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特許7352605土木用又は建築用シートの施工方法及び土木用又は建築用シートの固定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-20
(45)【発行日】2023-09-28
(54)【発明の名称】土木用又は建築用シートの施工方法及び土木用又は建築用シートの固定方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/20 20060101AFI20230921BHJP
   E02B 3/12 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
E02D17/20 103B
E02D17/20 103A
E02D17/20 103Z
E02B3/12
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021165886
(22)【出願日】2021-10-08
(65)【公開番号】P2022179283
(43)【公開日】2022-12-02
【審査請求日】2023-07-11
(31)【優先権主張番号】P 2021086213
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006068
【氏名又は名称】三ツ星ベルト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】松本 修一
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-036838(JP,A)
【文献】特開2001-064940(JP,A)
【文献】特開2021-038642(JP,A)
【文献】特開2014-018775(JP,A)
【文献】特開2009-257074(JP,A)
【文献】特開2003-336241(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/00-17/20
E02B 3/04- 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
土木用又は建築用シートを、法面を有する被敷設面に敷設するシート敷設工程と、
敷設した前記土木用又は建築用シートを前記被敷設面に固定するシート固定工程とを含み、
前記シート固定工程は、柔軟性を有する部材をネット状に加工して構成された第1柔軟性ネット状部材を、前記土木用又は建築用シートの左右側端部上に当該左右側端部に沿って配置するとともに、前記被敷設面の法肩と接続する上端面に一端が固定された紐体によって吊るされた棒体に上端部が固定された、柔軟性を有する部材をネット状に加工して構成された第2柔軟性ネット状部材を、前記土木用又は建築用シートの下端部上に配置し、配置した前記第1柔軟性ネット状部材及び前記第2柔軟性ネット状部材の上に重しを載せることで前記土木用又は建築用シートを固定することを特徴とする土木用又は建築用シートの施工方法。
【請求項2】
土木用又は建築用シートを、法面を有する被敷設面に敷設するシート敷設工程と、
敷設した前記土木用又は建築用シートを前記被敷設面に固定するシート固定工程とを含み、
前記シート固定工程は、柔軟性を有する部材をネット状に加工して構成された第1柔軟性ネット状部材を、前記土木用又は建築用シートの左右側端部上に当該左右側端部に沿って配置し、前記第1柔軟性ネット状部材よりも質量が大きく且つ硬質な部材をネット状に加工して構成された平面視四角形状の、複数の硬質性ネット状部材を、前記土木用又は建築用シートの下端部上に当該下端部に沿って並べて配置し、配置した前記第1柔軟性ネット状部材及び前記複数の硬質性ネット状部材の上に重しを載せることで前記土木用又は建築用シートを固定することを特徴とする土木用又は建築用シートの施工方法。
【請求項3】
土木用又は建築用シートを、法面を有する被敷設面に敷設するシート敷設工程と、
敷設した前記土木用又は建築用シートを前記被敷設面に固定するシート固定工程とを含み、
前記シート固定工程は、柔軟性を有する部材をネット状に加工して構成された第1柔軟性ネット状部材を、前記土木用又は建築用シートの左右側端部上に当該左右側端部に沿って配置し、柔軟性を有する部材をネット状に加工して構成された第3柔軟性ネット状部材を、前記土木用又は建築用シートの下端部上に当該下端部に沿って配置し、配置した当該第3柔軟性ネット状部材の上に、前記第1柔軟性ネット状部材及び前記第3柔軟性ネット状部材よりも質量が大きく且つ硬質な部材をネット状に加工して構成された平面視で四角形状の、複数の硬質性ネット状部材を、前記下端部に沿って並べて配置し、配置した、前記第1柔軟性ネット状部材、前記第3柔軟性ネット状部材、及び、前記複数の硬質性ネット状部材の上に重しを載せることで前記土木用又は建築用シートを固定することを特徴とする土木用又は建築用シートの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮水シート、養生シート等の土木用又は建築用シートを施工する土木用又は建築用シートの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、池や川の周囲の傾斜面(法面)や底面、廃棄物処分場の傾斜面や底面などに遮水シートを敷設する際に、シート端部に土嚢や水嚢等の重しを載せることで遮水シートを仮固定して施工作業を行っている(例えば、特許文献1の〔従来の技術〕の欄を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-73856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の施工方法では、屋外での作業の場合、作業途中で強い風が吹くと、土嚢等の重しを載せただけではシート端部の重しの載っていない部分から吹き込んだ風によって遮水シートがめくれ上がり、場合によっては遮水シートが風で飛ばされてしまうといった問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、このような従来の技術の有する未解決の課題に着目してなされたものであって、施工途中における土木用又は建築用シートの強風によるめくれ上がり等を防ぐのに好適な土木用又は建築用シートの施工方法及び土木用又は建築用シートの固定方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔発明1〕 上記目的を達成するために、発明1の土木用又は建築用シートの施工方法は、土木用又は建築用シートを被敷設面に敷設するシート敷設工程と、敷設した前記土木用又は建築用シートを前記被敷設面に固定するシート固定工程とを含み、前記シート固定工程は、前記土木用又は建築用シートの端部上に当該端部に沿ってネット状部材を配置し、配置した当該ネット状部材の上に重しを載せることで前記土木用又は建築用シートを固定する。
ここで、土木用又は建築用シートは、例えば、遮水シート、防水シート、防草シート、植生シート、仮設養生シートなどが該当する。
【0007】
〔発明2〕 さらに、発明2の土木用又は建築用シートの施工方法は、発明1の土木用又は建築用シートの施工方法において、前記被敷設面は法面あり、前記シート固定工程は、前記土木用又は建築用シートの下端部上及び左右側端部上に、前記ネット状部材を配置する。
〔発明3〕 さらに、発明3の土木用又は建築用シートの施工方法は、発明2の土木用又は建築用シートの施工方法において、前記ネット状部材は、柔軟性を有する部材をネット状に加工して構成された柔軟性ネット状部材を含み、前記シート固定工程は、前記第1柔軟性ネット状部材を前記土木用又は建築用シートの左右側端部上に当該側端部に沿って配置するとともに、前記被敷設面の法肩と接続する上端面に一端が固定された紐体によって吊るされた棒体に上端部が固定された第2柔軟性ネット状部材を前記土木用又は建築用シートの下端部上に配置する。
【0008】
〔発明4〕 さらに、発明4の土木用又は建築用シートの施工方法は、発明2の土木用又は建築用シートの施工方法において、前記ネット状部材は、柔軟性を有する部材をネット状に加工して構成された柔軟性ネット状部材と、当該柔軟性ネット状部材よりも質量が大きく且つ硬質な部材をネット状に加工して構成された平面視四角形状の硬質性ネット状部材とを含み、前記シート固定工程は、第1柔軟性ネット状部材を前記土木用又は建築用シートの左右側端部上に当該側端部に沿って配置し、複数の前記硬質性ネット状部材を前記土木用又は建築用シートの下端部上に当該下端部に沿って並べて配置する。
【0009】
〔発明5〕 さらに、発明5の土木用又は建築用シートの施工方法は、発明2の土木用又は建築用シートの施工方法において、前記ネット状部材は、柔軟性を有する部材をネット状に加工して構成された柔軟性ネット状部材と、当該柔軟性ネット状部材よりも質量が大きく且つ硬質な部材から構成された平面視四角形状の硬質性部材とを含み、前記シート固定工程は、第1柔軟性ネット状部材を前記土木用又は建築用シートの左右側端部上に当該側端部に沿って配置し、第3柔軟性ネット状部材を前記土木用又は建築用シートの下端部上に当該下端部に沿って配置し、配置した当該第3柔軟性ネット状部材の上に、複数の前記硬質性部材を下端部に沿って並べて配置する。
ここで、硬質性部材は、硬質な部材を平面視四角形状の板状に加工して構成された板状硬質性部材、硬質な部材をネット状に加工して構成された平面視四角形状の硬質性ネット状部材(例えば、バリケードフェンス等)などが該当する。
【0010】
〔発明6〕 一方、上記目的を達成するために、発明6の土木用又は建築用シートの仮固定方法は、被敷設面に敷設された土木用又は建築用シートの端部に当該端部に沿ってネット状部材を配置し、配置した当該ネット状部材の上に重しを載せることで前記土木用又は建築用シートを固定する。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、発明1の土木用又は建築用シートの施工方法によれば、敷設した土木用又は建築用シートの端部上に端部に沿ってネット状部材を配置し、配置したその上から重しを載せて土木用又は建築用シートを固定するようにしたので、重しにより遮水シートの端部を直接固定する場合と比較して土木用又は建築用シートが風でまくれ上がったり飛ばされたりするのを防止することができる。特に、ネット状部材を土木用又は建築用シートの固定用部材として用いることで、網目から空気が通り抜けるので固定用部材自体が風でまくれ上がったり飛ばされたりし難く、より確実に風による影響を低減することができる。
【0012】
また、発明2の土木用又は建築用シートの施工方法によれば、法面に敷設された土木用又は建築用シートの下端部上と左右側端部上とをネット状部材によって固定するようにしたので、下方と左右からの風に対して、土木用又は建築用シートが風でまくれ上がったり飛ばされたりするのを防止することができる。
【0013】
また、発明3の土木用又は建築用シートの施工方法によれば、第1柔軟性ネット状部材を、土木用又は建築用シートの左右側端部上に配置し、被敷設面の法肩と接続する上端面に一端が固定された紐体によって吊るされた棒体に上端部が固定された第2柔軟性ネット状部材を土木用又は建築用シートの下端部上に配置するようにしたので、上端部を棒体に固定することで第2柔軟性ネット状部材を構成する柔軟性ネット状部材の形状を安定させることができるとともに、柔軟性ネット状部材を紐体によって吊るすようにしたので、下端部を覆う第2柔軟性ネット状部材が強風によってどこかに飛ばされるといったことを防ぐことができる。また、柔軟性を有する柔軟性ネット状部材を用いるようにしたので、第1柔軟性ネット状部材及び第2柔軟性ネット状部材を、土木用又は建築用シートの端部面の形状に沿って柔軟に配置することができる。
【0014】
また、発明4の土木用又は建築用シートの施工方法によれば、土木用又は建築用シートの下端部を固定するネット状部材として、柔軟性ネット状部材よりも大きい質量で且つ硬質な部材をネット状に加工して構成された硬質性ネット状部材を用いるようにしたので、この硬質性ネット状部材であれば、比較的大きな質量及び形態安定性を有しているので、紐体で吊るすことなく且つ棒体で形状を安定させることなく簡易に遮水シートの下端部上に配置することができる。
【0015】
また、発明5の土木用又は建築用シートの施工方法によれば、敷設された土木用又は建築用シートの下端部上に下端部に沿って第3柔軟性ネット状部材を配置し、配置したその上から複数の硬質性部材を並べて配置するようにしたので、遮水シートの下端部をより強固に固定することができる。また、硬質性部材を第3柔軟性ネット状部材の上から配置する構成としたので、第3柔軟性ネット状部材を、発明4の第1柔軟性ネット状部材と同様の構成として、紐体で吊るすことなく且つ棒体で形状を安定させることなく簡易に下端部上に配置することができる。
【0016】
また、発明6の土木用又は建築用シートの固定方法によれば、上記発明1と同等の作用及び効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】遮水シートの被敷設面1の一部に保護マット10を敷設した状態を示す模式図である。
図2】保護マット10上に遮水シート20を敷設した状態を示す模式図である。
図3】第1の実施の形態に係る遮水シート20の端部の仮固定状態を示す模式図である。
図4】(a)は、柔軟性ネット状部材30を示す図であり、(b)は、敷設した遮水シート20の左右側端部20L及び20R上に配置する第1柔軟性ネット状部材31の構成を示す図である。
図5】敷設した遮水シート20の上端部20Uの固定方法の一例及びロープ40の一端部の固定方法の一例を示す図である。
図6】敷設した遮水シート20の下端部20D上に配置する第2柔軟性ネット状部材33の構成を示す図である。
図7】第2の実施の形態に係る施工方法における仮固定の状況を示す図である。
図8】敷設した遮水シート20の下端部20D上に硬質性ネット状部材35を配置する際の配置構成を示す図である。
図9】第3の実施の形態に係る施工方法における仮固定の状況を示す図である。
図10】敷設した遮水シート20の下端部20Dに第3柔軟性ネット状部材37及び硬質性ネット状部材35を配置する際の配置構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔第1の実施の形態〕
以下、本発明の第1の実施の形態を説明する。図1乃至図6は、第1の実施の形態を示す図である。
図1は、遮水シートの被敷設面1の一部に保護マット10を敷設した状態を示す模式図であり、図2は、敷設した保護マット10上に遮水シート20を敷設した状態を示す模式図である。また、図3は、第1の実施の形態に係る遮水シート20の端部の仮固定状態を示す模式図である。
【0019】
まず、遮水シートの施工手順について大まかに説明する。
(1)図1に例示するように、盛り土や掘削などによって、3つの法面2A、2B及び2Cと、4つの平坦面3A、3B、3C及び3Dとを有する段差状の遮水シートの被敷設面1を形成する。法面2A、2B並びに2Cは、下端側が前方に迫り出す傾斜面となっている。また、平坦面3Aは法面2Aの法肩に、平坦面3Bは法面2Aの法尻及び法面2Bの法肩に、平坦面3Cは法面2Bの法尻及び法面2Cの法肩に、平坦面3Dは法面2Cの法尻にそれぞれ接続する平坦面である。また、図示省略するが、平坦面3A~3Dには、遮水シート20を固定するための溝(図5の溝62を参照)が形成されている。以下、区別する必要が無い場合に、法面2A~2Cを「法面2」と称し、平坦面3A~3Dを「平坦面3」と称する。
【0020】
(2)図1に例示するように、上記(1)で形成した法面2に保護マット10を敷設する。図1の例では、法面2Aの下端部から平坦面3B及び法面2Bを経て平坦面3Cに至る範囲に保護マット10を敷設している。ここで、保護マット10は、遮水シート20が被敷設面1にある突起物などで傷つかないように保護するものである。保護マット10としては、例えば、長繊維不織布や短繊維不織布が用いられ、その素材としては、例えば、ポリエステル、ポリプロピレンなどが用いられる。
【0021】
(3)図2に例示するように、上記(2)で敷設した保護マット10の上に遮水シート20を敷設する。具体的に、遮水シート20は、所定長さ及び幅に帯状に切り分けられた複数枚(図2の例では5枚)を、隣接するものの端部同士をオーバーラップさせて並べて配置する。このとき、オーバーラップさせた部分は熱溶着等によって接続する。また、敷設した遮水シート20の上端部20U側の平坦面3Bと重なる部分を平坦面3Bに設けた溝62(図5を参照)に埋め込み、上から土嚢等の重しを載せて仮固定する(図示略)。ここで、遮水シート20の素材としては、例えば、エチレン・プロピレンジエンモノマーなどの合成ゴム系の材料や、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンなどの合成樹脂系の材料や、アスファルト系の材料や、ベントナイト系の材料などが用いられる。
【0022】
(4)遮水シート20の施工途中において、強風などで敷設した遮水シート20がまくれ上がったり、飛ばされたりしないように、図3に例示するように、敷設した遮水シート20の左右側端部20L及び20R並びに下端部20Dを柔軟性ネット状部材30を用いて仮固定する。
【0023】
(5)ピン部材等の打ち込みや溝へのコンクリート70の打設(図5を参照)などによって、仮固定された遮水シート20を法面2及び平坦面3に固定する。以降は、適宜仮固定を解除しつつ、上記(2)の工程に戻って、被敷設面1の未敷設の領域に新たな保護マット10を敷設し、上記(3)の工程にて、既に敷設されている遮水シート20の端部に新たな遮水シート20を接続するとともに新たに敷設した保護マット10上に敷設する。その後、上記(4)の工程に移行する。このようにして、遮水シート20の敷設範囲を広げつつ、仮固定によって強風から護りながら、被敷設面1のうち必要な法面2及び平坦面3に保護マット10及び遮水シート20を敷設且つ固定する。
【0024】
次に、敷設した遮水シート20の左右側端部20L及び20R並びに下端部20Dを仮固定する方法について詳細に説明する。
まず、敷設した遮水シート20の左右側端部の仮固定方法について説明する。
図4(a)は、柔軟性ネット状部材30を示す図であり、図4(b)は、敷設した遮水シート20の左右側端部20L及び20R上に配置する第1柔軟性ネット状部材31の構成を示す図である。また、図5は、敷設した遮水シート20の上端部の固定方法の一例及びロープ40の一端部の固定方法の一例を示す図である。
【0025】
左右側端部20L及び20Rの仮固定は、図4(a)に示すように、柔軟性を有する材料をネット状に加工して構成された柔軟性ネット状部材30を用いて行う。具体的に、図3に示すように、柔軟性ネット状部材30を平面視で縦長矩形状に構成した第1柔軟性ネット状部材31を左右側端部20L及び20Rに沿ってそれぞれの上に配置する。更に、図3及び図4(b)に示すように、図5に示す平坦面3Bに打ち込まれた杭60に一端部が結び付けられたロープ40に括り付けられた複数の重し50を、左右側端部20L及び20Rをそれぞれ覆う第1柔軟性ネット状部材31の上に各側端部に沿って置くことで左右側端部20L及び20Rを仮固定する。
【0026】
ここで、柔軟性ネット状部材30は、例えば、耐衝撃性、耐摩耗性、耐候性、耐火性に優れた樹脂製のネット(例えば、安全ネット等に用いられるネット)から構成される。なお、柔軟性ネット状部材30は、樹脂製材料に限らず、繊維材料、合成繊維材料等から構成してもよい。特に、端部を仮固定する重りとしての役割から比較的質量の大きい材料から構成されたものを用いてもよい。
【0027】
また、重し50は、例えば、重し袋や重し水袋に土砂や水等を入れて構成できる土嚢や水嚢等から構成される。土嚢や水嚢であれば、重し袋や重し水袋を持参することで現地にて土砂や水を入れて土嚢や水嚢を容易に作成することができる。
また、平坦面3Bには、複数の杭60が左右方向に所定間隔で打ち込まれている。即ち、左右側端部20L及び20Rの仮固定には、複数の杭60のうち平坦面3Bの左右側端部20L及び20Rの配置された部分を含む法肩部分と接続する部分にそれぞれ打ち込まれた杭60を用いる。具体的に、この杭60に一端部が結びつけられたロープ40に複数の重し50を括りつけ、これら複数の重し50を第1柔軟性ネット状部材31上に載せる。
【0028】
なお、左右側端部20L及び20Rを仮固定するための第1柔軟性ネット状部材31は、例えば、各側端部の長さよりも短い所定長(例えば4m)のものを複数並べて配置する構成としてもよいし、各側端部の長さ以上の長さのものを単体で配置する構成としてもよい。
【0029】
次に、敷設した遮水シート20の下端部20Dの仮固定方法について説明する。
図6は、敷設した遮水シート20の下端部20D上に配置する第2柔軟性ネット状部材33の構成を示す図である。
下端部20Dの仮固定は、具体的に、図6に示すように、平面視で横長矩形状に構成した柔軟性ネット状部材30の上端部を棒状部材32に結びつける。更に、平坦面3Bに打ち込まれた複数の杭60のうち、左右側端部20L及び20Rの仮固定に用いられたものを除く各隣り合う2本の杭60に一端部がそれぞれ結びつけられたロープ40の他端部を、横長矩形状の柔軟性ネット状部材30が固定された棒状部材32の左右両端部にそれぞれ結びつけて第2柔軟性ネット状部材33を構成する。そして、第2柔軟性ネット状部材33を平坦面3Bから吊り下げて、この吊り下げられた状態の第2柔軟性ネット状部材33を、保護マット10上に敷設された遮水シート20の下端部20D上に配置する。更に、配置した第2柔軟性ネット状部材33の上に重し50を載せることで下端部20Dを仮固定する。
【0030】
ここで、棒状部材32は、例えば、金属性の棒又は単管から構成される。即ち、棒状部材32は、重しの役割も兼ねている。
なお、第2柔軟性ネット状部材33は、例えば、下端部20Dの幅よりも短い所定長(例えば4m)のものを複数並べて配置する構成としてもよいし、下端部の幅以上の長さのものを単体で配置する構成としてもよい。また、図6の例では、下端部20Dの幅よりも短い複数の第2柔軟性ネット状部材33を並べて配置しているが、この構成に限らず、隣り合う第2柔軟性ネット状部材33同士の側端部を重ねて(オーバーラップさせて)配置する構成としてもよい。この場合に、隣接する第2柔軟性ネット状部材33の棒状部材32同士が重ならないように、上下方向にずらして重ねるようにしてもよい。
【0031】
また、図3に示す例では、左右側端部20L及び20Rを覆う第1柔軟性ネット状部材31の上に第2柔軟性ネット状部材33を重ねて配置する構成としているが、第2柔軟性ネット状部材33の上に第1柔軟性ネット状部材31を配置する構成としてもよいし、両者を重ねない構成としてもよい。
【0032】
〔第1の実施の形態の効果〕
次に、第1の実施の形態の効果を説明する。
第1の実施の形態では、保護マット10上に敷設した遮水シート20の左右側端部20L及び20R上に第1柔軟性ネット状部材31を配置するとともに、下端部20D上に第2柔軟性ネット状部材33を配置し、配置したこれらの上から重し50を載せて仮固定するようにした。また、遮水シートの上端部20Uの平坦面3Bと重なる部分は、平坦面3Bに設けた溝62内に埋め込んで、土嚢等の重しにより仮固定(図示略)するようにした。
【0033】
このような構成であれば、重し50により遮水シート20の端部を直接仮固定する場合と比較して、遮水シート20が風でまくれ上がったり飛ばされたりするのを防止することができる。特に、ネット状の部材を用いて遮水シート20を仮固定することで、網目から空気が通り抜けるのでネット状部材自体が風でまくれ上がったり飛ばされたりし難く、より確実に風による影響を低減することができる。
【0034】
また、第1の実施の形態では、さらに、柔軟性を有する部材をネット状に加工して構成した柔軟性ネット状部材30の上端部を棒状部材32に結びつけ、さらに、この棒状部材32に一端が平坦面3Bに打ち込まれた杭60に結びつけられたロープ40の他端部を結びつけることで第2柔軟性ネット状部材33を構成した。加えて、この第2柔軟性ネット状部材33を平坦面3Bから吊るした状態で下端部20D上に配置し、配置したその上から重し50を載せることで遮水シート20の下端部20Dを仮固定するようにした。
【0035】
このような構成であれば、棒状部材32により第2柔軟性ネット状部材33のネット部分の形状を安定させることができるとともに、ロープ40で吊るすことで下端部20Dを覆う第2柔軟性ネット状部材33が強風によってどこかに飛ばされるといったことを防ぐことができる。また、柔軟性ネット状部材30を仮固定に用いるようにしたので、遮水シート20の端部の面形状に沿って柔軟に配置することができる。
【0036】
〔対応関係〕
第1の実施の形態において、遮水シート20が発明1乃至3の土木用シートに対応し、棒状部材32が発明3の棒体に対応し、ロープ40が発明3の紐体に対応している。
〔第2の実施の形態〕
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。図7及び図8は、第2の実施の形態を示す図である。
【0037】
第2の実施の形態は、下端部20Dの仮固定方法が、上記第1の実施の形態の仮固定方法と異なる。以下、上記第1の実施の形態と異なる部分についてのみ説明し、重複する部分については説明を省略する。
図7は、第2の実施の形態に係る遮水シート20の施工方法における仮固定の状況を示す図であり、図8は、敷設した遮水シート20の下端部20D上に硬質性ネット状部材35を配置する際の配置構成を示す図である。
【0038】
第2の実施の形態では、図7に示すように、敷設した遮水シート20の下端部20D上に、図8に示すように、平面視矩形状の複数の硬質性ネット状部材35を並べて配置し、配置したその上に重し50を置くことで仮固定する構成となっている。図7及び図8に示す例では、下端部20D上に配置した各硬質性ネット状部材35の上端側及び下端側に2つずつ重し50を置いて固定している。
【0039】
ここで、硬質性ネット状部材35は、柔軟性ネット状部材30よりも質量が大きく且つ硬質の部材から構成されており、例えば、バリケードなどに用いられる金属製の全網フェンスなどから構成されている。
また、硬質性ネット状部材35は、金属製で質量が大きいため第2柔軟性ネット状部材33と異なり、棒状部材32を付加したりロープ40で吊るしたりすることなく配置している。
【0040】
また、左右側端部20L及び20Rの仮固定については、上記第1の実施の形態と同様となる。また、図7に示す例では、左右側端部20L及び20Rを仮固定する第1柔軟性ネット状部材31の下端部20Dと重なる部分の上に、硬質性ネット状部材35を重ねて配置しているが、この構成に限らず、重ねて配置しない構成としてもよい。
【0041】
〔第2の実施の形態の効果〕
次に、第2の実施の形態の効果を説明する。
第2の実施の形態では、遮水シート20の下端部20Dを仮固定するネット状部材として、柔軟性ネット状部材30よりも大きい質量で且つ硬質な部材(金属)から構成された硬質性ネット状部材35を用いるようにした。
【0042】
このような構成であれば、硬質性ネット状部材35は、形状安定性に優れ且つ比較的大きな質量を有するので、柔軟性ネット状部材30よりも風による影響を受けにくく、ロープ40で吊るすことなく且つ棒状部材32で形状を安定させることなく簡易に下端部20D上に配置することができる。
【0043】
〔対応関係〕
第2の実施の形態において、遮水シート20が発明4の土木用シートに対応している。
〔第3の実施の形態〕
次に、本発明の第3の実施の形態を説明する。図9及び図10は、第3の実施の形態を示す図である。
第3の実施の形態は、下端部20Dの仮固定方法が、上記第1及び第2の実施の形態の仮固定方法と異なる。
【0044】
以下、上記第1及び第2の実施の形態と異なる部分についてのみ説明し、重複する部分については説明を省略する。
図9は、第3の実施の形態に係る施工方法における仮固定の状況を示す図であり、図10は、敷設した遮水シート20の下端部20Dに第3柔軟性ネット状部材37及び硬質性ネット状部材35を配置する際の配置構成を示す図である。
【0045】
第3の実施の形態では、図9に示すように、保護マット10上に敷設した遮水シート20の下端部20D上に、図10に示すように、柔軟性ネット状部材30を平面視で横長矩形状に構成した複数の第3柔軟性ネット状部材37を、下端部20Dに沿って並べて配置する。更に、配置された第3柔軟性ネット状部材37の各隣り合うものの間の隙間上に重なるように硬質性ネット状部材35をそれぞれ配置する。そして、配置された第3柔軟性ネット状部材37及び硬質性ネット状部材35上に重し50を置くことで下端部20Dを仮固定する構成となっている。
【0046】
なお、第3柔軟性ネット状部材37は、左右側端部を左右方向に他の柔軟性ネット状部材30と重ね合わせて(オーバーラップさせて)配置する構成としてもよい。この場合に、硬質性ネット状部材35は、例えば、重なり合う部分の上に重なるように配置する。
〔第3の実施の形態の効果〕
次に、第3の実施の形態の効果を説明する。
【0047】
第3の実施の形態では、敷設された遮水シート20の下端部20D上に下端部20Dに沿って第3柔軟性ネット状部材37を配置し、配置したその上から所定間隔で複数の硬質性ネット状部材35を配置するようにした。
このような構成であれば、敷設した遮水シート20の下端部20Dをより強固に仮固定することができるとともに、硬質性ネット状部材35が重しの役割を果たすので、第3柔軟性ネット状部材37を、ロープ40で吊るすことなく且つ棒状部材32で形状を安定させることなく簡易に配置することができる。
【0048】
〔対応関係〕
第2の実施の形態において、遮水シート20が発明5の土木用シートに対応し、硬質性ネット状部材35が発明5の硬質性部材に対応している。
〔変形例〕
上記第2及び第3の実施の形態においては、硬質性ネット状部材35を杭60に一端部を固定したロープ40にて吊るさない構成としたが、この構成に限らず、吊るす構成としてもよい。この場合は、ロープ40の他端部を、棒状部材32を介さずに硬質性ネット状部材35に直接結びつける構成とすることができる。
【0049】
また、上記第3の実施の形態及びその変形例において、第3柔軟性ネット状部材37に代えて、例えば、上記第1の実施の形態の第2柔軟性ネット状部材33を採用する構成としてもよい。この場合に、第2柔軟性ネット状部材33の配置の仕方に応じて、隣接する第2柔軟性ネット状部材33の間に隙間がある場合は隙間に重なるように、隣接する第2柔軟性ネット状部材33の側端部同士が重なっている場合は重なっている部分の上に重なるように硬質性ネット状部材35を配置する構成としてもよい。また、第2柔軟性ネット状部材33を用いる場合は、配置された第2柔軟性ネット状部材33の棒状部材32と重ならないように硬質性ネット状部材35を配置する。
【0050】
また、上記第3の実施の形態及びその変形例においては、硬質性の部材をネット状に加工して構成された平面視矩形状の硬質性ネット状部材35を下端部20Dの仮固定に用いる構成としたが、この構成に限らない。例えば、ネット状に加工していない、例えば平面視四角形状の板状の硬質性部材を用いる構成としてもよい。また、板状とした場合も、十分な質量が得られる範囲で板面を所定形状に切り欠いて肉抜きをした構成としてもよい。また、板状に限らず立方体形状など他の形状に構成してもよい。
【0051】
また、上記実施の形態及びその変形例において、各仮固定方法を、遮水シート20を施工する土木工事において適用する場合を例に挙げて説明したが、この構成に限らず、遮水シート以外の土木用シートの施工に適用する構成としてもよいし、仮固定とせずに本固定をする方法として用いてもよい。
【0052】
また、上記実施の形態及びその変形例において、遮水シート20を用いた土木工事を例に挙げて説明したが、土木工事に限らず、遮水シート20を用いた建築工事に本発明を適用してもよいし、遮水シート20に限らず、建築工事に用いられる仮設養生シートなどの他の建築用シートを用いた建築工事に適用してもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…被敷設面、 2A~2C…法面、 3A~3D…平坦面、 10…保護マット、 20…遮水シート、 20U…上端部、 20L…左側端部、 20R…右側端部、 20D…下端部、 30…柔軟性ネット状部材、 31…第1柔軟性ネット状部材、 32…棒状部材、 33…第2柔軟性ネット状部材、 35…硬質性ネット状部材、 37…第3柔軟性ネット状部材、 40…ロープ、 60…杭、 62…溝、 70…コンクリート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10