(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-21
(45)【発行日】2023-09-29
(54)【発明の名称】フレッシュコンクリート判定方法、及びフレッシュコンクリート判定装置
(51)【国際特許分類】
G01N 33/38 20060101AFI20230922BHJP
E04G 21/10 20060101ALI20230922BHJP
G01N 21/33 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
G01N33/38
E04G21/10 Z
G01N21/33
(21)【出願番号】P 2020053306
(22)【出願日】2020-03-24
【審査請求日】2022-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391022614
【氏名又は名称】学校法人幾徳学園
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】倉本 太一
(72)【発明者】
【氏名】石井 陽一
(72)【発明者】
【氏名】沖塩 政志
(72)【発明者】
【氏名】阿部 達也
(72)【発明者】
【氏名】親本 俊憲
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 義秀
(72)【発明者】
【氏名】西村 広光
(72)【発明者】
【氏名】井上 佳修
(72)【発明者】
【氏名】青木 健登
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 拓真
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-025609(JP,A)
【文献】特開2012-198145(JP,A)
【文献】特開2004-264257(JP,A)
【文献】特開2004-042371(JP,A)
【文献】特開2020-041290(JP,A)
【文献】特開2000-011182(JP,A)
【文献】特開2002-014039(JP,A)
【文献】特開2006-132973(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0195330(US,A1)
【文献】特開2019-073962(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/00 -33/46
E04G 21/00 -21/10
G01N 21/00 -21/61
G06T 1/00 - 5/50
G06T 7/00 -40/20
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレッシュコンクリートの表面に
波長200nm以上且つ400nm以下の紫外線を照射する工程と、
前記紫外線が照射されている前記フレッシュコンクリートの表面を
、前記紫外線を検出可能なカメラによって撮影する工程と、
前記カメラによって撮影された画像を構成する複数の画素のそれぞれを数値化する工程と、
前記数値化する工程を複数回行って前記複数の画素の数値の時系列データを求める工程と、
前記数値の時系列データから前記フレッシュコンクリートの硬化の進行状況を把握し前記フレッシュコンクリートの仕上げ開始時点を判定する工程と、
を備えるフレッシュコンクリート判定方法。
【請求項2】
前記数値化する工程では、前記画像から濃度ヒストグラムを生成し、
前記時系列データを求める工程では、前記濃度ヒストグラムのピーク値の時系列データを求める、
請求項1に記載のフレッシュコンクリート判定方法。
【請求項3】
前記数値化する工程では、前記画像における一の画素と前記一の画素に隣接する画素との濃度の変化の大きさを算出し、
前記時系列データを求める工程では、前記濃度の変化の大きさの時系列データを求める、
請求項1に記載のフレッシュコンクリート判定方法
。
【請求項4】
フレッシュコンクリートの表面に
波長200nm以上且つ400nm以下の紫外線を照射する紫外線照射装置と、
前記紫外線が照射されている前記フレッシュコンクリートの表面を撮影する
前記紫外線を検出可能なカメラと、
前記カメラによって撮影された画像を構成する複数の画素のそれぞれを数値化すると共に、前記数値化を複数回行って前記複数の画素の数値の時系列データを求める画像解析部と、
前記数値の時系列データから前記フレッシュコンクリートの仕上げ開始時点を判定する硬化タイミング判定部と、
を備えるフレッシュコンクリート判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フレッシュコンクリートの性状を判定するフレッシュコンクリート判定方法、及びフレッシュコンクリート判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からフレッシュコンクリートの判定方法及び判定装置については種々のものが知られている。特許文献1には、凝結過程にあるコンクリートに対しJIS A 1147に記載の貫入抵抗試験を行い、経過時間ごとに貫入抵抗値をプロットすると、貫入抵抗値Pと経過時間tとの関係としてt=A×Ln(P)+Bという対数近似式で表されると記載されている。
【0003】
上記の傾きAは、コンクリートの温度と相関が高い。一方、コンクリートの導電率は、最初は時間の経過と共に上昇するものの導電率低下時刻を経過すると徐々に低下していき、この導電率低下時刻と上記の傾きAとも相関がある。導電率低下時刻は、0.1(N/mm2)の貫入抵抗値が発現する時刻と一致する。特許文献1の予測方法では、上記の相関関係を用いて、フレッシュコンクリートの施工当日の予想気温から上記の傾きAを算出すると共に、傾きAから導電率低下時刻までの時間、及び均し作業可能時期を施工前に予測する。
【0004】
特許文献2には、コンクリートの均し時期判定方法及び均し時期判定装置が記載されている。この均し時期判定装置は、コンクリートの施工を管理する施工管理装置を備える。施工管理装置は、コンクリート躯体に設けられた複数の測定点のそれぞれに挿入される電気抵抗測定用の複数の測定棒と、複数の測定棒のそれぞれに電気的に接続された電気抵抗測定装置とを備える。施工管理装置は、複数の測定棒のそれぞれによって測定された電気抵抗値を測定管理することにより、コンクリートの凝固状態を評価して、各測定点におけるコンクリート躯体の最適な均し時期を判定指示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-73962号公報
【文献】特開平5-340938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した特許文献1では、フレッシュコンクリートの導電率低下時刻を計測する必要がある。しかしながら、フレッシュコンクリートの導電率は、フレッシュコンクリートの温度のほか、フレッシュコンクリートの構成材料及び調合等によっても変動しやすい。従って、導電率を用いてフレッシュコンクリートの性状を正確に測定することは難しいという現状がある。
【0007】
前述した特許文献2の均し時期判定方法及び均し時期判定装置では、フレッシュコンクリートの電気抵抗値の測定が必要である。しかしながら、フレッシュコンクリートの電気抵抗値は、フレッシュコンクリートの温度、構成材料及び調合等の種々の条件によって異なる。従って、フレッシュコンクリートの性状を正確に判定することが難しい。また、複数の測定棒をフレッシュコンクリートの各測定点に挿入しなければならないため、フレッシュコンクリートの性状の判定を容易に行うことができないという問題がある。
【0008】
本開示は、フレッシュコンクリートの性状の判定を正確且つ容易に行うことができるフレッシュコンクリート判定方法及びフレッシュコンクリート判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係るフレッシュコンクリート判定方法は、フレッシュコンクリートの表面に紫外線を照射する工程と、紫外線が照射されているフレッシュコンクリートの表面をカメラによって撮影する工程と、カメラによって撮影された画像を構成する複数の画素のそれぞれを数値化する工程と、数値化する工程を複数回行って複数の画素の数値の時系列データを求める工程と、を備える。
【0010】
このフレッシュコンクリート判定方法では、フレッシュコンクリートの表面に紫外線を照射し、紫外線が照射されているフレッシュコンクリートの表面をカメラが撮影する。カメラによって撮影された画像は、画素ごとに複数回数値化され、複数回数値化された画素の数値の時系列データが算出される。これにより、紫外線が照射されたフレッシュコンクリートの表面の画像から画素の数値の時系列データが算出されるので、フレッシュコンクリートの表面の撮影によってフレッシュコンクリートの性状の時系列変化を把握することができる。従って、撮影された画像の画素の時系列データからフレッシュコンクリートの性状を把握することにより、フレッシュコンクリートの構成材料及び調合等の条件の影響を受けにくい測定を行うことができるので、フレッシュコンクリートの性状の判定を高精度に行うことができる。また、前述した測定棒等をフレッシュコンクリートに挿入する必要がないため、フレッシュコンクリートの性状の判定を容易に行うことができる。
【0011】
数値化する工程では、画像から濃度ヒストグラムを生成し、時系列データを求める工程では、濃度ヒストグラムのピーク値の時系列データを求めてもよい。この場合、紫外線が照射されたフレッシュコンクリートの画像の濃度ヒストグラムを生成し、この濃度ヒストグラムのピーク値の時系列データを求める。ところで、紫外線は水に対しては吸収されやすい性質を有する。フレッシュコンクリートは、初期状態では多くの水分を含んでいる。よって、初期状態でフレッシュコンクリートに紫外線を照射すると当該紫外線は吸収されやすいので、濃度ヒストグラムにおける画素濃度は低い濃度で高いピーク値を有する。これに対し、フレッシュコンクリートは水と反応して硬化が進行して強度を発現するため、硬化が進行すると、フレッシュコンクリート中の水分が減少する。よって、フレッシュコンクリートに紫外線を照射すると当該紫外線は反射されやすくなるので、濃度ヒストグラムにおける画素濃度は高い濃度で低いピーク値を有することとなる。ピーク値が低くなるのは、硬化に伴って紫外線の散乱が大きくなることが一因であると推測される。従って、濃度ヒストグラムのピーク値の時系列データを求めることによってフレッシュコンクリートの性状を判定できるので、正確且つ容易にフレッシュコンクリートの性状を把握できる。
【0012】
数値化する工程では、画像における一の画素と一の画素に隣接する画素との濃度の変化の大きさを算出し、時系列データを求める工程では、濃度の変化の大きさの時系列データを求めてもよい。この場合、紫外線が照射されたフレッシュコンクリートの表面の画像から画素ごとの濃度の変化率(微分値)を算出し、当該変化率の時系列データを求めることにより、フレッシュコンクリートの性状の判定を容易に行うことができる。
【0013】
前述したフレッシュコンクリート判定方法は、数値の時系列データからフレッシュコンクリートの仕上げ開始時点を判定する工程を備えてもよい。なお、フレッシュコンクリートの仕上げとは、均し作業や押さえ作業等を意味する。この場合、紫外線が照射されたフレッシュコンクリートの画像の画素ごとの数値の時系列データから当該フレッシュコンクリートの硬化の進行状況を把握することにより、フレッシュコンクリートの仕上げ開始時点を把握することができる。ところで、従来、フレッシュコンクリートの仕上げ開始時点は、左官工の経験に基づく感覚によって判定されていることがあった。この場合、フレッシュコンクリートの仕上げ開始時点の判定は、左官工の感覚に頼らざるを得ないため、熟練した左官工でなければフレッシュコンクリートの仕上げ開始時点を正確に判定できないという問題があった。これに対し、前述したフレッシュコンクリート判定方法では、画像の複数の画素が数値化されることによって得られた数値の時系列データからフレッシュコンクリートの仕上げ開始時点を判定するので、仕上げ開始時点の判定を自動的に行うことができる。従って、左官工の熟練度に頼らなくても正確且つ容易に仕上げ開始時点の判定を行うことができる。
【0014】
本開示に係るフレッシュコンクリート判定装置は、フレッシュコンクリートの表面に紫外線を照射する紫外線照射装置と、紫外線が照射されているフレッシュコンクリートの表面を撮影するカメラと、カメラによって撮影された画像を構成する複数の画素のそれぞれを数値化すると共に、数値化を複数回行って複数の画素の数値の時系列データを求める画像解析部と、を備える。
【0015】
このフレッシュコンクリート判定装置では、紫外線照射装置がフレッシュコンクリートの表面に紫外線を照射し、カメラがフレッシュコンクリートの表面を撮影する。そして、画像解析部は、撮影された画像を構成する複数の画素のそれぞれを数値化し、数値化された数値の時系列データを求める。これにより、前述したフレッシュコンクリート判定方法と同様、紫外線が照射されたフレッシュコンクリートの表面の画像から画素の数値の時系列データが作成されるので、フレッシュコンクリートの表面の画像からフレッシュコンクリートの性状の時系列変化を把握することができる。従って、画素の数値の時系列データからフレッシュコンクリートの性状を把握することにより、フレッシュコンクリートの構成材料及び調合等の条件の影響を受けにくい測定を行うことができるので、フレッシュコンクリートの性状の判定を高精度に行うことができる。また、前述したフレッシュコンクリート判定方法と同様、フレッシュコンクリートに測定棒等を挿入する必要がないため、フレッシュコンクリートの性状の判定を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、フレッシュコンクリートの性状の判定を正確且つ容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態に係る例示的なフレッシュコンクリート判定装置を示す側面図である。
【
図2】
図1のフレッシュコンクリート判定装置の機能を示すブロック図である。
【
図3】
図1のフレッシュコンクリート判定装置によって生成された濃度ヒストグラムの例を示すグラフである。
【
図4】
図3の濃度ヒストグラムのピーク値の時系列データを模式的に示すグラフである。
【
図5】実施形態に係る例示的なフレッシュコンクリート判定方法の各工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、図面を参照しながら本開示に係るフレッシュコンクリート判定方法及びフレッシュコンクリート判定装置の実施形態について説明する。図面の説明において同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解の容易のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0019】
図1は、例示的なフレッシュコンクリート判定装置1を示す側面図である。
図1に示されるように、フレッシュコンクリート判定装置1は、例えば、現場Aにおいて打設されたフレッシュコンクリートCの性状の判定を行う。フレッシュコンクリートCは、例えば、工事現場である現場Aに硬化していない状態で流し込まれる(打設される)。
【0020】
一例として、フレッシュコンクリートCは、水、細骨材及び粗骨材を含む骨材、セメント、並びに混和剤によって構成されている。混和剤は、フライアッシュ又は高炉スラグ等を含んでいてもよい。フライアッシュ又は高炉スラグ等の混和剤は、セメントと反応して強度を高めるために用いられる。例えば、セメント及び混和剤は、フレッシュコンクリートCの強度を高める結合材である。
【0021】
フレッシュコンクリート判定装置1は、例えば、フレッシュコンクリートCの仕上げ開始時点を判定する。本開示において、「仕上げ開始時点」は、流し込まれたフレッシュコンクリートCが硬化し始めて表面のブリーディング水が引いていくことで、フレッシュコンクリートCに対する表面仕上げ作業が開始可能となるタイミングを示している。
【0022】
「仕上げ開始時点」は、一例として、アマ出し作業が可能なタイミングであってもよい。「アマ出し」とは、木鏝等でタッピングすることによってフレッシュコンクリートCの粗い砂利成分を沈めると共に細かいセメントペーストを浮かせることを示している。アマ出し作業の後には、例えば、フレッシュコンクリートCに対して金鏝仕上げがなされる。
【0023】
フレッシュコンクリート判定装置1は、フレッシュコンクリートCの表面C1に紫外線L1を照射する紫外線照射装置2と、紫外線L1が照射されることによってフレッシュコンクリートCの表面C1から反射される紫外線L2を画像(紫外線画像とも称される)として取得するカメラ3と、カメラ3によって撮影されたフレッシュコンクリートCの画像を解析する画像解析部10とを備える。
【0024】
本開示において、「紫外線」は、波長200nm以上且つ400nm以下の光(近紫外線)を示している。紫外線L1,L2の波長の下限は、200nmに限られず、280nmであってもよいし、315nmであってもよい。紫外線L1,L2の波長の上限は、400nmに限られず、380nmであってもよいし、365nmであってもよい。このように、紫外線L1,L2の波長の値は適宜変更可能である。なお、紫外線L1,L2の波長が可視光の波長に近い場合(例えば365nm以上である場合)、人的安全性を高めることができる。
【0025】
紫外線照射装置2は、例えば、LED照射照明(一例としてLED直線照明)である。一例として、紫外線照射装置2は、紫外線L1のみを照射可能であってもよい。紫外線照射装置2が紫外線L1のみを照射可能である場合、赤外線等の熱が放射されないので、照射対象への熱等の影響を低減させることができる。
【0026】
一例として、紫外線照射装置2のピーク波長は365nmであり、紫外線照射装置2による紫外線強度は300mW/cm2程度である。例示的な紫外線照射装置2は、アルミニウム製のケースを有し、紫外線照射装置2の使用可能温度は0℃以上且つ40℃以下、紫外線照射装置2の使用可能湿度は20%RH以上且つ80%RH以下である。
【0027】
カメラ3は、紫外線照射装置2によって紫外線L1が照射されているフレッシュコンクリートCの表面C1を撮影する。カメラ3は、例えば、紫外線CCDカメラであり、カメラ3の紫外線の検出波長帯域は200nm以上且つ400nm以下である。一例として、カメラ3によって撮影される画像の画素数は150万であってもよいし、カメラ3によって撮影される画像の出力画素数は1360×1024であってもよい。
【0028】
カメラ3は、例えば、フレッシュコンクリートCの表面C1から反射される紫外線L2の波長に対応する紫外線対応レンズを備える。一例として、当該紫外線対応レンズの至近距離は0.44mであり、当該紫外線対応レンズの絞り範囲は3.8~16である。また、当該紫外線対応レンズの対応波長は365nmである。なお、紫外線照射装置2及びカメラ3の仕様は上記の各例に限られず適宜変更可能である。
【0029】
例えば、フレッシュコンクリート判定装置1は、紫外線照射装置2及びカメラ3を支持する支持部材5と、支持部材5を保持すると共に地面Gに載せられる三脚4と、紫外線照射装置2及びカメラ3を上方から覆う被覆部材6と、を更に備える。三脚4及び支持部材5は、紫外線照射装置2及びカメラ3をフレッシュコンクリートCの上方に位置するように紫外線照射装置2及びカメラ3を支持する支持手段に相当する。
【0030】
三脚4及び支持部材5は、例えば、紫外線照射装置2及びカメラ3を3次元方向に移動可能に保持する。これにより、フレッシュコンクリートCの表面C1に対する紫外線照射装置2及びカメラ3のそれぞれの距離及び位置を調整可能である。支持部材5において紫外線照射装置2及びカメラ3は互いに隣接する位置に支持されている。
【0031】
被覆部材6は、例えば、紫外線照射装置2の紫外線L1の照射領域、及びカメラ3の撮影領域に直射日光が入り込まないように、紫外線照射装置2及びカメラ3を鉛直上方から覆う。一例として、被覆部材6は、パラソルであってもよいし、小型テントであってもよい。この被覆部材6を備えることにより、紫外線L1の照射領域、及びカメラ3の撮影領域に直射日光が入り込まないようにできるので、屋外の現場AであってもフレッシュコンクリートCの鮮明な画像を取得することができる。なお、現場Aが屋内である場合等には、直射日光の影響が少ないため、被覆部材6を省略することも可能である。
【0032】
図2は、フレッシュコンクリート判定装置1の機能を示す例示的なブロック図である。
図1及び
図2に示されるように、フレッシュコンクリート判定装置1は、例えば、紫外線照射装置2及びカメラ3の他に、画像解析部10及び出力部20を備える。画像解析部10及び出力部20は、例えば、カメラ3によって撮影された画像の画像処理を行うコンピュータを構成する。
【0033】
出力部20は、画像解析部10による画像の解析結果を出力する出力手段である。例えば、出力部20は、画像解析部10による画像解析の結果を表示する表示部(一例としてディスプレイ)、及び画像解析部10による画像解析の結果を音声出力する音声出力部(一例としてスピーカ)の少なくともいずれかを含んでいてもよい。
【0034】
画像解析部10及び出力部20によって構成されるコンピュータは、例えば、オペレーティングシステム及びアプリケーションプログラムを実行するプロセッサ(例えばCPU)と、ROM又はRAMによって構成される主記憶部と、ハードディスク又はフラッシュメモリで構成される補助記憶部と、ネットワークカード又は無線通信モジュールで構成される通信制御部と、を備える。
【0035】
画像解析部10及び出力部20によって構成されるコンピュータの各構成要素は、プロセッサ又は主記憶部にソフトウェアを読み込ませて当該ソフトウェアを実行することによって実現される。プロセッサは、当該ソフトウェアに従って通信制御部を動作させ、主記憶部又は補助記憶部におけるデータの読み出し又は書き出しを行う。当該コンピュータの処理に必要なデータは、主記憶部又は補助記憶部に記憶される。
【0036】
例えば、カメラ3は画像解析部10に通信可能とされており、カメラ3によって撮影されたフレッシュコンクリートCの表面C1の画像は画像解析部10に出力される。画像解析部10は、機能的構成要素として、濃度識別部11と、濃度ヒストグラム生成部12と、ピーク画素数識別部13と、硬化タイミング判定部14とを備える。
【0037】
濃度識別部11は、例えば、カメラ3によって撮影された画像の複数の画素(一例として150万画素)のそれぞれに、表面C1から反射した紫外線L2の強度を示す0以上且つ255以下の整数を付与する。整数0は反射した紫外線L2の強度が最も弱く、整数255は反射した紫外線L2の強度が最も強いことをそれぞれ示している。このように、濃度識別部11は、カメラ3によって撮影された画像の複数の画素のそれぞれに対し、紫外線L2の強度を示す数値を複数段階(例えば256段階)で付与する。なお、各画素への数値の付与は、256段階以外の段階で行ってもよい。
【0038】
図2及び
図3に示されるように、濃度ヒストグラム生成部12は、濃度識別部11によって画素ごとに付与された数値から濃度ヒストグラムを生成する。本開示において、「濃度」とは、フレッシュコンクリートから反射された紫外線の強度を示している。濃度ヒストグラムは、1つの画像で濃度の値の画素数を求めグラフ化する手法であって、グラフの縦軸に画素数、横軸に濃度の値をとったグラフによって表現される。
【0039】
濃度ヒストグラム生成部12は、例えば、0と255を除いて濃度別に画素数を集計し、濃度と画素数との関係を示すヒストグラムを生成してもよい。具体例として、濃度の値が1である画素の数は何個で、濃度の値が2である画素の数は何個で・・・濃度の値が254である画素の数は何個で、と画素の数を数えて棒グラフとして表してもよい。
図3は、当該棒グラフの頂点同士を接続したグラフを示している。
【0040】
ピーク画素数識別部13は、濃度ヒストグラムにおける画素数のピーク値を識別する。
図3及び
図4に示されるように、例えば、ピーク画素数識別部13は、当該ピーク値の時系列データを求める。ピーク値は時間の経過と共に小さくなっている一方、画素濃度のばらつきは時間の経過と共に大きくなっていることが分かる。これは、時間の経過と共に、紫外線L2の強度が強くなっていると共に当該強度のばらつきが大きくなっていることを示している。
【0041】
時間の経過と共に紫外線L2の強度のばらつきが大きくなる理由としては、フレッシュコンクリートCは、時間の経過と共に硬化が進行して水分量が減少し、当該水分量の減少に伴ってフレッシュコンクリートCの表面C1の凹凸が粗くなり、凹凸が粗くなった結果、紫外線L2の散乱が強くなっているものと推定される。紫外線L2の散乱が強くなると、画像の画素濃度のばらつきが大きくなる。
【0042】
時間の経過と共に紫外線L2の強度が強くなっている理由としては、時間の経過に伴ってフレッシュコンクリートCの水分量が減少し、フレッシュコンクリートCの水分量が減少すると紫外線L2の反射率が高くなる。すなわち、紫外線は水に吸収されやすい性質があり、フレッシュコンクリートCの水分量が減少すると紫外線が吸収されにくくなり且つ反射されやすくなるので、紫外線L2の強度が強くなるものと推定される。
【0043】
このように、本実施形態では、フレッシュコンクリートCが、硬化の進行に伴って表面C1の水分量及び形状(凹凸の度合)が変化するという特性を有することに着目している。そして、本実施形態では、フレッシュコンクリートCの表面C1に紫外線を照射してフレッシュコンクリートCの画像(紫外線画像)を取得することにより、当該フレッシュコンクリートCの画像をフレッシュコンクリートCの硬化判定に活用している。
【0044】
また、フレッシュコンクリートCに紫外線を照射すると、フレッシュコンクリートCの表面C1が鮮明に照らされるため、フレッシュコンクリートCの性状を高精度に把握できる。紫外線は、可視光線と比較して短波長であり、指向性が高く且つ歪みが少ないので、フレッシュコンクリートCに紫外線L1を照射して紫外線L2の反射状態を取得することによってフレッシュコンクリートCの性状を高精度に把握できる。
【0045】
硬化タイミング判定部14は、例えば、ピーク値の時系列データにおけるピーク値の変化率が閾値以下となったタイミングTをフレッシュコンクリートCの仕上げ開始時点と判定する。具体例として、硬化タイミング判定部14は、
図4に示されるグラフの傾き角度θが角度閾値以下となったタイミングTを仕上げ開始時点と判定してもよい。
【0046】
傾き角度θの角度閾値の値は、適宜変更可能である。一例として、傾き角度θの角度閾値は、事前の左官工の経験に基づくタイミングTから逆算して定められてもよい。この場合、熟練した左官工の経験を角度閾値の設定に有効利用することができる。また、傾き角度θの角度閾値は、貫入抵抗値試験の値によって定められてもよい。一例として、傾き角度θの角度閾値は、貫入抵抗値試験による貫入抵抗値が0.1MPa~0.2MPaの範囲内となったタイミングTから逆算して設定されてもよい。
【0047】
次に、本実施形態に係るフレッシュコンクリート判定方法の具体例について
図5を参照しながら説明する。
図5は、本実施形態に係るフレッシュコンクリート判定方法の例示的な各工程を示している。以下では、フレッシュコンクリート判定装置1を用いてフレッシュコンクリートCの性状を判定する方法の例について説明する。
【0048】
まず、
図1に例示されるように、現場AにおいてフレッシュコンクリートCを流し込み、その後、フレッシュコンクリートCの表面C1に紫外線照射装置2から紫外線L1を照射する(照射する工程、ステップS1)。このとき、例えば、紫外線L1の照射方向に対してフレッシュコンクリートCの表面C1が直交するように紫外線照射装置2及びカメラ3を配置する。一例として、フレッシュコンクリートCの表面C1が水平方向に延在している場合には、表面C1の直上に紫外線照射装置2及びカメラ3を配置する。
【0049】
紫外線照射装置2及びカメラ3のそれぞれとフレッシュコンクリートCの表面C1との距離は、例えば、50cm以下である。しかしながら、前述したように、カメラ3の紫外線対応レンズの至近距離が0.44mであり、当該紫外線対応レンズの絞り範囲が3.8~16である場合には、紫外線照射装置2及びカメラ3のそれぞれと表面C1との距離を40.2cm以上且つ60cm以下とすることも可能である。
【0050】
以上のように、紫外線照射装置2及びカメラ3を設置して紫外線照射装置2から表面C1に紫外線L1を照射しているときに、カメラ3がフレッシュコンクリートCの表面C1を撮影する(撮影する工程、ステップS2)。カメラ3は、例えば、一定時間おきに(断続的に)表面C1の紫外線画像を撮影し、撮影した画像を画像解析部10に出力する。一例として、カメラ3は、5分間隔で表面C1を撮影する。
【0051】
なお、多くの紫外線画像を取得してフレッシュコンクリートCの性状判定精度を更に高めるためには、カメラ3によって5分より短い間隔(例えば1分以上且つ4分以下)で表面C1を撮影することが望ましい。しかしながら、カメラ3が表面C1を撮影する間隔は適宜変更可能である。また、カメラ3は、断続的ではなく、連続的に(又は動画として)表面C1を撮影してもよい。この場合、例えば、撮影された動画を複数の静止画像に変換した後に後述の工程が実行される。
【0052】
カメラ3によってフレッシュコンクリートCの表面C1の撮影が行われた後には、例えば、画像解析部10が、画像の濃度(紫外線L2の強度)分布の時系列データを作成する。このとき、例えば、濃度識別部11がカメラ3によって撮影された複数の画像の画素の濃度を数値化すると共に(数値化する工程)、濃度ヒストグラム生成部12が濃度ヒストグラムを生成する(ステップS3)。
【0053】
そして、ピーク画素数識別部13が濃度ヒストグラムのピーク値の時系列データを生成する(時系列データを求める工程、ステップS4)。このとき、例えば、
図4に示されるピーク値の時系列データが生成される。硬化タイミング判定部14は、ステップS4において生成された時系列データから当該時系列データの傾き(変化率)が閾値以下となったか否かを判定する(ステップS5)。
【0054】
例えば、硬化タイミング判定部14は、ピーク値の時系列データを示すグラフの傾き角度θが角度閾値以下となっていないタイミングでは(ステップS5においてNO)、ステップS5の判定を継続して行う。一方、硬化タイミング判定部14は、ピーク値の時系列データを示すグラフの傾き角度θが角度閾値以下となってタイミングTとなったときに(ステップS5においてYES)、フレッシュコンクリートCが硬化したと判定する(判定する工程、ステップS6)。そして、一連の工程が完了する。
【0055】
次に、本実施形態に係るフレッシュコンクリート判定方法及びフレッシュコンクリート判定装置1から得られる作用効果について詳細に説明する。本実施形態に係るフレッシュコンクリート判定方法及びフレッシュコンクリート判定装置1では、フレッシュコンクリートCの表面C1に紫外線L1を照射し、紫外線L1が照射されているフレッシュコンクリートCの表面C1をカメラ3が撮影する。カメラ3によって撮影された画像は、画素ごとに複数回数値化され、複数回数値化された画素の数値の時系列データが例えば
図4に示される態様で算出される。
【0056】
これにより、紫外線L1が照射されたフレッシュコンクリートCの表面C1の画像から画素の数値の時系列データが算出されるので、フレッシュコンクリートCの表面C1の撮影によってフレッシュコンクリートCの性状の時系列変化を把握することができる。
【0057】
従って、撮影された画像の画素の時系列データからフレッシュコンクリートCの性状を把握することにより、フレッシュコンクリートCの構成材料及び調合等の条件の影響を受けにくい測定を行うことができるので、フレッシュコンクリートCの性状の判定を高精度に行うことができる。また、測定棒等をフレッシュコンクリートCに挿入する必要がないため、フレッシュコンクリートCの性状の判定を容易に行うことができる。すなわち、フレッシュコンクリートCに対して非接触でフレッシュコンクリートCを測定可能であるため、フレッシュコンクリートCの測定を容易に行うことができる。
【0058】
数値化する工程では、画像から濃度ヒストグラムを生成してもよく、時系列データを求める工程では、濃度ヒストグラムのピーク値の時系列データを求めてもよい。この場合、紫外線L1が照射されたフレッシュコンクリートCの画像の濃度ヒストグラムを生成し、この濃度ヒストグラムのピーク値の時系列データを求める。前述したように、時間の経過と共に、フレッシュコンクリートCから紫外線L2が反射されやすくなるので、濃度ヒストグラムにおける画素濃度は高い濃度で低いピーク値を有することとなる。従って、濃度ヒストグラムのピーク値の時系列データを求めることによってフレッシュコンクリートCの性状を判定できるので、正確且つ容易にフレッシュコンクリートCの性状を把握できる。
【0059】
本実施形態に係るフレッシュコンクリート判定方法は、数値の時系列データからフレッシュコンクリートCの仕上げ開始時点を判定する工程を備えてもよい。この場合、紫外線L1が照射されたフレッシュコンクリートCの画像の画素ごとの数値の時系列データからフレッシュコンクリートCの硬化の進行状況を把握することにより、フレッシュコンクリートの仕上げ開始時点を把握することができる。このように、画像の複数の画素が数値化されることによって得られた数値の時系列データからフレッシュコンクリートCの仕上げ開始時点を判定するので、仕上げ開始時点の判定を自動的に行うことができる。従って、左官工の熟練度に頼らなくても正確に仕上げ開始時点の判定を行えるので、仕上げ開始時点の判定を熟練度に頼ることなく正確且つ容易に行うことができる。
【0060】
以上、本開示に係るフレッシュコンクリート判定方法及びフレッシュコンクリート判定装置の実施形態について説明した。しかしながら、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲において変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。すなわち、本発明は、各請求項の要旨を変更しない範囲において種々の変形が可能である。
【0061】
例えば、前述の実施形態では、数値化する工程において、画像から濃度ヒストグラムを生成し、時系列データを求める工程では、濃度ヒストグラムのピーク値の時系列データを求める例について説明した。しかしながら、画像の画素を数値化する工程、及び時系列データを求める工程の内容は適宜変更可能である。
【0062】
例えば、数値化する工程では、画像における一の画素と一の画素に隣接する画素との濃度の変化の大きさを算出してもよく、時系列データを求める工程では、濃度の変化の大きさの時系列データを求めてもよい。例えば、画像の画素に対する微分操作の結果によって仕上げ開始時点を判定してもよい。
【0063】
微分操作の一例として、SOBEL微分操作又はLaplacian微分操作が挙げられる。SOBEL微分操作又はLaplacian微分操作では、画像において互いに隣り合う画素における濃度の変化の大きさ(微分結果)を求め、当該微分結果の時系列データを生成する。すると、時間の経過と共に、当該微分結果の総和が徐々に小さくなるので、この傾きからフレッシュコンクリートCの硬化タイミングを判定可能である。なお、SOBEL微分操作では縦横に隣接する画素の濃度変化を縦横の2方向から分析するのに対し、Laplacian微分操作では斜めに隣接する画素の濃度変化を2次元的に分析する点で、SOBEL微分操作とLaplacian微分操作とは互いに異なっている。
【0064】
以上のように、画像における一の画素と一の画素に隣接する画素との濃度の変化の大きさを算出し、時系列データを求める工程では、濃度の変化の大きさの時系列データを求めてもよい。この場合、紫外線L1が照射されたフレッシュコンクリートCの表面C1の画像から画素ごとの濃度の変化率(微分値)を算出し、当該変化率の時系列データを求めることにより、フレッシュコンクリートCの性状の判定を容易に行うことができる。
【0065】
また、前述した実施形態では、仕上げ開始時点を判定する例について説明した。しかしながら、本開示に係るフレッシュコンクリート判定方法及びフレッシュコンクリート判定装置では、フレッシュコンクリートの仕上げ開始時点以外の性状を判定してもよい。また、本開示に係るフレッシュコンクリート判定方法及びフレッシュコンクリート判定装置は、現場Aに限られず、種々の場所に適用させることが可能である。
【符号の説明】
【0066】
1…フレッシュコンクリート判定装置、2…紫外線照射装置、3…カメラ、4…三脚、5…支持部材、6…被覆部材、10…画像解析部、11…濃度識別部、12…濃度ヒストグラム生成部、13…ピーク画素数識別部、14…硬化タイミング判定部、20…出力部、A…現場、C…フレッシュコンクリート、C1…表面、G…地面、L1,L2…紫外線、T…タイミング、θ…傾き角度。