(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-20
(45)【発行日】2023-09-28
(54)【発明の名称】減衰装置
(51)【国際特許分類】
F15B 1/12 20060101AFI20230921BHJP
【FI】
F15B1/12
(21)【出願番号】P 2020548948
(86)(22)【出願日】2019-04-12
(86)【国際出願番号】 EP2019059519
(87)【国際公開番号】W WO2019211084
(87)【国際公開日】2019-11-07
【審査請求日】2022-04-11
(31)【優先権主張番号】102018003644.9
(32)【優先日】2018-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591204333
【氏名又は名称】ハイダック テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】HYDAC TECHNOLOGY GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】マルティン グローベン
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04195668(US,A)
【文献】特開昭51-119513(JP,A)
【文献】特開2013-011437(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力脈動を受ける流体のための減衰装置であって、前記減衰装置は少なくとも1つの油圧アキュムレータ(2)を備え、前記少なくとも1つの油圧アキュムレータ(2)のアキュムレータハウジング(4、6)は、気体側(14)を第1流体室(16)から分離し、かつ前記第1流体室(16)内にある流体によって加圧可能である可動分離要素(18)を有している、減衰装置において、
前記アキュムレータハウジング(4、6)の構成要素として、第2流体室(38)を備えた減衰器ハウジング(34)が設けられており、前記第2流体室(38)は圧力脈動を受ける流体が貫流でき、前記油圧アキュムレータ(2)の前記第2流体室(38)を前記第1流体室(16)からデッドスペースなく分離する第2可動分離要素(40)を有しており、前記可動分離要素(18)と前記第2可動分離要素(40)の間で前記第1流体室(16)にまたがって前記アキュムレータハウジング(4、6)の壁部材(6)が延びており、両分離要素(18、40)は完全に偏向した位置でこの壁部材(6)に当接することを特徴とする減衰装置。
【請求項2】
前記減衰器ハウジング(34)は、前記アキュムレータハウジング(4、6)に取り外し可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の減衰装置。
【請求項3】
前記第1流体室(16)では、前記第2可動分離要素(40)が故障した場合に減衰されるべき流体システムの汚染を引き起こさない化学的に中性の分離液が使用されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の減衰装置。
【請求項4】
前記可動分離要素(18)及び前記第2可動分離要素(40)の内の少なくとも一
方は、ダイヤフラム(18、40)によって形成されているか若しくはダイヤフラム(18、40)であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の減衰装置。
【請求項5】
前記可動分離要素(18)及び前記第2可動分離要素(40)の両方が、ダイヤフラム(18、40)によって形成されているか若しくはダイヤフラム(18、40)であることを特徴とする、請求項4に記載の減衰装置。
【請求項6】
前記第1流体室(16)にまたがる前記アキュムレータハウジング(4、6)の壁部材(6)は、両部分室を互いに接続する恒久的な貫通路(22)を有しており、両部分室のうち一方の部分室は分離要素(18)によって画定され、他方の部分室は分離要素(40)によって画定されていることを特徴とする、請求項1~
5のいずれか一項に記載の減衰装置。
【請求項7】
前記アキュムレータハウジング(4、6)は、
前記減衰器ハウジング(34)と、
前記第1流体室(16)にまたがる前記アキュムレータハウジング(4、6)の壁部材(6)と、
前記気体側(14)を画定している上部ハウジング部材(4)とからなるハウジング構成要素から構成されており、それぞれ隣接する前記ハウジング構成要素はねじ結合によって互いに固定されていることを特徴とする、請求項1~
6のいずれか一項に記載の減衰装置。
【請求項8】
前記減衰器ハウジング(34)内にある前記第2流体室(38)は、円筒状のトラフによって形成されており、その内部は前記油圧アキュムレータ(2)に向かって前記第2可動分離要素(40)によって画定されていて、互いに反対側の流体入口(42)と流体出口(44)を有することを特徴とする、請求項1~
7のいずれか一項に記載の減衰装置。
【請求項9】
トラフの内部の遠心フラッシングを形成するために、少なくとも流体入口(42)はトラフの内壁(54)に対して斜め方向に内部に開口していることを特徴とする、請求項1~
8のいずれか一項に記載の減衰装置。
【請求項10】
流体入口(42)と流体出口(44)は、ハウジング軸線(10)の方向で高さがずれていることを特徴とする、請求項1~
9のいずれか一項に記載の減衰装置。
【請求項11】
動作中に減衰されるべき前記第2流体室(38)内で流体のサイクロン流れが発生し、流体入口(42)と流体出口(44)が水平方向でも垂直方向でも互いにずれて前記減衰器ハウジング(34)内に配置されていることを特徴とする、請求項1~
10のいずれか一項に記載の減衰装置。
【請求項12】
前記油圧アキュムレータ(2)のダイヤフラムは、少なくともその最終位置で前記減衰器ハウジング(34)に向かって半球形に湾曲していることを特徴とする、請求項1~1
1のいずれか一項に記載の減衰装置。
【請求項13】
前記油圧アキュムレータ(2)のダイヤフラムは、ローリングダイヤフラム(18)によって形成されていることを特徴とする、請求項1
2に記載の減衰装置。
【請求項14】
前記第2可動分離要素を形成するダイヤフラム(40)は、そのすべての動作状態において前記減衰器ハウジング(34)の内部をデッドスペースなく画定し、前記アキュムレータハウジング(4、6)と前記減衰器ハウジング(34)との間の分離箇所で枢着されていることを特徴とする、請求項1~1
3のいずれか一項に記載の減衰装置。
【請求項15】
前記減衰器ハウジング(34)のトラフの内部を画定するダイヤフラムはフラットダイヤフラム(40)によって形成されていることを特徴とする、請求項1~1
4のいずれか一項に記載の減衰装置。
【請求項16】
少なくとも1つのダイヤフラム(18、40)は、PTFE又はエラストマーから形成されていることを特徴とする、請求項1~1
5のいずれか一項に記載の減衰装置。
【請求項17】
前記アキュムレータハウジング(4、6)と前記減衰器ハウジング(34)とは、取り外し可能なねじ結合(30、32)によって互いに接続されていることを特徴とする、請求項1~1
6のいずれか一項に記載の減衰装置。
【請求項18】
前記アキュムレータハウジング(4、6)が複数の部分からなり、前記油圧アキュムレータ(2)のダイヤフラム(18)の枢着箇所が、前記アキュムレータハウジングの分離可能なハウジング部分(4、6)の間に締め付けて固持されていることを特徴とする、請求項1~1
7のいずれか一項に記載の減衰装置。
【請求項19】
前記減衰器ハウジング(34)とのねじ結合(30、32)が形成されている前記アキュムレータハウジング(4、6)のハウジング部分(28)内に、前記第1流体室(16)を分離液で満たすための充填接続部(48)が形成されていることを特徴とする、請求項1~1
8のいずれか一項に記載の減衰装置。
【請求項20】
媒体と接触している金属部分が電解研磨されていることを特徴とする、請求項1~1
9のいずれか一項に記載の減衰装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力脈動を受ける流体のための減衰装置であって、少なくとも1つの油圧アキュムレータを備え、そのアキュムレータハウジングは、気体側を流体室から分離し、かつ流体室内にある流体によって加圧可能である可動分離要素を有している減衰装置に関する。
【背景技術】
【0002】
弾性のある圧力クッションを備えた油圧アキュムレータを有する減衰装置は先行技術であり、さまざまな流体システムで発生する圧力脈動を滑らかにするために使用されている。例えば特許文献1(独国特許出願公開第102007003724号明細書)は、減衰アキュムレータとして使用するために利用できるダイヤフラム形アキュムレータの形式の油圧アキュムレータを示している。化学/食品化学又は製薬用途での使用など種々の用途で、減衰装置は、順次減衰装置に圧送される種々の流体に対して使用されることがよくある。それぞれ有効な純度要件、例えば食品規則(FDA)を満たすために、圧送される流体を交換するときにシステムの汚染を排除しなければならない。即ち、流体の残留物を減衰装置から完全に除去しなければならない。
【0003】
減衰装置の洗浄には問題がある。ここで発生する難点の本質的な理由は、油圧アキュムレータの分離要素と、圧力のない流体室の洗浄過程で分離要素が当接しているアキュムレータ壁との間に閉じ込められている流体残留物を除去することはほとんど可能ではないか、実用的に不可能である。それゆえ油圧アキュムレータを分解して洗浄し、再び組み立てることを余儀なくされる。このプロセスシーリング部材も一緒に交換しなければならないため複雑で高価であり、プロセスは時間がかかり、システムの停止時間が長くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】独国特許出願公開第102007003724号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の問題に鑑みて、本発明の課題は、種類の異なる流体を使用する場合も効率的で廉価に使用できる、冒頭に記載した種類の減衰装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、上記の課題は、請求項1の特徴をその全体において有する減衰装置によって解決される。
【0007】
請求項1の特徴部によれば、本発明の本質的特徴は、アキュムレータハウジングの構成要素として第2流体室を備えた減衰器ハウジングが設けられており、第2流体室は圧力脈動を受ける流体が貫流でき、油圧アキュムレータの第2流体室を第1流体室からデッドスペースなく分離する第2可動分離要素を有していることにある。油圧アキュムレータの流体室内にありその分離要素に作用する流体は、第2分離要素によって減衰されるべき流体から分離されていることにより、減衰されるべき流体は、油圧アキュムレータの流体室内にありその分離要素を加圧する流体と接触しないままである。油圧アキュムレータの流体室は動作中に第2可動分離要素を介して、減衰されるべき流体の圧力脈動によって加圧されて、油圧アキュムレータが減衰する圧力クッションを提供するにもかかわらず、実行されるべき洗浄措置は専ら減衰されるべき流体とのみ接触する減衰器ハウジングに制限される。第2分離要素は減衰器ハウジング内にある第2流体室をデッドスペースなく画定するので、洗浄は減衰器ハウジングのフラッシングによって簡単に行うことができる。アキュムレータの分解と再組立を含む油圧アキュムレータの洗浄措置はなくすことができる。したがって減衰装置の洗浄は、いわば動作プロセスの内部で行うことができ、その結果として長い停止時間が回避される。
【0008】
有利には、減衰器ハウジングは、アキュムレータハウジングに取り外し可能に取り付けることができる。したがって減衰されるべき流体を交換する際には、先に動作していた減衰器ハウジングを洗浄済みの新しい減衰器ハウジングと交換するという手順を実施することも可能である。
【0009】
特に有利には、第1流体室では、第2分離要素が故障した場合に減衰されるべき流体システムの汚染を引き起こさない化学的に中性の分離液を使用することができる。
【0010】
有利な実施形態では、分離要素の少なくとも1つは、ダイヤフラムによって形成されており、好ましくは両分離要素がそれぞれ1つのダイヤフラムによって形成されている。
【0011】
特に有利な実施形態では、減衰器ハウジング内にある第2流体室は、円筒状のトラフによって形成されており、その内部は油圧アキュムレータに向かって第2分離要素によって画定されていて、互いに反対側の流体入口と流体出口を有する。
【0012】
この点に関して有利には、トラフの内部の遠心フラッシングを形成するために、少なくとも流体入口はトラフの内壁に対して斜め方向に内部に開口しているように構成できる。このようにして生成されるサイクロン効果により、フラッシングにより特に効果的な洗浄を実現できる。
【0013】
流体入口と流体出口が、ハウジング軸線の方向で高さがずれていると、より強力なサイクロン効果を得ることできる。
【0014】
油圧アキュムレータのダイヤフラムは、少なくともその最終位置で減衰器ハウジングに向かって半球形に湾曲しており、好ましくはローリングダイヤフラムによって形成されている。
【0015】
特に有利な例示的な実施形態では、第2分離要素を形成するダイヤフラムは、そのすべての動作状態において減衰器ハウジングの内部をデッドスペースなく画定し、アキュムレータハウジングと減衰器ハウジングとの間の分離箇所で枢着されている。
【0016】
減衰器ハウジングの内部を完全にデッドスペースなく形成するために、減衰器ハウジングのトラフの内部を画定するダイヤフラムはフラットダイヤフラムによって形成されている。このようにして、ダイヤフラムは一方では正の前方湾曲、他方では負の内方湾曲によって流動室若しくは第2流体室を画定する。さらにダイヤフラムは両端部がアキュムレータハウジングに緊締されているので、ダイヤフラムとアキュムレータハウジングの関連する壁部材との間に、意図せず汚染を寄生微生物などの形も含めて受容する可能性のあるスペースが生じない。特に可動なダイヤフラム構成は「アンダーカット」を形成しなくて済む。
【0017】
それぞれの用途でダイヤフラムの材料に課せられる要件を満たすために、少なくとも1つのダイヤフラム、好ましくは両ダイヤフラムはPTFE又はエラストマーから、特に好ましくは両ダイヤフラムはPTFE又はエラストマーから、特に好ましくはPTFE、布及びエラストマーを含む複合物から形成されているか若しくは当該複合物であるように構成することが有利である。
【0018】
アキュムレータハウジングと減衰器ハウジングとは、有利には取り外し可能なねじ結合によって互いに接続できる。
【0019】
油圧アキュムレータに関して、アキュムレータハウジングが複数の部分からなり、油圧アキュムレータのダイヤフラムの枢着箇所が、アキュムレータハウジングの分離可能なハウジング部分の間に締め付けて固持されているように有利に構成できる。
【0020】
さらに、減衰器ハウジングとのねじ結合が形成されているアキュムレータハウジングのハウジング部分内に、第1流体室を分離液で満たすための充填接続部を形成することができる。
【0021】
純度要件を満たすために、有利な例示的な実施形態では、媒体と接触している金属部分が電解研磨されている。
【0022】
以下に本発明を図面に示した実施形態に基づいて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本発明による減衰装置の実施形態の縦断面図である。
【
図2】
図2は、
図1による実施形態の減衰器ハウジングのハウジングポットを模式的に簡略化し破断して示す水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図面に示される実施形態は、全体を2で示す油圧・空気圧式ダイヤフラム形アキュムレータ2の形態の油圧アキュムレータを有し、その構造は実質的に独国特許出願公開第102007007724号明細書に示された蓄圧器に対応している。アキュムレータハウジングは、ハウジング部分4及び6の複数部分から構成されており、ユニオンナット8によって互いに分離可能に固持されている。
図1で上側ハウジング部分4は中空半球の形状を有し、そこに垂直軸線10と同軸に配置された水素などの作動ガスのための充填接続部12がある。下側ハウジング部分6の内壁は半球状の球冠の形状を有する。充填接続部12に隣接する気体側14と、アキュムレータ2の流体室16との間の可動分離要素を形成するダイヤフラムとして、ローリングダイヤフラム18が設けられている。これは
図1に示す最終位置では半球状に湾曲して、下側ハウジング部分6の内壁に当接しており、ローリングダイヤフラム18の中央に軸線10と同軸に配置された端部補強材20が、流体室16の一部である下側ハウジング部分6内の壁貫通路22を覆っている。ローリングダイヤフラム18の周縁部は、この種類のダイヤフラムで通常のように補強用の縁隆起部24を有しており、これによりローリングダイヤフラム18は上側ハウジング部分4と下側ハウジング部分6との間の接続箇所に締め付けて枢着されている。
【0025】
ハウジング部分6は、ユニオンナット8でねじ結合するために設けられた雄ねじ26の下方に、外径が拡大された円筒形端部28があり、そこにも別の雄ねじ30がある。これは、減衰器ハウジング34の周縁部に設けた雌ねじ32と共にねじ結合を形成し、それによって減衰器ハウジング34をアキュムレータハウジングの別の構成要素としてハウジング部分6に取り外し可能に取り付けることができる。減衰器ハウジング34の内部は、閉じた平坦な底部36を備えた円筒形ハウジングポットの形状を有する。トラフの内部は、底部36に隣接する部分と共に第2流体室38を形成する。第2流体室38は、貫通路22を通ってローリングダイヤフラム18の外側まで延び油圧アキュムレータ2に付属する流体室を形成している第1流体室16から、第2可動分離要素を形成するフラットダイヤフラム40によって分離されている。
【0026】
減衰器ハウジング34内の第2流体室38は、減衰されるべき流体が貫流することができ、直径方向で互いに反対側に流体入口42と流体出口44を有する。
図1に示すように、入口42と出口44は、軸線10の方向で互いに高さがずれており、入口42は底部36に隣接している。フラットダイヤフラム40は、縁隆起部46の形で全周に延びる補強材を有しており、これによりフラットダイヤフラム40は雄ねじ30と雌ねじ32によって形成されるねじ結合によって減衰器ハウジング34と油圧アキュムレータ2のハウジング端部28との間の分離箇所で締付けにより枢着されている。したがってフラットダイヤフラム40は減衰器ハウジング34内で第2流体室38の上にデッドスペースなく張設されており、それゆえ汚れ又は残留物が意図せず蓄積する可能性があるアンダーカットは形成されない。油圧アキュムレータ2に付属する第1流体室16を充填するために、ハウジング端部28に分離液を導入するための充填接続部48が設けられている。
【0027】
図1は、減衰されるべき流体が貫流できる第2流体室38にシステム圧力が存在しない動作状態を示しており、第1分離要素であるローリングダイヤフラム18も、第2分離要素であるフラットダイヤフラム40も、油圧アキュムレータ2の気体側14に存在する事前充填圧力の影響下で下方に湾曲した最終位置にあり、ローリングダイヤフラム18はハウジング内壁に当接している。フラットダイヤフラム40は、ハウジング端部28の下端面50から離れている。図示のように、端面50は平坦ではなく、中央貫通路22の方向でトラフ状に凹んでいて、フラットダイヤフラム40が縁隆起部46の平面を越えて上方に移動できるように自由空間が形成されている。第2流体室38内で減衰されるべき圧力脈動を伴うシステム圧力が作用している減衰器動作において、システム圧力はフラットダイヤフラム40及び隣接する非圧縮性分離液を通して減衰アキュムレータを形成する油圧アキュムレータ2のローリングダイヤフラム18の外側に作用する。分離液として化学的に中性の液体が想定されているので、フラットダイヤフラム40が故障した場合は接続されている高純度の流体システムの汚染は引き起こされない。
【0028】
例えば減衰されるべき流体を交換する際に洗浄するために、第2流体室38は油圧アキュムレータ2を分解する必要なく洗浄液によってフラッシングできる。フラットダイヤフラム40は流体室38を完全にデッドスペースなく画定しているので、それによりすべての流体残留物を除去することができる。
図2に示すように、流体入口42と流体出口44は互いに高さがずれているだけでなく、入口42は流入する流体にトラフ内壁54に対して斜めに延びる流動方向を指定して、減衰器ハウジング34のトラフ内で接線流52を生成し、その結果としてトラフの内部に遠心フラッシングが発生する。こうすることにより流体残留物を特に確実に洗い流すことができるだけでなく、トラフ内のサイクロン効果によって、減衰動作中にトラフ内壁54に流体の凝集物が堆積するリスクも防止される。
【0029】
ダイヤフラム18及び40は、それぞれの用途の要件を満たす材料で作られている。この目的のために、PTFE、又はエラストマー又は複合物も想定できる。PTFE、布及びエラストマーを含む複合物を有利に想定できる。そのような材料は耐熱性を有し、汎用性があり、食品要件(FDA)にも適合する。純度要件を特に確実に満たすために、本発明による減衰装置では媒体と接触している金属部分は電解研磨される。
また、本開示は以下の発明を含む。
第1の態様は、圧力脈動を受ける流体のための減衰装置であって、前記減衰装置は少なくとも1つの油圧アキュムレータ(2)を備え、前記少なくとも1つの油圧アキュムレータ(2)のアキュムレータハウジング(4、6)は、前記気体側(14)を流体室(16)から分離し、かつ前記流体室(16)内にある流体によって加圧可能である可動分離要素(18)を有している、減衰装置において、
前記アキュムレータハウジング(4、6)の構成要素として、第2流体室(38)を備えた減衰器ハウジング(34)が設けられており、前記第2流体室(38)は圧力脈動を受ける流体が貫流でき、前記油圧アキュムレータ(2)の前記第2流体室(38)を前記第1流体室(16)からデッドスペースなく分離する第2可動分離要素(40)を有していることを特徴とする減衰装置である。
第2の態様は、前記減衰器ハウジング(34)は、前記アキュムレータハウジング(4、6)に取り外し可能に取り付けられていることを特徴とする第1の態様における減衰装置である。
第3の態様は、前記第1流体室(16)では、前記第2可動分離要素(40)が故障した場合に減衰されるべき流体システムの汚染を引き起こさない化学的に中性の分離液が使用されていることを特徴とする、第1の態様又は第2の態様における減衰装置である。
第4の態様は、前記可動分離要素(18)及び前記第2可動分離要素(40)の内の少なくとも一方、好ましくは、前記可動分離要素(18)及び前記第2可動分離要素(40)の両方は、ダイヤフラム(18、40)によって形成されているか若しくはダイヤフラム(18、40)であることを特徴とする、第1の態様~第3の態様のいずれか1つにおける減衰装置である。
第5の態様は、前記可動分離要素(18)と前記第2可動分離要素(40)の間で前記流体室(16)にまたがって前記アキュムレータハウジング(4、6)の壁部材(6)が延びており、両分離要素(18、40)は完全に偏向した位置でこの壁部材(6)に当接することを特徴とする、第1の態様~第4の態様のいずれか1つにおける減衰装置である。
第6の態様は、前記流体室(16)にまたがる前記アキュムレータハウジング(4、6)の壁部材(6)は、両部分室を互いに接続する恒久的な貫通路(22)を有しており、両部分室のうち一方の部分室は分離要素(18)によって画定され、他方の部分室は分離要素(40)によって画定されていることを特徴とする、第1の態様~第5の態様のいずれか1つにおける減衰装置である。
第7の態様は、前記アキュムレータハウジング(4、6)は、
前記減衰器ハウジング(34)と、
前記流体室(16)にまたがる前記アキュムレータハウジング(4、6)の壁部材(6)と、
前記気体側(14)を画定している上部ハウジング部材(4)とからなるハウジング構成要素から構成されており、それぞれ隣接する前記ハウジング構成要素はねじ結合によって互いに固定されていることを特徴とする、第1の態様~第6の態様のいずれか1つにおける減衰装置である。
第8の態様は、前記減衰器ハウジング(34)内にある前記第2流体室(38)は、円筒状のトラフによって形成されており、その内部は前記油圧アキュムレータ(2)に向かって前記第2可動分離要素(40)によって画定されていて、互いに反対側の流体入口(42)と流体出口(44)を有することを特徴とする、第1の態様~第7の態様のいずれか1つにおける減衰装置である。
第9の態様は、トラフの内部の遠心フラッシングを形成するために、少なくとも流体入口(42)はトラフの内壁(54)に対して斜め方向に内部に開口していることを特徴とする、第1の態様~第8の態様のいずれか1つにおける減衰装置である。
第10の態様は、流体入口(42)と流体出口(44)は、ハウジング軸線(10)の方向で高さがずれていることを特徴とする、第1の態様~第9の態様のいずれか1つにおける減衰装置である。
第11の態様は、動作中に減衰されるべき前記流体室(38)内で流体のサイクロン流れが発生し、流体入口(42)と流体出口(44)が水平方向でも垂直方向でも互いにずれて前記減衰器ハウジング(34)内に配置されていることを特徴とする、第1の態様~第10の態様のいずれか1つにおける減衰装置である。
第12の態様は、前記油圧アキュムレータ(2)のダイヤフラムは、少なくともその最終位置で前記減衰器ハウジング(34)に向かって半球形に湾曲しており、好ましくはローリングダイヤフラム(18)によって形成されていることを特徴とする、第1の態様~第11の態様のいずれか1つにおける減衰装置である。
第13の態様は、前記第2可動分離要素を形成するダイヤフラム(40)は、そのすべての動作状態において前記減衰器ハウジング(34)の内部をデッドスペースなく画定し、前記アキュムレータハウジング(4、6)と前記減衰器ハウジング(34)との間の分離箇所で枢着されていることを特徴とする、第1の態様~第12の態様のいずれか1つにおける減衰装置である。
第14の態様は、前記減衰器ハウジング(34)のトラフの内部を画定するダイヤフラムはフラットダイヤフラム(40)によって形成されていることを特徴とする、第1の態様~第13の態様のいずれか1つにおける減衰装置である。
第15の態様は、少なくとも1つのダイヤフラム(18、40)、好ましくは両ダイヤフラム(18、40)は、PTFE又はエラストマーから、特に好ましくはPTFE、布及びエラストマーを含む複合物から形成されているか若しくは前記複合物であることを特徴とする、第1の態様~第14の態様のいずれか1つにおける減衰装置である。
第16の態様は、前記アキュムレータハウジング(4、6)と前記減衰器ハウジング(34)とは、取り外し可能なねじ結合(30、32)によって互いに接続されていることを特徴とする、第1の態様~第15の態様のいずれか1つにおける減衰装置である。
第17の態様は、前記アキュムレータハウジング(4、6)が複数の部分からなり、前記油圧アキュムレータ(2)のダイヤフラム(18)の枢着箇所が、前記アキュムレータハウジングの分離可能なハウジング部分(4、6)の間に締め付けて固持されていることを特徴とする、第1の態様~第16の態様のいずれか1つにおける減衰装置である。
第18の態様は、前記減衰器ハウジング(34)とのねじ結合(30、32)が形成されている前記アキュムレータハウジング(4、6)のハウジング部分(28)内に、前記第1流体室(16)を分離液で満たすための充填接続部(48)が形成されていることを特徴とする、第1の態様~第17の態様のいずれか1つにおける減衰装置である。
第19の態様は、媒体と接触している金属部分が電解研磨されていることを特徴とする、第1の態様~第18の態様のいずれか1つにおける減衰装置である。