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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-21
(45)【発行日】2023-09-29
(54)【発明の名称】電動工具用モータ及び電動工具
(51)【国際特許分類】
   H02K 11/33 20160101AFI20230922BHJP
【FI】
H02K11/33
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019068211
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020167872
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】無類井 格
(72)【発明者】
【氏名】百枝 幸太郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 暁斗
(72)【発明者】
【氏名】辻本 直生
(72)【発明者】
【氏名】北村 孝太
【審査官】稲葉 礼子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-107201(JP,A)
【文献】特開2008-228380(JP,A)
【文献】国際公開第2013/094086(WO,A1)
【文献】特開2016-100972(JP,A)
【文献】特開2016-127654(JP,A)
【文献】特開2016-093133(JP,A)
【文献】特開2014-168361(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/08
B25F 5/00
H02K 11/33
H02K 11/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を有するロータと、前記ロータを回転させるコイルを有するステータと、前記ロータの回転位置を検出するセンサ素子が実装された第1基板と、前記回転軸を回転可能に支持するベアリングと、前記ステータ、前記第1基板、及び前記ベアリングを固定するインシュレータと、前記センサ素子の検出結果に応じて前記コイルへの通電方向を切り替えるスイッチング素子が実装された第2基板と、を備え
記回転軸の方向において、前記ステータ、前記第1基板、前記インシュレータの一部、及び前記第2基板がこの順に並んでいる、
電動工具用モータ。
【請求項2】
前記第1基板及び前記第2基板の各々は、外部機器と電気的に接続するための接続部を有し、
前記接続部は、前記回転軸と直交する一方向の一方側に配置されている、
請求項1に記載の電動工具用モータ。
【請求項3】
前記第1基板の接続部及び前記第2基板の接続部の前記外部機器との接続方向が異なる、
請求項2に記載の電動工具用モータ。
【請求項4】
回転軸を有するロータと、前記ロータを回転させるコイルを有するステータと、前記ロータの回転位置を検出するセンサ素子が実装された第1基板と、前記回転軸を回転可能に支持するベアリングと、前記ステータ、前記第1基板、及び前記ベアリングを固定するインシュレータと、前記センサ素子の検出結果に応じて前記コイルへの通電方向を切り替えるスイッチング素子が実装された第2基板と、を備え、
前記インシュレータは、前記回転軸の方向において、前記ステータと前記第2基板との間に配置されており、
前記第1基板及び前記第2基板の各々は、外部機器と電気的に接続するための接続部を有し、
前記接続部は、前記回転軸と直交する一方向の一方側に配置されており、
前記第1基板の接続部及び前記第2基板の接続部の前記外部機器との接続方向が異なる、
電動工具用モータ。
【請求項5】
前記第1基板は、前記回転軸の方向において、前記ベアリングの最外面よりも内側に配置されている、
請求項1~4のいずれか1項に記載の電動工具用モータ。
【請求項6】
前記第1基板と前記ベアリングとは、径方向から見たときに重なっている、
請求項1~5のいずれか1項に記載の電動工具用モータ。
【請求項7】
前記第1基板及び前記第2基板が、前記回転軸の方向に沿って並び、かつ、前記回転軸に対して直交している、
請求項1~のいずれか1項に記載の電動工具用モータ。
【請求項8】
ヒートシンクを更に備え、
前記第2基板は、前記ヒートシンクを介して前記インシュレータに固定されている、
請求項1~のいずれか1項に記載の電動工具用モータ。
【請求項9】
前記第1基板は、前記回転軸の周方向の一部に配置されている、
請求項1~のいずれか1項に記載の電動工具用モータ。
【請求項10】
前記回転軸の径方向において、前記第1基板及び前記第2基板の長さが異なる、
請求項1~のいずれか1項に記載の電動工具用モータ。
【請求項11】
前記インシュレータに固定された端子部材を更に備え、
前記第2基板は、前記端子部材を介して前記コイルに電気的に接続されている、
請求項1~10のいずれか1項に記載の電動工具用モータ。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の電動工具用モータと、前記電動工具用モータが収容された電動工具本体と、を備える、
電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に電動工具用モータ及び電動工具に関し、より詳細にはセンサ素子を有する電動工具用モータ及び電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電動工具が開示されている。この電動工具は、ステータコイルを有するモータと、回路基板とを備えている。ステータコイルは、コイル本体部と、コイル本体部から引き出されて回路基板に電気的に接続された引出し部とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-000831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、インバータ回路基板上にスイッチング素子、及び位置検出素子等が搭載されている。そして、インバータ回路基板よりも後端側にベアリングが設けられている。このような構成を有するモータでは、回転軸が長くなってたわみやすくなり、騒音及び振動の一因となり得る。
【0005】
本開示の目的は、低騒音、低振動、及び高効率が可能である電動工具用モータ及び電動工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る電動工具用モータは、回転軸を有するロータと、前記ロータを回転させるコイルを有するステータと、前記ロータの回転位置を検出するセンサ素子が実装された基板と、前記回転軸を回転可能に支持するベアリングと、前記ステータ、前記基板、及び前記ベアリングを固定するインシュレータと、を備える。
【0007】
本開示の一態様に係る電動工具は、前記電動工具用モータと、前記電動工具用モータが収容された電動工具本体と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、低騒音、低振動、及び高効率が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本開示の一実施形態に係る電動工具用モータの断面図である。
図2図2は、同上の電動工具用モータの別角度の断面図である。
図3図3は、ステータの鉄心、及びインシュレータの下方斜視図である。
図4図4は、図1のX-X線断面図である。
図5図5は、同上の電動工具用モータの底面図である。
図6図6は、本開示の一実施形態に係る電動工具の一部を破断した概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.概要
本実施形態に係る電動工具用モータ1は、ブラシレスモータである。電動工具用モータ1は、例えばドリルドライバ及びインパクトドライバ等の電動工具10の駆動源として用いられる。
【0011】
図1に示すように、電動工具用モータ1は、ロータ2と、ステータ3と、基板41(第1基板41)と、ベアリング7(第2ベアリング72)と、インシュレータ5と、を備える。ロータ2は、回転軸21を有する。ステータ3は、コイル31を有する。コイル31は、ロータ2を回転させる。第1基板41には、センサ素子410が実装されている(図4参照)。センサ素子410は、ロータ2の回転位置を検出する素子である。第2ベアリング72は、回転軸21を回転可能に支持する。
【0012】
本実施形態では、インシュレータ5は、ステータ3、第1基板41、及び第2ベアリング72を固定するので、低騒音、低振動、及び高効率が可能である。
【0013】
2.詳細
<電動工具用モータ>
図1に示すように、本実施形態に係る電動工具用モータ1は、ロータ2と、ステータ3と、第1基板41と、第2基板42と、インシュレータ5と、ヒートシンク6と、2つのベアリング7(第1ベアリング71及び第2ベアリング72)と、端子部材8(図2参照)と、を備える。
【0014】
以下、特に断りがない限り、回転軸21の方向を「上下方向」とし、回転軸21の一端側を「上方」、他端側を「下方」として説明する。つまり、図1において、「上」及び「下」の矢印で示す通りに上及び下の各方向を規定する。ただし、これらの方向は電動工具用モータ1の使用方向を規定する趣旨ではない。図面中の各方向を示す矢印は説明のために表記しているに過ぎず、実体を伴わない。
【0015】
≪ロータ≫
ロータ2は、回転する部材である。ロータ2は、回転軸21と、ロータ本体20と、複数の永久磁石22(本実施形態では4つ)と、冷却ファン23と、を有する。
【0016】
回転軸21は、ロータ本体20に貫通して固定されている。
【0017】
ロータ本体20は、回転軸21を中心として、回転軸21の方向に延びる円柱状をなしている。ロータ本体20の上面及び下面は、回転軸21の方向に対して垂直である。
【0018】
永久磁石22は、ロータ本体20内に埋め込まれている。複数の永久磁石22は、回転軸21の周方向に均等に配置されている。
【0019】
冷却ファン23は、ロータ本体20の上面においてロータ本体20及び回転軸21に固定されている。冷却ファン23は、上面視において円形であり、全体的にハット状をなしている。冷却ファン23は、窪み部230を有する。窪み部230は、第1ベアリング71が収容される空間部分である。窪み部230は、冷却ファン23の中央部において、下方に窪んでいる部分である。ロータ2は、回転軸21の周方向に回転可能である。
【0020】
≪ステータ≫
ステータ3は、ロータ2の外周に配置されている。ステータ3は、鉄心30と、コイル31と、を有する。
【0021】
図3に示すように、鉄心30は、筒部300と、複数の歯部301(本実施形態では6つ)と、を有する。筒部300は、回転軸21の方向に延びる円筒状をなしている。6つの歯部301は、筒部300の周方向において内周面に等間隔で設けられている。6つの歯部301の各々は、上面視において略T字状をなしている。
【0022】
コイル31は、ロータ2を回転させる部材である。コイル31は、6つの歯部301に配線310が巻回されて形成されている(図1参照)。コイル31は、電動工具用モータ1の使用時において、冷却ファン23によって冷却される。
【0023】
≪第1基板≫
第1基板41は、いわゆるセンサ基板である。すなわち、第1基板41は、ロータ2の回転位置を検出するための回路基板である。
【0024】
第1基板41は、ロータ本体20の下方において、ロータ本体20の下面と平行に配置されている。第1基板41には、センサ素子410が実装されている。センサ素子410は、例えばホール素子等である。センサ素子410は、ロータ2の回転位置を検出する素子である。
【0025】
図4に示すように、第1基板41は、上面視において略C字状をなしている。第1基板41は、回転軸21の外周の略半周を囲んでいる。つまり、第1基板41は、回転軸21の周方向の一部に配置されている。このように、第1基板41は、回転軸21の周囲全体に配置する必要がないので、第1基板41の使用量を減らすことが可能となる。
【0026】
第1基板41は、接続部43(第1接続部431)と、複数の取付孔411(本実施形態では2つ)と、複数の位置決め孔412(本実施形態では2つ)と、を有する。
【0027】
第1接続部431は、外部機器(不図示)と電気的に接続するための部材である。第1接続部431は、例えばコネクタ及びパッド等である。センサ素子410による位置検出信号は、第1接続部431を通って外部機器に送信される。第1接続部431は、第1基板41の外周縁部に設けられている。第1接続部431の外部機器との接続方向は、回転軸21の径方向外向きである(図4中、矢印431Dで示す)。接続方向は、リード線(不図示)の引出方向等である。なお、外部機器は、例えば制御回路等を含むマイコン等である。
【0028】
取付孔411は、第1基板41をインシュレータ5に固定するのに用いられる孔である。取付孔411は、第1基板41の外周縁部に設けられている。取付孔411は、第1基板41を上下方向に貫通している。
【0029】
位置決め孔412は、第1基板41をインシュレータ5に固定する際の位置決めに用いられる孔である。位置決め孔412は、第1基板41の外周縁部に設けられている。位置決め孔412は、第1基板41を上下方向に貫通している。
【0030】
≪第2基板≫
第2基板42は、いわゆるスイッチング基板である。すなわち、第2基板42は、ステータ3のコイル31への通電方向を切り替えるための回路基板である。第2基板42は、インバータ回路を含む。
【0031】
第2基板42は、第1基板41の下方において、第1基板41と平行に配置されている。第2基板42には、スイッチング素子(不図示)が実装されている。スイッチング素子は、例えば電界効果トランジスタ(FET)等である。スイッチング素子は、センサ素子410の検出結果に応じてコイル31への通電方向を切り替える素子である。
【0032】
図4に示すように、第2基板42は、円形部420と、張出部423と、を有する。
【0033】
円形部420は、上面視において略円形状をなしている。円形部420の外径は、ステータ3の外径と略同一である。円形部420は、複数の第1切欠き421(本実施形態では5つ)と、複数の第2切欠き422(本実施形態では3つ)と、を有する。
【0034】
第1切欠き421は、第2基板41をヒートシンク6に固定するのに用いられる切欠きである。第1切欠き421は、円形部420の外周縁部に設けられている。第1切欠き421は、上面視において略半円状をなしている。第1切欠き421は、回転軸21の径方向外側に開口している。
【0035】
第2切欠き422は、ヒートシンク6をインシュレータ5に固定するのに用いられる切欠きである。第2切欠き422は、円形部420の外周縁部に設けられている。第2切欠き422は、上面視において略半円状をなしている。第2切欠き422は、回転軸21の径方向外側に開口している。
【0036】
張出部423は、上面視において略矩形状をなしている。張出部423は、円形部420の外周の一部から、回転軸21の径方向外側に張り出した部分である。上方から第1基板41及び第2基板42を重ねて見ると、第2基板42の張出部423は、第1基板41の外周縁からはみ出している。このように、回転軸21の径方向において、第1基板41及び第2基板42の長さが異なっている。つまり、張出部423は、第1基板41及び第2基板42の長さの差に相当する部分といえる。この部分には、各種の部品が実装可能である。特に、第1基板41と第2基板42との間隔よりも大きい部品の実装に有効である。すなわち、第2基板42の張出部423の上面に大きな部品を実装しても、第1基板41は邪魔にならない。むしろ第1基板41と第2基板42との間隔を狭めることが可能となる。このように、第1基板41と第2基板42との長さが異なることで、各種部品の実装スペースを確保することができる。
【0037】
張出部423は、接続部43(第2接続部432)を有する。第2接続部432は、外部機器(不図示)と電気的に接続するための部材である。第2接続部432は、例えばコネクタ及びパッド等である。外部機器からの駆動信号は、第2接続部432を通って第2基板42に送信される。受信した駆動信号に基づいて、コイル31への通電方向が切り替えられて、ロータ2が回転する。第2接続部432は、張出部423の上面に配置されている。
【0038】
第2接続部432は、第1接続部431と同様に、回転軸21と直交する一方向の一方側に配置されている。つまり、第1接続部431と第2接続部432とは、同じ側に配置されている。言い換えると、第1接続部431と第2接続部432とは、回転軸21と直交する一方向の一方側と、他方側とに分かれて配置されていない。第1接続部431と第2接続部432とが別々の側に配置されていると、各々の側でリード線(不図示)との接続等のための空間を確保する必要があるが、第1接続部431と第2接続部432とが同じ側に配置されていると、リード線との接続等のための空間を一つにまとめることができる。したがって、電動工具用モータ1の小型化が可能となる。
【0039】
第2接続部432の外部機器との接続方向は、回転軸21の軸方向上向きである(図1中、矢印432Dで示す)。このように、第1接続部431及び第2接続部432の外部機器との接続方向が異なっている。接続方向が同じであれば、接続方向と異なる方向にデッドスペースが生じるおそれがある。上記のように接続方向を異ならせることで、デッドスペースを少なくすることができる。
【0040】
≪第1基板及び第2基板の位置関係≫
図1に示すように、第1基板41及び第2基板42は、回転軸21の方向に沿って並んでいる。つまり、第1基板41と第2基板42とは、上下にそれぞれ配置されている。第1基板41及び第2基板42は、回転軸21に対して直交している。具体的には、第1基板41のセンサ素子410が実装された面と、第2基板42のスイッチング素子が実装された面とは、回転軸21に対して垂直である。
【0041】
第1基板41は、回転軸21の方向において、ステータ3と第2基板42との間に配置されている。すなわち、ステータ3、第1基板41、及び第2基板42は、上段、中段、及び下段にそれぞれ位置している。
【0042】
本実施形態では、センサ素子410及びスイッチング素子は、単一の基板に実装されずに、第1基板41及び第2基板42にそれぞれ分けて実装されている。これにより、ロータ2と第1基板41との距離、及びステータ3と第2基板42との距離を、各々独立して調整することができる。すなわち、センサ素子410は、ロータ2に近いほど、ロータ2の回転位置を精度よく検出することができる。これにより、電動工具用モータ1の高トルク出力が可能となる。一方、スイッチング素子は、ステータ3のコイル31から遠いほど、コイル31の発熱の影響を受けにくくなる。これにより、電動工具用モータ1の連続使用時間を長くすることができる。
【0043】
≪インシュレータ≫
インシュレータ5は、電気絶縁性を有する部材である。インシュレータ5は、例えばナイロン等の樹脂製である。
【0044】
インシュレータ5は、ステータ3、第1基板41、及び第2基板42を固定している。図3に示すように、インシュレータ5は、第1インシュレータ51、第2インシュレータ52、及び第3インシュレータ53を含む。第1インシュレータ51及び第2インシュレータ52は、インサート成形により、ステータ3の鉄心30と一体化している。
【0045】
第1インシュレータ51は、鉄心30の上部を被覆している。具体的には、第1インシュレータ51は、円環部510と、複数の歯部被覆部514(本実施形態では歯部301と同数の6つ)と、を有する。
【0046】
円環部510の外径は、鉄心30の筒部300の外径と略同一である。円環部510は、筒部300の上面を被覆している。
【0047】
6つの歯部被覆部514は、円環部510の周方向において内周面に等間隔で設けられている。6つの歯部被覆部514の各々は、6つの歯部301の各々の上面を被覆している。
【0048】
第2インシュレータ52は、鉄心30の下部を被覆している。具体的には、第2インシュレータ52は、円環部520と、複数の歯部被覆部524(本実施形態では歯部301と同数の6つ)と、第1取付部521(本実施形態では2つ)と、位置決め部525(本実施形態では2つ)と、第2取付部522(本実施形態では3つ)と、端子保護部523と、を有する。なお、第2インシュレータ52の第2取付部522の一部は、回転軸21の方向において、ステータ3と第2基板42との間に配置されている。
【0049】
円環部520の外径は、鉄心30の筒部300の外径と略同一である。円環部520は、筒部300の下面を被覆している。
【0050】
6つの歯部被覆部524は、円環部520の周方向において内周面に等間隔で設けられている。6つの歯部被覆部524の各々は、6つの歯部301の各々の下面を被覆している。なお、図2に示すように、具体的には、コイル31は、上下の歯部被覆部514,524で被覆された歯部301に配線310が巻回されて形成されている。
【0051】
第1取付部521は、第1基板41を取り付けるための部分である。第1取付部521は、円環部520の下面から下方に突出している。2つの第1取付部521の突出長さは等しい。第1取付部521は、ねじ孔526を有する。ねじ孔526は、第1取付部521の先端面(下端面)に設けられている。
【0052】
位置決め部525は、第1基板41を第2インシュレータ52に固定する際の位置決めに用いられる部分である。位置決め部525は、円環部520の下面から下方に突出している。2つの位置決め部525の突出長さは、第1取付部521の突出長さに等しい。位置決め部525は、突起527を有する。突起527は、位置決め部525の先端面(下端面)から突出している。突起527を第1基板41の上から位置決め孔412に通すことにより、第1基板41の位置決めを行うことができる。
【0053】
第2取付部522は、第2基板42を取り付けるための部分である。第2取付部522は、円環部520の下面から下方に突出している。3つの第2取付部522の突出長さは等しい。第2取付部522は、ねじ孔528を有する。ねじ孔528は、第2取付部522の先端面(下端面)に設けられている。
【0054】
第2取付部522の突出長さは、第1取付部521の突出長さよりも長い。このように、第1取付部521と第2取付部522とは、回転軸21の方向においてずれて配置されている。
【0055】
端子保護部523は、円環部520の下面から下方に突出している。端子保護部523の突出長さは、第2取付部522の突出長さと略同一である。図2に示すように、端子保護部523は、第2基板42と接触している。
【0056】
第3インシュレータ53は、回転軸21の方向において、ステータ3と第2基板42との間に配置されている。これにより、ステータ3、及び第2基板42を電気的に絶縁することができる。さらに第3インシュレータ53は、第1基板41と第2基板42との間に配置されている。第3インシュレータ53は、円筒部531と、フランジ部532と、取付孔533と、支持部534と、を有する。
【0057】
円筒部531は、第2ベアリング72が収容される部分である(図1参照)。円筒部531は、回転軸21の方向に延びる円筒状をなしている。円筒部531は、上方に開口している。回転軸21の方向において、円筒部531の長さは、第1基板41と第2基板42との間隔に略等しい。
【0058】
フランジ部532は、第1基板41を支持する部分である。フランジ部532は、円筒部531の上端縁から、回転軸21の径方向外向きに張り出し、上面視において略円形状をなしている。フランジ部532の外径は、ステータ3の外径と略同一である。
【0059】
取付孔533は、第1基板41と一緒に第3インシュレータ53を第2インシュレータ52に固定するのに用いられる孔である。取付孔533は、第3インシュレータ53の外周縁部に設けられている。取付孔533は、第3インシュレータ53を上下方向に貫通している。図2に示すように、ねじ541を第3インシュレータ53の下から取付孔533、及び第1基板41の取付孔411に通し、第1取付部521のねじ孔526に締め付けることにより、第1基板41と一緒に第3インシュレータ53を第2インシュレータ52に固定することができる。
【0060】
支持部534は、第1基板41と一緒に第3インシュレータ53を第2インシュレータ52に固定する際に、第1基板41の位置決め孔412の周辺部分を、第2インシュレータ52の位置決め部525と挟み込んで支持する部分である。
【0061】
≪ヒートシンク≫
ヒートシンク6は、放熱性を有する部材である。ヒートシンク6は、例えばアルミニウム等の金属製である。
【0062】
ヒートシンク6は、上面視において、ステータ3の外径と略同一の外径を有する円の外周の一部が欠けた形状をなしている。ヒートシンク6は、第2基板42の下方に配置されている。ヒートシンク6は、ねじ穴600(本実施形態では5つ)と、取付部601(本実施形態では3つ)と、を有する。
【0063】
ねじ穴600は、第2基板42をヒートシンク6に取り付けるための穴である。ねじ穴600は、ヒートシンク6の外周縁部に設けられている。図1に示すように、ねじ424を第2基板42の上から第1切欠き421に通し、ヒートシンク6のねじ穴600に締め付けることにより、第2基板42をヒートシンク6に固定することができる。
【0064】
取付部601は、ヒートシンク6を第2インシュレータ52に取り付けるための部分である。図1に示すように、取付部601は、ヒートシンク6の上面から上方に突出している。取付部601の外径は、第2基板42の第2切欠き422の内径に略等しい。取付部601は、取付孔602を有する。取付孔602は、取付部601を上下方向に貫通している。取付部601を第2基板42の下から第2切欠き422に通し、さらにねじ542をヒートシンク6の下から取付孔602に通し、第2インシュレータ52の第2取付部522のねじ孔528に締め付ける。これにより、ヒートシンク6を第2インシュレータ52に固定することができる。このように、ヒートシンク6を介して第2基板42がインシュレータ5に固定されている。これにより、電動工具用モータ1の放熱性を向上させることができる。特に第2基板42がヒートシンク6に取り付けられていることで、第2基板42の放熱性を向上させることができる。なお、第2基板42とヒートシンク6との間には、両者を電気的に絶縁しつつ熱的に接触させるために、絶縁シート603が介在している。
【0065】
≪ベアリング≫
2つのベアリング7(第1ベアリング71及び第2ベアリング72)は、回転軸21を回転可能に支持する。
【0066】
第1ベアリング71は、回転軸21の方向において冷却ファン23よりも上方に位置している。第1ベアリング71は、冷却ファン23の窪み部230に収容されている。第1ベアリング71の厚さ(回転軸21の方向における長さ)は、窪み部230の深さ(回転軸21の方向における長さ)よりも短い。
【0067】
第2ベアリング72は、回転軸21の方向においてステータ3よりも下方に位置している。第2ベアリング72は、第2基板42よりも上方に位置している。第2ベアリング72は、第3インシュレータ53の円筒部531に収容されている。そのため、回転軸21の方向において、第2ベアリング72の最外面721(下面)よりも内側(上側)に、第1基板41が配置されている。これにより、電動工具用モータ1の長さ(回転軸21の方向における長さ)をより短くすることができるので、電動工具用モータ1の小型化が可能となる。第2ベアリング72の厚さ(回転軸21の方向における長さ)は、円筒部531の深さ(回転軸21の方向における長さ)よりも長い。そのため、第2ベアリング72の一部は、第3インシュレータ53のフランジ部532の上面から突出している。この突出している分だけ、第1基板41と第2ベアリング72とは、回転軸21の径方向から見たときに重なっている。この重なっている部分を図2中、OLで示す。重なっている部分OLが長いほど電動工具用モータ1の長さをより短くすることができるので、電動工具用モータ1の小型化が可能となる。
【0068】
本実施形態では、第2ベアリング72が、ステータ3と第2基板42との間に配置されていることで、回転軸21を短くすることができる。回転軸21が短くなることで、ロータ2の回転時にたわみにくくなるので、騒音、及び振動を低減することができる。
【0069】
また、第2ベアリング72が、ステータ3と第2基板42との間に配置されていることで、第2基板42に、回転軸21を挿通させるための貫通孔を設ける必要がなくなる。貫通孔を設けなければ、その分、回路の形成箇所を確保することができる。つまり、回路設計の自由度を高めることができる。したがって、電動工具用モータ1の高効率が可能である。
【0070】
さらに電動工具用モータ1は、第2ベアリング72による片持ち構造を採用していることで、ロータ2とステータ3との間隔をより狭くすることができる。間隔が狭くなることで、電動工具用モータ1の効率を上げることができる。
【0071】
≪端子部材≫
端子部材8は、コイル31と第2基板42とを電気的に接続するための部材である。図2に示すように、端子部材8は、インシュレータ5に固定されている。具体的には、端子部材8の少なくとも一部は、インサート成形により、第2インシュレータ52の端子保護部523内に埋め込まれている。このように、端子部材8は、端子保護部523によって保護されている。端子部材8は、導電性を有する。端子部材8は、例えば金属板で形成されている。端子部材8の断面積は、コイル31の配線310の断面積よりも大きい。端子部材8の一端(上端)にコイル31の配線310が電気的に接続されている。端子部材8の他端(下端)に第2基板42が電気的に接続されている。このように、第2基板42は、端子部材8を介してコイル31に電気的に接続されている。コイル31の配線310を引き延ばして直接、第2基板42に電気的に接続することも可能であるが、配線310と第2基板42との間に端子部材8を介在させることで、配線310の断線を抑制することができる。
【0072】
<電動工具>
本実施形態に係る電動工具10は、例えばドリルドライバ及びインパクトドライバ等である。
【0073】
図6に示すように、電動工具10は、電動工具用モータ1と、電動工具本体9と、装着部91と、保持部92と、トリガ93と、台座部94と、を備える。
【0074】
電動工具本体9は、略円筒状をなす部材である。電動工具本体9は、電動工具用モータ1を収容する。
【0075】
装着部91は、電動工具本体9の先端に接続されている。装着部91は、電動工具10の使用用途に応じた形状のビットを、電動工具本体9に対して回転自在な状態で装着するための部分である。装着部2では、回転伝達機構を通じて伝達された回転力をビットに加えることで、ビットを電動工具本体9に対して回転させることができる。
【0076】
保持部92は、使用時に電動工具10を保持するための部材である。保持部92は、電動工具本体9の側方に接続されている。
【0077】
トリガ93は、電動工具用モータ1を駆動又は停止させるスイッチである。トリガ93は、保持部92に配置されている。トリガ93は、保持部92側に押し込むことが可能となっている。トリガ93が保持部92側に押し込まれると、電動工具用モータ1に電力が供給され、回転軸21が回転する。外部から力が加えられていない場合には、トリガ93は、保持部92内に配置されたばね等(不図示)により、保持部92から突出した状態を維持する。したがって、回転軸21が回転している状態で、トリガ93を保持部92側へ押し込む力を取り除いた場合には、トリガ93が保持部92から突出し、電動工具用モータ1への電力供給が中止され、回転軸21の回転が停止する。
【0078】
台座部94は、電動工具10を床等の平坦面に置いて直立させることができるようにするための部材である。台座部94は、保持部92の先端に接続され、平坦な底面を有する。
【0079】
なお、図示省略しているが、電動工具10は、電動工具用モータ1の回転軸21の回転力を装着部91に伝達するための回転伝達機構、充電池、及びトリガ93の状態に応じて充電池からの電力を電動工具用モータ1に供給するための回路等も備える。
【0080】
3.まとめ
上記実施形態から明らかなように、本開示は、下記の態様を含む。なお、以下では、実施形態との対応関係を明示するためだけに、符号を括弧付きで付している。
【0081】
第1の態様に係る電動工具用モータ(1)は、回転軸(21)を有するロータ(2)と、前記ロータ(2)を回転させるコイル(31)を有するステータ(3)と、前記ロータ(2)の回転位置を検出するセンサ素子(410)が実装された基板(41)と、前記回転軸(21)を回転可能に支持するベアリング(7;72)と、前記ステータ(3)、前記基板(41)、及び前記ベアリング(7;72)を固定するインシュレータ(5;52)と、を備える。
【0082】
この態様によれば、低騒音、低振動、及び高効率が可能である。
【0083】
第2の態様に係る電動工具用モータ(1)では、第1の態様において、前記基板(41)は、前記回転軸(21)の方向において、前記ベアリング(7;72)の最外面(721)よりも内側に配置されている。
【0084】
この態様によれば、電動工具用モータ(1)の小型化が可能となる。
【0085】
第3の態様に係る電動工具用モータ(1)では、第2の態様において、前記基板(41)と前記ベアリング(7;72)とは、径方向から見たときに重なっている。
【0086】
この態様によれば、電動工具用モータ(1)の小型化が可能となる。
【0087】
第4の態様に係る電動工具用モータ(1)では、第1~3のいずれかの態様において、前記基板(41)は、第1基板(41)である。前記センサ素子(410)の検出結果に応じて前記コイル(31)への通電方向を切り替えるスイッチング素子が実装された第2基板(42)を更に備える。前記第1基板(41)及び前記第2基板(42)が、前記回転軸(21)の方向に沿って並び、かつ、前記回転軸(21)に対して直交している。
【0088】
この態様によれば、高トルク出力が可能であり、連続使用時間を長くすることができる。
【0089】
第5の態様に係る電動工具用モータ(1)では、第1~4のいずれかの態様において、前記インシュレータ(5;53)は、前記回転軸(21)の方向において、前記ステータ(3)と前記第2基板(42)との間に配置されている。
【0090】
この態様によれば、ステータ(3)、及び第2基板(42)を電気的に絶縁することができる。
【0091】
第6の態様に係る電動工具用モータ(1)は、第1~5のいずれかの態様において、ヒートシンク(6)を更に備える。前記第2基板(42)は、前記ヒートシンク(6)を介して前記インシュレータ(5)に固定されている。
【0092】
この態様によれば、電動工具用モータ(1)の放熱性を向上させることができる。
【0093】
第7の態様に係る電動工具用モータ(1)では、第4~6のいずれかの態様において、前記第1基板(41)及び前記第2基板(42)の各々は、外部機器と電気的に接続するための接続部(43)を有する。前記接続部(43)は、前記回転軸(21)と直交する一方向の一方側に配置されている。
【0094】
この態様によれば、電動工具用モータ(1)の小型化が可能となる。
【0095】
第8の態様に係る電動工具用モータ(1)では、第1~7のいずれかの態様において、前記第1基板(41)は、前記回転軸(21)の周方向の一部に配置されている。
【0096】
この態様によれば、第1基板(41)の使用量を減らすことが可能となる。
【0097】
第9の態様に係る電動工具用モータ(1)では、第4~8のいずれかの態様において、前記回転軸(21)の径方向において、前記第1基板(41)及び前記第2基板(42)の長さが異なる。
【0098】
この態様によれば、各種部品の実装スペースを確保することができる。
【0099】
第10の態様に係る電動工具用モータ(1)では、第7~9のいずれかの態様において、前記第1基板(41)の接続部(431)及び前記第2基板(42)の接続部(432)の前記外部機器との接続方向が異なる。
【0100】
この態様によれば、デッドスペースを少なくすることができる。
【0101】
第11の態様に係る電動工具用モータ(1)は、第4~10のいずれかの態様において、前記インシュレータ(5)に固定された端子部材(8)を更に備える。前記第2基板(42)は、前記端子部材(8)を介して前記コイル(31)に電気的に接続されている。
【0102】
この態様によれば、コイル(31)の配線(310)の断線を抑制することができる。
【0103】
第12の態様に係る電動工具(10)は、第1~11のいずれかの態様に係る電動工具用モータ(1)と、前記電動工具用モータ(1)が収容された電動工具本体(9)と、を備える。
【0104】
この態様によれば、低騒音、低振動、及び高効率が可能である。
【符号の説明】
【0105】
1 電動工具用モータ
10 電動工具
2 ロータ
21 回転軸
3 ステータ
31 コイル
41 基板(第1基板)
42 第2基板
43 接続部
5 インシュレータ
521 第1取付部
522 第2取付部
6 ヒートシンク
7 ベアリング
721 最外面
8 端子部材
9 電動工具本体
図1
図2
図3
図4
図5
図6