(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-20
(45)【発行日】2023-09-28
(54)【発明の名称】装着型トレーニング器具
(51)【国際特許分類】
A63B 21/045 20060101AFI20230921BHJP
A63B 23/04 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
A63B21/045
A63B23/04 Z
(21)【出願番号】P 2021544824
(86)(22)【出願日】2020-07-30
(86)【国際出願番号】 EP2020071467
(87)【国際公開番号】W WO2021073790
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2021-11-05
(32)【優先日】2019-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521338950
【氏名又は名称】トーマス クロボック
【氏名又は名称原語表記】Thomas Chrobok
【住所又は居所原語表記】Barntruper Str.231,32758 Detmold,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】トーマス クロボック
【審査官】佐々木 祐
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-502906(JP,A)
【文献】登録実用新案第3045412(JP,U)
【文献】実開平05-041566(JP,U)
【文献】米国特許第05743837(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 1/00 - 26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間(1)の脚部および胴部の筋肉を鍛えるための装着型トレーニング器具(10)であって、
前記人間(1)の背中(3)に当てがうために、臀部(4)まで延在する2つの側方区間(14)を有する背中支持部(12)が設けられており、
一方の脚部(6)の大腿部(5)への取り付けのためにそれぞれ設計された2つのレッグブラケット(20)が設けられており、
前記レッグブラケット(20)は、前記背中支持部(12)の前記側方区間(14)の一方にそれぞれ接続されている、装着型トレーニング器具(10)において、
前記背中支持部(12)への前記レッグブラケット(20)の前記接続は、ばね継手手段(30)を介してそれぞれ形成されていることと、
前記ばね継手手段(30)は、前記臀部(4)に配置され、胴部(2)と大腿部(5)との間にばね力を生じさせるように設計されているので、胴部(2)および大腿部(5)が互いに対して前方に押され、当てがわれた状態において、前記トレーニング器具(10)は、前記大腿部(5)と前記背中(3)との間で支えられるので、保持ストラップによる追加の固定措置なしに、装着可能であることと、
前記レッグブラケット(20)、前記側方区間(14)、および/または前記背中支持部(12)は、ワイヤ(26)またはチューブで形成されることと、
を特徴とする装着型トレーニング器具。
【請求項2】
前記レッグブラケット(20)の少なくとも一部と前記背中支持部(12)のそれぞれの隣接側方区間(14)とは、弾性引張ワイヤ製の前記ばね継手手段(30)によって曲げ合されることと、
前記ばね継手手段(30)は少なくとも1つのワイヤループ(28)を有することと、
を特徴とする、請求項
1に記載の装着型トレーニング器具。
【請求項3】
前記ばね継手手段(30)は、調節可能な引張ばねを有することを特徴とする、請求項
1に記載の装着型トレーニング器具。
【請求項4】
前記ばね継手手段(30)は、前記レッグブラケット(20)の一方と前記背中支持部(12)の前記側方区間(14)の一方とから取り外し可能であることを特徴とする、請求項1~
3の何れか一項に記載の装着型トレーニング器具。
【請求項5】
前記トレーニング器具(10)に少なくとも部分的にクッション(27)が備え付けられることを特徴とする、請求項1~
4の何れか一項に記載の装着型トレーニング器具。
【請求項6】
前記レッグブラケット(20)、前記側方区間(14)、および/または前記背中支持部(12)に調節手段が配置されることを特徴とする、請求項1~
5の何れか一項に記載の装着型トレーニング器具。
【請求項7】
前記調節手段は、それぞれの長さの調節が可能な複数の入れ子要素を有することを特徴とする、請求項
6に記載の装着型トレーニング器具。
【請求項8】
前記レッグブラケット(20)の各々は、前記大腿部(5)に沿って延在する縦方向区間(22)と、前記レッグブラケット(20)を前記大腿部(5)に保持する保持区間(24)とを有することを特徴とする、請求項1~
7の何れか一項に記載の装着型トレーニング器具。
【請求項9】
前記保持区間(24)は、前記大腿部(5)の周囲に少なくとも部分的に係合する保持ループ(25)を有することを特徴とする、請求項
8に記載の装着型トレーニング器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分に記載の人間の脚部および胴部の筋肉を鍛えるための装着型トレーニング器具に関する。
【背景技術】
【0002】
フィットネス部門においては、脚部および胴部の筋肉組織、特に臀部の筋肉組織、より具体的には大臀筋、を鍛えることができる種々のトレーニング器具が公知である。
【0003】
2つのレッグブラケットと、2つのばね継手手段と、2つの側方区間と、1つの背中支持部とを有する一般的なトレーニング器具が特許文献1から明らかである。この器具は、複数の部品と複数の引張ストラップとから製作される。
【0004】
臀部の筋肉組織および脊柱起立筋のための据置型トレーニング器具が例えば特許文献2から明らかである。据置型トレーニング器具は、相当する広さの空間と表面とを必要とし、主に所謂フィットネスセンターで利用されている。このような器具では、例えば自宅エリアでの、融通性のある使用はほぼ不可能である。
【0005】
特許文献3から人体のための装着型トレーニング器具が公知である。これは、複数の引張ストラップと複数のループとを有するストラップシステムを有する。ただし、このようなストラップシステムは、その取り付けが複雑であり、加えて、限られた力しか発生できない。不正確に当てがわれると、誤った歪みの危険性、更には身体の損傷さえ、発生し得る。
【0006】
背中の筋肉組織を鍛えるための更なる装着型トレーニング器具が特許文献4、特許文献5、特許文献6、または特許文献7から明らかである。これらも、複数のストラップによって人体に固定される。これらの器具でも、ストラップの設定および固定が厄介であり、誤った歪みの危険性を伴うという問題がある。
【0007】
特許文献8は、側方レバーを介して互いに接続された3本の平行な剛性バーで構成されたトレーニング器具を開示している。中心のバーは、ばね引張手段を有する。
【0008】
特許文献9および特許文献10は、身体の運動を支援して容易にするために役立つ骨格様エグゾスケルトンを開示している。これらエグゾスケルトンは、複数の引張ストラップを介して両腕部と両脚部とに固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許第5,743,837号
【文献】独国実用新案第20 2004 001 302(U1)号
【文献】独国特許出願公開第20 2016 114 349(A1)号
【文献】独国特許第102 17 368(C1)号
【文献】米国特許出願公開第2017/0274243(A1)号
【文献】ソビエト連邦特許第820 855(A1)号
【文献】独国特許出願公開第25 36 560(A1)号
【文献】米国特許出願公開第2015/0360071(A1)号
【文献】米国特許出願公開第2017/0014296(A1)号
【文献】独国実用新案第20 2009 000 076(U1)号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、コンパクトな構成で操作し易い装着型トレーニング器具を提供するという目的に基づく。
【0011】
本発明によると、この目的は、請求項1の特徴を有する装着型トレーニング器具によって達成される。本発明の複数の好適な実施形態が従属請求項に記載されている。
【0012】
本発明によるトレーニング器具においては、人間の背中に当てがうために、臀部まで延在する2つの側方区間を有する背中支持部が設けられることと、それぞれ一方の脚部の大腿部への取り付け用に設計された2つのレッグブラケットが設けられることと、臀部に配置されて胴部と大腿部との間にばね力を発生させて胴部と大腿部とが互いに対して前方に押されるように設計されたばね継手手段を介して、各レッグブラケットが背中支持部の一方の側方区間に接続されることと、が意図されている。
【0013】
本発明の根本思想は、日々の活動中でも人々が装着でき、ブラケット構成による単純な構造を有するコンパクトなトレーニング器具を提供するという事実にある。本発明によるトレーニング器具は、背中支持部と、2つの側方ばね継手手段を介して背中支持部に接続された2つのレッグブラケットと、をほぼ備える。これらのばね継手手段は、股関節の領域に配置され、胴部と大腿部との間に引張力を生じさせる。
【0014】
人間が直立しているとき、この引張力は、トレーニング中の人間の背中への圧縮力とこの人間の両大腿部への圧縮力とを引き起こす。この引張またはばね力は、人間の胴部または上半身が前方に押されるように、生じる。この力に逆らうために、人間は直立姿勢において反力を加える必要がある。これにより、胴部の筋肉組織、特に背中の筋肉、大腿部の筋肉、および臀部の筋肉、特に大臀筋、が鍛えられる。
【0015】
本発明によるトレーニング器具では、特に永続的な静的力を人体に加えることができるので、トレーニングが関節に対して特に優しく、本トレーニング器具は、日々の活動中、特に立位時または歩行中に、何の問題もなく人間が装着できる。臀部の筋肉組織のための特定のトレーニング効果に加え、胴部の筋肉組織全体を鍛えることによって、上半身の姿勢も改善される。
【0016】
本発明の別の展開によると、レッグブラケット、側方区間、および/または背中支持部がワイヤまたはチューブで形成されていると特に有利である。特に、一方の大腿部から背中を横切ってもう一方の大腿部まで延在するバー材料からトレーニング器具全体をほぼ一体に形成可能である。基本的に、本トレーニング器具は、いくつかの構成要素からのマルチピース構成にすることも可能である。ワイヤまたはチューブは、円形の、または角のある、横断面を有することができ、鋼鉄、特に軽金属、好ましくはアルミニウム合金、などの金属から製造可能である。基本的に、本トレーニング器具は、他の材料、例えば、プラスチック、ガラス繊維強化プラスチック、アクリルガラス、または炭素材、製の複数の構成要素で製造することも可能である。
【0017】
本トレーニング器具のブラケット様構造の故に、人間に容易に当てがうことができる。ばね継手手段によってばね力が付与されるので、本トレーニング器具は、当てがわれた状態において、大腿部と背中との間で支えられることによって配置可能であるので、保持ストラップによる追加の固定措置がなくても、装着可能である。
【0018】
本発明の別の展開によると、レッグブラケットの少なくとも一部と背中支持部のそれぞれの隣接側方区間とが弾性引張ワイヤ製のばね継手手段によって曲げ合わされることで、およびばね継手手段が少なくとも1つのワイヤループを有することで、特にコンパクトな構成が実現される。ばね継手手段は、引張ワイヤで形成されたいくつかのワイヤループによっても形成可能である。したがって、特に、衣服の上に、または下にも、装着可能な単純なブラケット様構成の実現が可能である。
【0019】
本発明の別の展開によると、ばね継手手段が調節可能であることで、特に良好な適合性が実現される。このために、ばね継手手段は、円筒形の蓋付き容器様のケース(独:dosenartigen Gehaeuse、英:box-like housing)を設けた設計が可能である。このケース内で、例えば調節レバーによって、一方向への回転によって引張力が強められ、逆方向への回転によって引張力が緩められることで、特に螺旋引張ばねの初期状態を変化させることができる。ばね継手手段は、調節可能なゴム製引張要素、または空気圧または液圧で働く引張要素、を有することができる。これらは、隣接するチューブ状レッグブラケットのチューブ空洞内に、または側方区間に、少なくとも部分的に配置可能である。これにより、ばね継手手段を人間のそれぞれのトレーニングコンディションに適合化させることができる。
【0020】
本発明の別の展開によると、2つのブラケットの一方と背中支持部の側方区間の一方とにばね継手手段が解放可能に接続されると有利である。これは、製造可能性を簡素化し、それぞれ異なる引張力またはばね力を有するさまざまな変形例の製造を可能にする。
【0021】
本発明の一実施形態変形例によると、トレーニング器具に少なくとも部分的にクッションが備え付けられることで、良好な装着快適性の実現が可能である。ここで、クッションは、レッグブラケット、側方区間、および/または背中支持部の領域に少なくとも設けられたゴムまたは発泡プラスチック製の被覆とすることができる。背中支持部自体は、成形プラスチックで形成可能である。レッグブラケット、側方区間、および背中支持部は、ほぼ寸法安定可能である。この場合、ばね継手手段は、引張力を生じさせながら、レッグブラケットと背中支持部との間の関節様調節を可能にする。
【0022】
レッグブラケット、側方区間、および/または背中支持部に調節手段が配置されることで、装着快適性の更なる向上を達成できる。これら調節手段は、トレーニングするそれぞれの人間の身体に個々の構成要素を適合させるために、所定の範囲までの寸法変化を可能にする。
【0023】
これと共に、調節手段はそれぞれの長さの調節が可能な複数の入れ子要素を有すると特に好都合である。このような入れ子要素は、特に、レッグブラケットの縦方向区間に、または背中支持部の側方区間に、取り付け可能である。ここで、これら入れ子要素は、互いに対する入れ子位置をずらすことができる。この場合、所望の入れ子位置に係止するための調節ねじまたは差込み式継手が少なくとも1つ設けられる。
【0024】
本発明の別の好適な実施形態は、各レッグブラケットが大腿部に沿って延在する縦方向区間と、レッグブラケットを大腿部に保持するための保持区間とを有することにある。この保持区間は、レッグブラケットを大腿部に固定するためのストラップを基本的に1つまたはいくつか有する。
【0025】
本発明の別の展開によると、大腿部の周囲に少なくとも部分的に係合する保持ループを保持区間が有すると特に好都合である。これにより、保持ループをレッグブラケットの自由端に配置でき、大腿部の周囲に少なくとも部分的に係合して大腿部の裏側に延びるように設計できる。ここで、保持ループは、レッグブラケットのワイヤまたはチューブでループ様に形成される、より具体的には曲げられる。その結果、脚部の筋肉と背中の筋肉との間に、全体として高い引張力を付与できる。これにより、特に、臀部の筋肉に優れたトレーニング効果がもたらされる。
【0026】
以下においては、図面に模式的に示されている好適な実施形態によって、本発明を更に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明によるトレーニング器具を装着した人間の側面図である。
【
図2】
図1のトレーニング器具を装着した人間の背面図である。
【
図3】本発明によるトレーニング器具の更なる実施形態である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1および
図2によると、トレーニングする人間1によって当てがわれて装着されている装着型トレーニング器具10が示されている。トレーニング器具10は、人間1の胴部2の背中3に当てられる平らな背中支持部12を有する。背中支持部12の側方では、2つの側方区間14が人間1の臀部
4まで延在する。
【0029】
更に、装着型トレーニング器具10は、2つのレッグブラケット20を有する。各レッグブラケット20は、人間1の脚部6の大腿部5に配置される。ここで、2つのレッグブラケット20は、ばね継手手段30を介して、側方区間14にそれぞれ接続されている。
図1および
図2による図示の実施形態において、装着型トレーニング器具10はワイヤ26製の単純な構成を有し、ばね継手手段30は単純なワイヤループ28によって形成されている。少なくともレッグブラケット20のワイヤ26に、例えばゴムまたは発泡プラスチック材、より具体的にはチューブ状発泡プラスチック、製のクッション27を備え付けることができる。
【0030】
各レッグブラケット20は、縦方向区間22を有する。縦方向区間22は、ほぼ直線状に延び、ばね継手手段30から大腿部5の下方領域まで、それぞれの大腿部5の正面側に延在する。レッグブラケット20は、それぞれの下方領域に、保持区間24を有する。保持区間24は縦方向区間22に隣接し、特に弧状保持ループ25を備える。弧状保持ループ25は、大腿部5の周囲に係合する、または、それぞれの大腿部5の正面側から大腿部の内側に沿って大腿部5を取り巻く。したがって、各保持区間24は、人間の大腿部5の裏側、膝窩部7の僅か上方で終端する。
【0031】
トレーニング器具10の装着前の休止状態において、背中支持部12は、レッグブラケット20と背中支持部12との間の事前設定された特定の予引張角度で、レッグブラケット20に向かって前方に曲がっている。トレーニング器具10を当てがうために、この予引張角度は曲げ広げられる。これにより、背中支持部12は、特定のばね力または押圧力で背中3に取り付けられる。同時に、レッグブラケット20はそれぞれの大腿部5の周囲に当てがわれるので、それぞれの押圧力の故に、背中支持部12およびレッグブラケット20は、追加の保持手段なしに、圧力嵌めで人間1にそれぞれ保持される。
【0032】
図1および
図2に示されている直立姿勢を取るために、人間1は、ばね継手手段30によって加えられた引張力に対して反力を加える必要がある。この反力を加えることで、人間1の筋肉組織は、胴部
2、大腿部5、特に臀
部、において鍛えられて強化される。
【0033】
本発明によるトレーニング器具10は、その単純な構成の故に、人間1が、日々の活動中においても、衣服の上または外衣の下に容易に装着可能である。
【0034】
図1および
図2による単純なワイヤ様構成に加え、本発明の更なる実施形態が
図3に示されている。
図3による装着型トレーニング器具10の場合、背中支持部12とこれに隣接する側方区間14とは、チューブで形成されている。同様に、レッグブラケット20も相応のチューブで形成されている。
【0035】
側方区間14を有する背中支持部12とレッグブラケット20とは、ばね継手手段30を介して、互いに接続されている。この場合、ばね継手手段30は、側方区間14とレッグブラケット20とに解放可能に固定、特に螺着、されている。
【0036】
図3による図示の実施形態において、ばね継手手段30は円筒形の蓋付き容器様のケース32を有する。ケース32内に実際の引張ばね手段が配置されている。詳細には図示されていない調節手段、例えば調節レバーまたは回転式引張蓋、によって、側方区間14を有する背中支持部12とレッグブラケット20との間のばね力および/または予引張角度を調節できる。これにより、人間によって加えられる力を当人のそれぞれのトレーニングコンディションに適合させることができる。
【0037】
図示の実施形態において、レッグブラケット20は、傘の柄と同様に、縦方向区間22と保持区間24とを設けてそれぞれ設計されており、保持区間24は、ほぼ半円形の弧状保持ループ25として形成されている。装着快適性を高めるために、側方区間14を有する背中支持部12とレッグブラケット20とにクッションを備え付けることもできる。