(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-20
(45)【発行日】2023-09-28
(54)【発明の名称】グラスラン
(51)【国際特許分類】
B60J 10/235 20160101AFI20230921BHJP
B60J 10/21 20160101ALI20230921BHJP
B60J 10/27 20160101ALI20230921BHJP
B60J 10/76 20160101ALI20230921BHJP
【FI】
B60J10/235
B60J10/21
B60J10/27
B60J10/76
(21)【出願番号】P 2020159261
(22)【出願日】2020-09-24
【審査請求日】2022-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000158840
【氏名又は名称】鬼怒川ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100205682
【氏名又は名称】高嶋 一彰
(72)【発明者】
【氏名】大村 拓郎
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-153694(JP,A)
【文献】特開2009-274653(JP,A)
【文献】特開平10-309944(JP,A)
【文献】実開昭63-081712(JP,U)
【文献】特開2012-025354(JP,A)
【文献】特開平02-095924(JP,A)
【文献】国際公開第2015/033782(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 10/00-10/90
B60R 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアサッシに沿って装着されて、前記ドアサッシの上辺部と縦辺部に装着される押出成形部と、前記上辺部と縦辺部との間のコーナ部に装着されて、前記上辺部側の押出成形部の端部と前記縦辺部側の押出成形部の端部を接合する型成形部と、を備え、前記ドアサッシに取り付けられた状態でドアガラスを昇降案内するグラスランであって、
前記グラスランは、前記ドアサッシに取り付けられた際に前記ドアガラスの外周面と対向する底壁と、前記底壁の幅方向の両端縁に設けられた車内側の側壁及び車外側の側壁と、該両側壁の車内外側の対向する内面にそれぞれ設けられて、前記ドアガラスの一側面と他側面に摺動可能な複数のシールリップと、を備え、
前記車内側の側壁の前記内面のうち、少なくとも前記押出成形部の端部と型成形部との接合部を跨いだ長手方向の領域に、前記ドアガラスが上昇した際に前記車内側シールリップの背面を支持する支持部を設け、
前記支持部は、前記押出成形部の端部と型成形部との接合部と交差するように前記接合部を跨いだ状態で車内側の側壁の長手方向に沿って設けられていると共に、横断面ほぼ三角形状に形成されて、該三角形の頂部が前記車内側シールリップの背面を線接触状態で支持することを特徴とするグラスラン。
【請求項2】
請求項1に記載のグラスランであって、
前記支持部を、先端部が車内側シールリップの背面に指向した支持リップによって形成したことを特徴とするグラスラン。
【請求項3】
請求項1に記載のグラスランであって、
前記支持部を、前記押出成形部の端部と前記型成形部との接合部領域から前記型成形部のコーナ部付近まで延長形成したことを特徴とするグラスラン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車の車体開口部を開閉するドアのドアパネル(ドアサッシ)の内周に取り付けられて、ドアガラスを摺動案内するグラスランの改良技術に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来のグラスランとしては、例えば以下の特許文献1に記載したものが知られている。
【0003】
このグラスラン1は、
図4に示すように、自動車の例えばフロントドア2のドア本体2aの上部に設けられたドアサッシ3に沿って装着されて、ドアサッシ3の上辺部3aと縦辺部3bに装着される押出成形部4、5と、前記上辺部3aと縦辺部3bとの間のコーナ部Cに装着され、前記上辺部3a側の押出成形部4の端部4aと前記縦辺部3b側の押出成形部5の端部5aを接続する型成形部6と、を備えている。また、このグラスラン1は、
図5に示すように、ドアサッシ3の底面に配置固定される底壁7と、該底壁7の車内外側幅方向の両端縁からほぼ直角方向に延びた車外側の側壁8及び車内側の側壁9と、前記車外側の側壁8と車内側の側壁9の対向する内面に設けられて、昇降時のドアガラス10の一側面10aと他側面10bに摺動する複数の車外側シールリップ11aと車内側シールリップ11bと、を有している。なお、
図5中、12はドアアウターパネル、13はドアインナーパネルである。
【0004】
さらに、前記型成形部6における車内側の側壁9には、ドアガラス10の昇降時(
図4中、矢印方向)に車内側シールリップ11bと当接する図外の突出部が設けられている。この突出部は、グラスラン1の型成形部6のコーナ部において、車内側シールリップ11bがドアガラス10を車外側に押す力を大きくしてシール圧を高くしてシール性を向上させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記従来のようなグラスラン1にあっては、前記ドアサッシ3の上辺部3aと縦辺部3bがそれぞれ押出成形部4,5によって形成され、この両押出成形部4,5の端部4a、5aがドアサッシ3のコーナ部Cに配置される前記型成形部6によって結合されるようになっていることは既知の通りである。
【0007】
そして、前記各押出成形部4,5の各端部4a、5aを型成形部6で結合するための一般的な成形工法としは、予め押出成形機によって成形された前記各押出成形部4,5のそれぞれの端部4a、5aを、射出成形機の金型内にセットする。その後、前記金型内に、樹脂材などの溶融材料を注入して型成形部6を成形することによって前記両押出成形部4,5の各端部4a、5aを、型成形部6を介して結合するようになっている。
【0008】
しかし、前記射出成形時において、金型内へ溶融樹脂材などを注入したときや、金型を型開きして成形材を金型内から取り出すときに、
図6に示すように、押出成形部4,5と型成形部6との接合部(境界部)Xおよび該接合部Xを中心とした両側で車内側シールリップ11bが波打ち状に変形が発生してしまうおそれがある。これは、射出成形時に金型内の固形状の押出成形部4,5に対して流動性の溶融樹脂材を注入することによって成形される型成形部6との接合部Xを中心とした周囲に成形収縮によって発生する所謂ひけなどが発生要因と考えられる。
【0009】
この結果、グラスラン1のドアサッシ3への組付後において、ドアガラス10を上昇させて閉止した際に、ドアガラス10の他側面10bと車内側シールリップ11bとの間に微小隙間Sが発生してシール性の低下を招くおそれがある。
【0010】
そこで、車内側の側壁9の内面と車内側シールリップ11bの背面との間に、例えば発砲シール材であるエプトシーラーなどを別途介在させて水などの浸入を防止することも考えられるが、この別材料のエプトシーラーを介在させる作業が煩雑になって作業能率が低下するおそれがある。
【0011】
前記特許文献1に記載の従来のグラスランの技術は、本願発明の前記技術的課題については何ら考慮されておらず、型成形部6の車内側の側壁9の内面のみに突出部を設け、この突出部によって型成形部側の車内側シールリップの反力を高めてシール性を確保しているに過ぎない。
【0012】
したがって、前述のように、ドアガラス10を上昇させて閉止した際に、押出成形部4,5と型成形部6との接合部Xや接合部Xの周囲でドアガラス10の他側面10bと車内側シールリップ11bとの間に微小隙間Sが発生してシール性の低下を招くおそれがある。
【0013】
本発明は、前記従来のグラスランの技術的課題に鑑みて案出されたもので、押出成形部と型成形部との結合部領域における車内側シールリップとドアガラスとの間の隙間の発生を抑制してシール性の低下を防止し得るグラスランを提供することを一つの目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願請求項1に記載の発明は、車両のドアサッシに沿って装着されて、前記ドアサッシの上辺部と縦辺部に装着される押出成形部と、前記上辺部と縦辺部との間のコーナ部に装着されて、前記上辺部側の押出成形部の端部と前記縦辺部側の押出成形部の端部を接合する型成形部と、を備え、前記ドアサッシに取り付けられた状態でドアガラスを昇降案内するグラスランであって、
前記グラスランは、前記ドアサッシに取り付けられた際に前記ドアガラスの外周面と対向する底壁と、前記底壁の幅方向の両端縁に設けられた車内側の側壁及び車外側の側壁と、該両側壁の車内外側の対向する内面にそれぞれ設けられて、前記ドアガラスの一側面と他側面に摺動可能な複数のシールリップと、を備え、
前記車内側の側壁の前記内面のうち、少なくとも前記押出成形部の端部と型成形部との接合部を跨いだ長手方向の領域に、前記ドアガラス方向が昇降した際に前記車内側シールリップの背面を支持する支持部を設け、
前記支持部は、前記押出成形部の端部と型成形部との接合部と交差するように前記接合部を跨いだ状態で車内側の側壁の長手方向に沿って設けられていると共に、横断面ほぼ三角形状に形成されて、該三角形の頂部が前記車内側シールリップの背面を線接触状態で支持することを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本願発明によれば、車内側シールリップは、背面が支持部によって支持されていることから、ドアガラスを上昇させた際に、該ドアガラスの側面に対して先端部が押し付けられながら当接(摺動)する。つまり、支持部によって車内側シールリップの先端部に型成形時に発生した凹状の撓み変形(波打ち変形)が抑えられる。これによって、車内側シールリップの先端部全体を、ドアガラスの他側面にほぼ均一に密着させることができることから、シール性能の低下を抑制できる。
また、前記支持部は、横断面三角形状に形成されたその頂部が車内側シールリップの先端部の背面に対して線接触状態で支持することからシール面圧が十分に低くなる。このため、ドアガラスの昇降時における該ドアガラスに対する車内側シールリップの過度な反力(押圧力)を抑制できる。これにより、ドアガラスの昇降時における車内側シールリップの摺動抵抗の上昇が抑えられて、ドアガラスの常時円滑な昇降作動が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態のグラスランがフロントドアのドアサッシに組み付けられた状態を示す要部断面斜視図である。
【
図2】本実施形態のグラスランがフロントドアのドアサッシに組み付けられた状態の
図1のA-A線断面図である。
【
図3】本発明の第2実施形態のグラスランの押出成形部と型成形部の間の支持部を示す要部正面図である。
【
図4】従来及び本実施形態のグラスランが組み付けられた自動車のフロントドアの側面図である。
【
図5】従来のグラスランがフロントドアのドアサッシに組み付けられる際にドアガラスと車内側シールリップとの間に発生する隙間を示す
図4のB-B線断面図である。
【
図6】
図5の矢印C方向から視た従来のグラスランの車内側シールリップとドアガラスとの間に形成される隙間を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明にかかるグラスランの実施形態を図面に基づいて詳述する。
【0018】
本実施形態は、グラスランを前記従来技術と同じく
図4に示す自動車のプレスドアのフロントドアのドアサッシに取り付けられるものに適用したものを示している。
【0019】
図1は第1実施形態のグラスランがフロントドアのドアサッシに組み付けられた状態を示す要部断面斜視図、
図2は本実施形態のグラスランがフロントドアのドアサッシに組み付けられた状態の
図1のA-A線断面図である。
【0020】
図4に示すように、自動車のフロントドア2のドア本体2aの上部にはドアサッシ3が設けられている。このドアサッシ3は、
図1及び
図2にも示すように、アウターパネル12とインナーパネル13の間に配置されて、内周部が前記インナーパネル13に結合された図外のレインフォースブラケット(リテーナ)を有し、このリテーナの内周側に、長尺な横断面ほぼコ字形状のグラスラン20が嵌着状態に取り付けられている。
【0021】
前記アウターパネル12は、端部が車内方向へほぼクランク状に折曲形成されて、先端部の車外側フランジ12aが
図1中、下方向へ延びている。一方、インナーパネル13は、車内側へほぼ横U字形状に膨出形成されて、先端部の車内側フランジ13aが前記アウターパネル12の車外側フランジ12aと平行に下方向へ延びている。
【0022】
前記グラスラン20は、
図4に示すドアサッシ3の上辺部3aと縦辺部3bに装着される押出成形部21、22と、前記上辺部3aと縦辺部3bとの間のコーナ部Cに装着され、前記上辺部3a側の押出成形部21の端部21aと前記縦辺部3b側の押出成形部22の端部22aを接続する型成形部23と、を備えている。
【0023】
前記押出成形部21,22は、溶融した樹脂材である熱可塑性エラストマー(TPE)を押出成形によって連続一体に形成されている。一方、型成形部23は、同じ熱可塑性エラストマー(TPE)が用いられ、金型による射出成形によって形成されている。この射出成形を行うには、両押出成形部21,22の各端部21a、22aを予め金型内の所定位置に配置した後、金型内にTPEの溶融樹脂材を注入して型成形を行い、冷却固化後に型開きして取り出せば両押出成形部21,22の各端部21a、22aが型成形部23を介して結合されるようになっている。
【0024】
また、グラスラン20は、
図1及び
図2に示すように、横断面ほぼ逆U字形状に形成されており、ドアサッシ3の底面3cに配置固定される底壁24と、該底壁24の車内外側幅方向の両端縁からほぼ直角方向に延びた車外側の側壁25及び車内側の側壁26と、前記車外側の側壁25と車内側の側壁26の図中下端部の対向する内面に設けられた車外側シールリップ27及び車内側の車内側シールリップ28と、を有している。また、グラスラン20は、前記両側壁25、26のそれぞれの図中下端部に車外側、車内側シールリップ27、28と反対方向へ折り返し状に折曲された第1、第2モールリップ29,30を有している。
【0025】
前記底壁24は、ほぼ平坦状に形成されて外面がドアサッシ3の底面3cに当接配置され、先端部が車外側の外端部にアウターパネル12の車外側フランジ12a付近に弾接する第1支持リップ24aが設けられている。
【0026】
前記車内外の両側壁25、26は、ほぼ平板状に形成されて、車内側の側壁26の外側面には前記インナーパネル13の車内側フランジ13aに弾接する第2支持リップ26aが設けられている。
【0027】
前記車外側シールリップ27と車内側シールリップ28は、それぞれの先端部27a、28aが互いに向き合うように同方向へ傾斜状に形成されて、昇降時のドアガラス10の両側面10a、10bを挟持状態に摺動案内するようになっている。
【0028】
前記第1、第2モールリップ29、30は、車外側、車内側シールリップ27,28よりも肉厚に形成されて、両側壁25,26の図中各下端部との間に挿入されたアウタ、インナーパネル12、13の各車外側フランジ12a、13aを、第1、第2支持リップ24a、26aと共に挟持状態に保持するようになっている。
【0029】
そして、車内側の側壁26の車外側の側壁25側の内面には、
図1及び
図2に示すように、車内側シールリップ28の先端部28aの背面を支持する支持部31が一体に設けられている。この支持部31は、グラスラン20の型成形部23を射出成形する際に一緒に成形されるもので、同じ熱可塑性エラストマー材によって車内側の側壁26内面に一体に設けられている。
【0030】
また、この支持部31は、横断面ほぼ正三角形状に形成されて、頂部31aが車内側シールリップ28の先端部28aの背面に接触可能に配置されている。さらに支持部31は、
図1に示すように、前記押出成形部22の端部22aと型成形部23の一端部23aとの接合部Xを跨いだ領域に車内側の側壁26の長手方向に沿って直線状に設けられている。すなわち、支持部31は、その長手方向の領域が接合部Xを中心として左右方向へほぼ同じ長さで直線状に延びて全体の長さLが約40mmに設定されている。
【0031】
また、支持部31は、グラスラン20がドアサッシ3に組み付けられた後、ドアガラス10が例えば上昇して車外側シールリップ27と車内側シールリップ28との間に挟持状態で摺動した際には、頂部31aが車内側シールリップ28の先端部28aの図中右方向の撓み反力に抗して背面を
図2の白抜き矢印方向へ押圧支持する。これによって、支持部31は、車内側シールリップ28を前述した
図5及び
図6に示す少なくとも前記隙間S分だけ車外側シールリップ27(ドアガラス10)方向へ変形させるようになっている。
〔グラスランの作用効果〕
以下、本実施形態のグラスラン20の作用効果について説明する。
【0032】
本実施形態のグラスラン20は、前記従来技術と同じく、前述した射出成形時において、金型内へ熱可塑性エラストマーの溶融樹脂材を注入したときや、金型を型開きして成形材を金型内から取り出すときに、
図6に示すように、前記押出成形部21,22と型成形部23との接合部Xおよび該接合部Xを中心とした左右両側で車内側シールリップ28の先端部28aが波打ち状に変形してしまう。
【0033】
一方、支持部31は、前述のように、グラスラン20をアウターパネル12とインナーパネル13の各車外側フランジ12a、13aとドアサッシ3の間に組み付けた際には、頂部31aが車内側の車内側シールリップ28の先端部28aの背面に接触可能な状態になっている。
【0034】
そして、本実施形態のグラスラン20を、ドアサッシ3などの間に組み付けた後に、
図2に示すように、ドアガラス10を閉方向へ上昇させると、この上昇中に両側面10a、10bが車外側シールリップ27と車内側シールリップ28の各先端部27a、28aに摺動して閉方向へ案内される。
【0035】
このとき、車内側シールリップ28には、ドアガラス10の他側面10bから車内側の側壁26方向への反力が作用する。この反力によって車内側シールリップ28は、基端部を中心として先端部28aが車内側の側壁26方向へ撓み変形しようとするが、前記接合部X及びその周囲では先端部28aの背面を支持部31の頂部31aが当接支持して、
図2中、白抜き矢印に示すように、車内側シールリップ28の先端部28aをドアガラス10方向へ押圧する。
【0036】
これにより、車内側シールリップ28の先端部28aは、ドアガラス10の他側面10bに対してほぼ均一に密着して、先端部28aとドアガラス10の他側面10bとの間に
図5,
図6に示すような隙間Sが発生せずに、この隙間Sが消失した状態になる。この結果、車内側シールリップ28とドアガラス10との間のシール性の低下を抑制することができる。
【0037】
また、前述した従来の技術のように、車内側の側壁26の内面と車内側シールリップ28の背面との間に、エプトシーラーなどを別途介在させる必要がないことからこれを取り付ける作業が不要になることから作業能率の低下を抑制できる。
【0038】
また、支持部31は、横断面三角形状に形成されたその頂部31aが車内側シールリップ28の先端部28aの背面に対してほぼ線接触状態で支持することからシール面圧が十分に低くなる。このため、ドアガラス10の昇降時における該ドアガラス10に対する車内側シールリップ28の過度な反力(押圧力)を抑制できる。これにより、ドアガラス10の昇降時における車内側シールリップ28の摺動抵抗の上昇が抑えられて、ドアガラス10の常時円滑な昇降作動が得られる。
【0039】
支持部31を三角形状に形成したことによって、金型成形時における成形収縮が発生し難くなると共に、金型からの脱型性も良好になる。
【0040】
さらに、支持部31は、車内側シールリップ28の内面に沿って長手方向全体に設けられているのではなく、接合部Xとその周囲のみに形成されているので、ドアガラス10に対する過度な押圧力が作用せず隙間Sを消失させるだけの最低限の反力で済むことから、支持部31の三角形状と相俟ってドアガラス10との摺動抵抗の上昇をさらに抑制できる。
〔第2実施形態〕
図3は本発明の第2実施形態を示し、支持部31の横断面形状などの基本構造は第1実施形態と同じであるが、異なるところは、支持部31は、接合部Xを跨いで図中左右L,Rの長手方向に沿って配置されているが、右側Rの長さを型成形部23のコーナ部C付近まで延長させたものである。
【0041】
したがって、この第2実施形態は、第1実施形態と同じ作用効果が得られることは勿論のこと、特に右側Rをコーナ部C付近まで延長形成したことによって、型成形部23での補強効果が得られると共に、支持部31によってドアガラス10の他側面10bに対して強く押圧することが可能になる。
【0042】
前記第1、第2実施形態では、支持部31をドアサッシ3の上辺部3a側の押出成形部21と型成形部23の接合部X側に設けた構成を示したが、ドアサッシ3の縦辺部3b側の押出成形部22と型成形部23との接合部X側に設けることも可能である。
【0043】
さらに、各実施形態では、支持部31を横断面三角形状としたが、接合部Xを跨いで設けるものであれば、例えば半径形状やリップ状に形成することも可能である。
【0044】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、押出成形部21、22や型成形部23を熱可塑性エラストマーによって形成したが、さらに全体の材質をさらに高剛性あるいは低剛性のものに変更することも可能である。また、部分的に材質を変更することも可能であり例えば、車外側シールリップ27や車内側シールリップ28をスポンジゴムなどで形成することも可能である。
【0045】
また、本発明のグラスランは、フロントドアの他にリアドアにも適用可能であることはいうまでもない。
【0046】
以上説明した実施形態に基づくグラスランとしては、例えば、以下に述べる態様のものが考えられる。
【0047】
その一つの態様において、車両のドアサッシに沿って装着されて、前記ドアサッシの上辺部と縦辺部に装着される押出成形部と、前記上辺部と縦辺部との間のコーナ部に装着されて、前記上辺部側の押出成形部の端部と前記縦辺部側の押出成形部の端部を接合する型成形部と、を備え、前記ドアサッシに取り付けられた状態でドアガラスを昇降案内するグラスランであって、
前記グラスランは、前記ドアサッシに取り付けられた際に前記ドアガラスの外周面と対向する底壁と、前記底壁の幅方向の両端縁に設けられた車内側の側壁及び車外側の側壁と、該両側壁の車内外側の対向する内面にそれぞれ設けられて、前記ドアガラスの一側面と他側面に摺動可能な複数のシールリップと、を備え、
前記車内側の側壁の前記内面のうち、少なくとも前記押出成形部の端部と型成形部との接合部を跨いだ長手方向の領域に、前記ドアガラスが上昇した際に前記車内側シールリップの背面を支持する支持部を設けた。
【0048】
この発明の態様によれば、前記車内側シールリップは、背面が支持部によって支持されていることから、ドアガラスを上昇させた際に、該ドアガラスの側面に対して先端部が押し付けられながら当接(摺動)する。つまり、支持部によって車内側シールリップの先端部に型成形時に発生した凹状の撓み変形(波打ち変形)が抑えられる。これによって、車内側シールリップの先端部全体を、ドアガラスの他側面にほぼ均一に密着させることができることから、シール性能の低下を抑制できる。
【0049】
さらに好ましくは、前記支持部は、前記押出成形部の端部と型成形部との接合部と交差するように前記接合部を跨いだ状態で車内側の側壁の長手方向に沿って設けられている。
【0050】
さらに好ましくは、前記支持部は、前記型成形部と同じ材料によって横断面ほぼ三角形状に形成されて、該三角形の頂部が前記車内側シールリップの背面に指向して配置されている。
【0051】
この発明の態様によれば、横断面三角形の支持部の頂部が、車内側シールリップの背面に対して線接触状態で当接支持することから、ドアガラスの昇降時における該ドアガラスの側面に対する車内側シールリップの過度な押圧反力を抑制することができる。この結果、ドアガラスの昇降時における車内側シールリップの摺動抵抗の上昇が抑えられて、ドアガラスの常時円滑な昇降作動が得られる。
【0052】
さらに好ましくは、前記支持部を、先端部が車内側シールリップの背面に指向した支持リップによって形成した。
【0053】
さらに好ましくは、前記支持部を、前記押出成形部の端部と前記型成形部との接合部領域から前記型成形部のコーナ部付近まで延長形成した。
【0054】
この発明の態様によれば、支持部を型成形部のコーナ部付近まで延長形成したことによって、型成形部での補強効果が得られると共に、ドアガラスの側面に対して強く押圧することが可能になる。
【符号の説明】
【0055】
1…フロントドア
3…ドアサッシ
12…アウターパネル
13…インナーパネル
20・・・グラスラン
21・22・・・押出成形部
23・・・型成形部
24・・・底壁
25・・・車外側の側壁
26・・・車内側の側壁
27・・・車外側シールリップ
28・・・車内側シールリップ
28a・・・先端部
31・・・支持部
31a・・・頂点
C・・・コーナ部
X・・・接合部。