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特許7352796信号処理方法、プログラム及び信号処理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-21
(45)【発行日】2023-09-29
(54)【発明の名称】信号処理方法、プログラム及び信号処理システム
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/244 20060101AFI20230922BHJP
   G01D 5/245 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
G01D5/244 E
G01D5/245 R
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019179575
(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2021056104
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤浦 英明
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 義行
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-160720(JP,A)
【文献】特開2015-040708(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00-5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出磁界の回転角に応じた正弦波信号を出力する第1磁気検出部と、
前記検出磁界の回転角に応じた信号であって前記正弦波信号に対して位相がπ/2異なる余弦波信号を出力する第2磁気検出部と、
前記正弦波信号と前記余弦波信号との少なくとも一方に基づいて前記検出磁界の回転角に関する角度情報を含む角度信号を出力する処理部と、を備える信号処理システムに用いられる信号処理方法であって、
前記処理部は、
それぞれが前記正弦波信号と前記余弦波信号との交点の値である第1閾値及び前記第1閾値よりも小さい第2閾値を有し、前記正弦波信号及び前記余弦波信号のうち前記第1閾値と前記第2閾値との間に値が含まれている信号を選択する信号選択部と、
逆三角関数を用いて前記正弦波信号と前記余弦波信号との少なくとも一方を前記角度信号に変換する角度演算部と、を有し、
前記角度演算部が、前記信号選択部が選択した前記正弦波信号を、前記角度信号としての第1角度信号に変換する第1期間と、
前記角度演算部が、前記信号選択部が選択した前記余弦波信号を、前記角度信号としての第2角度信号に変換する第2期間と、の少なくとも一方を含み、
前記信号選択部は、前記第1閾値よりも大きい第3閾値、及び前記第2閾値よりも小さい第4閾値を更に有し、
前記正弦波信号の値が前記第1閾値と前記第2閾値との間に含まれており、かつ前記余弦波信号の値が前記第1閾値と前記第3閾値との間、又は前記第2閾値と前記第4閾値との間に含まれている場合には前記余弦波信号に対する信号処理を実行し、前記正弦波信号の値が前記第1閾値と前記第2閾値との間に含まれており、かつ前記余弦波信号の値が前記第3閾値よりも大きい、又は前記第4閾値よりも小さい場合には前記余弦波信号に対する信号処理を停止する第1オフセット処理と、
前記余弦波信号の値が前記第1閾値と前記第2閾値との間に含まれており、かつ前記正弦波信号の値が前記第1閾値と前記第3閾値との間、又は前記第2閾値と前記第4閾値との間に含まれている場合には前記正弦波信号に対する信号処理を実行し、前記余弦波信号の値が前記第1閾値と前記第2閾値との間に含まれており、かつ前記正弦波信号の値が前記第3閾値よりも大きい、又は前記第4閾値よりも小さい場合には前記正弦波信号に対する信号処理を停止する第2オフセット処理と、の少なくとも一方を実行する、
信号処理方法。
【請求項2】
前記第1期間と前記第2期間とが交互に並んでいる、
請求項1に記載の信号処理方法。
【請求項3】
前記第1期間において前記余弦波信号に対する信号処理を停止する第1停止処理と、
前記第2期間において前記正弦波信号に対する信号処理を停止する第2停止処理と、の少なくとも一方を実行する、
請求項1又は2に記載の信号処理方法。
【請求項4】
検出磁界の回転角に応じた正弦波信号を出力する第1磁気検出部と、
前記検出磁界の回転角に応じた信号であって前記正弦波信号に対して位相がπ/2異なる余弦波信号を出力する第2磁気検出部と、
前記正弦波信号と前記余弦波信号との少なくとも一方に基づいて前記検出磁界の回転角に関する角度情報を含む角度信号を出力する処理部と、を備える信号処理システムに用いられる信号処理方法であって、
前記処理部は、
それぞれが前記正弦波信号と前記余弦波信号との交点における値である第1閾値及び前記第1閾値よりも小さい第2閾値を有し、前記正弦波信号及び前記余弦波信号のうち前記第1閾値と前記第2閾値との間に値が含まれている信号を選択する信号選択部を有し、
前記信号選択部は、前記第1閾値よりも大きい第3閾値、及び前記第2閾値よりも小さい第4閾値を更に有し、
前記正弦波信号の値が前記第1閾値と前記第2閾値との間に含まれており、かつ前記余弦波信号の値が前記第1閾値と前記第3閾値との間、又は前記第2閾値と前記第4閾値との間に含まれている場合には前記余弦波信号に対する信号処理を実行し、前記正弦波信号の値が前記第1閾値と前記第2閾値との間に含まれており、かつ前記余弦波信号の値が前記第3閾値よりも大きい、又は前記第4閾値よりも小さい場合には前記余弦波信号に対する信号処理を停止する第1オフセット処理と、
前記余弦波信号の値が前記第1閾値と前記第2閾値との間に含まれており、かつ前記正弦波信号の値が前記第1閾値と前記第3閾値との間、又は前記第2閾値と前記第4閾値との間に含まれている場合には前記正弦波信号に対する信号処理を実行し、前記余弦波信号の値が前記第1閾値と前記第2閾値との間に含まれており、かつ前記正弦波信号の値が前記第3閾値よりも大きい、又は前記第4閾値よりも小さい場合には前記正弦波信号に対する信号処理を停止する第2オフセット処理と、の少なくとも一方を実行する、
信号処理方法。
【請求項5】
前記第1磁気検出部は、
アナログ信号をデジタル信号に変換する第1AD変換器を有し、
前記第2磁気検出部は、
アナログ信号をデジタル信号に変換する第2AD変換器を有し、
N及びMを整数とした場合に、
前記第1オフセット処理では、前記第1AD変換器のサンプリング周期のN倍に相当する第1オフセット期間に前記余弦波信号に対する信号処理を実行し、
前記第2オフセット処理では、前記第2AD変換器のサンプリング周期のM倍に相当する第2オフセット期間に前記正弦波信号に対する信号処理を実行する、
請求項1~4のいずれか1項に記載の信号処理方法。
【請求項6】
前記第1オフセット期間及び前記第2オフセット期間の各々は、前記正弦波信号及び前記余弦波信号を、前記角度信号としての第3角度信号に変換する期間を含む、
請求項5に記載の信号処理方法。
【請求項7】
前記第1磁気検出部及び前記第2磁気検出部の各々は、磁気抵抗素子を含む、
請求項1~6のいずれか1項に記載の信号処理方法。
【請求項8】
前記正弦波信号及び前記余弦波信号の最大振幅をA1、前記第1閾値の値をB1、前記第2閾値の値をB2とした場合に、
【数1】
であり、
【数2】
である、
請求項1~7のいずれか1項に記載の信号処理方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の信号処理方法を1以上のプロセッサに実行させるためのプログラム。
【請求項10】
検出磁界の回転角に応じた正弦波信号を出力する第1磁気検出部と、
前記検出磁界の回転角に応じた信号であって前記正弦波信号に対して位相がπ/2異なる余弦波信号を出力する第2磁気検出部と、
前記正弦波信号と前記余弦波信号との少なくとも一方に基づいて前記検出磁界の回転角に関する角度情報を含む角度信号を出力する処理部と、を備える信号処理システムであって、
前記処理部は、
それぞれが前記正弦波信号と前記余弦波信号との交点の値である第1閾値及び前記第1閾値よりも小さい第2閾値を有し、前記正弦波信号及び前記余弦波信号のうち前記第1閾値と前記第2閾値との間に値が含まれている信号を選択する信号選択部と、
逆三角関数を用いて前記正弦波信号と前記余弦波信号との少なくとも一方を前記角度信号に変換する角度演算部と、を有し、
前記角度演算部が、前記信号選択部が選択した前記正弦波信号を、前記角度信号としての第1角度信号に変換する第1期間と、
前記角度演算部が、前記信号選択部が選択した前記余弦波信号を、前記角度信号としての第2角度信号に変換する第2期間と、の少なくとも一方を含み、
前記信号選択部は、前記第1閾値よりも大きい第3閾値、及び前記第2閾値よりも小さい第4閾値を更に有し、
前記角度演算部は、
前記正弦波信号の値が前記第1閾値と前記第2閾値との間に含まれており、かつ前記余弦波信号の値が前記第1閾値と前記第3閾値との間、又は前記第2閾値と前記第4閾値との間に含まれている場合には前記余弦波信号に対する信号処理を実行し、前記正弦波信号の値が前記第1閾値と前記第2閾値との間に含まれており、かつ前記余弦波信号の値が前記第3閾値よりも大きい、又は前記第4閾値よりも小さい場合には前記余弦波信号に対する信号処理を停止する第1オフセット処理と、
前記余弦波信号の値が前記第1閾値と前記第2閾値との間に含まれており、かつ前記正弦波信号の値が前記第1閾値と前記第3閾値との間、又は前記第2閾値と前記第4閾値との間に含まれている場合には前記正弦波信号に対する信号処理を実行し、前記余弦波信号の値が前記第1閾値と前記第2閾値との間に含まれており、かつ前記正弦波信号の値が前記第3閾値よりも大きい、又は前記第4閾値よりも小さい場合には前記正弦波信号に対する信号処理を停止する第2オフセット処理と、の少なくとも一方を実行する、
信号処理システム。
【請求項11】
検出磁界の回転角に応じた正弦波信号を出力する第1磁気検出部と、
前記検出磁界の回転角に応じた信号であって前記正弦波信号に対して位相がπ/2異なる余弦波信号を出力する第2磁気検出部と、
前記正弦波信号と前記余弦波信号との少なくとも一方に基づいて前記検出磁界の回転角に関する角度情報を含む角度信号を出力する処理部と、を備える信号処理システムであって、
前記処理部は、
それぞれが前記正弦波信号と前記余弦波信号との交点の値である第1閾値及び前記第1閾値よりも小さい第2閾値を有し、前記正弦波信号及び前記余弦波信号のうち前記第1閾値と前記第2閾値との間に値が含まれている信号を選択する信号選択部を有し、
前記信号選択部は、前記第1閾値よりも大きい第3閾値、及び前記第2閾値よりも小さい第4閾値を更に有し、
前記処理部は、
前記正弦波信号の値が前記第1閾値と前記第2閾値との間に含まれており、かつ前記余弦波信号の値が前記第1閾値と前記第3閾値との間、又は前記第2閾値と前記第4閾値との間に含まれている場合には前記余弦波信号に対する信号処理を実行し、前記正弦波信号の値が前記第1閾値と前記第2閾値との間に含まれており、かつ前記余弦波信号の値が前記第3閾値よりも大きい、又は前記第4閾値よりも小さい場合には前記余弦波信号に対する信号処理を停止する第1オフセット処理と、
前記余弦波信号の値が前記第1閾値と前記第2閾値との間に含まれており、かつ前記正弦波信号の値が前記第1閾値と前記第3閾値との間、又は前記第2閾値と前記第4閾値との間に含まれている場合には前記正弦波信号に対する信号処理を実行し、前記余弦波信号の値が前記第1閾値と前記第2閾値との間に含まれており、かつ前記正弦波信号の値が前記第3閾値よりも大きい、又は前記第4閾値よりも小さい場合には前記正弦波信号に対する信号処理を停止する第2オフセット処理と、の少なくとも一方を実行する、
信号処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に信号処理方法、プログラム及び信号処理システムに関する。より詳細には、本開示は、信号処理システムに用いられる信号処理方法、プログラム及び信号処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車の舵角検出等に用いられる信号処理システム(磁気センサ)が記載されている。特許文献1に記載の信号処理システムは、磁気抵抗素子と、磁気抵抗素子と電気的に接続される検出回路と、を備える。
【0003】
検出回路は、+sin信号、-sin信号、+cos信号、-cos信号が入力されるとともに、+sin信号、-sin信号、+cos信号、-cos信号に対して増幅、AD変換等の各種の信号処理を行う。また、検出回路は、角度検出回路を含む。角度検出回路は、デジタルのsin信号及びcos信号に対してarctan演算を行うことで回転角を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-198515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のような信号処理システムでは、消費電力を低減することが望まれている。
【0006】
本開示の目的は、信号処理システムの消費電力を低減することができる信号処理方法、プログラム及び信号処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る信号処理方法は、第1磁気検出部と、第2磁気検出部と、処理部と、を備える信号処理システムに用いられる信号処理方法である。前記第1磁気検出部は、検出磁界の回転角に応じた正弦波信号を出力する。前記第2磁気検出部は、前記検出磁界の回転角に応じた信号であって前記正弦波信号に対して位相がπ/2異なる余弦波信号を出力する。前記処理部は、前記正弦波信号と前記余弦波信号との少なくとも一方に基づいて前記検出磁界の回転角に関する角度情報を含む角度信号を出力する。前記処理部は、信号選択部と、角度演算部と、を有する。前記信号選択部は、それぞれが前記正弦波信号と前記余弦波信号との交点の値である第1閾値及び前記第1閾値よりも小さい第2閾値を有する。前記信号選択部は、前記正弦波信号及び前記余弦波信号のうち前記第1閾値と前記第2閾値との間に値が含まれている信号を選択する。前記角度演算部は、逆三角関数を用いて前記正弦波信号と前記余弦波信号との少なくとも一方を前記角度信号に変換する。前記信号処理方法は、第1期間と、第2期間と、の少なくとも一方を含む。前記第1期間では、前記角度演算部が、前記信号選択部が選択した前記正弦波信号を、前記角度信号としての第1角度信号に変換する。前記第2期間では、前記角度演算部が、前記信号選択部が選択した前記余弦波信号を、前記角度信号としての第2角度信号に変換する。前記信号選択部は、前記第1閾値よりも大きい第3閾値、及び前記第2閾値よりも小さい第4閾値を更に有する。前記信号処理方法は、前記正弦波信号の値が前記第1閾値と前記第2閾値との間に含まれており、かつ前記余弦波信号の値が前記第1閾値と前記第3閾値との間、又は前記第2閾値と前記第4閾値との間に含まれている場合には前記余弦波信号に対する信号処理を実行し、前記正弦波信号の値が前記第1閾値と前記第2閾値との間に含まれており、かつ前記余弦波信号の値が前記第3閾値よりも大きい、又は前記第4閾値よりも小さい場合には前記余弦波信号に対する信号処理を停止する第1オフセット処理と、前記余弦波信号の値が前記第1閾値と前記第2閾値との間に含まれており、かつ前記正弦波信号の値が前記第1閾値と前記第3閾値との間、又は前記第2閾値と前記第4閾値との間に含まれている場合には前記正弦波信号に対する信号処理を実行し、前記余弦波信号の値が前記第1閾値と前記第2閾値との間に含まれており、かつ前記正弦波信号の値が前記第3閾値よりも大きい、又は前記第4閾値よりも小さい場合には前記正弦波信号に対する信号処理を停止する第2オフセット処理と、の少なくとも一方を実行する。
【0008】
本開示の一態様に係る信号処理方法は、第1磁気検出部と、第2磁気検出部と、処理部と、を備える信号処理システムに用いられる信号処理方法である。前記第1磁気検出部は
、検出磁界の回転角に応じた正弦波信号を出力する。前記第2磁気検出部は、前記検出磁界の回転角に応じた信号であって前記正弦波信号に対して位相がπ/2異なる余弦波信号を出力する。前記処理部は、前記正弦波信号と前記余弦波信号との少なくとも一方に基づいて前記検出磁界の回転角に関する角度情報を含む角度信号を出力する。前記処理部は、信号選択部を有する。前記信号選択部は、それぞれが前記正弦波信号と前記余弦波信号との交点における値である第1閾値及び前記第1閾値よりも小さい第2閾値を有する。前記信号選択部は、前記正弦波信号及び前記余弦波信号のうち前記第1閾値と前記第2閾値との間に値が含まれている信号を選択する。前記信号選択部は、前記第1閾値よりも大きい第3閾値、及び前記第2閾値よりも小さい第4閾値を更に有する。前記信号処理方法は、第1オフセット処理と、第2オフセット処理と、の少なくとも一方を実行する。前記第1オフセット処理では、前記正弦波信号の値が前記第1閾値と前記第2閾値との間に含まれており、かつ前記余弦波信号の値が前記第1閾値と前記第3閾値との間、又は前記第2閾値と前記第4閾値との間に含まれている場合には前記余弦波信号に対する信号処理を実行し、前記正弦波信号の値が前記第1閾値と前記第2閾値との間に含まれており、かつ前記余弦波信号の値が前記第3閾値よりも大きい、又は前記第4閾値よりも小さい場合には前記余弦波信号に対する信号処理を停止する。前記第2オフセット処理では、前記余弦波信号の値が前記第1閾値と前記第2閾値との間に含まれており、かつ前記正弦波信号の値が前記第1閾値と前記第3閾値との間、又は前記第2閾値と前記第4閾値との間に含まれている場合には前記正弦波信号に対する信号処理を実行し、前記余弦波信号の値が前記第1閾値と前記第2閾値との間に含まれており、かつ前記正弦波信号の値が前記第3閾値よりも大きい、又は前記第4閾値よりも小さい場合には前記正弦波信号に対する信号処理を停止する。
【0009】
本開示の一態様に係るプログラムは、前記信号処理方法を1以上のプロセッサに実行させるためのプログラムである。
【0010】
本開示の一態様に係る信号処理システムは、第1磁気検出部と、第2磁気検出部と、処理部と、を備える信号処理システムである。前記第1磁気検出部は、検出磁界の回転角に応じた正弦波信号を出力する。前記第2磁気検出部は、前記検出磁界の回転角に応じた信号であって前記正弦波信号に対して位相がπ/2異なる余弦波信号を出力する。前記処理部は、前記正弦波信号と前記余弦波信号との少なくとも一方に基づいて前記検出磁界の回転角に関する角度情報を含む角度信号を出力する。前記処理部は、信号選択部と、角度演算部と、を有する。前記信号選択部は、それぞれが前記正弦波信号と前記余弦波信号との交点の値である第1閾値及び前記第1閾値よりも小さい第2閾値を有する。前記信号選択部は、前記正弦波信号及び前記余弦波信号のうち前記第1閾値と前記第2閾値との間に値が含まれている信号を選択する。前記角度演算部は、逆三角関数を用いて前記正弦波信号と前記余弦波信号との少なくとも一方を前記角度信号に変換する。前記信号処理システムは、第1期間と、第2期間と、の少なくとも一方を含む。前記第1期間では、前記角度演算部が、前記信号選択部が選択した前記正弦波信号を、前記角度信号としての第1角度信号に変換する。前記第2期間では、前記角度演算部が、前記信号選択部が選択した前記余弦波信号を、前記角度信号としての第2角度信号に変換する。前記信号選択部は、前記第1閾値よりも大きい第3閾値、及び前記第2閾値よりも小さい第4閾値を更に有する。前記角度演算部は、第1オフセット処理と、第2オフセット処理と、の少なくとも一方を実行する。前記第1オフセット処理では、前記正弦波信号の値が前記第1閾値と前記第2閾値との間に含まれており、かつ前記余弦波信号の値が前記第1閾値と前記第3閾値との間、又は前記第2閾値と前記第4閾値との間に含まれている場合には前記余弦波信号に対する信号処理を実行し、前記正弦波信号の値が前記第1閾値と前記第2閾値との間に含まれており、かつ前記余弦波信号の値が前記第3閾値よりも大きい、又は前記第4閾値よりも小さい場合には前記余弦波信号に対する信号処理を停止する。前記第2オフセット処理では、前記余弦波信号の値が前記第1閾値と前記第2閾値との間に含まれており、かつ前記正弦波信号の値が前記第1閾値と前記第3閾値との間、又は前記第2閾値と前記第4閾値との間に含まれている場合には前記正弦波信号に対する信号処理を実行し、前記余弦波信号の値が前記第1閾値と前記第2閾値との間に含まれており、かつ前記正弦波信号の値が前記第3閾値よりも大きい、又は前記第4閾値よりも小さい場合には前記正弦波信号に対する信号処理を停止する。
【0011】
本開示の一態様に係る信号処理システムは、第1磁気検出部と、第2磁気検出部と、処理部と、を備える信号処理システムである。前記第1磁気検出部は、検出磁界の回転角に応じた正弦波信号を出力する。前記第2磁気検出部は、前記検出磁界の回転角に応じた信号であって前記正弦波信号に対して位相がπ/2異なる余弦波信号を出力する。前記処理部は、前記正弦波信号と前記余弦波信号との少なくとも一方に基づいて前記検出磁界の回転角に関する角度情報を含む角度信号を出力する。前記処理部は、信号選択部を有する。前記信号選択部は、それぞれが前記正弦波信号と前記余弦波信号との交点の値である第1閾値及び前記第1閾値よりも小さい第2閾値を有する。前記信号選択部は、前記正弦波信号及び前記余弦波信号のうち前記第1閾値と前記第2閾値との間に値が含まれている信号を選択する。前記信号選択部は、前記第1閾値よりも大きい第3閾値、及び前記第2閾値よりも小さい第4閾値を更に有する。前記処理部は、第1オフセット処理と、第2オフセット処理と、の少なくとも一方を実行する。前記第1オフセット処理では、前記正弦波信号の値が前記第1閾値と前記第2閾値との間に含まれており、かつ前記余弦波信号の値が前記第1閾値と前記第3閾値との間、又は前記第2閾値と前記第4閾値との間に含まれている場合には前記余弦波信号に対する信号処理を実行し、前記正弦波信号の値が前記第1閾値と前記第2閾値との間に含まれており、かつ前記余弦波信号の値が前記第3閾値よりも大きい、又は前記第4閾値よりも小さい場合には前記余弦波信号に対する信号処理を停止する。前記第1オフセット処理では、前記余弦波信号の値が前記第1閾値と前記第2閾値との間に含まれており、かつ前記正弦波信号の値が前記第1閾値と前記第3閾値との間、又は前記第2閾値と前記第4閾値との間に含まれている場合には前記正弦波信号に対する信号処理を実行し、前記余弦波信号の値が前記第1閾値と前記第2閾値との間に含まれており、かつ前記正弦波信号の値が前記第3閾値よりも大きい、又は前記第4閾値よりも小さい場合には前記正弦波信号に対する信号処理を停止する。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、信号処理システムの消費電力を低減することができる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態に係る信号処理システムの構成を示すブロック図である。
図2図2は、同上の信号処理システムにおける検出角度と出力電圧との関係を示す図である。
図3図3は、同上の信号処理システムの動作を説明するフローチャートである。
図4図4は、実施形態の変形例1に係る信号処理システムにおける検出角度と出力電圧との関係を示す図である。
図5図5は、同上の信号処理システムの動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施形態)
(1)概要
まず、実施形態に係る信号処理方法及び信号処理システム100の概要について、図1及び図2を参照して説明する。
【0015】
実施形態に係る信号処理方法は、例えば、信号処理システム100に用いられる。信号処理システム100は、例えば、磁気センサである。信号処理システム100は、例えば、車のステアリングシャフト等の回転体の回転角を検出するために用いられる。具体的には、信号処理システム100では、回転体にギア等を介して連結されている磁石からの磁界の変化により、後述の第1磁気抵抗体111~114及び第2磁気抵抗体211~214の抵抗値が変化する。そして、信号処理システム100では、第1磁気抵抗体111~114及び第2磁気抵抗体211~214の抵抗値の変化を検出することにより、回転体の回転角を検出することができる。
【0016】
実施形態に係る信号処理システム100は、図1に示すように、第1磁気検出部1と、第2磁気検出部2と、処理部3と、を備える。第1磁気検出部1は、検出磁界の回転角に応じた正弦波信号S1(図2参照)を出力する。第2磁気検出部2は、検出磁界の回転角に応じた余弦波信号S2(図2参照)を出力する。余弦波信号S2は、正弦波信号S1に対して位相がπ/2異なる信号である。本開示でいう「検出磁界」とは、第1磁気抵抗体111~114及び第2磁気抵抗体211~214の抵抗値に基づいて検出される磁石からの磁界をいう。したがって、この検出磁界の回転角を検出することにより、回転体の回転角を間接的に検出することができる。処理部3は、正弦波信号S1と余弦波信号S2との少なくとも一方に基づいて検出磁界の回転角に関する角度情報を含む角度信号V5を出力する。角度情報は、例えば、検出磁界の回転角であるが、角度情報は回転角に限らず、回転角に関する情報であれば他の情報であってもよい。
【0017】
処理部3は、信号選択部31と、角度演算部32と、を有する。信号選択部31は、第1閾値th1及び第2閾値th2(図2参照)を有する。第1閾値th1及び第2閾値th2の各々は、正弦波信号S1と余弦波信号S2との交点PO1,PO2の値である。第2閾値th2は、第1閾値th1よりも小さい値である。例えば、第1閾値th1は正値であり、第2閾値th2は負値である。信号選択部31は、正弦波信号S1及び余弦波信号S2のうち、第1閾値th1と第2閾値th2との間に値が含まれている信号を選択する。角度演算部32は、逆三角関数を用いて正弦波信号S1と余弦波信号S2との少なくとも一方を角度信号V5に変換する。
【0018】
信号処理システム100は、第1期間PE1と、第2期間PE2と、の少なくとも一方を含む(図2参照)。第1期間PE1では、角度演算部32が、信号選択部31が選択した正弦波信号S1を、角度信号V5としての第1角度信号V51に変換する。第2期間PE2では、角度演算部32が、信号選択部31が選択した余弦波信号S2を、角度信号V5としての第2角度信号V52に変換する。第1角度信号V51は、正弦波信号S1に対してarcsin処理を実行することで算出される角度情報を含む信号である。第2角度信号V52は、余弦波信号S2に対してarccos処理を実行することで算出される角度情報を含む信号である。
【0019】
また、実施形態に係る信号処理システム100は、第1停止処理と、第2停止処理と、の少なくとも一方を実行する。第1停止処理では、正弦波信号S1の値が第1閾値th1と第2閾値th2との間に含まれている第1期間PE1において、余弦波信号S2に対する信号処理を停止する。第2停止処理では、余弦波信号S2の値が第1閾値th1と第2閾値th2との間に含まれている第2期間PE2において、正弦波信号S1に対する信号処理を停止する。本開示でいう「信号処理」は、角度演算部32の変換処理と、後述の第1増幅器12及び第2増幅器22の増幅処理と、後述の第1AD変換器13及び第2AD変換器23のAD変換処理と、後述の第1磁気抵抗素子11及び第2磁気抵抗素子21の検出処理と、を含む。
【0020】
さらに、実施形態に係る信号処理方法は、上述の信号処理システム100に用いられる。
【0021】
実施形態に係る信号処理方法及び信号処理システム100では、第1期間PE1においては正弦波信号S1を変換した第1角度信号V51を出力し、第2期間PE2においては余弦波信号S2を変換した第2角度信号V52を出力している。そのため、第1期間PE1では余弦波信号S2に対する信号処理を行わなくてもよく、さらに第2期間PE2では正弦波信号S1に対する信号処理を行わなくてもよいので、その分消費電力を低減することができる。
【0022】
(2)構成
次に、実施形態に係る信号処理システム(磁気センサ)100の構成について、図1及び図2を参照して説明する。
【0023】
実施形態に係る信号処理システム100は、図1に示すように、第1磁気検出部1と、第2磁気検出部2と、処理部3と、を備える。
【0024】
(2.1)第1磁気検出部
第1磁気検出部1は、第1磁気抵抗素子11と、第1増幅器12と、第1AD変換器13と、を有する。第1磁気抵抗素子11は、例えば、AMR(Anisotropic Magneto Resistance)である。
【0025】
第1磁気抵抗素子11は、第1ブリッジ回路10を含む。第1ブリッジ回路10は、例えば、複数(図1では4個)の第1磁気抵抗体111~114からなるフルブリッジ回路である。具体的には、第1磁気抵抗体111,112の第1端同士を接続することにより第1直列回路を形成し、第1磁気抵抗体113,114の第1端同士を接続することにより第2直列回路を形成している。そして、第1直列回路及び第2直列回路は、基準電圧VcとグランドGNDとの間に電気的に接続されている。言い換えると、第1磁気抵抗体111,113の第2端が基準電圧Vcに電気的に接続され、第1磁気抵抗体112,114の第2端がグランドGNDに電気的に接続されている。
【0026】
ここで、第1磁気抵抗体111~114の各々は、例えば、回転体にギア等を介して連結されている磁石からの磁界の変化に応じて抵抗値が変化する。そして、第1ブリッジ回路10では、第1磁気抵抗体111,112の接続点と、第1磁気抵抗体113,114の接続点とから、位相が180度異なる2つの正弦波信号が出力される。つまり、第1ブリッジ回路10では、第1磁気抵抗体111,112の接続点から+sin信号が出力され、第1磁気抵抗体113,114の接続点から-sin信号が出力される。
【0027】
第1増幅器12は、例えば、差動増幅器である。第1増幅器12は、第1入力端子、第2入力端子及び出力端子を有する。第1入力端子は、プラス側の入力端子であり、第1ブリッジ回路10の第1磁気抵抗体111,112の接続点に電気的に接続されている。第2入力端子は、マイナス側の入力端子であり、第1ブリッジ回路10の第1磁気抵抗体113,114の接続点に電気的に接続されている。第1増幅器12は、第1入力端子に入力された+sin信号と第2入力端子に入力された-sin信号とを差動増幅して、2倍の振幅からなるsin信号V1を生成する。第1増幅器12は、生成したsin信号V1を出力端子から出力する。
【0028】
第1AD変換器13は、第1増幅器12からのアナログ信号(sin信号)V1を所定のサンプリング周波数でアナログ/デジタル変換し、デジタル信号V3(以下、「第1出力電圧V3」ともいう)として出力する。つまり、本実施形態では、第1AD変換器13から出力されるデジタル信号V3が正弦波信号S1である。
【0029】
(2.2)第2磁気検出部
第2磁気検出部2は、第2磁気抵抗素子21と、第2増幅器22と、第2AD変換器23と、を有する。第2磁気抵抗素子21は、例えば、AMRである。
【0030】
第2磁気抵抗素子21は、第2ブリッジ回路20を含む。第2ブリッジ回路20は、例えば、複数(図1では4個)の第2磁気抵抗体211~214からなるフルブリッジ回路である。具体的には、第2磁気抵抗体211,212の第1端同士を接続することにより第1直列回路を形成し、第2磁気抵抗体213,214の第1端同士を接続することにより第2直列回路を形成している。そして、第1直列回路及び第2直列回路は、基準電圧VcとグランドGNDとの間に電気的に接続されている。言い換えると、第2磁気抵抗体211,213の第2端が基準電圧Vcに電気的に接続され、第2磁気抵抗体212,214の第2端がグランドGNDに電気的に接続されている。
【0031】
第2ブリッジ回路20は、第1ブリッジ回路10に対して45度回転させて配置されている。したがって、第2ブリッジ回路20では、第2磁気抵抗体211,212の接続点と、第2磁気抵抗体213,214の接続点とから、位相が180度異なる2つの余弦波信号が出力される。つまり、第2ブリッジ回路20では、第2磁気抵抗体211,212の接続点から+cos信号が出力され、第2磁気抵抗体213,214の接続点から-cos信号が出力される。
【0032】
第2増幅器22は、例えば、差動増幅器である。第2増幅器22は、第1入力端子、第2入力端子及び出力端子を有する。第1入力端子は、プラス側の入力端子であり、第2ブリッジ回路20の第2磁気抵抗体211,212の接続点に電気的に接続されている。第2入力端子は、マイナス側の入力端子であり、第2ブリッジ回路20の第2磁気抵抗体213,214の接続点に電気的に接続されている。第2増幅器22は、第1入力端子に入力された+cos信号と第2入力端子に入力された-cos信号とを差動増幅して、2倍の振幅からなるcos信号V2を生成する。第2増幅器22は、生成したcos信号V2を出力端子から出力する。
【0033】
第2AD変換器23は、第2増幅器22からのアナログ信号(cos信号)V2を所定のサンプリング周波数でアナログ/デジタル変換し、デジタル信号V4(以下、「第2出力電圧V4」ともいう)として出力する。つまり、本実施形態では、第2AD変換器23から出力されるデジタル信号V4が余弦波信号S2である。
【0034】
(2.3)処理部
処理部3は、図1に示すように、信号選択部31と、角度演算部32と、を有する。
【0035】
信号選択部31は、第1閾値th1及び第2閾値th2を有する。第1閾値th1及び第2閾値th2の各々は、図2に示すように、正弦波信号S1と余弦波信号S2との交点PO1,PO2の値である。第1閾値th1及び第2閾値th2の各々は、例えば、電圧値である。第2閾値th2は、第1閾値th1よりも小さい値である。
【0036】
信号選択部31は、第1磁気検出部1からの正弦波信号S1及び第2磁気検出部2からの余弦波信号S2のうち、第1閾値th1と第2閾値th2との間に値(電圧値)が含まれている信号を選択する。例えば、図2において、検出角度が67.5度から112.5度の範囲である第1期間PE1では、正弦波信号S1の値(電圧値)が第1閾値th1と第2閾値th2との間に含まれており、信号選択部31は正弦波信号S1を選択する。つまり、第1期間PE1は、正弦波信号S1の値が第1閾値th1と第2閾値th2との間に含まれる期間である。
【0037】
また、検出角度が22.5度から67.5度の範囲である第2期間PE2では、余弦波信号S2の値(電圧値)が第1閾値th1と第2閾値th2との間に含まれており、信号選択部31は余弦波信号S2を選択する。つまり、第2期間PE2は、余弦波信号S2の値が第1閾値th1と第2閾値th2との間に含まれる期間である。
【0038】
ここで、正弦波信号S1及び余弦波信号S2の最大振幅をA1、第1閾値th1の値をB1、第2閾値th2の値をB2とした場合、B1及びB2は、以下の(1)式及び(2)式にて算出される。
【0039】
【数1】
【0040】
【数2】
【0041】
例えば、図2に示すように、A1=1の場合には、B1≒0.71、B2≒-0.71となる。
【0042】
角度演算部32は、逆三角関数を用いて正弦波信号S1と余弦波信号S2との少なくとも一方を角度信号V5に変換する。具体的には、第1期間PE1では、第1閾値th1と第2閾値th2との間に、正弦波信号S1の値は含まれているが、余弦波信号S2の値は含まれていないため、角度演算部32は、正弦波信号S1を、角度信号V5としての第1角度信号V51に変換する。言い換えると、角度演算部32は、正弦波信号S1に対してarcsin処理を行うことにより、角度情報(検出磁界の回転角)を算出する。そして、角度演算部32は、第1期間PE1においては第1角度信号V51を出力する。
【0043】
また、第2期間PE2では、第1閾値th1と第2閾値th2との間に、余弦波信号S2の値は含まれているが、正弦波信号S1の値は含まれていないため、角度演算部32は、余弦波信号S2を、角度信号V5としての第2角度信号V52に変換する。言い換えると、角度演算部32は、余弦波信号S2に対してarccos処理を行うことにより、角度情報(検出磁界の回転角)を算出する。そして、角度演算部32は、第2期間PE2においては第2角度信号V52を出力する。
【0044】
ここで、第1磁気検出部1から出力される正弦波信号S1、及び第2磁気検出部2から出力される余弦波信号S2から回転角θを算出する場合、以下の(3)式にて算出される。
【0045】
【数3】
【0046】
第1期間PE1では、図2に示すように、余弦波信号S2の値がピーク値(最大振幅A1)近傍であるため、回転角θの変化に対する余弦波信号S2の変化が小さくなる。すなわち、第1期間PE1では、(3)式における余弦波信号S2の寄与度が低い。そのため、第1期間PE1では、以下の(4)式にて回転角θを算出することができる。
【0047】
【数4】
【0048】
また、第2期間PE2では、図2に示すように、正弦波信号S1の値がピーク値近傍であるため、回転角θの変化に対する正弦波信号S1の変化が小さくなる。すなわち、第2期間PE2では、(3)式における正弦波信号S1の寄与度が低い。そのため、第2期間PE2では、以下の(5)式にて回転角θを算出することができる。
【0049】
【数5】
【0050】
したがって、角度演算部32は、第1期間PE1においては正弦波信号S1に対してarcsin処理を実行し、第2期間PE2においてはarccos処理を実行することで、角度情報(検出磁界の回転角)を算出する。
【0051】
ところで、第1期間PE1では、余弦波信号S2が第1閾値th1と第2閾値th2との間に含まれておらず、角度演算部32は、余弦波信号S2に対する信号処理(変換処理)を実行しない。また、第2期間PE2では、正弦波信号S1が第1閾値th1と第2閾値th2との間に含まれておらず、角度演算部32は、正弦波信号S1に対する信号処理(変換処理)を実行しない。すなわち、信号処理方法では、第1期間PE1において余弦波信号S2に対する信号処理を停止する第1停止処理と、第2期間PE2において正弦波信号S1に対する信号処理を停止する第2停止処理と、の少なくとも一方を実行する。本実施形態では、第1停止処理と第2停止処理との両方を実行する。
【0052】
処理部3は、例えば、プロセッサ及びメモリを有するマイクロコンピュータで構成されている。つまり、処理部3は、プロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムで実現されている。そして、プロセッサが適宜のプログラムを実行することにより、コンピュータシステムが処理部3(信号選択部31及び角度演算部32を含む)として機能する。プログラムは、メモリに予め記録されていてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通じて、又はメモリカード等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0053】
(3)動作
次に、実施形態に係る信号処理システム100の動作について、図2及び図3を参照して説明する。図2では、横軸が回転体(磁石からの磁界)の検出角度であり、縦軸が第1磁気検出部1及び第2磁気検出部2の出力値(出力電圧値)である。また、図2では、検出角度が0度から22.5度の範囲、67.5度から112.5度の範囲、157.5度から202.5度の範囲、247.5度から292.5度の範囲、337.5度から360度の範囲が第1期間PE1である。また、図2では、検出角度が22.5度から67.5度の範囲、112.5度から157.5度の範囲、202.5度から247.5度の範囲、292.5度から337.5度の範囲が第2期間PE2である。本実施形態では、図2に示すように、第1期間PE1と第2期間PE2とが交互に並んでいる。
【0054】
ここで、実施形態に係る信号処理システム100では、第1磁気抵抗素子11及び第2磁気抵抗素子21の各々がAMRであるため、正弦波信号S1及び余弦波信号S2が2π変化するのに対して、回転角θは180度変化する。
【0055】
処理部3の信号選択部31は、正弦波信号S1の値a1が第1閾値th1と第2閾値th2との間にあるか否かを判定する(ステップST101)。言い換えると、信号選択部31は、値a1が第2閾値th2以上で、かつ第1閾値th1以下であるか否かを判定する。信号選択部31は、値a1が第1閾値th1と第2閾値th2との間にある場合には(ステップST101:Yes)、正弦波信号S1を選択する(ステップST102)。
【0056】
角度演算部32は、信号選択部31が選択しなかった余弦波信号S2に対するarccos処理を停止し(ステップST103)、信号選択部31が選択した正弦波信号S1に対してarcsin処理を実行する(ステップST104)。つまり、角度演算部32は、ステップST103において第1停止処理を実行する。そして、角度演算部32が正弦波信号S1に対してarcsin処理を実行することにより、回転体(磁石からの磁界)の回転角が算出される(ステップST105)。
【0057】
信号選択部31は、正弦波信号S1の値a1が第1閾値th1と第2閾値th2との間にない場合には(ステップST101:No)、余弦波信号S2を選択する(ステップST106)。
【0058】
角度演算部32は、信号選択部31が選択しなかった正弦波信号S1に対するarcsin処理を停止し(ステップST107)、信号選択部31が選択した余弦波信号S2に対してarccos処理を実行する(ステップST108)。つまり、角度演算部32は、ステップST107において第2停止処理を実行する。そして、角度演算部32が余弦波信号S2に対してarccos処理を実行することにより、回転体(磁石からの磁界)の回転角が算出される(ステップST105)。
【0059】
(4)効果
実施形態に係る信号処理方法及び信号処理システム100では、第1期間PE1において第1停止処理を実行し、第2期間PE2において第2停止処理を実行している。そのため、第1期間PE1において第1停止処理を実行せず、かつ第2期間PE2において第2停止処理を実行しない場合に比べて、信号処理システム100の消費電力を低減することができる。
【0060】
(5)変形例
上述の実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上述の実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、上述の実施形態に係る信号処理システム100と同様の機能は、信号処理方法、コンピュータプログラム、又はコンピュータプログラムを記録した非一時的記録媒体等で具現化されてもよい。一態様に係るプログラムは、上述の信号処理方法を1以上のプロセッサに実行させるためのプログラムである。
【0061】
以下、上述の実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0062】
(5.1)変形例1
上述の実施形態では、第1期間PE1において余弦波信号S2に対する信号処理を停止(第1停止処理を実行)し、第2期間PE2において正弦波信号S1に対する信号処理を停止(第2停止処理を実行)している。これに対して、例えば、図4に示すように、第1オフセット期間PE11,PE12において、正弦波信号S1だけでなく余弦波信号S2に対しても信号処理を実行し、第2オフセット期間PE21,PE22において、余弦波信号S2だけでなく正弦波信号S1に対しても信号処理を実行してもよい。以下、変形例1に係る信号処理システム100について、図4及び図5を参照して説明する。なお、変形例1に係る信号処理システム100の構成については、上述の実施形態に係る信号処理システム100の構成と同様であり、同一の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0063】
(5.1.1)構成
変形例1に係る信号処理システム100は、第1磁気検出部1と、第2磁気検出部2と、処理部3と、を備える。
【0064】
第1磁気検出部1は、第1磁気抵抗素子11と、第1増幅器12と、第1AD変換器13と、を有する。第1磁気抵抗素子11は、例えば、AMRである。第1磁気抵抗素子11は、第1ブリッジ回路10を含む。
【0065】
第2磁気検出部2は、第2磁気抵抗素子21と、第2増幅器22と、第2AD変換器23と、を有する。第2磁気抵抗素子21は、例えば、AMRである。第2磁気抵抗素子21は、第2ブリッジ回路20を含む。
【0066】
処理部3は、信号選択部31と、角度演算部32と、を有する。
【0067】
信号選択部31は、図4に示すように、第3閾値th3及び第4閾値th4を更に有する。第3閾値th3は、第1閾値th1よりも大きい値である。第4閾値th4は、第2閾値th2よりも小さい値である。
【0068】
信号選択部31は、第1オフセット期間PE11,PE12においては、余弦波信号S2の値(出力電圧値)が、第1閾値th1と第3閾値th3との間、又は第2閾値th2と第4閾値th4との間に含まれており、正弦波信号S1及び余弦波信号S2を選択する。信号選択部31は、2つの第1オフセット期間PE11,PE12の間の期間においては、余弦波信号S2の値が、第3閾値th3よりも大きい、又は第4閾値th4よりも小さいため、正弦波信号S1のみを選択する。ここで、第1オフセット期間PE11,PE12は、第1期間PE1のうち、余弦波信号S2の値が、第1閾値th1と第3閾値th3との間、又は第2閾値th2と第4閾値th4との間に含まれている期間である。
【0069】
信号選択部31は、第2オフセット期間PE21,PE22においては、正弦波信号S1の値(出力電圧値)が、第1閾値th1と第3閾値th3との間、又は第2閾値th2と第4閾値th4との間に含まれており、正弦波信号S1及び余弦波信号S2を選択する。信号選択部31は、2つの第2オフセット期間PE21,PE22の間の期間においては、正弦波信号S1の値が、第3閾値th3よりも大きい、又は第4閾値th4よりも小さいため、余弦波信号S2のみを選択する。ここで、第2オフセット期間PE21,PE22は、第2期間PE2のうち、正弦波信号S1の値が、第1閾値th1と第3閾値th3との間、又は第2閾値th2と第4閾値th4との間に含まれている期間である。
【0070】
角度演算部32は、第1オフセット期間PE11,PE12では、信号選択部31が選択した正弦波信号S1及び余弦波信号S2に対して信号処理を実行する。言い換えると、角度演算部32は、正弦波信号S1の値が第1閾値th1と第2閾値th2との間に含まれており、かつ余弦波信号S2の値が第1閾値th1と第3閾値th3との間、又は第2閾値th2と第4閾値th4との間に含まれている場合には、余弦波信号S2に対する信号処理を実行する。具体的には、角度演算部32は、正弦波信号S1及び余弦波信号S2に対してarctan処理を実行する。言い換えると、角度演算部32は、信号選択部31が選択した正弦波信号S1及び余弦波信号S2を第3角度信号V53に変更する。第3角度信号V53は、正弦波信号S1及び余弦波信号S2に対してarctan処理を実行することで算出される角度情報を含む信号である。
【0071】
角度演算部32は、2つの第1オフセット期間PE11,PE12の間の期間では、信号選択部31が選択した正弦波信号S1に対して信号処理を実行し、信号選択部31が選択しなかった余弦波信号S2に対して信号処理を実行しない。言い換えると、角度演算部32は、正弦波信号S1の値が第1閾値th1と第2閾値th2との間に含まれており、かつ余弦波信号S2の値が第3閾値th3よりも大きい、又は第4閾値th4よりも小さい場合には、余弦波信号S2に対する信号処理を停止する。具体的には、角度演算部32は、正弦波信号S1に対してarcsin処理を実行する。言い換えると、角度演算部32は、信号選択部31が選択した正弦波信号S1を第1角度信号V51に変更する。本実施形態では、第1期間PE1において角度演算部32が実行する上述の処理が第1オフセット処理である。
【0072】
角度演算部32は、第2オフセット期間PE21,PE22では、信号選択部31が選択した正弦波信号S1及び余弦波信号S2に対して信号処理を実行する。言い換えると、角度演算部32は、余弦波信号S2の値が第1閾値th1と第2閾値th2との間に含まれており、かつ正弦波信号S1の値が第1閾値th1と第3閾値th3との間、又は第2閾値th2と第4閾値th4との間に含まれている場合には、正弦波信号S1に対する信号処理を実行する。具体的には、角度演算部32は、正弦波信号S1及び余弦波信号S2に対してarctan処理を実行する。言い換えると、角度演算部32は、信号選択部31が選択した正弦波信号S1及び余弦波信号S2を第3角度信号V53に変更する。
【0073】
角度演算部32は、2つの第2オフセット期間PE21,PE22の間の期間では、信号選択部31が選択した余弦波信号S2に対して信号処理を実行し、信号選択部31が選択しなかった正弦波信号S1に対して信号処理を実行しない。言い換えると、角度演算部32は、余弦波信号S2の値が第1閾値th1と第2閾値th2との間に含まれており、かつ正弦波信号S1の値が第3閾値th3よりも大きい、又は第4閾値th4よりも小さい場合には、正弦波信号S1に対する信号処理を停止する。具体的には、角度演算部32は、余弦波信号S2に対してarccos処理を実行する。言い換えると、角度演算部32は、信号選択部31が選択した余弦波信号S2を第2角度信号V52に変更する。本実施形態では、第2期間PE2において角度演算部32が実行する上述の処理が第2オフセット処理である。
【0074】
ここで、第1オフセット期間PE11,PE12は、第1磁気検出部1の第1AD変換器13のサンプリング周期のN(N=1,2,…)倍の期間であることが好ましい。そして、上述の第1オフセット処理では、第1AD変換器13のサンプリング周期のN倍に相当する第1オフセット期間PE11,PE12に余弦波信号S2に対する信号処理を実行することが好ましい。
【0075】
また、第2オフセット期間PE21,PE22は、第2磁気検出部2の第2AD変換器23のサンプリング周期のM(M=1,2,…)倍の期間であることが好ましい。そして、上述の第2オフセット処理では、第2AD変換器23のサンプリング周期のM倍に相当する第2オフセット期間PE21,PE22に正弦波信号S1に対する信号処理を実行することが好ましい。
【0076】
なお、上述のNとMとは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。言い換えると、第1オフセット期間PE11,PE12と第2オフセット期間PE21,PE22とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0077】
(5.1.2)動作
次に、変形例1に係る信号処理システム100の動作について、図4及び図5を参照して説明する。図4では、横軸が回転体(磁石からの磁界)の検出角度であり、縦軸が第1磁気検出部1及び第2磁気検出部2の出力値(出力電圧値)である。また、図4では、検出角度が0度から22.5度の範囲、67.5度から112.5度の範囲、157.5度から202.5度の範囲、247.5度から292.5度の範囲、337.5度から360度の範囲が第1期間PE1である。また、図4では、検出角度が22.5度から67.5度の範囲、112.5度から157.5度の範囲、202.5度から247.5度の範囲、292.5度から337.5度の範囲が第2期間PE2である。変形例1では、図4に示すように、第1期間PE1と第2期間PE2とが交互に並んでいる。
【0078】
処理部3の信号選択部31は、正弦波信号S1の値a1が第1閾値th1と第2閾値th2との間にあるか否かを判定する(ステップST201)。言い換えると、信号選択部31は、値a1が第2閾値th2以上で、かつ第1閾値th1以下であるか否かを判定する。信号選択部31は、値a1が第2閾値th2以上で、かつ第1閾値th1以下である場合には(ステップST201:Yes)、余弦波信号S2の値a2が第1閾値th1以上で、かつ第3閾値th3以下、又は第4閾値th4以上で、かつ第2閾値th2以下であるか否かを判定する(ステップST202)。
【0079】
信号選択部31は、値a2が第1閾値th1以上で、かつ第3閾値th3以下、又は第4閾値th4以上で、かつ第2閾値th2以下である場合には(ステップST202:Yes)、正弦波信号S1及び余弦波信号S2を選択する(ステップST203)。すなわち、信号選択部31は、第1オフセット期間PE11,PE12において正弦波信号S1及び余弦波信号S2を選択する。角度演算部32は、信号選択部31が選択した正弦波信号S1及び余弦波信号S2に対して、逆三角関数を用いて変換処理を行う。具体的には、角度演算部32は、正弦波信号S1及び余弦波信号S2に対してarctan処理を実行する(ステップST204)。これにより、第1磁気検出部1から出力される正弦波信号S1及び第2磁気検出部2から出力される余弦波信号S2から、回転体(磁石からの磁界)の回転角が算出される(ステップST205)。
【0080】
信号選択部31は、値a2が第3閾値th3よりも大きい、又は第4閾値th4よりも小さい場合には(ステップST202:No)、正弦波信号S1を選択する(ステップST206)。すなわち、信号選択部31は、2つの第1オフセット期間PE11,PE12間の期間において正弦波信号S1を選択する。角度演算部32は、信号選択部31が選択しなかった余弦波信号S2に対するarccos処理を停止し(ステップST207)、信号選択部31が選択した正弦波信号S1に対してarcsin処理を実行する(ステップST208)。つまり、角度演算部32は、ステップST207において第1停止処理を実行する。これにより、第1磁気検出部1から出力される正弦波信号S1から、回転体(磁石からの磁界)の回転角が算出される(ステップST205)。
【0081】
信号選択部31は、値a1が第2閾値th2よりも小さい、又は第1閾値th1よりも大きい場合には(ステップST201:No)、値a1が第1閾値th1以上で、かつ第3閾値th3以下、又は第4閾値th4以上で、かつ第2閾値th2以下であるか否かを判定する(ステップST209)。
【0082】
信号選択部31は、値a1が第1閾値th1以上で、かつ第3閾値th3以下、又は第4閾値th4以上で、かつ第2閾値th2以下である場合には(ステップST209:Yes)、正弦波信号S1及び余弦波信号S2を選択する(ステップST210)。すなわち、信号選択部31は、第2オフセット期間PE21,PE22において正弦波信号S1及び余弦波信号S2を選択する。角度演算部32は、信号選択部31が選択した正弦波信号S1及び余弦波信号S2に対して、arctan処理を実行する(ステップST211)。これにより、第1磁気検出部1から出力される正弦波信号S1及び第2磁気検出部2から出力される余弦波信号S2から、回転体(磁石からの磁界)の回転角が算出される(ステップST205)。
【0083】
信号選択部31は、値a1が第3閾値th3よりも大きい、又は第4閾値th4よりも小さい場合には(ステップST209:No)、余弦波信号S2を選択する(ステップST212)。すなわち、信号選択部31は、2つの第2オフセット期間PE21,PE22間の期間において余弦波信号S2を選択する。角度演算部32は、信号選択部31が選択しなかった正弦波信号S1に対するarcsin処理を停止し(ステップST213)、信号選択部31が選択した余弦波信号S2に対してarccos処理を実行する(ステップST214)。つまり、角度演算部32は、ステップST213において第2停止処理を実行する。これにより、第2磁気検出部2から出力される余弦波信号S2から、回転体(磁石からの磁界)の回転角が算出される(ステップST205)。
【0084】
(5.1.3)効果
変形例1に係る信号処理方法及び信号処理システム100では、2つの第1オフセット期間PE11,PE12の間の期間において第1停止処理を実行し、2つの第2オフセット期間PE21,PE22の間の期間において第2停止処理を実行している。そのため、第1停止処理及び第2停止処理を実行しない場合に比べて、信号処理システム100の消費電力を低減することができる。
【0085】
また、変形例1に係る信号処理システム100では、第1オフセット期間PE11,PE12及び第2オフセット期間PE21,PE22において、正弦波信号S1及び余弦波信号S2の両方を選択し、正弦波信号S1及び余弦波信号S2に対してarctan処理を行っている。そのため、正弦波信号S1のみを選択し、正弦波信号S1に対してarcsin処理を行う場合、及び余弦波信号S2のみを選択し、余弦波信号S2に対してarccos処理を行う場合に比べて、検出磁界の回転角を精度よく検出することができる。
【0086】
変形例1では、第1オフセット期間PE11,PE12の両方で正弦波信号S1及び余弦波信号S2を選択しているが、第1オフセット期間PE11,PE12の少なくとも一方で正弦波信号S1及び余弦波信号S2を選択してもよい。また、第2オフセット期間PE21,PE22においても同様である。
【0087】
また、第1オフセット期間PE11,PE12及び第2オフセット期間PE21,PE22では、正弦波信号S1及び余弦波信号S2の両方から角度情報を算出することが好ましい。しかしながら、第1期間PE1における第1オフセット期間PE11,PE12の割合、及び第2期間PE2における第2オフセット期間PE21,PE22の割合が小さい場合には、正弦波信号S1及び余弦波信号S2の一方から角度情報を算出してもよい。つまり、第1オフセット期間PE11,PE12では、正弦波信号S1から角度情報を算出し、第2オフセット期間PE21,PE22では、余弦波信号S2から角度情報を算出してもよい。
【0088】
(5.2)その他の変形例
以下、上述の実施形態のその他の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、上述の実施形態に限らず、変形例1においても適宜組み合わせて適用可能である。
【0089】
本開示における信号処理システム100は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における信号処理システム100としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。更に、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
【0090】
また、信号処理システム100における複数の機能が、1つの筐体内に集約されていることは、信号処理システム100に必須の構成ではない。つまり、信号処理システム100の構成要素は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。さらに、信号処理システム100の少なくとも一部の機能、例えば、処理部3の機能がクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。
【0091】
上述の実施形態では、第1磁気抵抗素子11及び第2磁気抵抗素子21の各々がAMRであるが、これに限らない。第1磁気抵抗素子11及び第2磁気抵抗素子21の各々は、例えば、TMR(Tunnel Magneto Resistance)であってもよいし、GMR(Giant Magneto Resistance)であってもよい。また、第1磁気抵抗素子11と第2磁気抵抗素子21とは同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、第1磁気抵抗素子11がAMRで、第2磁気抵抗素子21がTMRであってもよい。ここで、第1磁気抵抗素子11及び第2磁気抵抗素子21がTMR又はGMRである場合には、正弦波信号S1及び余弦波信号S2が2π変化するのに対して、回転角θは360度変化する。
【0092】
上述の実施形態では、第1停止処理及び第2停止処理において角度演算部32の変換処理を停止している。これに対して、例えば、第1増幅器12又は第2増幅器22の増幅処理、第1AD変換器13又は第2AD変換器23の変換処理、及び第1磁気抵抗素子11又は第2磁気抵抗素子21の検出処理を更に停止してもよい。例えば、第1磁気抵抗素子11及び第2磁気抵抗素子21の消費電流が1.65mA、第1増幅器12及び第2増幅器22の消費電流が1mA、第1AD変換器13及び第2AD変換器23の消費電流が1mAであると仮定する。この場合、第2磁気抵抗素子21、第2増幅器22及び第2AD変換器23を停止させることにより、3.65mAの消費電流を更に低減することができる。
【0093】
上述の実施形態では、第1停止処理と第2停止処理との両方を実行しているが、第1停止処理と第2停止処理との少なくとも一方を実行すればよい。この場合も、第1停止処理と第2停止処理との両方を実行しない場合に比べて、信号処理システム100の消費電力を低減することができる。
【0094】
上述の実施形態では、第1磁気検出部1が第1AD変換器13を有し、第2磁気検出部2が第2AD変換器23を有しているが、第1AD変換器13及び第2AD変換器23の少なくとも一方は省略されていてもよい。
【0095】
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様に係る信号処理方法は、第1磁気検出部(1)と、第2磁気検出部(2)と、処理部(3)と、を備える信号処理システム(100)に用いられる信号処理方法である。第1磁気検出部(1)は、検出磁界の回転角に応じた正弦波信号(S1)を出力する。第2磁気検出部(2)は、検出磁界の回転角に応じた信号であって正弦波信号(S1)に対して位相がπ/2異なる余弦波信号(S2)を出力する。処理部(3)は、正弦波信号(S1)と余弦波信号(S2)との少なくとも一方に基づいて検出磁界の回転角に関する角度情報を含む角度信号(V5)を出力する。処理部(3)は、信号選択部(31)と、角度演算部(32)と、を有する。信号選択部(31)は、それぞれが正弦波信号(S1)と余弦波信号(S2)との交点(PO1,PO2)の値である第1閾値(th1)及び第1閾値(th1)よりも小さい第2閾値(th2)を有する。信号選択部(31)は、正弦波信号(S1)及び余弦波信号(S2)のうち第1閾値(th1)と第2閾値(th2)との間に値が含まれている信号を選択する。角度演算部(32)は、逆三角関数を用いて正弦波信号(S1)と余弦波信号(S2)との少なくとも一方を角度信号(V5)に変換する。信号処理方法は、第1期間(PE1)と、第2期間(PE2)と、の少なくとも一方を含む。第1期間(PE1)では、角度演算部(32)が、信号選択部(31)が選択した正弦波信号(S1)を、角度信号(V5)としての第1角度信号(V51)に変換する。第2期間(PE2)では、角度演算部(32)が、信号選択部(31)が選択した余弦波信号(S2)を、角度信号(V5)としての第2角度信号(V52)に変換する。
【0096】
この態様によれば、第1期間(PE1)と第2期間(PE2)との少なくとも一方において、信号選択部(31)が選択しなかった信号に対する処理を行わなくてもよく、信号処理システム(100)の消費電力を低減することができる。
【0097】
第2の態様に係る信号処理方法では、第1の態様において、第1期間(PE1)と第2期間(PE2)とが交互に並んでいる。
【0098】
この態様によれば、第1期間(PE1)と第2期間(PE2)との両方において、信号選択部(31)が選択しなかった信号に対する処理を行わなくてもよく、信号処理システム(100)の消費電力を更に低減することができる。
【0099】
第3の態様に係る信号処理方法では、第1又は2の態様において、第1停止処理と、第2停止処理と、の少なくとも一方を実行する。第1停止処理では、第1期間(PE1)において余弦波信号(S2)に対する信号処理を停止する。第2停止処理では、第2期間(PE2)において正弦波信号(S1)に対する信号処理を停止する。
【0100】
この態様によれば、第1停止処理と第2停止処理との少なくとも一方を実行することで、信号処理システム(100)の消費電力を低減することができる。
【0101】
第4の態様に係る信号処理方法は、第1磁気検出部(1)と、第2磁気検出部(2)と、処理部(3)と、を備える信号処理システム(100)に用いられる信号処理方法である。第1磁気検出部(1)は、検出磁界の回転角に応じた正弦波信号(S1)を出力する。第2磁気検出部(2)は、検出磁界の回転角に応じた信号であって正弦波信号(S1)に対して位相がπ/2異なる余弦波信号(S2)を出力する。処理部(3)は、正弦波信号(S1)と余弦波信号(S2)との少なくとも一方に基づいて検出磁界の回転角に関する角度情報を含む角度信号(V5)を出力する。処理部(3)は、信号選択部(31)を有する。信号選択部(31)は、それぞれが正弦波信号(S1)と余弦波信号(S2)との交点(PO1,PO2)の値である第1閾値(th1)及び第1閾値(th1)よりも小さい第2閾値(th2)を有する。信号選択部(31)は、正弦波信号(S1)及び余弦波信号(S2)のうち第1閾値(th1)と第2閾値(th2)との間に値が含まれている信号を選択する。信号処理方法は、第1停止処理と、第2停止処理と、の少なくとも一方を実行する。第1停止処理では、正弦波信号(S1)の値が第1閾値(th1)と第2閾値(th2)との間に含まれている第1期間(PE1)において余弦波信号(S2)に対する信号処理を停止する。第2停止処理では、余弦波信号(S2)の値が第1閾値(th1)と第2閾値(th2)との間に含まれている第2期間(PE2)において正弦波信号(S1)に対する信号処理を停止する。
【0102】
この態様によれば、第1停止処理と第2停止処理との少なくとも一方を実行することで、信号処理システム(100)の消費電力を低減することができる。
【0103】
第5の態様に係る信号処理方法では、第1~4のいずれかの態様において、信号選択部(31)は、第1閾値(th1)よりも大きい第3閾値(th3)、及び第2閾値(th2)よりも小さい第4閾値(th4)を更に有する。信号処理方法では、第1オフセット処理と、第2オフセット処理と、の少なくとも一方を実行する。第1オフセット処理では、正弦波信号(S1)の値が第1閾値(th1)と第2閾値(th2)との間に含まれており、かつ余弦波信号(S2)の値が第1閾値(th1)と第3閾値(th3)との間、又は第2閾値(th2)と第4閾値(th4)との間に含まれている場合には余弦波信号(S2)に対する信号処理を実行する。また、第1オフセット処理では、正弦波信号(S1)の値が第1閾値(th1)と第2閾値(th2)との間に含まれており、かつ余弦波信号(S2)の値が第3閾値(th3)よりも大きい、又は第4閾値(th4)よりも小さい場合には余弦波信号(S2)に対する信号処理を停止する。第2オフセット処理では、余弦波信号(S2)の値が第1閾値(th1)と第2閾値(th2)との間に含まれており、かつ正弦波信号(S1)の値が第1閾値(th1)と第3閾値(th3)との間、又は第2閾値(th2)と第4閾値(th4)との間に含まれている場合には正弦波信号(S1)に対する信号処理を実行する。また、第2オフセット処理では、余弦波信号(S2)の値が第1閾値(th1)と第2閾値(th2)との間に含まれており、かつ正弦波信号(S1)の値が第3閾値(th3)よりも大きい、又は第4閾値(th4)よりも小さい場合には正弦波信号(S1)に対する信号処理を停止する。
【0104】
この態様によれば、信号処理システム(100)の消費電力を低減しつつ、検出磁界の回転角を精度よく算出することができる。
【0105】
第6の態様に係る信号処理方法では、第5の態様において、第1磁気検出部(1)は、アナログ信号をデジタル信号に変換する第1AD変換器(13)を有する。第2磁気検出部(2)は、アナログ信号をデジタル信号に変換する第2AD変換器(23)を有する。信号処理方法では、Nを整数とした場合に、第1オフセット処理において、第1AD変換器(13)のサンプリング周期のN倍に相当する第1オフセット期間(PE11,PE12)に余弦波信号(S2)に対する信号処理を実行する。また、信号処理方法では、Mを整数とした場合に、第2オフセット処理において、第2AD変換器(23)のサンプリング周期のM倍に相当する第2オフセット期間(PE21,PE22)に正弦波信号(S1)に対する信号処理を実行する。
【0106】
この態様によれば、検出磁界の回転角を精度よく算出することができる。
【0107】
第7の態様に係る信号処理方法では、第6の態様において、第1オフセット期間(PE11,PE12)及び第2オフセット期間(PE21,PE22)の各々は、正弦波信号(S1)及び余弦波信号(S2)を、角度信号(V5)としての第3角度信号(V53)に変換する期間を含む。
【0108】
この態様によれば、検出磁界の回転角を精度よく算出することができる。
【0109】
第8の態様に係る信号処理方法では、第1~7のいずれかの態様において、第1磁気検出部(1)及び第2磁気検出部(2)の各々は、磁気抵抗素子(11,21)を含む。
【0110】
この態様によれば、検出磁界の回転角を算出することができる。
【0111】
第9の態様に係る信号処理方法では、第1~8のいずれかの態様において、正弦波信号(S1)及び余弦波信号(S2)の最大振幅をA1、第1閾値(th1)をB1、第2閾値(th2)をB2とした場合に、
【0112】
【数6】
であり、
【0113】
【数7】
である。
【0114】
この態様によれば、第1閾値(th1)及び第2閾値(th2)を算出することができる。
【0115】
第10の態様に係るプログラムは、第1~9の態様に係る信号処理方法を1以上のプロセッサに実行させるためのプログラムである。
【0116】
この態様によれば、第1期間(PE1)と第2期間(PE2)との少なくとも一方において、信号選択部(31)が選択しなかった信号に対する処理を行わなくてもよく、信号処理システム(100)の消費電力を低減することができる。
【0117】
第11の態様に係る信号処理システム(100)は、第1磁気検出部(1)と、第2磁気検出部(2)と、処理部(3)と、を備える信号処理システム(100)である。第1磁気検出部(1)は、検出磁界の回転角に応じた正弦波信号(S1)を出力する。第2磁気検出部(2)は、検出磁界の回転角に応じた信号であって正弦波信号(S1)に対して位相がπ/2異なる余弦波信号(S2)を出力する。処理部(3)は、正弦波信号(S1)と余弦波信号(S2)との少なくとも一方に基づいて検出磁界の回転角に関する角度情報を含む角度信号(V5)を出力する。処理部(3)は、信号選択部(31)と、角度演算部(32)と、を有する。信号選択部(31)は、それぞれが正弦波信号(S1)と余弦波信号(S2)との交点(PO1,PO2)の値である第1閾値(th1)及び第1閾値(th1)よりも小さい第2閾値(th2)を有する。信号選択部(31)は、正弦波信号(S1)及び余弦波信号(S2)のうち第1閾値(th1)と第2閾値(th2)との間に値が含まれている信号を選択する。角度演算部(32)は、逆三角関数を用いて正弦波信号(S1)と余弦波信号(S2)との少なくとも一方を角度信号(V5)に変換する。信号処理システム(100)は、第1期間(PE1)と、第2期間(PE2)と、の少なくとも一方を含む。第1期間(PE1)では、角度演算部(32)が、信号選択部(31)が選択した正弦波信号(S1)を、角度信号(V5)としての第1角度信号(V51)に変換する。第2期間では、角度演算部(32)が、信号選択部(31)が選択した余弦波信号(S2)を、角度信号(V5)としての第2角度信号(V52)に変換する。
【0118】
この態様によれば、第1期間(PE1)と第2期間(PE2)との少なくとも一方において、信号選択部(31)が選択しなかった信号に対する処理を行わなくてもよく、信号処理システム(100)の消費電力を低減することができる。
【0119】
第12の態様に係る信号処理システム(100)は、第1磁気検出部(1)と、第2磁気検出部(2)と、処理部(3)と、を備える信号処理システム(100)である。第1磁気検出部(1)は、検出磁界の回転角に応じた正弦波信号(S1)を出力する。第2磁気検出部(2)は、検出磁界の回転角に応じた信号であって正弦波信号(S1)に対して位相がπ/2異なる余弦波信号(S2)を出力する。処理部(3)は、正弦波信号(S1)と余弦波信号(S2)との少なくとも一方に基づいて検出磁界の回転角に関する角度情報を含む角度信号(V5)を出力する。処理部(3)は、信号選択部(31)を有する。信号選択部(31)は、それぞれが正弦波信号(S1)と余弦波信号(S2)との交点(PO1,PO2)の値である第1閾値(th1)及び第1閾値(th1)よりも小さい第2閾値(th2)を有する。信号選択部(31)は、正弦波信号(S1)及び余弦波信号(S2)のうち第1閾値(th1)と第2閾値(th2)との間に値が含まれている信号を選択する。信号処理システム(100)は、第1停止処理と、第2停止処理と、の少なくとも一方を実行する。第1停止処理では、正弦波信号(S1)の値が第1閾値(th1)と第2閾値(th2)との間に含まれている第1期間(PE1)において余弦波信号(S2)に対する信号処理を停止する。第2停止処理では、余弦波信号(S2)の値が第1閾値(th1)と第2閾値(th2)との間に含まれている第2期間(PE2)において正弦波信号(S1)に対する信号処理を停止する。
【0120】
この態様によれば、第1停止処理と第2停止処理との少なくとも一方を実行することで、信号処理システム(100)の消費電力を低減することができる。
【0121】
第2~9の態様に係る構成については、信号処理方法に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0122】
1 第1磁気検出部
2 第2磁気検出部
3 処理部
11 第1磁気抵抗素子(磁気抵抗素子)
13 第1AD変換器
21 第2磁気抵抗素子(磁気抵抗素子)
23 第2AD変換器
31 信号選択部
32 角度演算部
100 信号処理システム
PE1 第1期間
PE2 第2期間
PE11,PE12 第1オフセット期間
PE21,PE22 第2オフセット期間
PO1,PO2 交点
S1 正弦波信号
S2 余弦波信号
th1 第1閾値
th2 第2閾値
th3 第3閾値
th4 第4閾値
V5 角度信号
V51 第1角度信号(角度信号)
V52 第2角度信号(角度信号)
V53 第3角度信号(角度信号)
図1
図2
図3
図4
図5