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特許7352654半導体パワー・スイッチを高電圧範囲で制御するためのデバイス
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  • 特許-半導体パワー・スイッチを高電圧範囲で制御するためのデバイス 図1
  • 特許-半導体パワー・スイッチを高電圧範囲で制御するためのデバイス 図2
  • 特許-半導体パワー・スイッチを高電圧範囲で制御するためのデバイス 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-20
(45)【発行日】2023-09-28
(54)【発明の名称】半導体パワー・スイッチを高電圧範囲で制御するためのデバイス
(51)【国際特許分類】
   H02M 1/08 20060101AFI20230921BHJP
【FI】
H02M1/08 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021565936
(86)(22)【出願日】2020-05-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-13
(86)【国際出願番号】 EP2020062587
(87)【国際公開番号】W WO2020225306
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】102019111996.0
(32)【優先日】2019-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591018763
【氏名又は名称】ベバスト エスエー
【氏名又は名称原語表記】Webasto SE
【住所又は居所原語表記】Kraillinger Strasse 5,82131 Stockdorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ヘンネ
(72)【発明者】
【氏名】ハンス レヒバーガー
(72)【発明者】
【氏名】カールハインツ フレーダー
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-055542(JP,A)
【文献】国際公開第2015/079569(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/016146(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0305048(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電圧範囲の複数のパルス負荷(負荷1、負荷2)の場合に、複数の半導体パワー・スイッチ(S12、S21)を同時に制御するためのデバイスであって、前記半導体パワー・スイッチ(S12、S21)の各ドライバ電圧(Uh、Uh)が変圧器によって供給され得る、デバイスにおいて、
前記半導体パワー・スイッチのドライバ電圧(Uh、Uh)が前記変圧器の単一の二次巻線の電圧(UL1)から導出され、
複数の電子電圧レベル・移動回路が、必要とされる振幅の前記ドライバ電圧(Uh、Uh)を前記変圧器の前記二次巻線から取得するために提供され
各電子電圧レベル・移動回路が、チャージ・ポンプ(C1、R1、D1及びC2、R2、D2)を含み、
各負荷のクロッキングが、各チャージ・ポンプをクロッキングするように働き、
各負荷及び各チャージ・ポンプのクロッキングは、前記変圧器の前記二次巻線に接続された各スイッチ(S1、S2)によってもたらされ、
各スイッチ(S1、S2)は、閉状態では各チャージ・ポンプを充電し、開状態では各チャージ・ポンプで生成された各ドライバ電圧(Uh 、Uh )を各半導体パワー・スイッチ(S12、S21)に印加する、
ことを特徴とするデバイス。
【請求項2】
各ドライバ電圧(Uh 、Uh )を供給する各チャージ・ポンプ(C1、R1、D1及びC2、R2、D2)は、キャパシタ(C1、C2)を含み、
各キャパシタ(C1、C2)の一端は、各負荷(負荷1、負荷2)に接続され、
各キャパシタ(C1、C2)の他端は、直列抵抗(R1、R2)を介してダイオード(D1、D2)に接続されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記高電圧の低電位側と高電位側との間で、各スイッチ(S1、S2)、各負荷(負荷1、負荷2)及び各半導体パワー・スイッチ(S12、S21)が、この順で直列接続されている、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
各キャパシタ(C1、C2)の前記一端は、各負荷(負荷1、負荷2)の各スイッチ(S1、S2)に接続されている一端に接続されている、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
各チャージ・ポンプによって前記電圧(UL1)から生成された各ドライバ電圧(Uh 、Uh )は、入力側において各第2キャパシタ(C12、C21)によって架橋されている各半導体パワー・スイッチ(S12、S21)に、各第2ダイオード(D12、D21)を介して印加される、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
各半導体パワー・スイッチは、入力側においてキャパシタによって架橋され、
各チャージ・ポンプによって取得された前記必要とされる振幅の各ドライバ電圧は、各半導体パワー・スイッチの入力側を架橋している各キャパシタに各チャージ・ポンプから印加される、請求項1に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高電圧範囲のパルス負荷の場合に、複数の半導体パワー・スイッチを同時制御するためのデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
イントロダクションで記述されるタイプの従来のデバイスによる半導体パワー・スイッチの制御は、図1及び2を参照して説明されることになる。
【0003】
図1に示すように、二つの半導体パワー・スイッチ(MOSFET、IGBT、バイポーラ・トランジスタ)を制御するために、制御入力(ゲート、ベース)でスイッチをONにして制御するために必要な15V電圧は、基準レベルに対して規定された電位差を常に保持しなければならない。そうでなかったとしたら、スイッチはONされないであろう。最悪の場合、これが、半導体パワー・スイッチの破壊をもたらす可能性さえある。図1で示した高電圧用途では、基準レベルは、例えば、0V(図1の左の回路変形形態)又は500V(図1の右の回路変形形態)にあり得、パワー・スイッチがOFF又はONされたとき、0Vから500Vまでジャップさえし得る(ハイ-サイド問題)。
【0004】
図2の例として示されたような高電圧範囲での用途に対して、ドライバ電圧UL1、UH及びUHは、複数の出力電圧を有する変圧器によって生成され、ガルバニック絶縁された方法で異なる基準レベルでのドライバ電圧を供給する。具体的な詳細には、第1の負荷、負荷1及び第2の負荷、負荷2が、例えば電子パワー・スイッチの対S1、S12及びS2、S21をそれぞれ介して、ゼロ電位HV-及び500ボルトの正電位HV+に、周期的に接続される。スイッチS1を制御するドライバ電圧UL1は、変圧器の第1の二次巻線から取り出される(図2の低い方の変圧器二次電圧)。スイッチS12を制御するドライバ電圧Uhは、変圧器の第2の二次巻線から取り出される(図2の高い方の変圧器二次電圧)。スイッチS21を制御するドライバ電圧Uhは、変圧器の第3の二次巻線から取り出される(図2の高い方の変圧器二次電圧)。スイッチS1、S12及びS2、S21が閉じられたとき、高電圧が、それぞれの負荷、負荷1及び負荷2に印加され、スイッチが開かれたとき、負荷から切断される。
【0005】
小型の巻線構造の理由で、パワー半導体のクロッキングに起因する電磁干渉が、変圧器の一次側に伝送される。したがって、自動車用途では、デバイスのHV部分で生成される干渉は、低電圧側に伝送される。その上、生成された干渉は、変圧器の更なる二次巻線に電圧スパイクをもたらし得る。干渉は、比較的複雑なEMCフィルタ構成要素を用いた方法で低減されなければならない。その方法の更なる不利益は、複数の二次巻線を有する変圧器を使用することである。後者は、必要とされる絶縁耐力及び高品質で、したがってより高価な絶縁性材料の使用のために、複雑で高価である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、デバイスがEMC及び費用効果の点で最適化されるように作成され得るようなデバイスを提供することである。
【0007】
この目的は、請求項1の特徴によって達成される。本発明の有益な成果は、従属請求項で定義されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明は、高電圧範囲での複数の負荷のクロック動作運転のために、ドライバ電圧によって複数の半導体パワー・スイッチを制御するための、デバイスを提供する。それらは変圧器によって提供され、半導体パワー・スイッチのドライバ電圧は、変圧器の単一の二次巻線から導出される。電圧レベル・移動回路が提供され、それが変圧器の二次巻線で生成された電圧から必要とされる電圧レベルを有するドライバ電圧を取得する。
【0009】
好ましくは、唯一の二次巻線を有する唯一の変圧器が必要とされるようになされる。好ましくは、任意の数のPWM制御負荷のドライバ電圧は、単純な電子電圧レベル・移動回路により、その都度生成される。
【0010】
本発明によるデバイスは、複数の二次巻線を有する従来技術によるデバイスと比較して、より小型であり、より少ないEMC干渉を有する。
【0011】
変圧器及びEMCフィルタ構成要素の費用が削減され、顕著なコスト削減がもたらされる。
【0012】
電子電圧レベル・移動回路は、チャージ・ポンプの概念に基づいている。用語、チャージ・ポンプは、電気的電圧値を増大させ、DC電圧極性を反転させる、複数の異なる電子回路を包括的に含む。
【0013】
チャージ・ポンプは、高出力電流が必要とされない又はコイルなどの好適な磁気的構成要素が使用できない任意の場合に、電圧移動装置として使用され得る。
【0014】
チャージ・ポンプは、その電圧を異なる値に、キャパシタの充電と縦続との間の一時的なシーケンスによって、設定する。このことは、スイッチの周期的スイッチング切り替えによって実施される。
【0015】
プロセスは、往復運動ピストン・ポンプのプロセスに類似している。キャパシタに充電することが、シリンダの充填に対応し、縦続が、シリンダの上昇に対応する。ダイオードは、電子スイッチとして働くことが好ましく、このダイオードは、電位差によって、オフ状態又はオン状態範囲に、その都度切り替えられ、キャパシタを充電する又はその電圧を押し上げる。幾重にも縦続されたチャージ・ポンプは、非常に高いDC電圧を生成し得る。そのような回路は、高電圧カスケードと呼ばれる。
【0016】
それぞれの負荷のクロッキングが、それぞれのチャージ・ポンプをクロッキングするように働くこと、特に、それぞれの負荷のPWMパルスが、チャージ・ポンプのクロッキングのために使用されることが有益である。結果的に、その回路設計が、大いに簡易化される。
【0017】
好ましくは、デバイスのクロッキングが、変圧器の二次巻線に接続されたスイッチであって、閉状態でチャージ・ポンプを充電し、チャージ・ポンプで生成されたドライバ電圧を開状態のそれぞれの半導体パワー・スイッチに印加する、スイッチによって、その都度もたらされる。好ましくは、チャージ・ポンプ・クロッキングは、その都度PWMでスイッチングされるパワー・スイッチSnによってもたらされる。この点に関連して、例えば、S1が閉状態では、キャパシタC1がD1-R1を介して電圧UL1に充電される。開状態で、C1は、D12を介してC12に放電する。ダイオードD1は、OFFに変わり充電されたキャパシタは、パワー・スイッチS12の基準レベルに設定される。Uh1=UL1=15VでS12のドライバは、必要電圧を供給される。
【0018】
本発明は、以下で、図面を参照して更に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、従来技術による半導体パワー・スイッチ(MOSFET、IGBT、バイポーラ・トランジスタ)の制御の概略図である。
図2図2は、パワー・スイッチのドライバ電圧が、変圧器の二次巻線によってガルバニック絶縁されている、パワー・スイッチのそれぞれのドライバ電圧のガルバニック絶縁の変圧器によって、高電圧範囲にある、図1の制御の用途を示す図である。
図3図3は、パワー・スイッチの多様なドライバ電圧が導出される、単一の二次巻線を有する変圧器によってパワー・スイッチを制御する、本発明によるデバイスの実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1及び2は、従来技術に対する導入部で説明された。
【0021】
本発明によるデバイスの実施形態が、図3に示されている。この実施形態は、電子負荷スイッチS1、S2に、より正確に述べれば、ゼロ電位HV-の三つのレベルを有する変圧器の下の二次巻線によって、二つの電子負荷スイッチS1及びS2に、ドライバ電圧UL1を供給する単一の二次巻線を有する変圧器の使用において、図2に示されているデバイスとは異なる。
【0022】
図3のデバイスに関して、電子負荷スイッチS12及びS21を制御するドライバ電圧Uh及びUhは、変圧器の更なる二次巻線によって供給されず、代わりにチャージ・ポンプによって変圧器の単一の二次巻線から導出される。
【0023】
ドライバ電圧Uhを供給するチャージ・ポンプは、キャパシタC1を含み、キャパシタC1は、一方の端部でスイッチS1に接続されている負荷、負荷1の一方の端部に接続されていて、もう一方の端部で直列抵抗R1を介して、直列抵抗R1のもう一方の端部が接続されている、UL1電位にあるダイオードD1に接続されている。チャージ・ポンプにより電圧UL1から生成されたドライバ電圧Uhが、ダイオードD12を介して、入力側のキャパシタC12によって架橋される電子スイッチS12に印加される。
【0024】
ドライバ電圧Uhを供給するチャージ・ポンプは、キャパシタC2を含み、キャパシタC2は、一方の端部でスイッチS2に接続されている負荷、負荷2の一方の端部に接続されていて、もう一方の端部で直列抵抗R2を介して、直列抵抗R2のもう一方の端部が接続されている、UL1電位にあるダイオードD2に接続されている。チャージ・ポンプにより電圧UL1から生成されたドライバ電圧Uhが、ダイオードD21を介して、入力側のキャパシタC21によって架橋される電子スイッチS21に印加される。
【0025】
スイッチS1、S2が閉じられた場合、キャパシタC1、C2は、直列抵抗R1、R2、及びブロッキング・ダイオードD1、D2を介して、ドライバ電圧電位ULに充電される。
【0026】
スイッチS1、S2が開かれた場合、キャパシタC12、C21は、キャパシタC1、C2の電荷で充電される。したがって、スイッチS12、S21を制御するために必要とされる電位Uh(Uh)=ULが、有用である。このプロセスが、スイッチS1、S2のクロッキングを用いて周期的に繰り返される。
【0027】
本発明によるデバイスが、二つの半導体パワー・スイッチを有する実施形態に基づいて説明されてきた。しかしながら、本発明は、それに限定されない。むしろ、この種類の二つより多いスイッチが、半導体パワー・スイッチを制御するためのデバイスとして考慮される。
図1
図2
図3