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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-20
(45)【発行日】2023-09-28
(54)【発明の名称】アクリルゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 33/04 20060101AFI20230921BHJP
   C08F 218/02 20060101ALI20230921BHJP
   C08F 218/08 20060101ALI20230921BHJP
   C08F 220/10 20060101ALI20230921BHJP
   C08K 5/10 20060101ALI20230921BHJP
   F16J 15/20 20060101ALI20230921BHJP
   F16J 15/32 20160101ALI20230921BHJP
【FI】
C08L33/04
C08F218/02
C08F218/08
C08F220/10
C08K5/10
F16J15/20
F16J15/32
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021573024
(86)(22)【出願日】2020-12-23
(86)【国際出願番号】 JP2020048092
(87)【国際公開番号】W WO2021149443
(87)【国際公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-07-12
(31)【優先権主張番号】P 2020010121
(32)【優先日】2020-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114351
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 和子
(72)【発明者】
【氏名】大谷 圭太
(72)【発明者】
【氏名】安斎 貴寛
【審査官】飛彈 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-193559(JP,A)
【文献】国際公開第2005/082960(WO,A1)
【文献】特開平08-301942(JP,A)
【文献】国際公開第2019/044592(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/180207(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/136697(WO,A1)
【文献】特開平11-140264(JP,A)
【文献】特開平06-345931(JP,A)
【文献】特開2010-270173(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 33/04
C08K 5/10
C08F 218/02
C08F 220/10
C08F 218/08
F16J 15/20
F16J 15/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共重合体中に1~3重量%のモノクロロ酢酸ビニル単量体を架橋性共単量体として共重合させた共重合体であって、架橋性共単量体以外の他の共単量体100重量%中、n-ブチルアクリレートを65~75.5重量%および2-メトキシエチルアクリレートを35~20重量%の割合で仕込み、共重合させたアクリルゴムである、ガラス転移点Tgが-42℃以下の超耐寒グレードのアクリルゴム100重量部に対し、ポリエチレングリコール(Mw:300)ジ(2-エチルヘキサノエート、アジピン酸ジエステルまたはポリエーテルエステルである可塑剤5~15重量部を配合してなり、耐寒性の指標となるTR10値が初期ならびにオイル浸漬後においても-42℃以下の加硫物を与えるアクリルゴム組成物。
【請求項2】
請求項1記載のアクリルゴム組成物の加硫成形品。
【請求項3】
-40℃における粘度が2000mPa・s以下のオイル接触環境下に用いられる請求項記載の加硫成形品。
【請求項4】
-40℃における粘度が2000mPa・s以下のオイルを用い、150℃、70時間浸漬試験での体積変化率が+6%以上である請求項記載の加硫成形品。
【請求項5】
オイルシールである請求項記載の加硫成形品。
【請求項6】
ドライブトレイン用オイルシールである請求項記載の加硫成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリルゴム組成物に関する。さらに詳しくは、初期の耐寒性および低粘度オイルと接触する実使用環境においても、すぐれた低温特性を示す加硫成形品を与え得るアクリルゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃費向上を目的としてエンジンや駆動系に使用されるオイルを低粘度化することが大きなトレンドとなっている。
【0003】
アクリルゴムは、耐熱性、耐寒性および耐油性のバランスが良好であり、駆動系を含む自動車用シール部材として広く使用されている。しかしながら、このような自動車用シール部材に低粘度オイルを適用した場合、低温使用環境下においてゴム材料が硬化する一方で、低粘度オイルは流動性を維持するため、シール性能が低下し、オイル漏れにつながることがある。
【0004】
一般的に耐寒グレードとして上市されているアクリルゴムポリマーを使用した場合でも、低粘度オイルに対して十分なシール性能を確保することは困難である。
【0005】
また、オイルシール形状の変更や緊迫力を上げるなど、設計面での工夫によってもシール性能を向上させることは可能であるが、これらの手法は摺動トルクを上げる方向にあるため、低燃費化という目的と背反することになる。
【0006】
可塑剤の添加は、低温性改良の一般的手法であるが、ゴムコンパウンドとの相溶性が良好であることが必要であり、これが不十分な場合には、加工工程での不具合や加硫成形品のブリードアウトをひき起こすことになる。また、低温性の改良を目的として可塑剤を添加しても、実使用環境でオイルと接触する場合には可塑剤が抽出され、期待される低温特性が得られない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平6-145257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、初期の耐寒性および低粘度オイルと接触する実使用環境においても、すぐれた低温特性を示す加硫成形品を与え得るアクリルゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる本発明の目的は、共重合体中に1~3重量%のモノクロロ酢酸ビニル単量体を架橋性共単量体として共重合させた共重合体であって、架橋性共単量体以外の他の共単量体100重量%中、n-ブチルアクリレートを65~75.5重量%および2-メトキシエチルアクリレートを35~20重量%の割合で仕込み、共重合させたアクリルゴムである、ガラス転移点Tgが-42℃以下の超耐寒グレードのアクリルゴム100重量部に対し、ポリエチレングリコール(Mw:300)ジ(2-エチルヘキサノエート、アジピン酸ジエステルまたはポリエーテルエステルである可塑剤5~15重量部を配合してなり、耐寒性の指標となるTR10値が初期ならびにオイル浸漬後においても-42℃以下の加硫物を与えるアクリルゴム組成物によって達成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るアクリルゴム組成物においては、まずアクリルゴムを構成するアクリレート単量体の比率を調整することで、オイル接触環境下、具体的には-40℃における粘度が2000mPa・s以下のオイル接触環境下においても低温特性を維持することができる。これは、加硫ゴム成形品の耐油性をあえて低下させることにより、オイルの加硫ゴム成形品への膨潤量を増加させ、低温環境下での柔軟性を改良している。
【0011】
第2には、溶解度パラメーターSP値が8.5~10.5というアクリルゴムコンパウンドとの相溶性が良好な可塑剤が選定されている。
【0012】
これにより、初期の耐寒性および低粘度オイルと接触する実使用環境においても、すぐれた低温特性を示す加硫成形品を与え得るアクリルゴム組成物が提供される。
【0013】
すなわち、可塑剤の添加によって初期の耐寒性が良好であり、また耐油性を調整することによって(例えば-40℃における粘度が2000mPa・s以下のオイルを用い、150℃、70時間浸漬試験での体積変化率が+6%以上というように、体積変化率を増加させることによって)、オイル浸漬後も良好な耐寒性を維持することができる。したがって、ドライブトレイン用オイルシール等、トレンドである低粘度駆動系オイルを使用する際のオイルシール用材料として好適となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のアクリルゴム組成物は、超耐寒グレードのアクリルゴムおよび特定のSP値を有する可塑剤よりなる。
【0015】
超耐寒グレードのアクリルゴムは、ガラス転移点Tg(JIS K6240準拠)が-42℃以下を示すアクリルゴムであり、アクリレート共単量体の比率を調整することによって得られ、例えば特許文献1に記載された塩素基含有アクリルゴムの中から選ばれる。
【0016】
塩素基含有アクリルゴム中のアルキルアクリレートとしては、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリレートおよびこれらに対応するメタクリレートが用いられる。一般的に、アルキル基の鎖長が長くなると耐寒性の点では有利となるが、耐油性では不利となり、鎖長が短いとその逆の傾向がみられ、耐油性、耐寒性のバランス上からはエチルアクリレート、n-ブチルアクリレートが好んで用いられる。本発明においては、n-ブチルアクリレートが特に好ましく、その共重合割合は活性塩素基含有ビニル単量体を除く仕込み単量体量で共重合体中約65~75.5重量%である。
【0017】
また、塩素基含有アクリルゴム中のアルコキシアルキルアクリレートとしては、例えばメトキシメチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、n-ブトキシエチルアクリレート、エトキシプロピルアクリレート等が用いられ、好ましくは2-メトキシエチルアクリレート、2-エトキシエチルアクリレートが用いられる。アルコキシアルキルアクリレートとアルキルアクリレートとは、それぞれ単独でも用いられるが、好ましくは前者が60~0重量%、また後者が40~100重量%の割合で用いられ、アルコキシアルキルアクリレートを共重合させた場合には耐油性と耐寒性のバランスが良好となり、ただしこれよりも多い割合で共重合させると常態物性と耐熱性が低下する傾向がみられるようになる。本発明においては、2-メトキシエチルアクリレートが特に好ましく、その共重合割合は活性塩素基含有ビニル単量体を除く仕込み単量体量で共重合体中約35~20重量%である。
【0018】
特許文献1には、n-ブチルアクリレートおよび2-メトキシエチルアクリレートを60~99.8重量%、活性塩素基含有ビニル単量体を0.1~10重量%、好ましくは1~5重量%および他のビニル単量体を30重量%以下の割合で共重合させたアクリルゴムが記載されており、アルキルアクリレートとしてはn-ブチルアクリレートが共重合体中約40~85重量%の割合で、またアルコキシアルキルアクリレートとしては2-メトキシエチルアクリレートが共重合体中約25~55重量%の割合で共重合されて用いられる。このように、アルコキシアルキルアクリレートの共重合割合を調整することによって耐油性を調整している。
【0019】
活性塩素基含有ビニル単量体としては、例えばモノクロロ酢酸ビニル、2-クロロエチルビニルエーテル、アリルクロロアセテートあるいはグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル化合物とモノクロロ酢酸との付加反応生成物が用いられる。
【0020】
また、この特許文献には、n-ブチルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレートおよびモノクロロ酢酸ビニルの3元共重合アクリルゴムと該共重合ゴムにさらにCH2=CHCOOC2H4(COC5H10O)mCOCH3 (m :平均2.11)を共重合させた4元共重合アクリルゴムとのブレンド体を加硫すると、TR10値が-44℃と耐寒性にすぐれた加硫物を与えるが、3元共重合アクリルゴム単体の加硫物のTR10値は-40℃にすぎないことが記載されている。
【0021】
この活性塩素基含有アクリルゴムの加硫剤としては、高級脂肪酸金属塩(脂肪酸金属石けん)およびイオウ(供与体)よりなる加硫系が、活性塩素基含有アクリルゴム100重量部当りそれぞれ約0.5~10重量部、好ましくは約1.5~8重量部および約0.2~5重量部、好ましくは約0.4~3重量部の割合で用いられる。
【0022】
なお、活性塩素基含有アクリルゴムの加硫剤としては、トリアジン化合物も用いられている。
【0023】
本発明のアクリルゴムとしては、好ましくは、共重合体中に1~3重量%のモノクロロ酢酸ビニル単量体を架橋性共単量体として共重合させた共重合体であって、架橋性共単量体以外の他の共単量体100重量%中、n-ブチルアクリレートを65~75.5重量%および2-メトキシエチルアクリレートを35~20重量%の割合で仕込み、共重合させてなるアクリルゴムが用いられる。
【0024】
さらに、必要に応じて、混練加工性や押出加工性などを改善する目的で、側鎖にグリコール残基を有する多官能性(メタ)アクリレートまたはオリゴマー、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール等のアルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA・エチレンオキサイド付加物ジアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、グリセリンメタクリレートアクリレート、3-アクリロイルオキシグリセリンモノメタクリレート等をさらに共重合して用いることもできる。これらを共重合させることにより、架橋性共単量体以外の他の共単量体を100%とすることができる。
【0025】
また、他の超耐寒グレードの架橋性基含有アクリルゴムとしては、本出願人が先に、超耐寒グレードのアクリルゴムが、共重合体中に1~3重量%、好ましくは1~2.5重量%のフマル酸モノアルキルエステル単量体を架橋性共単量体として共重合させた共重合体であって、架橋性共単量体以外の他の共単量体100重量%中、n-ブチルアクリレートを45~65重量%、好ましくは56~62重量%、2-メトキシエチルアクリレートを12~32重量%、好ましくは12~23重量%およびエトキシエトキシエチルアクリレートを11~30重量%、好ましくは19~26重量%の割合で共重合させたアクリルゴムを提案している(特願2019-110275)。
【0026】
得られた架橋性基含有アクリルゴムは、特許文献1に記載される加硫剤以外にも、芳香族ジアミン化合物加硫剤、好ましくはさらにグアニジン化合物加硫助剤が配合されて加硫成形される。
【0027】
芳香族ジアミン化合物としては、例えば4,4′-メチレンジアニリン、m-フェニレンジアミン、4,4′-ジアミノジフェニルエーテル、p-フェニレンジアミン、p,p′-エチレンジアニリン、4,4′-(p-フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、4,4′-(m-フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、3,4′-ジアミノジフェニルエーテル、4,4′-ジアミノジフェニルスルホン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、4,4′-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェノール、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン等が用いられ、好ましくはp-ジアミノ置換体が用いられる。これらの芳香族ジアミン化合物は、架橋性基含有アクリル共重合体100重量部当り約0.1~5重量部、好ましくは約0.2~4重量部、更に好ましくは約0.5~3重量部の割合で用いられる。これより少ない配合割合では、加硫が不十分となり、十分な耐圧縮永久歪特性が得られず、一方これより多い割合で用いられると、スコーチが起り、加硫が行われなくなる。これに対して、脂肪族ジアミン化合物または脂環状ジアミン化合物を用いた場合には、極めてスコーチし易くなり、加工安定性の確保が困難となる。
【0028】
また、グアニジン化合物としては、例えばグアニジン以外に、ジフェニルグアニジン、テトラメチルグアニジン、テトラエチルグアニジン、ジ-o-トリルグアニジン、1-o-トリルビグアニド、ジカテコールボレートのジ-o-トリルグアニジン塩等が用いられ、中でもジフェニルグアニジン、ジ-o-トリルグアニジンが好んで用いられる。これらのグアニジン化合物は、架橋性基含有アクリル共重合体100重量部当り約0.1~10重量部、好ましくは約0.3~6重量部、更に好ましくは約0.5~4重量部の割合で用いられる。配合割合がこれよりも少ないと、加硫速度が遅くなり、二次加硫に長時間を要するようになり、実用的ではない。一方、これより多い割合で用いられると、加硫が阻害され、十分な耐圧縮永久歪特性が得られなくなる。加硫促進剤として、グアニジン化合物以外のものを用いた場合には、十分な耐圧縮永久歪特性が得られなくなる。
【0029】
かかる超耐寒グレードのアクリルゴムに対しては、それの100重量部当りSP値(溶解度パラメーター;Small式による)が8.5~10.5の可塑剤が5~15重量部の割合で用いられる。
【0030】
かかるSP値を有する可塑剤としては、例えばアデカ製品アデカサイザーRS700(ポリエチレングリコール(Mw:300)ジ(2-エチルヘキサノエート)、エチレンオキサイド基数:平均6、SP値:8.9)、同社製品アデカサイザーRS107(アジピン酸ジエステル、SP値:9.2)、同社製品アデカサイザーRS1000(ポリエーテルエステル、SP値:9.7)等が用いられる。
【0031】
SP値がこれよりも大きいか、もしくは小さい可塑剤を用いると加工性などが劣るようになる。また、可塑剤の使用割合がこれよりも多いと混練加工性および耐油膨潤性に劣り、一方これよりも少ない割合で用いられる初期耐寒性に劣る。
【0032】
アクリル共重合体および特定SP値の可塑剤は、密閉式混練機を用いて補強剤、充填剤、安定剤、加工助剤等を添加した後、オープンロールを用いて加硫剤および加硫促進剤を添加して架橋性組成物とした後、約150~200℃、約1~30分間のプレス加硫を行った後、必要に応じて約150~180℃、約1~16時間のオーブン加硫(二次加硫)が行われる。
【実施例
【0033】
次に、実施例について本発明を説明する。
【0034】
実施例1
(1)温度計、攪拌機、窒素ガス導入管およびジムロート冷却管を備えたセパラバルフラスコ内に、
n-ブチルアクリレート 70重量部
2-メトキシエチルアクリレート 28 〃
モノクロロ酢酸ビニル 2 〃
よりなる単量体混合物と水187重量部、界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル)各1.6重量部、連鎖移動剤(n-ドデシルメルカプタン)0.0035重量部とを仕込み、窒素ガス置換を行い系内の酸素を十分に除去した後、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート 0.011重量部と第3ブチルハイドロパーオキサイド 0.0063重量部とからなるレドックス系開始剤を加えて、室温条件下で共重合反応を開始させ、重合転化率が90%以上になるまで反応を継続した。
【0035】
形成された水性ラテックスを10重量%硫酸ナトリウム水溶液で凝析させ、水洗、乾燥して架橋性基含有アクリルポリマーA(JIS K6240に準拠して測定されたガラス転移点Tg:-47℃)を得た。
【0036】
(2) 架橋性基含有アクリルポリマーA 100重量部
FEFカーボンブラック 50 〃
シリカ 40 〃
加硫剤(イオウ) 0.3 〃
加硫促進剤(ステアリン酸ナトリウム) 3 〃
加硫促進剤(ステアリン酸カリウム) 0.25 〃
可塑剤(アデカサイザーRS700、SP値:8.9) 8.5 〃
以上の各成分ならびに加硫上、物性上、機能上要求される各種配合剤を密閉式混練機およびオープンロールを用いて混練し、混練物を180℃、6分間のプレス加硫および170℃、6時間のオーブン加硫(二次加硫)を行い、厚さ2mmの加硫ゴムシートを得た。
【0037】
得られた混練物および加硫ゴムシートについて、次の各項目の測定および評価を行った。
加工性:
混練加工性:良を○、悪いを×と評価
ブリード性:少ないを○、多いを×と評価
耐油膨潤性:ISO 1817:1999に対応するJIS K6258準拠
150℃、70時間
1100mPa・sまたは1700mPa・s(40℃)の低粘度オイル浸漬
時の体積変化率を測定
6%以上を○、6%未満を×と評価
耐寒性:ISO 2921:1997に対応するJIS K6261に準拠してTR10値を測定
初期、1100mPa・sまたは1700mPa・s(40℃)の低粘度オイルに
150℃、70時間浸漬
-42℃以下を○、-42℃より高い場合を×と評価
【0038】
実施例2
実施例1において、1(2)で用いられた可塑剤(アデカサイザーRS700)量が6.0重量部に変更された。
【0039】
実施例3
実施例1において、1(1)では次の単量体混合物が用いられ、架橋性基含有アクリルポリマーB(ガラス転移点Tg:-48℃)が得られた。
n-ブチルアクリレート 74重量部
2-メトキシエチルアクリレート 24 〃
モノクロロ酢酸ビニル 2 〃
【0040】
実施例4
実施例1において、1(1)では次の単量体混合物が用いられ、架橋性基含有アクリルポリマーC(ガラス転移点Tg:-46℃)が得られた。
n-ブチルアクリレート 66重量部
2-メトキシエチルアクリレート 32 〃
モノクロロ酢酸ビニル 2 〃
【0041】
実施例5
実施例1において、1(2)で用いられた可塑剤(アデカサイザーRS700)量が14重量部に変更された。
【0042】
実施例6
実施例1において、1(2)では可塑剤としてアデカサイザーRS107(SP値:9.2)が同量(8.5重量部)用いられた。
【0043】
比較例1
実施例1において、1(2)で用いられた可塑剤(アデカサイザー)量が4重量部に変更された。
【0044】
比較例2
実施例1において、1(2)で用いられた可塑剤(アデカサイザー)量が16重量部に変更された。
【0045】
比較例3
(1) 実施例1において、1(1)では、次の単量体混合物が用いられ、架橋性基含有アクリルポリマーD(ガラス転移点Tg:-43℃)が得られた。
n-ブチルアクリレート 56重量部
2-メトキシエチルアクリレート 42 〃
モノクロロ酢酸ビニル 2 〃
【0046】
(2) 実施例1において、1(2)では可塑剤が用いられなかった。
【0047】
比較例4
(1) 実施例1において、1(1)では架橋性基含有アクリルポリマーAの代わりに架橋性基含有アクリルポリマーDが同量用いられた。
【0048】
(2) 実施例1において、1(2)では可塑剤(アデカサイザーRS700)が同量(8.5重量部)用いられた。
【0049】
比較例5
比較例4において、可塑剤(アデカサイザーRS700)量が10.0重量部に変更された。
【0050】
比較例6
実施例1において、1(2)では可塑剤として出光興産製品ダイアナプロセスオイル(SP値:6.6)が同量(8.5重量部)用いられた。加工性はいずれも×であり、耐油膨潤性および耐油性の測定は行われなかった。
【0051】
以上の各実施例および比較例で得られた結果は、次の表に示される。

【0052】
以上の結果から、次のようなことがいえる。
(1) 各実施例のものは、加工性、耐油膨潤性および初期ならびにオイル浸漬後の耐寒性がいずれも良好である。実使用環境では常に本発明のオイル浸漬状態と同じではなく、エンジン始動直後などはゴムに接触するオイル量は少なくなる。また、オイル種によっても浸漬状態の耐寒性が異なる場合があるため、ゴム組成物自体の耐寒性として初期のTR10値が重要となる。
(2) 規定された可塑剤がこれより少なく用いられると初期耐寒性に劣り(比較例1)、多く用いられると混練加工性および耐油膨潤性に劣る(比較例2)。
(3) 規定された可塑剤が用いられないと、耐寒性に劣る(比較例3)。
(4) アクリレート単量体の比率が規定外のアクリルポリマーが用いられると、耐油膨潤性および(初期)耐寒性に劣る(比較例4~5)。
(5)規定されたSP値を有しない可塑剤が用いられると、加工性に劣る(比較例6)。すなわち、未加硫生地やアクリルゴム組成物からのブリード量が多く、加工性が損なわれる。