(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-21
(45)【発行日】2023-09-29
(54)【発明の名称】イムノクロマト試験片および測定キットおよび測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/543 20060101AFI20230922BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
G01N33/543 521
G01N33/543 525U
G01N33/543 541Z
G01N33/53 B
(21)【出願番号】P 2019564637
(86)(22)【出願日】2018-12-27
(86)【国際出願番号】 JP2018048024
(87)【国際公開番号】W WO2019138898
(87)【国際公開日】2019-07-18
【審査請求日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】P 2018001077
(32)【優先日】2018-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岡本 淳
(72)【発明者】
【氏名】川南 裕
(72)【発明者】
【氏名】平岡 真希子
(72)【発明者】
【氏名】米田 圭三
【審査官】草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/065213(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/094825(WO,A1)
【文献】特開2015-001398(JP,A)
【文献】特開2017-129533(JP,A)
【文献】国際公開第2015/166969(WO,A1)
【文献】特開2015-210167(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)サンプルパッドと、
(2)テストライン検出試薬と、コントロールライン検出試薬とを
担持したコンジュゲーションパッドと、
(3)測定試料中のヘモグロビンまたはヘモグロビンA1cを特異的に捕捉するための抗体Aと、前記コントロールライン検出試薬中の標識物質を特異的に捕捉するための抗体Bとを、それぞれ異なる位置に線状に固定したメンブレンと、
(4)吸収パッドと、から構成され、
前記テストライン検出試薬は、前記測定試料中のヘモグロビンまたはヘモグロビンA1cを捕捉するための抗体Cとセルロース系着色微粒子とブロッキング用タンパク質との複合体であり、
前記コントロールライン検出試薬は、セルロース系着色微粒子と標識物質で化学的に標識されたブロッキング用タンパク質との複合体であり、
前記抗体A
は抗ヘモグロビン抗体
、前記抗体Cは抗ヘモグロビンA1c抗体である、イムノクロマト試験片。
【請求項2】
前記標識物質がビオチンであり、かつ前記抗体Bは抗ビオチン抗体である、請求項1に記載のイムノクロマト試験片。
【請求項3】
前記ブロッキング用タンパク質が微生物由来のBlockingPeptide Fragmentである、請求項1または2に記載のイムノクロマト試験片。
【請求項4】
前記テストライン検出試薬と前記コントロールライン検出試薬が、2:1~50:1の混合比(質量比)で前記コンジュゲーションパッドに
担持されている、請求項1から3のいずれかに記載のイムノクロマト試験片。
【請求項5】
前記セルロース系着色微粒子の色が青または黒である、請求項1から4のいずれかに記載のイムノクロマト試験片。
【請求項6】
前記テストライン検出試薬に用いるセルロース系着色微粒子と前記コントロールライン検出試薬に用いるセルロース系着色微粒子とが実質的に同一である、請求項1から5のいずれかに記載のイムノクロマト試験片。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載のイムノクロマト試験片、測定試料希釈液およびイムノクロマトリーダーからなる、ヘモグロビンA1c量のヘモグロビン量に対する割合を定量するための測定キット。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載のイムノクロマト試験片または測定キットを用い、少なくとも下記工程(i)から(iii)をこの順に経て、測定試料中のヘモグロビンA1c量のヘモグロビン量に対する割合を定量する方法。
工程(i):測定試料と測定試料希釈液とを体積比1:49~1:999で混合し希釈する工程
工程(ii):工程(i)の混合液を、サンプルパッドに点着させる工程
工程(iii):イムノクロマト試験片のテストラインの反射吸光度とコントロールラインの反射吸光度とからヘモグロビンA1c量のヘモグロビン量に対する割合を比色定量する工程
【請求項9】
測定試料と測定試料希釈液とを体積比1:99~1:499で混合し希釈する、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イムノクロマト法による測定試料中のヘモグロビンA1c量のヘモグロビン量に対する割合:ヘモグロビンA1c(%)の測定方法、前記測定方法に用いるイムノクロマト試験片、およびイムノクロマト試験片を含むキットに関する。より詳しくは、イムノクロマト法による測定試料中のヘモグロビンA1c量およびヘモグロビン量をそれぞれ測定することなく、測定試料中のヘモグロビンA1c量のヘモグロビン量に対する割合:ヘモグロビンA1c(%)をイムノクロマト試験片上のラインの反射吸光度から直接定量する測定方法、前記測定方法に用いるイムノクロマト試験片、およびイムノクロマト試験片を含む測定キットおよび測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
世界糖尿病連合(International Diabetes Federation)によると、世界の糖尿病患者数はアメリカ、ヨーロッパなどの先進国に加え、中国、インド、ブラジルなどの新興国を含めて急増しており、2015年で約4.2億人存在し、2040年には約6.4億人に及ぶと予測され、糖尿病診断の重要性は増している。
【0003】
糖尿病診断項目の一つであるヘモグロビンA1c(以下、HbA1cと略すことがある)とは、血液中の酸素を運搬する役割を担うヘモグロビン(以下、Hbと略すことがある)に糖(グルコース)が結合した糖化Hbの内、Hbのβ鎖のN末端側に位置するバリン残基が糖化された物質を指し、総Hb量に対するHbA1c量の割合であるHbA1c(%)が過去1~2ヶ月間の平均血糖値を反映することから、糖尿病の長期的な経過を観察するのに利用されている。
【0004】
従来、HbA1c(%)の測定にはHPLC法、キャピラリー電気泳動法、酵素比色法、免疫比濁法などの測定技術が利用されていたが、これらの測定方法は専門知識を有することや分析装置が大型かつ高額であるなどの理由から、主に大規模病院や多数の検査を行う検査センターで利用されており、小規模病院ではHbA1c(%)を簡単に測定できない点が問題となっていた。
【0005】
近年、医療現場ではPOCTという言葉が注目を集めている。POCTとはPoint Of Care Testingの略であり、医療従事者が被験者の傍らで行う臨床検査のことをいう。POCTは大規模病院の中央検査室等で行う臨床検査とは異なり、その場で瞬時に検査結果が得られることから、糖尿病診断においてもPOCTが広まりつつある。
【0006】
HbA1c(%)の測定を目的としたPOCTの中に、イムノクロマト法を利用した技術が提案されている。イムノクロマト法とは毛細管現象を利用した免疫測定法であり、妊娠検査やインフルエンザ検査などにおいて世界的に普及している。従来のイムノクロマト法は目視判定(定性評価)が一般的であったが、近年、イムノクロマトリーダー等の分析装置を利用して測定試料中に含まれる分析対象物質の量を定量化する技術が開発されつつある。
【0007】
イムノクロマト法を用いて分析対象物質の量を定量する手法の一つとしては、抗原抗体反応を利用したサンドイッチ法が挙げられる。サンドイッチ法では分析対象物質に対してエピトープの異なる2種類の抗体を利用する。一方の抗体は、金コロイド、着色ラテックス粒子、蛍光粒子等の検出粒子と感作した検出抗体として使用する。他方の抗体は、多孔質支持体の表面に線状に固定した捕捉抗体としてテストラインを形成する。加えて、前記検出抗体を特異的に捕捉する抗体を多孔質支持体の表面の、前記テストラインとは異なる位置に線状に固定しコントロールラインを形成する。測定試料中に含まれる分析対象物質は、多孔質支持体の一端(上流側)から展開し、検出抗体と免疫複合体を形成しながら移動し、テストライン上で捕捉抗体と接触して捕捉され発色する。分析対象物質と免疫複合体を形成しなかった遊離の検出試薬はテストライン上を通過し、コントロールラインの抗体に捕捉され発色する。これらの発色強度をイムノクロマトリーダー等の装置を利用することで分析対象物質の量を定量することができる。
【0008】
特許文献1には、保存安定性の向上を目的とした、イムノクロマト法によるHbA1c(%)測定技術が開示されている。しかしながら、前記発明は、分析対象物質であるHbA1cを2種類の抗HbA1c抗体でサンドイッチする構成であるため、測定試料中のHbA1c量を測定することは可能であるものの、HbA1c(%)を測定するには別の手段でHb量を測定する必要があった。また、特許文献2には、生体試料中の検出対象物質の濃度の影響を受けず、コントロールラインの発色強度を安定化できるHbA1c(%)の測定技術が開示されている。しかし、特許文献1および2では、検出粒子として金コロイドまたはラテックス粒子を使用しているため、感度・精度・HPLC法との相関性の観点から十分ではなかった。
【0009】
特許文献3、4には、HbA1cのエピトープであるβ鎖のN末端をタンパク質表面に露出させるための前処理方法の開発を目的とした、イムノクロマト法によるHbA1c(%)測定技術が開示されている。前記発明は、テストラインの反射吸光度(mAbs)からHbA1c(%)を直接定量し得る可能性があるという点では一定の効果が期待される。しかしながら、前記発明は、コントロールラインを立てていないため、精度の観点から十分ではなかった。また、検出粒子として金コロイドまたはラテックス粒子を使用しているため、感度・精度・HPLC法との相関性の観点から十分ではなかった。さらに、検出抗体として抗Hb抗体、捕捉抗体として抗HbA1c抗体を使用しているため、Hb量依存性を完全に回避し得るものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2017-129533号公報
【文献】国際公開公報WO2017/065213
【文献】特開2012-251789号公報
【文献】特開2015-158515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記の問題点に鑑みて、従来技術よりも感度・精度・HPLC法との相関性の高い、イムノクロマト法による測定試料中のHbA1c量のHb量に対する割合:HbA1c(%)の測定方法、および前記測定方法に用いるイムノクロマト試験片、イムノクロマト試験片を含むキットを提供することを課題とするものである。より詳しくは、従来よりも測定試料中のHb量の影響を受けにくい、イムノクロマト法による測定試料中のHbA1c量およびHb量をそれぞれ測定することなく、測定試料中のHbA1c量のHb量に対する割合:HbA1c(%)をメンブレン上のラインの反射吸光度から直接定量する測定方法、および前記測定方法に用いるイムノクロマト試験片、イムノクロマト試験片を含むキットを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、コンジュゲーションパッドに担持するテストライン検出試薬として、抗Hb抗体または抗HbA1c抗体(検出抗体)、セルロース系着色微粒子(検出粒子)、およびブロッキング用タンパク質(ブロッキング剤)を使用し、コンジュゲーションパッドに担持するコントロールライン検出試薬として、セルロース系着色微粒子(検出粒子)、および標識物質で化学的に標識したブロッキング用タンパク質(ブロッキング剤)を使用することで、従来技術よりも感度・精度・HPLC法との相関性が大幅に向上することを見出した。また、ブロッキング用タンパク質にBlocking Peptide Fragment:BPFを使用することで、感度・精度・HPLC法との相関性がさらに向上することを見出した。さらに、コンジュゲーションパッドに担持する抗体(検出抗体)として抗HbA1c抗体、メンブレンに線状に固定する抗体(捕捉抗体)として抗Hb抗体をそれぞれ使用することで、従来技術よりも測定試料中のHb量の影響を受けにくくなることを見出し、本発明を完成させた。
【0013】
すなわち、代表的な本発明は以下の通りである。
1. (1)サンプルパッドと、
(2)テストライン検出試薬と、コントロールライン検出試薬とを坦持したコンジュゲーションパッドと、
(3)測定試料中のヘモグロビンまたはヘモグロビンA1cを特異的に捕捉するための抗体Aと、前記コントロールライン検出試薬中の標識物質を特異的に捕捉するための抗体Bとを、それぞれ異なる位置に線状に固定したメンブレンと、
(4)吸収パッドと、から構成され、
前記テストライン検出試薬は、前記測定試料中のヘモグロビンまたはヘモグロビンA1cを捕捉するための抗体Cとセルロース系着色微粒子とブロッキング用タンパク質との複合体であり、
前記コントロールライン検出試薬は、セルロース系着色微粒子と標識物質で化学的に標識されたブロッキング用タンパク質との複合体である、イムノクロマト試験片。
2. 前記抗体Aは測定試料中のヘモグロビンを特異的に捕捉するための抗体であり、かつ前記抗体Cは抗ヘモグロビンA1c抗体である、1に記載のイムノクロマト試験片。
3. 前記標識物質はビオチンであり、かつ前記抗体Bは抗ビオチン抗体である、1または2に記載のイムノクロマト試験片。
4. 前記ブロッキング用タンパク質が微生物由来のBlocking Peptide Fragmentである、1から3のいずれかに記載のイムノクロマト試験片。
5. 前記テストライン検出試薬と前記コントロールライン検出試薬が、2:1~50:1の混合比(質量比)で、前記コンジュゲーションパッドに坦持されている、1から4のいずれかに記載のイムノクロマト試験片。
6. 前記セルロース系着色微粒子の色が青または黒である、1から5のいずれかに記載のイムノクロマト試験片。
7. 前記テストライン検出試薬に用いるセルロース系着色微粒子と前記コントロールライン検出試薬に用いるセルロース系着色微粒子とが実質的に同一である、1から6のいずれかに記載のイムノクロマト試験片。
8. 1から7のいずれかに記載のイムノクロマト試験片、測定試料希釈液およびイムノクロマトリーダーからなる、ヘモグロビンA1c量のヘモグロビン量に対する割合を定量するための測定キット。
9. 1から8のいずれかに記載のイムノクロマト試験片または測定キットを用い、少なくとも下記工程(i)から(iii)をこの順に経て、測定試料中のヘモグロビンA1c量のヘモグロビン量に対する割合を定量する方法。
工程(i):測定試料と測定試料希釈液とを体積比1:49~1:999で混合し希釈する工程
工程(ii):工程(i)の混合液を、サンプルパッドに点着させる工程
工程(iii):イムノクロマト試験片のテストラインの反射吸光度とコントロールラインの反射吸光度とからヘモグロビンA1c量のヘモグロビン量に対する割合を比色定量する工程
10. 測定試料と測定試料希釈液とを体積比1:99~1:499で混合し希釈する、9に記載の測定方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明のイムノクロマト試験片は特定の抗体、検出粒子、およびブロッキング用タンパク質を、特定の配置で担持させているため、高感度・高精度・HPLC法との高相関性でかつ測定試料中のHb量の影響を受けずに、測定試料中のHbA1c量のHb量に対する割合:HbA1c(%)を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明のイムノクロマト試験片の一例を示す(上面)図である。
【
図2】本発明のイムノクロマト試験片の一例を示す(側面)図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に用いる測定試料は特に限定されないが、例えば、血液、リンパ液、髄液、汗、尿、涙液、唾液、皮膚、粘膜、毛髪等の生体試料が挙げられる。血液においては、全血のほか、血液を遠心分離して得られた血清、血球または血漿を試料とすることができる。また、測定試料はヒト由来に限らず、イヌ、ネコ、ウシ等の哺乳動物由来の生体試料も対象である。また、本発明における測定項目は、測定試料中のHbA1c量のHb量に対する割合:HbA1c(%)である。
【0017】
本発明のイムノクロマト試験片の構成は、イムノクロマト試験片の測定試料溶液の添加部(滴下部)を上流側として、前記添加部を有するサンプルパッド、コンジュゲーションパッド、メンブレン、吸収パッドの順に連接配置されている。次いで、本発明のイムノクロマト試験片の一例を、図面を参照して説明する。
図1および2において、1はサンプルパッド、2はコンジュゲーションパッド、3はメンブレン、4は吸収パッド、5はバッキングシート、6はテストライン、7はコントロールライン、8は粘着シートをそれぞれ示す。
【0018】
図1および2の例では、イムノクロマト試験片は、幅3~5mm(好ましくは、4mm程度)、長さ40~100mm(好ましくは60mm程度)の細長い短冊状の形態をしている。なお、イムノクロマト試験片のメンブレン3の上流側の端部から約15mmの位置に測定試料中のHbまたはHbA1cを特異的に捕捉するための抗体Aを線状に固定したテストライン6が形成される。また、前記端部から約20mmの位置にコントロールライン検出試薬の標識物質を特異的に捕捉するための抗体Bを線状に固定したコントロールライン7が形成される。さらに、イムノクロマト試験片のコンジュゲーションパッド2には測定試料中のHbまたはHbA1cを捕捉するための抗体Cとセルロース系着色微粒子とブロッキング用タンパク質との複合体であるテストライン検出試薬、およびセルロース系着色微粒子と標識物質で化学的に標識したブロッキング用タンパク質との複合体であるコントロールライン検出試薬が坦持されている。
【0019】
本発明で用いるサンプルパッド1の材質は、測定試料を速やかに吸収した後、下流のコンジュゲーションパッド、メンブレン、吸収パッドへ展開できる材質のものであれば、特に限定されないが、例えばセルロース製のろ紙または不織布、ガラス製のろ紙または不織布、ポリエステル製のろ紙または不織布、ポリエチレン製のろ紙または不織布が挙げられる。これらの中でも、セルロース製のろ紙が好ましい。また、前記サンプルパッド1の厚さは、0.1~2.0mmが好ましく、0.2~1.0mmがより好ましい。厚さが薄いと、下流での測定試料の流れが不均一となり測定精度が低下することがある。一方、厚さが厚いと、下流への展開が遅くなり測定時間が長くなることがある。また、下流への展開に必要となる測定試料の必要量が多くなる。
【0020】
本発明で用いるコンジュゲーションパッド2の材質は、テストライン検出試薬およびコントロールライン検出試薬を乾燥状態で保持でき、かつ測定試料の下流への展開と共に前記両検出試薬を速やかに放出することができる材質のものであれば、特に限定されないが、例えばセルロース製のろ紙または不織布、ガラス製のろ紙または不織布、ポリエステル製のろ紙または不織布、ポリエチレン製のろ紙または不織布が挙げられる。これらの中でも、ガラス製のろ紙が好ましい。また、前記コンジュゲーションパッド2の厚さは、0.1~2.0mmが好ましく、0.2~1.0mmがより好ましい。厚さが薄いと、目的量のテストライン検出試薬およびコントロールライン検出試薬を乾燥状態で保持できないことがある。一方、厚さが厚いと、下流への展開が遅くなり測定時間が長くなることがある。また、下流への展開に必要となる測定試料の必要量が多くなる。
【0021】
本発明で用いるメンブレン3の材質は、測定試料を精度よく均一に展開できるものであれば、特に限定されないが、例えばセルロース、セルロース誘導体、ニトロセルロース、酢酸セルロース、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、またはナイロン製のメンブレンが挙げられる。これらの中でも、ニトロセルロース製のメンブレンが好ましい。
【0022】
本発明で用いる吸収パッド4の材質は、上流より展開してきた測定試料を速やかに吸収した後、逆流しないよう保持できる材質のものであれば、特に限定されないが、例えばセルロース製のろ紙または不織布、ガラス製のろ紙または不織布、ポリエステル製のろ紙または不織布、ポリエチレン製のろ紙または不織布が挙げられる。これらの中でも、セルロース製のろ紙が好ましい。また、前記吸収パッド4の厚さは、0.2~5.0mmが好ましく、0.5~2.0mmがより好ましい。厚さが薄いと、測定試料の滴下量によっては一度吸収パッドに吸収された測定試料がメンブレン側に逆流することがある。一方、厚さが厚いと、イムノクロマト試験片およびイムノクロマト試験片を覆うハウジングケースのサイズも大きくなり、POCTの観点から好ましくない。
【0023】
本発明で用いるコンジュゲーションパッド2に担持するテストライン検出試薬は、検出抗体としての測定試料中のHbまたはHbA1cを捕捉するための抗体Cと、検出粒子としてのセルロース系着色微粒子と、ブロッキング剤としてのブロッキング用タンパク質との複合体である。なお、使用する検出粒子や目的とする性能によって、最適なブロッキング剤は異なるため、本発明の目的である高感度・高精度・HPLC法との高相関性でかつ測定試料中のHb量の影響を受けずに、測定試料中のHbA1c量のHb量に対する割合:HbA1c(%)を測定するためには、検出粒子とブロッキング剤の組合せの最適化が必要である。
【0024】
前記抗体Cは、抗Hb抗体または抗HbA1c抗体であり、抗HbA1c抗体が好ましい。なお、後述の抗体Aが抗Hb抗体のとき抗体Cは抗HbA1c抗体であり、抗体Aが抗HbA1c抗体であるとき抗体Cは抗Hb抗体である必要がある。抗体Aおよび抗体Cが共に抗Hb抗体つまり抗Hb抗体でサンドイッチする構成では、測定試料中のHbA1cを捕捉・検出することはできず、HbA1c(%)の測定は不可能である。一方、抗体Aおよび抗体Cが共に抗HbA1c抗体、つまり抗HbA1c抗体でサンドイッチする構成では、Hb量により測定結果(補正値)が大きく変動するため、別の手段でHb量を測定する必要がある。つまり、メンブレン上のラインの反射吸光度からHbA1c(%)を直接定量することはできない。なお、抗Hb抗体または抗HbA1c抗体は、市販品を用いてもよいし、別途公知の方法で製造してもよい。また、モノクローナル抗体でもポリクローナル抗体でもよく、分子サイズも特に限定されない。
【0025】
前記セルロース系着色微粒子は、大量の水酸基を有するため、多くの反応性染料を共有結合により保持することができるだけでなく、濃染化した後も水などへの安定分散性を保持することができる。セルロース系着色微粒子として、再生セルロース、精製セルロース、天然セルロース等を用いることができるし、一部誘導体化されたセルロースを用いてもよい。前記セルロース系着色微粒子の質量の20~90wt%はセルロース由来であることが好ましく、20~80wt%がより好ましく、20~70wt%がさらに好ましい。
【0026】
前記セルロース系着色微粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、100~1000nmが好ましく、200~800nmがより好ましい。平均粒子径が1000nmより大きいと、下流への展開が遅くなり、測定時間が長くなる。また、メンブレン上に捕捉されやすくなり、バックグラウンド自体が発色してしまうことでテストラインおよびコントロールラインでの発色が不明瞭になる。一方、平均粒子径が小さいと、物理吸着または化学結合できる抗体量が低下し、測定感度が低下することがある。
【0027】
前記セルロース系着色微粒子の色は、特に限定されないが、例えば赤色、青色、黄色、緑色、黒色、白色、蛍光色が挙げられる。これらの中でも、バックグラウンドのHb由来の赤色の影響を受けにくい青色、黒色が好ましく、青色がより好ましい。このようなセルロース系着色微粒子としては、旭化成社製の着色セルロースナノビーズ(NanoAct(登録商標))が挙げられるが、この中でもNavy(BL1)、Dark Navy(BL2)、Black(KR1)が好ましく、Navy(BL1)、Dark Navy(BL2)がより好ましい。
【0028】
前記セルロース系着色微粒子への前記抗体Cの結合量は、セルロース系着色微粒子と抗体Cの仕込み質量比を調整することで制御でき、特に限定されないが、セルロース系着色微粒子と抗体Cとの仕込み質量比は1:0.01~1:1が好ましく、1:0.02~1:0.5がより好ましく、1:0.02~1:0.2がさらに好ましい。質量比が前記範囲を外れると、セルロース系着色微粒子への抗体Cの結合量が不十分となるとか、セルロース系着色微粒子への抗体Cの結合量が増えすぎ、抗原抗体反応に寄与しない抗体Cが増えるため、測定感度が低下することがある。
【0029】
前記ブロッキング用タンパク質は、特に限定されないが、微生物由来タンパク質のBlocking Peptide Fragment(以下、BPFと略すことがある)、動物由来タンパク質のウシ血清アルブミン(以下、BSAと略すことがある)、カゼインが好ましく、微生物由来タンパク質のBPFがより好ましい。BPF(約22kDa)はBSA(約66kDa)よりも分子量が小さいため、より高精度の測定が可能である。また、BSAはウシ由来であるため外来性物質に起因する汚染のリスクがあるが、BPFは微生物由来であるため前記リスクはない。一方、カゼインの溶解にはアルカリ条件(pH8.5~10)のホウ酸緩衝液を使用する必要があるため、抗体が失活し感度が低下することがある。また、ホウ酸緩衝液は環境リスクも高い。一方、BPFの溶解には中性条件のトリス、リン酸、PIPES等を使用することができるため好ましい。ブロッキング用タンパク質は、市販品を用いてもよいし、別途公知の方法で製造してもよい。また、分子サイズも、特に限定されないが、平均分子量で100kDa以下が好ましい。一般的にブロッキング用タンパク質の分子サイズが小さいほど検出粒子1粒子に対するブロッキング用タンパク質の結合量は増加するので、測定精度の向上に寄与する。
【0030】
前記抗体Cと前記セルロース系着色微粒子との結合方法は、特に限定されないが、疎水結合による物理吸着または共有結合による化学結合で感作するのが好ましく、操作が簡便でありかつコストも安い物理吸着がより好ましい。なお、感作効率を向上させるため、セルロース系着色微粒子に反応性活性基を導入してもよい。反応性活性基としては、特に限定されないが、例えばカルボキシル基、アミノ基、アルデヒド基、チオール基、エポキシ基、水酸基が挙げられる。これらの中でも、カルボキシル基、アミノ基が好ましい。カルボキシル基の場合は、カルボジイミドを用いてリガンドのアミノ基と共有結合を形成することができる。
【0031】
本発明で用いるコンジュゲーションパッド2に担持するコントロールライン検出試薬は、検出粒子としてのセルロース系着色微粒子と、標識としての標識物質で化学的に標識したブロッキング用タンパク質との複合体である。なお、使用する検出粒子や目的とする性能によって、最適なブロッキング剤は異なるため、本発明の目的である高感度・高精度・HPLC法との高相関性でかつ測定試料中のHb量の影響を受けずに、測定試料中のHbA1c量のHb量に対する割合:HbA1c(%)を測定するためには、検出粒子とブロッキング剤の組合せの最適化が必要である。
【0032】
前記テストライン検出試薬のセルロース系着色微粒子の平均粒子径と、前記コントロールライン検出試薬のセルロース系着色微粒子の平均粒子径とは、実質的に同一であることが好ましい。ここで、実質的に同一であるとは、平均粒子径が±50nm以内であることを意味する。両者の平均粒子径が異なると、下流への展開速度や発色強度に差異が生じ、コントロールラインによるテストラインの補正がうまく機能せず、測定精度が低下することがある。
【0033】
前記テストライン検出試薬のセルロース系着色微粒子の色と、前記コントロールライン検出試薬のセルロース系着色微粒子の色とは、実質的に同一であることが好ましい。ここで、実質的に同一であるとは、最大吸光波長が±20nm以内であることを意味する。両者の色が異なると、例えば一般的な発光ダイオード(以下、LEDと略すことがある)-フォトダイオード(以下、PDと略すことがある)の測定装置で測定する場合に、テストラインとコントロールラインの各色に対応する複数のLED-PDの組み合わせが必要となり、装置が大型化する。
【0034】
前記標識物質で化学的に標識したブロッキング用タンパク質における標識は、特に限定されないが、比較的安価で、入手し易いことやタンパク質標識分野等で実績があることから、ビオチンまたはジゴキシゲニンが好ましく、ビオチンがより好ましい。
【0035】
前記標識物質で化学的に標識したブロッキング用タンパク質の標識方法は、化学反応により共有結合を形成するものであれば特に限定されないが、N-ヒドロキシスクシンイミド法を例示できる。N-ヒドロキシスクシンイミド法を用いることで、例えばビオチンのカルボキシル基をN-ヒドロキシアミン系化合物と脱水縮合剤存在下で縮合反応し、選択的に活性化し、ブロッキング用タンパク質のアミノ基とアミド結合を介して標識することができる。前記縮合反応に使用するN-ヒドロキシアミン系化合物は、特に限定されないが、例えばN-ヒドロキシスクシンイミド、N-ヒドロキシノルボルネン-2,3-ジカルボン酸イミド、2-ヒドロキシイミノ-2-シアノ酢酸エチルエステル、2-ヒドロキシイミノ-2-シアノ酢酸アミド、N-ヒドロキシピペリジン、N-ヒドロキシフタルイミド、N-ヒドロキシイミダゾール、N-ヒドロキシマレイミド等が挙げられる。これら化合物を2種以上用いてもよい。これらの中でも、N-ヒドロキシスクシンイミド(以下、NHSと略すことがある)が、比較的安価で、入手し易いことやペプチド合成分野等で実績があることから好ましい。また、前記縮合反応に使用する脱水縮合剤としては、特に限定されないが、例えば1-エチル-3-ジメチルアミノプロピルカルボジイミド塩酸塩、1-シクロヘキシル-(2-モルホニル-4-エチル)-カルボジイミド・メソp-トルエンスルホネートが挙げられる。これらの中でも、1-エチル-3-ジメチルアミノプロピルカルボジイミド塩酸塩(以下、EDCと略すことがある)がペプチド合成分野等で汎用的な水溶性縮合剤として実績があることから好ましい。また、反応温度は、特に限定されないが、10~50℃が好ましく、20~40℃がより好ましい。反応時間は反応温度によって異なるが、通常は5分~24時間である。なお、反応液中に含まれる未反応のN-ヒドロキシアミン系化合物や脱水縮合剤は濾過や遠心分離などにより水溶媒から容易に分離することができる。
【0036】
前記標識物質で化学的に標識したブロッキング用タンパク質におけるブロッキング用タンパク質は、特に限定されないが、微生物由来タンパク質のBlocking Peptide Fragment(以下、BPFと略すことがある)、動物由来タンパク質のウシ血清アルブミン(以下、BSAと略すことがある)、カゼインが好ましく、微生物由来タンパク質のBPFがより好ましい。BPF(約22kDa)はBSA(約66kDa)よりも分子量が小さいため、より高感度の測定が可能である。また、BSAはウシ由来であるため外来性物質に起因する汚染のリスクがあるが、BPFは微生物由来であるため前記リスクはない。一方、カゼインの溶解にはアルカリ条件(pH8.5~10)のホウ酸緩衝液を使用する必要があるが、ホウ酸緩衝液は環境リスクが高い。一方、BPFの溶解には中性条件のトリス、リン酸、PIPES等を使用することができるため好ましい。ブロッキング用タンパク質は、市販品を用いてもよいし、別途公知の方法で製造してもよい。また、分子サイズも、特に限定されないが、平均分子量で100kDa以下が好ましい。一般的にブロッキング用タンパク質の分子サイズが小さいほど検出粒子1粒子に対するブロッキング用タンパク質の結合量は増加するので、測定感度の向上に寄与する。
【0037】
前記テストライン検出試薬のブロッキング用タンパク質と、前記コントロールライン検出試薬のブロッキング用タンパク質とは、製造プロセスの簡略化の観点から、実質的に同一であることが好ましい。
【0038】
前記標識物質で化学的に標識したブロッキング用タンパク質における標識の導入量は、ブロッキング用タンパク質と標識の仕込みのモル比(以下、導入比と略すことがある)を調整することで制御でき、特に限定されないが、導入比は1:1~1:100が好ましく、1:1~1:50がより好ましい。導入比が1:1より小さいと、標識の導入量が不十分となり、測定感度が低下することがある。一方、導入比が1:100より大きいと、標識の導入量が過剰となり、コントロールラインでの非特異発色等により、コントロールラインによるテストラインの補正がうまく機能せず、測定精度が低下することがある。
【0039】
前記セルロース系着色微粒子への前記標識物質で化学的に標識したブロッキング用タンパク質の結合量は、セルロース系着色微粒子と標識物質で化学的に標識したブロッキング用タンパク質の仕込みの質量比を調整することで制御でき、特に限定されないが、標識物質で化学的に標識したブロッキング用タンパク質を、通常のブロッキング剤としても機能させるには、セルロース系着色微粒子に対し、標識物質で化学的に標識したブロッキング用タンパク質が大過剰に存在するのが好ましい。具体的には、セルロース系着色微粒子と標識物質で化学的に標識したブロッキング用タンパク質との仕込みの質量比は1:100以上が好ましい。つまり、前記コントロールライン検出試薬には、標識物質で化学的に標識していないブロッキング用タンパク質を含まないのが好ましい。
【0040】
前記テストライン検出試薬と前記コントロールライン検出試薬は、2:1~50:1の混合比(質量比)でコンジュゲーションパッドに担持させるのが好ましく、3:1~30:1がより好ましく、6:1~15:1がさらに好ましい。混合比が前記範囲を外れると、テストライン検出試薬の量が相対的に低くなるとか、コントロールライン検出試薬の量が相対的に低くなるため、コントロールラインによるテストラインの補正がうまく機能せず、測定精度が低下することがある。
【0041】
コンジュゲーションパッド2に前記テストライン検出試薬と前記コントロールライン検出試薬を担持させる方法は、特に限定されないが、例えば前記テストライン検出試薬と前記コントロールライン検出試薬を一定比率で混合した後、前記混合液をコンジュゲーションパッドに均一に塗布、噴霧または含浸した後、恒温槽内で適当な温度で一定時間乾燥することで作製することができる。前記混合液の塗布量は、特に限定されないが、ライン長1cm辺り5~50μLが好ましい。また、前記混合液の(抗体Cまたは標識物質で化学的に標識したブロッキング用タンパク質で感作済みの)セルロース系着色微粒子濃度は、特に限定されないが、0.01~0.5wt%が好ましく、0.02~0.2wt%がより好ましく、0.02~0.1wt%がさらに好ましい。濃度が0.01wt%より低いと、HbおよびHbA1cを十分捕捉・検出することができず、測定感度が低下することがある。一方、濃度が0.5wt%より高くても、測定感度の向上は見られず、コストだけが高くなる。次いで、前記塗布後に乾燥するのが好ましい。乾燥温度は、特に限定されないが、20℃~80℃が好ましく、20℃~60℃がより好ましい。乾燥時間は乾燥温度によって異なるが、通常は5~120分間である。
【0042】
本発明で用いるメンブレン3上のテストライン6を形成する線状に固定した捕捉抗体は、測定試料中のHbまたはHbA1cを捕捉するための抗体Aである。前記抗体Aは、抗Hb抗体または抗HbA1c抗体であり、抗Hb抗体が好ましい。なお、前述の抗体Cが抗HbA1c抗体のとき抗体Aは抗体Hb抗体であり、抗体Cが抗Hb抗体であるとき抗体Aは抗HbA1c抗体である必要がある。抗体Aおよび抗体Cが共に抗Hb抗体、つまり抗Hb抗体でサンドイッチする構成では、測定試料中のHbA1cを捕捉・検出することはできず、HbA1c(%)の測定は不可能である。一方、抗体Aおよび抗体Cが共に抗HbA1c抗体、つまり抗HbA1c抗体でサンドイッチする構成では、Hb量により測定結果(補正値)が大きく変動するため、別の手段でHb量を測定する必要がある。つまり、メンブレン上のラインの反射吸光度からHbA1c(%)を直接定量することはできない。なお、抗Hb抗体または抗HbA1c抗体は、市販品を用いてもよいし、別途公知の方法で製造してもよい。また、モノクローナル抗体でもポリクローナル抗体でもよいし、分子サイズも特に限定されない。
【0043】
本発明で用いるメンブレン3上のコントロールライン7を形成する線状に固定した捕捉抗体は、コントロールライン検出試薬の標識物質を特異的に捕捉するための抗体Bである。前記抗体Bは、標識物質がビオチンの場合は抗ビオチン抗体であり、標識物質がジゴキシゲニンの場合は、抗ジゴキシゲニン抗体である。なお、抗ビオチン抗体または抗ジゴキシゲニン抗体は、市販品を用いてもよいし、別途公知の方法で製造してもよい。また、モノクローナル抗体でもポリクローナル抗体でもよいし、分子サイズも特に限定されない。
【0044】
メンブレン3に前記テストラインを形成する捕捉抗体と前記コントロールラインを形成する捕捉抗体を線状に固定する方法は、特に限定されないが、例えば前記テストラインを形成する捕捉抗体と前記コントロールラインを形成する捕捉抗体を、それぞれ線上に一定量を異なる位置に塗布した後、恒温槽内で適当な温度で一定時間乾燥することで作製することができる。前記両捕捉抗体の塗布量は、特に限定されないが、ライン長1cm辺り0.1~2μLが好ましい。また、前記両捕捉抗体の塗布濃度は、特に限定されないが、0.1~10mg/mLが好ましく、0.2~5mg/mLがより好ましく、0.5~2mg/mLがさらに好ましい。濃度が低いと、HbおよびHbA1cを十分捕捉・検出することができず、測定感度が低下することがある。一方、濃度を高くしても、測定感度の向上は見られず、コストだけが高くなる。次いで、前記塗布後に乾燥するのが好ましい。乾燥温度は、特に限定されないが、20℃~80℃が好ましく、20℃~60℃がより好ましい。乾燥時間は乾燥温度によって異なるが、通常は5~120分間である。
【0045】
本発明のイムノクロマト試験片は、前記作製したメンブレン3を粘着シート8の中央付近に貼り付け、次いでコンジュゲーションパッド2をメンブレン3の一方の末端上に一部重ね合わせて貼り付け、次いでサンプルパッド1をコンジュゲーションパッド2のメンブレン3との重なりとは逆の末端上に一部重ね合わせて貼り付け、次いで吸収パッド4をメンブレン3の他方の末端上に一部重ね合わせて貼り付けた後、一定幅の短冊状に切断することで作製することができる。なお、テストライン6およびコントロールライン7は試験片を作製した後に調製してもよいし、試験片を作製する前に調製してもよい。
【0046】
本発明において、イムノクロマト測定キットは、イムノクロマト試験片に加え、測定試料を前処理および/または希釈するための測定試料希釈液、およびイムノクロマトリーダーを含むのが好ましい。
【0047】
前記測定試料希釈液は、測定試料の展開性を向上させかつ免疫反応に影響しないノニオン性界面活性剤を含むことが好ましい。前記ノニオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(Triton(登録商標)系界面活性剤等)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(Brij(登録商標)系界面活性剤等)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(Tween(登録商標)系界面活性剤等)、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アルキルグルコシド、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。また、前記界面活性剤は単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。ノニオン性界面活性剤の濃度としては、0.01wt%~5.0wt%が好ましく、0.05wt%~4.0wt%がより好ましく、0.1wt%~3.0wt%がさらに好ましい。濃度が低いと、下流への展開が困難となることがある。また、展開が不均一となり測定精度が低下することがある。一方、濃度が高いと、物理的に吸着している、検出粒子と抗体、および/またはメンブレンと抗体が乖離し、測定値が得られないことがある。
【0048】
前記測定試料希釈液は、無機塩類やpH調整に用いる緩衝剤を添加しても良い。前記緩衝剤としては、目的とするpH範囲において充分な緩衝能力を有していれば、いかなる種類の緩衝剤を用いてもよく、例えば、トリス、リン酸、フタル酸、クエン酸、マレイン酸、コハク酸、シュウ酸、ホウ酸、酒石酸、酢酸、炭酸、グッドバッファー(MES、ADA、PIPES、ACES、コラミン塩酸、BES、TES、HEPES、アセトアミドグリシン、トリシン、グリシンアミド、ビシン)が挙げられる。これらの中でも、本発明に用いる抗体の至適pH範囲である7.0付近において充分な緩衝能力を有する等の理由から、トリス、リン酸、MES、PIPES、TES、HEPESが好ましく、トリス、リン酸、PIPESがより好ましい。
【0049】
前記測定試料希釈液による測定試料の希釈倍率は、特に限定されないが、50~1000倍希釈が好ましく、100~500倍希釈がより好ましい。測定試料の希釈倍率が低く濃度が高いと、下流への展開が困難になることがある。また、測定試料中の共雑物質の影響も受けやすくなり、測定精度が低下することがある。一方、測定試料の希釈倍率が高く濃度が低いと、測定試料中のHbおよびHbA1cの濃度が低下し、測定感度が低下することがある。
【0050】
前記イムノクロマト試験片は、少なくともサンプルパッド1上に測定試料を滴下するための第一の開口部、メンブレン3上にテストライン6とコントロールライン7を測定するための第二の開口部を有する適当なプラスチック製のハウジングケースに収容されたものでも良い。
【0051】
本発明のイムノクロマト試験片を用いてメンブレン上でHbA1c(%)の測定を行う方法は、特に限定されないが、以下の方法が例示できる。初めに、測定試料と測定試料希釈液とを所定の希釈倍率で混合することで展開可能な希釈測定試料を得る。次いで、前記希釈測定試料をサンプルパッド1に滴下することで、希釈測定試料は毛細管現象によりサンプルパッド1を通過してコンジュゲーションパッド2に展開する。その際、希釈測定試料はコンジュゲーションパッド2に坦持されたテストライン検出試薬およびコントロールライン検出試薬を溶解しながら、希釈測定試料中のHbA1cとテストライン検出試薬中の抗HbA1c抗体で感作したセルロース系着色微粒子とが免疫複合体を形成する。なお、希釈測定試料中のHbA1c以外のHb(例えば、HbA0等)はテストライン検出試薬とは免疫複合体を形成しない。次いで、前記希釈測定試料はメンブレン3に展開する。希釈測定試料がテストライン6に到達すると、前記免疫複合体はテストラインを形成する捕捉抗体(抗Hb抗体)で捕捉されて集積し、テストライン6が発色する。なお、希釈測定試料中のHbA1c以外のHb(例えば、HbA0等)もテストラインを形成する捕捉抗体(抗Hb抗体)で捕捉されて集積するため、テストライン上では免疫複合体とHbA1c以外のHb(例えば、HbA0等)との競合的な捕捉が生じ、捕捉される確率は測定試料中のHbA1c量のHb量に対する割合:HbA1c(%)に依存する。つまり、テストラインの発色強度から、HbA1c(%)を直接測定することが可能となる。その後、前記希釈測定試料がコントロールライン7に到達すると、コントロールライン検出試薬中の標識物質(ビオチン)で化学的に標識したブロッキング用タンパク質で感作したセルロース系着色微粒子はコントロールラインを形成する捕捉抗体(抗ビオチン抗体)で捕捉されて集積し、コントロールライン7が発色する。最後に、前記希釈測定試料は吸収パッド4で吸収される。
【0052】
前記HbA1c(%)はテストラインの発色強度から直接測定してもよいし、希釈測定試料の流動斑を考慮し、テストラインの発色強度をコントロールラインの発色強度で割り算した補正値から測定してもよい。
【0053】
本発明のイムノクロマト試験片を用いたHbA1c(%)の測定原理は、前述の通り、テストライン上での免疫複合体とHbA1c以外のHb(例えば、HbA0等)との競合的な捕捉によるものであるため、希釈測定試料中の総Hb量が、テストラインを形成する捕捉抗体(抗Hb抗体)の量より十分多い必要がある。具体的には、希釈測定試料中の総Hbとテストラインを形成する捕捉抗体(抗Hb抗体)のモル比は、5:1~2000:1が好ましく、10:1~1500:1がより好ましく、20:1~1000:1がさらに好ましい。モル比が小さいと、Hb量により測定結果(補正値)が大きく変動するため、別の手段でHb量を測定する必要が生じることがある。つまり、メンブレン上のラインの反射吸光度からHbA1c(%)を直接定量することができないことがある。一方、モル比が大きいと、テストラインが薄くなり、測定感度が低下することがある。
【0054】
本発明のイムノクロマト試験片のテストラインおよびコントロールラインの測定方法は、特に限定されず、市販のイムノクロマトリーダーを用いてもよいし、別途公知の方法でイムノクロマトリーダーを製造してもよい。検出系としては、特に限定されないが、例えばLED-FD、LED-CMOS、LED-CCDを使用することができる。
【実施例】
【0055】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例で記載するHbA1c(%)は全てNGSP値である。
【0056】
(実施例1)
(1)HbA1c測定用テストライン検出試薬の調製
8.57mg/mLの抗HbA1cモノクローナル抗体(HbA1c Antibody、OAMA02329、AVIVA SYSTEM BIOLOGY社製)を蒸留水(大塚蒸留水、大塚製薬社製)で1.0mg/mLに調製した。次いで、1.0wt%のセルロース系着色微粒子(NanoAct(登録商標)、BL2:Dark Navy、平均粒子径365nm、旭化成社製)100μL、10mMのトリス緩衝液(204-07885、和光純薬工業社製)(pH7.0)900μL、および前記1.0mg/mL(0.1wt%)の抗HbA1cモノクローナル抗体100μLを15mLの遠沈管に加え、ボルテックスで撹拌した。次いで、37℃に調整した低温インキュベーター(IN604、ヤマト科学社製)に入れ120分間静置した。次いで、1.0wt%のBlocking Peptide Fragment:BPF(BPF-301、東洋紡社製)、10mMのトリス緩衝液(204-07885、和光純薬工業社製)からなるブロッキング液(pH7.0)12mLを加え、さらに37℃に調整した低温インキュベーター(IN604、ヤマト科学社製)で60分間静置した。次いで、遠心分離機(MX-307、トミー精工社製)とラックインローター(TMA-300、トミー精工社製)とラック(AR510-04、トミー精工社製)を用い、10,000×gの遠心を25℃で15分間行い、抗体感作セルロース系着色微粒子を沈降させた後に上澄みを除去した。次いで、10mMのトリス緩衝液(204-07885、和光純薬工業社製)からなる洗浄液(pH7.0)12mLを加え、超音波分散機(UH-50、エスエムテー社製)で10秒間処理した。次いで、遠心分離機(MX-307、トミー精工社製)とラックインローター(TMA-300、トミー精工社製)とラック(AR510-04、トミー精工社製)を用い、10,000×gの遠心を25℃で15分間行い、抗体感作セルロース系着色微粒子を沈降させた後に上澄みを除去した。次いで、15wt%のスクロース(196-00015、和光純薬工業社製)、0.2%のBlocking Peptide Fragment:BPF(BPF-301、東洋紡社製)、10mMのトリス緩衝液(204-07885、和光純薬工業社製)からなる塗布液(pH7.0)2.0mLを加え、超音波分散機(UH-50、エスエムテー社製)で10秒間処理し、HbA1c測定用テストライン検出試薬を得た。なお、前記HbA1c測定用テストライン検出試薬中の検出粒子濃度は0.5mg/mL(0.05wt%)、抗体濃度は0.05mg/mL(0.005wt%)であった。
【0057】
(2)HbA1c測定用コントロールライン検出試薬の調製
Dビオチン(04822-91、ナカライテスク社製)16mg、およびジメチルスルホキシド:DMSO(08904-14、ナカライテスク社製)1000μLを1.5mLマイクロチューブに加え、ボルテックスで撹拌し、Dビオチン溶液を得た。次いで、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩:EDC(15022-86、ナカライテスク社製)20mg、N-ヒドロキシスクシンイミド:NHS(18948-02、ナカライテスク社製)20mg、および蒸留水(大塚蒸留水、大塚製薬社製)100μLを1.5mLマイクロチューブに加え、ボルテックスで撹拌し、EDC/NHS溶液を得た。次いで、前記Dビオチン溶液100μLおよび前記EDC/NHS溶液100μLを混合した後、25℃に調整した低温インキュベーター(IN604、ヤマト科学社製)に入れ15分間静置し、Dビオチン/EDC/NHS溶液を得た。次いで、Blocking Peptide Fragment:BPF(BPF-301、東洋紡社製)10mg、および蒸留水(大塚蒸留水、大塚製薬社製)100μLを1.5mLマイクロチューブに加え、ボルテックスで撹拌し、BPF溶液を得た。次いで、前記Dビオチン/EDC/NHS溶液100μLと前記BPF溶液100μLを混合した後、25℃に調整した低温インキュベーター(IN604、ヤマト科学社製)に入れ30分間静置し、Dビオチン-BPF溶液を得た。次いで、1.0wt%のセルロース系着色微粒子(NanoAct(登録商標)、BL2:Dark Navy、平均粒子径365nm、旭化成社製)100μL、10mMのトリス緩衝液(204-07885、和光純薬工業社製)(pH7.0)900μL、および前記Dビオチンン-BPF溶液100μLを15mLの遠沈管に加え、ボルテックスで撹拌した。次いで、37℃に調整した低温インキュベーター(IN604、ヤマト科学社製)に入れ120分間静置した。次いで、1.0wt%のBlocking Peptide Fragment:BPF(BPF-301、東洋紡社製)、10mMのトリス緩衝液(204-07885、和光純薬工業社製)からなるブロッキング液(pH7.0)12mLを加え、さらに37℃に調整した低温インキュベーター(IN604、ヤマト科学社製)で60分間静置した。次いで、遠心分離機(MX-307、トミー精工社製)とラックインローター(TMA-300、トミー精工社製)とラック(AR510-04、トミー精工社製)を用い、10,000×gの遠心を25℃で15分間行い、Dビオチン感作セルロース系着色微粒子を沈降させた後に上澄みを除去した。次いで、10mMのトリス緩衝液(204-07885、和光純薬工業社製)からなる洗浄液(pH7.0)12mLを加え、超音波分散機(UH-50、エスエムテー社製)で10秒間処理した。次いで、遠心分離機(MX-307、トミー精工社製)とラックインローター(TMA-300、トミー精工社製)とラック(AR510-04、トミー精工社製)を用い、10,000×gの遠心を25℃で15分間行い、Dビオチン感作セルロース系着色微粒子を沈降させた後に上澄みを除去した。次いで、15wt%のスクロース(196-00015、和光純薬工業社製)、0.2%のBlocking Peptide Fragment:BPF(BPF-301、東洋紡社製)、10mMのトリス緩衝液(204-07885、和光純薬工業社製)からなる塗布液(pH7.0)2.0mLを加え、超音波分散機(UH-50、エスエムテー社製)で10秒間処理し、HbA1c測定用コントロールライン検出試薬を得た。なお、前記HbA1c測定用コントロールライン検出試薬中の検出粒子濃度は0.5mg/mL(0.05wt%)、ブロッキング用タンパク質の標識導入比は1:7であった。
【0058】
(3)HbA1c測定用メンブレンカードの作製
3.6mg/mLの抗Hbモノクローナル抗体(HBA1 Antibody、OAMA02326、AVIVA SYSTEM BIOLOGY社製)を蒸留水(大塚蒸留水、大塚製薬社製)で1.0mg/mLに調製した。次いで、1.0mg/mLの抗ビオチンポリクローナル抗体(Biotin Antibody、A150-111A、BETHYL社製)を蒸留水(大塚蒸留水、大塚製薬社製)で0.5mg/mLに調製した。次いで、上流側に20mm×300mmの粘着テープ部、中央に25mm×300mmのメンブレン部、下流側に15mm×300mmの粘着テープ部から構成される60mm×300mmのメンブレンカード(Hi-Flow Plus 120 Membrane Cards、HF120、Millipore社製)のメンブレン部の上流側から15mmの位置に、分注プラットフォーム(XYZ3060、BIODOT社製)と、Bio Jetノズル(BHQHR-XYZ、BIODOT社製)を用い、前記1.0mg/mLの抗Hbモノクローナル抗体を1.0μL/cmの塗布量で塗布した後、45℃に調整した乾燥機(WFO-510、東京理化器械社製)で30分間乾燥し、ライン幅約1mmのテストラインを形成した。さらに、前記テストラインを形成したメンブレンカードのメンブレン部の上流側から20mmの位置に、分注プラットフォーム(XYZ3060、BIODOT社製)と、Bio Jetノズル(BHQHR-XYZ、BIODOT社製)を用い、前記0.5mg/mLの抗ビオチンポリクローナル抗体を1.0μL/cmの塗布量で塗布した後、45℃に調整した乾燥機(WFO-510、東京理化器械社製)で30分間乾燥し、ライン幅約1mmのコントロールラインを形成することで、HbA1c測定用メンブレンカードを得た。
【0059】
(4)HbA1c測定用コンジュゲーションパッドの作製
前記HbA1c測定用テストライン検出試薬および前記HbA1c測定用コントロールライン検出試薬を、6:1の割合(質量比)で混合した。なお、HbA1c測定用テストライン検出試薬およびHbA1c測定用コントロールライン検出試薬中の粒子濃度が同一である場合は、体積比6:1の割合で混合すればよい。次いで、10mm×300mmのコンジュゲーションパッド(GLASSFIBER DIAGNOSTIC PAD、GFDX001050、Millipore社製)の全面に、分注プラットフォーム(XYZ3060、BIODOT社製)と、Air Jetノズル(AJQHR-XYZ、BIODOT社製)を用い、前記混合液を15μL/cmの塗布量で均一に塗布した後、45℃に調整した乾燥機(WFO-510、東京理化器械社製)で30分間乾燥し、HbA1c測定用コンジュゲーションパッドを得た。
【0060】
(5)HbA1c測定用イムノクロマト試験片の作製
前記HbA1c測定用メンブレンカードの上流側の20mm×300mmの粘着テープ部に、メンブレン部と5mm重なるよう前記HbA1c測定用コンジュゲーションパッドを貼り合わせた。次いで、さらに上流側に前記コンジュゲーションパッドと5mm重なるよう20mm×300mmのサンプルパッド(CELLULOSE FIBER SAMPLE PADS、CFSP002000、Millipore社製)を貼り合わせた。次いで、前記HbA1c測定用メンブレンカードの下流側の15mm×300mmの粘着テープ部に、メンブレン部と2mm重なるよう20mm×300mmの吸収パッド(CELLULOSE FIBER SAMPLE PADS、CFSP002000、Millipore社製)を貼り合わせた。次いで、ギロチン式カッティングモジュール(CM5000、BIODOT社製)を用い、幅4mm、長さ63mmの短冊状にカットすることで、HbA1c測定用イムノクロマト試験片を得た。
【0061】
(6)測定試料希釈液の調製
りん酸緩衝生理食塩粉末(162-19321、和光純薬工業社製)1袋、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート:Tween(登録商標)20(166-21213、和光純薬工業社製)2g、ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル:TritonX(登録商標)-100(160-24751、和光純薬工業社製)2g、および蒸留水(大塚蒸留水、大塚製薬社製)200mLを500mLガラス瓶に加え、測定試料希釈液(50mM PBS、1.0wt%Tween(登録商標)20、1.0wt%TritonX(登録商標)-100)を調製した。
【0062】
(7)希釈試料の調製
市販のHbA1c標準物質であるHbA1c測定性能評価用試料(QRM HbA1c 2007-1、検査医学標準物質機構社製、L1~L5の5水準)を、それぞれ前記測定試料希釈液にて500倍に希釈することで、HbA1c(%)がL1=5.01%、L2=5.65%、L3=7.35%、L4=9.51%、L5=11.26%で、かつHb濃度がL1~L5=0.280g/Lの希釈HbA1c試料(L1~L5)を得た。次いで、市販のHb標準物質である総ヘモグロビン常用参照標準物質(JCCRM912-2、検査医学標準物質機構社製、L、M、Hの3水準)を、それぞれ前記測定試料希釈液にて500倍に希釈することで、HbA1c(%)がL、M、H=5.20%で、かつHb濃度がL=0.156g/L、M=0.274g/L、H=0.359g/Lの希釈Hb試料(L、M、H)を得た。
【0063】
(8)HbA1c測定用イムノクロマト試験片の評価:感度の評価
前記HbA1c測定用イムノクロマト試験片を水平な台に設置した。次いで、前記希釈HbA1c試料(L1、L4)100μLを、マイクロピペットで分取し、サンプルパッドに緩やかに滴下し、25℃で10分間静置した。次いで、メンブレン上のコントロールラインおよびテストラインの反射吸光度(mAbs)をイムノクロマトリーダー(C10060-10、測定モード:Latex、Line、浜松ホトニクス社製)を用いて測定した。前記実験操作を前記希釈HbA1c試料(L1、L4)に対してそれぞれN=10(合計で前記HbA1c測定用イムノクロマト試験片を20本使用)で行った。感度の指標として、前記希釈HbA1c試料(L4)のテストラインの反射吸光度(mAbs)のN=10平均値と、前記希釈HbA1c試料(L1)のテストラインの反射吸光度(mAbs)のN=10平均値との差:ΔL4-L1(mAbs)を算出し、ΔL4-L1≧200mAbsを3点(excellent)、150mAbs≦ΔL4-L1<200mAbsを2点(good)、100mAbs≦ΔL4-L1<150mAbsを1点(average)、ΔL4-L1<100mAbsを0点(bad)と評価した。実施例1のHbA1c測定用イムノクロマト試験片の感度はΔL4-L1=260mAbsで3点と、高感度な測定が可能であった。
【0064】
(9)HbA1c測定用イムノクロマト試験片の評価:精度の評価
前記HbA1c測定用イムノクロマト試験片を水平な台に設置した。次いで、前記希釈HbA1c試料(L1、L4)100μLを、マイクロピペットで分取し、サンプルパッドに緩やかに滴下し、25℃で10分間静置した。次いで、メンブレン上のコントロールラインおよびテストラインの反射吸光度(mAbs)をイムノクロマトリーダー(C10060-10、測定モード:Latex、Line、浜松ホトニクス社製)を用いて測定した。前記実験操作を前記希釈HbA1c試料(L1、L4)に対してそれぞれN=10(合計で前記HbA1c測定用イムノクロマト試験片を20本使用)で行った。精度の指標として、前記希釈HbA1c試料(L1、L4)のテストラインの反射吸光度(mAbs)をコントロールラインの反射吸光度(mAbs)で割算した補正値(L1、L4)をそれぞれ算出した後、得られた補正値(L1、L4)のN=10におけるCV(L1、L4)(%)をそれぞれ算出し、さらにCV(L1)(%)とCV(L4)(%)との平均値:CV(%)を算出し、CV<3%を3点(excellent)、3%≦CV<5%を2点(good)、5%≦CV<10%を1点(average)、10%≦CVを0点(bad)と評価した。実施例1のHbA1c測定用イムノクロマト試験片の精度はCV=2.0%で3点と、高精度な測定が可能であった。
【0065】
(10)HbA1c測定用イムノクロマト試験片の評価:HPLC法との相関性の評価
前記HbA1c測定用イムノクロマト試験片を水平な台に設置した。次いで、前記希釈HbA1c試料(L1~L5)100μLを、マイクロピペットで分取し、サンプルパッドに緩やかに滴下し、25℃で10分間静置した。次いで、メンブレン上のコントロールラインおよびテストラインの反射吸光度(mAbs)をイムノクロマトリーダー(C10060-10、測定モード:Latex、Line、浜松ホトニクス社製)を用いて測定した。前記実験操作を前記希釈HbA1c試料(L1~L5)に対してそれぞれN=10(合計で前記HbA1c測定用イムノクロマト試験片を50本使用)で行った。相関性の指標として、前記希釈HbA1c試料(L1~L5)のテストラインの反射吸光度(mAbs)をコントロールラインの反射吸光度(mAbs)で割算した補正値(L1~L5)をそれぞれ算出した後、得られた補正値(L1~L5)と、前記希釈HbA1c試料(L1~L5)のHbA1c(%)、L1=5.01%、L2=5.65%、L3=7.35%、L4=9.51%、L5=11.26%とのピアソン相関係数:rを算出し、r≧0.95を3点(excellent)、0.90≦r<095を2点(good)、0.85≦r<0.90を1点(average)、r<0.85を0点(bad)と評価した。実施例1のHbA1c測定用イムノクロマト試験片の相関性はr=0.98で3点と、HbA1c(%)との高い相関性を有していた。
【0066】
(11)HbA1c測定用イムノクロマト試験片の評価:Hb濃度依存性の評価
前記HbA1c測定用イムノクロマト試験片を水平な台に設置した。次いで、前記希釈Hb試料(L、M、H)100μLを、マイクロピペットで分取し、サンプルパッドに緩やかに滴下し、25℃で10分間静置した。次いで、メンブレン上のコントロールラインおよびテストラインの反射吸光度(mAbs)をイムノクロマトリーダー(C10060-10、測定モード:Latex、Line、浜松ホトニクス社製)を用いて測定した。前記実験操作を前記希釈Hb試料(L、M、H)に対してそれぞれN=10(合計で前記HbA1c測定用イムノクロマト試験片を30本使用)で行った。Hb濃度依存性の指標として、前記希釈Hb試料(L、M、H)のテストラインの反射吸光度(mAbs)をコントロールラインの反射吸光度(mAbs)で割算した補正値(L、M、H)をそれぞれ算出した後、得られた補正値(L、M、H)の各N=10で合計N=30のCV(Hb)(%)を算出し、CV(Hb)<3%を3点(excellent)、3%≦CV(Hb)<5%を2点(good)、5%≦CV(Hb)<10%を1点(average)、10%≦CV(Hb)を0点(bad)と評価した。実施例1のHbA1c測定用イムノクロマト試験片のHb濃度依存性はCV(Hb)=2.8%で3点、つまり測定試料中のHbA1c(%)が同じであれば、Hb量によらず一定の測定結果(補正値)が得られることを確認した。
【0067】
(12)HbA1c測定用イムノクロマト試験片の評価:非特異吸着の評価
前記HbA1c測定用イムノクロマト試験片を水平な台に設置した。次いで、蒸留水(大塚蒸留水、大塚製薬社製)100μLを、マイクロピペットで分取し、サンプルパッドに緩やかに滴下し、25℃で10分間静置した。次いで、メンブレン上のテストラインの反射吸光度(mAbs)をイムノクロマトリーダー(C10060-10、測定モード:Latex、Line、浜松ホトニクス社製)を用いて測定した。前記テストラインの反射吸光度(mAbs)が、10mAbs未満を2点(good)、10~20mAbsを1点(average)、20mAbs超を0点(bad)と評価した。実施例1のHbA1c測定用イムノクロマト試験片の非特異吸着は、テストラインの反射吸光度<10mAbs(測定下限以下)で2点、つまりテストライン検出試薬中の検出粒子のブロッキングが問題ないことを確認した。
【0068】
(実施例2)
HbA1c測定用テストライン検出試薬の調製に用いる抗体として、抗HbA1cモノクローナル抗体(HbA1c Antibody、OAMA02329、AVIVA SYSTEM BIOLODY社製)の代わりに抗Hbモノクローナル抗体(HBA1 Antibody、OAMA02326、AVIVA SYSTEM BIOLOGY社製)を用い、かつHbA1c測定用メンブレンカードの作製に用いる抗体として、抗Hbモノクローナル抗体(HBA1 Antibody、OAMA02326、AVIVA SYSTEM BIOLOGY社製)の代わりに抗HbA1cモノクローナル抗体(HbA1c Antibody、OAMA02329、AVIVA SYSTEM BIOLODY社製)を用いた以外は実施例1と同様にしてHbA1c測定用イムノクロマト試験片を作製し評価した。得られた評価結果を表1に示す。
【0069】
(実施例3、4)
HbA1c測定用テストライン検出試薬およびHbA1c測定用コントロールライン検出試薬の調製に用いるブロッキング用タンパク質(標識したブロッキング用タンパク質も含む)として、Blocking Peptide Fragment:BPF(BPF-301、東洋紡社製)の代わりにBovine serum albumin:BSA(A7906、Sigma-Aldrich社製)(実施例3)、カゼイン(030-01505、和光純薬工業社製)(実施例4)を用いた以外は実施例1と同様にしてHbA1c測定用イムノクロマト試験片を作製し評価した。なお、カゼインを使用する場合は、ブロッキング液、洗浄液、塗布液の緩衝剤として、10mMのトリス緩衝液(204-07885、和光純薬工業社製)(pH7.0)の代わりに、100mMのホウ酸緩衝液(021-02195、和光純薬工業社製)(pH9.0)を使用した。得られた評価結果を表1に示す。
【0070】
(実施例5~9)
HbA1c測定用コンジュゲーションパッドの作製工程において、前記HbA1c測定用テストライン検出試薬および前記HbA1c測定用コントロールライン検出試薬を、セルロース系着色微粒子(NanoAct(登録商標)、BL2:Dark Navy、平均粒子径365nm、旭化成社製)の質量換算で6:1の割合で混合する代わり1:1(実施例5)、3:1(実施例6)、15:1(実施例7)、30:1(実施例8)、60:1(実施例9)の割合で混合した以外は実施例1と同様にしてHbA1c測定用イムノクロマト試験片を作製し評価した。得られた評価結果を表1に示す。
【0071】
(実施例10、11)
HbA1c測定用テストライン検出試薬およびHbA1c測定用コントロールライン検出試薬の調製に用いる検出粒子として、セルロース系着色微粒子(NanoAct(登録商標)、BL2:Dark Navy、平均粒子径365nm、旭化成社製)の代わりにセルロース系着色微粒子(NanoAct(登録商標)、RE1:Red、平均粒子径330nm、旭化成社製)(実施例10)、セルロース系着色微粒子(NanoAct(登録商標)、RE2、Dark Red、平均粒子径340nm、旭化成社製)(実施例11)を用い、かつイムノクロマトリーダー(C10060-10、測定モード:Latex、Line、浜松ホトニクス社製)の代わりにイムノクロマトリーダー(C10060-10、測定モード:Gold Colloid、Line、浜松ホトニクス社製)を用いて測定した以外は実施例1と同様にしてHbA1c測定用イムノクロマト試験片を作製し評価した。得られた評価結果を表1に示す。
【0072】
(実施例12)
HbA1c測定用テストライン検出試薬およびHbA1c測定用コントロールライン検出試薬の調製に用いる検出粒子として、セルロース系着色微粒子(NanoAct(登録商標)、BL2:Dark Navy、平均粒子径365nm、旭化成社製)の代わりにセルロース系着色微粒子(NanoAct(登録商標)、BL1:Navy、平均粒子径325nm、旭化成社製)を用いた以外は実施例1と同様にしてHbA1c測定用イムノクロマト試験片を作製し評価した。得られた評価結果を表1に示す。
【0073】
(実施例13)
HbA1c測定用テストライン検出試薬の調製に用いる検出粒子として、セルロース系着色微粒子(NanoAct(登録商標)、BL2:Dark Navy、平均粒子径365nm、旭化成社製)の代わりにセルロース系着色微粒子(NanoAct(登録商標)、RE1:Red、平均粒子径330nm、旭化成社製)を用い、かつイムノクロマトリーダー(C10060-10、測定モード:Latex、Line、浜松ホトニクス社製)の代わりにイムノクロマトリーダー(C10060-10、測定モード:Gold Colloid、Line、浜松ホトニクス社製)を用いて測定した以外は実施例1と同様にしてHbA1c測定用イムノクロマト試験片を作製し評価した。得られた評価結果を表1に示す。
【0074】
(実施例14~17)
希釈測定試料の調製工程において、市販のHbA1c標準物質であるHbA1c測定性能評価用試料(QRM HbA1c 2007-1、検査医学標準物質機構社製、L1~L5の5水準)および市販のHb標準物質である総ヘモグロビン常用参照標準物質(JCCRM912-2、検査医学標準物質機構社製、L、M、Hの3水準)を、それぞれ測定試料希釈液にて500倍に希釈する代わりに、50倍(実施例14)、100倍(実施例15)、1000倍(実施例16)、2000倍(実施例17)に希釈した以外は実施例1と同様にしてHbA1c測定用イムノクロマト試験片を作製し評価した。得られた評価結果を表1に示す。
【0075】
(実施例18~20)
HbA1c測定用メンブレンカードの作製に用いる3.6mg/mLの抗Hbモノクローナル抗体(HBA1 Antibody、OAMA02326、AVIVA SYSTEM BIOLOGY社製)を蒸留水(大塚蒸留水、大塚製薬社製)で1.0mg/mLに調製する代わりに、0.2mg/mL(実施例18)、0.5mg/mL(実施例19)、2.0mg/mL(実施例20)に調製した以外は実施例1と同様にしてHbA1c測定用イムノクロマト試験片を作製し評価した。得られた評価結果を表1に示す。
【0076】
(実施例21~23)
HbA1c測定用テストライン検出試薬の調製に用いる8.57mg/mLの抗HbA1cモノクローナル抗体(HbA1c Antibody、OAMA02329、AVIVA SYSTEM BIOLOGY社製)を蒸留水(大塚蒸留水、大塚製薬社製)で1.0mg/mLに調製する(HbA1c測定用テストライン検出試薬中の抗体濃度は0.05mg/mL)代わりに、0.2mg/mL(HbA1c測定用テストライン検出試薬中の抗体濃度は0.01mg/mL)(実施例21)、0.4mg/mL(HbA1c測定用テストライン検出試薬中の抗体濃度は0.02mg/mL)(実施例22)、2.0mg/mL(HbA1c測定用テストライン検出試薬中の抗体濃度は0.1mg/mL)(実施例23)に調製した以外は実施例1と同様にしてHbA1c測定用イムノクロマト試験片を作製し評価した。得られた評価結果を表1に示す。
【0077】
【0078】
(比較例1)
(1)HbA1c測定用テストライン検出試薬の調製
8.57mg/mLの抗HbA1cモノクローナル抗体(HbA1c Antibody、OAMA02329、AVIVA SYSTEM BIOLOGY社製)を蒸留水(大塚蒸留水、大塚製薬社製)で0.05mg/mLに調製した。次いで、OD520=1.0の金コロイド粒子(EMGC40:Red、平均粒子径40nm、BBI Solutions社製)13.5mL、50mMのりん酸二水素カリウム(166-04255、和光純薬工業社製)(pH7.0)1.5mL、および前記0.05mg/mLの抗HbA1cモノクローナル抗体1.5mLを50mLの遠沈管に加え、軽く撹拌した。次いで、25℃に調整した低温インキュベーター(IN604、ヤマト科学社製)に入れ10分間静置した。次いで、10wt%のBovine serum albumin:BSA(A7906、Sigma-Aldrich社製)からなるブロッキング液1mLを加え、軽く撹拌した。次いで、遠心分離機(MX-307、トミー精工社製)とラックインローター(TMA-300、トミー精工社製)とラック(AR510-04、トミー精工社製)を用い、8,000×gの遠心を25℃で15分間行い、抗体感作金コロイド粒子を沈降させた後に上澄みを除去した。次いで、1.0wt%のBovine serum albumin:BSA(A7906、Sigma-Aldrich社製)、150mMの塩化ナトリウム(192-13925、和光純薬工業社製)、20mMのトリス緩衝液(204-07885、和光純薬工業社製)からなる洗浄液(pH8.2)30mLを加え、超音波分散機(UH-50、エスエムテー社製)で10秒間処理した。次いで、遠心分離機(MX-307、トミー精工社製)とラックインローター(TMA-300、トミー精工社製)とラック(AR510-04、トミー精工社製)を用い、8,000×gの遠心を25℃で15分間行い、抗体感作金コロイド粒子を沈降させた後に上澄みを除去した。次いで、2.5wt%のスクロース(196-00015、和光純薬工業社製)、0.25wt%のBovine serum albumin:BSA(A7906、Sigma-Aldrich社製)、37.5mMの塩化ナトリウム(192-13925、和光純薬工業社製)、20mMのトリス緩衝液(204-07885、和光純薬工業社製)からなる塗布液(pH8.2)を加え、超音波分散機(UH-50、エスエムテー社製)で10秒間処理し、塗布液の液量によりOD520=4.0になるよう調整することで、HbA1c測定用テストライン検出試薬を得た。なお、前記HbA1c測定用テストライン検出試薬中の検出粒子濃度はOD520=4.0、抗体濃度は0.02mg/mL(0.002wt%)であった。
【0079】
(2)HbA1c測定用コントロールライン検出試薬の調製
Dビオチン(04822-91、ナカライテスク社製)16mg、およびジメチルスルホキシド:DMSO(08904-14、ナカライテスク社製)1000μLを1.5mLマイクロチューブに加え、ボルテックスで撹拌し、Dビオチン溶液を得た。次いで、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩:EDC(15022-86、ナカライテスク社製)20mg、N-ヒドロキシスクシンイミド:NHS(18948-02、ナカライテスク社製)20mg、および蒸留水(大塚蒸留水、大塚製薬社製)100μLを1.5mLマイクロチューブに加え、ボルテックスで撹拌し、EDC/NHS溶液を得た。次いで、前記Dビオチン溶液100μLおよび前記EDC/NHS溶液100μLを混合した後、25℃に調整した低温インキュベーター(IN604、ヤマト科学社製)に入れ15分間静置し、Dビオチン/EDC/NHS溶液を得た。次いで、Bovine serum albumin:BSA(A7906、Sigma-Aldrich社製)10mg、および蒸留水(大塚蒸留水、大塚製薬社製)100μLを1.5mLマイクロチューブに加え、ボルテックスで撹拌し、BSA溶液を得た。次いで、前記Dビオチン/EDC/NHS溶液100μLと前記BSA溶液100μLを混合した後、25℃に調整した低温インキュベーター(IN604、ヤマト科学社製)に入れ30分間静置し、Dビオチン-BSA溶液を得た。次いで、OD520=1.0の金コロイド粒子(EMGC40:Red、平均粒子径40nm、BBI Solutions社製)13.5mL、50mMのりん酸二水素カリウム(166-04255、和光純薬工業社製)(pH7.0)1.5mL、および前記Dビオチン-BSA溶液100μLを50mLの遠沈管に加え、軽く撹拌した。次いで、25℃に調整した低温インキュベーター(IN604、ヤマト科学社製)に入れ10分間静置した。次いで、10wt%のBovine serum albumin:BSA(A7906、Sigma-Aldrich社製)からなるブロッキング液1mLを加え、軽く撹拌した。次いで、遠心分離機(MX-307、トミー精工社製)とラックインローター(TMA-300、トミー精工社製)とラック(AR510-04、トミー精工社製)を用い、8,000×gの遠心を25℃で15分間行い、Dビオチン感作金コロイド粒子を沈降させた後に上澄みを除去した。次いで、1.0wt%のBovine serum albumin:BSA(A7906、Sigma-Aldrich社製)、150mMの塩化ナトリウム(192-13925、和光純薬工業社製)、20mMのトリス緩衝液(204-07885、和光純薬工業社製)からなる洗浄液(pH8.2)30mLを加え、超音波分散機(UH-50、エスエムテー社製)で10秒間処理した。次いで、遠心分離機(MX-307、トミー精工社製)とラックインローター(TMA-300、トミー精工社製)とラック(AR510-04、トミー精工社製)を用い、8,000×gの遠心を25℃で15分間行い、Dビオチン感作金コロイド粒子を沈降させた後に上澄みを除去した。次いで、2.5wt%のスクロース(196-00015、和光純薬工業社製)、0.25wt%のBovine serum albumin:BSA(A7906、Sigma-Aldrich社製)、37.5mMの塩化ナトリウム(192-13925、和光純薬工業社製)、20mMのトリス緩衝液(204-07885、和光純薬工業社製)からなる塗布液(pH8.2)を加え、超音波分散機(UH-50、エスエムテー社製)で10秒間処理し、塗布液の液量によりOD520=4.0になるよう調整することで、HbA1c測定用コントロールライン検出試薬を得た。なお、前記HbA1c測定用コントロールライン検出試薬中の検出粒子濃度はOD520=4.0、ブロッキング用タンパク質の標識導入比は1:7であった。
【0080】
以下、実施例1と同様にしてHbA1c測定用イムノクロマト試験片を作製した。次いで、イムノクロマトリーダー(C10060-10、測定モード:Latex、Line、浜松ホトニクス社製)の代わりにイムノクロマトリーダー(C10060-10、測定モード:Gold Colloid、Line、浜松ホトニクス社製)を用いた以外は実施例1と同様にして評価した。得られた評価結果を表2に示す。検出粒子に金コロイド粒子を使用すると、感度、精度、および相関性が不十分であった。また、ブロッキングが不十分であり、非特異吸着が確認された。
【0081】
(比較例2)
HbA1c測定用テストライン検出試薬およびHbA1c測定用コントロールライン検出試薬の調製に用いるブロッキング用タンパク質(標識したブロッキング用タンパク質も含む)として、Bovine serum albumin:BSA(A7906、Sigma-Aldrich社製)の代わりにBlocking Peptide Fragment:BPF(BPF-301、東洋紡社製)を用いた以外は比較例1と同様にしてHbA1c測定用イムノクロマト試験片を作製し評価した。得られた評価結果を表2に示す。検出粒子に金コロイド粒子を使用すると、感度、精度、および相関性が不十分であった。
【0082】
(比較例3)
(1)HbA1c測定用テストライン検出試薬の調製
8.57mg/mLの抗HbA1cモノクローナル抗体(HbA1c Antibody、OAMA02329、AVIVA SYSTEM BIOLOGY社製)を50mMのりん酸二水素カリウム(166-04255、和光純薬工業社製)(pH7.0)で1.0mg/mLに、10wt%ラテックス粒子(Estapor(登録商標)、K030:Blue、平均粒子径300nm、Merk millipore社製)を50mMのりん酸二水素カリウム(166-04255、和光純薬工業社製)(pH7.0)で1.0wt%に、それぞれ調製した。次いで、前記1.0wt%のラテックス粒子100μL、および前記1.0mg/mLの抗HbA1cモノクローナル抗体100μLを15mLの遠沈管に加え、ボルテックスで撹拌した。次いで、25℃に調整した低温インキュベーター(IN604、ヤマト科学社製)に入れ60分間静置した。次いで、1.0wt%のBovine serum albumin:BSA(A7906、Sigma-Aldrich社製)からなるブロッキング液12mLを加え、さらに25℃に調整した低温インキュベーター(IN604、ヤマト科学社製)で60分間静置した。次いで、遠心分離機(MX-307、トミー精工社製)とラックインローター(TMA-300、トミー精工社製)とラック(AR510-04、トミー精工社製)を用い、8,000×gの遠心を25℃で15分間行い、抗体感作ラテックス粒子を沈降させた後に上澄みを除去した。次いで、1.0wt%のBovine serum albumin:BSA(A7906、Sigma-Aldrich社製)、50mMのりん酸二水素カリウム(166-04255、和光純薬工業社製)からなる洗浄液(pH7.0)12mLを加え、超音波分散機(UH-50、エスエムテー社製)で10秒間処理した。次いで、遠心分離機(MX-307、トミー精工社製)とラックインローター(TMA-300、トミー精工社製)とラック(AR510-04、トミー精工社製)を用い、8,000×gの遠心を25℃で15分間行い、抗体感作ラテックス粒子を沈降させた後に上澄みを除去した。次いで、1.0wt%のBovine serum albumin:BSA(A7906、Sigma-Aldrich社製)、50mMのりん酸二水素カリウム(166-04255、和光純薬工業社製)からなる塗布液(pH7.0)2mLを加え、超音波分散機(UH-50、エスエムテー社製)で10秒間処理し、HbA1c測定用テストライン検出試薬を得た。なお、前記HbA1c測定用テストライン検出試薬中の検出粒子濃度は0.5mg/mL(0.05wt%)、抗体濃度は0.05mg/mL(0.005wt%)であった。
【0083】
(2)HbA1c測定用コントロールライン検出試薬の調製
Dビオチン(04822-91、ナカライテスク社製)16mg、およびジメチルスルホキシド:DMSO(08904-14、ナカライテスク社製)1000μLを1.5mLマイクロチューブに加え、ボルテックスで撹拌し、Dビオチン溶液を得た。次いで、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩:EDC(15022-86、ナカライテスク社製)20mg、N-ヒドロキシスクシンイミド:NHS(18948-02、ナカライテスク社製)20mg、および蒸留水(大塚蒸留水、大塚製薬社製)100μLを1.5mLマイクロチューブに加え、ボルテックスで撹拌し、EDC/NHS溶液を得た。次いで、前記Dビオチン溶液100μLおよび前記EDC/NHS溶液100μLを混合した後、25℃に調整した低温インキュベーター(IN604、ヤマト科学社製)に入れ15分間静置し、Dビオチン/EDC/NHS溶液を得た。次いで、Bovine serum albumin:BSA(A7906、Sigma-Aldrich社製)10mg、および蒸留水(大塚蒸留水、大塚製薬社製)100μLを1.5mLマイクロチューブに加え、ボルテックスで撹拌し、BSA溶液を得た。次いで、前記Dビオチン/EDC/NHS溶液100μLと前記BSA溶液100μLを混合した後、25℃に調整した低温インキュベーター(IN604、ヤマト科学社製)に入れ30分間静置し、Dビオチン-BSA溶液を得た。次いで、10wt%ラテックス粒子(Estapor(登録商標)、K030:Blue、平均粒子径300nm、Merk millipore社製)を50mMのりん酸二水素カリウム(166-04255、和光純薬工業社製)(pH7.0)で1.0wt%に調製した。次いで、前記1.0wt%のラテックス粒子100μL、および前記Dビオチン-BSA溶液100μLを15mLの遠沈管に加え、ボルテックスで撹拌した。次いで、25℃に調整した低温インキュベーター(IN604、ヤマト科学社製)に入れ60分間静置した。次いで、1.0wt%のBovine serum albumin:BSA(A7906、Sigma-Aldrich社製)からなるブロッキング液12mLを加え、さらに25℃に調整した低温インキュベーター(IN604、ヤマト科学社製)で60分間静置した。次いで、遠心分離機(MX-307、トミー精工社製)とラックインローター(TMA-300、トミー精工社製)とラック(AR510-04、トミー精工社製)を用い、8,000×gの遠心を25℃で15分間行い、Dビオチン感作ラテックス粒子を沈降させた後に上澄みを除去した。次いで、1.0wt%のBovine serum albumin:BSA(A7906、Sigma-Aldrich社製)、50mMのりん酸二水素カリウム(166-04255、和光純薬工業社製)からなる洗浄液(pH7.0)12mLを加え、超音波分散機(UH-50、エスエムテー社製)で10秒間処理した。次いで、遠心分離機(MX-307、トミー精工社製)とラックインローター(TMA-300、トミー精工社製)とラック(AR510-04、トミー精工社製)を用い、8,000×gの遠心を25℃で15分間行い、Dビオチン感作ラテックス粒子を沈降させた後に上澄みを除去した。次いで、1.0wt%のBovine serum albumin:BSA(A7906、Sigma-Aldrich社製)、50mMのりん酸二水素カリウム(166-04255、和光純薬工業社製)からなる塗布液(pH7.0)2mLを加え、超音波分散機(UH-50、エスエムテー社製)で10秒間処理し、HbA1c測定用コントロールライン検出試薬を得た。なお、前記HbA1c測定用コントロールライン検出試薬中の検出粒子濃度は0.5mg/mL(0.05wt%)、ブロッキング用タンパク質の標識導入比は1:7であった。
【0084】
以下、実施例1と同様にしてHbA1c測定用イムノクロマト試験片を作製し評価した。得られた評価結果を表2に示す。検出粒子にラテックス粒子を使用すると、感度、精度、および相関性が不十分であった。また、ブロッキングが不十分であり、非特異吸着が確認された。
【0085】
(比較例4)
HbA1c測定用テストライン検出試薬およびHbA1c測定用コントロールライン検出試薬の調製に用いるブロッキング用タンパク質(標識したブロッキング用タンパク質も含む)として、Bovine serum albumin:BSA(A7906、Sigma-Aldrich社製)の代わりにBlocking Peptide Fragment:BPF(BPF-301、東洋紡社製)を用いた以外は比較例3と同様にしてHbA1c測定用イムノクロマト試験片を作製し評価した。得られた評価結果を表2に示す。検出粒子にラテックス粒子を使用すると、感度、精度、および相関性が不十分であった。
【0086】
(比較例5)
比較例3のHbA1c測定用テストライン検出試薬の代わりに実施例1のHbA1c測定用テストライン検出試薬を使用した以外は比較例4と同様にしてHbA1c測定用イムノクロマト試験片を作製し評価した。得られた評価結果を表2に示す。テストライン検出試薬の検出粒子にのみラテックス粒子を使用しても、感度、精度、および相関性が不十分であった。
【0087】
(比較例6)
HbA1c測定用メンブレンカードの作製に用いる抗体として、抗Hbモノクローナル抗体(HBA1 Antibody、OAMA02326、AVIVA SYSTEM BIOLOGY社製)の代わりに抗HbA1cモノクローナル抗体(Human HbA1c monoclonal antibody、MAB0030-MO6A、Abnova社製)を用いる以外は実施例1と同様にしてHbA1c測定用イムノクロマト試験片を作製し評価した。得られた評価結果を表2に示す。抗HbA1c抗体でサンドイッチする構成では、Hb量により測定結果(補正値)が大きく変動するため、別の手段でHb量を測定する必要があることがわかった。つまり、メンブレン上のラインの反射吸光度からHbA1c(%)を直接定量することはできなかった。
【0088】
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明により、高感度・高精度・HPLC法との高相関性でかつ測定試料中のHb量の影響を受けずに、測定試料中のHbA1c量のHb量に対する割合:HbA1c(%)を測定できるイムノクロマト試験片を提供することができる。
【符号の説明】
【0090】
1:サンプルパッド
2:コンジュゲーションパッド
3:メンブレン
4:吸収パッド
5:バッキングシート
6:テストライン
7:コントロールライン
8:粘着シート