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特許7352768プロジェクタのオートフォーカス制御システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-21
(45)【発行日】2023-09-29
(54)【発明の名称】プロジェクタのオートフォーカス制御システム
(51)【国際特許分類】
   G03B 21/14 20060101AFI20230922BHJP
   G02B 7/28 20210101ALI20230922BHJP
   G02B 7/36 20210101ALI20230922BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20230922BHJP
   G03B 21/53 20060101ALI20230922BHJP
   H04N 5/74 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
G03B21/14 D
G02B7/28 H
G02B7/36
G03B21/00 D
G03B21/14 Z
G03B21/53
H04N5/74 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019107630
(22)【出願日】2019-06-10
(65)【公開番号】P2020201365
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】爲末 和彦
【審査官】新井 重雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-005020(JP,A)
【文献】特開2014-056030(JP,A)
【文献】特開2013-015820(JP,A)
【文献】特開2006-018048(JP,A)
【文献】国際公開第2018/154634(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/134781(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第102967991(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 21/14
G03B 21/00
H04N 5/74
G02B 7/28
G02B 7/36
G03B 21/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像光を、投写レンズによって投写面に投写するプロジェクタと、前記プロジェクタと有線、又は無線のネットワークで接続され、前記投写面に投写された画像を撮像する撮像部を有する撮像ユニットと、を備え、
前記プロジェクタは、
前記投写レンズを駆動してフォーカス調整を行うレンズ駆動部と、
第1パターン画像と、前記第1パターン画像よりも粗い第2パターン画像が格納されたパターン画像格納部と、
第1コントローラと、を有し、
前記撮像ユニットは、
前記撮像部にズームを行わせるズーム設定部と、
前記撮像部で撮像された第1又は第2パターン画像の撮像データに基づきフォーカス制御コマンドを前記第1コントローラに出力する第2コントローラと、
ユーザーの指示入力が行われるユーザーインターフェース部と、を有し、
前記ユーザーインターフェース部によって、
前記ズーム設定部に設定されたズーム倍率が所定の倍率未満のとき、前記第2コントローラは、前記第1パターン画像を選択投写するように第1コントローラに指示し、
前記ズーム設定部に設定されたズーム倍率が所定の倍率以上のとき、前記第2コントローラは、前記第2パターン画像を選択投写するように第1コントローラに指示し、
選択投写された第1、又は第2パターン画像を撮像したデータに基づいてオートフォーカスがなされる、
プロジェクタのオートフォーカス制御システム。
【請求項2】
映像光を、投写レンズによって投写面に投写するプロジェクタと、前記プロジェクタと有線、又は無線のネットワークで接続され、前記投写面に投写された画像を撮像する撮像部を有する撮像ユニットと、を備え、
前記プロジェクタは、
前記投写レンズを駆動してフォーカス調整を行うレンズ駆動部と、
第1パターン画像と、前記第1パターン画像よりも粗い第2パターン画像が格納されたパターン画像格納部と、
第1コントローラと、を有し、
前記撮像ユニットは、
前記撮像部で撮像された第1又は第2パターン画像の撮像データを解析してフォーカスレベルを取得するフォーカス解析部と、
前記フォーカス解析部で得られたデータに基づきフォーカス制御コマンドを出力する第2コントローラと、
オートフォーカスアプリケーションプログラムが格納されたアプリケーションプログラム格納部と、
ユーザーの指示入力が行われるユーザーインターフェース部と、を有し、
前記ユーザーインターフェース部の操作によってオートフォーカスアプリケーションプログラムが実行されたとき、前記第2コントローラは、前記第1パターン画像を選択投写するように前記第1コントローラに指示し、前記フォーカス解析部から得られる前記第1パターン画像のフォーカスレベルが所定のレベル以下であると、選択投写された第1パターン画像に代えて前記第2パターン画像を選択投写するように前記第1コントローラに指示し、第2パターン画像を撮像したデータに基づいてオートフォーカスがなされる、
プロジェクタのオートフォーカス制御システム。
【請求項3】
前記第1、第2パターン画像は、格子状の網目パターンであり、第2パターンの線間ピッチが第1パターンの線間ピッチより大きい、請求項1、又は2に記載のプロジェクタのオートフォーカス制御システム。
【請求項4】
前記撮像部は、
前記ズーム設定部に設定された前記ズーム倍率が2倍未満のとき、前記第2コントローラは、前記第1パターン画像を選択投写するように第1コントローラに指示し、
前記ズーム設定部に設定された前記ズーム倍率が2倍以上のとき、前記第2コントローラは、前記第2パターン画像を選択投写するように第1コントローラに指示する、請求項1に記載のプロジェクタのオートフォーカス制御システム。
【請求項5】
前記オートフォーカスは、
フォーカスレベルを計測するステップと、
前記レンズ駆動部を所定の距離だけ駆動させるステップと、
前記フォーカスレベルがフォーカスレベルのピークを判定するステップとを有する、請求項1に記載のプロジェクタのオートフォーカス制御システム。
【請求項6】
前記オートフォーカスは、
前記フォーカスレベルを計測するステップと、
前記レンズ駆動部を所定の距離だけ駆動させるステップと、
前記フォーカスレベルがフォーカスレベルのピークを判定するステップとを有する、請求項2に記載のプロジェクタのオートフォーカス制御システム。
【請求項7】
前記ユーザーインターフェース部は、前記ユーザーの指示によってフォーカスするエリアを決定するフォーカス調整エリアを有する請求項1または2に記載のオートフォーカス制御システム。
【請求項8】
前記第1パターン画像及び前記第2パターン画像は網目状のパターン画像である、請求項1または2に記載のオートフォーカス制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プロジェクタの画像を撮影して画像解析処理を施すことでプロジェクタの投写レンズを合焦するオートフォーカス制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1と特許文献2は、投写レンズのズーム比に連動して投写された画像を解析して、投写レンズの合焦が可能なプロジェクタを開示する。このプロジェクタは、スクリーン上にフォーカスパターンを投写する投写部と、投写部のズーム調整位置情報に応じてフォーカスパターンの画像要素の大きさを選択する投写パターン生成部と、スクリーン上に投写されたフォーカスパターンを撮像するカメラと、カメラの撮像イメージを分析して投射レンズのフォーカス調整を自動的に行うフォーカス制御部とを備える。これにより、投射部が、投射レンズのズーム比に連動して、フォーカスパターンの画像要素を変更することで適切なレベルの階調振幅とすることで合焦を行うことができる。
【0003】
特許文献3は、投写レンズのズーム比に連動して投写された画像を解析して、投写レンズの合焦が可能なプロジェクタを開示する。このプロジェクタは、スクリーン上にフォーカスパターンを投写する投写部と、交互に配された2種類の濃度領域を含んだテストパターン生成部と、スクリーン上に投写されたフォーカスパターンを撮像するカメラと、カメラの撮像イメージを分析して前記投射レンズのフォーカス調整を自動的に行うフォーカス制御部とを備える。これにより、投射部が、投射レンズのズーム比の近点から遠点にわたって変化しても、フォーカスパターンの画像要素を適切なレベルの階調振幅とすることで合焦を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-205681号公報
【文献】特開2005-269363号公報
【文献】特開2006―010791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、プロジェクタの設置位置とは独立した、投写面から近距離および遠距離の位置において、フォーカス調整をするのに有効なオートフォーカス制御システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示におけるプロジェクタのオートフォーカス制御システムは、映像光を、投写レンズによって投写面に投写するプロジェクタと、プロジェクタと有線、又は無線で接続され、投写面に投写された画像を撮像する撮像部を有する撮像ユニットと、を備え、プロジェクタは、投写レンズを駆動してフォーカス調整を行うレンズ駆動部と、網目状の第1パターン画像と、第1パターン画像よりも粗い網目状の第2パターン画像が格納されたパターン格納部と、第1コントローラと、を有し、撮像ユニットは、撮像部にズームを行わせるズーム設定部と、撮像部で撮像された第1又は第2パターン画像の撮像データに基づきフォーカス制御コマンドを第1コントローラに出力する第2コントローラと、ユーザーの指示入力が行われるユーザーインターフェース部と、を有し、ユーザーインターフェース部によって、ズーム設定部に設定されたズーム倍率が所定の倍率未満のとき、第2コントローラは、第1パターン画像を選択投写するように第1コントローラに指示し、ズーム設定部に設定されたズーム倍率が所定の倍率以上のとき、第2コントローラは、第2パターン画像を選択投写するように第1コントローラに指示し、選択投写された第1、又は第2パターン画像を撮像したデータに基づいてオートフォーカスがなされる。
【発明の効果】
【0007】
本開示のオートフォーカス制御システムは、プロジェクタの設置位置とは独立した、投写面から近距離および遠距離の位置において、フォーカス調整をするのに有効である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】プロジェクタとスクリーンと撮像ユニットの配置例を示す図
図2】本開示のオートフォーカス制御システムを示すブロック図
図3】本開示で使用されるフォーカス調整用のパターン画像を示す図
図4】スマートフォンの画面を示す図
図5】実施の形態1のオートフォーカス制御システムに係る動作フローチャート
図6】スマートフォンの画面に表示されたユーザーインターフェースを示す図
図7】撮像距離と使用されるパターン画像を説明するための図
図8】対フォーカス位置にかかるフォーカスレベルの特性を示す図
図9】対撮像距離にかかるフォーカスレベルの最大値の特性を示す図
図10】実施の形態2のオートフォーカス制御システムに係る動作フローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0010】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために、提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0011】
(実施の形態1)
以下、図1図9を用いて、実施の形態1を説明する。
【0012】
[1-1.構成]
図1は、本開示のプロジェクタのオートフォーカス制御システムにおける装置の配置図であり、基本的なシステムの配置構成は、本実施の形態と後述する実施の形態2と同じである。プロジェクタ100は天井などから吊り下げたり、又は所定の支持台等に設置され、映像光を投写面であるスクリーン300上に映像を拡大投写する。プロジェクタ100に対してオートフォーカス制御を実行するために、スマートフォン200を使用する。スマートフォン200は投写面に投写された画像を撮像する撮像部を有する撮像ユニットの一例であり、スマートフォンに代えてタブレットコンピュータや、ラップトップコンピュータなどの他のモバイルデバイスも使用できる。スマートフォン200は、無線LAN(ローカル・エリア・ネットワーク)によってプロジェクタ100と接続される。図1において、スクリーン300とスマートフォン200の撮像部のレンズの位置までの距離を撮像距離Lとしている。スマートフォン200とプロジェクタ100との接続は、無線LAN以外にも有線LANによって接続することもできる。
【0013】
図2は実施の形態1にかかるオートフォーカス制御システムを示すブロック図であって、プロジェクタ100は、入力される映像信号を処理する映像信号処理部111、高圧水銀ランプやメタルハライドランプ等のランプ光源や、レーザー光源やLED光源等の固体光源から構成される光源部112、光源部112からの照明光を映像信号処理部111からの映像信号で変調して映像光を生成する光変調デバイス113を有する。光変調デバイス113としては、DMD(デジタル・マイクロミラー・デバイス)や液晶パネルが使用される。光変調デバイス113から出射される映像光はレンズマウンタ114に取り付けられた投写レンズ115によって、撮像エリア310内に配置されたスクリーン300に拡大投写される。投写レンズ115は、フォーカスレンズ115aが設けられており、フォーカスレンズ115aはパルスモータやDCモータ等からなるレンズ駆動部116によってレンズ位置の移動がなされる。マイクロコンピュータ等から構成される第1コントローラ118は、スマートフォンからの指令を受けてレンズ駆動部116やパターン画像格納部117を制御する。本実施の形態では、投写レンズに設けられたフォーカスレンズを移動させてフォーカス調整が行われるようになっているが、投写レンズ(鏡筒)自体を光軸方向に移動させる構成をレンズマウンタに設けてフォーカス調整を行う構成としても良い。
【0014】
パターン画像格納部117には、網目状の第1パターン画像と、この第1パターン画像よりも粗い網目状の第2パターン画像が格納されている。図3は、パターン画像格納部117に格納されるパターン画像の一例を示しており、このパターンはdot-by-dotの黒色の背景に白色の格子状の網目パターンであり、図3(a)は線間ピッチが小さい格子状の第1パターン画像(密パターン)を、図3(b)は第1パターン画像より線間ピッチが大きい格子状の第2パターン画像(粗パターン)を、それぞれ示す。後述するようにパターン画像格納部117は、パターン選択指示信号によって、第1パターン画像と第2パターン画像のいずれかを選択して映像信号処理部111に供給し、映像光として投写される。一例として、WUXGA解像度(画素数:水平(H)1920×垂直(V)1200)においては、第1パターン画像の線幅は(H)2、(V)4で、線どうしの間隔は(H)12、(V)12、第2パターン画像の線幅は(H)4、(V)6で、線どうしの間隔は(H)16、(V)40に設定される。
【0015】
プロジェクタ100には、第1コントローラ118が設けられており、フォーカス制御コマンドを受けてレンズ駆動部116の駆動制御をする。受信部119は無線LANで送信されてくるデータを受信する。
【0016】
スマートフォン200は、光学ズーム、及び電子ズーム機能を有する撮像部211を備え、撮像部211はズーム設定部210で設定されたズーム倍率で、スクリーン300の全体、又は一部を含む撮像エリア310を撮像する。撮像部211から得られる撮像データは、フォーカス解析部212に入力され、フォーカス解析部212で解析されたフォーカスデータはCPU等から構成される第2コントローラ213に供給される。第2コントローラ213はフォーカスデータに基づいて生成したフォーカス制御コマンドを、無線LAN(送信部216)を介してプロジェクタ100の無線LAN(受信部119)にネットワークを経て送信し、第1コントローラ118に供給する。ユーザーインターフェース部(ユーザーI/F部)214はスマートフォン200の表示画面を通じてユーザーからの指示を受ける。
【0017】
アプリケーションプログラム格納部215には、オートフォーカスアプリケーションプログラムが格納されており、フォーカス解析部212や、ズーム設定部210は、このオートフォーカスアプリケーションプログラムで構成することができる。
【0018】
[1-2.動作]
図4はスマートフォン200の表示画面を、図5は動作フローチャートであって、スマートフォン200の表示画面には図4で示すようにオートフォーカスアプリケーションプログラム(以下「AFアプリ」とも称する)を実行するためのアイコン(Projector AF)が表示されており、これをタップすることにより、AFアプリの実行が開始される(S100)。
【0019】
AFアプリが立ち上がると、スマートフォン200のアプリ表示エリア501には図6に示すオートフォーカス調整用のユーザーインターフェース部としての画面が表示される。オートフォーカス調整用のユーザーインターフェースとして、背景を含む撮像エリア502には、撮像部211で撮像された画像が表示され、この図では撮像部211で撮像された撮像エリア310とスクリーン300に相当するスクリーン画像503が表示されており、スクリーン画像503には格子状のパターン画像が表示されている状態が写し出されている。
【0020】
AFアプリは撮像エリア502内に破線で囲んで示すフォーカス調整エリア504を表示するようになっており、ドラッグ操作によりフォーカス調整エリア504を撮像エリア502内で、ユーザーが所望する位置に移動させたり、ピンチイン/ピンチアウト操作によりフォーカス調整エリア504を拡大や縮小させたりすることができる。オートフォーカスに必要な高周波成分は、このフォーカス調整エリア504の範囲内から取得される。従って、ユーザーは、スクリーン上の所望の位置で、最適なフォーカス調整が可能となる。
【0021】
フォーカス調整エリア504から出力されるフォーカスレベルは、フォーカス調整エリア504の高周波成分をそのエリアの面積で割って算出することで単位面積当たりのフォーカスレベルに正規化している。よって、面積の大小によってフォーカスレベルは変化しない。
【0022】
アプリ表示エリア501には、フォーカス調整を開始させるためのフォーカス調整開始ボタン506、ズーム倍率設定用スライドバー505が表示されており、ズーム倍率設定用スライドバー505に表示された逆三角形のマーク(以下「三角マーク」と言う)を右方向にドラッグさせることによりズーム設定部210によって撮像部211の光学ズーム倍率を1倍から3倍まで設定することができる。
【0023】
図5に戻って、AFアプリが立ち上がり、ステップ(S101)においては撮像部のズーム倍率がどのように設定されたかの判断が行われる。すなわち、図6のAFアプリ画面が表示された状態では、三角マークは光学倍率(×1)の位置にあり、この状態で三角マークをロングタップ(長押し)すると、ユーザーインターフェース部214からの指示を受けた第2コントローラ213は、第1パターン画像を選択するパターン選択指示信号を無線LAN(送信部216と受信部119)を介してプロジェクタ100の第1コントローラ118に供給する。第1コントローラ118は、かかるパターン選択信号を受けるとパターン画像格納部117から第1パターン画像を選択して映像信号処理部111に供給し、第1パターン画像を投写する(S102)。
【0024】
このように本実施の形態では、光学倍率を1倍(×1)以上で2倍(×2)未満に設定した場合は、第1パターン画像を選択するようになっている。すなわち、スクリーン300とスマートフォン200との間の撮像距離が図7(a)の距離L1のように近距離であれば、格子が密である第1パターン画像を投写することにより、光学倍率が1倍(×1)以上で2倍(×2)未満のズームの範囲で、オートフォーカスに必要な十分なレベルの高周波成分(フォーカスレベル)が得られるからである。
【0025】
図8は、投写レンズのフォーカス調整位置にかかるフォーカスレベルの特性を示しており、ズーム倍率は1倍としている。図8(a)は撮像距離が小さい(L1)場合で、一点鎖線P1は第1パターン画像を撮像したときに得られる特性、曲線の破線P2は第2パターン画像を撮像したときに得られる特性を示している。この特性図から分かるように、撮像距離が小さい(L1)場合は、第1パターン画像を使用した方が、第2パターン画像を使用した場合よりも大きなフォーカスレベルの最大値が得られる。
【0026】
AFアプリが立ち上がり、図6のAFアプリ画面が表示された状態で、光学倍率(×1)の位置にある三角マークを右方向にドラッグし、2倍率(×2)以上の位置に移動させると、ユーザーインターフェース部214からの指示を受けた第2コントローラ213は、第2パターン画像を選択するパターン選択指示信号を、無線LAN(送信部216と受信部119)を介してプロジェクタ100の第1コントローラ118に供給する。第1コントローラ118は、かかるパターン選択信号を受けるとパターン画像格納部117から第2パターン画像を選択して映像信号処理部111に供給し、第2パターン画像を投写する(S103)。
【0027】
このように本実施の形態では、光学倍率が2倍(×1)以上で3倍(×2)以下に設定した場合は、第2パターン画像を選択するようになっている。すなわち、スクリーン300とスマートフォン200との間の撮像距離が図7(b)の距離L2のよう遠距離であれば、格子のピッチが粗である第2パターン画像を投写し、光学倍率を2倍(×2)以上のズームにすることで、撮像部211のレンズ解像度を上回るオートフォーカスに必要なレベルの高周波成分(フォーカスレベル)が得られるからである(図8(b)の破線P22)。尚、スクリーン300とプロジェクタ100との距離は、スクリーン300とスマートフォン200との距離に拘わらず一定の距離Dである。
【0028】
図8(b)は撮像距離が大きい(L2)場合で、図8(a)と同様に一点鎖線P11は第1パターン画像を撮像したときに得られる特性、曲線の破線P22は第2パターン画像を撮像したときに得られる特性を示している。この特性図から分かるように、撮像距離が大きい(L2)場合は、第2パターン画像を使用した方が、第1パターン画像を使用した場合よりも大きなフォーカスレベルが得られる。従って、光学ズーム倍率を大きくすることによって、図8(b)の破線P22の特性を図8(a)の一点鎖線P1の特性に近づけることができる。一方で、第1パターン画像を撮像距離が大きい(L2)場合に使用したときは、撮像部211のレンズ分解能の限界で光学ズーム倍率を大きくしても一点鎖線P11に示すように必要なフォーカスレベルが得られる特性にはならない。
【0029】
図9は、撮像距離にかかるフォーカスレベルの最大値の特性を示しており、一点鎖線の曲線P111は第1パターン画像を撮像したときに得られる特性、曲線の破線P222は第2パターン画像を撮像したときに得られる特性を示している。この特性図から分かるように、第1パターン画像で得られるフォーカスレベルは、ある距離L0を境にして第2パターン画像で得られるフォーカスレベルよりも急激に低下するようになっている。従って、パターン画像の切り替えは、撮像距離がL0(曲線P111とP222の交差点)までは第1パターン画像を使用し、撮像距離がL0より遠距離になると第2パターン画像を使用することになる。
【0030】
再び図5に戻って、第1パターン画像を投写(S102)、又は第2パターン画像を投写(S103)すると、ユーザーの操作によってフォーカス調整エリアの設定がなされる(S104)。フォーカス調整エリア504の設定は、上述したように撮像エリア502内で、スクリーン画像503のユーザーが所望する位置にフォーカス調整エリア504をドラッグして移動させたり、ピンチイン/ピンチアウト操作によりフォーカス調整エリア504を拡大や縮小させたりすることができる。
【0031】
フォーカス調整エリアの設定が完了し、ユーザーがフォーカス調整開始ボタン506をタップすると、オートフォーカス制御動作が開始される(S105)。
【0032】
オートフォーカス制御動作は、粗調整であるステップ(S111)~ステップ(S113)までのフォーカススキャンと、微調整であるステップ(S122)~ステップ(S124)までのフォーカスアジャストの2つの段階で行われる。
【0033】
オートフォーカス制御動作が開始されると、フォーカススキャン処理において、フォーカスレベルが計測され、計測結果がメモリに格納され(S111)、フォーカスレンズが駆動されて一定の距離移動し(S112)、ステップ(S111)で取得したフォーカスレベルに基づいて、最適点を通過しているかどうかのピーク判定をフィルタ系列法で行う(S113)。フィルタ系列法には、一次の自己回帰モデルを用いることができる。ステップ(S113)でフォーカスレベルのピークでないと判断(N)されると、ステップ(S111)に戻る。そして、ステップ(S113)でフォーカスレベルのピークであると判断(Y)されると、ステップ(S121)に進みフォーカスレンズの移動方向を反転させ、フォーカスアジャストの処理に移る。
【0034】
フォーカスアジャスト処理において、フォーカスレベルが計測され、計測結果がメモリに格納され(S122)、フォーカスレンズが駆動されてステップ(S112)よりも短い一定の距離移動し(S123)、ステップ(S122)で取得したフォーカスレベルに基づいて、最適点にいるかどうかのピーク判定をフィルタ系列法で行う(S124)。フィルタ系列法には、ステップ(S122)で取得したフォーカスレベルを用いて最小二乗法で傾き判定を行う(S124)。
【0035】
ステップ(S124)で検出した傾きの絶対値が所定のしきい値より大きい、すなわちフォーカスレベルのピークでないと判断(N)されると、ステップ(S122)に戻る。そして、ステップ(S124)でフォーカスレベルのピークであると判断(Y)されるとオートフォーカス動作が終了する。
【0036】
なお、フォーカス移動方向の反転(S121)と、フォーカスアジャスト動作(S122~S124)は、ステップ(S123)のフォーカス位置の移動量をさらに小さくして、再度繰り返すこともできる。これによってさらに精度を上げることが可能となる。
【0037】
[1-3.効果]
本実施の形態では、ユーザーがプロジェクタの設置位置とは独立した任意の位置で、スマートフォンのズーム操作をするだけで、オートフォーカスに必要な最適なパターン画像が選択投写されて、オートフォーカスが行われるので利便性が向上する。
【0038】
(実施の形態2)
[2-1.構成]
実施の形態2の構成は、制御動作が異なる点を除けば図1図9に示した実施の形態1の構成と同一である。従って、ここではその重複説明は省略する。
【0039】
[2-2.動作]
図10は実施の形態2にかかる動作チャートである。
【0040】
スマートフォン200の表示画面に表示されたアイコン(Projector AF)をタップすると、AFアプリの実行が開始される(S101)。
【0041】
AFアプリの実行が開始されると、ユーザーインターフェース部214からの指示を受けた第2コントローラ213は、第1パターン画像を選択するパターン選択指示信号を、無線LAN(送信部216と受信部119)を介してプロジェクタ100の第1コントローラ118に供給する。第1コントローラ118は、かかるパターン選択信号を受けるとパターン画像格納部117から第1パターン画像を選択して映像信号処理部111に供給し、第1パターン画像を投写する(S102)。
【0042】
第1パターン画像が投写された後、ユーザーの操作によってフォーカス調整エリアの設定がなされる(S104)。フォーカス調整エリア504の設定は、実施の形態1で説明したのと同様に撮像エリア502内で、ユーザーが所望する位置にドラッグして移動させたり、ピンチイン/ピンチアウト操作によりフォーカス調整エリア504を拡大や縮小させたりすることができる。フォーカス調整エリアの設定がなされ、ユーザーがフォーカス調整開始ボタン506をタップすると、オートフォーカス制御動作が開始される(S105)。
【0043】
オートフォーカス制御動作が開始されると、まず、イニシャル・フラッグが“1”(INIT_FLAG=1)に設定され(S131)、この後、オートフォーカス制御動作とパターン画像の自動切換え動作が行われる。イニシャル・フラッグが“1”とは、(S111)~(S113)からなるフォーカススキャンの動作が初めて行われることを示している。
【0044】
オートフォーカス制御動作は、実施の形態1と同様に粗調整であるステップ(S111)~ステップ(S113)までのフォーカススキャンと、微調整であるステップ(S121)及びステップ(122)~ステップ(S124)までのフォーカスアジャストの2つの段階で行われる。
【0045】
オートフォーカス制御動作が開始されると、フォーカススキャン処理において、フォーカスレベルが計測され、計測結果がメモリに格納され(S111)、フォーカスレンズが駆動されて一定の距離移動し(S112)、ステップ(S111)で取得したフォーカスレベルに基づいて、最適点を通過しているかどうかのピーク判定をフィルタ系列法で行う(S113)。フィルタ系列法には、一次の自己回帰モデルを用いることができる。ステップ(S113)でフォーカスレベルのピークでないと判断(N)されると、ステップ(S111)に戻る。そして、ステップ(S113)でフォーカスレベルのピークであると判断(Y)されると、ステップ(S132)に進みフォーカスレベル(フォーカスのピークレベル)を判定する。
【0046】
ステップ(S132)でフォーカスレベルが、所定の閾値レベル(FOCUS_THR)以上であると判定される、ステップ(S121)に進みフォーカスレンズの移動方向を反転させ、フォーカスアジャストの処理に移る。
【0047】
フォーカスアジャスト処理において、フォーカスレベルが計測され、計測結果がメモリに格納され(S122)、フォーカスレンズが駆動されてステップ(S112)よりも短い一定の距離移動し(S123)、ステップ(S122)で取得したフォーカスレベルに基づいて、最適点にいるかどうかのピーク判定をフィルタ系列法で行う(S124)。フィルタ系列法には、ステップ(S122)で取得したフォーカスレベルを用いて最小二乗法で傾き判定を行う(S124)。
【0048】
もし、撮像距離が大きい(L2)の場合、図8に示すように第1のパターン画像では曲線P11の特性となることで、ステップ(S132)でフォーカスレベルが、所定の閾値レベル(FOCUS_THR)未満でイニシャル・フラッグが“1”(INIT_FLA G=1)であると判定されると、第2コントローラ213は、第2パターン画像を選択するパターン選択指示信号を、無線LAN(送信部216と受信部119)を介してプロジェクタ100の第1コントローラ118に供給する。第1コントローラ118は、かかるパターン選択信号を受けるとパターン画像格納部117から第2パターン画像を選択して 映像信号処理部111に供給し、第2パターン画像を投写する(S103)。
【0049】
第2パターン画像を投写すると、第2コントローラ213は、ステップ(S133)でイニシャル・フラッグを“0”(INIT_FLAG=0)にして、ステップ(S111)に戻り、ステップ(S111)~ステップ(S113)のフォーカススキャン処理が再び行われる。このときのフォーカススキャン処理では第2パターン画像が投写されたことで図8の曲線P22の特性となりピークを検出することができる。もし、撮影距離Lが(L2)よりさらに大きく、フォーカスレベルが、所定の閾値レベル(FOCUS_THR)未満でかつイニシャル・フラッグが“0”(INIT_FLAG=0)であると判定されると、第1パターン画像と第2パターン画像のどちらを投写しても必要なフォーカスレベルが得られないと判断してエラーとして終了する。
【0050】
一方、フォーカススキャン処理が終わり、ステップ(S132)でフォーカスレベルの判定がなされ、フォーカスレベルが所定の閾値レベル(FOCUS_THR)以上であると判断されると、ステップ(S121)に進みフォーカスレンズの移動方向を反転させ、フォーカスアジャストの処理であるステップ(S122)~ステップ(S124)を実行し終了する。
【0051】
なお、フォーカス移動方向の反転(S121)と、フォーカスアジャスト動作(S122~S124)は、S123のフォーカス位置の移動量をさらに小さくして、再度繰り返すこともできる。これによってさらに精度を上げることが可能となる。
[2-3.効果]
本実施の形態では、ユーザーがプロジェクタの設置位置とは独立した任意の位置でスマートフォンのオートフォーカスアプリケーションプログラムを開始するだけで、オートフォーカスに必要な最適なパターン画像が自動的に選択されて投写され、適正なオートフォーカス動作が行われる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本開示は、オートフォーカス制御システムに関するものである。
【符号の説明】
【0053】
100 プロジェクタ
111 映像信号処理部
112 光源部
113 光変調デバイス
114 レンズマウンタ
115 投写レンズ
115a フォーカスレンズ
116 レンズ駆動部
117 パターン画像格納部
119 受信部
200 スマートフォン
210 ズーム設定部
211 撮像部
212 フォーカス解析部
213 第2コントローラ
214 ユーザーインターフェース部
215 アプリケーションプログラム格納部
216 送信部
300 スクリーン
310 撮像エリア
501 アプリ表示エリア
502 撮像エリア
503 スクリーン画像
504 フォーカス調整エリア
505 ズーム倍率設定用スライドバー
506 フォーカス調整開始ボタン
図1
図2
図3
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図8
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図10