】
発光量(X1)及び発光量(X0)と、8量体ペプチド毎の反応性との関係は、以下の計算式の通りである。各8量体ペプチド毎の抗体(A)との反応性を表1に示す。
反応性(%)=1-(X1)/(X0)
なお、反応性(%)が50%以上の場合、抗体(A)は、その8量体ペプチドの配列を認識していると判断する。
【0075】
表1の結果から、製造例1で得た抗体(A-1)は、アミノ酸番号38~45、39~46、40~47及び41~48の配列を有するペプチドを用いた場合に、基準値以上(50%以上)の反応性を示していた。これは、少なくとも配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するNT-proBNPにおけるアミノ酸番号41~45を認識していることを示す。
また、製造例1で得た抗体(A-1)は、アミノ酸番号42~49の配列を有するペプチドを用いた場合に、基準値未満(50%未満)の反応性を示していた。これは、少なくとも配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するNT-proBNPにおけるアミノ酸番号42~49を認識していないことを示す。
一方、比較用の抗体(A’-2)及び参考用の抗体(E-1)は、表1の結果から、アミノ酸番号41~45を認識していないことが分かる。また、比較用の抗体(A’-1)は、アミノ酸番号42~49を認識していることが分かる。
なお、抗体(E-1)の反応性が基準値以上(50%以上)であるアミノ酸番号20~27、21~28、22~29、23~30及び24~31に対応する8量体ペプチドについては、抗体(A)との反応性を確認しなかった。
【0076】
【0077】
<感度の評価>
実施例2で製造した免疫測定用キット又は比較例3~4で製造した比較用の免疫測定用キットを用いて、心不全患者から得られた血清検体H-1~H-5を用いて、以下の免疫測定を行った。
[免疫測定]
前記の<反応性の測定>における工程(1)、工程(2)及び化学発光・検出工程において、混合物(G)に代えて、血清検体H-1~H-5を用いた以外は、前記の工程(1)、工程(2)及び化学発光・検出工程と同様に実施し、発光量(X1)を求めた。この発光量を表2に記載する。
【0078】
実施例の発光量と、比較例の発光量を比較したところ、実施例の発光量の方が高く、本発明の磁性粒子を用いた免疫測定用試薬及び免疫測定用キットは、高感度であることが分かった。
【0079】
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の磁性粒子、免疫測定用試薬、免疫測定用キット及び免疫測定方法は、検出感度に優れていることから、放射免疫測定法、酵素免疫測定法、蛍光免疫測定法及び化学発光免疫測定法等の臨床検査に幅広く適用できる。
【配列表】