(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-21
(45)【発行日】2023-09-29
(54)【発明の名称】冷凍装置
(51)【国際特許分類】
F25B 1/00 20060101AFI20230922BHJP
F25B 49/02 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
F25B1/00 396B
F25B49/02 B
(21)【出願番号】P 2019075269
(22)【出願日】2019-04-11
【審査請求日】2022-04-01
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】山口 勤
【審査官】沖田 孝裕
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-121888(JP,A)
【文献】特開平07-322375(JP,A)
【文献】特開平07-167553(JP,A)
【文献】特開2017-009156(JP,A)
【文献】特開2003-030734(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
F25B 49/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、凝縮器、膨張部及び蒸発器を有する冷凍サイクルと、この冷凍サイクルを循環する冷媒の圧力に対する露点データ及び沸点データ等の制御データを、複数の冷媒に関して記憶する記憶部と、複数の冷媒の中のいずれかを選択するための操作部と、この記憶部に記憶された制御データのうち、前記操作部により選択された冷媒に関する制御データを用いて冷凍サイクルを制御する制御装置とを備え、
この制御装置は、圧縮機の吸入側では露点データに基づいて、温度表示、圧縮機の圧力設定、及び、液戻り等の異常判定を行う一方、圧縮機の吐出側では沸点データに基づいて、温度表示、及び、高温高圧異常等の異常判定を行ことにより、冷凍サイクルに新規に封入する冷媒や既に冷凍サイクルに封入されている冷媒がどんな種類の冷媒かを表示する表示装置を具備した冷凍装置。
【請求項2】
前記表示装置は、冷凍サイクルに新規に封入する冷媒や既に冷凍サイクルに封入されている冷媒がどんな種類の冷媒かを定期的に表示するようにした請求項1に記載の冷凍装置。
【請求項3】
前記表示装置は、冷凍装置の電源投入時から所定時間、定期的に使用冷媒の表示を行うようにした請求項2に記載の冷凍装置。
【請求項4】
前記表示装置は、使用冷媒の設定後は、冷媒の表示をしないようにした請求項1に記載の冷凍装置。
【請求項5】
前記表示装置の近傍に、冷媒の切り替え方法と設定方法を記載した説明部を有する請求項1に記載の冷凍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数種類の冷媒を使用可能な冷凍装置において、使用冷媒の設定を容易に行えるよう、定期的に使用冷媒を表示可能な冷凍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な冷凍装置は、使用可能な一種類の冷媒が指定され、封入されているのが通常であり、実質的に一種類の冷媒を使用し続けている。
【0003】
一方、近年、冷凍装置の冷媒として、GWP(地球温暖化係数)が低い冷媒を使用することが要求されている。冷媒を製造する冷媒メーカーは、各々冷媒の開発を進めており、多数の冷媒が存在する。
【0004】
ここで、予め決められた一種類の冷媒だけでなく、冷凍装置のユーザーが希望する冷媒を使用できれば利便性が高まる。特許文献1には、予め複数の冷媒に応じた制御データが記憶され、これら複数の制御データのうち使用する冷媒に応じた制御データを用いて冷凍サイクルを制御する、冷凍装置が開示されている。具体的には、冷凍装置は、第1の冷媒が使用される場合、当該第1の冷媒用の第1の制御データを読み出し、当該第1の制御データに基づいて、圧縮機の回転数及び膨張弁の開度を制御する。これに対して、冷凍装置は、第2の冷媒が使用される場合、当該第2の冷媒用の第2の制御データを読み出し、当該第2の制御データに基づいて、圧縮機の回転数及び膨張弁の開度を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されているように、予め複数の冷媒に応じた制御データが記憶され、これら複数の制御データのうち使用する冷媒に応じた制御データを用いて冷凍サイクルを制御する、冷凍装置によれば、例えば冷媒を異なる種類の冷媒に交換した場合でも、その冷媒に適した冷凍サイクルの制御を行うことができると考えられる。
【0007】
しかしながら、近年、様々な物性の冷媒が開発されており、予めそれらの冷媒に適した制御データを複数用意し、該当する制御データを選択することによって制御することが考えられる。ここで、制御装置により使用冷媒に対する設定或いは切り替えが必要となるが、新規に封入しようとする冷媒や、既に冷凍装置に封入されている冷媒がどんな種類のものか分析、確認する必要があり、作業が煩雑になっていた。
【0008】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、制御装置により使用冷媒に対する設定或いは切り替えを行う場合、冷凍装置に新規に封入しようとする冷媒や既に冷凍装置に封入されている冷媒を表示することにより、使用冷媒或いは封入冷媒がどんな種類のものかを事前に確認可能とし、冷媒に適した制御データの設定が容易に行える冷凍装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の冷凍装置の態様としては、
圧縮機、凝縮器、膨張部及び蒸発器を有する冷凍サイクルと、この冷凍サイクルを循環
する冷媒の種類を表示する表示装置を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、冷媒毎の露点データや沸点データ等の制御データを記憶した記憶部を有する制御装置により使用冷媒に対する設定或いは切り替えを行う場合、冷凍装置に新規に封入しようとする冷媒や既に冷凍装置に封入されている冷媒を表示装置にて事前に確認することができ、冷媒に適した制御データの設定が容易に行え、サービス性や信頼性に優れた冷凍装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は本発明を適用した冷凍装置の構成を示す概略図。
【
図2】
図2は本発明を適用した表示装置の状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<1>本開示に至った経緯
実施の形態を説明する前に、本発明に至った経緯について説明する。
【0013】
本発明者らは、昨今、環境に適した種々の冷媒、即ち、R404A、R448A、R449A、R407H等が開発、使用されており、これら冷媒毎の露点データや沸点データ等の制御データは異なるため、冷媒に応じて制御設定を変更する必要があった。制御データは、制御装置に記憶した記憶部に予め使用冷媒毎に設定されているため、冷媒が変わるとこれら制御データの設定を変更しなければならない。ここで、例えば、冷凍装置にどのような冷媒が封入しているか分らない場合、冷媒の確認作業が必要とり、設定、変更作業が煩雑となっていた。従い、予め、封入冷媒が判明していれば、斯かる作業が効率的に行え、冷媒に適した制御データの設定作業が容易に行え、サービス性や信頼性に優れた冷凍装置を提供できる。
【0014】
ここで、制御データは、冷媒毎の露点データや沸点データとして記憶部に記憶されており、R404A、R448A、R449A、R407Hの4種類が設定されている。
【0015】
具体的には、本実施の形態の冷凍装置は、R448A、R449A、R407Hのような沸点と露点の温度が異なる冷媒を用いる場合には、以下の(1)、(2)の制御を行う。
(1)低圧側つまり圧縮機の吸入側では露点データを用いる。そして、露点データに基づいて、温度表示、圧縮機の圧力設定、及び、異常判定(液戻り判定など)を行う。これにより、冷却の制御及び液戻り警報判定などを適正に行うことができるようになる。
(2)高圧側つまり圧縮機の吐出側では沸点データを用いる。そして、沸点データに基づいて、温度表示、及び、異常判定(高温高圧異常など)を行う。これにより、圧縮機の吐出側における、温度表示及び高温高圧異常判定を適正に行うことができるようになる。特に、高圧側(圧縮機の吐出側)では沸点データに基づいて温度換算を行うと、凝縮温度表示が適正になる。
【0016】
そして、上記した露点データ及び沸点データの制御データを、複数の冷媒に関して記憶する記憶部と、複数の冷媒の中のいずれかを選択するための操作部と、前期記憶部に記憶された制御データのうち、前記操作部により選択された冷媒に関する制御データを用いて冷凍サイクルを制御するようにした制御装置と、冷凍サイクルに新規に封入する冷媒や既に冷凍サイクルに封入されている冷媒がどんな種類の冷媒かを表示する表示装置とを具備したことにより、冷凍装置に封入されている冷媒を表示装置にて事前に確認することができるようにしている。
【0017】
<2>実施の形態
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0018】
図1は、本発明を適用した冷凍装置1の構成を示す概略図である。なお、
図1は本発明を適用した形態の一例であって、本発明の形態は
図1に限らない。
【0019】
冷凍装置1は、複数台の圧縮機2、3、4(圧縮機2と3は定速駆動型、4はインバータ駆動型)、凝縮器5、膨張弁6及び蒸発器7を有する冷凍サイクル8とからなり、この冷凍サイクル8を循環する冷媒の圧力に対する露点データ及び沸点データからなる制御データを、複数の冷媒に関して記憶する記憶部9と、複数の冷媒の中のいずれかを選択するための操作部10と、この記憶部9に記憶された制御データのうち、前記操作部10により選択された冷媒に関する制御データを用いて冷凍サイクル8を制御する制御装置11とからなる。この制御装置11は、冷凍サイクル8の低圧側配管に設置された低圧センサー12や、高圧側配管に設置された高圧センサー13からの信号により、圧縮機2,3,4の発停や容量制御を行うことにより、蒸発器7の温度制御を行っている。そして、冷凍装置1を構成する圧縮機2,3,4や制御装置11はラックでユニット化され、例えば室外に設置される一方、蒸発器7は、冷凍冷蔵ショーケース(図示せず)に格納され、例えばコンビニエンスストアやスーパーマーケットなどの店舗の室内に設置される。
【0020】
冷凍装置1は、圧縮機2,3と、圧縮機4に電力を供給するインバーター14と、凝縮器5と、制御部15と、操作部10と、記憶部9と、警報部16と、表示装置17と、を有する。これにより、冷凍装置1は、制御部15によってインバーター14のインバーター周波数を制御することにより、圧縮機4の出力ひいては冷却能力を細かく調整することができるように構成されている。
【0021】
制御装置11の記憶部9には、各冷媒についての、圧力に対する露点データ及び沸点データが記憶されている。
【0022】
警報部16は、冷媒の異常を判定し警報を出力する。警報部16は、圧縮機2,3,4の吸入管における冷媒の液バック及び過熱を判定し、判定結果に応じて警報を出力する。また、警報部16は、圧縮機2,3,4から吐出される冷媒の高温高圧異常を判定し、判定結果に応じて警報を出力する。
【0023】
警報部16は、圧縮機2,3,4の冷媒の吸入側の警報判定時には、記憶部9から冷媒の圧力に対する露点データを読み出し、これを用いて警報判定を行う。一方、警報部16は、圧縮機2,3,4の冷媒の吐出側の警報判定時には、記憶部9から冷媒の圧力に対する沸点データを読み出し、これを用いて警報判定を行う。
【0024】
表示装置17は、例えば、高圧側(圧縮機の吐出側)の凝縮温度を、沸点データを用いて温度換算して求めて表示する。これにより、適正な凝縮温度を表示できるようになる。
【0025】
表示装置17の構成は、7セグLEDの表示機能を有し、使用冷媒と制御装置11の設定冷媒の切替を、ユーザーに円滑、速やかに実施してもらうよう促すために、定期的に現在の設定冷媒を表示する。
【0026】
具体的には、
図2の1)に示すように、電源投入時には、バージョン情報(Ver;A1.00)を1秒表示した後、現在使用している設定冷媒(r448)を1秒表示し、選択モード(SELE)を1秒表示し、(CT)を1秒表示した後、設定冷媒を20秒間表示する。これは、本来は、SELECTと一括表示したいが、実施例では7セグLEDのため、4桁表示となり、2回に分けて表示する仕様となるためである。勿論、7セグLEDが6
桁表示であれば、SELECTと一括表示できる。
【0027】
次に、2)に移行し、通常表示となり、例えば、低圧圧力(0.550)と高圧圧力(2.10H)を繰り返し表示する。
【0028】
そして、3)に示すように、低圧圧力(0.550)と高圧圧力(2.10H)の表示から、10分間隔で、4)の冷媒表示(r448→SELE→CT)を行い、10分経過後には、再び、通常表示に戻り、低圧圧力(0.550)と高圧圧力(2.10H)の表示となる。
【0029】
また、制御装置11は、表示装置17の表示について、使用冷媒の設定合致後は、冷媒の表示をしないようにも設定できるようになっている。表示させない具体的な方法は、例えば、7セグLEDとロータリースイッチで、設定モードを準備し、表示は、DISP⇔NODISP等、アップダウンスイッチによって切換選択することが考えられる。表示させない目的は、使用冷媒選択が確定(合致)後は、表示は不要と考えるユーザーについては、表示なしに設定できるようにするためである。
その後は冷媒表示をさせないことが可能となり、ユーザーの利便性を高めている。
【0030】
更に、表示装置17の近傍には、冷媒の切り替え方法と設定方法を記載した説明部18を設けており、ユーザーの作業性、利便性を高めている。
説明部18には、例えば、R448A冷媒の設定方法や冷媒非表示方法の説明が記載されている。例えば、7セグLEDとロータリースイッチで、設定モードを準備し、表示は、r404 / r448 / r449 / r407 としてアップダウンスイッチで、どれかを選択し、冷媒を確定させる。
【0031】
以上説明したように、本実施の形態によれば、設定冷媒を定期的に表示する表示装置17を設けたので、使用冷媒と制御装置11の設定冷媒の切替を、ユーザーに円滑、速やかに実施してもらうよう促すことができる。特に、低圧側つまり圧縮機の吸入側では露点データに基づいて、温度表示、圧縮機の圧力設定、及び、異常判定(液戻り判定など)を行っているため、冷却の制御及び液戻り警報判定などを適正に行うことができるようになると共に、高圧側つまり圧縮機の吐出側では沸点データに基づいて、温度表示、及び、異常判定(高温高圧異常など)を行っているため、圧縮機の吐出側における、温度表示及び高温高圧異常判定を適正に行うことができるだけでなく、温度換算による凝縮温度表示が適正になり、精度が向上する。
【0032】
上述の実施の形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本開示の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することの無い範囲で、様々な形で実施することができる。
【0033】
上述の実施の形態では、冷媒として、R404A、R448A、R449A、R407Hを用いた場合について述べたが、勿論、用いることができる冷媒はこれに限らない。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、冷媒に応じて適切な制御を行うためのユーザー設定作業を円滑することができるといった効果を有し、冷媒を交換可能な冷凍装置に好適である。
【符号の説明】
【0035】
1 冷凍装置
2,3,4 圧縮機
5 凝縮器
6 膨張弁
7 蒸発器
8 冷凍サイクル
9 記憶部
10 操作部
11 制御装置
12 低圧センサー
13 高圧センサー
14 インバーター
15 制御部
16 警報部
17 表示装置