(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-21
(45)【発行日】2023-09-29
(54)【発明の名称】通信システム
(51)【国際特許分類】
H04W 52/02 20090101AFI20230922BHJP
H04W 4/38 20180101ALI20230922BHJP
【FI】
H04W52/02 130
H04W4/38
(21)【出願番号】P 2019125989
(22)【出願日】2019-07-05
【審査請求日】2022-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 崇士
(72)【発明者】
【氏名】上村 貴則
【審査官】横田 有光
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-278308(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0295583(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線装置と、
上位機器と、
センター装置と、を備え、
前記無線装置は、
前記上位機器と通信する通信部と、
前記通信部を制御する制御部と、
センサーから得られる情報
及び前記上位機器との通信仕様を
記憶する記憶部と、
電源としての電池と、
前記上位機器との通信状況に基づき前記電池の電池残量を算出する電池残量算出部と、を備
え、
前記上位機器は、
前記無線装置と通信するための上位通信部と、
前記センター装置と通信する通信インターフェース部と、を備え、
前記センター装置は、
前記上位機器と通信するセンター通信部と、
通信仕様データ生成部と、を備え、
前記制御部は、前記記憶部に記憶されている通信仕様に応じて、前記通信部を制御し、
前記制御部は、前記上位機器と前記無線装置との間の前記通信状況で判断される通信レベルと、前記電池残量算出部で算出された
前記電池残量とに応じて、送信の頻度及び/又は送信する情報量を変更
し、
前記制御部は、前記電池残量が予め想定された電池残量に対して大きいと判断した場合、前記情報を、前記通信部を介して前記上位機器へ送信する頻度を大きくし、
前記センター装置は、前記上位機器と前記無線装置との間の前記通信状況で判断される通信レベルと、前記無線装置から得られた前記電池残量とに基づいて、前記無線装置の前記通信仕様を変更するための通信仕様データを生成する、
通信システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記電池残量が
前記予め想定された電池残量に対して小さいと判断した場合、前記情報を、前記通信部を介して前記上位機器へ送信する頻度を小さくすることを特徴とする請求項1に記載の
通信システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記電池残量が
前記予め想定された電池残量に対して大きいと判断した場合、前記情報量を、予め定められている情報量より多く送信することを特徴とする請求項1に記載の
通信システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記電池残量が
前記予め想定された電池残量に対して小さいと判断した場合、前記情報量を、予め定められている情報量より少なく送信することを特徴とする請求項1に記載の
通信システム。
【請求項5】
前記センター装置は、前記電池残量が
前記予め想定された電池残量に対して大きい場合、前記無線装置の通信頻度を上げるように設定する通信仕様データを通信仕様データ生成部にて生成し、前記無線装置へ前記上位機器を介して送信することを特徴とする請求項
1に記載の通信システム。
【請求項6】
前記センター装置は、前記電池残量が
前記予め想定された電池残量に対して小さい場合、前記無線装置の通信頻度を下げるように設定する通信仕様データを通信仕様データ生成部にて生成し、前記無線装置へ前記上位機器を介して送信することを特徴とする請求項
1に記載の通信システム。
【請求項7】
前記センター装置は、前記電池残量が
前記予め想定された電池残量に対して大きい場合、前記無線装置より送信する前記情報の情報量を大きくするように設定する通信仕様データを通信仕様データ生成部にて生成し、前記無線装置へ前記上位機器を介して送信することを特徴とする請求項
1に記載の通信システム。
【請求項8】
前記センター装置は、前記電池残量が
前記予め想定された電池残量に対して小さい場合、前記無線装置より送信する前記情報の情報量を小さくするように設定する通信仕様データを通信仕様データ生成部にて生成し、前記無線装置へ前記上位機器を介して送信することを特徴とする請求項
1に記載の通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センター装置を含む通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ガス、電力、水道等のユーティリティにおいて、その使用量を計測するためのメータの検針値を無線通信等を用いて自動的に検針する無線自動検針システムが実用化されている。
【0003】
このような無線自動検針システムは、メータに取り付けられたメータからの検針値を受け取る無線端末と、無線端末から得られたメータの検針値をユーティリティ会社のセンターシステムへ送信する上位端末等で構成される。なお、無線端末は、無線部としてメータに内蔵される形態もある。
【0004】
その通信方式は様々であり、ライセンスフリーの周波数帯域を使った特定小電力無線方式や、携帯電話等を扱う通信事業者が帯域を確保して運用しているセルラー系通信を使った方式等がある。
【0005】
特定小電力無線方式を使うと、ライセンスフリーの帯域を使うため、通信回線に対する費用は抑制されるが、ネットワークを構築し、維持管理するのが大変であった。
【0006】
一方、最近では、通信事業者が、センサーネットワークに適したセルラー方式を提供することも出てきている。この場合、通信回線に対する費用は掛かるが、ネットワークの構築、維持管理は、通信事業者がある条件の下行うため、センサーネット-ワークを構築する上で、メリットの1つとなっている。
【0007】
しかしながら、セルラー系通信を使った無線端末は、基地局等と、接続されている必要があり、消費電流が増大する傾向にあった。
【0008】
特にガスや水道に関する自動検針用途の無線端末は、電源として電池が使われることが多く、消費電流を抑制することが非常に重要になってきており、例えば、通信環境に応じて、端末が送信すべきか否かを判断し、環境が良好であればデータを送信し、良好でなければ、データを蓄積することで消費電力を抑制する方式が存在する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記従来の方法では、データを送付できる日時が指定できないこと、通信環境が改善されない場合には、送信ができないという課題があった。また、セルラー方式の通信では対応できない課題も存在する。
【0011】
即ち、セルラー系通信では、基地局と無線端末間で、通信状況を判断し、通信状況に応じて、端末間の送信電力や、再送回数を可変し、通信の信頼性を確保しており、通信がで
きる場合でも消費電流が増大し消費電流の抑制には繋がらなかった。
【0012】
また、自動検針の無線端末はメータと共に設置されるので位置が固定された固定局となる為、設置された場所の通信環境が一旦悪くなると、その状況から改善されないことも多々あり、通信環境が良好になったら、データをセンターシステムへ上げる従来の方法では限界があった。
【0013】
本発明は、前記従来の改題を解決するもので、無線端末の電源である電池の残量に応じて、通信頻度や通信する情報量を可変させ消費電流を抑制することで、セルラー系通信を用いた場合であろうと、移動局ではない固定局を用いた通信において、消費電流を抑制しながら運用が可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記従来の課題を解決するために、本発明の通信システムは、無線装置と、上位機器と、センター装置と、を備える。前記無線装置は、前記上位機器と通信する通信部と、前記通信部を制御する制御部と、センサーから得られる情報及び前記上位機器との通信仕様を記憶する記憶部と、電源としての電池と、前記上位機器との通信状況に基づき前記電池の電池残量を算出する電池残量算出部と、を備える。前記上位機器は、前記無線装置と通信するための上位通信部と、前記センター装置と通信する通信インターフェース部と、を備える。前記センター装置は、前記上位機器と通信するセンター通信部と、通信仕様データ生成部と、を備える。前記制御部は、前記記憶部に記憶されている通信仕様に応じて、前記通信部を制御する。前記制御部は、前記上位機器と前記無線装置との間の前記通信状況で判断される通信レベルと、前記電池残量算出部で算出された電池残量とに応じて、送信の頻度及び/又は送信する情報量を変更する。前記制御部は、前記電池残量が予め想定された電池残量に対して大きいと判断した場合、前記情報を、前記通信部を介して前記上位機器へ送信する頻度を大きくする。前記センター装置は、前記上位機器と前記無線装置との間の前記通信状況で判断される通信レベルと、前記無線装置から得られた前記電池残量とに基づいて、前記無線装置の前記通信仕様を変更するための通信仕様データを生成する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の通信システムによると、無線装置の電源である電池の電池残量に応じて、通信頻度や通信する情報量を可変させ消費電流を抑制することで、セルラー系通信を用いた場合でも、消費電流を抑制するができ、電池交換無しで要求された期間に渡る運用を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施の形態1における無線装置の構成を示すブロック図
【
図2】実施の形態1における無線装置の動作を説明するフローチャート
【
図3】実施の形態1における電池残量と電池寿命の関係を説明するグラフ
【
図4】実施の形態2における通信システムの構成を示すブロック図
【
図5】実施の形態2における通信システムの構通信シーケンス図
【
図6】実施の形態2における電池残量と電池寿命の関係を説明するグラフ
【発明を実施するための形態】
【0018】
第1の発明は、上位機器と通信する通信部と、前記通信部を制御する制御部と、センサー等から得られる情報を記録する記憶部と、電源としての電池と、前記上位機器との通信状況に基づき前記電池の電池残量を算出する電池残量算出部と、を備える無線装置において、前記制御部は、前記電池残量算出部で算出された電池残量に応じて、送信の頻度及び/又は送信する情報量を変更することを特徴とする無線装置であり、無線装置の電源であ
る電池の電池残量に応じて、通信頻度や通信する情報量を可変させ消費電流を抑制することで、セルラー系通信を用いた場合でも、消費電流を抑制するができ、電池交換無しで要求された期間に渡る運用を実現することができる。
【0019】
第2の発明は、特に第1の発明において、前記制御部は、前記電池残量が予め想定された電池残量に対して大きいと判断した場合、前記情報を、前記通信部を介して上位機器へ送信する頻度を大きくすることを特徴とするものである。
【0020】
第3の発明は、特に第1の発明において、前記制御部は、前記電池残量が予め想定された電池残量に対して小さいと判断した場合、前記情報を、前記通信部を介して上位機器へ送信する頻度を小さくすることを特徴とするものである。
【0021】
第4の発明は、特に第1の発明において、前記制御部は、前記電池残量が予め想定された電池残量に対して大きいと判断した場合、前記情報量を、予め定められている情報量より多く送信することを特徴とするものである。
【0022】
第5の発明は、特に第1の発明において、前記制御部は、前記電池残量が予め想定された電池残量に対して小さいと判断した場合、前記情報量を、予め定められている情報量より少なく送信することを特徴とするものである。
【0023】
第6の発明は、センサー等からの情報や上位機器との通信仕様を記憶する記憶部と、前記上位機器と通信するための通信部と、電源としての電池と、前記上位機器との通信状況に基づき前記電池の電池残量を算出する電池残量算出部と、前記記憶部に記憶されている通信仕様に応じて、前記通信部を制御する制御部と、を備えた無線装置と、前記無線装置と通信するための上位通信部と、センター装置と通信する通信インターフェース部と、を備えた上位機器と、前記上位機器と通信するセンター通信部と、通信仕様データ生成部と、を備えたセンター装置と、からなり、前記センター装置は、前記無線装置から得られた前記電池残量に基づいて、前記無線装置の前記通信仕様を変更するための通信仕様データを生成する通信システムであり、無線装置の電源である電池の電池残量に応じて、通信頻度や通信する情報量を可変させ消費電流を抑制することで、セルラー系通信を用いた場合でも、消費電流を抑制するができ、電池交換無しで要求された期間に渡る運用を実現することができる。
【0024】
第7の発明は、特に第6の発明において、前記センター装置は、前記電池残量が予め想定された電池残量に対して大きい場合、前記無線装置の通信頻度を上げるように設定する通信仕様データを通信仕様データ生成部にて生成し、前記無線装置へ前記上位機器を介して送信することを特徴とするものである。
【0025】
第8の発明は、特に第6の発明において、前記センター装置は、前記電池残量が予め想定された電池残量に対して小さい場合、前記無線装置の通信頻度を下げるように設定する通信仕様データを通信仕様データ生成部にて生成し、前記無線装置へ前記上位機器を介して送信することを特徴とするものである。
【0026】
第9の発明は、特に第6の発明において、前記センター装置は、前記電池残量が予め想定された電池残量に対して大きい場合、前記無線装置より送信する前記情報の情報量を大きくするように設定する通信仕様データを通信仕様データ生成部にて生成し、前記無線装置へ前記上位機器を介して送信することを特徴とするものである。
【0027】
第10の発明は、特に第6の発明において、前記センター装置は、前記電池残量が予め想定された電池残量に対して小さい場合、前記無線装置より送信する前記情報の情報量
を小さくするように設定する通信仕様データを通信仕様データ生成部にて生成し、前記無線装置へ前記上位機器を介して送信することを特徴とするものである。
【0028】
以下、図面を参照しながら実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。
【0029】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0030】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1について
図1,2,3を参照しながら説明する。
図1は、本発明の無線装置と、その無線装置と通信する上位機器とを示すブロック図である。
【0031】
無線装置100は、通信部101、制御部102、記憶部105、電池106、電池残量算出部107から構成されている。以下、初めに
図1の各ブロックの説明を行う。
【0032】
通信部101は、制御部102に保有されている通信プロトコルに基づき制御され、上位機器200と無線通信を行い、記憶部105に記録されているデータ等を上位機器200に送信し、上位機器200からの指示等を受信する。また、通信部101は、無線通信を行う際に、送信出力の設定、送信するチャネルの選択、送信するための伝送レートの設定、変調等を行うための各回路から構成されている。
【0033】
制御部102は、通信部101を制御するための情報を保有している。ここで言う通信部101を制御する情報とは、無線装置100と上位機器200との間の通信プロトコルであり、例えば、通信の遷移として、無線装置100から、決められたタイミングで、無線装置100を送信できる状態に起動し、記憶部105に記憶されているセンサー104のデータ等を通信部101を介して送信を行う。その後、上位機器200からの応答を受けるために通信部101を受信状態に遷移させる手順がある。この他、無線装置100全体の制御をするプログラム等を保有している。
【0034】
また、制御部102は、通信仕様を電池残量に応じて変更する機能(詳細は後述する)を備える。
【0035】
記憶部105は、無線装置100に接続された外部のセンサー104から得られたデータを記憶する。センサー104は、例えば、ガスメータや水道メータ等の流量計であり、流量の積算値、あるいは、瞬時の流量値を出力する。
【0036】
電池106は、無線装置100内の各ブロックに供給する電力を保有しており、初期の電池容量は、標準の使用状態において要求された期間、無線装置100の機能が維持できる容量に設定されている。
【0037】
電池残量算出部107は、通信部101で消費された電流やその他の回路で消費された電流を積算して総消費電流を求め、使用する電池で定められた電池容量の初期値から減算することで演算時点での電池残量を算出する。なお、通信部101で消費された電流は、1回の送信で想定される電流×実際の送信回数、その他の回路の消費電流は、回路の動作状態に応じて想定された電流×各々の動作状態における実際の動作時間で動作状態毎に求めて加算することで算出される。
【0038】
次に、
図2に示す無線装置100の動作を説明するフローチャートを使って無線装置100の制御部102における通信頻度を決めるフローについて説明を行う。
【0039】
制御部102は、電池残量算出部107により演算された電池残量を取得し(S101)、取得した電池残量と現在の消費電流の状況から電池寿命を算出する(S102)。
【0040】
図3は、設置時点(YA)を起点とした電池寿命と電池残量の関係を示すグラフの一例である。
図3では、設置時点(YA)から0.5年経過後(YB)に算出された電池残量と電池残量を算出した時点までの電流消費から、その後の電池残量の推移(点線A)を推定し、予め定めた電池寿命判定残量と比較して、使用可能な残存年数(本実施の形態では9年)を算出し、推定電池寿命が9.5年(YC)と算出されたことを示している。なお、推定電池寿命とは、設置から無線装置100が機能しなくなるまでの期間を意味する。
【0041】
従って、無線装置100として要求された電池寿命(以下、期待電池寿命と称す)が10年であった場合には、このままの消費電流の状態が継続すると期待電池寿命を満足できないことになる。
【0042】
通常は、電池容量は期待電池寿命を満足できるように設定されているが、想定よりも悪い通信環境に設置された場合には、電池寿命が期待電池寿命よりも短くなる。逆に、想定よりも悪い通信環境に設置された場合には、電池寿命が期待電池寿命よりも長くなる。
【0043】
そこで、制御部102は、推定電池寿命が期待電池寿命よりも短いと判断された場合は、電流消費の大きな通信に伴う消費電流を削減する為、通信仕様を変更して、電池寿命の目標として例えば10.25年(
図3のYD)となるようにする。また、推定電池寿命が期待電池寿命よりも長いと判断された場合は、通信頻度を多くすることで、応答性を良くすることができる。
【0044】
つまり、制御部102は、推定電池寿命が期待電池寿命よりも短い場合(S103でYes)は、通信頻度を少なくするように、通信仕様を変更する(S104)。また、推定電池寿命が期待電池寿命よりも十分長い(例えば、10%以上)場合(105でYes)は、通信頻度を多くするように、通信仕様を変更する(S106)。処理S105でNoの場合は、通信仕様を変更しない(S107)。
【0045】
なお、通信頻度は、電池残量と1回の通信で消費される消費電流、及び、その他の回路の消費電流に基づき、期待電池寿命を満足できるように演算で求めることができることは言うまでもない。
【0046】
また、本実施の形態では、推定電池寿命が期待電池寿命よりも十分長い場合に、通信頻度を多くするように、通信仕様を変更したが、この場合は、必ずしも通信頻度を多くする必要はない。
【0047】
以上の方法により、本実施の形態の無線装置100によると、期待電池寿命を満足できるようにすることができる。
【0048】
また、本実施の形態では、設置時点(YA)から0.5年経過後の電池残量で電池寿命を演算して通信頻度を変更する構成で説明したが、電池残量を算出するタイミングは、任意のタイミングで行う事ができる。更に、電池寿命を演算する方法として、電池残量を算出したタイミングにおける消費電流から電池寿命を演算する方法で説明したが、設置から定期的に電池残量を所定回数算出し、算出した所定個の電池残量値から最小二乗法等で求めた関数に基づいて電池寿命を演算する方法でもよい。
【0049】
また、電池残量に基づく通信頻度の変更は、定期的に行うようにすると、通信状況が変化して通信に伴う消費電流が変化した場合でも期待電池寿命を満足することができる。或いは、通信状況の変化に伴う通信仕様の変更時に行っても良い。特に、セルラー方式の通信においては、通信状況で判断された通信レベルに応じて1回の通信における再送回数が固定値として設定されており、通信状況に従って再送回数が変更されるので、再送回数の変更時に行うことが好ましい。
【0050】
なお、本実施の形態では、電池残量算出部107は、送信電流や各回路の消費電流に基づき電池残量を求めるものとしたが、電池電圧を測定し、予め想定された電池電圧降下と消費電流の関係から求めてもよい。
【0051】
また、本実施の形態では、通信頻度を変更する方法で説明したが、1回の通信における情報量を変更することで、消費電流を加減することも可能である。
【0052】
即ち、高速通信が可能な場合は、情報量に対する消費電力の影響は少ないので、通信頻度を可変する方法が有効であるが、低速通信の場合は、情報量に対する消費電力の影響が大きいので、通信1回で送信する情報量を可変する方法も採用することができる。
【0053】
以上の様に、本実施の形態によると、無線装置の電源である電池の電池残量に応じて、通信頻度や情報量を可変させ消費電流を加減することで、セルラー系通信を用いた場合でも、期待電池寿命を満足する運用が可能となる。
【0054】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について
図4,5,6を参照しながら説明する。
図4は、本発明の通信システムを示すブロック図であり、本通信システムは、無線装置と、その無線装置と通信する上位機器と、上位機器と通信を行うセンター装置から構成されている。
【0055】
無線装置300は、通信部301、制御部302、記憶部305、電池306、電池残量算出部307から構成されている。
【0056】
通信部301は、制御部302に保有されている通信プロトコルに基づき制御され、上位機器400と無線通信を行い、記憶部305に記録されているデータ等を上位機器400に送信し、上位機器400からの指示等を受信する。また、通信部301は、無線通信を行う際に、送信出力の設定、送信するチャネルの選択、送信するための伝送レートの設定、変調等を行うための各回路から構成されている。
【0057】
制御部302は、通信部301を制御するための情報を保有している。ここで言う通信部301を制御する情報とは、無線装置300と上位機器400との間の通信プロトコルであり、例えば、通信の遷移として、無線装置300から、決められたタイミングで、無線装置300を送信できる状態に起動し、記憶部305に記憶されているセンサー304のデータ等を通信部301を介して送信を行う。その後、上位機器400からの応答を受けるために通信部301を受信状態に遷移させる手順がある。この他、無線装置300全体の制御をするプログラム等を保有している。
【0058】
記憶部305は、無線装置300に接続された外部のセンサー304から得られたデータを記憶する。センサー304は、例えば、ガスメータや水道メータ等の流量計であり、流量の積算値、あるいは、瞬時の流量値を出力する。
【0059】
電池306は、無線装置300内の各ブロックに供給する電力を保有しており、初期の
電池容量は、標準の使用状態において要求された期間、無線装置300の機能が維持できる容量に設定されている。
【0060】
電池残量算出部307は、通信部301で消費された電流やその他の回路で消費された電流を積算して、総消費電流を求め、使用する電池306で定められた電池容量の初期値から減算することで演算時点での電池残量を算出する。なお、通信部301で消費された電流は、1回の送信で想定される電流×実際の送信回数、その他の回路の消費電流は、回路の動作状態に応じて想定された電流×各々の動作状態における実際の動作時間で動作状態毎に求めて加算することで算出される。
【0061】
上位機器400は、無線装置300と無線通信を行う上位通信部401、センター装置500とネット回線等を介して通信を行う通信インターフェース403、及び、上位通信部401と通信インターフェース403を制御し、無線装置300のセンサー304で計測された測定値、その他のデータをセンター装置500に送信したり、無線装置300との通信状況に応じて通信仕様を変更したり、或いは、上位機器400全体の制御を行う上位制御部402を備えている。
【0062】
センター装置500は、上位機器400の通信インターフェース403と通信を行うセンター通信部501と、上位機器400を介して取得された無線装置300の電池残量に基づいて、無線装置300の推定電池寿命を演算する電池寿命推定部502と、推定電池寿命に応じて、無線装置300の通信仕様を変更する為の通信仕様を生成する通信仕様データ生成部503を備えている。
【0063】
次に、通信仕様データ生成部503における通信仕様の変更方法について、
図5、
図6を用いて説明する。
【0064】
図5は、本実施の形態における無線装置300と上位機器400と行うセンター装置500における通信シーケンスを示している。
【0065】
ここで、無線装置300は、センサー304で計測された計測データを取得する(S201)と共に、電池306の電池残量を算出(S202)した後、計測データと共に、電池残量をデータとして上位機器400に送信する(S203)。上位機器400は、無線装置300から受信したデータをそのままセンター装置500に送信する(S204)。
【0066】
センター装置500では、計測データと電池残量をデータとして受信し、記憶装置(図示せず)に保存し(S205)、電池寿命推定部502は、受信で得られた電池残量に基づいて無線装置300の推定電池寿命を算出する(S206)。続いて、通信仕様データ生成部503は、推定電池寿命に基づいて無線装置300の期待電池寿命を満足するように通信仕様を変更する為の通信仕様データを作成する(S207)。
【0067】
図6は、設置時点(YA)を起点とした電池寿命と電池残量の関係を示すグラフの一例である。
図6では、設置時点(TA)から0.5年経過後(YB)までに定期的に得られた複数の電池残量データから経過年数と電池残量の関係を最小二乗法で1次関数として求めて、この1次関数に基づき、0.5年以降の電池残量の推移(点線A)を推定し、予め定めた電池寿命判定残量と比較して、使用可能な残存年数(本実施の形態では9年)を算出し、推定電池寿命が9.5年(YC)と算出されたことを示している。
【0068】
従って、無線装置300として要求された電池寿命(以下、期待電池寿命と称す)が10年であった場合には、このままの消費電流の状態が継続すると期待電池寿命を満足できないことになる。
【0069】
通常は、電池容量は期待電池寿命を満足できるように設定されているが、通信状況によっては、想定よりも悪い通信環境に設置された場合には、電池寿命が期待電池寿命よりも短くなる、或いは、長くなる可能性がある。
【0070】
そこで、通信仕様データ生成部503は、特に電流消費の大きな通信に伴う消費電流を削減する為、通信仕様を変更して、
図6の目標電池残量で示す電池残量となるように通信頻度や1回の通信で送信する情報量を変更する為の新たな通信仕様データを生成し(S207)、上位機器400に送信する(S208)。
【0071】
その後、上位機器400は、この新たな通信仕様データを無線装置300に送信し(S209)、無線装置300は、受信した新たな通信仕様データを保存し(S210)、その後、センサーデータを取得し(S211)、新たな通信仕様データに基づく通信仕様で、センサーデータを上位機器400に送信し(S212)、上位機器400は、センター装置500に送信する(S214)。
【0072】
なお、通信仕様データ生成部503が生成する通信仕様データは、推定電池寿命が期待電池寿命よりも短い場合は、通信頻度を少なくしたり、情報量を少なくするが、実施の形態1と同様に、推定電池寿命が期待電池寿命よりも十分長い(例えば、10%以上)場合は、通信頻度を多くしたり、情報量を多くするように、通信仕様を変更しても良い。また、推定電池寿命が、期待電池寿命を満足できると判断された場合は、通信仕様を変更しない。
【0073】
なお、通信頻度や通信量は、電池残量と1回の通信で消費される消費電流、及び、その他の回路の消費電流に基づき、期待電池寿命を満足できるように演算で求めることができることは言うまでもない。
【0074】
以上の方法により、本実施の形態の通信システムによると、期待電池寿命を満足できるようにすることができる。また、センター装置500で推定電池寿命を演算することで、無線装置300における電池寿命推定に伴う演算負荷を軽減することができると共に、無線装置300の電池残量をセンター装置500で管理することができる。
【0075】
また、電池残量に基づく通信仕様の変更は、定期的に行うようにすると、通信状況が変化して通信に伴う消費電流が変化した場合でも期待電池寿命を満足することができる。或いは、通信状況の変化に伴う通信仕様の変更時に行っても良い。特に、セルラー方式の通信においては、通信状況で判断された通信レベルに応じて1回の通信における再送回数が固定値として設定されており、通信状況に従って再送回数が変更されるので、再送回数の変更時に行うことが好ましい。
【0076】
なお、本実施の形態において、電池残量算出部307では消費電流に基づく演算で電池残量を求めるようにしたが、無線装置300が、電池電圧を計測してこの電池電圧を電池残量として、センター装置500に送信し、電池寿命推定部502は、受信で得られた電池電圧に基づいて電池残量を演算しても良い。
【0077】
また、電池残量の算出を無線装置300ではなく、センター装置500にて、無線装置300の通信回数や動作状況を推定して、電池の電池残量を算出しても良い。
【0078】
また、電池残量のデータは、計測データとともに上位機器400に上げるように記載しているが、別々のタイミング上げても良い。
【0079】
以上の様に、本実施の形態によると、無線装置の電源である電池の電池残量に応じて、通信頻度や情報量を可変させ消費電流を加減することで、セルラー系通信を用いた場合でも、期待電池寿命を満足する運用が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
以上のように、本発明にかかる無線装置は、電源である電池の電池残量に応じて、通信頻度や通信する情報量を可変させ消費電流を抑制することで、要求される使用年数の電池駆動を可能とするもので、セルラー系通信を用いた場合でも、消費電流を抑制しながら運用が可能となる。
【符号の説明】
【0081】
100、300 無線装置
101、301 通信部
102、302 制御部
104、304 センサー
105、305 記憶部
106、306 電池
107、307 電池残量算出部
200、400 上位機器
201、401 上位通信部
402 上位制御部
403 通信インターフェース
500 センター装置
501 センター通信部
502 電池寿命推定部
503 通信仕様データ生成部