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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-20
(45)【発行日】2023-09-28
(54)【発明の名称】殺菌剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A01N 37/06 20060101AFI20230921BHJP
   A01N 43/90 20060101ALI20230921BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20230921BHJP
   A01G 13/00 20060101ALI20230921BHJP
   A01G 20/00 20180101ALI20230921BHJP
【FI】
A01N37/06
A01N43/90 105
A01P3/00
A01G13/00 A
A01G20/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022503667
(86)(22)【出願日】2021-02-25
(86)【国際出願番号】 JP2021006957
(87)【国際公開番号】W WO2021172390
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-04-15
(31)【優先権主張番号】P 2020032124
(32)【優先日】2020-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004307
【氏名又は名称】日本曹達株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100194250
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 直志
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(72)【発明者】
【氏名】福島 悠介
(72)【発明者】
【氏名】山田 茂雄
【審査官】長谷川 莉慧霞
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-012514(JP,A)
【文献】特開平04-193808(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1628523(CN,A)
【文献】特開2017-178816(JP,A)
【文献】特開2004-018442(JP,A)
【文献】特開平10-109906(JP,A)
【文献】特開2005-200397(JP,A)
【文献】特表2011-522786(JP,A)
【文献】特開平11-246312(JP,A)
【文献】特開平08-109105(JP,A)
【文献】特表2017-503779(JP,A)
【文献】特開2013-072046(JP,A)
【文献】特開平08-092008(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
A01P
A01G
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジカルボン酸と、ジカルボン酸以外の殺菌作用を有する物質とを含有し、且つ
ジカルボン酸の質量が、ジカルボン酸以外の殺菌作用を有する物質の質量に対して、1以上4000以下であり、
前記ジカルボン酸以外の殺菌作用を有する物質がベンジルアミノプリンであり、
前記ジカルボン酸がフマル酸である、殺菌剤組成物。
【請求項2】
請求項に記載の殺菌剤組成物をイネ科植物に施用することを含む、殺菌方法。
【請求項3】
ジカルボン酸、およびジカルボン酸以外の殺菌作用を有する物質を、同時にまたは正順もしくは逆順に、イネ科植物に施用することを含み、
前記ジカルボン酸以外の殺菌作用を有する物質がベンジルアミノプリンであり、
前記ジカルボン酸がフマル酸である、殺菌方法。
【請求項4】
前記イネ科植物がシバである、請求項2または3に記載の殺菌方法。
【請求項5】
さらに添加剤を含有することを特徴とする請求項1に記載の殺菌剤組成物。
【請求項6】
殺菌剤組成物の総質量100%に対して、前記ジカルボン酸が20質量%~90質量%、前記ジカルボン酸以外の殺菌作用を有する物質が0.01質量%~10質量%、および前記添加剤が0.1質量%~70質量%であことを特徴とする請求項に記載の殺菌剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺菌剤組成物に関する。より詳細に、本発明は、病害菌による農園芸植物の病害を予防または軽減することができる殺菌剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ジカルボン酸を用いた殺菌組成物および殺菌方法が種々提案されている。
例えば、特許文献1は、チモールおよびカルバクロールから選ばれた1種以上と、フマル酸およびフィチン酸から選ばれた1種以上と、を水に溶解させて成り、前記チモールおよびカルバクロールを合わせた配合量が0.01質量%以上0.04質量%以下であることを特徴とする水性殺菌組成物を開示している。
【0003】
特許文献2は、プロべナゾールと、酢酸、プロピオン酸、酪酸、蓚酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸などの酸の1種または2種以上を含有することを特徴とするイネ育苗箱用殺菌組成物を開示している。
【0004】
特許文献3は、カイワレ大根またはカイワレ大根の種子をフマル酸で殺菌することを特徴とするカイワレ大根の殺菌方法を開示している。
【0005】
特許文献4は、フマル酸またはその塩を含有する、土壌改質用または殺菌用剤を開示している。特許文献4は、土壌改質用または殺菌用剤には、フマル酸およびその塩以外に、本発明の効果に悪影響を与えない範囲において、各種の土質改良材、肥料、あるいは、農薬(殺菌剤、殺虫剤、除草剤、植物成長調節剤等)などを含有していてもよいと述べている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-178816号公報
【文献】特開平08-092008号公報
【文献】特開平11-069913号公報
【文献】特開2013-072046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、病害菌による農園芸植物の病害を予防または軽減することができる殺菌剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために検討した結果、下記の態様を包含する本発明を完成するに至った。
【0009】
[1]ジカルボン酸と、ジカルボン酸以外の殺菌作用を有する物質とを含有し、且つジカルボン酸の質量が、ジカルボン酸以外の殺菌作用を有する物質の質量に対して、1以上4000以下である、殺菌剤組成物。
[2]前記ジカルボン酸以外の殺菌作用を有する物質がベンジルアミノプリンである、[1]に記載の殺菌剤組成物。
[3]前記ジカルボン酸がフマル酸である、[1]または[2]に記載の殺菌剤組成物。
[4][1]~[3]のいずれかひとつに記載の殺菌剤組成物をイネ科植物に施用することを含む、殺菌方法。
[5]ジカルボン酸、およびジカルボン酸以外の殺菌作用を有する物質を、同時にまたは正順もしくは逆順に、イネ科植物に施用することを含む、殺菌方法。
[6]前記イネ科植物がシバである、[4]または[5]に記載の殺菌方法。
[7]さらに添加剤を含有し、前記ジカルボン酸以外の殺菌作用を有する物質がベンジルアミノプリンであり、前記ジカルボン酸がフマル酸であることを特徴とする[1]に記載の殺菌剤組成物。
[8]殺菌剤組成物の総質量100%に対して、前記ジカルボン酸が20質量%~90質量%、前記ジカルボン酸以外の殺菌作用を有する物質が0.01質量%~10質量%、および前記添加剤が0.1質量%~70質量%であことを特徴とする[7]に記載の殺菌剤組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明の殺菌剤組成物は、優れた殺菌の効果を有する。本発明の殺菌方法によれば、病害菌によるイネ科の植物の病害を予防または軽減できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の殺菌剤組成物は、ジカルボン酸と、ジカルボン酸以外の殺菌作用を有する物質とを含有するものである。
【0012】
(ジカルボン酸)
本発明に用いられるジカルボン酸は、カルボキシル基(COOH基)を2つ有する有機化合物であれば特に制限されない。本発明に用いられるジカルボン酸は、カルボキシル基以外の部分を構成する炭素原子の数が6以下であってもよい。
【0013】
ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、o-フタル酸、イソフタル酸、m-フタル酸、テレフタル酸、p-フタル酸などを挙げることができる。これらのうち、フマル酸、フタル酸が好ましく、フマル酸がより好ましい。
ジカルボン酸の質量は、ジカルボン酸以外の殺菌作用を有する物質の質量に対して、1以上4000以下、好ましくは10以上3000以下、より好ましくは50以上2000以下、さらに好ましくは100以上1000以下である。
【0014】
(フマル酸)
フマル酸(Fumaric Acid)は、式(I)で表させる化合物(IUPAC名:(E)-2-butenedioic acid、CAS番号110-17-8)である。
フマル酸は無色結晶であり、ベントグラスに対して、かさ枯病や藻類に高い効果があることが知られている。
フマル酸を含有する農薬組成物の製品としては、アルテリア(登録商標)水和剤(日本曹達株式会社製)などを挙げることができる。
【0015】
【化1】
【0016】
(ジカルボン酸以外の殺菌作用を有する物質)
本発明に用いられるジカルボン酸以外の殺菌作用を有する物質は、ジカルボン酸以外の化合物であって、殺菌作用を有するものであれば、特に限定されない。
本発明に用いられるジカルボン酸以外の殺菌作用を有する物質は、農薬の有効成分として用いられるものであってもよい。
【0017】
本発明に用いられるジカルボン酸以外の殺菌作用を有する物質としては、以下のものを挙げることができる。
【0018】
(1)核酸生合成阻害剤:
(a)RNAポリメラーゼI阻害剤: ベナラキシル(benalaxyl)、ベナラキシル-M(benalaxyl-M)、フララキシル(furalaxyl)、メタラキシル(metalaxyl)、メタラキシル-M(metalaxyl-M)、オキサジキシル(oxadixyl)、クロジラコン(clozylacon)、オフレース(ofurace);
(b)アデノシンデアミナーゼ阻害剤: ブピリメート(bupirimate)、ジメチリモール(dimethirimol)、エチリモール(ethirimol);
(c)DNA/RNA合成阻害剤: ヒメキサゾール(hymexazol)、オクチリノン(octhilinone);
(d)DNAトポイソメラーゼII阻害剤: オキソリン酸(oxolinic acid)。
【0019】
(2)有糸核分裂阻害剤および細胞分裂阻害剤:
(a)β-チューブリン重合阻害剤: ベノミル(benomyl)、カルベンダジム(carbendazim)、クロルフェナゾール(chlorfenazole)、フベリダゾール(fuberidazole)、チアベンダゾール(thiabendazole)、チオファネート(thiophanate)、チオファネートメチル(thiophanate-methyl)、ジエトフェンカルブ(diethofencarb)、ゾキサミド(zoxamide)、エタボキサム(ethaboxam);
(b)細胞分裂阻害剤: ペンシクロン(pencycuron);
(c)スペクトリン様タンパク質の非局在化阻害剤: フルオピコリド(fluopicolide)。
【0020】
(3)呼吸阻害剤:
(a)複合体I NADH酸化還元酵素阻害剤: ジフルメトリム(diflumetorim)、トルフェンピラド(tolfenpyrad);
(b)複合体IIコハク酸脱水素酵素阻害剤: ベノダニル(benodanil)、フルトラニル(flutolanil)、メプロニル(mepronil)、イソフェタミド(isofetamid)、フルオピラム(fluopyram)、フェンフラム(fenfuram)、フルメシクロックス(furmecyclox)、カルボキシン(carboxin)、オキシカルボキシン(oxycarboxin)、チフルザミド(thifluzamide)、ベンゾビンジフルピル(benzovindiflupyr)、ビキサフェン(bixafen)、フルキサピロキサド(fluxapyroxad)、フラメトピル(furametpyr)、イソピラザム(isopyrazam)、ペンフルフェン(penflufen)、ペンチオピラド(penthiopyrad)、セダキサン(sedaxane)、ボスカリド(boscalid)、ピラジフルミド(pyraziflumid)、ピジフルメトフェン(pydiflumetofen)、イソフルシプラム(isoflucypram)、インピルフルキサム(inpyrfluxam);
(c)複合体IIIユビキノールオキシダーゼQo阻害剤: アゾキシストロビン(azoxystrobin)、クモキシストロビン(coumoxystrobin)、クメトキシストロビン(coumethoxystrobin)、エノキサストロビン(enoxastrobin)、フルフェノキシストロビン(flufenoxystrobin)、ピコキシストロビン(picoxystrobin)、ピラオキシストロビン(pyraoxystrobin)、ピラクロストロビン(pyraclostrobin)、ピラメトストロビン(pyrametostrobin)、トリクロピリカルブ(triclopyricarb)、クレソキシム-メチル(kresoxim-methyl)、トリフロキシストロビン(trifloxystrobin)、ジモキシストロビン(dimoxystrobin)、フェナミンストロビン(fenaminstrobin)、メトミノストロビン(metominostrobin)、オリサストロビン(orysastrobin)、ファモキサドン(famoxadone)、フルオキサストロビン(fluoxastrobin)、フェンアミドン(fenamidone)、ピリベンカルブ(pyribencarb)、マンデストロビン(mandestrobin)、メチルテトラプロール(metyltetraprole);
(d)複合体IIIユビキノール還元酵素Qi阻害剤: シアゾファミド(cyazofamid)、アミスルブロム(amisulbrom)、フェンピコキサミド(fenpicoxamid);
(e)酸化的リン酸化の脱共役剤: ビナパクリル(binapacryl)、メプチルジノカップ(meptyldinocap)、ジノカップ(dinocap)、フルアジナム(fluazinam)、フェリムゾン(ferimzone);
(f)酸化的リン酸化阻害剤(ATP 合成酵素の阻害剤): フェンチンアセテート(fentin acetate)、塩化フェンチン(fentin chloride)、水酸化フェンチン(fentin hydroxide);
(g)ATP生産阻害剤: シルチオファム(silthiofam);
(h)複合体III:シトクローム bc1(ユビキノン還元酵素)のQx(未知)阻害剤: アメトクトラジン(ametoctradin)。
【0021】
(4)アミノ酸およびタンパク質合成阻害剤
(a)メチオニン生合成阻害剤: アンドプリム(andoprim)、シプロジニル(cyprodinil)、メパニピリム(mepanipyrim)、ピリメタニル(pyrimethanil);
(b)タンパク質合成阻害剤: ブラストサイジン-S(blasticidin-S)、カスガマイシン(kasugamycin)、カスガマイシン塩酸塩(kasugamycin hydrochloride)、ストレプトマイシン(streptomycin)、オキシテトラサイクリン(oxytetracycline)。
【0022】
(5)シグナル伝達阻害剤:
(a)シグナル伝達阻害剤: キノキシフェン(quinoxyfen)、プロキナジド(proquinazid);
(b)浸透圧シグナル伝達におけるMAP・ヒスチジンキナーゼ阻害剤: フェンピクロニル(fenpiclonil)、フルジオキソニル(fludioxonil)、クロゾリネート(chlozolinate)、イプロジオン(iprodione)、プロシミドン(procymidone)、ビンクロゾリン(vinclozolin)。
【0023】
(6)脂質および細胞膜合成阻害剤:
(a)りん脂質生合成、メチルトランスフェラーゼ阻害剤: エジフェンホス(edifenphos)、イプロベンホス(iprobenfos)、ピラゾホス(pyrazophos)、イソプロチオラン(isoprothiolane);
(b)脂質の過酸化剤: ビフェニル(biphenyl)、クロロネブ(chloroneb)、ジクロラン(dichloran)、キントゼン(quintozene)、テクナゼン(tecnazene)、トルクロホスメチル(tolclofos-methyl)、エトリジアゾール(etridiazole);
(c)細胞膜に作用する剤: ヨードカルブ(iodocarb)、プロパモカルブ(propamocarb)、プロパモカルブ塩酸塩(propamocarb-hydrochloride)、プロパモカルブホセチレート(propamocarb-fosetylate)、プロチオカルブ(prothiocarb);
(d)病原菌細胞膜を撹乱する微生物: バチルス ズブチリス菌(bacillus subtilis)、バチルス ズブチリスQST713株(bacillus subtilis strain QST713)、バチルス ズブチリスFZB24株(bacillus subtilis strain FZB24)、バチルス ズブチリスMBI600株(bacillus subtilis strain MBI600)、バチルス ズブチリスD747株(bacillus subtilis strain D747)、バチルス アミロリクエファシエンス(bacillus amyloliquefaciens);
(e)細胞膜を撹乱する剤: ゴセイカユプテ(ティーツリー)の抽出物(melaleuca alternifolia (tea tree) extract)。
【0024】
(7)細胞膜のステロール生合成阻害剤:
(a)ステロール生合成におけるC14位の脱メチル化阻害剤: トリホリン(triforine)、ピリフェノックス(pyrifenox)、ピリソキサゾール(pyrisoxazole)、フェナリモル(fenarimol)、フルルプリミドール(flurprimidol)、ヌアリモル(nuarimol)、イマザリル(imazalil)、イマザリル硫酸塩(imazalil-sulphate)、オキスポコナゾールフマル酸塩(oxpoconazole fumarate)、ペフラゾエート(pefurazoate)、プロクロラズ(prochloraz)、トリフルミゾール(triflumizole)、ビニコナゾール(viniconazole)、アザコナゾール(azaconazole)、ビテルタノール(bitertanol)、ブロムコナゾール(bromuconazole)、シプロコナゾール(cyproconazole)、ジクロブトラゾール(diclobutrazol)、ジフェノコナゾール(difenoconazole)、ジニコナゾール(diniconazole)、ジニコナゾール-M(diniconazole-M)、エポキシコナゾール(epoxiconazole)、エタコナゾール(etaconazole)、フェンブコナゾール(fenbuconazole)、フルキンコナゾール(fluquinconazole)、フルシラゾール(flusilazole)、フルトリアホール(flutriafol)、フルコナゾール(furconazole)、フルコナゾール-シス(furconazole-cis)、ヘキサコナゾール(hexaconazole)、イミベンコナゾール(imibenconazole)、イプコナゾール(ipconazole)、メトコナゾール(metconazole)、ミクロブタニル(myclobutanil)、ペンコナゾール(penconazole)、プロピコナゾール(propiconazole)、フルキンコナゾール(fluquinconazole)、シメコナゾール(simeconazole)、テブコナゾール(tebuconazole)、テトラコナゾール(tetraconazole)、トリアジメホン(triadimefon)、トリアジメノール(triadimenol)、トリチコナゾール(triticonazole)、プロチオコナゾール(prothioconazole)、ボリコナゾール(voriconazole)、メフェントリフルコナゾール(mefentrifluconazole);
(b)ステロール生合成におけるΔ14還元酵素およびΔ8→Δ7-イソメラーゼの阻害剤:
アルジモルフ(aldimorph)、ドデモルフ(dodemorph)、ドデモルフ酢酸塩(dodemorph acetate)、フェンプロピモルフ(fenpropimorph)、トリデモルフ(tridemorph)、フェンプロピジン(fenpropidin)、ピペラリン(piperalin)、スピロキサミン(spiroxamine);
(c)ステロール生合成系のC4位脱メチル化における3-ケト還元酵素阻害剤: フェンヘキサミド(fenhexamid)、フェンピラザミン(fenpyrazamine);
(d)ステロール生合成系のスクワレンエポキシダーゼ阻害剤: ピリブチカルブ(pyributicarb)、ナフチフィン(naftifine)、テルビナフィン(terbinafine)。
【0025】
(8)細胞壁合成阻害
(a)トレハラーゼ阻害剤: バリダマイシン(validamycin);
(b)キチン合成酵素阻害剤: ポリオキシン(polyoxins)、ポリオクソリム(polyoxorim);
(c)セルロース合成酵素阻害剤: ジメトモルフ(dimethomorph)、フルモルフ(flumorph)、ピリモルフ(pyrimorph)、ベンチアバリカルブイソプロピル(benthiavalicarb-isopropyl)、イプロバリカルブ(iprovalicarb)、バリフェナレート(valifenalate)、マンジプロパミド(mandipropamid)。
【0026】
(9)メラニン生合成阻害剤
(a)メラニン生合成の還元酵素阻害剤: フサライド(fthalide)、ピロキロン(pyroquilon)、トリシクラゾール(tricyclazole);
(b)メラニン生合成の脱水酵素阻害剤: カルプロパミド(carpropamid)、ジクロシメット(diclocymet)、フェノキサニル(fenoxanil);
(c)メラニン生合成のポリケタイド合成阻害剤:トルプロカルブ(tolprocarb)。
【0027】
(10)宿主植物の抵抗性誘導剤:
(a)サリチル酸合成経路に作用する剤: アシベンゾラル-S-メチル(acibenzolar-S-methyl);
(b)その他: プロベナゾール(probenazole)、チアジニル(tiadinil)、イソチアニル(isotianil)、ジクロベンチアゾクス(dichlobentiazox)、ラミナリン(laminarin)、オオイタドリ抽出液(reynoutria sachalinensis extract)。
【0028】
(11)作用性が不明な剤: シモキサニル(cymoxanil)、リン酸(リン酸塩)(phosphoric acid (phosphate))、テクロフタラム(tecloftalam)、トリアゾキシド(triazoxide)、フルスルファミド(flusulfamide)、ジクロメジン(diclomezine)、メタスルホカルブ(methasulfocarb)、シフルフェナミド(cyflufenamid)、メトラフェノン(metrafenone)、ピリオフェノン(pyriofenone)、ドジン(dodine)、ドジン遊離塩基(dodine free base)、フルチアニル(flutianil)。
【0029】
(12)多作用点を有する剤: 硫黄(sulfur)、硫黄製品(sulfur product)、多硫化カルシウム(calcium polysulfide)、ファーバム(ferbam)、マンコゼブ(mancozeb)、マネブ(maneb)、マンカッパー(mancopper)、メチラム(metiram)、ポリカーバメート(polycarbamate)、プロピネブ(propineb)、チラム(thiram)、ジネブ(zineb)、ジラム(ziram)、キャプタン(captan)、カプタホール(captafol)、フォルペット(folpet)、クロロタロニル(chlorothalonil)、ジクロフルアニド(dichlofluanid)、トリルフルアニド(tolylfluanid)、グアザチン(guazatine)、イミノクタジン酢酸塩(iminoctadine triacetate)、イミノクタジンアルベシル酸塩(iminoctadine trialbesilate)、アニラジン(anilazine)、ジチアノン(dithianon)、キノメチオネート(quinomethionate)、フルオルイミド(fluoroimide)。
【0030】
(13)その他の剤: DBEDC、フルオロフォルペット(fluorofolpet)、グアザチンアセテート(guazatine acetate)、ビス(8-キノリノラト)銅(II)(bis (8-quinolinolato) copper(II))、プロパミジン(propamidine)、クロロピクリン(chloropicrin)、シプロフラム(cyprofuram)、アグロバクテリウム(agrobacterium)、ベトキサジン(bethoxazin)、ジフェニルアミン(diphenylamine)、メチルイソチアネート(MITC)(methyl isothiocyanate)、ミルデオマイシン(mildiomycin)、カプサイシン(capsaicin)、クフラネブ(cufraneb)、シプロスルファミド(cyprosulfamide)、ダゾメット(dazomet)、デバカルブ(debacarb)、ジクロロフェン(dichlorophen)、フルメトベル(flumetover)、イルママイシン(irumamycin)、ナタマイシン(natamycin)、ニトロタールイソプロピル(nitrothal isopropyl)、オキサモカルブ(oxamocarb)、ピロールニトリン(pyrrolnitrin)、テブフロキン(tebufloquin)、トルニファニド(tolnifanide)、ザリラミド(zarilamide)、アルゴフェーズ(algophase)、アミカルチアゾール(amicarthiazol)、オキサチアピプロリン(oxathiapiprolin)、メチラム亜鉛(metiram zinc)、ベンチアゾール(benthiazole)、トリクラミド(trichlamide)、ユニコナゾール(uniconazole)、オキシフェンチイン(oxyfenthiin) 、ピカルブトラゾクス(picarbutrazox)、ジクロベンチアゾクス(dichlobentiazox)、キノフメリン(quinofumelin)チウラム(thiuram)、アンバム(ambam)、アグロバクテリウム ラジオバクター(agrobacterium radiobacter)、コニオチリウム ミニタンス(coniothyrium minitans)、シュードモナス フルオレッセンス(pseudomonas fluorescens)、シュードモナス ロデシア(pseudomonas rhodesiae)、タラロマイセス フラバス(talaromyces flavus)、トリコデルマ アトロビリデ(trichoderma atroviride)、非病原性エルビニア カロトボーラ(erwinia carotovora subsp. carotovora)、バチルス シンプレクス(bacillus simplex)、バリオボラックス パラドクス(variovorax paradoxus)、ラクトバチルス プランタラム(lactobacillus plantarum)、フロリルピコキサミド(florylpicoxamid)、ピラプロポイン(pyrapropoyne)、フルインダピル(fluindapyr)、アミノピリフェン(aminopyrifen)、ピリダクロメチル(pyridachlometyl)、イプフルフェノキン(ipflufenoquin)、
【0031】
アブシジン酸、カイネチン、ベンジルアミノプリン(別名:ベンジルアデニン、BAP:ベンジルアミノプリンを含有する製品としては、ビーエー(登録商標)液剤(クミアイ化学工業株式会社製)、ドラード(登録商標)液剤(株式会社理研グリーン社製)、プレリュード(登録商標)液剤(アグロ カネショウ株式会社製)等が知られている。)、1,3-ジフェニルウレア、ホルクロルフェニュロン、チジアズロン、クロルフェヌロン、ジヒドロゼアチン、ジベレリンA、ジベレリンA4、ジベレリンA7、ジベレリンA3、1-メチルシクロプロパン、N-アセチルアミノエトキシビニルグリシン(別名:アビグリシン)、アミノオキシ酢酸、硝酸銀、塩化コバルト、IAA、4-CPA、クロプロップ、2,4-D、MCPB、インドール-3-酪酸、ジクロルプロップ、フェノチオール、1-ナフチルアセトアミド、エチクロゼート、クロキシホナック、マレイン酸ヒドラジド、2,3,5-トリヨード安息香酸、サリチル酸、サリチル酸メチル、(-)-ジャスモン酸、ジャスモン酸メチル、(+)-ストリゴール、(+)-デオキシストリゴール、(+)-オロバンコール、(+)-ソルゴラクトン、4-オキソ-4-(2-フェニルエチル)アミノ酪酸、エテホン、クロルメコート、メピコートクロリド、ベンジルアデニン、5-アミノレブリン酸、ダミノジッド。
【0032】
これらのうち、オキシテトラサイクリン、ストレプトマイシン、ピカルブトラゾクス、ベンジルアミノプリン、ジラム、アシベンゾラル-S-メチルが好ましく、ベンジルアミノプリンがより好ましい。
【0033】
(ベンジルアミノプリン)
ベンジルアミノプリンは、式(II)で表させる化合物(6-ベンジルアミノプリン、ベンジルアデニン、またはBAP(CAS番号1214-39-7))である。
ベンジルアミノプリンの原体は、白色粉末として、通常、提供される。
ベンジルアミノプリンを含有する製品としては、ビーエー(登録商標)液剤(クミアイ化学工業株式会社製)、ドラード(登録商標)液剤(株式会社理研グリーン社製)、プレリュード(登録商標)液剤(アグロ カネショウ株式会社製)などを挙げることができる。
【0034】
【化2】
【0035】
本発明の殺菌剤組成物は、添加剤をさらに含有することができる。添加剤としては、例えば、担体、界面活性剤若しくは分散剤、補助剤、酸化防止剤、着色剤、滑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、防腐剤などを挙げることができる。これらのうち、界面活性剤若しくは分散剤を含有させることが好ましい。
本発明の殺菌剤組成物の総質量100%に対して、ジカルボン酸、ジカルボン酸以外の殺菌作用を有する物質、および添付剤の質量は、
ジカルボン酸 20質量%~90質量%
ジカルボン酸以外の殺菌作用を有する物質 0.03質量%~10質量%
添加剤 0.1質量%~70質量%
であり、さらに好ましくは、
ジカルボン酸 50質量%~85質量%
ジカルボン酸以外の殺菌作用を有する物質 0.05質量%~ 5質量%
添加剤 10質量%~45質量%
である。さらに好ましくは、
ジカルボン酸 60質量%~80質量%
ジカルボン酸以外の殺菌作用を有する物質 0.1質量%~ 1質量%
添加剤 19質量%~39質量%
である。
本発明の殺菌剤組成物を水で希釈して使用することができる。その場合の質量は上記質量に水で希釈した倍率で除した値になる。
【0036】
担体としては、炭酸カルシウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸アンモニウム等の無機塩類;クエン酸、リンゴ酸、ステアリン酸等の有機酸及びそれらの塩;グルコース、乳糖、ショ糖等の糖類;アルミナ粉、シリカゲル、ゼオライト、ヒドロキシアパタイト、リン酸ジルコニウム、リン酸チタン、酸化チタン、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、カオリナイト、モンモリロナイト、タルク、クレー、珪藻土、ベントナイト、ホワイトカーボン、カオリン、バーミキュライト等の固体担体を挙げることができる。担体の含有量は、特に限定されないが、ジカルボン酸1質量部に対して、好ましくは0.01~30質量部、より好ましくは0.1~20質量部、さらに好ましくは0.3~10質量部である。
【0037】
界面活性剤または分散剤は、通常の農園芸用製剤に使用できるものであれば特に限定されるものではない。界面活性剤または分散剤としては、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤を挙げることができる。
非イオン性界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル(C12~18)、POEソルビタン脂肪酸エステル(C12~18)、ショ糖脂肪酸エステルなどの糖エステル型界面活性剤;POE脂肪酸エステル(C12~18)、POE樹脂酸エステル、POE脂肪酸ジエステル(C12~18)などの脂肪酸エステル型界面活性剤;POEアルキルエーテル(C12~18)等のアルコール型界面活性剤;POEアルキル(C8~12)フェニルエーテル、POEジアルキル(C8~12)フェニルエーテル、POEアルキル(C8~12)フェニルエーテルホルマリン縮合物などのアルキルフェノール型界面活性剤;ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマー;アルキル(C12~18)ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマーエーテルなどのポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマー型界面活性剤;POEアルキルアミン(C12~18)、POE脂肪酸アミド(C12~18)などのアルキルアミン型界面活性剤;POE脂肪酸ビスフェニルエーテルなどのビスフェノール型界面活性剤;POAベンジルフェニル(又はフェニルフェニル)エーテル、POAスチリルフェニル(又はフェニルフェニル)エーテルなどの多芳香環型界面活性剤;POEエーテル及びエステル型シリコン及びフッ素系界面活性剤などのシリコン系、フッ素系界面活性剤;POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油などの植物油型界面活性剤;等を挙げることができる。
【0038】
アニオン性界面活性剤としては、アルキルサルフェート(C12~18、Na、NH、アルカノールアミン)、POEアルキルエーテルサルフェート(C12~18、Na、NH、アルカノールアミン)、POEアルキルフェニルエーテルサルフェート(C12~18、NH、アルカノールアミン)、POEベンジル(又はスチリル)フェニル(又はフェニルフェニル)エーテルサルフェート(Na、NH、アルカノールアミン)、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンブロックポリマーサルフェート(Na、NH、アルカノールアミン)などのサルフェート型界面活性剤;パラフィン(アルカン)スルホネート(C12~22、Na、Ca、アルカノールアミン)、AOS(C14~16、Na、アルカノールアミン)、ジアルキルスルホサクシネート(C8~12、Na、Ca、Mg)、アルキルベンゼンスルホネート(C12、Na、Ca、Mg、NH、アルキルアミン、アルカノール、アミン、シクロヘキシルアミン)、モノ又はジアルキル(C3~6)ナフタレンスルホネート(Na、NH、アルカノールアミン、Ca、Mg)、ナフタレンスルホネート・ホルマリン縮合物(Na、NH)、アルキル(C8~12)ジフェニルエーテルジスルホネート(Na、NH)、リグニンスルホネート(Na、Ca)、POEアルキル(C8~12)フェニルエーテルスルホネート(Na)、POEアルキル(C12~18)エーテルスルホコハク酸ハーフエステル(Na)などのスルホネート型界面活性剤;カルボン酸型脂肪酸塩(C12~18、Na、K、NH、アルカノールアミン)、N-メチル-脂肪酸サルコシネート(C12~18、Na)、樹脂酸塩(Na、K)などPOEアルキル(C12~18)エーテルホスフェート(Na、アルカノールアミン)、POEモノ又はジアルキル(C8~12)フェニルエーテルホスフェート(Na、アルカノールアミン)、POEベンジル(又はスチリル)化フェニル(又はフェニルフェニル)エーテルホスフェート(Na、アルカノールアミン)、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマー(Na、アルカノールアミン)、ホスファチジルコリン・ホスファチジルエタノールイミン(レシチン)、アルキル(C8~12)ホスフェートなどのホスフェート型界面活性剤;等を挙げることができる。
【0039】
カチオン性界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド(C12~18)、メチル・ポリオキシエチレン・アルキルアンモニウムクロライド(C12~18)、アルキル・N-メチルピリジウムブロマイド(C12~18)、モノ又はジアルキル(C12~18)メチル化アンモニウムクロライド、アルキル(C12~18)ペンタメチルプロピレンジアミンジクロライドなどのアンモニウム型界面活性剤;アルキルジメチルベンザルコニウムクロライド(C12~18)、ベンゼトニウムクロライド(オクチルフェノキシエトキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド)などのベンザルコニウム型界面活性剤;等を挙げることができる。
【0040】
両性界面活性剤としては、ジアルキル(C8~12)ジアミノエチルベタイン、アルキル(C12~18)ジメチルベンジルベタイン等のベタイン型界面活性剤;ジアルキル(C8~12)ジアミノエチルグリシン、アルキル(C12~18)ジメチルベンジルグリシンなどのグリシン型界面活性剤;等を挙げることができる。
【0041】
界面活性剤または分散剤は、1種単独で若しくは2種以上を組合せて用いることができる。界面活性剤及び/又は分散剤の含有量は、特に限定されないが、ジカルボン酸1質量部に対して、好ましくは0.01~30質量部、より好ましくは0.1~20質量部、さらに好ましくは0.3~10質量部である。
【0042】
補助剤として、例えば、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、アラビアゴム、ポリビニルピロリドン、澱粉等の増粘剤を挙げることができる。
【0043】
(他の成分)
本発明の殺菌剤組成物は、上記の成分以外に、他の成分をさらに含有していてもよい。他の成分としては、殺虫剤、殺ダニ剤、殺線虫剤、殺土壌害虫剤、駆虫剤、除草剤、植物成長調整剤、肥料などの非殺菌性成分を挙げることができる。混用の比率は、特に限定するものではなく、他の成分が適切な濃度になるように混合すれば良い。例えば、本発明の殺菌剤組成物と、殺虫剤、殺ダニ剤または成長調整剤との質量比は、好ましくは1/100~100/1、より好ましくは、1/10~10/1である。
【0044】
本発明の殺菌剤組成物は、その形態において特に制限されない。例えば、ジカルボン酸を含有する製剤とジカルボン酸以外の殺菌作用を有する物質を含有する製剤と、必要に応じて他の成分を含有する製剤とを所定割合で混合してなるもの; ジカルボン酸とジカルボン酸以外の殺菌作用を有する物質と、必要に応じて他の成分とを所定割合で混合して、製剤化してなるもの; ジカルボン酸を含有する製剤とジカルボン酸以外の殺菌作用を有する物質を含有する製剤と、必要に応じて他の成分を含有する製剤とを所定割合で水などの溶媒若しくは分散媒に添加してなるものなどが挙げられる。
【0045】
本発明の殺菌剤組成物は、その形態によって特に制限されない。本発明の殺菌剤組成物は、通常の農園芸用薬のとり得る形態であることができる。剤型としては、例えば、粉剤(DP、Dustable Powder)、水和剤(WP、Wattable Powder)、乳剤(EC、Emulsifiable Concentrate)、フロアブル剤(FL、flowable)、懸濁剤(SC、Suspension Concentrate)、水溶剤(SP、Water Soluble Powder)、顆粒水和剤(WG、Water Dispersible Granule)、錠剤(Tablet)、粒剤(GR、Granule)、SE剤(Suspo Emulsion)、OD剤(Oil Dispersion)、EW剤(Emulsion oil in water)等を挙げることができる。製剤化は、特にその手法や手順によって制限されず、公知の手法や手順によって行うことができる。また製剤化において使用される各種の担体、溶剤、添加剤などの製剤副資材は特に制限されない。
【0046】
例えば、固形製剤においては、大豆粉、小麦粉などの植物性粉末;珪藻土、燐灰石、石こう、タルク、ベントナイト、パイロフィライト、クレイなどの鉱物性微粉末; 安息香酸ソーダ、尿素、芒硝などの有機化合物および無機化合物; などの担体を用いることができる。
液体製剤においては、ケロシン、キシレンおよびソルベントナフサなどの石油留分、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アルコール、アセトン、トリクロルエチレン、メチルイソブチルケトン、鉱物油、植物油、水などの溶剤を用いることができる。
【0047】
さらに、製剤においては、均一かつ安定な形態を保つために、必要に応じて界面活性剤を添加することができる。界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンが付加したアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンが付加したアルキルエーテル、ポリオキシエチレンが付加した高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンが付加したソルビタン高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンが付加したトリスチリルフェニルエーテルなどの非イオン性界面活性剤; ポリオキシエチレンが付加したアルキルフェニルエーテルの硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコールの硫酸エステル塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ポリカルボン酸塩、リグニンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩のホルムアルデヒド縮合物、イソブチレン-無水マレイン酸の共重合体などのイオン性界面活性剤; が挙げられる。
【0048】
以下に本発明の殺菌剤組成物の製剤処方の例を示す。
【0049】
(製剤1:水和剤)
本発明の殺菌剤組成物 40部
珪藻土 53部
高級アルコール硫酸エステル 4部、および
アルキルナフタレンスルホン酸塩 3部
を均一に混合して微細に粉砕して、有効成分40%の水和剤を得る。
【0050】
(製剤2:乳剤)
本発明の殺菌剤組成物 30部
キシレン 33部
ジメチルホルムアミド 30部、および
ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル 7部
を混合溶解して、有効成分30%の乳剤を得る。
【0051】
(製剤3:粒剤)
本発明の殺菌剤組成物 5部
タルク 40部
クレー 38部
ベントナイト 10部、および
アルキル硫酸ソーダ 7部
を均一に混合して微細に粉砕後、直径0.5~1.0mmの粒状に造粒して有効成分5%の粒剤を得る。
【0052】
(製剤4:粒剤)
本発明の殺菌剤組成物 5部
クレー 73部
ベントナイト 20部
ジオクチルスルホサクシネートナトリウム塩 1部、および
リン酸カリウム 1部
をよく粉砕混合し、水を加えてよく練り合せた後、造粒乾燥して有効成分5%の粒剤を得る。
【0053】
(製剤5:懸濁剤)
本発明の殺菌剤組成物 10部
ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル 4部
ポリカルボン酸ナトリウム塩 2部
グリセリン 10部
キサンタンガム 0.2部、および
水 73.8部
を混合し、粒度が3ミクロン以下になるまで湿式粉砕し、有効成分10%の懸濁剤を得る。
【0054】
本発明の殺菌方法の一態様は、本発明の殺菌剤組成物を、植物体(根、茎、葉、種子、花の少なくともいずれか)、土壌または水耕地に施用することを含む。
【0055】
本発明の殺菌剤組成物は、水和剤、乳剤、またはフロアブル剤の場合には水で所定の濃度に希釈して懸濁液または乳濁液として; 粒剤または粉剤の場合にはそのままの状態で、種子処理、茎葉散布、土壌施用または水面施用などに用いられる。栽培土壌への施用は、植物を植える前に行ってもよいし、植物を植えた後に行ってもよい。本発明の殺菌剤組成物を土壌施用または水面施用に用いる場合には、1ヘクタール当たり有効成分0.1g以上の量で施用される。本発明の殺菌剤組成物を種子処理に用いる場合には、100kg種子当たり有効成分0.1g以上の量が施用される。種子処理は、種子または塊茎をコーティング、粉衣、浸漬などする方法で行うことができる。植物苗の根部を浸漬する方法を採用することもできる。本発明の殺菌剤組成物を茎葉処理に用いる場合には、1ヘクタール当たり有効成分0.1g以上の量が施用される。例えば、施設内に送風する送風装置の送風口付近に本発明の殺菌剤組成物を設置し、送風口から送出される空気とともに本発明の殺菌剤組成物を散布することもできる。本発明の殺菌剤組成物の施用量は、気象条件、施用時期、施用方法、施用機材によっても異なるが、ジカルボン酸の量として、好ましくは10アール当たり1~500,000g、より好ましくは10~100,000g、さらに好ましくは100~10,000gであり、またはジカルボン酸以外の殺菌作用を有する物質の量として、好ましくは10アール当たり0.01~5,000g、より好ましくは0.1~1,000g、さらに好ましくは1~100gである。なお、本発明の殺菌剤組成物の調製もしくは水による希釈、または本発明の殺菌剤組成物と他の成分との混合は、施用する直前に行うことができる。
【0056】
本発明の殺菌方法の別の一態様は、ジカルボン酸と、ジカルボン酸以外の殺菌作用を有する物質とを、同時にまたは正順もしくは逆順にて逐次に、植物、土壌または水耕地に施用することを含む。
【0057】
同時施用においては、ジカルボン酸を含有する製剤とジカルボン酸以外の殺菌作用を有する物質を含有する製剤と、必要に応じて他の成分を含有する製剤とを所定割合で、同時に、植物、土壌または水耕地に、散布、噴霧などする。
逐次施用においては、ジカルボン酸を含有する製剤とジカルボン酸以外の殺菌作用を有する物質を含有する製剤と、必要に応じて他の成分を含有する製剤とを所定割合で、順不同で、植物、土壌または水耕地に、散布、噴霧、灌注などする。逐次施用におけるジカルボン酸を含有する製剤とジカルボン酸以外の殺菌作用を有する物質を含有する製剤との施用間隔は、特に制限されないが、前段の成分が植物、土壌または水耕地に残っている間に後段の成分を施用することが好ましい。
【0058】
(対象作物)
本発明の殺菌剤組成物が対象としうる作物としては、特に限定されないが、好ましくはイネ科植物などが挙げられる。
イネ科(Gramineae)の植物として、例えば、エンバク(Avena sativa)、ハトムギ(Coix lacryma-jobi var. ma-yuen)、オーチャードグラス(Dactylis glomerata)、オオムギ(Hordeum vulgare)、イネ(Oryza sativa)、チモシー(Phleum pratense)、サトウキビ(Saccharum officinarum)、ライムギ(Secale cereale)、アワ(Setaria italica)、パンコムギ(Triticum aestivum)、トウモロコシ(Zea mays)、シバ(Zoysia spp.)を例示することができる。
さらにシバとして、ノシバ、コウライシバ、ヒメコウライシバ、バミューダグラス類、ティフトン類、ウィーピングラブグラス、ベントグラス類、ブルーグラス類、フェスク類、ライグラス類等が知られている。
本発明の殺菌剤組成物はこれら植物類の各部位、例えば、葉、茎、柄、花、蕾、果実、種子、スプラウト、根、塊茎、塊根、苗条、挿し木などに施用することができる。また、これら植物類の改良品種・変種、栽培品種、さらには突然変異体、ハイブリッド体、遺伝子組み換え体(GMO)を対象として処理することもできる。
【0059】
[実施例]
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0060】
本実施例等で使用した物質は以下のとおりである。
ジカルボン酸組成物:アルテリア水和剤(フマル酸 80%含有、日本曹達株式会社製)
ジカルボン酸以外の殺菌剤組成物:ビーエー液剤(ベンジルアミノプリン 3%含有、クミアイ化学工業株式会社製)
【0061】
(かさ枯病菌の評価試験)
比較例1
プラスチックポット(縦横長さ7cm、高さ3cm)で栽培した実生のベントグラス(品種:ペンクロス)にかさ枯病菌(Pseudomonas syringe pv.atropurpurea)の懸濁液を刈込接種しビニール袋をかけた。それを温室内(平均気温20度)で2日間、静置した。次に、水道水200mlをベントグラスの上部から散布した。散布後7日目にベントグラスの葉の先端から2mm以上の病斑が認められるものの数を計測した。この実験を2回繰り返し、その平均値(以下、発病個体数という。)を算出した。発病個体数は35であった。
【0062】
[実施例1]
プラスチックポット(縦横長さ7cm、高さ3cm)で栽培した実生のベントグラス(品種:ペンクロス)にかさ枯病菌(Pseudomonas syringe pv.atropurpurea)の懸濁液を刈込接種しビニール袋をかけた。それを温室内(平均気温20度)で2日間、静置した。次に、水道水200mlにジカルボン酸組成物2g、ジカルボン酸以外の殺菌剤組成物0.2ml(0.22g)を混合して、その混合液をベントグラスの上部から散布した。散布後7日目にベントグラスの葉の先端から2mm以上の病斑が認められるものの数を計測した。この実験を2回繰り返し、その平均値(以下、病斑個体数という。)を算出した。病斑個体数は10、防除価は71.4%であった。
【0063】
なお、防除価は以下の式で定義される値である。
防除価(%)=100×(1-病斑個体数/発病個体数)
【0064】
[比較例2]
ジカルボン酸組成物の量を0gにした以外は実施例1と同じ方法で病斑個体数を算出した。病斑個体数は20、防除価は42.9%であった。
【0065】
[比較例3]
ジカルボン酸以外の殺菌剤組成物の量を0mlにした以外は実施例1と同じ方法で病斑個体数を算出した。病斑個体数は20、防除価は42.9%であった。
【0066】
比較例2および比較例3における防除価の実測値からコルビーの式にて算出される実施例1における防除価の期待値は、67.3%である。防除価の実測値が防除価の期待値より高いので、ジカルボン酸組成物とジカルボン酸以外の殺菌剤組成物との併用によってかさ枯病菌に対する殺菌性に相乗効果があったことがわかる。
【0067】
コルビーの式 : E=M+N-M×N/100
ただし、Eは、第一成分と第二成分との併用における防除価の期待値、Mは、第一成分単独使用における防除価の実測値、Nは、第二成分単独使用における防除価の実測値である。
【0068】
(褐条病菌の評価試験)
[比較例4]
かさ枯病菌を褐条病菌(Acidovorax avenae subsp. avenae)に変えた以外は、比較例1と同じ方法で発病個体数を算出した。発病個体数は28であった。
【0069】
[比較例5、比較例6および実施例2]
比較例2、比較例3および実施例1において、かさ枯病菌を褐条病菌(Acidovorax avenae subsp. avenae)に変えた以外は、比較例2、比較例3および実施例1と同じ方法で病斑個体数をそれぞれ算出した。比較例5、比較例6および実施例2における病斑個体数は、それぞれ、14、18および5であった。
比較例5、比較例6および実施例2における防除価の実測値は、それぞれ、50.0%、35.7%および82.1%であった。
比較例5および比較例6における防除価の実測値からコルビーの式にて算出される実施例2における防除価の期待値は、67.9%である。防除価の実測値が防除価の期待値より高いので、ジカルボン酸組成物とジカルボン酸以外の殺菌剤組成物との併用によって褐条病菌に対する殺菌性に相乗効果があったことがわかる。