(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-20
(45)【発行日】2023-09-28
(54)【発明の名称】ベルト取付治具
(51)【国際特許分類】
F16H 7/24 20060101AFI20230921BHJP
【FI】
F16H7/24
(21)【出願番号】P 2020066093
(22)【出願日】2020-04-01
【審査請求日】2022-05-23
(31)【優先権主張番号】P 2019101225
(32)【優先日】2019-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006068
【氏名又は名称】三ツ星ベルト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】青木 康人
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-185851(JP,A)
【文献】特開2014-109287(JP,A)
【文献】特開2017-223310(JP,A)
【文献】特開2009-197864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも手前プーリ及び奥側プーリを含む複数のプーリが当該プーリの中心軸方向に並設された複数段掛プーリと、基軸プーリとの間に、周長方向に伸縮可能なベルトを巻掛けるに際し、前記基軸プーリと前記手前プーリとの間に巻掛けられた前記ベルトを前記手前プーリから前記奥側プーリにシフトさせるために使用するベルト取付治具であって、
前記手前プーリの外周面に沿う形状をした本体部と、
前記本体部に設けられ、前記手前プーリの外周面と前記手前プーリに巻き掛けられた前記ベルトの裏面との間に入り込む、ベルトすくい受け面と、
前記本体部を前記手前プーリの外周面に沿わせた状態で、前記本体部において、前記奥側プーリの外周面よりも外側の高さ位置に設けられ、前記ベルトすくい受け面から導入される前記ベルトの裏面と線接触する、ベルト支持部と、
前記本体部を前記手前プーリの外周面に沿わせた状態で、前記手前プーリと前記奥側プーリとに跨る位置に、前記ベルト支持部から前記奥側プーリの外周面に向けて傾斜して設けられ、前記ベルト支持部からスライドされる前記ベルトの裏面と線接触する、ベルト案内部と、を備えていることを特徴とするベルト取付治具。
【請求項2】
前記ベルトすくい受け面は、
前記本体部を前記手前プーリの外周面に沿わせた状態で、前記手前プーリの外周面と前記手前プーリに巻き掛けられた前記ベルトの裏面との間に入り込む方向に、テーパ形状をしていることを特徴とする、請求項1に記載のベルト取付治具。
【請求項3】
前記ベルト案内部は、内周面側に、前記奥側プーリの外周面と前記ベルト案内部の内周面とを係止する第1係止部が設けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のベルト取付治具。
【請求項4】
前記本体部は、内周面側に、前記手前プーリの外周面と前記本体部の内周面とを係止する第2係止部が設けられていることを特徴とする、請求項1~3の何れかに記載のベルト取付治具。
【請求項5】
前記本体部を前記手前プーリの外周面に沿わせた状態で、前記ベルトすくい受け面より前記奥側プーリ側の、前記奥側プーリの外周面上に、前記ベルトすくい受け面からスライドされる前記ベルトの裏面と接触する、ベルト整調部が設けられており、
前記ベルト整調部は、前記ベルト案内部よりも前記奥側プーリ側に張り出していることを特徴とする、請求項1~4の何れかに記載のベルト取付治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のプーリ間にベルトを巻き掛ける際に使用するベルト取付治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、複数のプーリ間にベルトを巻き掛けてなるベルト伝動機構では、プーリ間で確実に動力を伝達させるために、装着対象であるプーリ間のレイアウト周長よりもベルト周長を短くして、ベルトに強い張力がかかるような仕様になっている。
【0003】
このようなベルト伝動機構において、プーリの軸心位置を調整可能なテンションプーリ等を用いないレイアウトでは、互いの軸間距離がすべて固定された状態の複数のプーリ間に、複数のプーリ間のレイアウト周長よりも短い周長のベルトを取り付ける作業は、ベルトの張力に抗する力が必要となり手間がかかることがある。このような手間は、複数のプーリが軸方向に並設された複数段掛プーリや大小径が組み合わされたプーリの奥側が大径なプーリ(
図1(a)、
図4参照)にベルトを巻掛ける際に一層顕著となる。
【0004】
このような複数のプーリが軸方向に並設された複数段掛プーリ等において、手前プーリに巻き掛けたベルトを奥側プーリにシフトさせるために使用するベルト取付治具が、特許文献1、特許文献2、および特許文献3に記載されている。
【0005】
特許文献1には、一旦、ベルトを二段掛プーリである、第一プーリの手前プーリに掛巻してベルトを手前に位置させ、この状態で第二プーリにベルト取付治具の係止部でプーリフランジを挟んで係止し、ベルトを手前の側面に引っ掛けることなく取り付ける。その後、ベルト取付治具を第一プーリに装着し直して、手前プーリに掛巻したベルトを奥側プーリにシフトさせて、二段掛けプーリの奥側プーリにベルトを取り付けている。このようにして、二段掛プーリの手前プーリの側面とベルトとの引っ掛かりを防止しつつ容易にベルトを取り付け可能としている。
【0006】
特許文献2においては、ベルト取付治具の底部にて、ベルト取付治具を手前プーリの溝に嵌め、案内面でベルトを持ち上げて奥側プーリにシフトするが、その際にベルトが手前に外れるのを防止するための外れ止めが設けられていることを特徴としている。
【0007】
特許文献3においては、手前プーリの外周面に設置される本体部と、本体部よりもプーリ半径方向の外側に配置され、プーリ半径方向において奥側プーリの外周面よりも外側に位置する持ち上げ面を有するベルト接触部と、手前プーリと奥側とに跨るようにベルト接触部からプーリ軸方向の前記奥側に向かうにつれてプーリ半径方向の内側へ傾斜したガイド面を有するガイド部と、を備えることを特徴とするベルト取付治具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第4988619号公報
【文献】特許第5090961号公報
【文献】特開2017-223310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1および特許文献2に記載のベルト取付治具では、案内面はいずれも治具本体のプーリ回転方向前端部が前端側ほど薄くテーパ状に形成することで、手前側プーリに掛けたベルトを滑らかに乗り上げさせて奥側プーリのプーリ溝に案内する機能を伴わせている。
【0010】
しかしながら、プーリを更に回転方向に回転させていった場合に、ベルト取付治具がベルトとプーリ間に食い込んでいくに従い、テーパ部のプーリ回転方向後端部から後方に渡って、手前プーリと奥側プーリの境界にあるフランジ部の外径よりも外側に位置する部分が複数個所(特許文献1では、案内面〔図符号8〕と突出部〔図符号7〕の2箇所)、あるいは連続して形成されている箇所(特許文献2では、外れ止め〔図符号6〕の頂部〔図符号6a〕を形成する円弧状稜線)が存在することにより、ベルトが手前プーリから奥側プーリに移動する過程で、ベルト裏面部はベルト取付治具からの過度な突き上げ力を受けることとなり、ベルトに永久歪を発生させてしまう虞がある。
【0011】
また、特許文献1および特許文献2に記載のベルト取付治具では、案内面はいずれも手前プーリ側にしか形成されておらず、奥側プーリにおいては、ベルトを積極的に案内するものが設置されていない。このため、場合によっては、奥側プーリに確実にベルトをシフトさせることができない虞がある。
【0012】
また、特許文献3に記載のベルト取付治具では、ガイド面が手前プーリ側と奥側プーリを跨ぐように形成されているために、ベルトを手前プーリ側から奥側プーリ側へ移動させる際に、手前プーリと奥側プーリの境界にあるフランジ部の上方を確実に通過して奥側プーリの溝内へ移動を完了することが可能となる。
【0013】
しかしながら、ベルト取付治具の持ち上げ面〔図符号15〕へとつながっていくベルト接触部〔図符号12〕は、プーリ回転方向前端部が(テーパにはなっておらず)奥側プーリの外周面よりも外側に位置しているために、ベルト取付作業を行なった際には、手前プーリに掛けたベルトとプーリの間に、ベルト取付治具が入り込んだ際に、ベルト裏面部はベルト取付治具からの過度な突き上げ力を受けることとなり、ベルトに永久歪を発生させてしまうと同時に、ベルト取付治具の取り付け方によってはベルトが手前プーリ側から奥側プーリへ移動中に、ベルト取付治具がプーリから浮き上がったり、最悪の場合、ベルト取付治具がプーリから外れたりする虞がある。
【0014】
このように、二段掛プーリの奥側プーリにベルトを巻掛ける場合には、一旦、手前側プーリに巻掛け、手前プーリに巻掛けたベルトを奥側プーリにシフトさせる方法が採られている。ベルトを一度に奥側プーリに巻掛けずに、手前プーリを経由する理由としては、手前プーリが、奥側プーリと基軸プーリを結ぶベルトの走行線からオフセットされた位置にあり(
図1参照)、このオフセットが大きくなると、ベルトの装着過程での取付け作業が容易ではないことが挙げられる。また、このようにオフセットが大きい場合、一度にベルトを奥側プーリに巻掛けると、過度にベルトを伸張させて大きな負荷をかけることになり、ベルトに永久歪を発生させてしまうことも、ベルトを一度に奥側プーリに巻き掛けずに手前プーリを経由する理由の一つである。
【0015】
このような理由から、二段掛プーリの奥側プーリにベルトを巻掛ける作業を容易にする手段として、ベルト取付治具を用いる。
【0016】
しかし、上記特許文献に記載されたベルト取付治具の場合では、奥側プーリ外周面よりも外側に位置する案内面が、ベルト裏面と面接触が支配的、あるいはプーリ周方向に線接触が支配的、となって当接しながら(
図1(b)の面接触箇所参照)ベルトを奥側プーリにシフトさせるような設計となっているため、ベルト取付治具を使ってベルトを手前プーリ側から奥側プーリにシフトさせた際に、ベルト裏面にはベルト取付治具からの過度の突き上げ力が働くことになり、ベルトに永久歪を発生させてしまう虞がある。
【0017】
そこで、本発明は、手前(小径部)プーリと奥側(大径部)プーリが軸方向に並設された複数段掛プーリと、基軸プーリとの間にベルトを巻き掛ける際に、基軸プーリと手前(小径部)プーリとの間に巻き掛けられたベルトを、手前プーリから奥側プーリにシフトさせる作業を容易にし、且つ、シフトさせる際に、ベルト裏面に対するベルト取付治具側からの突き上げ力を最小限に抑えることができる、ベルト取付治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するための発明の1つは、少なくとも手前プーリ及び奥側プーリを含む複数のプーリが当該プーリの中心軸方向に並設された複数段掛プーリと、基軸プーリとの間に、周長方向に伸縮可能なベルトを巻掛けるに際し、前記基軸プーリと前記手前プーリとの間に巻掛けられた前記ベルトを前記手前プーリから前記奥側プーリにシフトさせるために使用するベルト取付治具であって、
前記手前プーリの外周面に沿う形状をした本体部と、
前記本体部に設けられ、前記手前プーリの外周面と前記手前プーリに巻き掛けられた前記ベルトの裏面との間に入り込む、ベルトすくい受け面と、
前記本体部を前記手前プーリの外周面に沿わせた状態で、前記本体部において、前記奥側プーリの外周面よりも外側の高さ位置に設けられ、前記ベルトすくい受け面から導入される前記ベルトの裏面と線接触する、ベルト支持部と、
前記本体部を前記手前プーリの外周面に沿わせた状態で、前記手前プーリと前記奥側プーリとに跨る位置に、前記ベルト支持部から前記奥側プーリの外周面に向けて傾斜して設けられ、前記ベルト支持部からスライドされる前記ベルトの裏面と線接触する、ベルト案内部と、を備えていることを特徴としている。
【0019】
上記構成によれば、基軸プーリと手前プーリとの間に巻掛けられたベルトを手前プーリから奥側プーリにシフトさせる際に、本体部を手前プーリの外周面に沿わせてベルト取付治具を設置して、複数段掛プーリを回転させることにより、ベルトすくい受け面を、手前プーリの外周面とベルトの裏面との間に入り込ませて、ベルトを持ち上げることができる。この際、ベルトを持ち上げた反動でベルトがベルトすくい受け面を強く押し付けることにより、ベルト取付治具が手前プーリに強く密着し、ベルト取付治具が手前プーリから外れたり、ずれたりすることを防ぐことができる。
更に複数段掛プーリを回転させることにより、ベルト支持部が、ベルトすくい受け面で持ち上げたベルトの裏面に線接触して、ベルトを奥側プーリの外周面よりも外側の高さ位置に支持することができる。この際、ベルト支持部は、ベルトの裏面に線接触していることから、ベルトに過度な張力を掛けないようにすることができる。
また、ベルト案内部が、手前プーリと奥側プーリとに跨る位置で、ベルト支持部から奥側プーリの外周面に向けて傾斜しており、しかも、ベルト支持部に支持されたベルトは、周方向に収縮の力が掛かっているため、更に複数段掛プーリを回転させることにより、ベルトを、ベルト支持部からベルト案内部の傾斜に線接触させながら奥側プーリの外周面にスライドさせることができる。この際、ベルト案内部が、奥側プーリの外周面に向けて傾斜されていることによって、奥側プーリの外周面にベルトを確実に巻き掛けることができる。また、ベルト案内部はベルトの裏面と線接触で当接するために、ベルトを最短経路でベルト支持部から奥側プーリへスライドさせながらスムーズに取付けることができ、ベルトに過度な張力が掛かったりすることなく、また永久歪が生じることを防いで取付けることが可能となる。
【0020】
また、本発明は、上記ベルト取付治具において、
前記ベルトすくい受け面が、
前記本体部を前記手前プーリの外周面に沿わせた状態で、前記手前プーリの外周面と前記手前プーリに巻き掛けられた前記ベルトの裏面との間に入り込む方向に、テーパ形状をしていてもよい。
【0021】
上記構成によれば、ベルトすくい受け面を、手前プーリの外周面とベルトの裏面との間にスムーズに入り込ませて、過度な負荷を掛けずにベルトを持ち上げることができる。
【0022】
また、本発明は、上記ベルト取付治具において、
前記ベルト案内部は、内周面側に、前記奥側プーリの外周面と前記ベルト案内部の内周面とを係止する第1係止部が設けられていてもよい。
【0023】
上記構成によれば、ベルト案内部の内周面に設けられた第1係止部を、奥側プーリの外周面に係止することができるため、ベルト取付治具を、複数段掛プーリを構成する奥側プーリの外周に対して確実に設置することができる。
【0024】
また、本発明は、上記ベルト取付治具において、
前記本体部は、内周面側に、前記手前プーリの外周面と前記本体部の内周面とを係止する第2係止部が設けられていてもよい。
【0025】
上記構成によれば、本体部の内周面に設けられた第2係止部を、手前プーリの外周面に係止することができるため、ベルト取付治具を、複数段掛プーリを構成する手前プーリの外周に対して確実に設置することができる。
【0026】
また、本発明は、上記ベルト取付治具において、
前記本体部を前記手前プーリの外周面に沿わせた状態で、前記ベルトすくい受け面より前記奥側プーリ側の、前記奥側プーリの外周面上に、前記ベルトすくい受け面からスライドされる前記ベルトの裏面と接触する、ベルト整調部が設けられており、
前記ベルト整調部は、前記ベルト案内部よりも前記奥側プーリ側に張り出していてもよい。
【0027】
上記構成によれば、ベルト整調部が、手前プーリから奥側プーリへの、ベルトのシフト動作が完了する直前まで、ベルトの裏面をベルト幅の広い範囲に亘って支持することができる。これにより、手前プーリから奥側プーリへの、ベルトのシフト動作完了直前において、ベルトの捩じれや横転を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】二段掛プーリと基軸プーリとの間にベルトが巻き掛けられたレイアウトの説明図である。
【
図2】本実施形態に係るベルト取付治具を異なる方向から見た斜視図である。
【
図3】本実施形態に係るベルト取付治具の六面図である。
【
図4】本実施形態で使用する二段掛プーリの説明図である。
【
図5】本実施形態で説明する自動車エンジンの3軸レイアウトである。
【
図6】本実施形態に係るベルト取付治具の使用方法の説明図である。
【
図7】本実施形態に係るベルト取付治具の使用方法の説明図である。
【
図8】本実施形態に係るベルト取付治具の使用方法の説明図である。
【
図9】本実施形態に係るベルト取付治具の使用方法の説明図である。
【
図10】本実施形態に係るベルト取付治具の使用方法の説明図である。
【
図11】本実施形態に係るベルト取付治具の使用方法の説明図である。
【
図12】本実施形態に係るベルト取付治具の使用方法の説明図である。
【
図13】変形例に係るベルト取付治具の六面図である。
【
図14】その他の実施形態に係るベルト取付治具の六面図である。
【
図15】その他の実施形態に係るベルト取付治具の六面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(実施形態)
以下、図面を参照しつつ、本願発明の実施形態を説明する。本実施形態に係るベルト取付治具9は、
図5に示す、自動車エンジンの3軸レイアウト1に使用する。具体的には、手前プーリ21及び奥側プーリ22が中心軸方向に並設された、ウォーターポンプ用の二段掛プーリ2(複数段掛プーリ:
図4参照)と、エアコン用の補機プーリ3(基軸プーリ)と、駆動用のクランクプーリ4(基軸プーリ)との間に、周長方向に伸縮可能なVリブドベルト5を巻掛けるに際し、ベルト取付治具9は、補機プーリ3とクランクプーリ4と手前プーリ21との間に巻掛けられたVリブドベルト5を、手前プーリ21から奥側プーリ22にシフトさせるために使用する(
図10参照)。
【0030】
図5に示されるように、ウォーターポンプ用の二段掛プーリ2、エアコン用の補機プーリ3、及び、エンジン等のクランク軸41に連結されるクランクプーリ4は、それぞれ所定の軸間距離を隔てて回転自在に支持されている。また、手前プーリ21は、奥側プーリ22と補機プーリ3とクランクプーリ4とを結ぶVリブドベルト5の走行線からズレた位置に配置されている(オフセットの位置)。そして、二段掛プーリ2の奥側プーリ22と補機プーリ3とクランクプーリ4との間には、Vリブドベルト5が巻掛けられ、クランク軸41の動力が、クランクプーリ4から、二段掛プーリ2の入力軸23(ウォーターポンプ用)に伝動されるようになっている。本実施形態では、二段掛プーリ2、補機プーリ3、及び、クランクプーリ4の各軸間距離は変更不能に固定されており、また、Vリブドベルト5に対して張力を付与する所謂オートテンショナ(張力付与手段)は搭載していない。
【0031】
(二段掛プーリ2の構成)
図4に示すように、二段掛プーリ2は、手前プーリ21と手前プーリ21よりも直径が大きい奥側プーリ22とが中心軸方向に並設されて一体構造となったプーリである。これによると、中心軸を中心にして手前プーリ21と奥側プーリ22とが連動して回転可能となる。そして、二段掛プーリ2における手前プーリ21及び奥側プーリ22の外周面には、Vリブドベルト5の内周面に周長方向に複数形成されたリブと嵌合可能なプーリ溝21a及びプーリ溝22aがそれぞれ形成されている。また、二段掛プーリ2は、手前プーリ21のプーリ溝21a及び奥側プーリ22のプーリ溝22aを中心軸方向で挟む3つのプーリフランジ2a・2b・2cを備えている。このプーリフランジ2aは、
図4の側面視で、プーリ溝21aより手前プーリ21の径外方向へ若干、突出して形成されている。また、プーリフランジ2b・2cは、
図4の側面視で、プーリ溝22aより奥側プーリ22の径外方向へ若干、突出して形成されている。また、二段掛プーリ2のボス部6には、ウォーターポンプ用の入力軸23が挿入される。また、符号2dは、手前プーリ21の側面を示し、符号2eは、奥側プーリ22の側面を示す。
【0032】
(Vリブドベルト5)
Vリブドベルト5は、その周長方向において若干伸縮可能な所謂低モジュラスベルトである。低モジュラスベルトは、心線にポリアミド繊維を用いることで、弾性率を比較的低くしたものであり、高弾性率のもの(所謂高モジュラスベルト)と比較して急激な張力低下が抑制される。本実施形態では、Vリブドベルト5は、補機プーリ3とクランクプーリ4と奥側プーリ22との間のレイアウト周長よりもベルト周長を短くして、Vリブドベルト5に強い張力がかかるようにしている。
【0033】
また、Vリブドベルト5の内周面(裏面)には、二段掛プーリ2における手前プーリ21の外周面に形成されたプーリ溝21a、及び、奥側プーリ22の外周面に形成されたプーリ溝22aに嵌合可能な、複数のリブが、周長方向に形成されている。
【0034】
なお、
図5の太線矢印VはVリブドベルト5の走行方向を示し、この走行方向にVリブドベルト5が走行するときの二段掛プーリ2の回転方向を回転方向Aと定義する。
【0035】
(ベルト取付治具9)
次に、
図2及び
図3を参照しつつ、本実施形態に係るベルト取付治具9の構成を説明する。
【0036】
図2及び
図3に示すように、ベルト取付治具9は、手前プーリ21の外周面(プーリ溝21aの表面)に沿う円弧形状をした本体部91と、本体部91の前方に設けられたベルトすくい受け面92と、本体部91の外周面91aに設けられたベルト支持部93と、本体部91を手前プーリ21の外周面に沿わせた状態で、手前プーリ21と奥側プーリ22との間に設けられたプーリフランジ2bを跨る位置に、ベルト支持部93から奥側プーリ22の外周面(プーリ溝22aの表面)に向けて傾斜して設けられたベルト案内部94と、本体部91の後方に設けられた手前プーリ支持部95と、本体部91を手前プーリ21の外周面に沿わせた状態で、本体部91の側面から奥側プーリ22側に張り出した奥側プーリ支持部96とを備えた構成をしている。
【0037】
本体部91(ベルトすくい受け面92及び手前プーリ支持部95含む)は、手前プーリ21の外周面に沿うように湾曲形状をしている。本体部91及びベルトすくい受け面92の内周面側には、手前プーリ21の外周面に形成されたプーリ溝21aに嵌合するリブ部97(第2係止部)が形成されている。
【0038】
なお、本実施形態では、
図2(a)に示すように、本体部91の外周面91aは、手前プーリ21の外周面に沿った円弧形状をしているが、平面形状をしていてもよい。
【0039】
リブ部97は、
図2(b)に示すように、本体部91の内周面及びベルトすくい受け面92の内周面を長手方向に沿った6つの凸状のリブにより構成されている。ベルト取付治具9が二段掛プーリ2に取り付けられた時に、リブ部97が手前プーリ21のプーリ溝21aに嵌合することにより、ベルト取付治具9を、手前プーリ21の外周に正確に固定することができる。なお、本実施形態では、手前プーリ21のプーリ溝21aの数に合わせて6つのリブによりリブ部97を構成しているが、リブ部97を構成するには少なくとも1つの凸状のリブがあればよいので、リブ部97は、手前プーリ21に形成されたプーリ溝21aの数より少ない数のリブにより構成してもよい。
【0040】
ベルトすくい受け面92は、
図2及び
図3に示すように、前方に向けてテーパ形状をしている。即ち、ベルトすくい受け面92は、本体部91を手前プーリ21の外周面に沿わせた状態で、二段掛プーリ2が回転方向Aに回転されたときに、手前プーリ21の外周面と手前プーリ21に巻き掛けられたVリブドベルト5の裏面との間に入り込む方向に向けて、厚みが薄くなっている。なお、ベルトすくい受け面92のテーパ角度は、二段掛プーリ2の大きさ、Vリブドベルト5の張力、奥側プーリ22の外径サイズなどによって、決定されるため、特に限定されない。
【0041】
ベルト支持部93は、
図2及び
図3に示すように、長方体形状をしており、ベルト支持部93の前方に、ベルトすくい受け面92から導入されるVリブドベルト5の裏面と線接触するベルト支持線93aが幅方向に形成されている。即ち、ベルト支持線93aは、二段掛プーリ2の中心軸方向に対して平行に形成されている。なお、ベルト支持線93aは、二段掛プーリ2の中心軸方向に対して必ずしも平行でなくてもよく、傾斜していてもよい。
【0042】
ここで、ベルト支持部93のベルト支持線93aは、本体部91を手前プーリ21の外周面に沿わせた状態で、本体部91の外周面において、奥側プーリ22の外周面及びプーリフランジ2bよりも僅かに外側(手前プーリ21の径方向外側)の高さ位置に形成されている。
【0043】
なお、本実施形態では、
図2(a)に示すように、ベルト支持部93の上面93bは、平面形状をしているが、手前プーリ21の外周面に沿った円弧形状をしていてもよい。
【0044】
ベルト案内部94は、本体部91を手前プーリ21の外周面に沿わせた状態で、ベルト支持部93の側面から奥側プーリ22側に、プーリフランジ2bを跨るように、奥側プーリ22の幅方向の中央あたりまで張り出している。また、
図3に示すように、ベルト取付治具9正面視で、ベルト案内部94の上面94bは、ベルト支持部93(ベルト支持線93a)から奥側プーリ22の外周面(プーリ溝22aの表面)に向けて傾斜している。また、ベルト取付治具9上面視で、ベルト案内部94は、台形形状をしており、ベルト案内部94の前方から後方にかけて幅広くなる傾斜がつけられている。そして、ベルト案内部94の前方に、ベルト支持線93aからスライドされるVリブドベルト5の裏面と線接触するベルト案内線94a(ベルト案内部94の前方から後方にかけて幅広くなる傾斜部分)が形成されている。
【0045】
なお、本実施形態では、
図2(a)に示すように、ベルト案内部94の上面94bは、平面形状をしているが、前後方向に沿った円弧形状をしていてもよい。
【0046】
また、ベルト案内部94の内周面側には、奥側プーリ22の外周面に形成されたプーリ溝22aに嵌合するリブ部98(第1係止部)が形成されている。リブ部98は、
図2(b)に示すように、ベルト案内部94の内周面を長手方向に沿った2つの凸状のリブにより構成されている。ベルト取付治具9が二段掛プーリ2に取り付けられた時に、リブ部98が奥側プーリ22のプーリ溝22aに嵌合することにより、ベルト取付治具9を、奥側プーリ22の外周に正確に固定することができる。なお、リブ部98をベルト案内部94の内周面に形成する場合には、少なくとも1つの凸状のリブがあればよい。
【0047】
リブ部98は、2つの凸状のリブにより構成されていることから、奥側プーリ22の外周面に形成されたプーリ溝22aの複数の溝の何れか1つの溝に嵌合することができる。従って、いろいろな大きさ(幅)・形状・溝の個数のプーリ溝22aを有する奥側プーリ22に対して、当該ベルト取付治具9を共通に使用することができる。
【0048】
手前プーリ支持部95は、本体部91の後方に設けられており、手前プーリ21の外周面に沿うように湾曲形状をしている。手前プーリ支持部95の内周面には、リブ部は設けられていない。なお、手前プーリ支持部95の厚みは、薄いほど良く、ベルトすくい受け面92の最大厚みB(
図2(c)参照)よりも薄い方が好ましい。ベルト取付治具9が二段掛プーリ2に取り付けられた時に、手前プーリ支持部95の内周面が手前プーリ21の外周面に当接することにより、ベルト取付治具9を、手前プーリ21の外周に安定して固定することができる。
【0049】
奥側プーリ支持部96は、本体部91を手前プーリ21の外周面に沿わせた状態で、本体部91及びベルトすくい受け面92の側面から奥側プーリ22側に、プーリフランジ2bを跨るように張り出している。奥側プーリ支持部96の内周面には、プーリフランジ2bと奥側プーリ支持部96との接触を避けるための溝部96a(
図2(b)参照)が形成されている。溝部96aの溝幅は、プーリフランジ2bの幅よりも広くしている。
【0050】
また、奥側プーリ支持部96には、ベルトすくい受け面92の側面から奥側プーリ22側に張り出した、ベルト整調部96bが設けられている。このベルト整調部96bは、本体部91を手前プーリ21の外周面に沿わせた状態で、ベルトすくい受け面92より奥側プーリ22側の、奥側プーリ22の外周面上に位置するように設けられている。ベルト整調部96bは、手前プーリ21に巻掛けられたVリブドベルト5を、ベルト取付治具9を使用して奥側プーリ22にシフトさせる際に、ベルトすくい受け面92からスライドされるVリブドベルト5の裏面と接触する。また、
図3及び
図12に示すように、このベルト整調部96bは、ベルト案内部94よりも奥側プーリ22側に張り出している。
【0051】
(ベルト取付治具9の使用方法)
次に、
図5~
図12を参照しつつ、上記のベルト取付治具9の使用方法を説明する。具体的には、先ず、補機プーリ3とクランクプーリ4と二段掛プーリ2の手前プーリ21との間に、Vリブドベルト5を巻掛ける手順(a)について説明した後、手前プーリ21に巻掛けられたVリブドベルト5を、ベルト取付治具9を使用して奥側プーリ22にシフトさせる手順(b)について説明する。
【0052】
なお、図示しないが、二段掛プーリ2のボス部6にレンチを連結し、二段掛プーリ2を手動で自由に回転できるようにしている。
【0053】
(手順(a))
先ず、
図5に示すように、作業者は、Vリブドベルト5を補機プーリ3とクランクプーリ4と手前プーリ21との間に巻き掛ける。この際、補機プーリ3とクランクプーリ4と手前プーリ21との間のレイアウト周長は、補機プーリ3とクランクプーリ4と奥側プーリ22との間のレイアウト周長よりも短いため、作業者は、比較的簡単に、Vリブドベルト5を補機プーリ3とクランクプーリ4と手前プーリ21との間に巻き掛けることができる。
【0054】
なお、本実施形態では、作業者の手で、Vリブドベルト5を補機プーリ3とクランクプーリ4と手前プーリ21との間に巻き掛ける場合について説明しているが、これに限らず、補機プーリ3とクランクプーリ4と手前プーリ21との間にVリブドベルト5を巻掛ける際に、一般的な一段掛けプーリ間におけるVリブドベルト5の巻掛けに使用されるベルト取付治具を使用してもよい(例えば、特開2011-208753号公報に開示されたベルト取付治具)。
【0055】
(手順(b))
次に、上記手順(a)により、補機プーリ3とクランクプーリ4と手前プーリ21との間に巻掛けられたVリブドベルト5を、ベルト取付治具9を使用して、手前プーリ21から奥側プーリ22にシフトさせる手順について説明する。
【0056】
まず、ベルト取付治具9を、本体部91が手前プーリ21の外周面に沿うように設置する(
図4参照)。その際、本体部91の内周面側には、リブ部97が設けられており、ベルト案内部94の内周面側にも、リブ部98が設けられていることから、ベルト取付治具9を、手前プーリ21の外周面、及び、奥側プーリ22の外周面に対して確実に設置することができる。
【0057】
次に、レンチを用いて二段掛プーリ2を回転方向Aに回転させる。この際、
図5に示すように、ベルト取付治具9のベルトすくい受け面92が、手前プーリ21とVリブドベルト5との間に差し込まれる。更に、二段掛プーリ2が回転方向Aに回転すると、Vリブドベルト5が持ち上げられる。この際、Vリブドベルト5が持ち上げられた反動で、Vリブドベルト5がベルトすくい受け面92を強く押し付けられることにより、ベルト取付治具9が手前プーリ21に強く密着する。これにより、ベルト取付治具9が手前プーリ21から外れたり、ずれたりすることを防ぐことができる。
【0058】
また、ベルトすくい受け面92は、本体部91を手前プーリ21の外周面に沿わせた状態で、手前プーリ21の外周面と手前プーリ21に巻き掛けられたVリブドベルト5の裏面との間に入り込む方向に、テーパ形状をしていることから、ベルトすくい受け面92を、手前プーリ21の外周面とVリブドベルト5の裏面との間にスムーズに入り込ませて、過度な負荷を掛けずにVリブドベルト5を持ち上げることができる。
【0059】
更に、二段掛プーリ2を回転方向Aに回転させると、
図6に示すように、Vリブドベルト5の裏面が、ベルトすくい受け面92に次いで、ベルト支持部93のベルト支持線93aにも当接する。これにより、ベルト支持部93のベルト支持線93aが、ベルトすくい受け面92で持ち上げたVリブドベルト5の裏面に線接触して、Vリブドベルト5を、奥側プーリ22の外周面及びプーリフランジ2bよりも外側(手前プーリ21の径方向外側)の高さ位置に支持することができる。この際、Vリブドベルト5とベルト支持部93とは、線接触していることから、Vリブドベルト5に過度な張力を掛けないようにすることができる。
【0060】
更に、二段掛プーリ2を回転方向Aに回転させると、
図7に示すように、Vリブドベルト5の裏面が、ベルト支持線93aに次いで、ベルト案内部94のベルト案内線94aにも当接する。ここで、ベルト案内部94のベルト案内線94aが、手前プーリ21と奥側プーリ22とに跨る位置で、ベルト支持線93aから奥側プーリ22の外周面に向けて傾斜しており、しかも、ベルト支持線93aに支持されたVリブドベルト5は、ベルト周方向に収縮の力が掛かっているため、Vリブドベルト5の裏面が、ベルト案内線94aに当接すると同時に、
図11に示すように、Vリブドベルト5は、傾斜したベルト案内線94aに線接触しながら奥側プーリ22側にスライドし始める。
【0061】
更に、二段掛プーリ2を回転方向Aに回転させると、
図8に示すように、Vリブドベルト5の裏面が全幅に亘って、ベルト案内線94aに当接する。その際、ベルト案内部94の後方側に移動したVリブドベルト5は、奥側プーリ22の外周面に案内される。このように、ベルト案内部94が、奥側プーリ22の外周面に向けて傾斜されていることによって、奥側プーリ22の外周面にVリブドベルト5を確実に巻き掛けることができる。また、ベルト案内部94のベルト案内線94aがVリブドベルト5の裏面と線接触で当接するために、Vリブドベルト5を最短経路でベルト支持部93から奥側プーリ22へスライドさせながらスムーズに取付けることができ、Vリブドベルト5に過度な張力が掛かったりすることなく、また永久歪が生じることを防いで取付けることができる。
【0062】
更に、二段掛プーリ2を、回転方向Aに回転させる。すると、
図9に示すように、手前プーリ21の外周面上のVリブドベルト5が、手前プーリ21の外周面を離れて奥側プーリ22の外周面へと移動していく。
【0063】
この際、
図12に示すように、奥側プーリ支持部96のベルト整調部96bが、ベルトすくい受け面92の側面から、ベルト案内部94よりも奥側プーリ22側に張り出していることにより、Vリブドベルト5の裏面がベルトすくい受け面92からベルト整調部96bに当接した状態でスライドするため、Vリブドベルト5の、奥側プーリ22の外周面へのシフト動作をスムーズに行うことができる。ベルト取付治具9を使用して、Vリブドベルト5を、手前プーリ21から奥側プーリ22にシフトさせる場合、Vリブドベルト5の、奥側プーリ22の外周面へのシフト動作が完了する直前の段階で、Vリブドベルト5が奥側プーリ22の外周面へ勢いよく滑り込む。この時、Vリブドベルト5が奥側プーリ22の外周面に大きく落ち込む挙動を見せようとする。この挙動はVリブドベルト5の捩じれや横転に繋がる原因となる。そこで、ベルト取付治具9にベルト整調部96bを設けることにより、
図12に示すように、ベルト整調部96bが、Vリブドベルト5のシフト動作が完了する直前まで、Vリブドベルト5の裏面をベルト幅の広い範囲に亘って支持する役割を果たす。これにより、Vリブドベルト5の手前プーリ21から奥側プーリ22へのシフト動作完了直前において、Vリブドベルト5の捩じれや横転を防止することができる。
【0064】
以上の結果、
図10に示すように、手前プーリ21に巻掛けられたVリブドベルト5を奥側プーリ22に完全にシフトさせることができる。この際、Vリブドベルト5のベルトすくい受け面92に対する押圧が自然と解除されることから、ベルト取付治具9を二段掛プーリ2から回収することができる。
【0065】
上記手順によりベルト取付治具9を使用すれば、補機プーリ3とクランクプーリ4と二段掛プーリ2の手前プーリ21との間に巻き掛けられたVリブドベルト5を、手前プーリ21から奥側プーリ22にシフトさせる作業を容易にし、且つ、シフトさせる際に、Vリブドベルト5の裏面に対するベルト取付治具9側からの突き上げ力を最小限に抑えることができる。
【0066】
(その他の実施形態・変形例など)
図13に示すように、ベルト取付治具109は、本体部191の内周面や手前プーリ支持部195の内周面に肉抜き加工をしてもよい。これにより、ベルト取付治具109の軽量化を図ることができる。また、
図13に示すように、手前プーリ支持部195の肉抜き加工した場所に、紐等を通す、2つの穴195aを設けても良い。この2つの穴195aに紐を通し、通した紐をレンチ等に結びつけることにより、Vリブドベルト5の二段掛プーリ2への巻き掛け作業において、ベルト取付治具109がレンチから落下するのを防止することができる。
【0067】
また、上記実施形態では、
図3に示すように、ベルト案内部94は、ベルト取付治具9上面視で、台形形状をしており、ベルト案内部94の前方から後方にかけて幅広くなる傾斜(ベルト案内線94a部分)がつけられている。しかし、これに限らず、
図14に示すように、ベルト案内部294は、ベルト取付治具209上面視で、台形形状をしており、ベルト案内部294の後方から前方にかけて幅広くなる傾斜がついた形状をしていてもよい。また、
図15に示すように、ベルト取付治具309上面視で、ベルト案内部394は、台形形状をしており、ベルト案内部394の前方から後方にかけて幅広くなる傾斜(ベルト案内線394a部分)、及び、ベルト案内部394の後方から前方にかけて幅広くなる傾斜がついた形状をしていてもよい。
【0068】
また、上記実施形態のベルト取付治具9は、Vリブドベルト5を二段掛プーリ2に巻き掛ける際に使用しているが、三段掛プーリ等、複数のプーリが中心軸方向に並設された複数段掛プーリにも使用可能である。
【0069】
また、ベルト支持部93の高さA(
図2(c)参照)は、ベルト取付治具9の二段掛プーリ2への設置時、奥側プーリ22の外周面及びプーリフランジ2bよりも外側の高さ位置にあればよい。従って、ベルト支持部93の高さAを低くすればするほどベルト支持線93aの高さが低くなるため、Vリブドベルト5が過度に持ち上げられることがなく、且つ、ベルト案内線94aの、ベルト支持部93(ベルト支持線93a)から奥側プーリ22の外周面(プーリ溝22aの表面)に向けての傾斜角度も緩やかになるため、Vリブドベルト5のシフト中の捩じれ姿勢を抑制することができる。
【0070】
また、上記実施形態では、本体部91及びベルトすくい受け面92の内周面側には、リブ部97が形成されているが、このリブ部97は形成されていなくてもよい。また、上記実施形態では、ベルト案内部94の内周面側には、リブ部98が形成されているが、このリブ部98は形成されていなくてもよい。
【0071】
また、上記実施形態のベルト取付治具9では、本体部91の後方に、手前プーリ支持部95を設けているが、設けなくてもよい。
【0072】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができるものである。
【符号の説明】
【0073】
1 3軸レイアウト
2 二段掛プーリ
21 手前プーリ
21a プーリ溝
22 奥側プーリ
22a プーリ溝
3 補機プーリ
4 クランクプーリ
5 Vリブドベルト
6 ボス部
9 ベルト取付治具
91 本体部
92 ベルトすくい受け面
93 ベルト支持部
93a ベルト支持線
94 ベルト案内部
94a ベルト案内線
95 手前プーリ支持部
96 奥側プーリ支持部
96b ベルト整調部
97 リブ部
98 リブ部
A 回転方向