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特許7352570血流改善用組成物及び血管内皮機能改善用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-20
(45)【発行日】2023-09-28
(54)【発明の名称】血流改善用組成物及び血管内皮機能改善用組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/10 20160101AFI20230921BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20230921BHJP
   A23F 3/16 20060101ALI20230921BHJP
   A23F 5/24 20060101ALI20230921BHJP
   C12G 3/05 20190101ALI20230921BHJP
   A23L 2/38 20210101ALI20230921BHJP
   A23L 2/02 20060101ALI20230921BHJP
   A23L 2/56 20060101ALI20230921BHJP
   A61K 31/352 20060101ALN20230921BHJP
   A61P 9/00 20060101ALN20230921BHJP
   A61P 43/00 20060101ALN20230921BHJP
【FI】
A23L33/10
A23L2/00 F
A23F3/16
A23F5/24
C12G3/05
A23L2/38 C
A23L2/02 A
A23L2/02 E
A23L2/38 P
A23L2/56
A61K31/352
A61P9/00
A61P43/00 105
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020559168
(86)(22)【出願日】2019-12-02
(86)【国際出願番号】 JP2019046981
(87)【国際公開番号】W WO2020116381
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】P 2018229132
(32)【優先日】2018-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】富貴澤 伸哉
【審査官】堂畑 厚志
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-013150(JP,A)
【文献】特開2015-040839(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0084439(KR,A)
【文献】特開2013-043850(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0160450(US,A1)
【文献】特開2006-306800(JP,A)
【文献】特開2011-256133(JP,A)
【文献】特表2009-502973(JP,A)
【文献】特開2009-269927(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0220542(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105963284(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105982881(CN,A)
【文献】ZHANG, Nenling et al.,A new formylated chalcone from Humulus lupulus with protective effect on HUVECs injury by angiotensin II,Natural Product Research,日本,2017年11月24日,vol. 33, no. 5,p. 617-621
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A61P
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソキサントフモールを有効成分として含む血管内皮機能改善用組成物。
【請求項2】
キサントフモールを有効成分として含む血管内皮細胞における一酸化窒素産生の促進用組成物。
【請求項3】
飲食品である請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
飲料である請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記飲料が、茶系飲料、コーヒー飲料、アルコール飲料、ノンアルコールビールテイスト飲料、炭酸飲料、機能性飲料、果実・野菜系飲料、乳性飲料、豆乳飲料又はフレーバーウォーターである請求項に記載の組成物。
【請求項6】
「血管内皮機能を改善する」、「血管内皮機能の低下を予防する」、「血管の健康を保つ」及び「血管のしなやかさを維持する」1又は2以上の機能の表示を付した請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血流改善用組成物及び血管内皮機能改善用組成物に関する。また、本発明は、血流を改善する方法、血管内皮機能を改善する方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
血管内皮細胞は、血管の内表面を構成する細胞であり、一酸化窒素(NO)等の生理活性物質を産生する機能を有することが知られている。一酸化窒素は、血管内皮由来弛緩因子の一つであり、生体内ではNO合成酵素(NOS)によるL-アルギニンからL-シトルリンへの変換反応の副産物として生じる。血管内皮細胞における一酸化窒素産生を促進することは、血管を弛緩、拡張させ、血流改善等に有効である。非特許文献1には、加齢に伴う血管弛緩性の減弱が、血管内皮細胞からのNO産生低下(血管内皮機能の低下)等から説明できることが示唆されている。すなわち、加齢に伴う内皮型のNO合成酵素(eNOS)タンパク質発現量の減少や、女性ホルモン分泌低下にともなうeNOS活性化刺激の減弱が、血管弛緩性の悪化や血流低下につながるとされる。特許文献1には、ヒハツ抽出物を有効成分として含有する血管内皮型一酸化窒素合成酵素活性促進剤が記載されている。
【0003】
血管内皮機能を悪化させる因子として、喫煙、塩分の摂取過多、及び2型糖尿病などが報告されている。また、血管内皮機能が低下した状態が続くことは、動脈硬化の進展にもつながる。特許文献2には、キサントフモールを有効成分とするSR-B1タンパク質発現亢進剤が開示されており、キサントフモールの摂取によってHDL(高比重リポタンパク)受容体として機能するSR-B1タンパク質発現が亢進することで、コレステロール代謝が改善することが期待されている。コレステロール代謝を改善することで動脈硬化リスクが下がるという報告があるものの、近年、非特許文献2で主張されるような逆説的な仮説も報告され、その真偽の解明は不充分である。一方、動脈硬化の前段階である血管内皮機能の低下は可逆的であることから、この血管内皮機能の低下した状態を早期に発見し、さらにはその機能を高めるための介入をすることには臨床的意義があると考えられる。
【0004】
血管内皮機能の低下は、冷え性や肩こり、中高年女性の更年期障害など、普段自覚する体調の異常にも深く関与している。血管内皮機能を改善し、血管弛緩性を高めて血流を改善することの期待効果としては、むくみの予防又は改善、体温維持、冷え性の予防又は改善、温感(温度感覚)、肩こりの予防又は改善、疲労回復、疲労感軽減等が挙げられる。例えば非特許文献3においては、NO産生促進作用を有するアミノ酸であるL-シトルリンの経口摂取により、下肢むくみの抑制効果が認められたと報告されている。また非特許文献4においては、NO産生促進作用を有するヘスペレチンの配糖体である糖転移ヘスペリジンの経口摂取により、冷え性改善効果や肌状態改善効果が認められたと報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-298429号公報
【文献】特開2011-256133号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】基礎老化研究 38(3); 11-18,2014
【文献】Expert Rev Clin Pharmacol 2015; 8(2):189-99
【文献】Jpn Pharmacol Ther 2012 40(9) 787-94
【文献】応用糖質科学第1巻第2号186-193(2011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、血管内皮機能を改善することによって血流を改善することができる新規な血流改善用組成物を提供することを目的とする。本発明はまた、血管内皮機能を改善することができる血管内皮機能改善用組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、血流を改善する方法、血管内皮機能を改善する方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、ポリフェノールの一種であるイソキサントフモール及びキサントフモールが、血管内皮細胞における一酸化窒素産生を促進する作用を有し、血管内皮機能改善効果及び血流改善効果を発揮することを見出した。
【0009】
すなわち、これに限定されるものではないが、本発明は以下の血流改善用組成物及び血管内皮機能改善用組成物等に関する。
〔1〕イソキサントフモールを有効成分として含む血流改善用組成物。
〔2〕血管内皮機能を改善することによって血流を改善する上記〔1〕に記載の血流改善用組成物。
〔3〕血管内皮機能の改善が、血管内皮細胞における一酸化窒素産生の促進である上記〔2〕に記載の血流改善用組成物。
〔4〕イソキサントフモールを有効成分として含む血管内皮機能改善用組成物。
〔5〕キサントフモールを有効成分として含む、血管内皮機能を改善することによって血流を改善する血流改善用組成物。
〔6〕血管内皮機能の改善が、血管内皮細胞における一酸化窒素産生の促進である上記〔5〕に記載の血流改善用組成物。
〔7〕キサントフモールを有効成分として含む血管内皮機能改善用組成物。
〔8〕飲食品である上記〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の組成物。
〔9〕飲料である上記〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の組成物。
〔10〕上記飲料が、茶系飲料、コーヒー飲料、アルコール飲料、ノンアルコールビールテイスト飲料、炭酸飲料、機能性飲料、果実・野菜系飲料、乳性飲料、豆乳飲料又はフレーバーウォーターである上記〔9〕に記載の組成物。
〔11〕「血管内皮機能を改善する」、「血管内皮機能の低下を予防する」、「血管の健康を保つ」、「血管のしなやかさを維持する」、「血管を拡張して血流を保つ」、「血行を促進する」、「血流を改善して体温を維持する」、「血流を改善して冷え性を予防又は改善する」、「温感(温度感覚)」、「血流を改善して肩こりを予防又は改善する」、「血流を改善して疲労回復を促す」、「疲労感を軽減する」、「むくみを予防又は改善する」及び「血流を改善して肌状態を良くする」の1又は2以上の機能の表示を付した上記〔1〕~〔10〕のいずれかに記載の組成物。
〔12〕イソキサントフモールを対象に投与する、血流を改善する方法。
〔13〕イソキサントフモールを対象に投与する、血管内皮機能を改善する方法。
〔14〕キサントフモールを対象に投与する、血管内皮機能を改善することにより血流を改善する方法。
〔15〕キサントフモールを対象に投与する、血管内皮機能を改善する方法。
〔16〕血流を改善するための、イソキサントフモールの使用。
〔17〕血管内皮機能を改善するための、イソキサントフモールの使用。
〔18〕血管内皮機能を改善することにより血流を改善するための、キサントフモールの使用。
〔19〕血管内皮機能を改善するための、キサントフモールの使用。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、血管内皮機能を改善することによって血流を改善することができる新規な血流改善用組成物を提供することができる。本発明はまた、血管内皮機能を改善することができる血管内皮機能改善用組成物を提供することができる。また、本発明によれば、血流を改善する方法、血管内皮機能を改善する方法等を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の第一の態様は、イソキサントフモールを有効成分として含む血流改善用組成物である。本発明の第一の態様の血流改善用組成物を、以下では第一の血流改善用組成物ともいう。イソキサントフモールは、血管内皮機能を改善する作用を有する。一態様において、本発明の第一の血流改善用組成物は、血管内皮機能を改善することによって血流を改善する血流改善用組成物として好適に使用される。
【0012】
本発明の第二の態様は、イソキサントフモールを有効成分として含む血管内皮機能改善用組成物である。本発明の第二の態様の血管内皮機能改善用組成物を、以下では第一の血管内皮機能改善用組成物ともいう。
【0013】
本発明の第三の態様は、キサントフモールを有効成分として含む、血管内皮機能を改善することによって血流を改善する血流改善用組成物である。本発明の第三の態様の血流改善用組成物を、以下では、第二の血流改善用組成物ともいう。
【0014】
本発明の第四の態様は、キサントフモールを有効成分として含む血管内皮機能改善用組成物である。本発明の第四の態様の血管内皮機能改善用組成物を、以下では第二の血管内皮機能改善用組成物ともいう。
【0015】
本発明において、血管内皮機能改善は、好ましくは血管内皮細胞における一酸化窒素産生の促進である。血管内皮機能改善は、Flow Mediated Dilation(FMD)検査やプレチスモグラフィなどによって非侵襲的な測定及び診断が可能である。一実施態様において、本発明の第一及び第二の血管内皮機能改善用組成物は、血管内皮細胞における一酸化窒素産生促進のために使用され得る。血流改善用組成物は、血管内皮機能を改善することによって血流を改善するために好適に使用される。血流改善は、血流の流速を増加させること、血流の流速を維持すること、血流の流速が低下するのを抑制すること、血流量を増加させること等を指す。血流はレーザー血流計やArterial spin labeling(ASL)、fNIRS等の手法により計測が可能である。
【0016】
本発明の第一の血流改善用組成物及び第一の血管内皮機能改善用組成物は、イソキサントフモールを有効成分として含む。イソキサントフモールは、キサントフモールが異性化した化合物である。イソキサントフモールは、製造方法等によって何ら制限されるものではない。
イソキサントフモールは、例えば、アサ科の植物であるホップ(Humulus lupulus)抽出物から加熱等のプロセスを経て調製することができる。ホップ抽出物を加熱することにより、該抽出物中にイソキサントフモールを生成させることができる。ホップ抽出物は、通常、ホップの毬花を溶媒で抽出し、必要に応じて精製に係るプロセスを介して調製され、公知のホップ抽出物の調製方法により得ることができる。抽出方法として、例えば、ビール醸造に用いられるホップ抽出物の調製方法として用いられる、エタノール溶媒による抽出方法が挙げられる。ホップ抽出物は市販されており、市販のホップ抽出物を使用することもできる。イソキサントフモールを生成させるためのホップ抽出物の加熱は、80~140℃(より好ましくは85~100℃)で15分~5時間(より好ましくは20分~3時間)行うことが好ましい。イソキサントフモールを調製するためのホップ抽出物の精製は、公知の方法で実施される。また、イソキサントフモールは、キサントフモールを加熱することによって異性化して製造することもできる。この際の加熱温度は、好ましくは80~140℃(より好ましくは85~100℃)で15分~5時間(より好ましくは20分~3時間)を採用することができる。異性化処理により得られたイソキサントフモールは、必要に応じて、公知の方法(例えば、ろ過、減圧濃縮、凍結乾燥等)により濃縮したり、精製したりすることができる。
イソキサントフモールは、市販品を使用することもできる。本発明においては、精製されたイソキサントフモールを使用してもよく、本発明の効果を奏することになる限り、イソキサントフモールを豊富に含む植物由来原料を本発明の組成物に含有させてもよい。イソキサントフモールを豊富に含む植物由来原料として、例えば、加熱処理したホップ抽出物、その濃縮物、乾燥物等が挙げられる。
【0017】
本発明の第二の血流改善用組成物及び第二の血管内皮機能改善用組成物は、キサントフモールを有効成分として含む。キサントフモールは、製造方法等によって何ら制限されるものではない。
キサントフモールは、ホップに由来する成分であり、ホップから溶媒を用いて抽出することで得ることができる。例えば、乾燥したホップを粉砕などしてペレット状にしたものを、アルコールなどの有機溶媒に浸漬して抽出する。次いで、得られた抽出液を濃縮又は乾燥した後、クロマトグラフィーなどを用いて分離又は精製することにより得ることができる。ホップからの抽出、分画、精製の際の温度は、80℃未満が好ましく、例えば、5~70℃がより好ましい。
キサントフモールは、市販品を使用することもできる。本発明においては、精製されたキサントフモールを使用してもよく、本発明の効果を奏することになる限り、キサントフモールを豊富に含む植物由来原料を本発明の組成物に含有させてもよい。キサントフモールを豊富に含む植物由来原料として、例えば、上記のホップの抽出液の濃縮物、乾燥物等が挙げられる。
【0018】
後記の実施例に示すように、イソキサントフモール及びキサントフモールは、血管内皮細胞における一酸化窒素産生を促進する作用を有した。従ってイソキサントフモール及びキサントフモールは、血管内皮機能(血管内皮細胞の機能)改善作用を有する。血管内皮細胞において一酸化窒素産生量が増加すると、血管が拡張し、血流量を増加させる(血行を促進させる)こと等ができる。従って血管内皮細胞における一酸化窒素産生量の促進により、血流が改善される。イソキサントフモール及びキサントフモールは、血管内皮細胞における一酸化窒素産生促進作用を通じて血流を改善することができる。一態様において、イソキサントフモール及びキサントフモールは、血管拡張のため又は血管弛緩のため有効成分として使用することもできる。
【0019】
イソキサントフモール及びキサントフモールは、天然物や飲食品に含まれ、食経験がある化合物である。このため安全性の観点から、イソキサントフモール及びキサントフモールは、例えば毎日摂取することにも問題が少ないと考えられる。従って本発明によれば、安全性が高い成分を有効成分として含む血流改善用組成物、血管内皮機能改善用組成物を提供することができる。またイソキサントフモールは、例えば100℃の高温条件でも安定であることが報告されている。食品衛生法においては清涼飲料水等の規格基準として殺菌条件が定められているが、例えばpH4.0以上のもの(pH4.6以上で、かつ、水分活性が0.94を超えるものを除く)においては85℃において30分間の加熱が必要である。このような殺菌工程における成分変換を考慮した場合、イソキサントフモールはより飲料適正が高いと考えられる。
本発明の一態様によれば、血流改善作用、血管内皮機能改善作用を示し、熱に安定であり、健康の維持、増進に資する種々の機能性食品、機能性飲料等を提供することが可能となる。
またイソキサントフモール及びキサントフモールは、例えば、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)やLC-MS/MSにより定量することが可能である。イソキサントフモール及びキサントフモールは、簡便に定量分析が可能であり、有効成分の定量分析及び規格化が必要となる機能性表示食品等の有効成分として使用しやすいという利点もある。
【0020】
本発明の第一の血流改善用組成物及び第一の血管内皮機能改善用組成物、並びに、第二の血流改善用組成物及び第二の血管内皮機能改善用組成物を、以下ではまとめて本発明の血流改善用組成物等ともいう。
【0021】
上記のように、イソキサントフモール及びキサントフモールは、血管内皮細胞における一酸化窒素産生を促進する作用を有する。このような血管内皮機能改善作用により血管を拡張し、血流量を増加させることができる。また、血管内皮機能改善作用により血管の健康(機能性)を保ち、血管のしなやかさ、弾性等を維持することができる。従ってイソキサントフモール及びキサントフモールは、例えば、血管のしなやかさ、弾性等を維持又は改善するために有用である。一態様において、本発明の第一の血管内皮機能改善用組成物及び第二の血管内皮機能改善用組成物は、血管のしなやかさ及び/又は血管の弾性を維持又は改善するために使用することができる。
本発明の血流改善用組成物等は、血流改善又は血管内皮機能改善により予防又は改善が期待できる症状又は疾患の予防又は改善のために使用することができる。このような症状又は疾患として、血流低下に起因する症状又は疾患が挙げられる。
血流が低下(血流量が減少)すると、冷え症、肩こり、肌荒れ(肌状態の悪化)、むくみ、疲労感などの症状を引き起こす。血流の改善は、このような血流低下に起因する症状又は疾患の予防又は改善に有効である。本発明の血流改善用組成物等は、例えば、冷え性の予防又は改善、温感(温度感覚)、肩こりの予防又は改善、肌状態の改善、むくみの予防又は改善、疲労回復、疲労感軽減のために好適に使用され得る。
本明細書で症状又は疾患の予防は、症状又は疾患の発症を防止すること、症状又は疾患の発症を遅延させること、症状又は疾患の発症率を低下させること、症状又は疾患の発症のリスクを軽減すること等を包含する。症状又は疾患の改善は、対象を症状又は疾患から回復させること、症状又は疾患を緩和すること、症状の悪化又は疾患の進行を遅延させること又は防止すること等を包含する。
【0022】
本発明の血流改善用組成物等は、治療的用途(医療用途)又は非治療的用途(非医療用途)のいずれにも適用することができる。非治療的とは、医療行為、すなわち手術、治療又は診断を含まない概念である。
本発明の血流改善用組成物等は、飲食品、医薬、医薬部外品、飼料等の形態とすることができる。本発明の血流改善用組成物等は、それ自体が、血流改善又は血管内皮機能改善のための飲食品、医薬、医薬部外品、飼料等であってもよく、これらに配合して使用される素材又は製剤等であってもよい。
本発明の血流改善用組成物等は、一例として、剤の形態で提供することができるが、本形態に限定されるものではない。当該剤をそのまま組成物として、又は、当該剤を含む組成物として提供することもできる。一態様において、本発明の血流改善用組成物は、血流改善剤ということもできる。一態様において、血管内皮機能改善用組成物は、血管内皮機能改善剤ということもできる。
本発明の効果を充分に得る観点から、本発明の血流改善用組成物等は、好ましくは経口用組成物であるが、形態を問わない。経口用組成物としては、飲食品、経口用の医薬、医薬部外品、飼料が挙げられ、好ましくは飲食品又は経口用医薬であり、より好ましくは飲食品である。本発明の血流改善用組成物等は、経口用組成物以外の形態であってよく、経口用組成物以外の形態としては、例えば有効成分の経皮や粘膜からの吸収が期待できる形態が挙げられ、好ましくは外用剤が挙げられる。
【0023】
本発明の血流改善用組成物等は、本発明の効果を損なわない限り、本発明における有効成分(イソキサントフモール又はキサントフモール)に加えて、任意の添加剤、任意の成分を含有することができる。これらの添加剤及び成分は、組成物の形態等に応じて選択することができ、一般的に飲食品、医薬、医薬部外品、飼料等に使用可能なものが使用できる。
本発明の血流改善用組成物等を、飲食品、医薬、医薬部外品、飼料等とする場合、その製造方法は特に限定されず、一般的な方法により製造することができる。また、例えばイソキサントフモールを含む血流改善用組成物等は、その製造において、ホップ抽出物を配合し、該ホップ抽出物を加熱する工程を行うことによって製造することもできる。
【0024】
例えば本発明の血流改善用組成物等を飲食品とする場合、本発明における有効成分に、飲食品に使用可能な成分(例えば、食品素材、必要に応じて使用される食品添加物等)を配合して、種々の飲食品とすることができる。飲食品は特に限定されず、例えば、一般的な飲食品、健康食品、健康飲料、機能性表示食品、特定保健用食品、病者用飲食品等が挙げられる。上記健康食品、機能性表示食品、特定保健用食品等は、例えば、細粒剤、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、チュアブル剤、シロップ剤、液剤、流動食等の各種製剤形態として使用することができる。
【0025】
本発明の血流改善用組成物等の好ましい形態の一例として、飲料が挙げられる。
飲料は、ノンアルコール飲料、アルコール飲料のいずれであってもよい。ノンアルコール飲料として、例えば、茶系飲料、コーヒー飲料、ノンアルコールビールテイスト飲料、炭酸飲料、機能性飲料、果実・野菜系飲料、乳性飲料、豆乳飲料、フレーバーウォーター等が挙げられる。
【0026】
本発明の血流改善用組成物等が飲料である場合、茶系飲料、コーヒー飲料、アルコール飲料、ノンアルコールビールテイスト飲料、炭酸飲料、機能性飲料、果実・野菜系飲料、乳性飲料、豆乳飲料又はフレーバーウォーターであることが好ましい。
本発明の血流改善用組成物等が茶系飲料である場合、紅茶飲料又は無糖茶飲料であることが好ましい。無糖茶飲料として、緑茶飲料、ウーロン茶飲料、麦茶飲料、玄米茶飲料、ハト麦茶飲料、無糖の紅茶飲料等が挙げられる。
本発明の血流改善用組成物等がコーヒー飲料である場合、容器詰コーヒー又はリキッドコーヒーであることが好ましい。
【0027】
アルコール飲料としては、ビール、ビール系飲料、ビール及びビール系飲料以外のアルコール飲料が挙げられる。
本発明の血流改善用組成物等がビール系飲料である場合、発泡酒又は第三のビールであることが好ましい。
本発明の血流改善用組成物等がビール及びビール系飲料以外のアルコール飲料である場合、焼酎、チューハイ、リキュール、カクテル、スピリッツ、ウイスキーであることが好ましい。
【0028】
本明細書における「ノンアルコールビールテイスト飲料」とは、ビール様の風味をもつ炭酸飲料を意味し、非発酵のノンアルコールタイプのものであり、これはアルコールを実質的に含まない。ここで、ノンアルコールビールテイスト飲料は、検出できない程度の極く微量のアルコールを含有する飲料を除くものではない。
【0029】
本発明の血流改善用組成物等が炭酸飲料である場合、コーラフレーバー飲料、透明炭酸飲料、ジンジャエール、果汁系炭酸飲料、乳類入炭酸飲料又は無糖炭酸飲料であることが好ましい。
本発明の血流改善用組成物等が機能性飲料である場合、スポーツドリンク、エナジードリンク、健康サポート飲料又はパウチゼリー飲料であることが好ましい。
【0030】
本発明の血流改善用組成物等が果実・野菜系飲料である場合、100%果実飲料、果実入飲料、低果汁入清涼飲料、果粒含有果実飲料又は果肉飲料であることが好ましい。
本発明の血流改善用組成物等が乳性飲料である場合、牛乳、ドリンクヨーグルト、乳酸菌飲料又は乳類入清涼飲料であることが好ましい。
本発明の血流改善用組成物等が豆乳飲料である場合、豆乳又は大豆飲料であることが好ましい。
イソキサントフモールは熱に安定であることから、イソキサントフモールを含む血流改善用組成物等は、飲料により適している。
【0031】
飲料の形態は特に限定されず、容器詰飲料とすることができる。容器詰飲料の容器は特に限定されず、いずれの形態及び材質の容器を用いてもよく、例えば、アルミ缶、スチール缶等の金属製容器;ペットボトル等の樹脂製容器;紙パック等の紙容器;ガラス瓶等のガラス製容器;樽等の木製容器等の通常用いられる容器のいずれも用いることができる。このような容器に飲料を充填及び密閉することにより、容器詰飲料が得られる。
【0032】
本発明の血流改善用組成物等を医薬又は医薬部外品とする場合、例えば、本発明における有効成分に、薬理学的に許容される担体、必要に応じて添加される添加剤等を配合して、各種剤形の医薬又は医薬部外品とすることができる。そのような担体、添加剤等は、医薬又は医薬部外品に使用可能な、薬理学的に許容されるものであればよく、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、抗酸化剤、着色剤等の1又は2以上が挙げられる。医薬又は医薬部外品の投与(摂取)形態としては、経口又は非経口(経皮、経粘膜、経腸、注射等)が挙げられるが、本発明の効果をより充分に得る観点から、経口投与が好ましい。血流改善用組成物等を医薬又は医薬部外品とする場合、経口用医薬又は医薬部外品とすることが好ましい。経口投与のための剤型としては、液剤、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、糖衣錠、カプセル剤、懸濁液、乳剤、チュアブル剤等が挙げられる。非経口投与のための剤形としては、外用剤、注射剤、点滴剤、坐剤、経鼻剤、経肺剤(吸入剤)等が挙げられる。外用剤として、例えば、湿布等の貼付剤、薬用化粧品、軟膏剤、クリーム剤、浴用剤(入浴に際し浴槽内に投入するもの)等の皮膚外用剤が挙げられる。医薬は、非ヒト動物用医薬であってもよい。
【0033】
本発明の血流改善用組成物等を飼料とする場合には、本発明における有効成分を飼料に配合すればよい。飼料には飼料添加剤も含まれる。飼料としては、例えば、牛、豚、鶏、羊、馬等に用いる家畜用飼料;ウサギ、ラット、マウス等に用いる小動物用飼料;犬、猫、小鳥等に用いるペットフードなどが挙げられる。
【0034】
本発明の血流改善用組成物等に含まれる有効成分の含量は特に限定されず、その形態等に応じて設定することができる。
本発明の第一の血流改善用組成物及び第一の血管内皮機能改善用組成物中のイソキサントフモールの含量は、例えば、組成物中に0.0001重量%以上が好ましく、0.001重量%以上がより好ましく、また、90重量%以下が好ましい。一態様において、イソキサントフモールの含量は、血流改善用組成物等中に0.0001~90重量%が好ましく、0.001~90重量%がより好ましい。一態様において、本発明の第一の血流改善用組成物及び第一の血管内皮機能改善用組成物を飲食品、医薬、医薬部外品、飼料等とする場合、イソキサントフモールの含量を上記範囲とすることが好ましい。
【0035】
本発明の第二の血流改善用組成物及び第二の血管内皮機能改善用組成物中のキサントフモールの含量は、例えば、組成物中に0.0001重量%以上が好ましく、0.001重量%以上がより好ましく、また、90重量%以下が好ましい。一態様において、キサントフモールの含量は、血流改善用組成物等中に0.0001~90重量%が好ましく、0.001~90重量%がより好ましい。一態様において、本発明の第二の血流改善用組成物及び第二の血管内皮機能改善用組成物を飲食品、医薬、医薬部外品、飼料等とする場合、キサントフモールの含量を上記範囲とすることが好ましい。
【0036】
本発明の血流改善用組成物等の摂取量(投与量ということもできる)は特に限定されず、血流改善効果又は血管内皮機能改善効果が得られるような量(有効量)であればよく、投与形態、投与方法、対象の体重等に応じて適宜設定すればよい。
【0037】
一態様において、ヒト(成人)を対象に経口で摂取させる又は投与する場合、第一の血流改善用組成物及び第一の血管内皮機能改善用組成物の摂取量は、イソキサントフモールの摂取量として、1日当たり体重60kgで、好ましくは1~200mgであり、より好ましくは5~60mgである。上記量を、1日1回以上、例えば、1日1回~数回(例えば2~3回)に分けて、摂取させる又は投与することが好ましい。
【0038】
一態様において、ヒト(成人)を対象に経口で摂取させる又は投与する場合、第二の血流改善用組成物及び第二の血管内皮機能改善用組成物の摂取量は、キサントフモールの摂取量として、1日当たり体重60kgで、好ましくは1~200mgであり、より好ましくは5~60mgである。上記量を、1日1回以上、例えば、1日1回~数回(例えば2~3回)に分けて、摂取させる又は投与することが好ましい。
【0039】
本発明の血流改善用組成物等は、その形態に応じた適当な方法で摂取又は投与することができる。本発明の効果を充分に得る観点から、本発明の血流改善用組成物等は、好ましくは、経口摂取(経口投与)されるが、例えば有効成分の経皮や粘膜からの吸収が期待できる形態であれば、経口摂取に限定されない。
【0040】
本発明の血流改善用組成物等を摂取させる又は投与する対象(投与対象ということもできる)は、特に限定されない。好ましくはヒト又は非ヒト哺乳動物であり、より好ましくはヒトである。
本発明の血流改善用組成物等を摂取させる又は投与する対象として、血流改善を必要とする又は希望する対象、血管内皮機能改善を必要又は希望する対象等が好ましい。このような対象として、例えば、冷え性、肩こり、肌荒れ(肌状態の悪化)、むくみ、疲労感等の症状を有するヒト等が挙げられる。本発明の血流改善用組成物等は、例えば、血流改善、血管内皮機能改善により予防又は改善が期待できる症状又は疾患の予防等を目的として、健常者に対して使用することもできる。
【0041】
本発明の血流改善用組成物等には、血流改善作用又は血管内皮機能改善作用に基づく機能の表示が付されていてもよい。本発明の血流改善用組成物等には、例えば、「血管内皮機能を改善する」、「血管内皮機能の低下を予防する」、「血管の健康を保つ」、「血管のしなやかさを維持する」、「血管を拡張して血流を保つ」、「血行を促進する」、「血流を改善して体温を維持する」、「血流を改善して冷え性を予防又は改善する」、「温感(温度感覚)」、「血流を改善して肩こりを予防又は改善する」、「血流を改善して疲労回復を促す」、「疲労感を軽減する」、「むくみを予防又は改善する」及び「血流を改善して肌状態を良くする」の1又は2以上の機能の表示が付されていてもよい。
本発明の一実施態様において、本発明の血流改善用組成物等は、上記の表示が付された飲食品であることが好ましい。また上記の表示は、上記の機能を得るために用いる旨の表示であってもよい。当該表示は、組成物自体に付されてもよいし、組成物の容器又は包装に付されていてもよい。
【0042】
本発明は、以下の方法も包含する。
イソキサントフモールを対象に投与する、血流を改善する方法。
イソキサントフモールを対象に投与する、血管内皮機能を改善する方法。
キサントフモールを対象に投与する、血流を改善する方法。
キサントフモールを対象に投与する、血管内皮機能を改善する方法。
血流を改善する方法は、好ましくは血管内皮機能を改善することにより血流を改善する方法である。
上記方法は、治療的な方法であってもよく、非治療的な方法であってもよい。
イソキサントフモール又はキサントフモールを対象に投与すると、血管内皮細胞における一酸化窒素産生が促進され、一酸化窒素産生量が増加する。このような作用により、血流改善及び血管内皮機能改善が可能となる。
【0043】
本発明は、以下の使用も包含する。
血流を改善するための、イソキサントフモールの使用。
血管内皮機能を改善するための、イソキサントフモールの使用。
血管内皮機能を改善することにより血流を改善するための、キサントフモールの使用。
血管内皮機能を改善するための、キサントフモールの使用。
血流を改善するための使用は、好ましくは血管内皮機能を改善することにより血流を改善するための使用である。
上記の使用は、好ましくはヒト又は非ヒト哺乳動物、より好ましくはヒトにおける使用である。使用は、治療的な使用であってもよく、非治療的な使用であってもよい。
【0044】
上記の方法及び使用において、血流改善、血管内皮機能改善及びこれらの好ましい態様等は、上述した本発明の血流改善用組成物等の場合と同じである。
上記方法及び使用においては、1日に1回以上、例えば、1日1回~数回(例えば2~3回)、イソキサントフモール又はキサントフモールを対象に投与することが好ましい。
【0045】
上記方法及び使用においては、血流改善効果、血管内皮機能改善効果等が得られる量(有効量ということもできる)のイソキサントフモール又はキサントフモールを対象に投与すればよい。イソキサントフモール又はキサントフモールの好ましい投与量、投与対象、投与方法等は上述した本発明の血流改善用組成物等の場合と同じである。イソキサントフモール又はキサントフモールは、そのまま投与してもよく、イソキサントフモール又はキサントフモールを含む組成物として投与してもよい。例えば、上述した本発明の血流改善用組成物等を投与してもよい。一態様において、イソキサントフモール又はキサントフモールは、血流改善又は血管内皮機能改善により予防又は改善が期待できる症状又は疾患、例えば、血流低下に起因する症状又は疾患の予防又は改善のために使用することができる。
また、イソキサントフモール及びキサントフモールは、血流改善のために使用される飲食品、医薬、医薬部外品、飼料等の製造のために使用することができる。本発明は一態様において、血流改善用組成物を製造するための、イソキサントフモールの使用;血流改善用組成物を製造するための、キサントフモールの使用;血管内皮機能改善用組成物を製造するための、イソキサントフモールの使用;血管内皮機能改善用組成物を製造するための、キサントフモールの使用、も包含する。
【実施例
【0046】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、これにより本発明の範囲を限定するものではない。
【0047】
<実施例1>
キサントフモール及びイソキサントフモールの血管内皮細胞に対する一酸化窒素(NO)産生促進作用
キサントフモール及びイソキサントフモール(いずれも(株)岐阜セラツク製造所にて作製)の血管内皮細胞に対する一酸化窒素(NO)産生促進作用を以下の手順により評価した。詳細には、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC、Lonza社)を用いてキサントフモール又はイソキサントフモールにより24時間処理を行い、一酸化窒素(NO)産生量を測定した(各n=5)。
【0048】
(手順)
HUVECを培地(EGM-2、Lonza社)を用いて10,000cells/0.1mL/ウェルで96ウェルプレートに播種し、COインキュベーターで培養した。翌日、キサントフモール添加群はキサントフモール添加培地に、イソキサントフモール添加群はイソキサントフモール添加培地に、コントロール群はコントロール培地に、陽性対照群は陽性対照(Lovastatin 10μM)含有培地にそれぞれ培地を交換し、さらに24時間COインキュベーターで培養した。イソキサントフモール添加培地は、イソキサントフモールをジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解させ、イソキサントフモールの終濃度が1μg/mL、3μg/mL又は10μg/mLとなるように培地に添加して調製した。キサントフモール添加培地は、キサントフモールをDMSOに溶解させ、キサントフモールの終濃度が1μg/mL、3μg/mL又は10μg/mLとなるように培地に添加して調製した。コントロール培地は、培地に他の群と濃度が等しくなるようにDMSOを添加した。陽性対照含有培地は、培地にLovastatinのDMSO溶液を、Lovastatin(富士フイルム和光純薬(株)製)の終濃度が10μMとなるように添加した。
【0049】
培養24時間後、培地にDiaminofluorescein-2 diacetate(DAF-2、五陵化薬(株))を終濃度10μMとなるよう添加し、COインキュベーターで2時間インキュベートした後、培養上清を96ウェルプレート(ブラックプレート)に移して蛍光強度(ex.495nm,em.515nm)を測定した。コントロール群の蛍光強度に対する相対蛍光強度を相対NO放出量とし、Student’s t-testにより群間(コントロール群vsキサントフモール添加群、又は、コントロール群vsイソキサントフモール添加群)の有意差検定を行った(有意水準:p<0.05)。各群における相対NO放出量(%)を表1及び2に示す(平均値±標準誤差)。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
イソキサントフモール添加群(イソキサントフモール濃度:1μg/mL、3μg/mL及び10μg/mL)、キサントフモール添加群(キサントフモール濃度:1μg/mL、3μg/mL及び10μg/mL)では、全ての群において、コントロール群との間に有意差が認められた。陽性対照群の相対NO放出量は、122.8±2.7%(有意差有り)であった。以上の結果から、キサントフモール及びイソキサントフモールが血管内皮細胞において一酸化窒素(NO)産生を高める生理作用(血管内皮機能改善作用)を有することが示された。