(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-20
(45)【発行日】2023-09-28
(54)【発明の名称】バイオプロセス制御装置およびバイオプロセスシステム
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20230921BHJP
【FI】
C12M1/00 Z
(21)【出願番号】P 2020533614
(86)(22)【出願日】2018-12-10
(86)【国際出願番号】 EP2018084113
(87)【国際公開番号】W WO2019121089
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-10-04
(32)【優先日】2017-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591121683
【氏名又は名称】エッペンドルフ エスイー
【氏名又は名称原語表記】Eppendorf SE
【住所又は居所原語表記】Barkhausenweg 1, 22339 Hamburg,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】レッカー・ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】エルテル・ギード
(72)【発明者】
【氏名】シュナイダー・ファルク
(72)【発明者】
【氏名】フーフェン・トリスタン
【審査官】小金井 悟
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04424559(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0022468(US,A1)
【文献】特開昭62-171674(JP,A)
【文献】国際公開第2017/109083(WO,A1)
【文献】特表2009-502183(JP,A)
【文献】特表2011-509685(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00- 3/10
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置ハウジング(10)に収容されていて、バイオプロセス用に設計及び設けられて制御機能及び/又は輸送機能及び/又は測定機能及び/又はセンサ機能に構成されていて又は構成可能である、複数の制御機能ユニット(12,30)、
を備える、バイオプロセス制御装置において、
前記装置ハウジングが、前記複数の制御機能ユニットを収容するモジュール式の引出しアセンブリ(14,32)を具備しており、当該引出しアセンブリ(14,32)は、前記装置ハウジングのうちの据え置きのハウジングフレーム手段に対して開放位置及び/又は取出し位置にて、各引出しアセンブリに収容された前記制御機能ユニットの構成および/または当該各引出しアセンブリへの当該制御機能ユニットの組付けのためのアクセスを可能にし、かつ移動可能であり、前記引出しアセンブリは、ロック手段(60,58)でロックされることが可能な運転時位置又は閉鎖位置にて、前記制御機能ユニットと前記ハウジングフレーム手段との間の且つ/或いは前記制御機能ユニットと別の引出しアセンブリに振り当てられた電気エネルギー供給手段(40)及びシステム識別手段(42)との間の、給電及び電子的に機能を識別するための接触を確立させ、
少なくとも1つの前記引出しアセンブリが機能識別および/またはパラメータ手段(16,18)を有しており、当該機能識別および/またはパラメータ手段(16,18)は、組み付けられた前記制御機能ユニット及び当該制御機能ユニットに振り当てられた電気パラメータデータを識別する識別データを前記システム識別手段(42)で処理されるように前記引出しアセンブリの電子インターフェースで提供することを特徴とする、バイオプロセス制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のバイオプロセス制御装置において、前記複数の制御機能ユニットが、モジュール式の流体輸送手段、ポンプ制御装置、バルブ装置、流体加熱装置及び/又は流体冷却装置、ガスセンサ装置、液体センサ装置、電気式及び/又は光学式の測定装置、バイオリアクタ攪拌手段の制御装置、電気エネルギー入力手段、並びにこれらの装置の組合せで構成される群から選択されることを特徴とする、バイオプロセス制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の装置において、前記機能識別手段(16)は、前記
制御機能ユニットが前記引出しアセンブリに組み付けられている場合に且つ/或いは前記引出しアセンブリ及び組み付けられた前記
制御機能ユニットが前記運転時位置にある場合に、機能の種類、シリアル番号及び/又はバージョン番号、ならびに前記制御機能ユニットの動作に必要な又は前記制御機能ユニットで処理可能な動作電圧及び/又は電気パラメータを識別するように実現されていることを特徴とする、装置。
【請求項4】
請求項3に記載の装置において、前記機能識別またはパラメータ手段には、前記識別及び/又はパラメータデータの電子的記録に応答して当該データの変更、および変更後の当該データの記憶(22)が実現できるように、通信および/または更新手段(20)が振り当てられていることを特徴とする、装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の装置において、前記機能識別もしくはパラメータ手段(16,18)、及び/又は前記システム識別手段(42)には、動作データ及び/又は構成データ及び/又は当該動作データの変更及び/又は当該構成データの変更を記録、記憶(46)、さらには、処理目的のために提供するように、電子プロセスプロトコル手段(44)が振り当てられていることを特徴とする、装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の装置において、前記装置ハウジングの前記ハウジングフレーム手段は、前記引出しアセンブリの複数のシャフト状受入部を、当該引出しアセンブリに収容された前記
制御機能ユニットがそれぞれ前記受入部のうちの一つにその具体的な場所に関係なく設置されることが可能で、且つ前記運転時位置又はロック位置へと変位させられることも可能であるように提供していることを特徴とする、装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の装置において、複数の前記引出しアセンブリの前方外表面(50)同士が、前記運転時位置又はロック位置にて、前記装置ハウジング(10)の連続した外表面を少なくとも一部実現していることを特徴とする、装置。
【請求項8】
請求項7に記載の装置において、互いに隣合う前記引出しアセンブリの前記前方外表面(50)同士は、共通の前記運転時位置又はロック位置にて、前記ハウジングの前記連続した外表面に対して液体洗浄剤を用いた処理を当該液体
洗浄剤が隣合う前記外表面間に入り込むことなく行うことができるように、タイル状に並べられて且つ/或いは追加のシール手段で繋げられて実現可能であることを特徴とする、装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の装置において、前記ロック手段は、引出しアセンブリ(32)の当接および/またはロック部位(58)に機械的に係合するロックアセンブリ(60)として実現されていることを特徴とする、装置。
【請求項10】
請求項9に記載の装置において、棒状及び/又はブラケット状の前記ロックアセンブリが、ロック目的で前記引出しアセンブリへと、当該引出しアセンブリの挿入方向に対して0°超の角度で挿入されることが可能であり、かつ/あるいは、前記ロックアセンブリが、挿入された複数の引出しアセンブリを一斉にロックするように実現されていることを特徴とする、装置。
【請求項11】
少なくとも1つのバイオプロセスリアクタと、
請求項1から10のいずれか一項に記載のバイオプロセス制御装置と、
前記バイオプロセスリアクタの又は前記バイオプロセスリアクタ内でのバイオプロセス機能を実行するように実現された、引出しアセンブリ内に組付け済みの状態で設けられた、複数の制御機能ユニットと、
を備え、前記複数の制御機能ユニットは、その複数のうちの一部を様々な数で前記装置ハウジングに備え付けることで複数のバイオプロセスを制御することが可能となるように選択されている、バイオプロセスシステム。
【請求項12】
請求項11に記載のシステムにおいて、さらに、
追加の引出しアセンブリを収容するように前記ハウジング外部に設けられた又は設けられる追加のハウジングフレーム手段、
を備え、前記装置ハウジングと前記追加のハウジングフレーム手段との間には、電気的接続手段が設けられている、システム。
【請求項13】
請求項11または12に記載のバイオプロセスシステムを構成及び/又は変更する方法であって、
-複数の制御機能ユニットを対応する引出しアセンブリに組み付ける過程と、
-複数の引出しアセンブリを前記装置ハウジングに組み付ける過程と、
-前記少なくとも1つのバイオプロセスリアクタで第1の生物学的および/または製薬および/または化学的および/または生物工学的プロセスを実行するように、前記バイオプロセスシステムおよび前記バイオプロセス制御装置を動作させる過程と、
-前記複数の引出しアセンブリのうちの少なくとも1つを、追加の制御機能ユニットが設けられた追加の引出しアセンブリに取り替える過程、あるいは、前記バイオプロセス制御装置に、前記追加の制御機能ユニットが設けられた前記追加の引出しアセンブリを追加する過程と、
-前記第1の
生物学的および/または製薬および/または化学的および/または生物工学的プロセスとは異なる第2の生物学的および/または製薬および/または化学的および/または生物工学的プロセスを実行するように、前記バイオプロセスシステムおよび前記バイオプロセス制御装置を動作させる過程と、
を備える、方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法において、前記装置ハウジングへの前記複数の引出しアセンブリのうちの少なくとも1つの引出しアセンブリの組付けに応答して、かつ/あるいは、システム識別手段の取替え又は追加に応答して、組み付けられた、取り替えられた又は追加された前記制御機能ユニットが、対応する前記引出しアセンブリにより識別されて、かつ/あるいは、対応する動作データ及び/又は動作パラメータによりパラメータ化されることを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主請求項の前提部に記載されているとおり、バイオプロセス制御装置に関する。さらに、本発明は、このような制御装置を備えるバイオプロセスシステムに関する。本発明は、このようなシステムを構成及び/又は変更する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このような装置は、バイオプロセス装置の動作に関する先行技術から知られており、例えば適切なバイオリアクタ内等で生じる生物学的な試験プロセスや開発プロセスの具体的な制御や監視のために使用される。
【0003】
例えば、本願の出願人は、BioFloという商品名の汎用的なバイオプロセス制御装置のシリーズを提供している。当該バイオプロセス制御装置は、所定の生物学的プロセス用に構成されたものであり、セットアップされた又はセットアップされるプロセスを、ユーザーフレンドリーで信頼性の高い最新の様式でユーザが監視制御することを可能にする。装置ハウジングに収容された複数の制御機能ユニットを典型的に備える本発明の汎用的側面は、汎用的に制御又は監視される複数のバイオプロセスに関係している。大量生産の前段階に位置する開発プロセスやその他のプロセス技術で通常用いられるこの汎用的な装置の用途範囲は、ワクチンなどの培地の開発製造(典型的には実験的な少量に限られる)や、細胞培養やその他の微生物学的用途に関するプロセス開発から、細胞株のクローニングやスクリーニング、幹細胞の培養にまで及ぶ。つまり、汎用的なシステムとして提供される(典型的には、所与の用途目的に対して標準化又は予め構成済みである)このようなシステムには、様々なバリエーションが存在する。異なるプロセスに用いられる上記制御機能ユニットの種類や数は、各々のバイオプロセスやプロセス開発の要件に対応して多様となっている。これらの制御機能ユニットは、制御ユニット及び/又は輸送ユニット及び/又は測定ユニット及び/又はセンサユニットとして構成され、通常は、一般的なライン、ホース、ケーブルなどを介してバイオプロセスリアクタへと適宜割り当てられている。これは、通常、例えば共通のテーブルや支持部等によって直近で実現され得る。
【0004】
しかしながら、上記前提部に記載のバイオプロセス制御装置が使用される今日のラボ研究又は開発背景によれば、同じバイオプロセスが長期間持続的に稼働する又は制御されることはほぼなく、そのため、開発プログラムや試験プログラムが変更される際には(バイオリアクタ機器のそれに対応した調整との関連で)既知の同バイオプロセス制御装置の定期的な再構成や取替えが通常1~数週間ないし数ヶ月の範囲内で必要となる。
【0005】
上記既知の汎用的な技術によれば、開発目的又は試験目的の次のバイオプロセスに適合した制御装置の構成及び設置は、訓練を積んだ同システムのメーカーの人間により実現され得る。あるいは、試験ラボ環境中に、別の様式に予め構成済みの制御装置が複数設けられており、適宜接続及び稼働させられることが可能となっている。
【0006】
先行技術から知られている同技術の短所は明らかである。特に、(開発)プロセスサイクルが益々短期間になってきており必要な一連の取替え又は変更作業も頻繁に起こるため、訓練を積んだメーカーの人間のそれに関連した変更作業が高頻度になったり、予め構成済みの複数のユニットも(各装置ハウジング内に)放置することになったりと非経済的であり得る。ほぼ不使用の当該予め構成済みのユニットは、適宜構成済みの制御装置が必要となるまで(少ないラボスペース内に)置いておくことになる。
【0007】
これらの課題は、バイオプロセスにとって有害となり得る汚染やその他の環境的影響から保護しなければならないほどラボ環境が繊細であるという点も踏まえて検討しなければならない。さらに、繊細なラボ環境には、実施手段の正確かつ透明な記録や評価が、特に品質確保や製品認可の理由から求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、主請求項の前提部に記載のバイオプロセス制御装置を複数の異なるバイオプロセスへの適合性について向上させること、特には、誤使用やその他のプロセス障害や外的影響による悪影響のリスクなく当該制御装置を連続して別のバイオプロセス用途へと簡単かつ楽に、より経済的に調整、変更又は構成できるようにすることである。さらに、同技術は生物学的製品や生物工学的製品の大量生産と比べてプロセスが短く、プロセス開発及び調整が短期間である点で特に特徴付けられることから、バイオプロセスの上記制御装置は、構成及びそれに続く(試験)動作が信頼性の高い且つ検証可能なものである必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的は、主請求項の構成を備えるバイオプロセス制御装置により達成される。本発明の有利な実施形態は、従属請求項に開示されている。本発明にかかるバイオプロセス制御装置と当該制御装置の範疇で設けられる複数の制御機能ユニットとを備えたバイオプロセス制御システムについても、本発明の範疇の保護を求める。当該システムの範疇では、択一的に制御される複数のバイオプロセスへの適合性が、装置ハウジングにて、要求される制御機能ユニットをそれに対応して選択及び取り替えることで可能とされている。本発明は、据え置きの製造プロセスに比べて上記のような再構成が高頻度で発生するラボや研究やプロセス開発の背景に極めて適している。これにより、本発明にかかる後述のような利点が明らかとなる。
【0010】
本発明にかかる有利な一形態において、前記バイオプロセス制御装置の前記装置ハウジングは、制御機能ユニットを収容するように設けられたモジュール式の引出しアセンブリを具備している。これらの引出しアセンブリは、対応する引出しアセンブリに収容された前記制御機能ユニットの構成および/または当該対応する引出しアセンブリへの当該制御機能ユニットの組付けのためのアクセスを開放位置及び/又は取出し位置にて可能にするように、前記装置ハウジングのうちの据え置きのハウジングフレーム手段と相互作用するよう実現されている。好ましくは、前記開放位置及び/又は取出し位置は、前記ハウジングフレーム手段から分離する又は分離可能な(例えば、ハウジングフレームからの取外しが可能な)位置である。つまり、本発明において、この状態では、所望の又は必要な制御機能ユニットを引出しアセンブリへと、通常、当該引出しアセンブリへの又は当該引出しアセンブリ内への螺合又は同様の着脱可能な固定手段によって割り当てられている。好ましくは、前記引出しアセンブリ同士は、本発明の範疇で同一に又は標準化されて実現されている。
【0011】
本発明によれば、前記引出しアセンブリは、さらに、当該引出しアセンブリのそれぞれが運転時位置又は閉鎖位置へと典型的には挿入又は同様の作動方法によって変位させられることが可能であるように、前記装置ハウジング又は前記フレーム手段と相互作用するよう実現されている。前記引出しアセンブリは、その運転時位置又は閉鎖位置にて、本発明にかかるロック手段でロック固定されることが可能である。本発明によれば、当該位置にて、(前記引出しアセンブリに収容された)前記制御機能ユニットと(一方で)電気エネルギー供給手段及び(他方で)システム識別手段との間での給電及び電子的に機能を識別するための接触が実現される。当該システム識別手段は、前記フレーム手段に振り当てられて且つ据え置きで設けられたもしくは組み付けられたものであってもよいし、これに加えて又はこれに代えて、別の引出しアセンブリに振り当てられて且つ据え置きで設けられたもしくは組み付けられたものであってもよい。本発明の一実施形態において、前記ユニットは、前記装置のバイオプロセス制御動作中であっても前記引出しアセンブリの取替えが実現可能となるように構成されており、融通性がさらに最適化されている。
【0012】
本発明にかかる前記様式により、汎用的な制御装置を極めて融通良く変更するということが、特には構成を行う人間が未訓練であっても誤構成や誤動作のリスクなく可能となる。前記装置ハウジングへ挿入された(簡単に取り替えることが可能な)引出しアセンブリをその各機能(すなわち、それぞれの制御機能ユニット固有の機能や意図されている機能)について識別するという本発明の様式を採用することで、前記制御機能ユニットをシステム技術(特には、本発明にかかるシステム識別手段)により適切に検出し、当該制御機能ユニットを前記バイオプロセス制御装置の全体システム機能に組み込み、この変更を行っている作業員にそれ以上の知識がなくとも又は当該作業員が調整を行わずとも、適切な制御を実行することが可能となる。適切でない又はエラーを生じやすい又は欠陥のある制御機能ユニットについても、前記システム識別手段による対応する識別や反応によって検出することができて動作上又はプロセス上の追加の問題が起こる前に例えば対応する信号出力や当該ユニットの停止等によって考慮することが可能となる。
【0013】
また、本発明にかかる(より好ましくは、機械的に作動する)ロック手段により、各引出しアセンブリに収容された制御機能ユニットの機械的に安全な(且つ意図しない飛出しや脱落から守られた)動作が確保される。好ましくは機械的な棒及び/又はブラケットのユニットとして実現される当該ロック手段により、前記運転時位置や閉鎖位置にて不正確に配置されている引出しアセンブリや制御機能ユニットを機械的に識別することが可能となる。つまり、当該ロック手段により、接続又は接触の問題を防止することができる。
【0014】
結果として、本発明は、現代のバイオプロセス背景で起こる試験環境及び開発環境の変化への調整問題に、驚くべきほど簡単に対処することができる。本発明により創出される本技術は、前記装置ハウジングに設けられた又は設けられる、様々な目的や機能の制御機能ユニットで構成されたシステムの融通性及び調整性を大幅に向上させる。
【0015】
一実施形態では、引出しアセンブリに又は引出しアセンブリ内に組み付けられる制御機能ユニットとして、複数の相異なる用途や機能を有した制御機能ユニットが、本発明の範疇で設けられる。具体的に述べると、液体又はガス用の任意の種類のポンプ装置などといった(特には、モジュール式の)流体輸送手段に加えて、リアクタ槽に又はリアクタ槽内に設けられたポンプや同様の流体輸送手段と周知の様式で連通したポンプ制御装置が、本発明にかかる引出しアセンブリに設けられ得る。バルブ装置(あるいは、流体加熱装置及び/又は流体冷却装置用の、バルブとポンプとの組合せ)の場合にも、同じことが言える。つまり、実績ある技術に対応した本発明の範疇のあらゆる流体取扱いタスクを設定、構成及び稼働させることが可能となり、融通性が大幅に向上する。同様に、本発明にかかる制御機能ユニットは、ガスセンサ装置や液体センサ装置や電気式及び/又は光学式の測定装置の機能を実現することも可能で、バイオリアクタ攪拌手段又は同様の機械的動作アクチュエータの制御装置としても使用可能で、バイオリアクタ又は同様の容器の電気エネルギー入力の機能を実現することも可能である。具体的に述べると、様々なラボ又はプロセス手順に合わせた構成や調整が本発明によって簡単になるため、多種多様な、利用したい機能が適宜実現可能になるという点は明白であろう。
【0016】
前記引出しアセンブリと前記装置ハウジング(又は据え置きのハウジングフレーム手段)との間での本発明にかかる機能識別の実現を最適化させるため、当該引出しアセンブリは機能識別およびパラメータ手段を有している。好ましくは、当該機能識別およびパラメータ手段は、前記引出しアセンブリに又は前記引出しアセンブリ内に設けられた電気回路基板上に例えばマイクロコントローラ等で実現された電子装置として実現されている。前記機能識別およびパラメータ手段は、組み付けられた前記制御機能ユニット及び前記制御機能ユニットに振り当てられた電気パラメータデータを識別する識別データを、(典型的には前記ハウジング側の)前記システム識別手段で処理されるように、前記引出しアセンブリの電子インターフェースを介して例えば電気接触片、バス接続等を介して提供する。極めて有利なさらなる実施形態では、前記引出しアセンブリの特定の実現構成により、機能の種類、シリアル番号及び/又はバージョン番号、ならびに前記引出しアセンブリ又は当該引出しアセンブリの制御機能ユニットの動作に関する必要な動作電圧又はその他のデータを識別することが可能となっている(通常、当該識別は、例えばマイクロコントローラユニット等で実現された場合のように自動的にかつプログラム支援されたかたちで実現される)。具体的に述べると、この識別過程及び通信過程は、機械的組付け作業中に又は作業完了後に行われ得て、さらには、不正確な設置や最新でない且つ/或いは所望のプロセスにとってもはや有用でないプロセスや同様のエラーについての評価も例えば上記の方法により実行可能なものであり得る。具体的に述べると、それらのような問題ある構成状態やラボ作業に適した適切な(技術的に最新の)構成が、同実施形態で設けられる信号及び/又は通信手段及び/又は警告手段によって知らされることが可能とされ得る。
【0017】
本発明のさらなる実施形態では、特に(引出しアセンブリに組み付けられた)各制御機能ユニットの(パラメータ、オペレーティングシステム又はプログラム)の更新の問題が、通信および/または更新手段により対処され得る。同実施形態において当該通信および/または更新手段は、前記識別又はパラメータデータの電子的記録に応答して当該データの変更(特には、更新データの形態の変更)が実現できるように、本発明にかかる機能識別またはパラメータ手段に振り当てられている。この点に関して言えば、当該データは、前記引出し側に、より好ましくは不揮発性の記憶部の形態で記憶するのが有用である。これにより、それ以降の後の構成や使用にあたってそのような更新過程が不要となる。
【0018】
生物学的プロセスや生物工学的プロセス、特にラボ、研究及び開発環境での生物学的プロセスや生物工学的プロセスにとって重要となる、構成過程や変更過程を含めた前記方法及び方法過程のドキュメンテーション、検証可能性及び追跡可能性(トレーサビリティ)に関して、有利なさらなる実施形態では、(前記装置ハウジングの又は据え置きの前記ハウジングフレーム手段の)前記システム識別手段に加えて又は当該システム識別手段に代えて、電子プロセスプロトコル手段が、動作及び/又は構成に対応する動作データ又は構成データを記録、記憶、さらには、システム外部での処理のために提供するように、前記機能識別およびパラメータ手段に(すなわち、各引出しアセンブリの前記機能識別およびパラメータ手段に)振り当てられている。これは、通常、長期間用に実現される。同実施形態の有利な一様式では、このようなプロトコル状の記録が、装置ハウジングの構成全体に対して包括的に実現される。これに加えて又はこれに代えて、前記記録は、各引出しアセンブリに対して個別に実現されるものであってもよい。これにより、(組み付けられた)各引出しアセンブリの個々の動作履歴を複数の装置ハウジング間にわたって記録かつ追跡するということが(特には、マイクロコントローラアセンブリの形態の簡便な電子インフラストラクチャが有利に設けられているので)可能となる。
【0019】
機械的な面に関して言えば、前記装置ハウジングの本発明にかかるハウジングフレーム手段は、前記引出しアセンブリの複数のシャフト状受入部を、各引出しアセンブリが各シャフト状受入部による複数の代替的場所に設置されることが可能となるように、特には決まった受入部の形態の特定の受入箇所又は組付箇所を設ける必要がなくなるように提供している。これにより、据え置きの前記フレーム手段に対して、(前記制御機能ユニットを保持した)前記引出しアセンブリを高い融通度で構成したり融通良く取り替えたりすることが可能となる(本発明の範疇で「据え置き」とは、前記引出しアセンブリが挿入可能、引出し可能、場合によっては取外し可能である点とは対照的に、前記ハウジングフレーム手段の機械フレーム及び受入れ構造、特には同実施形態で設けられるシャフト状受入部の形態の機械フレーム及び受入れ構造が固定されているという風に理解されたい)。
【0020】
有利なさらなる実施形態において、前記引出しアセンブリ同士は、本発明にかかる運転時位置又はロック位置にて、各々の前方外表面に関して前記装置ハウジングの連続した、好ましくは平面状の、共通の外表面が(少なくとも一部)実現されるように実現されている。これにより、挿入後の複数の前記引出しアセンブリが適切な組付けロック位置にある(例えば、飛び出していない)ことを目視で認識することが可能となる。当該実現により可能となる前記連続した外表面は、生物学的又は生物工学的ラボ背景において衛生的で清潔な状態にするために求められる、洗浄剤や殺菌剤を用いた処理に極めて好ましく適している。この目的のために、本発明のさらなる実施形態では、前記引出しアセンブリの前記前方外表面同士が特にはタイル状又はモザイク状に実現されて、これらの前方外表面同士は表面が全体として所望の一貫性を実現し且つ移行部分の隙間幅が最小限に小さくなるように互いに隣合って配置される。補充又は追加でこれを支援するために、残った隙間をシール手段又は同様の補助物で埋めるようにしてもよい。これにより、特には液体洗浄剤が前記装置ハウジング内に浸入してその機能を損なうようなことが出来なくなる。
【0021】
一実施形態では、機構及び機能に関して極めて有利なことに、本発明にかかるロック手段が、引出しアセンブリの当接および/またはロック部位に機械的に係合するロックアセンブリとして実現されて特には当該当接および/またはロック部位に押し付けられることが可能であるように実現されている。これにより、前記引出しアセンブリと据え置きの前記ハウジングフレーム手段との間に摩擦型ブロッキング連結が実現されるので、意図しない飛出しや対応する接触や接続の問題が確実に回避されることになる。
【0022】
有利なさらなる実施形態では、このようなロックアセンブリが、棒状又はブラケット状に実現されており、かつ、側部の真横へと(すなわち、前記ハウジングフレーム手段に対する前記引出しアセンブリの挿入方向又は引出し方向に対して約90°の角度で)案内される。これにより、(典型的にはシャフト状受入部で互いに上下に位置した)複数の引出しアセンブリに対して、例えばこれに対応するように実現されて複数のアームを具備したロックアセンブリが、一回のロック工程で同時にロックすることができる。しかも、前記当接またはロック部位が前記摩擦型連結用に構成されたフレーム部位としっかりと揃わない場合には、引出しアセンブリの挿入状態が不正確であるためロックが妨げられているということが分かる。
【0023】
本発明の範疇では、好ましくは、前記引出しアセンブリに振り当てられたインターフェース用の接触(接点)、特には制御機能ユニットとハウジングフレーム手段又は接触部材との間の接触(接点)が、公差を補償して接触品質を上げるように且つ各々の電気接点の境界抵抗を最小限に抑えることで最小限に抑えられた当該境界抵抗によってエラーも最小限になるように、弾性的に実現されている。
【0024】
結果として、本発明は、簡単かつ素早く変更可能で多種多様な用途に利用可能な融通性の高いバイオプロセス制御装置を実現することができ、一般的な先行技術と比べて融通の利く使用可能性や新規構成又は再構成の可能性が大幅に向上している(そのため、誤構成や欠陥のあるセットアップや間違った選択を含む、制御機能ユニットのエラーも最小限に抑えられる)。
【0025】
本発明でさらなる請求対象としているシステム概念の範疇で、好ましくは、制御機能ユニットは、複数のバイオプロセス用に設けられる。一実施形態では、本発明にかかる装置ハウジングに、当該ハウジング外部に追加で設けられるハウジングフレーム手段を補充することも可能である。これにより、極めて複雑な制御機能ユニットの場合や、制御機能ユニットの数がメインの装置ハウジングの引出し場所(シャフト状受入部)の数よりも多くなった場合に、融通良い追加の拡張選択肢がもたらされる。有利なさらなる実施形態において、(本発明に従い、主請求項に記載のバイオプロセス制御装置を同じく実現する)このような追加の装置ハウジングは、受動的なハウジングユニット、すなわち具体的には、前記ハウジング外部となる追加のハウジグフレーム手段に収容された又は収容される(対応する追加の制御機能ユニットを含む)追加の引出しアセンブリが前記装置ハウジングの給電手段(すなわち、中央電源)及び(中央)システム識別手段を当該装置ハウジングとの適切な(例えば、有線の)カップリングを介して利用するという意味での、受動的なハウジングユニットとして実現され得る。
【0026】
バイオプロセスシステムを構成及び/又は変更する方法についても、本発明の範疇の保護を求める。具体的に述べると、当該バイオプロセスシステムは、本発明にかかるバイオプロセス制御装置及び前記引出しアセンブリに収容された前記制御機能ユニットと相互作用する、少なくとも1つのバイオリアクタにより実現される。具体的に述べると、前記方法は、第1の生物学的および/または製薬および/または化学的および/または生物工学的プロセスから第2のこの種のプロセスへの変更のために、少なくとも1つの前記制御機能ユニット(又は対応する前記引出しアセンブリ)の取替え、補充又は再構成を行う。これにより、本発明は、構成や変更過程の範疇での大幅な時間短縮及び融通性により特に特徴付けられるものとなる。前記方法のさらなる実施形態では、前記装置ハウジングへの複数の引出しアセンブリの組付けに応答して、かつ/あるいは、少なくとも1つの前記引出しアセンブリの取替えに応答して、当該引出しアセンブリと共に組み付けられた前記制御機能ユニットの自動識別、補充、または自動パラメータ化が、(前記ハウジング側の)中央制御又は識別部との関連で実現される。
【0027】
本発明のさらなる利点、特徴および詳細は、例示的な好適な実施形態についての以下の説明および図面から導き出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】第1の例示的な実施形態における、主要な機能構成要素を備えた本発明にかかるバイオプロセス制御装置の概略ブロック図である。
【
図2】開放状態のハウジング、引出しアセンブリに収容された組付済み状態の複数の制御機能ユニット、および例示として取外し状態で描かれているアセンブリを備えた、例示的な一実施形態のバイオプロセス制御装置の機械的及び構造的実現例を示す斜視図である。
【
図3】引出しアセンブリ及び例示としてブラケット状に実現されているロック手段と相互作用する、
図2の例示的な実施形態の装置ハウジング、特には(据え置きの)ハウジングフレーム手段の詳細図である。
【
図4】引出しアセンブリ及び例示としてブラケット状に実現されているロック手段と相互作用する、
図2の例示的な実施形態の装置ハウジング、特には(据え置きの)ハウジングフレーム手段の他の詳細図である。
【
図5】引出しアセンブリ及び例示としてブラケット状に実現されているロック手段と相互作用する、
図2の例示的な実施形態の装置ハウジング、特には(据え置きの)ハウジングフレーム手段のさらなる他の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1に、本発明の第1の例示的な実施形態におけるバイオプロセス制御装置の機能図としての論理機能構造を示す。破線枠10は、装置ハウジング、および当該装置ハウジング内に実現されるフレーム構造(ハウジングフレーム手段)を表している。当該ハウジングフレーム手段には、引出しアセンブリ14,32に収容された制御機能ユニット12,30を取外し可能に又は取出し可能に受け入れるシャフトがまず実現されている。前記ハウジングフレーム手段には、さらに、パネル状のハウジング壁又は同様の追加のハウジング部品が(着脱可能に)設けられているほか、制御機能ユニット12,30と(後述のように)電子的に通信し当該制御機能ユニット12,30に動作電圧を供給する中央システム電子部アセンブリ38が設けられている。
【0030】
機構に関して述べると、各引出しアセンブリ14,32は、前記ハウジング内の任意の運転時位置又はシャフト場所へと適用できるように同一に且つ取替え可能に実現されている(
図2~
図5との関連での後述の説明を参照のこと)。この目的のために、前記引出しアセンブリの各々には、ハウジング10の各シャフト場所に割り当てられた対応するプラグ収容部と係合することで中央給電(データ)バスラインを介して給電部38へ接続されることが可能な、(例えば、電源タップの形態の)インターフェースプラグユニット(
図3の符号56)が振り当てられている。周知の一様式として、規格化されたデジタルバス系統が使用可能であり、適切な機能ユニットに振り当てられた決まったラインを介して通信が確立されることで、接続48が実現され得る。また、接続48は、前記引出しアセンブリの各々へと、(図示しない様式で商用電源電圧接続部に接続された)中央給電部38の動作電圧手段40により供給される(通常は一様の)動作電圧を提供する。
【0031】
引出しアセンブリに振り当てられて例えば当該引出しアセンブリの支持部に組み付けられる前記制御機能ユニットの各々は、リアクタ26で発揮されるべき又は支援されるべきバイオプロセスの範疇の機能を有するように又は当該機能を満たすように実現されている。例えば、制御機能ユニット30は、適宜構成された流体ライン28を介してリアクタ26の内部へと接続されている。同じく例示であるが、制御機能ユニット12は、
図1の例示的な実施形態において概略的に描かれているようにリアクタ26の蓋部分のプロセスガス濃度および温度を測定する、ガスおよび温度センサとして実現されている。
【0032】
本発明の図示の例示的な実施形態の範疇で、前記制御機能ユニットの各々には、機能識別部16が割り当てられている。機能識別部16は、前記引出しアセンブリに振り当てられた電子部アセンブリ(典型的には、適宜プログラムされたマイクロコントローラと周辺電子部アセンブリとを含む、各引出しアセンブリに組み付けられた電子回路基板によって実現されている)の一構成要素として、接続された前記制御機能ユニットの種類及び具体的な実現構成を、典型的には当該制御機能ユニットが組付け済み状態で前記装置ハウジングへと挿入された際に識別する。機能識別部16は、当該情報を中央システム識別手段42へと、さらなる評価及び処理のために接続系統48を介して供給する。これにより、特には中央シーケンス制御部(詳細に図示しない)が、(現在のバイオプロセスにとって所望の又は当該バイオプロセスにとって必要な)制御機能ユニットの存在をまず検出し得て、その後、当該ユニットに適宜通電を行い得るか又は当該ユニットを対応のプロセスで対応の様式で動作させ得る。
【0033】
各制御機能ユニットには、さらに、同じく前記引出しアセンブリの一構成要素であるパラメータ部18も割り当てられている。パラメータ部18は、各制御機能ユニット(
図1の例示的な実施形態の符号12又は30)の予め定められた又は操作可能なパラメータ化を、特には更新または構成部20と協働で可能にする。好ましくは、中央システムユニット38からの中央制御により、各制御機能ユニットを構成する又は動作させるための動作パラメータ又は他のパラメータ用に提供される動作データが定められたり、例えばプロセスシーケンスの変化が原因でパラメータ変更が必要となった場合等には、当該中央制御部によって当該動作データが適宜変更されたりし得る。これに加えて又はこれに代えて、特にはアセンブリ20が、通常のシステム更新などといった恒久的なパラメータ変更の実現を可能にする。また、有利には、当該恒久的なパラメータ変更が、同じく各引出しアセンブリに振り当てられた(且つ典型的には同じく当該引出しの前記回路基板上に実現されている)不揮発性の記憶手段22に記憶され得る。
【0034】
図1の例示的な実施形態には、さらに、(構成データ及び当該構成データの変更を含む)動作データを収集するプロトコル部44(本例では、共有の据え置きのユニット38に振り当てられた中央配置型のもの)が示されている。プロトコル部44は、当該データを記憶手段46に適宜記憶し、かつ、当該データを繊細なバイオプロセス分野での品質確保や同様の制御策等のための評価(好ましくは、外部での評価)目的で提供し得る。
【0035】
図1に概略的に示した前記装置の使用時には、(同技術に関して又はハードウェア要件に関して特に訓練を積んでいない)作業員がその時々の生物学的(生物工学的)プロセスに適した制御機能ユニットを選択し、かつ、必要に応じて当該制御機能ユニットを(通常、汎用的で且つ取替え可能な)引出しアセンブリに組み付け得る(あるいは、前記引出しアセンブリと対応する前記制御機能ユニットとが既に予め組み付けられた状態で利用可能となっている)。次に、搭載済み状態の前記引出しアセンブリが、前記装置ハウジングの前記フレーム手段の前記受入れシャフト(原則的に、どの場所の受入れシャフトであってもよい)へと挿入され得る。好ましくは、(後述する)機械的固定により、電子的な又は電気的な接触も実現される(より好ましくは、ばねで支援された様式で実現される)。これにより、(
図1に概略的に示す)装置を、多種多様なバイオプロセス用途へと変更時間を最小限に抑えながら極めて融通良く且つ高い信頼性で構成及び変更することが可能となる。この実現は、特には変更時の有利な融通性や時間節約の関係で、ラボ、開発及び研究背景に極めて好ましく適している(ただし、一般的には当該背景に限定されない)。
【0036】
以降、
図1に概略的に示す例示的な実施形態の例示的な機械的実現について、
図2~
図5に基づき説明する。
図2の装置ハウジングの斜視図に描いた、表側又は前側から突き出ている前記制御機能ユニットは、リアクタ槽26へと流体ライン28を介して対応の様式で流体連通可能に係合したポンプ(
図1の全体図の符号30)として実現されている。
【0037】
同図には、各引出しアセンブリ32が、前側又は表側の平面状の表面50に接する引出しフレーム構造52を有しており、かつ、当該引出しフレーム構造52により、
図2に示す前記シャフト及びフレーム構造への長手方向の挿入運動が周知の様式で可能となっている様子が示されている。
【0038】
具体的に述べると、
図3の斜視図には、引出しアセンブリ32に振り当てられた回路基板54が(挿入方向)左側に縦配置されている様子が示されている。回路基板54の端にあるプラグユニット56は、電気接続系統48(
図1)への(弾性的な)インターフェースカップリングの実現の一例を表している。
【0039】
また、特に
図3では、部分的に引き出された引出しアセンブリ32が、前記ハウジング側の曲げフランジ部位又は垂直フランジ部位58を示している。当該曲げフランジ部位又は垂直フランジ部位58は、ブラケットの形態の直方形状のロックアセンブリ(ロック手段)60と協働で、引出しアセンブリを前記ハウジング(又は前記ハウジングフレーム手段)に又は前記ハウジング(又は前記ハウジングフレーム手段)内に本発明に従ってロックする。前記引出しアセンブリの挿入方向とは直角に、つまり、(ハウジングパネルを取り外した状態で)前記装置ハウジングのハウジング又はフレームの側部から
図2に示す様式で挿入されるロックアセンブリ60は、細長の棒状部位62で前記ハウジングフレーム手段のガイド部64内へと又は当該ガイド部64上へと係合する。ロックアセンブリ60が挿入されることで、それらの一対の棒状部位が曲げフランジ部位58と係合してロックを行う。
【0040】
さらに、挿入後の状態では、前記複数の引出しアセンブリの各前方表面50同士が、各制御機能ユニットのうちの突き出ている部分を除き、前記装置ハウジングの連続した平面状の途切れのない前方表面を実現している様子が見て取れる(
図2)。これにより、生物学的ラボ背景における洗浄処理、殺菌処理又は同様の処理を行ううえでの有利な状態が、特には当該実現によって成り立つ。
【0041】
図2~
図5では、
図1において符号38の集団として概略的に示した中央の給電、識別及びプロトコル電子部アセンブリが、前記各前方表面とは反対側にある後側の回路基板アセンブリ66に実現されている。使用時の回路基板アセンブリ66は(適宜取り外すことが可能な)ハウジングパネルで覆われており、当該ハウジングパネルは側面、上面及び下面も覆っている。
【0042】
図面には、特に、意図されたバイオプロセスに対してシャフトの数が足りない(つまり、引出しアセンブリに収容された制御機能ユニットを受け入れることができない)ためにこの種のユニットを取り外さなければならなくなる用途において、前記ハウジング外部の追加のフレーム又はハウジング構造を装置ハウジング10に追加することによって追加の制御機能ユニットを受入れ出来るようにする際の様子が描かれていない。本発明の有利な一実施形態では、別個の中央電子部アセンブリ(符号38または回路基板の実現66)をそのような追加のフレーム手段に設けなくてもよい。むしろ、当該電子部アセンブリは、
図1の接続構造48と類似した適切な追加のバスカップリングにより実現することが可能である。
なお、本発明は、態様として以下の内容を含む。
〔態様1〕
装置ハウジング(10)に収容されていて及び/又は収容可能であり、バイオプロセス用に設計及び設けられて制御機能及び/又は輸送機能及び/又は測定機能及び/又はセンサ機能に構成されていて又は構成可能であり、好ましくはバイオプロセスリアクタ(26)に機能可能に割当て可能であり、より好ましくは当該バイオプロセスリアクタ(26)に空間的に近接して設けられている、複数の制御機能ユニット(12,30)、
を備える、バイオプロセス制御装置において、
前記装置ハウジングが、前記複数の制御機能ユニットの各々を収容するモジュール式の引出しアセンブリ(14,32)を具備しており、当該引出しアセンブリは、前記装置ハウジングのうちの据え置きのハウジングフレーム手段に対して開放位置及び/又は取出し位置にて、好ましくは前記ハウジングフレーム手段から分離する又は分離可能である開放位置及び/又は取出し位置にて、各引出しアセンブリに収容された前記制御機能ユニットの構成および/または当該各引出しアセンブリへの当該制御機能ユニットの組付けのためのアクセスを可能にし、前記引出しアセンブリは、ロック手段(60,58)でロックされることが可能な運転時位置又は閉鎖位置にて、前記制御機能ユニットと前記ハウジングフレーム手段との間の且つ/或いは前記制御機能ユニットと別の引出しアセンブリに振り当てられた電気エネルギー供給手段(40)及びシステム識別手段(42)との間の、給電及び電子的に機能を識別するための接触を確立させることを特徴とする、バイオプロセス制御装置。
〔態様2〕
態様1に記載のバイオプロセス制御装置において、前記複数の制御機能ユニットが、モジュール式の流体輸送手段(特には、ポンプ装置)、ポンプ制御装置、バルブ装置、流体加熱装置及び/又は流体冷却装置、ガスセンサ装置、液体センサ装置、電気式及び/又は光学式の測定装置、バイオリアクタ攪拌手段の制御装置、電気エネルギー入力手段、並びにこれらの装置の組合せで構成される群から選択されることを特徴とする、バイオプロセス制御装置。
〔態様3〕
態様1または2に記載の装置において、少なくとも1つの引出しアセンブリが機能識別および/またはパラメータ手段(16,18)を有しており、当該機能識別および/またはパラメータ手段(16,18)は、組み付けられた前記制御機能ユニット及び当該制御機能ユニットに振り当てられた電気パラメータデータを識別する識別データを前記システム識別手段(42)で処理されるように前記引出しアセンブリの電子インターフェースで提供し、好ましくは、前記機能識別および/またはパラメータ手段(16,18)が前記引出しアセンブリの電気回路基板(54)に設けられていることを特徴とする、装置。
〔態様4〕
態様3に記載の装置において、前記機能識別手段(16)は、前記機能ユニットが前記引出しアセンブリに組み付けられている場合に且つ/或いは前記引出しアセンブリ及び組み付けられた前記機能ユニットが前記運転時位置にある場合に、機能の種類、シリアル番号及び/又はバージョン番号、ならびに前記制御機能ユニットの動作に必要な又は前記制御機能ユニットで処理可能な動作電圧及び/又は電気パラメータを識別するように、特には自動的に識別するように実現されていることを特徴とする、装置。
〔態様5〕
態様3または4に記載の装置において、前記機能識別またはパラメータ手段には、前記識別及び/又はパラメータデータの電子的記録に応答して当該データの変更(特には、更新データの形態の変更)、および変更後の当該データの記憶(22)、好ましくは前記引出しアセンブリ側の記憶(22)が実現できるように、通信および/または更新手段(20)が振り当てられていることを特徴とする、装置。
〔態様6〕
態様3から5のいずれか一態様に記載の装置において、前記機能識別もしくはパラメータ手段(16,18)、及び/又は前記システム識別手段(42)には、動作データ及び/又は構成データ及び/又は当該動作データの変更及び/又は当該構成データの変更、特には前記複数の制御機能ユニットの動作及び/又は構成に対応する動作データ及び/又は構成データ及び/又は当該動作データの変更及び/又は当該構成データの変更を記録、記憶(46)、さらには、処理目的のために、好ましくはシステム外部での処理目的のために提供するように、電子プロセスプロトコル手段(44)が振り当てられていることを特徴とする、装置。
〔態様7〕
態様1から6のいずれか一態様に記載の装置において、前記装置ハウジングの前記ハウジングフレーム手段は、前記引出しアセンブリの複数のシャフト状受入部を、当該引出しアセンブリに収容された前記機能制御ユニットがそれぞれ前記受入部のうちの一つにその具体的な場所に関係なく設置されることが可能で、且つ前記運転時位置又はロック位置へと変位させられることも可能であるように提供していることを特徴とする、装置。
〔態様8〕
態様1から7のいずれか一態様に記載の装置において、複数の前記引出しアセンブリの前方外表面(50)同士が、前記運転時位置又はロック位置にて、前記装置ハウジング(10)の連続した、好ましくは平面状の、外表面を少なくとも一部実現していることを特徴とする、装置。
〔態様9〕
態様8に記載の装置において、互いに隣合う前記引出しアセンブリの前記前方外表面(50)同士は、共通の前記運転時位置又はロック位置にて、前記ハウジングの前記連続した外表面に対して液体洗浄剤を用いた処理を当該液体が隣合う前記外表面間に入り込むことなく行うことができるように、タイル状に並べられて且つ/或いは追加のシール手段で繋げられて実現可能であることを特徴とする、装置。
〔態様10〕
態様1から9のいずれか一態様に記載の装置において、前記ロック手段は、引出しアセンブリ(32)の当接および/またはロック部位(58)に機械的に係合するロックアセンブリ(60)として実現されており、好ましくは、当該ロックアセンブリ(60)は、前記引出しアセンブリと前記ハウジングフレーム手段との間に、当該引出しアセンブリが前記ハウジングフレーム手段のシャフト状受入部に挿入されているときに飛び出さないようにブロッキングする摩擦型連結を実現することを特徴とする、装置。
〔態様11〕
態様10に記載の装置において、棒状及び/又はブラケット状の前記ロックアセンブリが、ロック目的で前記引出しアセンブリへと、当該引出しアセンブリの挿入方向に対して0°超、好ましくは45°超の角度で挿入されることが可能であり、かつ/あるいは、前記ロックアセンブリが、挿入された複数の引出しアセンブリを一斉にロックするように実現されていることを特徴とする、装置。
〔態様12〕
少なくとも1つのバイオプロセスリアクタと、
態様1から11のいずれか一態様に記載のバイオプロセス制御装置と、
態様1から11のいずれか一態様に記載のバイオプロセス制御装置と、
前記バイオプロセスリアクタの又は前記バイオプロセスリアクタ内でのバイオプロセス機能を実行するように実現された、引出しアセンブリに組み付けられることが可能な、特には組付け済みの状態で設けられた、複数の制御機能ユニットと、
を備え、前記複数の制御機能ユニットは、その複数のうちの一部を様々な数で前記装置ハウジングに備え付けることで複数のバイオプロセスを制御することが可能となるように選択されている、バイオプロセスシステム。
〔態様13〕
態様12に記載のシステムにおいて、さらに、
追加の引出しアセンブリを収容するように前記ハウジング外部に設けられた又は設けられる追加のハウジングフレーム手段、
を備え、前記装置ハウジングと前記追加のハウジングフレーム手段との間には、電気的接続手段、特には電圧供給デジタルバス手段が設けられており、特には、前記追加のハウジングフレーム手段に収容された前記追加の引出しアセンブリが、前記装置ハウジングの前記給電手段及び前記システム識別手段により給電及び接触されるように実現されている、システム。
〔態様14〕
態様12または13に記載のバイオプロセスシステムを構成及び/又は変更する方法であって、
-複数の制御機能ユニットを対応する引出しアセンブリに組み付ける過程と、
-複数の引出しアセンブリを前記装置ハウジングに組み付ける過程と、
-前記少なくとも1つのバイオプロセスリアクタで第1の生物学的および/または製薬および/または化学的および/または生物工学的プロセスを実行するように、前記バイオプロセスシステムおよび前記バイオプロセス制御装置を動作させる過程と、
-前記複数の引出しアセンブリのうちの少なくとも1つを、追加の制御機能ユニットが設けられた追加の引出しアセンブリに取り替える過程、あるいは、前記バイオプロセス制御装置に、前記追加の制御機能ユニットが設けられた前記追加の引出しアセンブリを追加する過程と、
-前記第1のプロセスとは異なる第2の生物学的および/または製薬および/または化学的および/または生物工学的プロセスを実行するように、前記バイオプロセスシステムおよび前記バイオプロセス制御装置を動作させる過程と、
を備える、方法。
〔態様15〕
態様14に記載の方法において、前記装置ハウジングへの前記複数の引出しアセンブリのうちの少なくとも1つの引出しアセンブリの組付けに応答して、かつ/あるいは、システム識別手段の前記取替え又は追加に応答して、組み付けられた、取り替えられた又は追加された前記制御機能ユニットが、対応する前記引出しアセンブリにより識別されて、かつ/あるいは、対応する動作データ及び/又は動作パラメータによりパラメータ化されることを特徴とする、方法。