(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-21
(45)【発行日】2023-09-29
(54)【発明の名称】移動装置
(51)【国際特許分類】
B66B 9/02 20060101AFI20230922BHJP
B66B 1/50 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
B66B9/02 Z
B66B1/50
(21)【出願番号】P 2022034337
(22)【出願日】2022-03-07
【審査請求日】2022-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】宮川 行宏
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-014070(JP,U)
【文献】特開平04-169489(JP,A)
【文献】特開2016-121021(JP,A)
【文献】特開2006-225052(JP,A)
【文献】特開平4-191282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 9/02
B66B 1/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
かごと、
前記かごに設けられ且つ該かごを水平方向に沿って移動させるための少なくとも一つの横移動装置と、
前記横移動装置と係合した状態で該横移動装置を案内する横軌道と、を備え、
前記横移動装置は、前記かごから突出する係合部であり、
前記横軌道は、
水平方向に沿った第一の方向に延びると共に、該第一の方向に前記横移動装置を案内する第一横軌道と、
水平方向に沿い且つ鉛直方向から見て前記第一の方向と交差する第二の方向に延びると共に、該第二の方向に前記横移動装置を案内する第二横軌道と、
前記第一横軌道と前記第二横軌道との対応する端部間に配置され且つ前記横移動装置と係合可能な受け渡し部と、を有し、
前記第一横軌道には、前記係合部を前記第一の方向に案内可能に前記係合部と係合する第一被係合部が設けられ、
前記第二横軌道には、前記係合部を前記第二の方向に案内可能に前記係合部と係合する第二被係合部が設けられ、
前記受け渡し部には、前記係合部を前記第一横軌道から前記第二横軌道、又は前記第二横軌道から前記第一横軌道に移動可能に前記係合部と係合する第三被係合部が設けられ、
前記受け渡し部は、前記かごに設けられた横移動装置
の係合部が前記第一横軌道
の第一被係合部、前記受け渡し部
の第三被係合部、及び前記第二横軌道
の第二被係合部の少なくとも一つと係合した状態で、前記第一横軌道から前記第二横軌道、又は前記第二横軌道から前記第一横軌道に前記かごを受け渡す、移動装置。
【請求項2】
前記受け渡し部は、水平方向と沿った方向に延び且つ前記横移動装置と係合可能な第三横軌道を有する回転部を備え、
前記回転部は、鉛直方向に延びる回転軸まわりに回転することによって、前記第一横軌道と前記第三横軌道とが連続した第一姿勢と、前記第二横軌道と前記第三横軌道とが連続した第二姿勢と、に姿勢変更できる、請求項1に記載の移動装置。
【請求項3】
かごと、
前記かごに設けられ且つ該かごを水平方向に沿って移動させるための少なくとも一つの横移動装置と、
前記横移動装置と係合した状態で該横移動装置を案内する横軌道と、を備え、
前記横軌道は、
水平方向に沿った第一の方向に延びると共に、該第一の方向に前記横移動装置を案内する第一横軌道と、
水平方向に沿い且つ鉛直方向から見て前記第一の方向と交差する第二の方向に延びると共に、該第二の方向に前記横移動装置を案内する第二横軌道と、
前記第一横軌道と前記第二横軌道との対応する端部間に配置され且つ前記横移動装置と係合可能な受け渡し部と、水平方向と沿った方向に延び且つ前記横移動装置と係合可能な第三横軌道を有する回転部と、を有し、
前記受け渡し部は、前記かごに設けられた横移動装置が前記第一横軌道、前記受け渡し部、及び前記第二横軌道の少なくとも一つと係合した状態で、前記第一横軌道から前記第二横軌道、又は前記第二横軌道から前記第一横軌道に前記かごを受け渡し、
前記回転部は、鉛直方向に延びる回転軸まわりに回転することによって、前記第一横軌道と前記第三横軌道とが連続した第一姿勢と、前記第二横軌道と前記第三横軌道とが連続した第二姿勢と、に姿勢変更できるとともに、鉛直方向に往復動可能であり、
前記第一横軌道と前記第二横軌道とは、鉛直方向の位置が異なる
、移動装置。
【請求項4】
かごと、
前記かごに設けられ且つ該かごを水平方向に沿って移動させるための二つの横移動装置であって、移動方向の異なる二つの横移動装置と、
前記横移動装置と係合した状態で該横移動装置を案内する横軌道と、を備え、
前記横軌道は、
水平方向に沿った第一の方向に延びると共に、該第一の方向に前記横移動装置を案内する第一横軌道と、
水平方向に沿い且つ鉛直方向から見て前記第一の方向と交差する第二の方向に延びると共に、該第二の方向に前記横移動装置を案内する第二横軌道と、
前記第一横軌道と前記第二横軌道との対応する端部間に配置され且つ前記横移動装置と係合可能な受け渡し部と、を有し、
前記受け渡し部は、
前記かごに設けられた横移動装置が前記第一横軌道、前記受け渡し部、及び前記第二横軌道の少なくとも一つと係合した状態で、前記第一横軌道から前記第二横軌道、又は前記第二横軌道から前記第一横軌道に前記かごを受け渡し、
前記第一の方向に延び且つ前記二つの横移動装置のうち一方の横移動装置と係合可能な第三横軌道を有する軌道部と、
前記軌道部を第一位置と鉛直方向から見て該第一位置から前記第二の方向に間隔をあけた第二位置との間で往復動させる駆動部と、を有し、
前記軌道部が前記第一位置に位置するとき、前記第一横軌道と前記第三横軌道とが連続し、前記第一横軌道と前記第三横軌道との間で前記一方の横移動装置が移動でき、
前記軌道部の第三横軌道と前記一方の横移動装置が係合した状態で、前記駆動部によって前記軌道部が前記第一位置から前記第二位置に移動することで、前記二つの横移動装置のうち他方の横移動装置が前記第二横軌道と係合する一方、前記第二位置から前記第一位置に移動することで、前記他方の横移動装置が前記第二横軌道との係合から解放され、
前記軌道部は、前記第二位置に移動したときに、前記一方の横移動装置の前記第三横軌道との係合を解放でき、又は前記一方の横移動装置の前記第三横軌道との係合が解放される方向に移動でき
る、移動装置。
【請求項5】
前記軌道部が鉛直方向に移動可能であり、
前記第一横軌道と前記第二横軌道とは、鉛直方向の位置が異なる、請求項4に記載の移動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれ水平方向に沿い異なる複数の方向に延びる横軌道を渡ってかごが移動可能な移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本願の発明者は、乗りかごと乗りかごを昇降させる昇降駆動装置(横移動装置)とが分離・結合するエレベータ(移動装置)を提案している(特許文献1)。このエレベータでは、隣り合う昇降路に位置する昇降駆動装置が隣り合うと、隣り合う昇降駆動装置に設けられた横軌道が横方向に連続するため、この連続する横軌道を通じて、昇降駆動装置に配置された乗りかごを隣り合う昇降駆動装置に移行できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記エレベータでは、乗りかごは、連続する横軌道の延びる方向にしか移動できない、即ち、水平面における一方向しか移動できず、他の方向に曲がって移動することができなかった。
【0005】
本発明は、それぞれ水平方向に沿い異なる複数の方向に延びる横軌道間をかごが移動可能な移動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の移動装置は、
かごと、
前記かごに設けられ且つ該かごを水平方向に沿って移動させるための少なくとも一つの横移動装置と、
前記横移動装置と係合した状態で該横移動装置を案内する横軌道と、を備え、
前記横軌道は、
水平方向に沿った第一の方向に延びると共に、該第一の方向に前記横移動装置を案内する第一横軌道と、
水平方向に沿い且つ鉛直方向から見て前記第一の方向と交差する第二の方向に延びると共に、該第二の方向に前記横移動装置を案内する第二横軌道と、
前記第一横軌道と前記第二横軌道との対応する端部間に配置され且つ前記横移動装置と係合可能な受け渡し部と、を有し、
前記受け渡し部は、前記かごに設けられた横移動装置が前記第一横軌道、前記受け渡し部、及び前記第二横軌道の少なくとも一つと係合した状態で、前記第一横軌道から前記第二横軌道、又は前記第二横軌道から前記第一横軌道に前記かごを受け渡す。
【0007】
かかる構成によれば、かごに設けられた横移動装置が第一横軌道、第二横軌道、及び受け渡し部の少なくとも一つに係合した状態で、延びる方向の異なる第一横軌道から第二横軌道、又は第二横軌道から第一横軌道に受け渡し部がかごを受け渡すことができるため、かごが第一横軌道、第二横軌道、及び受け渡し部から落下せずに水平面における異なる方向に曲がって移動することができる。
【0008】
前記移動装置では、
前記受け渡し部は、水平方向と沿った方向に延び且つ前記横移動装置と係合可能な第三横軌道を有する回転部を備え、
前記回転部は、鉛直方向に延びる回転軸まわりに回転することによって、前記第一横軌道と前記第三横軌道とが連続した第一姿勢と、前記第二横軌道と前記第三横軌道とが連続した第二姿勢と、に姿勢変更できてもよい。
【0009】
かかる構成によれば、かごが、第一横軌道、第二横軌道、及び第三横軌道の少なくとも一つに係合した状態で、第三横軌道を介して第一横軌道と第二横軌道との間を移動できるため、水平面における異なる方向に曲がって移動する際に、第一横軌道、第二横軌道、及び第三横軌道からのかごの落下を確実に防ぐことができる。
【0010】
前記移動装置では、
前記回転部が、鉛直方向に往復動可能であり、
前記第一横軌道と前記第二横軌道とは、鉛直方向の位置が異なってもよい。
【0011】
かかる構成によれば、かごが、高さの異なる第一横軌道と第二横軌道との間を移動することができる。
【0012】
前記移動装置では、
前記かごには、移動方向の異なる二つの横移動装置が設けられ、
前記受け渡し部は、
前記第一の方向に延び且つ前記二つの横移動装置のうち一方の横移動装置と係合可能な第三横軌道を有する軌道部と、
前記軌道部を第一位置と鉛直方向から見て該第一位置から前記第二の方向に間隔をあけた第二位置との間で往復動させる駆動部と、を有し、
前記軌道部が前記第一位置に位置するとき、前記第一横軌道と前記第三横軌道とが連続し、前記第一横軌道と前記第三横軌道との間で前記一方の横移動装置が移動でき、
前記軌道部の第三横軌道と前記一方の横移動装置が係合した状態で、前記駆動部によって前記軌道部が前記第一位置から前記第二位置に移動することで、前記二つの横移動装置のうち他方の横移動装置が前記第二横軌道と係合する一方、前記第二位置から前記第一位置に移動することで、前記他方の横移動装置が前記第二横軌道との係合から解放され、
前記軌道部は、前記第二位置に移動したときに、前記一方の横移動装置前記の第三横軌道との係合を解放でき、又は前記一方の横移動装置の前記第三横軌道との係合が解放される方向に移動できてもよい。
【0013】
かかる構成によれば、かごに設けられた少なくとも一方の横移動装置が、第一横軌道、第二横軌道、及び第三横軌道の少なくとも一つに係合した状態で、第三横軌道を介して第一横軌道と第二横軌道との間をかごが移動できるため、水平面における異なる方向に曲がって移動する際に、第一横軌道、第二横軌道、及び第三横軌道からのかごの落下を確実に防ぐことができる。
【0014】
前記移動装置では、
前記軌道部が鉛直方向に移動可能であり、
前記第一横軌道と前記第二横軌道とは、鉛直方向の位置が異なってもよい。
【0015】
かかる構成によれば、かごが、高さの異なる第一横軌道と第二横軌道との間を移動することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上より、本発明によれば、それぞれ水平方向に沿い異なる複数の方向に延びる横軌道間をかごが移動可能な移動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る移動装置にて、かごが第一横軌道に係合している状態を示す、正面視での模式図である。
【
図2】
図2は、前記移動装置にて、横移動装置が設けられた単体の乗り部を示す側面視での模式図ある。
【
図3】
図3は、前記移動装置にて、回転部が第一状態であり且つかごが受け渡し部に係合している状態を示す、正面視での模式図である。
【
図4】
図4は、前記移動装置にて、回転部が第二状態であり且つかごが受け渡し部に係合している状態を示す、正面視での模式図である。
【
図5】
図5は、前記移動装置にて、回転部が第二状態であり且つかごが受け渡し部に係合している状態を示す、平面視での模式図である。
【
図6】
図6は、変形例に係る移動装置にて、かごが第一横軌道に係合している状態を示す、平面視での模式図である。
【
図7】
図7は、前記移動装置にて、かごが受け渡し部に係合している状態を示す、平面視での模式図である。
【
図8】
図8は、前記移動装置にて、かごが第二横軌道に係合している状態を示す、平面視での模式図である。
【
図9】
図9は、
図8のかごドアの手前の位置での正面視での模式図である。
【
図10】
図10は、変形例に係る移動装置を示す、平面視での模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について、
図1~
図5を参照しつつ説明する。
【0019】
移動装置1は、
図1及び
図2に示すように、かご2と、かご2に設けられ且つかご2を水平方向に沿って移動させるための少なくとも一つの横移動装置3と、横移動装置3と係合した状態で横移動装置3を案内する横軌道4と、を備える。この移動装置1は、一つのかご2と一つの横移動装置3とを備える。本実施形態では、移動装置1は、屋外に設置されているが、移動装置1の少なくとも一部が建物内に設置されていてもよい。
【0020】
移動装置1は、横移動装置3の移動及び横軌道4の移動(具体的には、後述する横軌道4の受け渡し部45の移動)を制御可能な制御部を備える。この制御部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、このCPUによって実行される種々のプログラムやその実行に必要なデータ等を予め記憶するROM(Read Only Memory)やEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の不揮発性記憶素子、このCPUのいわゆるワーキングメモリとなるRAM(Random Access Memory)等の揮発性記憶素子およびその周辺回路等を備えた基盤やマイクロコンピュータ等によって構成されている。
【0021】
かご2は、利用者が搭乗する乗りかごである。なお、かご2は、利用者以外に荷物を載せることができるかごであってもよい。
【0022】
また、かご2は、例えば、利用者が搭乗するかご本体200、及び、開閉により内外を連通させるかごドア201を備える。本実施形態のかごドア201は、両開きとされているが、片開きであってもよい。
【0023】
横移動装置3は、横軌道4を走行するための装置であり、水平方向延びている。本実施形態では、横移動装置3は、かご本体200の背面に設けられており、具体的に、かご本体200の背面に水平方向に延びるように突出している。なお、横移動装置3は、かご本体200の側面、天井、床面等に設けられていてもよい。
【0024】
本実施形態では、横移動装置3は、かご2と連続している第一部位301と、第一部位301からかご2と反対側に延び且つ第一部位301よりも鉛直方向の寸法が大きい第二部位302と、で構成されている。第一部位301及び第二部位302は、いずれも、水平方向に長い四角柱状である。
【0025】
本実施形態では、横移動装置3は、自身が走行するための動力を、例えば、横移動装置3に備えており自走する。この動力源は、例えば、モータである。また、横移動装置3は、移動装置1の制御部からの制御を受けて、横軌道4での走行を制御するマイコンを備える。さらに、横移動装置3は、横軌道4と当接する車輪も備える。この横移動装置3では、車輪にモータから動力が伝達される。また、横軌道4と当接する車輪の回転駆動によって、横移動装置3が設けられたかご2が横軌道4に対して移動する。
【0026】
横軌道4は、水平方向に沿った第一の方向(
図1における横方向)に延びると共に、第一の方向に横移動装置3を案内する第一横軌道41を備える。また、横軌道4は、水平方向に沿い且つ鉛直方向から見て第一の方向と交差する第二の方向に延びると共に、第二の方向に横移動装置3を案内する第二横軌道42を備える。さらに、横軌道4は、第一横軌道41と第二横軌道42との対応する端部(第一横軌道41の第二横軌道42に近い側の端部(
図1における右端部)と、第二横軌道42の第一横軌道41に近い側の端部間(
図1における左端部)との間)に配置され且つ横移動装置3と係合可能な受け渡し部45と、を有する。
【0027】
受け渡し部45は、かご2に設けられた横移動装置3が第一横軌道41、受け渡し部45、及び第二横軌道42の少なくとも一つと係合した状態で、第一横軌道41から第二横軌道42、又は第二横軌道42から第一横軌道41にかご2を受け渡す。また、受け渡し部45は、横移動装置3と係合可能な第三横軌道43を有する。本実施形態では、受け渡し部45は、水平方向と沿った方向に延び且つ横移動装置3と係合可能な第三横軌道43を有する回転部46を備える。また、受け渡し部45は、設置面に設置され、且つ、回転部46を載置する載置部47を備える。回転部46と載置部47とは、別体である。
【0028】
第一横軌道41、第二横軌道42、及び、第三横軌道43は、それぞれ、直線状に延びている。また、第一横軌道41、第二横軌道42、及び、第三横軌道43は、それぞれ、横移動装置3の外面を囲む形状を有する。これにより、第一横軌道41、第二横軌道42、及び、第三横軌道43の少なくとも一つが横移動装置3と係合しているとき、係合している各横軌道41、42、43から横移動装置3が落下しない。なお、各横軌道41、42、43の横移動装置3の外面に対向する壁と、横移動装置3の外面との間には、わずかに隙間が設けられている。
【0029】
また、第一横軌道41、第二横軌道42、及び、第三横軌道43は、自身が横移動装置3と係合しているか否かを検知する係合検知センサを有する。各横軌道41、42、43は、自身が横移動装置3と係合していることを検知すると、制御部に係合検知信号を出力する。
【0030】
第一横軌道41及び第二横軌道42の位置は固定されている。また、第一横軌道41及び第二横軌道42の姿勢は固定されている。本実施形態では、第一横軌道41と第二横軌道42とは、鉛直方向の位置が異なる。また、第一横軌道41は、第二横軌道42よりも低い位置に配置されているが、第一横軌道41は、第二横軌道42よりも高い位置に配置されていてもよい。
【0031】
回転部46は、鉛直方向に延びる回転軸まわりに回転することによって、第一横軌道41と第三横軌道43とが連続した第一姿勢と、第二横軌道42と第三横軌道43とが連続した第二姿勢と、に姿勢変更できる。本実施形態では、第一姿勢は、第三横軌道43が第一横軌道41と同じ高さに位置し且つ第一の方向に沿って延びる姿勢である。第二姿勢は、第三横軌道43が第二横軌道42と同じ高さに位置し且つ第二の方向に沿って延びる姿勢である。また、回転部46は、第三横軌道43を支持した状態でこの回転軸まわりに回転する回転支持部461、を有する。回転支持部461は、回転の動力源として、例えば、ギヤ付きのモータ462を有する。
【0032】
回転部46は、制御部から第三横軌道43のみに横移動装置3が係合している信号が出力されたとき、回転可能である。本実施形態では、回転部46が、鉛直方向に往復動可能である。
【0033】
載置部47は、伸縮可能であり、具体的に、制御部から第三横軌道43のみに横移動装置3が係合している信号が出力されたとき、伸縮可能である。例えば、載置部47は、電動の油圧リフトである。本実施形態では、載置部47は、地面に設置されているが、例えば、建物内のいずれかの階床や屋上等の床面に設置されていてもよい。
【0034】
本実施形態では、回転部46が載置部47に載置され、載置部47は鉛直方向に伸縮可能であることにより、回転部46が往復動可能である。
【0035】
以下、この移動装置1においてかご2が水平面における異なる方向に移動するときの具体的な動作について、
図1、
図3~
図5を用いて説明する。ここでは、かご2を第一横軌道41から第二横軌道42に受け渡す場合について説明する。
【0036】
まず、回転部46が第一姿勢であるとき(
図1参照)、第一横軌道41は第三横軌道43と連続している。このとき、横移動装置3が、第一横軌道41に係合した状態で、第一横軌道41を第一の方向に沿って移動すると、第一横軌道41及び第三横軌道43に跨って係合した状態を経て、
図3に示すように、第三横軌道43に係合し、かご2は、第三横軌道43に受け渡される。
【0037】
次に、横移動装置3が、第三横軌道43のみに係合した状態で、
図4に示すように、第三横軌道43を有する回転部46が、第二横軌道42と同じ高さにまで下がる。本実施形態では、回転部46を載置している載置部47が縮むことにより、回転部46が下がる。
【0038】
図4の状態では、第三横軌道43が、第一の方向に沿って延び、第二横軌道42が第二方向に沿って延びている。ここで、第三横軌道43が第二方向に沿って延びる位置となるまで回転することで、回転部46が第二姿勢となる。これにより、第二横軌道42は、第三横軌道43と連続する。さらに、横移動装置3が、第三横軌道43に係合した状態で、第二横軌道42を第二方向に沿って移動すると、第三横軌道43及び第二横軌道42に跨って係合した状態を経て、第二横軌道42に係合し、かご2は、第二横軌道42に受け渡される(
図5参照)。
【0039】
なお、かご2を第二横軌道42から第一横軌道41に受け渡す場合には、上述した一連の動作と逆の動作を行えばよい。
【0040】
以上の移動装置1では、かご2に設けられた横移動装置3が第一横軌道41、第二横軌道42、及び受け渡し部45の少なくとも一つに係合した状態で、延びる方向の異なる第一横軌道41から第二横軌道42、又は第二横軌道42から第一横軌道41に受け渡し部45がかご2を受け渡すことができるため、かご2が第一横軌道41、第二横軌道42、及び、受け渡し部45から落下せずに水平面における異なる方向に曲がって移動することができる。この構成は、かご2が、第一横軌道41及び第二横軌道42の横移動装置3の各面と対向する壁と横移動装置3との間に設けられた隙間により許容される曲がりよりも、大きい角度を曲がって移動するときに有用である。
【0041】
本実施形態の移動装置1では、かご2が、第一横軌道41、第二横軌道42、及び、第三横軌道43の少なくとも一つに係合した状態で、第三横軌道43を介して第一横軌道41と第二横軌道42との間を移動できるため、水平面における異なる方向に曲がって移動する際に、第一横軌道41、第二横軌道42、及び、第三横軌道43からのかご2の落下を確実に防ぐことができる。
【0042】
また、本実施形態の移動装置1では、第三横軌道43を有する回転部46は、回転することにより第一姿勢から第二姿勢へ姿勢変更できるため、第一横軌道41と第三横軌道43とが水平面における斜め方向(直角以外)に交差していても、かご2が、第一横軌道41、第二横軌道42、及び、第三横軌道43の少なくとも一つに係合した状態で、第三横軌道43を介して第一横軌道41と第二横軌道42との間を移動できる。
【0043】
さらに、本実施形態の移動装置1では、高さを変更可能な回転部46のかご2が、第一横軌道41及び第二横軌道42とそれぞれ連続可能な第三横軌道43を有するため、高さの異なる第一横軌道41と第二横軌道42との間を移動することができる。
【0044】
なお、本発明の移動装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0045】
例えば、上記実施形態では、回転部46は、鉛直方向に往復動可能であったが、鉛直方向の位置が固定されたものであってもよい。具体的に、回転部46は、鉛直方向に往復動可能な載置部47に載置されていなくてもよく、鉛直方向の位置が固定された載置部47又は、地面等の設置面に載置されていてもよい。この構成であっても、第一横軌道41と第二横軌道42とが同じ高さであれば、受け渡し部45が、第一横軌道41と第二横軌道42との間で、かご2を受け渡すことができる。
【0046】
また、上記実施形態では、かご2に一つの横移動装置3が設けられていたが、複数の横移動装置3が設けられていてもよい。例えば、
図6に示すように、かご2には、移動方向の異なる二つの横移動装置31、32が設けられていてもよい。
【0047】
本実施形態では、第一横移動装置31及び第二横移動装置32は、同じ構成であり、かご2に対する取り付け方向が異なっている。第一横移動装置31は、第一の方向に沿って延び、且つ、かご2の背面に設けられている。また、第二移動装置32は、第二の方向に沿って延び、且つ、かご2のかごドア201の開閉方向の両側に位置する一対の側面のうち、一方の側面(
図6の右側に位置する側面)に設けられている。
【0048】
本実施形態の移動装置1は、駆動部49から軌道部48を受け渡し可能であり、受け渡された軌道部48を支持する延設部5を備える。延設部5は、第二位置からさらに第一の方向に延びる。延設部5は、例えば、上面にレール50が設けられた台座である。また、延設部5は、レール50における第一の方向で軌道部48と隣接する側と反対側に、行き過ぎ防止のための止め部材を有する。
【0049】
受け渡し部45は、第一の方向に延び且つ二つの横移動装置31、32のうち一方の横移動装置31(第一横移動装置31)と係合可能な第三横軌道43を有する軌道部48を有する。また、受け渡し部45は、
図9にも示すように、軌道部48を第一位置(
図7に示す位置)と、鉛直方向から見て第一位置から第二の方向(
図9における紙面に垂直な方向)に間隔をあけた第二位置(
図8に示す位置)との間で往復動させる駆動部49を有する。駆動部49の上面には、レール492が設けられている。
【0050】
軌道部48は、第一の方向に沿って直線状に延びている。本実施形態では、軌道部48は、自身が走行するための動力を、例えば、軌道部48に備えており自走する。この動力源は、例えば、モータである。また、軌道部48は、車輪を有している。この軌道部48では、車輪にモータから動力が伝達される。軌道部48の車輪は、駆動部49の上面に設けられたレール492と、延設部5の上面に設けられたレール50とによって案内される。また、レール492やレール50と当接する車輪の回転駆動によって、軌道部48が駆動部49や延設部5に対して移動する。
【0051】
駆動部49は、軌道部48を支持した状態で往復動する移動体490を有する。また、駆動部49は、
図6及び
図7に示すように、第一位置と、鉛直方向から見て第一位置から第二の方向に間隔をあけた第二位置との間に延び、且つ、移動体490の移動を案内する案内部491と、を有する。
【0052】
移動体490は、例えば、車輪を有する台車である。本実施形態では、移動体490は、自身が走行するための動力を、例えば、移動体490に備えており自走する。この動力源は、例えば、モータである。また、移動体490は、移動装置1の制御部からの制御を受けて、移動体490の走行を制御するマイコンを備える。なお、移動体490は、制御部の代わりに、かご2からの制御を受けて走行してもよい。
【0053】
案内部491は、第二の方向に沿って延びている。本実施形態では、案内部491は、設置面に設けられたレール50である。このレール50は、軌道部48の車輪を案内する。このレール50における第二の方向での第二位置側の端部に、行き過ぎ防止のための止め部材が設けられている。
【0054】
以下、この移動装置1においてかご2が水平面における異なる方向に移動するときの具体的な動作について、
図6~
図9を用いて説明する。ここでは、かご2を第一横軌道41から第二横軌道42に受け渡し、その後、軌道部48をさらに第一の方向に移動させる場合について説明する。
【0055】
軌道部48が第一位置(
図6に示す位置、図示下側の位置)に位置するとき、第一横軌道41と第三横軌道43とが連続し、第一横軌道41と第三横軌道43との間で一方の横移動装置31が移動できる。具体的に、第一横軌道41が第三横軌道43と連続しているとき、第一横移動装置31が、第一横軌道41に係合している。この状態から、第一横移動装置31が第一の方向に沿って移動すると、第一横軌道41及び第三横軌道43に跨って係合する状態を経て、
図7に示すように、第三横軌道43に係合し、かご2は、第三横軌道43に受け渡される。一方、
図6及び
図7の状態において、第二横移動装置32は、横軌道4には係合していない。
【0056】
次に、軌道部48の第三横軌道43と第一横移動装置31が係合した状態で、駆動部49によって軌道部48が第一位置から第二位置(
図8における位置、図示上側の位置)に移動することで、他方の横移動装置32(第二横移動装置32)が第二横軌道42と係合する。軌道部48が第二位置にあるとき、第一横移動装置31及び第二横移動装置32の両方が、横軌道4に係合している。
【0057】
本実施形態では、軌道部48は、
図9にも示すように、第二位置から、第一横移動装置31の第三横軌道43との係合が解放される方向(第一の方向)に移動できる。具体的に、軌道部48が第二位置にあるときに、駆動部49の上面に設けられたレール492と、延設部5の上面に設けられたレール50とが第一の方向に連続した状態となり、これらのレール492、50に案内されて軌道部48が移動する。駆動部49が、レール492、50に案内されて第二位置からさらに第一の方向に沿って移動することで、軌道部48は駆動部49から分離して、第一横移動装置31の軌道部48(第三横軌道43)との係合が解放される。
【0058】
また、軌道部48は、第二位置に移動したときに、第一横移動装置31の軌道部48(第三横軌道43)との係合を解放できる構成であってもよい。例えば、第三横軌道43の少なくとも第一横移動装置31の外形を囲む部位が、分離可能な二つの部材で構成され、軌道部48が第二位置に移動したときに、第三横軌道43のこの二つの部材が離間する構成であってもよい。
【0059】
なお、かご2を第二横軌道42から第一横軌道41に受け渡す場合には、上述と逆の動作を行えばよい。このとき、駆動部49によって軌道部48が第二位置から第一位置に移動することで、第二横移動装置32の第二横軌道42との係合から解放される。
【0060】
このような構成では、かご2に設けられた少なくとも一方の横移動装置3が、第一横軌道41、第二横軌道42、及び、第三横軌道43の少なくとも一つに係合した状態で、第三横軌道43を介して第一横軌道41と第二横軌道42との間をかごが移動できるため、水平面における異なる方向に曲がって移動する際に、第一横軌道41、第二横軌道42、及び、第三横軌道43からのかご2の落下を確実に防ぐことができる。
【0061】
なお、
図6~
図9に示す移動装置1の軌道部48は、鉛直方向に移動不可であるが、軌道部48が鉛直方向に移動可能であってもよい。この場合、第一横軌道41と第二横軌道42との鉛直方向の位置が異なっていたとしても、受け渡し部45が、高さの異なる第一横軌道41と第二横軌道42との間で、かご2を受け渡すことができる。
【0062】
また、上記実施形態等の移動装置1では、横移動装置3は、自身が走行するための動力を、例えば、横移動装置3に備えており自走していたが、横移動装置3と横軌道4とに亘って、横移動装置3が走行するための推進力を生じるリニアモーターが形成されていてもよい。具体的に、横移動装置3がコイルを含む電機子を有し、且つ、横軌道4が横方向に延びるリアクションプレートを有し、この電機子とリアクションプレートとによりリニアモーターが形成されていてもよい。この構成では、リニアモーターにより生じる推進力によって、横移動装置3が設けられたかご2が横軌道4に対して移動する。この構成であれば、一般に曲がって移動することが困難なリニアモーターを備えた構成であっても、横移動装置3が設けられたかご2が、水平面における異なる方向に曲がって移動できる。
【0063】
上記実施形態では、各横軌道41、42、43の横移動装置3との係合の検知は、各横軌道41、42、43の係合検知センサにより行ったが、横移動装置3が各横軌道41、42、43との係合を検知する係合検知センサを有していてもよい。この場合、横移動装置3は、自身が各横軌道41、42、43と係合していることを検知すると、制御部に係合検知信号を出力する。
【0064】
また、
図10に示すように、かご2の一方の側面に横移動装置3が設けられ、かご2が正面及び背面の両方にそれぞれ配置された二つのかごドア201を有する構成であってもよい。この場合、正面側及び背面側のいずれの方向からも、利用者がかご2に対して出入りできる。
【0065】
なお、かご2は、水平方向の移動に加えて、鉛直方向に移動してもよい。例えば、移動装置1が、横軌道4に加えて、かご2に設けられた横移動装置3に係合し且つ延長く方向に移動(昇降)する昇降駆動装置を備えてもよい。昇降駆動装置は、例えば、建物内を複数の階(フロア)に跨って上下方向に延びる複数の昇降路に設けられている。昇降駆動装置は、移動装置に含まれている。移動装置は、昇降駆動装置に加えて、例えば、昇降駆動装置と連動して昇降路内を昇降するカウンターウェイト、昇降駆動装置とカウンターウェイトとを連結するロープ、及び、ロープを駆動する巻上機等を含む。この構成により、昇降駆動装置は、昇降可能に構成されている。なお、昇降駆動装置は、自走する構成であってもよい。この昇降駆動装置を備えた構成では、かご2が第一横軌道41や第二横軌道42から昇降駆動装置に移動し、この昇降駆動装置が昇降することで、かご2が昇降する。
【符号の説明】
【0066】
1…移動装置、2…かご、3…横移動装置、4…横軌道、5…延設部、31…第一横移動装置、32…第二横移動装置、41…第一横軌道(横軌道)、42…第二横軌道(横軌道)、43…第三横軌道(横軌道)、45…受け渡し部、46…回転部、47…載置部、48…軌道部、49…駆動部、50…レール、200…かご本体、201…かごドア、461…回転支持部、462…モータ、490…移動体、491…案内部、492…レール