(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-21
(45)【発行日】2023-09-29
(54)【発明の名称】蓄電素子
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20230922BHJP
H01M 50/533 20210101ALI20230922BHJP
H01M 50/538 20210101ALI20230922BHJP
H01G 11/82 20130101ALI20230922BHJP
H01G 11/72 20130101ALI20230922BHJP
H01G 11/76 20130101ALI20230922BHJP
H01M 10/0587 20100101ALN20230922BHJP
【FI】
H01M10/04 W
H01M50/533
H01M50/538
H01G11/82
H01G11/72
H01G11/76
H01M10/0587
(21)【出願番号】P 2019163298
(22)【出願日】2019-09-06
【審査請求日】2022-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】中井 健太
(72)【発明者】
【氏名】上平 健太
(72)【発明者】
【氏名】加古 智典
(72)【発明者】
【氏名】針長 右京
(72)【発明者】
【氏名】高崎 真行
【審査官】村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/199384(WO,A1)
【文献】特開2006-085939(JP,A)
【文献】特開2011-023130(JP,A)
【文献】特開2002-280079(JP,A)
【文献】国際公開第2019/073914(WO,A1)
【文献】特開平10-302828(JP,A)
【文献】国際公開第2018/042842(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-10/0587
H01M 50/50-50/598
H01G 11/82
H01G 11/72
H01G 11/76
H01M 10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電層と該導電層に重ねられる活物質層とを有する電極が巻回された複数の電極体と、
前記複数の電極体を並んだ状態で且つ隣り合う電極体同士を密接させた状態で収容しているケースと、
前記ケースに取り付けられる又は前記ケースの少なくとも一部によって構成される外部端子と、を備え、
隣り合う電極体のうちの少なくとも一方の電極体における前記電極の最外周部位は、前記導電層の外側面上に前記活物質層のない外側未形成部を有し、
前記外側未形成部は、少なくとも隣の電極体と密接する領域に配置されて
おり、
前記電極は、帯状の電極本体と、前記電極本体の長尺方向の一方の端部から該電極本体と同方向に延びる接続片と、を有し、
前記接続片は、前記外部端子と電気的に接続されている、蓄電素子。
【請求項2】
前記隣り合う電極体のそれぞれの前記電極は、前記導電層から前記外部端子まで延び且つ導電性を有する少なくとも一つの接続片を有し、
前記隣り合う電極体のそれぞれの前記少なくとも一つの接続片は、互いに導通するように束ねられ、
前記隣り合う電極体は、前記導電層の外側面が露出する前記外側未形成部をそれぞれ有し、該導電層の外側面同士を直接密接させている、請求項1に記載の蓄電素子。
【請求項3】
前記電極体は、
該電極体の巻回中心を挟んで対向する一対の平坦部と、
前記一対の平坦部の端部同士を接続し且つ前記巻回中心を挟んで対向する一対の湾曲部と、を有し、
前記電極の最内周部位は、前記導電層の内側面に活物質層のない内側未形成部を有し、
前記内側未形成部は、前記湾曲部に配置されている、請求項1又は2に記載の蓄電素子。
【請求項4】
前記電極は、正極と負極とを含み、
前記活物質層は、正極活物質層と負極活物質層とを含み、
前記正極では、前記導電層の両面に前記正極活物質層が重ねられ、
前記負極では、前記導電層の両面に前記負極活物質層が重ねられ、
少なくとも前記正極の最内周部位に、前記内側未形成部が配置されている、請求項3に記載の蓄電素子。
【請求項5】
前記正極において前記湾曲部に含まれる正極湾曲部位では、前記導電層の外側面上に前記正極活物質層があると共に、前記導電層の内側面上に前記正極活物質層がない、請求項4に記載の蓄電素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻回型の複数の電極体を備える蓄電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、巻回型の複数の電極組立体を備えた二次電池が知られている(特許文献1参照)。具体的に、この二次電池は、複数の電極組立体、ケース、及びキャップ組立体を含む。
【0003】
各電極組立体は、
図14に示すような薄い板型或いは膜型に形成された第一電極板510、セパレータ530及び第二電極板520を積層して巻回することで形成できる。
【0004】
第一電極板510は、箔状の第一電極集電体511と、第一電極集電体511の両面にコーティングされた第一電極活物質層512とからなる。さらに、第一電極集電体511には、第一電極活物質層がコーティングされていない第一電極無地部511aが形成される。また、第二電極板520は、箔状の第二電極集電体521と、第二電極集電体521の両面にコーティングされた第二電極活物質層522とからなる。さらに、第二電極集電体521には、第二電極活物質層がコーティングされていない第二電極無地部521aが形成される。また、セパレータ530は、第一電極板510と第二電極板520の間に介在し、ショートを防止し、リチウムイオンの移動のみを可能にするフィルムからなる。
【0005】
第一電極組立体541は、
図15及び
図16にも示すように、該第一電極組立体541の一側及び一側の反対方向である他側の外に第一電極無地部511a及び第二電極無地部521aが突出するように、第一電極板510、セパレータ530及び第二電極板520を配置して、巻回することで形成される。第二電極組立体542及び第三電極組立体543は、第一電極組立体541と同じ構成である。
【0006】
これら第一電極組立体541、第二電極組立体542及び第三電極組立体543は、一方向に、即ち並列に隣接して配置され、固定テープによって一つに固定される。
【0007】
ケース550は、電解液、複数の電極組立体541~543が収納されるように、底部551と、底部551から延長された側壁部552とを含んで形成される。そして、ケース550の上部は、複数の電極組立体541~543が通過するよう解放される。
【0008】
複数の電極組立体541~543が、ケース550の解放された上部を通過してケース550の内部に挿入され、電解液などがケース550の内部に注入された後、ケース550の解放された上部がキャップ組立体560で覆われて密封されることで、二次電池500が形成される。
【0009】
以上のような巻回型の複数の電極組立体541~543を備えた二次電池においても、近年、ケース550内のエネルギー密度の向上が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本実施形態は、複数の巻回型の電極体を有する蓄電素子であって、エネルギー密度を向上させた蓄電素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本実施形態の蓄電素子は、
導電層と該導電層に重ねられる活物質層とを有する電極が巻回された複数の電極体と、
前記複数の電極体を並んだ状態で且つ隣り合う電極体同士を密接させた状態で収容しているケースと、を備え、
隣り合う電極体のうちの少なくとも一方の電極体における前記電極の最外周部位は、前記導電層の外側面上に前記活物質層のない外側未形成部を有し、
前記外側未形成部は、少なくとも隣の電極体と密接する領域に配置されている。
【0013】
かかる構成によれば、隣の電極体と密接する領域に導電層の外側面上に活物質層のない外側未形成部が配置されているため、前記外側面上に活物質層(充放電に寄与しない活物質層)がある場合に比べ、該活物質層の分だけ電極体を詰めて並べることができ、これにより、ケース内のエネルギー密度を向上させることができる。
【0014】
前記蓄電素子は、
前記ケースに取り付けられる又は前記ケースの少なくとも一部によって構成される外部端子を備え、
前記隣り合う電極体のそれぞれの前記電極は、前記導電層から前記外部端子まで延び且つ導電性を有する少なくとも一つの接続片を有し、
前記隣り合う電極体のそれぞれの前記少なくとも一つの接続片は、互いに導通するように束ねられ、
前記隣り合う電極体は、前記導電層の外側面が露出する前記外側未形成部をそれぞれ有し、該導電層の外側面同士を直接密接させてもよい。
【0015】
かかる構成によれば、隣り合う電極体同士が導通した状態で、各電極体の電極と外部端子とを導通させる接続片も互いに導通するように束ねられているため、各電極体のエネルギーのバランスが図られると共に、外部端子と巻回されている電極(詳しくは、電極体における接続片を除いた電極の巻回部分)との間の抵抗が抑えられる。
【0016】
また、前記蓄電素子では、
前記電極体は、
該電極体の巻回中心を挟んで対向する一対の平坦部と、
前記一対の平坦部の端部同士を接続し且つ前記巻回中心を挟んで対向する一対の湾曲部と、を有し、
前記電極の最内周部位は、前記導電層の内側面に活物質層のない内側未形成部を有し、
前記内側未形成部は、前記湾曲部に配置されてもよい。
【0017】
かかる構成によれば、湾曲部での曲率が最も大きくなる最内周の電極の内側面上に活物質層がないため、電極体における活物質層の割れを好適に防ぐことができる。
【0018】
また、前記蓄電素子では、
前記電極は、正極と負極とを含み、
前記活物質層は、正極活物質層と負極活物質層とを含み、
前記正極では、前記導電層の両面に前記正極活物質層が重ねられ、
前記負極では、前記導電層の両面に前記負極活物質層が重ねられ、
少なくとも前記正極の最内周部位に、前記内側未形成部が配置されてもよい。
【0019】
かかる構成によれば、巻回型の電極体において活物質層が最も割れやすい領域(即ち、正極において湾曲部での曲率が最も大きくなる最内周部位の導電層の内側面上)に活物質層を配置しないことで、電極体における活物質層の割れを効果的に防ぐことができる。
【0020】
前記蓄電素子において、
前記正極において前記湾曲部に含まれる正極湾曲部位では、前記導電層の外側面上に前記正極活物質層があると共に、前記導電層の内側面上に前記正極活物質層がなくてもよい。
【0021】
湾曲部において、正極の導電層の外側面上に重ねられる正極活物質層は、その外側に配置される負極の導電層の内側面上に重ねられる負極活物質層より小さくなる(周方向の長さ寸法が小さくなる)が、正極の導電層の内側面上に重ねられる正極活物質層は、その内側に配置される負極の導電層の外側面上に重ねられる負極活物質層より大きくなる(周方向の長さ寸法が大きくなる)。このため、かかる構成のように、湾曲部において、正極の導電層の内側面上に正極活物質層がないことで正極活物質層が負極活物質層より大きくなることに起因する電析の発生が抑えられる。
【発明の効果】
【0022】
以上より、本実施形態によれば、複数の巻回型の電極体を有する蓄電素子であって、エネルギー密度を向上させた蓄電素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る蓄電素子の斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1のIII-III位置における断面図である。
【
図5】
図5は、前記電極体の構成を説明するための図である。
【
図6】
図6は、正極、負極、及びセパレータを説明するための図である。
【
図7】
図7は、前記正極、前記負極、及び前記セパレータを説明するための断面模式図である。
【
図8】
図8は、他実施形態に係る電極体を説明するための図である。
【
図9】
図9は、他実施形態に係る電極体を説明するための模式図である。
【
図10】
図10は、他実施形態に係る電極体を説明するための模式図である。
【
図11】
図11は、他実施形態に係る電極体を説明するための模式図である。
【
図12】
図12は、他実施形態に係る電極体を説明するための模式図である。
【
図13】
図13は、前記蓄電素子を備えた蓄電装置の模式図である。
【
図14】
図14は、従来の電極組立体を構成する第一電極板、セパレータ、及び第二電極板の積層状態を示す図である。
【
図15】
図15は、複数の前記電極組立体が並んだ状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る蓄電素子の一実施形態について、
図1~
図7を参照しつつ説明する。蓄電素子には、一次電池、二次電池、キャパシタ等がある。本実施形態では、蓄電素子の一例として、充放電可能な二次電池について説明する。尚、本実施形態の各構成部材(各構成要素)の名称は、本実施形態におけるものであり、背景技術における各構成部材(各構成要素)の名称と異なる場合がある。
【0025】
本実施形態の蓄電素子は、非水電解質二次電池である。より詳しくは、蓄電素子は、リチウムイオンの移動に伴って生じる電子移動を利用したリチウムイオン二次電池である。この種の蓄電素子は、電気エネルギーを供給する。蓄電素子は、単一又は複数で使用される。具体的に、蓄電素子は、要求される出力及び要求される電圧が小さいときには、単一で使用される。一方、蓄電素子は、要求される出力及び要求される電圧の少なくとも一方が大きいときには、他の蓄電素子と組み合わされて蓄電装置に用いられる。前記蓄電装置では、該蓄電装置に用いられる蓄電素子が電気エネルギーを供給する。
【0026】
蓄電素子は、
図1~
図3に示すように、電極が巻回された複数(本実施形態の例では五つ)の電極体2と、複数の電極体2を並んだ状態で且つ隣り合う電極体2同士を密接(接触)させた状態で収容するケース3と、を備える。また、蓄電素子1は、少なくとも一部を露出させた状態でケース3に取り付けられる又はケース3の少なくとも一部によって構成される外部端子4と、電極体2と外部端子4とを接続する集電体5と、複数の電極体2とケース3との間に配置される絶縁部材6等も、備える。本実施形態の外部端子4は、ケース3に取り付けられている。
【0027】
複数の電極体2のそれぞれは、
図4及び
図5に示すように、導電層211と該導電層211に重ねられる活物質層212とを有する電極20が巻回されることによって構成されている。本実施形態の各電極体2では、電極20が扁平な巻回体となるように巻回されている。即ち、各電極体2は、電極体2の巻回中心Cを挟んで対向する一対の平坦部2Fと、一対の平坦部2Fの端部同士を接続し且つ巻回中心Cを挟んで対向する一対の湾曲部2Cと、を有する。以下では、巻回中心Cの延びる方向を直交座標系のX軸とし、一対の平坦部2Fが対向する方向を直交座標系のY軸とし、一対の湾曲部2Cが対向する方向を直交座標系のZ軸とする。
【0028】
本実施形態の電極体2では、X軸方向の寸法が60~90mmであり、Y軸方向の寸法が3~7mmであり、Z軸方向の寸法が100~150mmである。
【0029】
これら複数の電極体2において、隣り合う電極体2のうちの少なくとも一方の電極体2における電極20の最外周部位α
0(
図6及び
図7参照)は、導電層211の外側面上に活物質層212の無い外側未形成部213を有する。本実施形態の蓄電素子1では、各電極体2の電極20が、最外周部位α
0に外側未形成部213を有する。この外側未形成部213は、電極20の最外周部位α
0における少なくとも隣の電極体2と密接する領域に配置されている。本実施形態の外側未形成部213は、最外周部位α
0の全域に設けられている。
【0030】
電極20は、導電層211から外部端子4まで延び且つ導電性を有する少なくとも一つの接続片22を有する。具体的に、電極20は、帯状の電極本体21と、電極本体21の長尺方向の一方の端部から延びる接続片22と、を有する。この電極20は、正極23と負極24とを含む。これら正極23と負極24との間をリチウムイオンが移動することにより、蓄電素子1が充放電する。正極23及び負極24の具体的な構成は、以下の通りである。
【0031】
正極23は、金属箔231と、金属箔231に重ねられる正極活物質層232と、を有する。金属箔231は、正極23の導電層211である帯状の箔本体2311と、箔本体2311の長尺方向の一端から延びる矩形の正極接続片2312と、を有する。本実施形態の正極接続片2312は、箔本体2311の長尺方向の一端において、幅方向の一方側の端部から延びている。本実施形態の金属箔231は、例えば、アルミニウム箔である。
【0032】
この正極23では、正極活物質層232が箔本体2311の両面に重ねられ、これら箔本体2311と、箔本体2311の両面に重ねられた二つの正極活物質層232と、が正極23の正極本体230(電極本体21)を構成している(
図6参照)。
【0033】
詳しくは、正極本体230において、箔本体2311における巻回状態で外側を向く面(即ち、電極体2において巻回中心C側とは反対側を向く面:外側面)2311A上では、最外周部位α
1を除いた全域に正極活物質層232が重ねられている。また、正極本体230において、箔本体2311における巻回された状態で内側を向く面(即ち、電極体2において巻回中心C側を向く面:内側面)2311B上では、電極体2の平坦部2Fに相当する部位のそれぞれに正極活物質層232が重ねられ、且つ、湾曲部2Cに相当する部位(正極湾曲部位)のそれぞれには正極活物質層232がない。即ち、箔本体2311の内側面2311B上では、正極活物質層232が長手方向において間欠塗工されている(
図7参照)。
【0034】
本実施形態の正極活物質層232は、リチウムコバルトオキサイドやニッケルコバルトマンガン三元系活物質などのリチウムイオンを吸蔵放出可能な化合物によって構成されている。また、正極本体230の長さ(長尺方向の寸法)が、1000~3000mmであり、幅(短尺方向の寸法)が、100~140mmであり、厚さが0.1~0.3mmである。
【0035】
また、正極本体230は、最外周部位α
1に、正極本体230の外側面2311A上に正極活物質層232の無い外側未形成部2301を有する(
図4及び
図7参照)。本実施形態の電極体2では、最外周に正極23が位置するため、正極23の外側未形成部2301が、電極体2の外側未形成部213を構成している。即ち、本実施形態の電極体2では、正極23の外側未形成部2301が、正極23の最外周部位α
1の全域に設けられている。
【0036】
以上の正極23では、電極20の電極本体21に相当する部位が正極本体230であり、電極20の接続片22に相当する部位が正極接続片2312である。
【0037】
負極24は、金属箔241と、金属箔241に重ねられる負極活物質層242と、を有する。金属箔241は、負極24の導電層である帯状の箔本体2411と、箔本体2411の長尺方向の一端から延びる矩形の負極接続片2412と、を有する。本実施形態の負極接続片2412は、箔本体2411の長尺方向の一端において、幅方向の他方側の端部(正極接続片2312が延びている部位とは反対側の端部)から延びている。本実施形態の金属箔241は、例えば、銅箔である。
【0038】
この負極24では、負極活物質層242が箔本体2411の両面に重ねられ、これら箔本体2411と、箔本体2411の両面に重ねられた二つの負極活物質層242と、が負極24の負極本体240(電極本体21)を構成している(
図6参照)。
【0039】
本実施形態の負極活物質層242は、黒鉛や非晶質炭素などリチウムイオンを吸蔵放出可能な化合物によって構成されている。また、負極本体240の長さ(長尺方向の寸法)が、1000~3000mmであり、幅(短尺方向の寸法)が、100~150mmであり、厚さが0.1~0.3mmである。
【0040】
本実施形態の電極体2では、正極23の最内周部位β1より負極24の最内周部位β2の方が内側に配置されている。即ち、本実施形態の電極体2では、電極体2を構成する電極20の最内周部位β0が負極24の最内周部位β2によって構成されている。
【0041】
本実施形態の各電極体2では、以上のように構成される正極23と負極24とがセパレータ25によって絶縁された状態で巻回される。即ち、本実施形態の各電極体2では、正極23、負極24、及びセパレータ25が積層状態で巻回されている。尚、各電極体2の最外周には、セパレータ25は、配置されていない。
【0042】
セパレータ25は、絶縁性を有する部材であり、正極23と負極24との間に配置される。これにより、電極体2において、正極23と負極24とが互いに絶縁される。また、セパレータ25は、ケース3内において、電解液を保持する。これにより、蓄電素子1の充放電時において、セパレータ25を挟んで交互に積層される正極23と負極24との間を、リチウムイオンが移動可能となる。また、セパレータ25の幅方向(短手方向)の寸法は、正極23及び負極24の幅方向の寸法より大きい。
【0043】
このセパレータ25は、帯状であり、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロース、ポリアミドなどの多孔質膜によって構成される。本実施形態のセパレータ25は、SiO2粒子、Al2O3粒子、ベーマイト(アルミナ水和物)等の無機粒子を含んだ無機層を、多孔質膜によって形成された基材の上に設けることで形成されている。本実施形態のセパレータ25の基材は、例えば、ポリエチレンによって形成される。
【0044】
それぞれが以上のように構成される複数の電極体2は、
図2及び
図3に示すように、平坦部2F同士が対向するようにY軸方向に並ぶ。このとき、隣り合う電極体2同士は、外側未形成部213(2301)同士を密接(当接)させている。即ち、隣り合う電極体2同士は、正極23の金属箔231(詳しくは、箔本体2311)同士を当接させている。これにより、隣り合う電極体2の正極23同士が導通する。
【0045】
各電極体2における正極接続片2312のX軸方向の位置は同じである。また、各電極体2における負極接続片2412のX軸方向の位置は同じである。このため、平坦部2F同士が対向するように複数の電極体2がY軸方向に並んだ状態では、各電極体2の正極接続片2312同士がY軸方向に並び、負極接続片2412同士もY軸方向に並ぶ。そして、これら複数の電極体2の各正極接続片2312は、互いに導通するように束ねられ、外部端子4と集電体5を介して接続されている。また、複数の電極体2の各負極接続片2412も、互いに導通するように束ねられ、外部端子4と集電体5を介して接続されている(
図3参照)。本実施形態の正極接続片2312の束と負極接続片2412の束とは、溶接によって集電体5に接続されている。
【0046】
ケース3は、
図1~
図3に示すように、開口を有するケース本体31と、ケース本体31の開口を塞ぐ(閉じる)蓋板32と、を有する。このケース3は、電解液に耐性を有する金属によって形成される。本実施形態のケース3は、例えば、アルミニウム、又は、アルミニウム合金等のアルミニウム系金属材料によって形成される。
【0047】
電解液は、非水溶液系電解液である。電解液は、有機溶媒に電解質塩を溶解させることによって得られる。有機溶媒は、例えば、プロピレンカーボネート及びエチレンカーボネートなどの環状炭酸エステル類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、及びエチルメチルカーボネートなどの鎖状カーボネート類である。電解質塩は、LiClO4、LiBF4、及びLiPF6等である。本実施形態の電解液は、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、及びエチルメチルカーボネートを、エチレンカーボネート:ジメチルカーボネート:エチルメチルカーボネート=3:2:5の割合で調整した混合溶媒に、1mol/LのLiPF6を溶解させたものである。
【0048】
ケース本体31は、板状の閉塞部311と、閉塞部311の周縁に接続される筒状の胴部(周壁)312と、を備える。
【0049】
閉塞部311は、ケース本体31が開口を上に向けた姿勢で配置されたときにケース本体31の下端に位置する(即ち、前記開口が上を向いたときのケース本体31の底壁となる)部位である。閉塞部311は、該閉塞部311の法線方向から見て、矩形状である。
【0050】
胴部312は、角筒形状、より詳しくは、偏平な角筒形状である。胴部312は、閉塞部311の周縁における長辺から延びる一対の長壁部313と、閉塞部311の周縁における短辺から延びる一対の短壁部314とを有する。即ち、一対の長壁部313は、Y軸方向に間隔(詳しくは、閉塞部311の周縁における短辺に相当する間隔)を空けて対向し、一対の短壁部314は、X軸方向に間隔(詳しくは、閉塞部311の周縁における長辺に相当する間隔)を空けて対向する。短壁部314が一対の長壁部313の対応(詳しくは、Y軸方向に対向)する端部同士をそれぞれ接続することによって、角筒状の胴部312が形成される。
【0051】
以上のように、ケース本体31は、開口方向(Z軸方向)における一方の端部が塞がれた角筒形状(即ち、有底角筒形状)を有する。
【0052】
本実施形態のケース3では、X軸方向の内寸が120~150mmであり、Y軸方向の内寸が20~25mmであり、Z軸方向の内寸が80~90mmである。
【0053】
このように構成されるケース3には、複数の電極体2が、各電極体2の平坦部2Fのそれぞれが長壁部313と平行(略平行)となり、且つ、各電極体2の一対の湾曲部2Cが閉塞部311及び蓋板32と対向するように、絶縁部材6に覆われた状態で収容される(
図2及び
図3参照)。このとき、ケース3は、複数の電極体2の全体をY軸方向に圧迫(押圧)した状態で複数の電極体2を収容する。
【0054】
蓋板32は、ケース本体31の開口を塞ぐ板状の部材である。本実施形態の蓋板32は、Z軸方向から見て、X軸方向に長い矩形状の板材である。この蓋板32は、ケース本体31の開口を塞ぐように、蓋板32の周縁部がケース本体31の開口周縁部34に重ねられる。開口周縁部34と蓋板32とが重ねられた状態で、蓋板32とケース本体31との境界部が溶接され、これにより、ケース3が形成される。
【0055】
外部端子4は、他の蓄電素子の外部端子又は外部機器等と電気的に接続される部位である。このため、外部端子4は、導電性を有する部材によって形成される。例えば、外部端子4は、アルミニウム又はアルミニウム合金等のアルミニウム系金属材料、銅又は銅合金等の銅系金属材料等の溶接性の高い金属材料によって形成される。
【0056】
絶縁部材6は、ケース3(詳しくはケース本体31)と複数の電極体2との間に配置される。この絶縁部材6は、所定の形状に裁断された絶縁性を有するシート状の部材を折り曲げることによって
図2に示すような袋状に形成されている。
【0057】
以上の蓄電素子1によれば、隣の電極体2と密接する領域に導電層211の外側面上に活物質層212のない外側未形成部213(本実施形態の例では、箔本体2311の外側面2311A上に正極活物質層232の無い外側未形成部2301)が配置されているため(
図4参照)、前記外側面上に活物質層(充放電に寄与しない活物質層)202がある場合に比べ、該活物質層212の分だけ複数の電極体2を詰めて並べることができる。これにより、ケース3内のエネルギー密度を向上させることができる。
【0058】
また、本実施形態の蓄電素子1では、巻回数の少ない巻回型の電極体2を五つケース3に収容することで、ケース3内におけるエネルギー密度を向上させている。具体的には、以下の通りである。
【0059】
長尺方向の端部から接続片が延びている電極が巻回されることによって構成される巻回型の電極体では、電極の長尺方向の端部(接続片)からしか集電できないため、抵抗の問題から、巻回数の大きな電極体の実用化は困難であった。即ち、長尺方向の端部から接続片が延びる電極を巻回することによって構成される巻回型の電極体を備えた大型の蓄電素子(例えば、90mm×150mm×25mm程度の大きさの角型の蓄電素子)の実用化は、困難であった。
【0060】
しかし、本実施形態の蓄電素子1のように、巻回数の小さな電極体2(例えば、巻回数が10回程度)を複数ケース3内に配置することで、各電極体2における集電の際の抵抗を抑え、これにより、蓄電素子1の大型化を可能にした。
【0061】
また、長尺方向の端部から接続片が延びている電極が巻回されることによって構成される巻回型の電極体を備えた蓄電素子において、エネルギー密度(理論値)が最大になる電極体の数(極大値)は、計算によって求めることが可能である。本実施形態の蓄電素子1では、五つの電極体2がケース3に収容される場合がケース3内におけるエネルギー密度が最大となる。
【0062】
また、本実施形態の蓄電素子1では、隣り合う電極体2のそれぞれの接続片22(正極接続片2312、負極接続片2412)は、互いに導通するように束ねられ、且つ、隣り合う電極体2が外側未形成部213の導電層211の外側面同士(本実施形態の例では、外側未形成部2301の箔本体2311の外側面2311A同士)を直接密接させている。このように、本実施形態の蓄電素子1では、隣り合う電極体2(詳しくは、隣り合う電極体2の正極23)同士が導通した状態で、各電極体2において電極本体230、240と外部端子4とを導通させる接続片2312、2412も互いに導通するように束ねられているため、各電極体2のエネルギーバランスが図られると共に、外部端子4と電極本体230、240との間の抵抗が抑えられる。
【0063】
一般に、蓄電素子1において、電極20を湾曲させたときに負極活物質層242よりも正極活物質層232の方が割れ易い。このため、本実施形態の正極23では、正極23の最内周部位β1の湾曲部2Cに相当する領域に内側未形成部2313が配置されている。このように、巻回型の電極体2において正極活物質層232が最も割れやすい領域(即ち、正極23において湾曲部2Cでの曲率が最も大きくなる最内周部位β1の導電層211(箔本体2311)の内側面2311B上)に正極活物質層232を配置しないことで、電極体2における活物質層212(正極活物質層232及び負極活物質層242)の割れが効果的に防がれる。
【0064】
巻回型の電極体2では、湾曲部2Cにおいて、正極23の導電層211(箔本体2311)の外側面2311A上に重ねられる正極活物質層232は、その外側に配置される負極24の導電層211(箔本体2411)の内側面上に重ねられる負極活物質層242より小さくなる(周方向の長さ寸法が小さくなる)。一方、正極23の導電層211(箔本体2311)の内側面2311B上に重ねられる正極活物質層232は、その内側に配置される負極24の導電層211(箔本体2411)の外側面上に重ねられる負極活物質層242より大きくなる(周方向の長さ寸法が大きくなる)。このため、本実施形態の電極体2では、湾曲部2Cに相当する部位(正極湾曲部位)のそれぞれにおいて箔本体2311の内側面2311B上に正極活物質層232が配置されない構成とすることで、正極活物質層232が負極活物質層242より大きくなることに起因する電析の発生が抑えられる。
【0065】
尚、本発明の蓄電素子は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0066】
上記実施形態の電極体2では、電極体2における電極20の最外周部位α
0を正極23の最外周部位α
1が構成し、電極体2における電極20の最内周部位β
0を負極24の最内周部位β
2が構成している(
図7参照)が、この構成に限定されない。例えば、電極体2における電極20の最外周部位α
0を負極24の最外周部位α
2が構成してもよい。また、電極体2における電極20の最内周部位β
0を正極23の最内周部位β
1が構成してもよい。
【0067】
上記実施形態の電極体2は、最内周部位β0(負極24の最内周部位β2)に導電層211(箔本体2411)の内側面上に活物質層212(負極活物質層242)を有している(即ち、導電層211の内側面上に活物質層212の無い内側未形成部を有していない)が、この構成に限定されない。電極体2は、最内周部位β0に前記内側未形成部を有していてもよい。この場合、前記内側未形成部は、最内周部位β0において少なくとも湾曲部2Cに相当する領域に設けられるのが好ましい。かかる構成によれば、電極体2において湾曲部2Cでの曲率が最も大きくなる最内周の電極20の内側面上に活物質層212がないため、電極体2における活物質層212の割れが好適に防がれる。
【0068】
上記実施形態の蓄電素子1では、各電極体2は、巻回中心CがX軸方向(ケース3において短壁部314が対向する向き)に沿う姿勢でケース3に収容されているが、この構成に限定されない。例えば
図8に示すように、各電極体2Aは、巻回中心CがZ軸方向(ケース3において閉塞部311と蓋板32とが対向する向き)に沿う姿勢でケース3に収容されてもよい。
【0069】
この
図8に示す複数の電極体2Aでは、正極接続片2312が正極本体230(箔本体2311)の長辺(幅方向の端部)からZ軸方向(幅方向)に延び、負極接続片2412が負極本体240(箔本体2411)の長辺(幅方向の端部)からZ軸方向(幅方向)に延びる。この場合、一つの正極本体230から複数の正極接続片2312が延び、これら複数の正極接続片2312は、Y軸方向に並んでいる。また、一つの負極本体240から複数の負極接続片2412が延び、これら複数の負極接続片2412は、Y軸方向に並んでいる。即ち、上記実施形態の各電極体2では、一つの電極20から一つの接続片22が延びているが、この構成に限定されず、
図8に示す例のように、一つの電極20から複数の接続片22が延びてもよい。
【0070】
また、上記実施の電極体2と
図8に示す電極体とが混在した状態でケース3内に収容されてもよい。即ち、複数の電極体の巻回中心Cが全て同じ方向を向いてなくてもよい。
【0071】
また、上記実施形態の蓄電素子1では、電極体2の最外周にはセパレータ25が配置されていないが、この構成に限定されない。電極体2の最外周にセパレータ25が配置されていてもよい。この場合、蓄電素子1において、
図9に示すように、各電極体2の最外周の全周に亘ってセパレータ25が配置される構成でもよく、
図10に示すように、最外周にセパレータ25の配置された電極体2と、最外周にセパレータ25が配置されていない電極体2(上記実施形態の電極体2)とが混在していてもよい。
【0072】
また、電極体2の最外周に配置されるセパレータ25は、
図11に示すように、電極体2の最外周の一部(
図11に示す例では、周方向の半分の領域)に配置されていてもよい。この場合、隣り合う電極体2同士が接する領域に少なくとも一方の電極体2のセパレータ25が位置する構成が好ましい。かかる構成とすることで、隣り合う電極体2がケース3内で互いに位置ずれしたときの金属箔231、241等の破れを防ぐことができる。
【0073】
また、電極体2において、セパレータ25が電極20を挟み込むように配置され、電極20(電極本体21)の外周側端部20Aより該電極20の両側のセパレータ25がそれぞれ延び、該セパレータ25における電極20の外周側端部20Aより延びている部位(
図12においてスモークで示す部位)同士が接続されていてもよい。これにより、セパレータ25が熱等によって長手方向(周方向)に収縮しても、電極20の外周側端部20Aが露出しない(即ち、セパレータ25によって覆われている)ため、該電極20の外周側端部20Aが他の部位に接触することによる短絡を確実に防ぐことができる。尚、セパレータ25の前記延びている部位同士は、接着や溶着等の周知の方法によって接続されていればよい。
【0074】
また、上記実施形態においては、蓄電素子が充放電可能な非水電解質二次電池(例えばリチウムイオン二次電池)として用いられる場合について説明したが、蓄電素子の種類や大きさ(容量)は任意である。また、上記実施形態において、蓄電素子の一例として、リチウムイオン二次電池について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、本発明は、種々の二次電池、その他、一次電池や、電気二重層キャパシタ等のキャパシタの蓄電素子にも適用可能である。
【0075】
蓄電素子(例えば電池)1は、
図13に示すような蓄電装置(蓄電素子が電池の場合は電池モジュール)11に用いられてもよい。蓄電装置11は、少なくとも二つの蓄電素子1と、二つの(異なる)蓄電素子1同士を電気的に接続するバスバ部材12と、を有する。この場合、本発明の技術が少なくとも一つの蓄電素子1に適用されていればよい。
【符号の説明】
【0076】
1…蓄電素子、2、2A…電極体、2C…湾曲部、2F…平坦部、20…電極、20A…電極の外周側端部、21…電極本体、211…導電層、212…活物質層、213…外側未形成部、22…接続片、23…正極(電極)、230…正極本体、2301…外側未形成部、231…金属箔、2311…箔本体(導電層)、2311A…外側面、2311B…内側面、2312…正極接続片、2313…内側未形成部、232…正極活物質層(活物質層)、24…負極(電極)、240…負極本体、241…金属箔、2411…箔本体(導電層)、2412…負極接続片、242…負極活物質層(活物質層)、25…セパレータ、3…ケース、30…筐体部、31…ケース本体、311…閉塞部、312…胴部、313…長壁部、314…短壁部、32…蓋板、34…開口周縁部、4…外部端子、41…面、5…集電体、6…絶縁部材、11…蓄電装置、12…バスバ部材、500…二次電池、510…第一電極板、511…第一電極集電体、511a…第一電極無地部、512…第一電極活物質層、520…第二電極板、521…第二電極集電体、521a…第二電極無地部、522…第二電極活物質層、530…セパレータ、541…第一電極組立体、542…第二電極組立体、543…第三電極組立体、550…ケース、551…底部、552…側壁部、560…キャップ組立体、C…巻回中心、α0、α1、α2…最外周部位、β0、β1、β2…最内周部位