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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-20
(45)【発行日】2023-09-28
(54)【発明の名称】靴
(51)【国際特許分類】
   A43B 23/02 20060101AFI20230921BHJP
【FI】
A43B23/02 104
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021548134
(86)(22)【出願日】2019-09-27
(86)【国際出願番号】 JP2019038265
(87)【国際公開番号】W WO2021059503
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000000310
【氏名又は名称】株式会社アシックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】立野 謙太
(72)【発明者】
【氏名】藤田 久範
(72)【発明者】
【氏名】矢野 晴嗣
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06128835(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 23/00-23/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソールと、
前記ソールの上方に設けられ、履き口を有するアッパーと、
前記アッパーと前記ソールとの境界部の前記履き口よりも前方に固定される第1基端部を有し、当該第1基端部から前記アッパーの前記履き口の後側まで斜め上向きに延びる第1バンドと、
前記境界部に固定される第2基端部を有し、当該第2基端部から前記履き口の前方に延び、前記第1バンドと交差する部分で当該第1バンドを前記アッパーに当接させる第2バンドと、
前記アッパーを締付けるために前記第2バンドに締付力を付与する締付部と、
を備え
前記第1バンドは、前記アッパーに固定されていないことを特徴とする靴。
【請求項2】
前記第2バンドの先端部に、前記締付部と係合するための係合部が設けられることを特徴とする請求項1に記載の靴。
【請求項3】
前記第2バンドは、前記第1バンドと複数の交差位置で交差し、前記第1バンドと前記アッパーとの間を通過する部分と、前記第1バンドの前記アッパーとは反対側を通過する部分と、を有することを特徴とする請求項1または2に記載の靴。
【請求項4】
前記複数の交差位置のうち最も前方の交差位置において、前記第2バンドは、前記第1バンドの前記アッパーとは反対側を通過することを特徴とする請求項3に記載の靴。
【請求項5】
前記第2基端部は、前後方向において、つま先から本靴の全長の35%以上で90%以下の範囲内において前記境界部に固定される部分を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の靴。
【請求項6】
前記第2バンドを複数備え、前記複数の第2バンドは、当該バンドの基端側、先端側またはそれらの中間で互いに接続されることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の靴。
【請求項7】
前記第2バンドは、当該バンドの基端側、先端側またはそれらの中間で複数に分岐することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の靴。
【請求項8】
前記第1バンドは、当該バンドの基端側、先端側またはそれらの中間で複数に分岐することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の靴。
【請求項9】
前記第1バンドは、前記アッパーの踵部の最後部の上側に設けられた第1バンド接触領域に接触し、
前記第1バンド接触領域は、周囲よりも強化された補強構造が設けられることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の靴。
【請求項10】
前記第1基端部よりも後方において前記境界部に固定される第3基端部を有し、当該第3基端部から延びる第3バンドを備え、
前記第3バンドは、前記第1バンド接触領域で前記第1バンドを覆うことを特徴とする請求項9に記載の靴。
【請求項11】
前記第3バンドは、前記第2バンドと交差して当該第2バンドを前記アッパーに当接させることを特徴とする請求項10に記載の靴。
【請求項12】
前記第1バンドと前記第2バンドの一方は、所定幅を有する面状の部材で構成される部分を含み、前記第1バンドと前記第2バンドの他方は、前記所定幅よりも細い紐状または糸状の部材で構成される部分を含むことを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の靴。
【請求項13】
前記第1バンドまたは前記第2バンドは、前記アッパーの素材より伸縮性が低い素材で形成されていることを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載の靴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴に関する。
【背景技術】
【0002】
アッパーを締め付け可能な締付材を有する履物が知られている。例えば、特許文献1には、アッパーを締付ける帯状の締付材を有する履物が記載されている。この履物では、ソールに幅方向に延びる溝または貫通孔が形成されている。帯状の締付材は、この貫通孔等と足の側面に沿って巻かれ、足の甲において上下斜めに折り返されて係合部を形成している。係合部はシューレースによって締めつけされる。締付材は、このように装着されることによってソールの上面を足の裏面に押し付ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平08-131201号公報
【文献】実用新案登録第3038156号公報
【文献】特開2017-94125号公報
【文献】特表2016-507296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、アッパーを締付ける締付材を有する靴のフィット性に関して以下の認識を得た。幅方向の高い負荷がかかった際のサポート性を確保する観点から、高負荷時のソールに対する足位置の変化は小さいことが望ましい。しかし、特許文献1に記載の履物では、アッパーを締付ける締付材がソールの溝内を移動できるため、高負荷時に締付材が移動してソールに対する足位置が変化しやすい。
【0005】
足位置の変化を抑えるために締付材を強く締めると、履き口の前側で締付力が過度に大きくなり履き心地が悪くなる。また、前側の締付力が大きくなると、履き口の後ろ側でフィット性が低下して前後バランスが崩れる。これらから、本発明者らは、特許文献1に記載の履物には、高負荷がかかったときのフィット性を確保する観点で改善すべき余地があることを認識した。
【0006】
本発明は、こうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、フィット性の前後バランスに優れた靴を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の靴は、ソールと、ソールの上方に設けられ、履き口を有するアッパーと、アッパーとソールとの境界部の履き口よりも前方に固定される第1基端部を有し、当該第1基端部からアッパーの履き口の後側まで斜め上向きに延びる第1バンドと、境界部に固定される第2基端部を有し、当該第2基端部から履き口の前方に延び、第1バンドと交差する部分で当該第1バンドをアッパーに当接させる第2バンドと、アッパーを締付けるために第2バンドに締付力を付与する締付部と、を備える。
【0008】
なお、以上の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、装置、プログラム、プログラムを記録した一時的なまたは一時的でない記憶媒体、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、フィット性の前後バランスに優れた靴を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係る靴を概略的に示す側面図である。
図2図1の靴を概略的に示す平面図である。
図3図1の靴を概略的に示す別の側面図である。
図4】第1実施形態に係る靴におけるバンドの変形例を示す側面図である。
図5】第1実施形態に係る靴におけるバンドの変形例を示す側面図である。
図6】第1実施形態に係る靴におけるバンドの変形例を示す側面図である。
図7】第1実施形態に係る靴におけるバンドの変形例を示す側面図である。
図8】第1実施形態に係る靴におけるバンドの変形例を示す側面図である。
図9】第1実施形態に係る靴におけるバンドの変形例を示す側面図である。
図10】第1実施形態に係る靴におけるバンドの変形例を示す側面図である。
図11】第1実施形態に係る靴におけるバンドの変形例を示す側面図である。
図12】第1実施形態に係る靴におけるバンドの変形例を示す側面図である。
図13】第1実施形態に係る靴におけるバンドの変形例を示す側面図である。
図14】第1実施形態に係る靴におけるバンドの変形例を示す側面図である。
図15】第1実施形態に係る靴におけるバンドの変形例を示す側面図である。
図16】第1実施形態に係る靴におけるバンドの変形例を示す側面図である。
図17】第1実施形態に係る靴におけるバンドの変形例を示す側面図である。
図18】第1実施形態に係る靴におけるバンドの変形例を示す側面図である。
図19】第1実施形態に係る靴におけるバンドの変形例を示す側面図である。
図20】第1実施形態に係る靴におけるバンドの変形例を示す側面図である。
図21】第1実施形態に係る靴におけるバンドの変形例を示す側面図である。
図22】第1実施形態に係る靴におけるバンドの変形例を示す側面図である。
図23】第1実施形態に係る靴におけるバンドの変形例を示す側面図である。
図24】第1実施形態に係る靴におけるバンドの変形例を示す側面図である。
図25】第1実施形態に係る靴におけるバンドの変形例を示す側面図である。
図26】第1実施形態に係る靴におけるバンドの変形例を示す側面図である。
図27】第1実施形態に係る靴におけるバンドの変形例を示す側面図である。
図28】第1実施形態に係る靴におけるバンドの変形例を示す側面図である。
図29】第1実施形態に係る靴におけるバンドの変形例を示す側面図である。
図30】第2実施形態に係る靴を概略的に示す側面図である。
図31】第3実施形態に係る靴を概略的に示す側面図である。
図32図31の靴を概略的に示す平面図である。
図33図31の靴を概略的に示す別の側面図である。
図34図31の靴を概略的に示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を好適な実施形態をもとに各図面を参照しながら説明する。実施形態、変形例では、同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0012】
また、第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。
【0013】
[第1実施形態]
以下、図面を参照して、本発明の第1実施形態に係る靴100の構成を説明する。図1は、第1実施形態に係る靴100を概略的に示す側面図である。この図は、靴100を外足側から視た図である。図1を含め、以下の図では、特に説明しない限り左足用の靴を示すが、本明細書の説明は、右足用の靴にも同様に適用される。図2は、靴100を概略的に示す平面図である。図3は、靴100を概略的に示す内足側から見た側面図である。
【0014】
本実施形態の靴100は、例えば歩行や走行用の靴、テニスやバスケットボールなどのスポーツ用のシューズとして使用できる。靴100は、ソール10と、ソール10の上方に設けられ、履き口20bを有するアッパー20とを備える。ソール10は、地面に接するための部分である。ソール10は、アウトソール、ミッドソール、インソールなど複数の部材で構成されてもよいし、単独の素材で構成されてもよい。アッパー20は、ソール10の上方に接着等の手段により固定される。
【0015】
以下、靴100を水平面に載置した状態(以下、「水平状態」という)で、アッパー20の幅方向を単に「幅方向」といい、アッパー20の幅方向中心線Laに沿った方向を「前後方向」といい、鉛直な方向を「上下方向」という。幅方向と前後方向と上下方向とは互いに直交する。
【0016】
また、幅方向中心に沿ってアッパー20の踵からつま先側に向かう方向を「前側」、「前方」といい、その反対方向を「後側」、「後方」という。また、幅方向に沿って、外足側から内足側に向かう方向を「内側」、「内方」といい、その反対方向を「外側」、「外方」という。また、上下方向に沿って、ソール10からアッパー20に向かう方向を「上側」、「上方」といい、その反対側を「下側」、「下方」という。
【0017】
また、アッパー20の中心線Laから内側を内足部28jと、中心線Laから外側を外足部28eという。また、前後方向において、アッパー20の中足骨に対応する部分を中足部といい、アッパー20の中足部より前側の部分を前足部といい、アッパー20の中足部より後側の部分を後足部という。前足部は、概ね指骨に対応しており、後足部は、概ね足根骨に対応している。
【0018】
図1図3に示すように、靴100は、第1バンド30と、第2バンド40と、締付部60とを備える。
【0019】
(第1バンド)
第1バンド30は、第1基端部32から後方に延びるバンド状の部材である。第1バンド30は、直線状に延びてもよいし、上向きに凸に湾曲して延びてもよいし、下向きに凸に湾曲して延びてもよい。第1基端部32は、アッパー20とソール10との境界部Bpの履き口20bよりも前方に固定される。なお、複数の第1バンド30を有する場合、一つの第1基端部32がこの範囲に固定されればよく、他の第1基端部32の固定位置は限定されない。この例では、アッパー20の前後長を100%とするとき、第1基端部32は、つま先から15%~35%の位置に固定される。第1バンド30は、アッパー20の外足部28eに沿って、第1基端部32から後方に延びて、アッパー20の踵部24の第1バンド接触領域24sまで延びる。第1バンド30の延伸端34は、第1バンド接触領域24sに接触する。つまり、第1バンド30は、第1基端部32からアッパー20の履き口20bの後側まで斜め上向きに延びる。
【0020】
本実施形態では、アッパー20の内足部28jにも、境界部Bpの履き口20bよりも前方に固定される基端部から内足部28jに沿って第1バンド接触領域24sまで延びる内足側第1バンド30が設けられている。以下の説明では、外足部28eの第1バンド30を外足側第1バンドと表記することがある。外足側第1バンド30の延伸端34は、内足側第1バンド30の延伸端34と第1バンド接触領域24sで接続されている。つまり、第1バンド30は、互いに繋がれた外足側第1バンド30と内足側第1バンド30とで構成された一体のバンドである。本実施形態では、外足側第1バンド30と内足側第1バンド30の延伸端34、34は、第1バンド接触領域24sに接着、縫合などにより固定されているが、これらは固定されていなくてもよい。
【0021】
(バンド接触領域)
本実施形態では、第1バンド接触領域24sは、踵部24の最後部24aの上側に設けられている。この場合、第1バンド30に張力によって踵部24に前方斜め下向きの力が作用し、この力によって第1バンド接触領域24sが変形する可能性がある。脱ぎ履きを円滑にする観点で、第1バンド接触領域24sの変形は小さいことが望ましい。そこで、本実施形態の第1バンド接触領域24sは、周囲よりも強化された補強構造26が設けられている。一例として、第1バンド接触領域24sは、周囲よりも厚い素材、周囲よりも高剛性な素材、または、周囲よりも硬い素材で形成されてもよいし、周囲よりも多層に形成されてもよいし、これらの構成を組み合わせて形成されてもよい。
【0022】
(第2バンド)
第2バンド40は、第2基端部42から履き口20bの前方に延びるバンド状の部材である。本実施形態では、第2基端部42は、第1基端部32よりも後方において境界部Bpに固定される。アッパー20の前後長を100%とするとき、第2基端部42は、前後方向において、つま先から35%~90%の範囲において境界部Bpに固定される。第2バンド40は、アッパー20の外足部28eに沿って、第2基端部42から履き口20bの前方領域まで前方斜め上向きに延びている。つまり、第2バンド40の先端部44は履き口20bの前方に位置する。
【0023】
本実施形態では、アッパー20の内足部28jにも、境界部Bpに固定される第2基端部42から内足部28jに沿って、履き口20bの前方に延びる内足側第2バンド40が設けられている。以下の説明では、外足側第2バンド40を外足側第2バンド40と表記することがある。外足側第2バンド40の先端部44および内足側第2バンド40の先端部44には、締付部60と係合するための係合部44bが設けられている。外足側および内足側の係合部44bは互いに幅方向に離れている。
【0024】
締付部60は、アッパー20を締付けるために第2バンド40に締付力を付与する。本実施形態では、締付部60はシューレースであり、係合部44bは締付部60が通過する紐通し孔である。締付部60が緊締されることにより、外足側および内足側の係合部44bには互いに接近する方向に張力が作用する。このとき、外足側第2バンド40および内足側第2バンド40には第2基端部42から先端部44に向かう張力が作用する。第2バンド40に張力が作用することにより、第2バンド40はアッパー20に当接してアッパー20を足に向かって締め付ける。
【0025】
第2バンド40が第1バンド30と交差する交差部を説明する。以下、第1バンド30および第2バンド40の交差部のうち、第2バンド40が第1バンド30のアッパー20とは反対側(以下、「表面側」ということがある)を通過して交差する交差部を「符号F+数字」で示し、第2バンド40が第1バンド30とアッパー20との間を通過して交差する交差部を「符号R+数字」で示す。第2バンド40は、第1バンド30と交差する交差部Fで第1バンド30をアッパー20に当接させる。なお、交差部F+数字を総称するときは交差部Fといい、交差部R+数字を総称するときは交差部Rという。
【0026】
このように構成することにより、アッパー20は第2バンド40だけでなく第1バンド30によっても支持されるので、アッパー20のフィット性の前後バランスが向上する。
【0027】
第2バンド40は複数設けられてもよい。複数の第2バンド40を区別するために、符号の末尾に「-1」のようにハイフンと数字を付して示す。本実施形態には、2つの第2バンド40-1、40-2が設けられている。第2バンド40-2は、第2バンド40-1の後方において、第2バンド40-1と略平行に配置されている。第2バンド40-1は、第1バンド30の交差部F1で第1バンド30と交差する。第2バンド40-2は、第1バンド30の交差部R1で第1バンド30と交差する。第1バンド30は、交差部R1において第2バンド40-2の表面側を通過して第2バンド40-2をアッパー20に当接させる。
【0028】
この場合、第1バンドと第2バンドが複数の位置で相互に押さえ合うので締付力を適切に作用させることができる。また、締め付ける範囲を前後に分散させることができる。
【0029】
図1に示すように、本実施形態では、複数の交差部のうち最も前方の交差部F1において、第2バンド40は、第1バンド30の表面側を通過する。この場合、最も前方の交差部F1において第2バンド40が第1バンド30を押さえることができる。
【0030】
第1バンド30および第2バンド40(以下、総称するときは単に「バンド」と表記する)は、所定の幅を有する面状の部材を含んで構成されてもよく、例えば帯状の部材であってもよい。バンドの幅に限定はないが、バンドの幅が小さすぎると切断されやすくなり、大きすぎると設計や製造が難しくなる。バンド幅に関して、発明者は、3mm以上で30mm以下の範囲が実用的であり、5mm以上で20mm以下の範囲が好ましく、7mm以上で14mm以下の範囲がより好ましいとの示唆を得ている。本実施形態のバンドは、8mm以上で12mm以下の幅の帯状の部材である。この場合、バンドが紐状の場合と比べて、締付力を分散でき、アッパー20の足沿いがよくなり、緊締力が局所に集中しにくくなる。
【0031】
バンドは、紐状または糸状の部材(以下、「紐または糸」ということがある)を含んで構成されてもよいし、複数の紐状または糸状の部材を含んで構成されてもよいし、アッパー20の表面に沿って広がる複数の糸条体で構成される部分を含んでもよい。第1バンド30と第2バンド40とは同形状の部材で構成されてもよいし、異形状の部材で構成されてもよい。第1バンド30と第2バンド40の一方は、所定幅を有する面状の部材で構成される部分を含み、第1バンド30と第2バンド40の他方は、所定幅よりも細い紐状または糸状の部材で構成される部分を含んでもよい。
【0032】
本実施形態のバンドは、装着されたときにアッパー20に当接する程度の伸縮性を有する素材で構成されている。この場合、緊締力を適切に作用させることができる。一例として、バンドは、アッパー20よりも伸縮性や弾性率が小さいシート状の素材で形成できる。バンドは、公知の様々な素材で構成されてもよい。この例のバンドは人工皮革で形成されている。第1、第2バンド30、40の形態的特徴に関するこれらの説明は、後述する第3バンド50および補助バンド70にも適用される。
【0033】
本実施形態において、第1バンド30および第2バンド40は様々な形態をとることができる。以下、図4図30を参照してバンドの変形例を説明する。図4図30は、バンドの変形例を示す側面図であり、図1に対応する。
【0034】
第2バンド40の変形例を説明する。バンドの緊締力はアッパー20の表面に沿って分散されることが望ましい。このため、靴100には、内足側と外足側の少なくとも一方に3以上の第2バンド40が設けられてもよい。図4は、3つの第2バンド40-1、40-2、40-3が設けられている例を示す側面図である。図5は、4つの第2バンド40-1、40-2、40-3、40-4が設けられている例を示す側面図である。図6は、5つの第2バンド40-1、40-2、40-3、40-4、40-5が設けられている例を示す側面図である。
【0035】
第2バンド40-3は、第2バンド40-2の後方において、第2バンド40-2と略平行に配置されている。第2バンド40-4は、第2バンド40-3の後方において、第2バンド40-3と略平行に配置されている。第2バンド40-5は、第2バンド40-4の後方において、第2バンド40-4と略平行に配置されている。
【0036】
第2バンド40-3は、交差部F2で第1バンド30の表面側を通過して第1バンド30をアッパー20に当接させる。第2バンド40-4は、交差部R2で第1バンド30のアッパー20側を通過して、第1バンド30に押されてアッパー20側に当接する。言い換えると、第1バンド30は、交差部R2で第2バンド40-4の表面側を通過して第2バンド40-4をアッパー20に当接させる。第2バンド40-5は、交差部F3で第1バンド30の表面側を通過して、第1バンド30をアッパー20に当接させる。限定されるものではないが、この例の交差部Fと交差部Rとは交互に配列されている。このように、交差部を前後に多数形成することにより、緊締力を前後に分散できる。
【0037】
第2バンド40の別の変形例を説明する。複数の第2バンド40は、例えばA字状、V字状、W字状、H字状あるいはM字状などのように、基端側、先端側、またはそれらの中間の1以上の箇所で互いに接続されてもよい。また、複数の第2バンド40は、例えば数字の0字状のように、基端側と先端側とでそれぞれ接続されていてもよい。また、第2バンド40は、基端側、先端側、またはそれらの中間の1以上の箇所で複数の分岐部に分岐していてもよいし、当該複数の分岐部は分岐点から離れた位置で接続されてもよい。
【0038】
図7図9は、複数の第2バンドの一部が互いに接続される例を示す側面図である。図7の例は、2つの第2バンド40-1、40-2を含み、2つの第2バンド40-1、40-2が先端側で互いに接続されている。この例では、締付部60(シューレース)と係合する複数のバンドの係合部44bを上端側で集約し、2つの第2バンド40-1、40-2を、逆向きのV字状に構成している。この場合、緊締力を効率よく前後方向に分散できる。つまり、緊締力を1つの力点(係合部44b)から複数方向へ分散できる。第2バンド40-1は、第1バンド30の表面側を通過する交差部F1を形成し、第2バンド40-2は、第1バンド30のアッパー20側を通過する交差部R1を形成している。
【0039】
図8の例は、2つの第2バンド40-1、40-2を含み、2つの第2バンド40-1、40-2が基端側で互いに接続されている。この例では、2つの第2バンド40-1、40-2を、複数のバンドの第2基端部42を下端側で集約し、V字状に構成している。この場合、緊締力を足底のアーチ部分など引き上げを要する部分に集中できる。つまり複数の力点(係合部44b)からの緊締力を1方向へ集結できる。第2バンド40-1は、第1バンド30の表面側を通過する交差部F1を形成し、第2バンド40-2は、第1バンド30のアッパー20側を通過する交差部R1を形成している。
【0040】
図9の例は、3つの第2バンド40-1、40-2、40-3を含み、2つの第2バンド40-1、40-2が基端側および先端側で互いに接続されている。この例では、複数のバンドの係合部44bを上端側で集約し、複数のバンドの基端部42を下端側で集約し、0字状またはD字状に構成している。この場合、緊締力を1つの力点から複数方向に分散しつつ、足底のアーチ部分など引き上げを要する部分に集中できる。第2バンド40-1は、第1バンド30の表面側を通過する交差部F1を形成し、第2バンド40-2は、第1バンド30のアッパー20側を通過する交差部R1を形成し、第2バンド40-3は、第1バンド30の表面側を通過する交差部F2を形成している。
【0041】
さらに、第2バンド40の変形例を説明する。上述した第2バンド40およびその変形例は、他の第2バンド40またはその変形例と任意に組み合わせすることができる。例えば、図7図9の第2バンド40の変形例にさらに他の第2バンド40を組み合わせできる。図10図14は、第2バンド40の変形例に他の第2バンド40が設けられる例を示す側面図である。
【0042】
図10の例は、先端側で互いに接続されてた逆V字状の第2バンド40-1、40-2と、I字状の第2バンド40-3とを含んでいる。第2バンド40-3は、第2バンド40-2の後方で第2バンド40-2と略平行に延びる。第2バンド40-3は、第1バンド30の表面側を通過する交差部F2を形成している。
【0043】
図11の例は、逆V字状の第2バンド40-1、40-2と、I字状の第2バンド40-3、40-4とを含んでいる。第2バンド40-3は、第2バンド40-2の後方で第2バンド40-2と略平行に延び、第2バンド40-4は、第2バンド40-3の後方で第2バンド40-3と略平行に延びる。第2バンド40-3は、第1バンド30の表面側を通過する交差部F2を形成している。第2バンド40-4は、第1バンド30のアッパー20側を通過する交差部R2を形成している。
【0044】
図10図11の例のように、逆V字状第2バンドとI字状第2バンドの組合せにより、適切な範囲により強い紐締め効果を与えられる。例えば、履き口20bの周囲にI字状第2バンドを配置することにより、足首周りに強い紐締め効果を与えられる。
【0045】
図12の例は、逆V字状の第2バンド40-1、40-2と、逆V字状の第2バンド40-3、40-4とを含んでいる。つまり、複数の逆V字状の第2バンドを含んでいる。第2バンド40-3は、第2バンド40-2の後方で第2バンド40-2と略平行に延びる。第2バンド40-4は、第2バンド40-3の後方で第2バンド40-3と非平行に延びる。第2バンド40-3は、第1バンド30の表面側を通過する交差部F2を形成している。第2バンド40-4は、第1バンド30のアッパー20側を通過する交差部R2を形成している。逆V字状の第2バンドを複数備えることにより、前後方向に対して 緊締力をより段階的に分散できる。
【0046】
図13の例は、先端側で互いに接続されてた逆V字状の第2バンド40-1、40-2と、I字状の第2バンド40-3とを含んでいる。第2バンド40-3は、第2バンド40-2のアッパー20側を通過する交差部P2を形成している。また、第2バンド40-3は、第1バンド30の表面側を通過する交差部F2を形成している。交差部P2は、交差部R1および交差部F2の下方に位置している。
【0047】
図14の例は、互いに交差する複数の逆V字状の第2バンドを含んでいる。具体的には逆V字状の第2バンド40-1、40-2と、逆V字状の第2バンド40-3、40-4とを含んでいる。第2バンド40-1、40-2および第2バンド40-3、40-4は、図7の例と同様に第1バンド30と交差している。第2バンド40-2は、第2バンド40-3の表面側を通過する交差部F2を形成している。交差部F2は、交差部R1および交差部F1の下方に位置している。
【0048】
図13図14の例のように、複数の第2バンド40が互いに一部が交差することにより、重なった部分に対して緊締力を高められる。特に、つま先側の逆V字状第2バンド40-2が隣り合う第2バンド40-3の表面側で重なることにより、その範囲に対して緊締力を高められる。
【0049】
次に、第1バンド30の変形例を説明する。第1バンド30は、複数設けられてもよい。図15図16は、複数の第1バンド30が設けられる例を示す側面図である。この例では、複数の第1バンド30は、上下に配列されている。この場合、緊締力を上下方向に分散できる。図15図16の例は、第2バンド40-1と、その後方に配置される第2バンド40-2と、第1バンド30-1と、その下方に配置される第1バンド30-2と、を含んでいる。第1バンド30-1、30-2は、互いに略平行に配列されており、各第1バンドが各第2バンドと交差している。
【0050】
図15の例では、第2バンド40-1は、第1バンド30-1、30-2の表面側を通過する交差部F1、F2を形成し、第2バンド40-2は、第1バンド30-1、30-2のアッパー20側を通過する交差部R1、R2を形成している。つまり、1つの第2バンドは、複数の第1バンドの表面側のみ、またはアッパー20側のみを通過する。この場合、緊締力を上下方向により段階的に分散できる。
【0051】
図16の例では、第2バンド40-1は、第1バンド30-1の表面側を通過する交差部F1を形成するとともに、第1バンド30-2のアッパー20側を通過する交差部R1を形成している。また、第2バンド40-2は、第1バンド30-1のアッパー20側を通過する交差部R2を形成するとともに、第1バンド30-2の表面側を通過する交差部F2を形成している。つまり、1つの第2バンドは、一の第1バンドの表面側と別の第1バンドのアッパー20側を互い違いに通過する。この場合、第1、第2バンドそれぞれを互い違いに交差させて、交差部Fと交差部Rとを前後方向および上下方向に交互に配置できるので、緊締力をより一層段階的に分散させることができる。
【0052】
複数の第1バンド30は、基端側、先端側、またはそれらの中間の1以上の箇所で互いに接続されてもよい。また、第1バンド30は、基端側、先端側、またはそれらの中間の1以上の箇所で複数の分岐部に分岐していてもよいし、当該複数の分岐部は分岐点から離れた位置で接続されてもよい。図17図19は、複数の第1バンド30が基端側、先端側、またはそれらの中間で互いに接続される例を示す側面図である。
【0053】
図17図19の例は、第2バンド40-1およびその後方に配置される第2バンド40-2と、第1バンド30-1およびその下方に配置される第1バンド30-2とを含んでいる。図17図19の例では、第2バンド40-1は、第1バンド30-1、30-2の表面側を通過する交差部F1、F2を形成し、第2バンド40-2は、第1バンド30-1、30-2のアッパー20側を通過する交差部R1、R2を形成している。なお、図17図19の例において、図16の例のように第1、第2バンドを互い違いに交差させてもよい。
【0054】
図17の例では、第1バンド30-1、30-2は、各基端部32が境界部Bpに前後に離れて固定されており、延伸端34が互いに接続されている。この場合、後方に行くほど緊締力の伝達効率が高まり、履き口20b周りのホールド性を向上できる。
【0055】
図18の例では、第1バンド30-1、30-2は、各基端部32が互いに接続されて境界部Bpに固定されており、各延伸端34が互いに上下に離隔配置されている。この場合、前方に行くほど緊締力の伝達効率が高まり、前足部周りのホールド性を向上できる。
【0056】
図19の例では、第1バンド30-1、30-2は、各基端部32が互いに接続されて境界部Bpに固定されており、各延伸端34が互いに接続されている。この場合、前方および後方に行くほど緊締力の伝達効率が高まり、履き口20b周りおよび前足部周りのホールド性を向上できる。
【0057】
次に、バンド形態の変形例を説明する。図20図27は、バンド形態の変形例を示す側面図である。
【0058】
図20の例では、第1バンド30は紐状に形成されている。第1バンド30は、すべてのバンドが同形状である必要はなく、バンドの一部が帯状で、他の一部が紐状など別の形状であってもよい。
【0059】
図21の例では、第1バンド30は幅広の帯状に形成されている。第1バンド30の幅は、第2バンドの幅の1.5倍以上または2倍以上に形成されてもよい。第1バンド30は、すべてのバンドが同じ幅である必要はなく、バンドの一部が幅広で、他の一部は異なる幅を有してもよい。
【0060】
図22の例では、第2バンド40-1、40-2は紐状に形成されている。第2バンド40は、すべてのバンドが同形状である必要はなく、バンドの一部が帯状で、他の一部が紐状など別の形状であってもよい。
【0061】
図23の例では、第2バンド40は幅広の帯状に形成されている。第2バンド40は、すべてのバンドが同じ幅である必要はなく、バンドの一部が幅広で、他の一部は異なる幅を有してもよい。
【0062】
図20図23に示すように、第1バンド30や第2バンド40を細くしたり太くしたりすることにより緊締力を調整できる。曲率が小さい範囲には細いバンドや紐を使用することにより足沿いを高めることができる。コートスポーツ等の横方向へのホールド性が求められる場合においては太いバンドを使用することによりブレーキ局面のホールド性を高めることができる。
【0063】
図24図25の例では、第1バンド30は、複数の紐状または糸状の部材で構成されている。第1バンド30は、束ねられた複数の糸条体がアッパー20の表面に沿って広がっている。図24の例では、複数の糸条体は、交差部F1で第2バンド40-1のアッパー20側を通過し、交差部R1で第2バンド40-2の表面側を通過する。第1バンド30が部分的に細い紐または糸で構成されることにより、より足沿いのよいフィット性を実現できる
【0064】
図25の例では、複数の糸条体は、交差部S1、S2において、第2バンド40-1のアッパー20側を通過するものと、表面側を通過するものとを含む。なお、各糸条体は、複数の第2バンド40の表面側とアッパー側とを交互に通過してもよい。細い紐または糸で構成された部分が第2バンド40と互い違いに交差することにより、より段階的に緊締力を分散させることができる。
【0065】
図26図27の例では、第2バンド40は、複数の紐状または糸状の部材で構成されている。第2バンド40は、アッパー20の表面に沿って配列される複数の糸条体で構成される。図26の例では、複数の糸条体は、交差部S1において、第1バンド30の表面側を通過し、交差部S2において、第1バンド30のアッパー20側を通過する。第2バンド40が部分的に細い紐または糸で構成されることにより、より足沿いのよいフィット性を実現できる。
【0066】
図27の例では、複数の糸条体は、交差部S1、S2において、第1バンド30のアッパー20側を通過するものと、表面側を通過するものとを含む。なお、アッパー20側を通過する糸条体と、表面側を通過する糸条体とは交互に配列されてもよい。部分的に細い紐または糸で構成された部分が互い違いに第1バンドが交差することで、第1バンド30への緊締力の伝達効率をより高めることができる。
【0067】
さらに、第1バンド30の変形例を説明する。図28図29は、第1バンド30の変形例を示す側面図である。
【0068】
図28の例では、第1バンド30に締付部60と係合するための係合部36bが設けられている。係合部36bを有することにより前後方向への緊締力を高めることができる。この例の係合部36bは、第1バンド30から上方に突出する突出部36の突出端に設けられている。係合部36bは、締付部60(シューレース)が通過する紐通し孔であり、係合部44bと同様の構成を有する。係合部36bは、1または複数設けられてもよく、この例では第2バンド40-1の前方と第2バンド40-2の後方の2カ所に設けられている。
【0069】
上述の説明では第1バンド30が曲線状に設けられる例を示したが、第1バンド30は直線状に延伸してもよい。図29の例では、第1バンド30は直線状に延伸している。第1バンド30を直線状にすることにより、緊締力をより効率的に前後方向に伝達できる。第1バンド30の基端部32は、MP関節の近傍を避けた位置で境界部Bpに固定されることが望ましい。
【0070】
次に、本発明の第2、第3実施形態を説明する。第2、第3実施形態の図面および説明では、第1実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。第1実施形態と重複する説明を適宜省略し、第1実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0071】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態に係る靴100の構成を説明する。図30は、第2実施形態に係る靴100を示す側面図であり、図1に対応する。本実施形態は、第3バンド50を備えるとともに、第2バンド40-3を有する点で第1実施形態と異なる。
【0072】
(第3バンド)
第3バンド50は、境界部Bpに固定される第3基端部52を有し、当該第3基端部52からから後方に延びるバンド状の部材である。第3基端部52は、第1基端部32よりも後方の範囲で境界部Bpに固定される。図30の例では、第3基端部52は、履き口20bの前後範囲内で境界部Bpに固定される。第3バンド50は、アッパー20の外足部28eに沿って、第3基端部52から後方に延びて、アッパー20の踵部24の第1バンド接触領域24sまで延びる。つまり、第3バンド50は、第3基端部52からアッパー20の履き口20bの後側まで斜め上向きに延びる。
【0073】
本実施形態では、アッパー20の内足部28jにも、境界部Bpの履き口20bよりも前方に固定される第3基端部52から内足部28jに沿って第1バンド接触領域24sまで延びる内足側第3バンド50が設けられている。以下の説明では、外足部28eの第3バンド50を外足側第3バンドと表記することがある。外足側第3バンド50の延伸端54は、内足側第3バンド50の延伸端54と第1バンド接触領域24sで接続されている。つまり、第3バンド50は、互いに繋がれた外足側第3バンド50と内足側第3バンド50とで構成された一体のバンドである。外足側第3バンド50および内足側第3バンド50の延伸端54は第1バンド接触領域24sで第1バンド30を覆う。この場合、第1バンド30の位置ずれ抑制できる。
【0074】
第2バンド40-3は、複数の第2バンドのうち履き口20bに最も近い位置に配置されている。本実施形態の第2バンド40-3では、第2基端部42は、第3基端部52よりも後方で境界部Bpに固定され、先端部44は、履き口20bの直前に延びている。第2バンド40-3は、第1バンド30と交差部F2交差し、第3バンド50と交差部R2で交差する。第2バンド40-3は、交差部F2において第1バンド30の表面側を通過し、第1バンド30を押さえる。第3バンド50は、交差部R2において第2バンド40-3の表面側を通過し、第2バンド40-3を押さえる。
【0075】
第2実施形態は第1実施形態と同様の作用、効果を奏する。加えて、第2実施形態は、第3バンド50が履き口20bに最も近い第2バンド40-3を押さえることにより、緊締力を足首周りに作用させることができ、走行時に効果的なホールド性を実現できる。また、交差部を分散させることにより緊締力の集中を緩和できる。
【0076】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態に係る靴100の構成を説明する。図31は、第3実施形態に係る靴100を示す側面図であり、図1に対応する。図32は、靴100を概略的に示す平面図である。図33は、靴100を概略的に示す内足側から見た側面図である。図34は、靴100を概略的に示す背面図である。本実施形態は補助バンド70を備えるとともに、交差するバンドがその交差部で互いに接続される部分を有する点で第1実施形態と異なる。
【0077】
本実施形態は、第1バンド30-1、30-2と、第2バンド40-1~40-7と、第3バンド50-1、50-2と、補助バンド70とを備える。これらのバンドは網目状に互い違いに交差している。
【0078】
補助バンド70は、内足部28jの境界部Gpから外足部28eの境界部Gpにわたって伸びるバンド状の部材である。本実施形態では、補助バンド70が複数設けられ、複数の補助バンド70は互いに交差して編み目構造を形成している。複数の補助バンド70は交差部において互いに接続されてもよいし、非接続であってもよい。本実施形態では、補助バンド70は、第2バンド40と複数の交差部で交差している。補助バンド70と第2バンド40の交差部は互いに接続されてもよいし、非接続であってもよい。補助バンド70は、第1バンド30と交差してもよい。
【0079】
本実施形態は、プルストラップ72と、コードストッパ62とを有する。コードストッパ62は、締付部60に設けられる。プルストラップ72は、アッパー20の履き口20bの後端に設けられる。コードストッパ62およびプルストラップ72は他の実施形態にも適用できる。
【0080】
第3実施形態は第1実施形態と同様の作用、効果を奏する。加えて、第3実施形態は、補助バンド70を有することにより、第1バンド30や第2バンド40の位置の偏りを抑えられ、これによって緊締力の集中を緩和できる。また、補助バンド70により、バンドの偏在による見た目のバランスを改善し、美観低下を抑えられる。
【0081】
以上、本発明の実施形態の例について詳細に説明した。上述した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施形態の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除などの多くの設計変更が可能である。上述の実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態の」「実施形態では」等との表記を付して説明しているが、そのような表記のない内容に設計変更が許容されないわけではない。
【0082】
[変形例]
以下、変形例について説明する。変形例の図面および説明では、実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。実施形態と重複する説明を適宜省略し、第1実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0083】
実施形態の説明では、各バンドがアッパー20の表面に固定されない例を示したが、本発明はこれに限定されない。各バンドの一部分がアッパー20の表面に固定されてもよい。また、各バンド同士が部分的に固定されていてもよい。例えば、第1バンド同士、第2バンド同士、あるいは、第1、第3バンドと第2バンドとが部分的に固定されていてもよい。
【0084】
実施形態の説明では、係合部44b、36bが締付部60(シューレース)が通過する紐通し孔である例を示したが、本発明はこれに限定されない。係合部44b、36bは、シューレースを通せる構成であればよく、孔の代わりにフック等の紐掛部であってもよい。係合部44b、36bの孔縁は、補強部材を設けて補強されてもよいし、孔かがり等によって孔の縁を周囲よりも厚くしてもよい。
【0085】
実施形態の説明では、締付部60が1本のシューレースである例を示したが、本発明はこれに限定されない。締付部は複数のシューレースを含んでもよい。また、子供用や高齢者用の靴など、履きやすさを重視する場合には、シューレースは、伸縮性の高い素材で構成することができる。一方、スポーツ用など安定性を重視する場合には、シューレースは、伸縮性の低い素材で構成することができる。
【0086】
上述の各変形例は上述の実施形態と同様の作用・効果を奏する。
【0087】
上述した実施形態と変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる各実施形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、靴に関連し靴に利用することができる。
【符号の説明】
【0089】
10 ソール、 20 アッパー、 20b 履き口、 24 踵部、 24a 最後部、 24s 第1バンド接触領域、 26 補強構造、 30 第1バンド、 30 第2バンド、 32 基端部、 32 第1基端部、 36b 係合部、 40 第2バンド、 42 基端部、 42 第2基端部、 44 先端部、 44b 係合部、 50 第3バンド、 52 第3基端部、 60 締付部、 100 靴。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
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図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34