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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-21
(45)【発行日】2023-09-29
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/32 20060101AFI20230922BHJP
   B60H 1/22 20060101ALI20230922BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20230922BHJP
   F25B 5/02 20060101ALI20230922BHJP
   F25B 49/02 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
B60H1/32 624J
B60H1/22 671
B60H1/32 621C
F25B1/00 304D
F25B1/00 399Y
F25B5/02 B
F25B49/02 D
F25B49/02 510A
F25B49/02 510B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020029430
(22)【出願日】2020-02-25
(65)【公開番号】P2021133726
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080768
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100166327
【弁理士】
【氏名又は名称】舟瀬 芳孝
(74)【代理人】
【識別番号】100106644
【弁理士】
【氏名又は名称】戸塚 清貴
(72)【発明者】
【氏名】中原 泰彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 正明
(72)【発明者】
【氏名】重森 大輝
(72)【発明者】
【氏名】西野 正樹
【審査官】大野 明良
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-175149(JP,A)
【文献】特開2018-185104(JP,A)
【文献】特開2019-209938(JP,A)
【文献】特開2019-075248(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00- 3/06
F25B 1/00
F25B 5/02
F25B 49/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機からの冷媒が流れて、冷媒と外気との間で熱交換する外部熱交換器と、
前記外部熱交換器を通過した後の冷媒が流れて、冷媒を膨張させる冷房用膨張弁と、
前記冷房用膨張弁を通過した後の冷媒が流れて、空調エアと熱交換する冷房用熱交換器と、
前記冷房用熱交換器を流れる冷媒の温度を検出する冷媒温度検出手段と、
前記冷房用熱交換器付近の気化温度を推定する気化温度推定手段と、
前記冷房用熱交換器を流れる冷媒の温度を調整する温度調整手段と、
前記冷媒温度検出手段によって検出される冷媒の温度が前記気化温度推定手段によって推定された気化温度を超えないように、前記調整手段を制御する制御手段と、
電池と、
前記冷媒との間で熱交換させることにより、前記電池を冷却する電池冷却手段と、
前記電池の温度を検出する電池温度検出手段と、
を備え、
前記調整手段は、前記冷房用熱交換器を流れる冷媒の量と前記電池冷却手段を流れる冷媒の量との配分割合を変更するものとされ、
前記制御手段は、前記冷媒温度検出手段によって検出される冷媒の温度が前記気化温度推定手段によって推定された気化温度を超えるときは、前記電池温度検出手段によって検出される電池の温度が所定の閾値未満のときは前記電池冷却手段を流れる冷媒の量を減少させるように制御する一方、前記電池温度検出手段によって検出される電池の温度が該所定の閾値以上のときは前記電池冷却手段を流れる冷媒の量を維持させるように制御する、
ことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記電池が、車両駆動用モータへの電力供給用とされている、
ことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記電池冷却手段が、
前記外部熱交換器を通過した後の冷媒が流れて、冷媒を膨張させる電池用膨張弁と、 前記電池用膨張弁を通過した後の冷媒が流れて、前記電池からの熱を受熱する電池用熱交換器と、
を有している、
ことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記電池用熱交換器が前記電池から直接受熱するようにされて、冷媒が空調用と電池冷却用とで共用されている、ことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項5】
請求項3において、
前記電池用熱交換器が、前記冷房用熱交換器を流れる空調用の冷媒とは別途独立して設けられた電池冷却用の冷媒を介して、電池からの熱を間接受熱するようにされている、ことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記冷却手段は、
電池冷却用冷媒が流れる電池冷却用の循環経路と、
前記循環経路に接続されたポンプ、受熱用熱交換器および放熱用熱交換器と、
をさらに有し、
前記電池冷却用の冷媒は、前記ポンプによって前記循環経路を循環されることにより、前記受熱用熱交換器で電池からの熱を受熱して、受熱した電池からの熱を前記放熱用熱交
換器を介して前記電池用熱交換器へ放熱する、
ことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項において、
前記電池の温度を検出する電池温度検出手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記冷媒温度検出手段によって検出される冷媒の温度が前記気化温度推定手段によって推定された気化温度以下のときは、前記電池温度検出手段によって検出される電池の温度が前記所定の閾値未満のときは前記電池冷却手段を流れる冷媒の量を維持させるように制御する一方、前記電池温度検出手段によって検出される電池の温度が該所定の閾値以上のときは前記電池冷却手段を流れる冷媒の量を増加させるように制御する、
ことを特徴とする車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両において、少なくとも車室内の冷房を行うための空調装置として、ヒートポンプ式のものが用いられる。ヒートポンプ式の冷房装置では、冷媒を圧縮する圧縮機と、圧縮機からの冷媒が流れて冷媒と外気との間で熱交換する外部熱交換器と、外部熱交換器を通過した後の冷媒が流れて冷媒を膨張させる冷房用膨張弁と、冷房用膨張弁を通過した後の冷媒が流れて空調エアと熱交換する冷房用熱交換器と、が装備される、そして、ブロアによって流量変更される空調エアが、冷房用熱交換器を通過する際に冷却されて、車室内の冷房が行われることになる。
【0003】
また、車両の中には、電気自動車で代表されるように、大容量の電池を搭載したものがある。この電池は、充放電により高温となるため、電池用の冷却手段が設けられる。特許文献1には、空調用の冷媒と電池冷却用の冷媒とを別個独立して設けたものが開示されている。
【0004】
冷房用の熱交換器は冷たいことから、その表面に水分が付着しやすくなると共に、この水分に臭い成分が溶け込むことが多々ある。そして、水分が蒸発した際に、臭い成分が空調エアに混入して車室内に供給されると、乗員が異臭を感じてしまうことになる。
【0005】
特許文献2には、冷房用熱交換器に付着した水分が蒸発しにくい状況(外気導入率が高く、かつ外気温度が比較的低い状況)になった際に圧縮機を停止させることや、空調エアの吹き出し口を変更することにより、乗員が異臭を感じにくくすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-130980号公報
【文献】特開2016-144964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した特許文献2の場合、乗員に異臭を感じさせないために空調の作動状況を大きく変更する必要がある。このため、乗員は、違和感を感じたり、空調装置に異常が発生したのではという不安感すら持ちかねないこととなる。
【0008】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、空調の作動状況を大きく変更することなく、冷房用熱交換器からの水分蒸発を防止あるいは抑制できるようにした車両用空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明にあっては次のような解決手法を採択してある。すなわち、請求項1に記載のように、
冷媒を圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機からの冷媒が流れて、冷媒と外気との間で熱交換する外部熱交換器と、
前記外部熱交換器を通過した後の冷媒が流れて、冷媒を膨張させる冷房用膨張弁と、
前記冷房用膨張弁を通過した後の冷媒が流れて、空調エアと熱交換する冷房用熱交換器と、
前記冷房用熱交換器を流れる冷媒の温度を検出する冷媒温度検出手段と、
前記冷房用熱交換器付近の気化温度を推定する気化温度推定手段と、
前記冷房用熱交換器を流れる冷媒の温度を調整する温度調整手段と、
前記冷媒温度検出手段によって検出される冷媒の温度が前記気化温度推定手段によって推定された気化温度を超えないように、前記調整手段を制御する制御手段と、
電池と、
前記冷媒との間で熱交換させることにより、前記電池を冷却する電池冷却手段と、
前記電池の温度を検出する電池温度検出手段と、
を備え、
前記調整手段は、前記冷房用熱交換器を流れる冷媒の量と前記電池冷却手段を流れる冷媒の量との配分割合を変更するものとされ、
前記制御手段は、前記冷媒温度検出手段によって検出される冷媒の温度が前記気化温度推定手段によって推定された気化温度を超えるときは、前記電池温度検出手段によって検出される電池の温度が所定の閾値未満のときは前記電池冷却手段を流れる冷媒の量を減少させるように制御する一方、前記電池温度検出手段によって検出される電池の温度が該所定の閾値以上のときは前記電池冷却手段を流れる冷媒の量を維持させるように制御する、
ようにしてある。
【0010】
上記解決手法によれば、冷房用熱交換器を流れる冷媒の温度を調整するという手法によって、冷房用熱交換器に付着した水分の蒸発を防止あるいは抑制して、乗員に異臭を感じさせてしまうことが防止あるいは抑制される。また、冷媒の温度変化は乗員が気づかない程度の範囲であることから、乗員に不安感や違和感を与えてしまうこともない。以上に加えて、冷媒を利用して電池冷却を行いつつ、冷媒の温度調整を行うことができる。さらに、冷房用熱交換器に付着した水分の蒸発が問題になる状況であることから、水分の蒸発防止あるいは抑制と電池冷却とを高い次元で共に満足させる上で好ましいものとなる。
【0011】
上記解決手法を前提とした好ましい態様は、請求項2以下に記載のとおりである。
【0012】
前記電池が、車両駆動用モータへの電力供給用とされている、ようにしてある(請求項2対応)。この場合、電池が大容量になることから充放電による発熱量も大きくなるが、この電池の冷却を空調用の冷房システムを有効に利用して行うことができる。また、冷房用熱交換器と電池冷却手段との間での冷媒の配分割合を大きく変更することが要求されるが、これに応じて冷媒の温度調整範囲が拡大されることになる。
【0013】
前記電池冷却手段が、
前記外部熱交換器を通過した後の冷媒が流れて、冷媒を膨張させる電池用膨張弁と、 前記電池用膨張弁を通過した後の冷媒が流れて、前記電池からの熱を受熱する電池用熱交換器と、
を有している、
ようにしてある(請求項3対応)。この場合、電池冷却のために冷媒との熱交換を行うための具体的も構造が提供される。
【0014】
前記電池用熱交換器が前記電池から直接受熱するようにされて、冷媒が空調用と電池冷却用とで共用されている、ようにしてある(請求項4対応)。この場合、冷媒を、空調用と電池冷却用とで共用して、構造の簡素化やコスト抑制の上で好ましいものとなる。
【0015】
前記電池用熱交換器が、前記冷房用熱交換器を流れる空調用の冷媒とは別途独立して設けられた電池冷却用の冷媒を介して、電池からの熱を間接受熱するようにされている、ようにしてある(請求項5対応)。この場合、冷媒を、空調用と電池冷却用とで個別に設けることにより、空調制御と電池冷却制御を行う際の自由度を向上させることができる。特に、冷房用熱交換器を流れる冷媒の温度調整の自由度を高める上で好ましいものとなる。
【0016】
前記冷却手段は、
電池冷却用冷媒が流れる電池冷却用の循環経路と、
前記循環経路に接続されたポンプ、受熱用熱交換器および放熱用熱交換器と、
をさらに有し、
前記電池冷却用の冷媒は、前記ポンプによって前記循環経路を循環されることにより、前記受熱用熱交換器で電池からの熱を受熱して、受熱した電池からの熱を前記放熱用熱交換器を介して前記電池用熱交換器へ放熱する、
ようにしてある(請求項6対応)。この場合、電池冷却用の冷媒に関する具体的な構造が提供される。
【0017】
前記電池の温度を検出する電池温度検出手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記冷媒温度検出手段によって検出される冷媒の温度が前記気化温度推定手段によって推定された気化温度以下のときは、前記電池温度検出手段によって検出される電池の温度が所定の閾値未満のときは前記電池冷却手段を流れる冷媒の量を維持させるように制御する一方、前記電池温度検出手段によって検出される電池の温度が該所定の閾値以上のときは前記電池冷却手段を流れる冷媒の量を増加させるように制御する、
ようにしてある(請求項7対応)。この場合、冷房用熱交換器に付着した水分が蒸発する状況でないことから、電池冷却を優先的に行って、電池を十分かつすみかに冷却する上で好ましいものとなる。
【0018】
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、空調の作動状況を大きく変更することなく、冷房用熱交換器からの水分蒸発を防止あるいは抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明が適用された車両の一例を示す簡略平面図。
図2】空調用の冷媒と電池冷却用の冷媒とを共用した場合における冷媒の循環系統例を示すもので、暖房時での冷媒の流れを矢印で示す。
図3図2の循環系統例において、冷房時での冷媒の流れを矢印で示す。
図4図2の循環系統例において、除霜時での冷媒の流れを矢印で示す。
図5図2の循環系統例において、電池冷却時での冷媒の流れを矢印で示す。
図6図2の循環系統例において、冷房と電池冷却とを同時に行うときの冷媒の流れを矢印で示す。
図7図2の循環系統例において、暖房と電池冷却とを同時に行うときの冷媒の流れを矢印で示す。
図8】本発明の制御系統例を示す図。
図9】本発明の制御例を示すフローチャート。
図10】空調用の冷媒と電池冷却用の冷媒とを別個独立して設けた場合における冷媒の循環系統例を示すもので、電池冷却時での各冷媒の流れを矢印で示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明が適用された車両Vの一例を示すものである。車両Vは、後述するように電気自動車とされている。図中、1は左右の前輪、2は左右の後輪である。なお、図1中、左方が車両前方を示す。
【0022】
車両Vは、前輪1の直後方において、左右方向に延びるダッシュパネル3を有する。このダッシュパネル3によって、前側のモータ収納室(エンジンルームに相当)4と、後側の車室5とが区画されている。車室5内には、運転席6、助手席7、後席8が配設されている。9は、ステアリングハンドルである。
【0023】
車室5内には、ダッシュパネル3の直後方に位置させて、左右方向に延びるインストルメントパネル10が配設されている。このインストルメントパネル10内には、後述する空調ユニット20が配設されている。また、車室5の床面下方には、大容量の電池(バッテリ)21が配設されている。実施形態では、電池21は、フロアパネルの車幅方向中央部に形成されたトンネル部内に収納されているが、電池21の配設位置は特に問わないものである。
【0024】
モータ収納室4内には、モータ22が配設されている。モータ22の駆動力は、トランスアクスル23、左右一対のドライブシャフト24を介して、左右の前輪1に伝達される。車両Vは、実施形態では、前輪1が駆動輪とされ、後輪2が従動輪とされたFF車とされている。
【0025】
モータ22には、インバータ25が取付けられている。このインバータ25を介して、電池21とモータ22との間での電力の授受が行われる。すなわち、電池21からモータ22へ給電することにより、走行駆動される。また、減速時には、モータ22が発電機として機能されて、電池21の充電が行われる(回生)。なお、車両Vは、後輪駆動車あるいは4輪駆動車であってもよく、また駆動用モータの数は2以上であってもよく、さらにインホイール式のモータを用いたものであってもよい。
【0026】
モータ収納室2前部には、外部熱交換器30が配設されている。この外部熱交換器30は、後述するように、その内部を流れる冷媒と外気との間で熱交換を行うものである。外部熱交換器30は、走行風を受けて、外気と冷媒との間での熱交換が効率よく行うことが可能となっている。また、外部熱交換器30の直後方には、クーリングファン31が配設されている。このクーリングファン31を作動させることにより、車両Vの停止時にあっても、外気を外部熱交換器30へ導入することが可能となっている。
【0027】
外部熱交換器30の直前方には、開閉可能なグリルシャッター32が配設されている。このグリルシャッター32が開作動されたときには、走行風が外部熱交換器30に導入可能とされる。また、グリルシャッター32が閉作動されたときは、走行風の外部熱交換器30への導入が規制される。
【0028】
グリルシャッター32は、基本的には、車両Vの空力特性を改善するものである。すなわち、グリルシャッター32を閉じたときに、車両Vの空気抵抗が低減される。実施形態では、基本的に、車速が所定車速(例えば60km/h)以上のときにグリルシャッター32が閉とされ、車速が上記所定車速未満のときはグリルシャッター32が開とされる(車両Vの停止時も開状態とされる)。
【0029】
車両Vは、発熱源としてのエンジン(内燃機関)を有しないものである。このため、空調ユニット20は、電池21の電力を利用して空調を行うものとなっている。空調ユニット20による空調は、後述するようにヒートポンプ式とされている。
【0030】
電池21は、充放電によって熱を発生するものである、電池21の保護のために、電池21の温度が最高許容温度(例えば60℃)を超えないように適宜冷却する必要がある。電池21の冷却は、後述するように、空調ユニット20に使用される冷媒(熱媒体)を利用して行うようになっている(冷媒が、空調用と電池21の冷却用とで兼用)。
【0031】
電池冷却は、例えば、次のように行うことができる。まず、基本的に、電池21の温度が、上記最高許容温度よりも十分に低い温度に設定された低温側閾値(例えば40℃)以上になると、電池21の冷却を開始するようにしてある。また、電池21の温度が最高許容温度に近づいた高温側閾値(例えば50℃)以上になると、電池冷却能力をより増大させるようにしてある。電池冷却能力の調整は、電池冷却用に用いる冷媒の量の変更することにより行うことができる。なお、後述するように、冷房用熱交換器45に付着した水分の蒸発防止制御(抑制制御)のために、電池21の温度が高温側閾値以上になっても、電池冷却能力を現状の冷却状態に維持することも行われる。
【0032】
次に、空調と電池21の冷却を行うために設定される冷媒の循環系統例について、図2を参照しつつ説明する。なお、冷媒としては、例えば、R134a等のHFC系冷媒や、R1234yf等のHFO系冷媒、さらには二酸化炭素等を用いることができる。
【0033】
まず、空調ユニット20について説明する。空調ユニット20は、空調通路41を有する。空調通路41の入口には、切替ダンパ42が設けられて、外気導入と内気循環とが切替可能とされている。空調通路41内には、切替ダンパ42の近くにおいて、ブロア43が配設されている。ブロア43は、モータ44によって駆動される。なお、後述する各種電気機器類は、全て電池21からの給電を受けて作動(駆動)される。
【0034】
空調通路41内は、ブロア43の下流側において、冷房用の熱交換器45が配設されている。空調通路41のうち熱交換器45の下流側部分が、分岐板46によって2つの分岐通路43Aと43Bとに分岐されている。一方の分岐通路43Aには、上流側において暖房用の熱交換器47が配設されると共に、下流側において電気式のヒータ(例えばPTCヒータ)48が配設されている。ヒータ47は、通電されることによって加熱される。
【0035】
各分岐通路43Aと43Bの上流側端には、エアミックスダンパ49が配設されている。このエアミックスダンパ49によって、分岐通路43Aを流れるエア量と分岐通路43Bを流れるエア量との割合が変更される(割合は0~100%の範囲で変更)。
【0036】
各分岐通路43Aと43Bの下流側は、エアミックス室50に連なっている。このエアミックス室内の空調エアが、インストルメントパネル10等に設けた吹き出し口から車室内へと供給される。
【0037】
図2中、60は圧縮機、61はアキュムレータ(気液分離器)である。圧縮機60は、アキュムレータ61内の冷媒を吸引して圧縮するもので、電池21からの給電によって駆動される電気式とされている。
【0038】
圧縮機60で圧縮されて高温、高圧となった冷媒は、配管62を介して、暖房用の熱交換器47へ供給される。熱交換器47を通過した冷媒は、配管63を介して、前述した外部熱交換器30へ供給される。配管63の途中には、膨張弁として機能されるオリフィス64が配設されている。また、配管63には、オリフィス64をバイパスするバイパス配管65が設けられて、このバイパス配管65に電磁式の開閉弁66が接続されている。オリフィス64とバイパス配管65と開閉弁66とが、全開をとり得るようにされた開度可変式の膨張弁を構成している。このオリフィス64とバイパス配管65と開閉弁66との機能を、1つの弁装置として構成することもできる。
【0039】
外部熱交換器30を通過した冷媒は、配管67を介して、電磁式の切換弁68へと流れる。切換弁68には、2つの配管69、70が接続されている。切換弁68は、配管67を、配管69と70のいずれか一方に選択的に接続するものである。
【0040】
一方の配管69を流れる冷媒は、戻り用配管となる配管71を介して、アキュムレータ61へと流れる。他方の配管70を流れる冷媒は、冷房用の熱交換器45に供給される。この熱交換器45を通過した冷媒は、配管72および前述の配管71を介して、アキュムレータ61へと流れる。
【0041】
上記他方の配管70には、熱交換器45の近傍において、電磁式とされた開度可変式の膨張弁73が接続されている。膨張弁73は、完全に閉じた閉状態と、冷媒を膨張させるためにわずかに開かれる開状態との間で切換可能とされている。また、膨張弁73は、冷媒の膨張作用が得られる範囲で開度を変更可能とされている。
【0042】
上記他方の配管70には、切換弁68と膨張弁73との間の位置から、バイパス用の配管80が導出されている。この配管80を流れる冷媒は、電池21を冷却するための熱交換器81に供給される。この熱交換器81を通過した冷媒は、配管82および前述の配管71を介して、アキュムレータ61へと流れる。なお、熱交換器81は、電池21と一体化された電池パックとして車体に配設されている。
【0043】
上記配管80には、電磁式とされた開度可変式の膨張弁83が接続されている。膨張弁83は、完全に閉じた閉状態と、冷媒を膨張させるためにわずかに開かれる開状態との間で切換可能とされている。また、膨張弁83は、冷媒の膨張作用が得られる範囲で開度を変更可能とされている。
【0044】
前述した開閉弁66、切換弁68、膨張弁73、83の作動状態を適宜切換えることにより、冷媒の循環経路が切換えられる。以下に、暖房時、冷房時、除霜時、電池冷却時、冷房+電池冷却時、暖房+電池冷却時に場合分けして、冷媒の循環経路について説明する。
【0045】
(1)暖房時には、開閉弁66が閉、切換弁68が配管69を選択した状態とされる。また、エアミックスダンパ49は、空調エアが暖房用の熱交換器47を多く流れる位置に設定される。なお、各膨張弁73、83は閉とされるが、配管70、80に冷媒が流れないため、各膨張弁73、83の開閉状態は特に問わないものである。
【0046】
暖房時では、冷媒は、図2中矢印で示すように流れる。すなわち、圧縮機60によって圧縮されることにより高温、高圧になった冷媒が、熱交換器47を通過することにより、空調エアが加温される。暖房不足になるときは、電気式のヒーター48を作動させればよい。
【0047】
熱交換器47を通過した冷媒は、オリフィス64を通過することにより減圧されると共に温度低下される。減圧かつ低温化された冷媒は、外部熱交換器30を通過する際に外気と熱交換されて、加温される(冷媒の吸熱)。加温された冷媒は、配管67、69、71を経て、アキュムレータ61へ戻される。この暖房時には、外部熱交換器30が相当に冷たくなるので、霜が発生されやすいものである。
【0048】
(2)冷房時には、開閉弁66が開、切換弁68が配管70を選択、膨張弁73が開、膨張弁83が閉とされる。また、エアミックスダンパ49は、空調エアが暖房用の熱交換器47を少なく流れる位置に設定される。
【0049】
冷房時では、冷媒は、図3中矢印で示すように流れる。すなわち、圧縮機60によって圧縮された冷媒が、熱交換器47を通過するが、熱交換器47を流れる空調エアが少量(流量0の場合もあり)であって、空調エアの加温は殆ど行われない。熱交換器47を通過した冷媒は、オリフィス64をバイパスして、外部熱交換器30へと流れる。この外部熱交換器30によって、冷媒が外気によって冷却される(冷媒からの熱放出)。
【0050】
外部熱交換器30を通過した冷媒は、切換弁68から配管70を経て膨張弁73を通過する。この膨張弁73によって、冷媒が減圧かつ低温化される。低温になった冷媒が、冷房用の熱交換器45を流れることにより、空調エアが冷却される。熱交換器45を通過した冷媒は、配管72、71を経て、アキュムレータ61へ戻される。
【0051】
(3)除霜時は、外部熱交換器30に付着した霜を除去するときである。除霜時での冷媒の流れは図4に示されるが、開状態とされた開閉弁66を冷媒が通過する点を除いて、図2に示す暖房時と同じである。冷媒は、オリフィス64をバイパスすることから、外部熱交換器30に導入される冷媒の温度が、暖房時に比して相当に高温となり、これにより外部熱交換器30の除霜が行われる。
【0052】
除霜の開始は、外部熱交換器30に霜が発生したことを検出したときに開始される。この霜の検出を行うセンサとしては、例えば、霜を直接的に検出するセンサを用いることもできるが、冷媒の温度を検出するセンサによって行うこともできる。すなわち、例えば、暖房サイクルでの運転が継続されていることにより、外部熱交換器30に導入される直前の冷媒の温度が例えば-20℃以下となったときに、外部熱交換器30に霜が発生していると判定することができる。このように、霜発生の検出センサとしては、直接的に霜を検出する他、推定によって検出するものであってもよい。
【0053】
(4)電池冷却時には、開閉弁66が開、切換弁68が配管70を選択、膨張弁73が閉、膨張弁83が開とされる。
【0054】
電池冷却時では、冷媒は図5中矢印で示すように流れる。すなわち、圧縮機60からの冷媒は、熱交換器47、開閉弁66、外部熱交換器30、切換弁68、配管70、80、膨張弁83を通過する。この膨張弁83によって、冷媒が減圧かつ低温化される。低温になった冷媒が、電池冷却用の熱交換器81を流れることにより、電池21が冷却される。熱交換器81を通過した冷媒は、配管82、71を経て、アキュムレータ61へ戻される。
【0055】
(5)冷房かつ電池冷却時では、開閉弁66が開、切換弁68が配管70を選択、膨張弁73および83がそれぞれ開とされる。
【0056】
冷房でかつ電池冷却時では、冷媒は図6中矢印で示すように流れる。すなわち、圧縮機60からの冷媒は、熱交換器47、開閉弁66、外部熱交換器30、切換弁68、配管70へと流れる。配管70を流れた冷媒は、膨張弁73を通過すると共に、配管80を経て膨張弁83をも通過する。膨張弁73によって、冷媒が減圧かつ低温化される。低温になった冷媒が、冷房用の熱交換器45を流れることにより、空調エアが冷却される。また同時に、膨張弁83によって、冷媒が減圧かつ低温化される。低温になった冷媒が、電池冷却用の熱交換器81を流れることにより、電池21が冷却される。なお、膨張弁73、83の開度を調整することにより、熱交換器45を流れる冷媒の流量と熱交換器81を流れる冷媒の流量との割合を変更することができる。また、膨張弁73を流れる冷媒量と膨張弁83を流れる冷媒量との割合を変更する弁装置を別途設けることもできる。
【0057】
(6)暖房かつ電池冷却時では、図2の暖房状態から、切換弁68を配管70を選択する状態に変更される。また、膨張弁83が開とされる一方、膨張弁73は閉とされる。これにより、膨張弁83を通過することにより低温化された冷媒が熱交換器81を通過して、電池21が冷却される。
【0058】
暖房かつ電池冷却時では、冷媒の流れは図7矢印で示すようになる。すなわち、図2に示す暖房時に比して、外部熱交換器30を通過した後の冷媒が、膨張弁83から電池冷却用の熱交換器81を流れる態様とされる。
【0059】
前述した冷媒循環経路について、各種センサS1~S14が設けられている。センサS1は、配管62に設けられて、圧縮機60から吐出された冷媒の温度を検出する温度センサである。センサS2は、配管63に設けられて、冷媒の圧力を検出する圧力センサである(高圧センサ)。センサS3は、グリルシャッター32付近に設けられて、外気の温度を検出する温度センサである。センサS4は、配管67に設けられて、外部熱交換器30を通過した直後の冷媒の温度を検出する温度センサである。センサS5は、配管67に設けられて、外部熱交換器30を通過した直後の冷媒の圧力を検出する圧力センサである(低圧センサ)。
【0060】
センサS6は、電池21に設けられて、電池21の温度を検出する温度センサである。センサS7は、配管82に設けられて、熱交換器81を通過した直後の冷媒の温度を検出する温度センサである。センサS8は、配管82に設けられて、電池冷却用の熱交換器81を通過した直後の冷媒の圧力を検出する圧力センサである。
【0061】
センサS9は、冷房用の熱交換器45に設けられて、熱交換器45の温度を検出する温度センサである。センサS10は、配管72に設けられて、熱交換器45を通過した直後の冷媒の温度を検出する温度センサである。センサS11は、電気式のヒータ48の直下流側に設けられて、ヒータ48を通過した直後の空調エアの温度を検出する温度センサである。
【0062】
図8は、電池冷却を含む空調制御を行うための制御系統例を示す。図中Uは、マイクロコンピュータを利用して構成された制御ユニットである。制御ユニットUは、制御手段としてのCPU、記憶手段としてのROM、RAMやインターフェイスを備えている。
【0063】
上記制御ユニットUには、前述した各種センサS1~S11の他、センサS12~ S15からの信号が入力される。センサS12は、車室内の温度を検出する温度センサである。センサS13は、車室内の湿度を検出する湿度センサである。センサS14は、車室内に設けられて日射量を検出する日射量センサである。S15は、車速を検出する車速センサである。
【0064】
制御ユニットUには、さらに、乗員によって操作される空調操作器S16からの信号が入力される。空調操作器S16は、従来と同様に構成されているが、例えば、空調のON、OFFスイッチ、温度設定スイッチ、風量変更スイッチ、吹き出し口変更スイッチ、自動モードと手動モードとのいずれかを選択するスイッチ等々を有している。
【0065】
制御ユニットUは、電池冷却と空調制御のために、図8に示す前述した各種機器類を制御する他、吹き出し口を選択するための吹き出し口切換ダンパ50を制御する。
【0066】
制御ユニットUは、上記空調操作器S16での操作に応じて、暖房、冷房等の空調制御を適宜行う。なお、空調制御そのものは、一般的な空調制御の場合と変わりがないので、これ以上の説明は省略する。
【0067】
次に、冷房用熱交換器45からの水分蒸発に起因する異臭発生の防止あるいは抑制について説明する。まず、冷房用熱交換器45に供給される冷媒の量が十分にあれば、冷房用熱交換器45を常時水分の気化温度(露点温度)以下に維持して、付着した水分の蒸発を確実に防止することができる(水分蒸発に伴う異臭発生の確実な防止)。
【0068】
一方、冷房時に電池冷却が要求されたときは、電池冷却のために冷媒が用いられことから、冷房用熱交換器45へ供給される冷媒の量が不足がちになる場合を生じる。この場合、電池冷却と冷房用熱交換器からの水分蒸発の防止とを高い次元で満足させる必要がある。
【0069】
制御ユニットUは、冷房用熱交換器45からの水分蒸発防止(あるいは抑制)と、電池冷却とを高い次元で満足できるように、冷房用の冷媒量と電池冷却用の冷媒量との配分割合を変更制御する。制御ユニットUによる制御例について、図9に示すフローチャートを参照しつつ説明する。なお、以下の説明でQはステップを示す。また、図9のフローチャートは、冷房用熱交換器45へ供給される冷媒量が不足がちとなる冷房時かつ電池冷却を行うときを前提としている。
【0070】
まず、図9のQ1において、温度センサS12で検出される車室内温度と、湿度センサS13で検出される車室内の湿度と、温度センサS9で検出される冷房用熱交換器45の温度(その付近の温度であってもよい)と、温度センサS6で検出された電池21の温度とが読み込まれる。
【0071】
Q2では、車室内温度と車室内湿度と冷房用熱交換器45の温度とに基づいて、あらかじめ設定された計算式あるいはマップに基づいて、冷房用熱交換器45での水の露点温度(気化温度)TRが算出される(推定)。
【0072】
Q2の後、Q3において、冷房用熱交換器45の温度が、上記露点温度以下であるか否かが判別される。このQ3の判別でYESのときは、冷房用熱交換器45に付着する水分が蒸発する可能性がない場合であり、冷房用熱交換器45へ供給される冷媒量が比較的少量(比較的高温でも)でも問題を生じないときである。このときは、Q4において、電池21の温度が高温側閾値(例えば50℃)以上であるか否かが判別される。
【0073】
上記Q4の判別でYESのときは、電池21の温度が最高許容温度に近づいていることから、Q5において、電池用熱交換器81を流れる冷媒の量が増加するように制御される。これにより、電池21の温度がすみやかに低下される。電池冷却用の冷媒量が増加される分、冷房用熱交換器45へ供給される冷媒の量が減少される。なお、冷媒量の変更は、膨張弁73、83の開度を変更制御することにより行うことができる。
【0074】
上記Q5の後は、Q6において、電池21の温度が低温側閾値(例えば40℃)以下になったか否かが判別される。当初は、Q6の判別でNOとなって、Q1に戻る。Q6の判別でYESになったときに、制御が終了される。
【0075】
上記Q4の判別でNOのときは、Q7において、電池冷却の状況は現状のままで十分であるとして、電池用熱交換器81を流れる冷媒の量が現状の量に維持される。Q7の後は、Q6に移行される。
【0076】
前記Q3の判別でNOのときは、冷房用熱交換器45に付着した水分が蒸発しやすい状況であり、冷房用熱交換器45の温度上昇を防止あるいは抑制する必要性の高いときである。このときは、Q8において、電池21の温度が高温側閾値(例えば50℃)以上であるか否が判別される。
【0077】
上記Q8の判別でYESのときは、Q9において、電池冷却のための冷媒量を減少させることは好ましくないことから、電池冷却用の冷媒の量が、現状の量に維持される。Q9の後は、Q6に移行される。
【0078】
上記Q8の判別でNOのときは、電池冷却には余裕がある状況である。このときは、Q10において、電池用熱交換器81を流れる冷媒の量が減少される。電池冷却用の冷媒量が減少される分、冷房用熱交換器45へ供給される冷媒の量が増大されて(冷媒の温度が低下されて)、冷房用熱交換器45をより冷たくすることができる(露点温度以下にする制御)。Q10の後は、Q6に移行される。
【0079】
ここで、冷房用熱交換器45へ供給される冷媒の量の変更や、電池用熱交換器81へ供給される冷媒の量が変更されても、乗員は、空調の作動状況が変更されたとは気づきにくいものである。つまり、乗員に対して違和感や不安感を与えてしまう事態は、実質的に生じないものである。
【0080】
図10は、空調用の冷媒と電池冷却用の冷媒とを別個独立して設けた場合の循環系統例を示す。以下、図10について説明するが、矢印で示す冷媒の流れは、電池冷却時のときを示す。
【0081】
まず、電池冷却用の循環回路91が別途設けられる。この循環経路91には、電動式のポンプ92、放熱器として機能される熱交換器93、受熱器として機能される熱交換器94が接続されている。ポンプ92で圧送される冷媒は、順次、熱交換器93、熱交換器94へと流れて、ポンプ92へ戻る。
【0082】
受熱器としての熱交換器は、電池21と一体化されて、電池21からの受熱用とされている。放熱器としての熱交換器93は、空調用の循環経路に設けられた受熱器としての熱交換器81を介して、空調用の冷媒へ放熱する。このように、電池21で発生された熱は、熱交換器94から電池冷却用の冷媒を介して、熱交換器81によって空調用の冷媒に対して放熱されることになる。ポンプ92の回転数を増大させるほど、電池21の熱を空調用の冷媒へとすみやかに排熱させることができる。
【0083】
空調用冷媒と電池冷却用冷媒とを別系統として独立して設けた場合は、例えば電池用熱交換器81を流れる冷媒の量が少ないときでも、ポンプ92の回転数を増大させて電池用冷媒の循環回数を増大させることにより、電池21をより効果的に冷却することが可能となる。したがって、例えば、図9のQ9および/またはQ10の処理において、電池用冷媒の循環回数を増大させる制御を実行しつつ、冷房用熱交換器45へ供給する空調用の冷媒量を増大させることが可能となる。
【0084】
以上実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載された範囲において適宜の変更が可能である。冷房用の熱交換器45と電池用熱交換器81との間での冷媒量の配分割合を変更する場合に、膨張弁73、83の両方を開度可変式とする場合に限らず、冷房用熱交換器45からの水分蒸発を優先するために冷房用膨張弁73の開度を一定とすると共に(十分な冷媒量を確保できる一定開度)、膨張弁83のみを開度可変式とすることもできる。冷房用熱交換器45と電池用熱交換器81との間での冷媒量の配分割合を変更するための流量調整手段としては、適宜のものを採択することができ、例えば、配管70と80との合流部に配分割合変更用の弁装置を別途設けて、この弁装置によって冷房用熱交換器45と電池用熱交換器81との間での冷媒量の配分割合を変更することもできる。
【0085】
冷房用熱交換器45を流れる冷媒の温度を調整する調整手段としては、冷媒の量を変更するものに限らず、冷媒の温度そのものを調整するものであってもよい。例えば、グリルシャッター32を基本の開閉条件に優先して開状態としたり、クーリングファン31を作動させる等のことにより、外部熱交換器30において冷媒をより十分に冷却することができる。
【0086】
曇り止めを行う場合は、冷媒の流れは基本的には暖房の場合と同じであり、湿度が高い場合は、冷媒がさらに冷房用熱交換器45を通過するようにすればよい(除湿)。圧縮機60、92は、電池21からの給電を受ける電動モータによって駆動される場合に限らず走行用の駆動源の動力の一部を用いて駆動されるものであってもよい。勿論、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましいあるいは利点として表現されたものを提供することをも暗黙的に含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、エンジンを有しない電気自動車用の空調装置として好適である。
【符号の説明】
【0088】
V:車両
20:空調ユニット
21:電池
22:モータ
30:外部熱交換器
31:クーリングファン
32:グリルシャッター
40空調ユニット
43:ブロア
45:熱交換器(冷房用)
47:熱交換器(暖房用)
60:圧縮機
64:オリフィス(膨張弁)
65:バイパス配管
66:開閉弁
68:切換弁
73:膨張弁(冷房用)
81:熱交換器(電池冷却用)
83:膨張弁(電池冷却用)

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10