(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-21
(45)【発行日】2023-09-29
(54)【発明の名称】水洗便器
(51)【国際特許分類】
E03D 11/13 20060101AFI20230922BHJP
E03D 11/08 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
E03D11/13
E03D11/08
(21)【出願番号】P 2019233426
(22)【出願日】2019-12-24
【審査請求日】2022-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 靖史
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/097966(WO,A1)
【文献】特開2008-7977(JP,A)
【文献】特開2018-51144(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00- 7/00
E03D 11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚物を受けるボウルと、
前記ボウルに水を供給する吐水口と、
給水源から供給された水を前記吐水口に供給する給水路と、
前記給水路に設けられ、前記給水路において水の逆流を抑制する逆流抑制部と、
を備え、
前記逆流抑制部は、
前記吐水口に通じる入水口と、
前記入水口が一部に設けられた水受け壁と、
前記入水口及び前記水受け壁から離れて位置し、前記給水源から送られた水を前記入水口に向かって出す出水口と、
を有し、
前記水受け壁のうち、前記入水口よりも下方の部分には、前記水受け壁の下端面に水が付着することを抑制する水付着抑制部が設けられている、
水洗便器。
【請求項2】
前記水付着抑制部は、前記水受け壁から前記出水口側に突出した突出部であり、
前記突出部の上面は、水平面に対して傾いた傾斜面である、
請求項1に記載の水洗便器。
【請求項3】
前記逆流抑制部は、前記水受け壁の周囲を覆うように設けられた覆い壁を更に有し、
前記突出部は、前記覆い壁から離れて位置する、
請求項2に記載の水洗便器。
【請求項4】
前記水付着抑制部は、水平面に対して傾くように設けられた、前記水受け壁の下端面である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の水洗便器。
【請求項5】
前記水付着抑制部は、前記水受け壁に設けられた撥水面である、
請求項1から4のいずれか一項に記載の水洗便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水洗便器に関し、より詳しくは、ボウルに水を供給する給水路に、逆流抑制部を設けた水洗便器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ボウルに水を供給する給水路に、逆流抑制部を設けた水洗便器が記載されている。逆流抑制部は、ボウルに設けられた吐水口に通じる入水口と、給水源から送られた水を入水口に向かって出す出水口と、を有し、入水口が、出水口から出た水の軌跡上に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の水洗便器では、入水口に向かって出された水の一部は、入水口の周囲の壁で受けられて、この壁を伝って落下する。このとき、壁の下端面に表面張力によって水が一定量付着する場合がある。
【0005】
このような状態において、出水口から出る水の圧力が所定値よりも低いと、出水口から出た水が、壁の下端面に付着した水に衝突して、この付着した水が、逆流抑制部の下方に位置する水受け部の外側まで飛散するおそれがある。
【0006】
上記事情に鑑みて、本開示は、逆流抑制部における水の飛散を抑制することができる水洗便器を提案することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る一態様の水洗便器は、汚物を受けるボウルと、前記ボウルに水を供給する吐水口と、給水源から供給された水を前記吐水口に供給する給水路と、前記給水路に設けられ、前記給水路において水の逆流を抑制する逆流抑制部とを備える。前記逆流抑制部は、前記吐水口に通じる入水口と、前記入水口が一部に設けられた水受け壁と、前記入水口及び前記水受け壁から離れて位置し、前記給水源から送られた水を前記入水口に向かって出す出水口と、を有する。前記水受け壁のうち、前記入水口よりも下方の部分には、前記水受け壁の下端面に水が付着することを抑制する水付着抑制部が設けられている。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る一態様の水洗便器では、逆流抑制部における水の飛散を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係る水洗便器を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、同上の水洗便器が備える逆流抑制部とボウルを示す斜視図である。
【
図3】
図3は、同上の逆流抑制部の周辺を示す斜視図である。
【
図4】
図4Aは、同上の逆流抑制部の周辺を示す鉛直面での断面図であり、
図4Bは、同上の逆流抑制部の要部を示す側面図である。
【
図5】
図5Aは、同上の逆流抑制部の要部の変形例1を示す側面図であり、
図5Bは、同上の逆流抑制部の要部の変形例2を示す側面図である。
図5Cは、同上の逆流抑制部の要部の変形例3を示す側面図であり、
図5Dは、同上の逆流抑制部の要部の変形例4を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.概要
図1には、一実施形態の水洗便器1が示されている。水洗便器1は、汚物を受けるボウル23と、ボウル23に水を供給する吐水口253と、給水源から供給された水を吐水口253に供給する給水路3と、給水路3に設けられ、給水路3において水の逆流を抑制する逆流抑制部4と、を備える。逆流抑制部4は、吐水口253に通じる入水口410と、入水口410が一部に設けられた水受け壁5と、入水口410及び水受け壁5から離れて位置し、給水源から送られた水を入水口410に向かって出す出水口400と、を有する。
図4A,Bに示すように、水受け壁5のうち、入水口410よりも下方の部分には、水受け壁5の下端面520に水が付着することを抑制する水付着抑制部9が設けられている。
【0011】
上記構成を備える一実施形態の水洗便器1では、出水口400から入水口410に向かって出された水の一部を水受け壁5で受けた際に、この水が水受け壁5の下端面520に至って表面張力により付着することを、水付着抑制部9によって抑制することができる。そのため、一実施形態の水洗便器1では、出水口400から入水口410に向かって出された水が、水受け壁5の下端面520に付着した水に衝突して、この水が飛散することを抑制することができ、つまり、逆流抑制部4における水の飛散を抑制することができる。
【0012】
2.詳細
続いて、
図1から4に示す本実施形態の水洗便器1について更に詳しく説明する。水洗便器1は、
図1に示すように、トイレルーム7に設置される。トイレルーム7の後壁74には、給水源としての給水管71が設けられており、給水管71の下流側の端部には止水栓72が設けられている。また、トイレルーム7の床75には、下水管につながる排水管73が設けられている。
【0013】
水洗便器1は、トイレルーム7に設置された状態では、給水路3につながる接続部6が配管61を介して止水栓72に接続され、ボウル23の排水筒232につながる排水トラップ76が排水管73に接続される。止水栓72と接続部6とが通じることで、水洗便器1の給水路3に対して、給水管71(つまり給水源)からの水が供給される。
【0014】
水洗便器1は、便器本体2と、給水路3と、逆流抑制部4とを備えている。以下、
図1において、水洗便器1からトイレルーム7の後壁74に向かう方向でかつ水平面に沿う方向を後方とし、その反対方向を前方として定義する。また、水洗便器1の前方において後方を向く使用者を基準にして左右方向を定義する。
【0015】
便器本体2は、水洗便器1の主体を構成する。便器本体2は、複数の外側パーツ21と、内側パーツ22と、水受け部8と、便座(不図示)と、便蓋26とを備えている。
【0016】
複数の外側パーツ21は、水洗便器1の外郭を構成する部品である。外側パーツ21は、フレーム(不図示)に取り付けられて、水洗便器1の外郭を構成する。本実施形態において、外側パーツ21は、内側パーツ22を支持するスカート211と、スカート211の後側に位置する後部下パーツ213と、後部下パーツ213の上側に位置する後部上パーツ212とを含む。便座及び便蓋26は、後部上パーツ212に対して左右軸回りに回転可能に取り付けられている。
【0017】
内側パーツ22は、外側パーツ21及び便蓋26で囲まれた部分の内部に配置される部品である。内側パーツ22は、スカート211の上端部に支持されている。内側パーツ22は、
図2に示すように、ボウル23と、吐出部25と、支持部24とを備えている。
【0018】
ボウル23は、使用者から排泄される汚物を受ける部分である。ボウル23は、椀状に形成されており、上端に開口面を有し、下端部に排水筒232を有している。ボウル23の内面(以下、ボウル面231という場合がある)は、排水筒232の前端部に向かって下り傾斜している。吐出部25から吐出された水は、ボウル面231に沿って鉛直軸回りに旋回する。排水筒232の後側の端部は、
図1に示すように、排水トラップ76を介して、排水管73に接続される。
【0019】
排水トラップ76は、臭気や害虫等が排水管73からボウル23上に逆流するのを防止する。排水トラップ76は、いわゆるS字状の配管により形成されたS字トラップ、又は可動式のトラップ等で構成される。可動式のトラップは、例えば、ボウル23の排水筒232に接続された可とう管の先端を、モータ等により上方に向く状態と下方に向く状態とに切り替えるように構成されている。
【0020】
吐出部25は、ボウル面231に水を供給するための部分である。吐出部25は、ボウル23の開口面に隣接して配置されている。吐出部25は、吐出ノズル251と、一対の立上部252と、吐水口253とを備えている。
【0021】
吐出ノズル251は、給水路3から供給された水を出すノズルである。吐出ノズル251は、一対の立上部252の間に配置されている。一対の立上部252は、吐出ノズル251から出された水を、ボウル面231に沿って旋回させるように案内する。吐水口253は、ボウル23に水を供給する口である。本実施形態では、吐水口253は、一対の立上部252のうちの、ボウル23の内側の立上部252の前端部と、これに対向する(ボウル23の外側の)立上部252の一部とで囲まれた開口面で構成される。なお、吐水口253は、吐出ノズル251の先端の開口であってもよい。
【0022】
支持部24は、ボウル23の開口面の外縁から外側に延び、スカート211の上端部に支持される部分である。支持部24を介して、ボウル23及び吐出部25は、外側パーツ21に固定される。
【0023】
給水路3は、給水源から供給された水を吐出部25に供給するための水が通る経路である。給水路3の上流側の端部は接続部6につながり、給水路3の下流側の端部は吐出ノズル251につながっている。給水路3には、止水弁(不図示)や定流量弁(不図示)が設けられており、一定の流量の水を流すことができる。これによって、給水源から供給される水の水圧に、ある程度の変動があっても、吐水口253からボウル23に対して、一定の流量の水を供給することができる。
【0024】
給水路3には、逆流抑制部4が設けられている。逆流抑制部4は、給水路3において水の逆流を抑制する。これにより、万が一、ボウル23内の溜め水等の液面が上昇して吐出部25が当該溜め水等に浸かったときに、ボウル23内の溜め水等が給水路3を給水源まで逆流することを抑えることができる。
【0025】
逆流抑制部4は、
図3、
図4A及び
図4Bに示すように、出水管40と、入水管41と、水受け壁5と、飛散抑制部42と、覆い壁43と、を備える。
【0026】
出水管40は、給水源(給水管71)に通じ、給水源から送られた水を入水管41に向かって出す管である。出水管40は、水を逆流抑制部4に入れる管である。出水管40は、下流側の端面に出水口400を有する。出水口400は、出水管40を通る水が出る開口であり、給水源から送られた水を入水口410に向かって出す。出水管40は、水受け部8から上方に突出した支持部80によって支持されている。出水管40の中心軸401は、水平面に沿っており、鉛直線(鉛直面)に対して直交している。出水管40の出水口400側の端部における内周面402は、出水口400に近い部分ほど流路断面積が小さくなるようにテーパ状に形成されている。これにより、出水口400から出る水の流速を高めることができる。
【0027】
入水管41は、出水口400から出た水を受け取り、その水を吐出ノズル251(
図2参照)へ流す管である。入水管41の上流側の端部は、水受け壁5につながっている。入水管41の下流側の端部は、ホース等を介して吐出ノズル251につながっている。
【0028】
入水管41は、上流側の端面に入水口410を有する。入水口410は、水受け壁5の一部に設けられている。詳しくは、水受け壁5の出水口400側の面(つまり右面)の一部に、入水口410が設けられている。
【0029】
入水口410は、吐水口253に通じている。入水管41の中心軸411は、水平面に沿っており、出水管40の中心軸401の延長線上に位置している。つまり、入水口410は、出水口400から出た所定以上の水圧の水の軌跡上に配置されている。入水口410は、入水管41の中心軸411に対して傾斜している。入水口410の開口面の傾斜は、左右方向(水の軌跡に沿う方向)において、出水口400に近い部分ほど下側に位置するように、水平面に対して傾斜している。そのため、出水口400から出た水の軌跡が放物線を描いても、当該水を入水口410で受けやすくなっている。
【0030】
水受け壁5は、鉛直面に対して平行な上壁部50と、上壁部50の下端に連続し、下側の部分ほど右側(出水口400側)に位置するように傾斜した中間壁部51と、中間壁部51の下端に連続し、鉛直面に対して平行な下壁部52と、を有する。
【0031】
中間壁部51の前後方向の中央部に、入水口410が設けられている。中間壁部51の鉛直面に対する傾斜角度と、入水口410の開口面の鉛直面に対する傾斜角度とは同じである。
【0032】
図4Bに示すように、水受け壁5は、右側から見て、半円形状である。水受け壁5の下端面520を除く外周部には、後述する覆い壁43の第三覆い壁432がつながっている。
【0033】
水受け壁5のうち、入水口410よりも下側の部分には、水受け壁5の下端面520への水の付着を抑制する水付着抑制部9が設けられている。本実施形態では、水付着抑制部9は、水受け壁5の下壁部52から出水口400側(つまり右側)に突出した突出部90である。突出部90の上面は、水平面に対して傾いた傾斜面である。
【0034】
本実施形態では、突出部90は、矩形の板状であり、前側の部分ほど下方に位置するように傾いている。突出部90は、前後方向の長さが左右方向の長さよりも長い。突出部90の上面は、平面であり、前下がりに(つまり前側の部分ほど下方に位置するように)傾いている。
【0035】
突出部90の前後の端部は、第三覆い壁432から離れて位置する。水受け壁5で受けた水は、突出部90の上面を伝って前側に流れて、突出部90の上面の前端部に集中するため、水の自重によって突出部90から落下しやすく、これにより、水受け壁5の下端面520に表面張力によって水が付着することが抑制される。
【0036】
飛散抑制部42は、出水口400から出た水が入水口410に入る際に、飛散した水が出水口400に付着することを抑制する。飛散抑制部42は、出水口400と入水口410との間に配置されている。飛散抑制部42は、第一遮水板44と、第二遮水板45と、を有する。
【0037】
第一遮水板44は、水受け壁5及び入水口410に面する板であり、水受け壁5から飛散した水を受ける板である。第一遮水板44は、水受け壁5から離れて位置し、第一遮水板44の下端と水受け壁5の下端との間には、開口46が設けられている。水受け壁5又は第一遮水板44で受けた水は、開口46を通じて、水受け部8へと落下する。
【0038】
第一遮水板44は、鉛直面に沿っており、入水管41及び出水管40の中心軸401,411に交差(ここでは、直交)している。第一遮水板44には、第一遮水板44を貫通する第一通水孔440が形成されている。第一通水孔440の径は、出水口400の径以上で、かつ入水口410の径以下に形成されている。
【0039】
第二遮水板45は、出水口400及び第一遮水板44に面する板であり、出水口400から出て第一遮水板44で跳ね返って飛散した水や、水受け壁5で跳ね返って第一遮水板44の第一通水孔440を通過した水を受ける板である。第二遮水板45は、鉛直面に沿っており、入水管41及び出水管40の中心軸411,401に交差(ここでは、直交)している。つまり、第二遮水板45は、第一遮水板44に対して平行である。第二遮水板45には、第二遮水板45を貫通する第二通水孔450が形成されている。第二通水孔450の径は、出水口400の径以上で、かつ入水口410の径以下に形成されている。第二通水孔450の径は、第一通水孔440の径と同じであるが、第一通水孔440の径に対して小さくてもよいし、大きくてもよい。
【0040】
第一通水孔440と第二通水孔450のそれぞれの周囲には、周壁部47が形成されている。周壁部47は、通水孔440,450の周囲のうちの少なくとも一部から、左右方向(水の軌跡に沿う方向のうちの出水口400側及び入水口410側)の少なくとも一方に突出する。本実施形態では、第一通水孔440に対応する周壁部47は、第一通水孔440の周囲の全周から、右側と左側の両方に突出している。また、第二通水孔450に対応する周壁部47は、第二通水孔450の周囲の全周から、右側にのみ突出している。
【0041】
ただし、第一通水孔440に対応する周壁部47は、第一通水孔440の周囲の全周から、左側にのみ突出してもよいし、右側にのみ突出してもよい。また、第二通水孔450に対応する周壁部47は、第二通水孔450の周囲の全周から、左側にのみ突出してもよいし、左右両側に突出してもよい。また、周壁部47は、通水孔440,450の周囲の一部にのみ形成されてもよい。
【0042】
出水口400から出た水が入水口410に入る際に、水受け壁5で跳ね返って第一遮水板44に飛散した水は、周壁部47に当たって下方に落下する。また、当該水が第一遮水板44を伝って流れても、周壁部47によって第一通水孔440に入らない。この結果、水受け壁5で跳ね返った水が、第一通水孔440を通過して出水口400側に逆流することを、更に抑制することができる。
【0043】
覆い壁43は、出水口400から出た水が、水受け壁5や飛散抑制部42で跳ね返って、覆い壁43の外部に飛散するのを抑制する。覆い壁43は、第一覆い壁430と、第二覆い壁431と、第三覆い壁432と、を備える。
【0044】
第一覆い壁430は、出水管40の先端(左端)と、第二遮水板45とをつなぎ、出水管40と第二遮水板45の間の空間を前後方向及び上方から覆う。第二覆い壁431は、第二遮水板45と、第一通水孔440から右側に突出した周壁部47の先端(右端)とをつなぎ、第二遮水板45と周壁部47との間の空間を前後方向及び上方から覆う。第三覆い壁432は、第一遮水板44と、水受け壁5とをつなぎ、第一遮水板44と水受け壁5との間の空間を前後方向及び上方から覆う。
【0045】
第三覆い壁432は、本実施形態では、第一遮水板44から左側に突出した第一部分432aと、水受け壁5の外周部から右側に突出した第二部分432bと、を有する。
【0046】
第一覆い壁430は、出水管40と一体に設けられている。第三覆い壁432の第一部分432aと第一遮水板44と第二覆い壁431と第二遮水板45とは、一体に設けられている。第三覆い壁432の第二部分432bと水受け壁5は、一体に設けられている。
【0047】
第三覆い壁432の第二部分432bと、第一覆い壁430と、第三覆い壁432の第一部分432aのそれぞれには、前方及び後方に突出する取付部48が設けられている。
【0048】
これらの前後の取付部48が、水受け部8から上方に突出した支持部80に取り付けられることで、逆流抑制部4は、水受け部8の上に取り付けられる。水受け部8は、便器本体2が有するフレームによって支持され、後部上パーツ212によって覆い隠される。
【0049】
覆い壁43又は飛散抑制部42又は水受け壁5で跳ね返った水は、水受け部8で受けられる。水受け部8の底部には、排水孔81が設けられる。排水孔81には、チューブ等の配管82が接続される。配管82は、例えば、ボウル23に接続される。そのため、水受け部8で受けた水は、ボウル23に流れる。ただし、配管82は、例えば、排水トラップ76、排水管73等に接続されてもよい。また、水受け部8で受けた水を、直接、トイレルーム7の床75(
図1参照)に排出してもよい。水受け部8は、周壁83を有している。逆流抑制部4は、
図3に示すように、平面視において、周壁83の内側に配置されている。
【0050】
水洗便器1は、平面視において周壁83の内部に設けられたオーバーフロー部84を有する。オーバーフロー部84は、水受け部8の底面のうち、周壁83の内側の部分から上方に突出した円筒状の部分である。オーバーフロー部84は、その上端にオーバーフロー開口840を有する。オーバーフロー開口840は、水受け部8の底面より上方に位置し、かつ周壁83の上端よりも下方に位置する。オーバーフロー開口840は、水受け部8の排水孔81だけでは排水能力が足りない場合に、周壁83内に溜まった水を排出する。
【0051】
オーバーフロー開口840に入った水は、床75(
図1参照)に流される。なお、オーバーフロー開口840に入った水は、ボウル23、排水トラップ76、排水管73等に流してもよい。
【0052】
3.作用効果
以上説明した本実施形態の水洗便器1では、ボウル23に給水を行う際に、下記のように動作する。
【0053】
すなわち、給水源である給水管71から出水管40に水が供給されると、出水管40の出水口400から入水口410に向けて水が出される。
【0054】
出水口400から出た水は、遮水板45,44の通水孔450,440を通過して、入水口410へと入り込む。このとき、出水口400から出た水の一部は、水受け壁5によって受けられる場合がある。
【0055】
水受け壁5によって受けられた水は、水受け壁5の表面(右側を向く面)を伝って流れ落ち、突出部90の上面へと至る。突出部90の上面の水は、上面を伝って前側へと流れ、上面の前端部に集中し、自重により落下する。突出部90の上面の前端部から落下して水は、水受け部8によって受けられ、排水孔81を通じて排出される。
【0056】
これにより、本実施形態の水洗便器1では、水受け壁5の下端面520に表面張力により水が付着することを抑制できる。そのため、本実施形態の水洗便器1では、出水口400から出る水の圧力が所定値よりも低い場合に、出水口400から出た水が下端面520に付着した水に衝突して、付着した水が水受け部8の周壁83の外側まで飛散するといった問題が起こりにくい。
【0057】
また、本実施形態の水洗便器1では、突出部90が水受け壁5の下部の下壁部52から出水口400側に突出していることで、突出部90が庇として機能して、出水口400から出た水が水受け壁5の下端面520に至ることも抑制することができる。
【0058】
また、本実施形態の水洗便器1では、突出部90が水受け壁5の下壁部52の前後の端部を除く残りの部分に位置することで、水受け壁5の表面を伝って下端面520まで水が至ることも抑制しやすい。
【0059】
4.変形例
続いて、上述した実施形態の水洗便器1の変形例について説明する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0060】
水付着抑制部9は、水受け壁5の下端面520に表面張力により水が付着することを抑制できる構成であればよく、
図4Bに示す構造に限定されない。
【0061】
例えば、水付着抑制部9は、
図5Aに示す変形例1のように、突出部90の上面が、水平面に対して傾斜した二つの傾斜面で構成されてもよい。変形例1では、突出部90の上面は、前後方向の一部に頂点を有し、頂点よりも前側の部分が前下がりの傾斜面であり、頂点よりも後側の部分が後下がりの傾斜面である。
【0062】
また、水付着抑制部9は、
図5Bに示す変形例2のように、下壁部52から出水口400側に突出した二つの突出部91,92であってもよい。二つの突出部91,92は、前後方向に間隔をおいて位置し、前側の突出部91の上面が、水平面に対して後ろ下がりに傾斜した傾斜面であり、後側の突出部92の上面が、水平面に対して前下がりに傾斜した傾斜面である。変形例2では、水受け壁5の表面に付着した水が、二つの突出部91,92の上面を伝って、二つの突出部91,92の間に集中して落下しやすい。
【0063】
また、水付着抑制部9は、
図5Cに示す変形例3のように、水平面に対して傾くように設けられた、水受け壁5の下端面520であってもよい。変形例3では、水受け壁5の下端面520は、前側の部分ほど下方に位置するように傾斜している。そのため、水受け壁5で受けて、水受け壁5の下端面520へと至った水は、下端面520に沿って前側へと流れて下端面520の前端部に集中して落下しやすい。
【0064】
また、水付着抑制部9は、
図5Dに示す変形例4のように、水受け壁5に設けられた撥水面93であってもよい。変形例4では、水受け壁5の下壁部52の表面(右側を向く面)に、撥水面が設けられている。なお、水受け壁5の下端面520にも撥水面を設けてもよい。撥水面の形成は、周知の適宜手段で行われる。例えば、水受け壁5を成形する際に、下壁部52の表面に微細な凹凸を設けることで、撥水面を形成することができる。また、撥水面の形成は、下壁部52の表面に撥水効果を有する塗料を塗布したり、撥水効果を有するシートを貼り付ける等して行ってもよい。
【0065】
また、
図4Bに示す一実施形態及び
図5AからDに示す水付着抑制部9は、適宜組み合わせ可能である。
【0066】
突出部90,91,92は、水平面に対して傾斜した上面を有するものであればよく、その形状は板状に限定されない。
【0067】
また、突出部90,91,92は、水平面に対して傾斜した上面を有すればよく、突出部90の上面は、前下がり又は後下がりに限らず、右下がり(出水口400に近い部分ほど下方に位置するように傾斜)であってもよい。また、水受け壁5の下端面520も同様に、前下がり又は後下がりに限らず、右下がり又は左下がりであってもよい。
【0068】
また、突出部90,91,92の上面は、平面に限らず、段差を有する面であってもよく、上面に付着した水が上面の下端部に向けて伝って流れるように設けられていればよい。また、水受け壁5の下端面520も同様に、平面に限らず、段差を有する面であってもよい。
【0069】
入水口410の開口面は、出水口400の開口面に対して、互いの中心線が一直線上に位置したが、これに限らない。出水口400から出る水が放物線を描く場合には、入水口410は、放物線上のいずれかの点に位置すればよい。
【0070】
5.まとめ
以上説明した実施形態及びその変形例のように、第一態様の水洗便器(1)は、下記の構成を備える。
【0071】
すなわち、第一態様の水洗便器(1)は、汚物を受けるボウル(23)と、ボウル(23)に水を供給する吐水口(253)と、給水源から供給された水を吐水口(253)に供給する給水路(3)と、を備える。第一態様の水洗便器(1)は更に、給水路(3)に設けられ、給水路(3)において水の逆流を抑制する逆流抑制部(4)を備える。逆流抑制部(4)は、吐水口(253)に通じる入水口(410)と、入水口(410)が一部に設けられた水受け壁(5)と、給水源から送られた水を入水口(410)に向かって出す出水口(400)と、を有する。出水口(400)は、入水口(410)及び水受け壁(5)から離れて位置する。水受け壁(5)のうち、入水口(410)よりも下方の部分には、水受け壁(5)の下端面(520)に水が付着することを抑制する水付着抑制部(9)が設けられている。
【0072】
上記構成を備える第一態様の水洗便器(1)では、出水口(400)から出された水の一部を水受け壁(5)で受けた際に、この水が水受け壁(5)の下端面(520)に付着することを、水付着抑制部(9)によって抑制することができる。そのため、第一態様の水洗便器(1)では、出水口(400)から出された水が、水受け壁(5)の下端面(520)に付着した水に衝突して、この水が飛散することを抑制することができ、つまり、逆流抑制部(4)における水の飛散を抑制することができる。
【0073】
また、上述した実施形態及びその変形例のように、第二態様の水洗便器(1)は、第一態様の水洗便器(1)の構成に加えて、下記の構成を付加的に備える。
【0074】
すなわち、第二態様の水洗便器(1)では、水付着抑制部(9)は、水受け壁(5)から出水口(400)側に突出した突出部(90)であり、突出部(90)の上面は、水平面に対して傾いた傾斜面である。
【0075】
上記構成を備える第二態様の水洗便器(1)では、水受け壁(5)から出水口(400)側に突出した突出部(90)の傾斜した上面によって、水受け壁(5)で受けた水を、上面の下端部へと集中させることができて落下させやすい。
【0076】
また、上述した実施形態及びその変形例のように、第三態様の水洗便器(1)は、第二態様の水洗便器(1)の構成に加えて、下記の構成を付加的に備える。
【0077】
すなわち、第三態様の水洗便器(1)では、逆流抑制部(4)は、水受け壁(5)の周囲を覆うように設けられた覆い壁(43)を更に有する。突出部(90)は、覆い壁(43)から離れて位置する。
【0078】
上記構成を備える第三態様の水洗便器(1)では、出水口(400)から入水口(410)に向かって出され、水受け壁(5)に当たった水が、水受け壁(5)の外側に飛散することを覆い壁(43)によって防ぐことができる。加えて、第三態様の水洗便器(1)では、突出部(90)の上面を伝う水は、突出部(90)と覆い壁(43)の間から落下させることができて、覆い壁(43)が突出部(90)からの水の落下の邪魔にならない。
【0079】
また、上述した実施形態及びその変形例のように、第四態様の水洗便器(1)は、第一から第三のいずれか一つの態様の水洗便器(1)の構成に加えて、下記の構成を付加的に備える。
【0080】
すなわち、第四態様の水洗便器(1)では、水付着抑制部(9)は、水平面に対して傾くように設けられた、水受け壁(5)の下端面(520)である。
【0081】
上記構成を備える第四態様の水洗便器(1)では、水受け壁(5)で受け、水受け壁(5)の下端面(520)に至った水を、下端面(520)の傾斜によって下端面(520)の下部へと集中させることができて落下させやすい。
【0082】
また、上述した実施形態及びその変形例のように、第五態様の水洗便器(1)は、第一から第四のいずれか一つの態様の水洗便器(1)の構成に加えて、下記の構成を付加的に備える。
【0083】
すなわち、第五態様の水洗便器(1)では、水付着抑制部(9)は、水受け壁(5)に設けられた撥水面(93)である。
【0084】
上記構成を備える第五態様の水洗便器(1)では、水受け壁(5)で受けた水を撥水面(93)によって落下させやすい。
【0085】
以上、本開示を添付図面に示す実施形態に基づいて説明したが、本開示は上記の各実施形態に限定されるものではなく、本開示の意図する範囲内であれば、適宜の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0086】
1 水洗便器
23 ボウル
253 吐水口
3 給水路
4 逆流抑制部
400 出水口
410 入水口
5 水受け壁
520 下端面
43 覆い壁
9 水付着抑制部
90 突出部
93 撥水面