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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-21
(45)【発行日】2023-09-29
(54)【発明の名称】バルブ装置及び分流システム
(51)【国際特許分類】
   F16K 47/04 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
F16K47/04 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019178139
(22)【出願日】2019-09-28
(65)【公開番号】P2021055722
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100129540
【弁理士】
【氏名又は名称】谷田 龍一
(74)【代理人】
【識別番号】100137648
【弁理士】
【氏名又は名称】吉武 賢一
(72)【発明者】
【氏名】澤田 洋平
(72)【発明者】
【氏名】西野 功二
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 一誠
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-083282(JP,A)
【文献】特開平11-022856(JP,A)
【文献】特開平08-061555(JP,A)
【文献】特開2008-281211(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0060710(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 47/00-47/16
F16K 27/00-27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入口、流出口、および、前記流入口と前記流出口との間の流路が設けられた本体と、
前記流入口と流出口との間の流路に介在する弁機構と、
前記弁機構の上流側または下流側の流路に介在し、それぞれが流路部を有する複数の抵抗要素によって構成された抵抗体と、
前記抵抗体を保持し、前記抵抗体を前記本体に固定するための固定具と
を備え、
前記複数の抵抗要素、前記固定具に対して取り外し可能に保持されており、
前記複数の抵抗要素のそれぞれは、前記流路部としての有底溝が表面に形成された環状プレートを含み、前記環状プレートを積層することによって前記抵抗体が構成されている、バルブ装置。
【請求項2】
前記固定具は、前記複数の環状プレートが共通に嵌められる軸部材を有し、前記軸部材には、前記環状プレートに形成された有底溝と位置合わせされる軸方向に延びる切欠き部が形成されている、請求項1に記載のバルブ装置。
【請求項3】
前記本体の第1の側において前記弁機構が設けられ、前記第1の側と対向する第2の側において前記抵抗体を収容する収容空間が設けられ、前記固定具は、前記第2の側から前記抵抗体を前記本体に対して固定している、請求項1または2に記載のバルブ装置。
【請求項4】
前記収容空間は、前記弁機構に通じる流路よりも拡径された空間であり、前記抵抗体は前記収容空間の奥底面に当接するように配置されている、請求項3に記載のバルブ装置。
【請求項5】
前記抵抗体を前記奥底面に付勢する弾性部材をさらに備える、請求項4に記載のバルブ装置。
【請求項6】
前記弁機構を通過するCv値は、前記抵抗体を通過するCv値よりも大きい、請求項1から5のいずれかに記載のバルブ装置。
【請求項7】
ガス供給源と、前記ガス供給源に接続された共通ガスラインと、前記共通ガスラインに対して共通に接続された複数の分流ガスラインとを備える分流システムであって、
前記複数の分流ガスラインのそれぞれにおいて、請求項1から6のいずれかに記載のバルブ装置が設けられている、分流システム。
【請求項8】
前記バルブ装置の上流側の流体圧力を測定する圧力センサをさらに備える、請求項7に記載の分流システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブ装置および分流システムに関し、特に、半導体製造設備、薬品製造装置または化学プラント等に用いるガス供給システムにおいて好適に用いられるバルブ装置および分流システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造設備又は化学プラント等において、プロセスチャンバなどにガスを適切な流量で供給することが要求される。流量を制御する装置としては、マスフローコントローラ(熱式質量流量制御器)や圧力式流量制御装置が知られている。
【0003】
圧力式流量制御装置は、コントロール弁と絞り部(例えばオリフィスプレートや臨界ノズル)とを組み合せた比較的簡単な機構によって各種流体の質量流量を高精度に制御することができるので、広く利用されている(例えば、特許文献1)。また、圧力式流量制御装置は、一次側供給圧が大きく変動しても安定した流量制御が行えるという優れた流量制御特性を有している。
【0004】
プロセスチャンバへのガスの供給を、分流システムを介して行うことがある。分流システムでは、上記の圧力式流量制御装置などによって流量制御されたガスが、複数の分流ガスラインからプロセスチャンバに供給される。分流ガスラインは、プロセスチャンバの異なる領域にガスを供給できるように構成されている。この構成において、各分流ガスラインに設けられた開閉弁を制御することによって、プロセスチャンバにおける所望領域に選択的にガスを供給したり、各領域に供給するガス量の割合を適宜変更することができる。このような分流システムは、例えば、特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-55218号公報
【文献】特開2015-49569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
分流システムを用いる場合において特に、各分流ガスラインに設けられる開閉弁の特性、より具体的には、開閉弁を開放したときのガスの流れやすさ(コンダクタンス)が同等であることが求められている。開閉弁の特性が異なっていると、プロセスチャンバの各領域に流すガス量の比率の制御が正確に行えなくなるおそれがあるからである。なお、分流システム以外に組み込む場合であっても、バルブの特性が一定であることが好ましいことは言うまでもない。
【0007】
開閉弁におけるガスの流れやすさは、例えば、Cv値(Coefficient of flow)によって規定することができる。Cv値は、バルブにおける流体の流れやすさを示す一般的な指標であり、ガスのCv値は、典型的には下記の式で与えられる。
Cv=(Q/6900)×(Gg・T/(P1-P2)・P2)1/2
【0008】
上記式において、Qは流量(sccm)、Ggは気体の比重、P1はバルブの一次側圧力(kPa abs)、P2はバルブの二次側圧力(kPa abs)、Tは温度(K)である。Cv値は、バルブの一次側圧力および二次側圧力が一定であるときの、バルブを流れるガスの流量に対応するものである。
【0009】
各分流ガスラインに設けられる開閉弁のCv値の調整は、例えば、弁機構(弁体およびこれを駆動する駆動装置)を機械的に調整することなどによってなされ得る。開放時の弁体の移動量(バルブリフト)を各開閉弁で同等になるように調整ができれば、弁開放時の各分流ガスラインにおける流れやすさを同等に設定することができる。
【0010】
しかしながら、上記のような弁機構自体の調整によりCv値を一定にすることは困難を伴うことが多かった。例えば、駆動機構としてピエゾアクチュエータが用いられている場合、温度によってアクチュエータのストロークが異なるものになるので、使用状態によってCv値が変動してしまうことになる。また、弁座が樹脂製である場合、弁体と弁座とが当接離間を繰り返すことで開弁時の隙間が変わることでCv値が変動する。さらに、弁体や弁座の加工誤差などによって実際に組み立てられた弁機構に求められる調整の程度はまちまちであり、それぞれのバルブにおいてCv値を微妙に調整することは容易な作業ではなかった。
【0011】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、開弁時の流体の流れやすさの調整を比較的簡単に行うことができ、個体差の低減を図ることできるバルブ装置およびこれを備えた分流システムを提供することをその主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の実施形態によるバルブ装置は、流入口、流出口、および、前記流入口と前記流出口との間の流路が設けられた本体と、前記流入口と流出口との間の流路に介在する弁機構と、前記弁機構の上流側または下流側の流路に介在し、それぞれが流路部を有する複数の抵抗要素によって構成された抵抗体と、前記抵抗体を保持し、前記抵抗体を前記本体に固定するための固定具とを備え、前記複数の抵抗要素が、前記固定具に対して取り外し可能に保持されている。
【0013】
ある実施形態において、前記複数の抵抗要素のそれぞれは、前記流路部としての有底溝が表面に形成された環状プレートを含み、前記環状プレートを積層することによって前記抵抗体が構成されている。
【0014】
ある実施形態において、前記固定具は、前記複数の環状プレートが共通に嵌められる軸部材を有し、前記軸部材には、前記環状プレートに形成された有底溝と位置合わせされる軸方向に延びる切欠き部が形成されている。
【0015】
ある実施形態において、前記本体の第1の側において前記弁機構が設けられ、前記第1の側と対向する前記第2の側において前記抵抗体を収容する収容空間が設けられ、前記固定具は前記第2の側から前記抵抗体を前記本体に対し固定している。
【0016】
ある実施形態において、前記収容空間は、前記弁機構に通じる流路よりも拡径された空間であり、前記抵抗体は前記収容空間の奥底面に当接するように配置されている。
【0017】
ある実施形態において、前記抵抗体を前記奥底面に付勢する弾性部材をさらに備える。
【0018】
ある実施形態において、前記弁機構を通過するCv値は、前記抵抗体を通過するCv値よりも大きい。
【0019】
本発明の実施形態による分流システムは、ガス供給源と、前記ガス供給源に接続された共通ラインと、前記共通ラインに対して共通に接続された複数の分流ガスラインとを備える分流システムであって、前記複数の分流ガスラインのそれぞれにおいて、上記のいずれかのバルブ装置が設けられている。
【0020】
ある実施形態において、上記の分流システムは、前記バルブ装置の上流側の流体圧力を測定する圧力センサをさらに備える。
【発明の効果】
【0021】
本発明の実施形態に係るバルブ装置および分流システムによれば、比較的簡単にバルブ装置の特性のばらつきを改善することができ、所望の流量でガスを供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態の分流システムを示す図である。
図2】ガスが供給されるプロセスチャンバを示す図である。
図3】本発明の実施形態のバルブ装置を示す断面図である。
図4】本発明の実施形態のバルブ装置が備える抵抗体および固定具の分解斜視図である。
図5】本発明の実施形態のバルブ装置が備える抵抗体および固定具の組み立て後の斜視図である。
図6】本発明の実施形態のバルブ装置が備える抵抗体を構成する抵抗要素としての環状プレートを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0024】
図1は、本発明の実施形態によるバルブ装置10を備えた分流システム100を示す。分流システム100は、ガス供給源2と、ガス供給源2に接続されたガスボックス4と、ガスボックス4の下流側に設けられた共通ガスラインL1と、共通ガスラインL1から分岐し、共通ガスラインL1に対して共通接続された複数の分流ガスラインL2とを備えている。また、本実施形態において、共通ガスラインL1には、圧力センサ8が設けられている。ガス供給源2から供給されるガスは、原料ガス、エッチングガス、キャリアガス等、半導体製造プロセスで用いられる種々のガスであってよい。
【0025】
ガスボックス4は、例えば、ガス供給源2からの流路に介在する圧力式流量制御器を備えており、下流側の共通ガスラインL1を流れるガスの流量を所望の流量に制御することができる。なお、図1には、1つのガス供給源2と1つのガスボックス4とを示しているが、他の態様において、ガス種の異なる複数のガス供給源がガスボックス4に接続され、ガスボックス4内には各ガス供給源のための複数の流量制御器が設けられていてもよい。各流量制御器の下流側は図示しない合流ブロックを介して共通ガスラインL1に接続されていてよい。
【0026】
分流システム100において、分流ガスラインL2のそれぞれには、オンオフ弁として用いられる本実施形態のバルブ装置10が設けられている。各バルブ装置10は、弁機構30と、弁機構30の上流側に設けられた抵抗体20とを備えている。バルブ装置10は、典型的には、各分流ガスラインL2をガスが同等の流れやすさで流れるように調整されている。バルブ装置10の詳細な構成については後述する。
【0027】
複数の分流ガスラインL2は、ガス供給対象であるプロセスチャンバ6に接続されている。図1に示す態様では、2本の分流ガスラインL2がバルブ装置10の下流側でラインAに共通接続され、4本の分流ガスラインL2がバルブ装置10の下流側でラインBに共通接続され、5本の分流ガスラインL2がバルブ装置10の下流側でラインCに接続されている。ラインA、B、Cは、それぞれ、プロセスチャンバ6の異なる場所に供給口を有している。
【0028】
図2は、プロセスチャンバ6の内部の領域を示す図である。プロセスチャンバ6は、例えば、円柱状の処理空間を有しており、チャンバの中心から、同心状の、領域RA、領域RB、および、領域RCが設けられている。また、領域RA、RB、RCには、図1に示した各ラインA、B、Cが接続されており、領域RA、RB、RCのそれぞれにガス供給源2からのガスを流すことが可能である。なお、図1に示したプロセスチャンバ6は、図を簡単にするために、右側半分のみを示しており、左端部分がプロセスチャンバ6の中央に対応する。
【0029】
チャンバ内、同心円状の部屋の下には、図示しないシャワープレートを介してウエハが置かれている。ウエハ上に均一に膜を生成するため、あるいは、適切なパターニングを行うために、各領域RA、RB、RCから吹き付けるガスの量が調整されることが好ましい。また、ウエハ上に生成する膜のパターン等に応じて、各領域から供給するガス量の比率は適宜選択されることが好ましい。
【0030】
再び図1を参照して、上記構成の分流システム100において、各分流ガスラインL2におけるバルブ装置10の開閉を制御することによって、種々の流量比パターン(1:1:1、1:2:1、1:3:1など)で、領域RA、RB、RCにガスを流すことができる。流量比パターンは、バルブ装置10が開放されている分流ガスラインL2の数によって決定される。
【0031】
各ラインA、B、Cにおいて開放する分流ガスラインL2の本数は、1分流ガスラインが開放されたラインAを基準として、適宜決定することができる。また、圧力センサ8の出力が規定値を超えたときには、ガスボックス4の下流側の圧力が高すぎると判断し、この場合のみ、ラインAにおいて複数の分流ガスライン(ここでは2本の分流ガスライン)を開放して圧力を下げるようにもよい。そして、このラインAにおいて2本の分流ガスラインが開放された状態を基準として、より低下した圧力で、他のラインB、Cにおける分流ガスラインの開放本数を決定するようにしてもよい。
【0032】
ただし、上記のような所望の種々の流量比パターンで、プロセスチャンバ内の各領域RA、RB、RCにガスを供給するためには、各分流ガスラインL2のガスの流れやすさが同等であることが好適である。これらの流れやすさが異なる場合、分流ガスラインの開放本数の比とは異なる流量比で各領域にガスが流れることになる。
【0033】
これに対して、各分流ガスラインL2に設けられたバルブ装置10は、弁機構30の上流側に設けられた抵抗体20を用いて弁開放時のガスの流れやすさが比較的容易な手法で調整可能できるように構成されている。したがって、所望の流量比でプロセスチャンバの各領域にガスを供給することが可能である。
【0034】
図3は、本実施形態のバルブ装置10の構成を示す。また、図4は、バルブ装置10が備える抵抗体20および固定具24の分解斜視図であり、図5は、抵抗体20および固定具24の組み立て後の斜視図であり、図6は、抵抗体20を構成する抵抗要素としての環状プレート22を示す斜視図である。
【0035】
図3に示すように、バルブ装置10は、流入口14、流出口16、およびこれらの間の流路f1、f2、f3が設けられた本体12と、本体12の上面側(第1の側)12Uに設けられた弁機構30と、流入口14と弁機構30との間の流路f1、f3に設けられた抵抗体20とを備えている。
【0036】
抵抗体20は、本体12の下面側(第2の側)12Dに開口する収容空間12Aにおいて収容されており、収容空間12Aを閉じるようにして本体12に固定される固定具24を用いて、本体12の下面側から本体12に固定されている。本実施形態において、固定具24は周囲に形成されたネジ部24b(図4等参照)を用いて本体12に固定されているが、これに限られない。ただし、固定具24は、本体12に対して着脱可能な態様で本体12に固定されていることが好ましい。
【0037】
また、本体12に取り付けた固定具24を覆うようにして、本体12の下面側には外蓋18が図示しないネジなどを用いてガスケットリング28を介して取り付けられている。このようにガスケットリング28を介して外蓋18を取り付けることによって、収容空間12Aを外部に対して気密にシールすることができる。
【0038】
また、収容空間12Aは、弁機構30に通じる流路f3よりも拡径された空間として形成されており、抵抗体20は収容空間12Aの奥底面12Bに当接するように配置されている。この構成において、抵抗体20の最上面と収容空間12Aの奥底面12Bとの間はガスが流れないようになっている。また、図には示していないが、抵抗体20を奥底面に付勢する弾性部材を設けることによって、抵抗体20を奥底面12Bに押し付けて、ガスの流れをより効果的に遮断することができる。弾性部材としては、皿バネ等を用いることができる。
【0039】
本体12は、例えば、SUS316Lなどの耐食性の高いステンレス鋼から形成され、流入口14を有する継手部、および、流出口16を有する継手部を含んでいてよい。流入口14と収容空間12Aとの間の流路f1、収容空間12Aと弁機構30の取付部との間の流路f2、弁機構30の取付部と流出口16との間の流路f3および収容空間12Aは、ドリルなどで穿孔することによって本体12の内部に形成することができる。
【0040】
また、本実施形態において、弁機構30は、ダイヤフラム弁体32と、本体12に設けられた環状の突出部によって形成される弁座34と、ダイヤフラム弁体32に接続された駆動機構36とを備えている。駆動機構36としては、例えば、ピエゾアクチュエータや、空気駆動式アクチュエータ等を用いることができる。駆動機構36は、ダイヤフラム弁体32を弁座34に押圧したり、ダイヤフラム弁体32を弁座34から離したりできる限り、種々のものを用い得る。また、ダイヤフラム弁体32は、例えば、ステンレス鋼製またはコバルトニッケル合金製の円形薄板(例えば厚さ15~100μm)であり、中央部が上方へ僅かに膨出した逆皿形に形成されていてよい。ダイヤフラム弁体32は、1枚のダイヤフラムから形成されていてもよいし、2~4枚のダイヤフラムの積層体から形成されていてもよい。
【0041】
弁機構30は、上記のようにダイヤフラム弁体32を用いたものに限られず、流路を開閉できる限り、べローズ弁やニードル弁等の種々の他の態様のものであってよい。ただし、分流ガスラインのそれぞれに設けられたバルブ装置10の弁機構30は、弁体が移動して開放状態となったときに所定の同じCv値を有するように設計されている(ただし、実際のCv値はわずかに異なっていてよい)ことが好ましい。
【0042】
次に、図4図6を参照して、本実施形態で用いられる抵抗体20の詳細を説明する。抵抗体20は、流路部を有する複数の抵抗要素を用いて構成されており、ここでは、抵抗要素としての環状プレート22を積み重ねることによって構成されている。また、積層された環状プレート22は、その中央開口部22bが、固定具24に設けられた軸部材25に嵌められており、固定具24に対して取り外し可能に保持されている。環状プレート22および固定具24は、例えば、SUS316Lなどの耐食性の高いステンレス鋼から形成される。
【0043】
また、環状プレート22の表面には、流路部としての幅広の有底溝22aが形成されている。図示する態様では、4本の有底溝22aが周方向において均等に配置されているが、溝の本数やサイズ(溝幅および溝深さ)は、抵抗体20において求められる流れやすさに応じて複数パターンのものが用意され、適宜選択されてよい。環状プレート22の大きさは特に限定するものではないが、外径は、例えば12mm~20mmであり、内径は、例えば6mm~10mmであり、厚さは、例えば0.1mm~0.3mmである。環状プレート22は、公知の熱式流量計が備えるバイパスプレートと同様の構成を有していてもよい。
【0044】
ただし、環状プレート22の最上段に配置される環状プレート26には、溝が設けられていなくてよく、この環状プレート26は、その下の環状プレート22の有底溝22aを閉じるために設けられている。また、最上段の環状プレート26を本体12の収容空間12Aの奥底面12Bに付勢するための弾性部材(環状皿バネやコイルスプリングなど)を、積層された環状プレート22の途中に組み入れたり、最下段の環状プレート22の下側すなわち固定具24の段差面上に設けてもよい。ただし、一般的には、固定具24のネジ締め調整により、適切な押圧力で環状プレート26を奥底面12Bに押し付けるだけで十分である。
【0045】
以上の構成を有する複数の環状プレート22は、それぞれの有底溝22aが位置合わせされたうえで積層されている。そして、複数の環状プレート22が共通に嵌められる固定具24の軸部材25には、環状プレート22に形成された有底溝22aと位置合わせされる軸方向に延びる切欠き部25aが形成されている。切欠き部25aは、有底溝22aと同様に、周方向に均等に4つが設けられている。
【0046】
有底溝22aを通ったガスは、切欠き部25aを通って、弁機構30に通じる流路f3へと流れる。一方で、有底溝22aが設けられていない部分をガスは流れることができない。このため、抵抗体20を、有底溝22aの本数やサイズに応じた流れやすさを有する流れ制限器として用いることができる。
【0047】
また、本実施形態では、環状プレート22の枚数を増やすことによって、ガスがより流れやすい抵抗体20が得られ、環状プレート22の枚数を減らすことによってガスがより流れにくい抵抗体20が得られる。したがって、抵抗体20を用いれば、弁機構30の上流側で、ガスの流れやすさ、あるいは、弁機構30の直前でのガスの圧力を調整することができる。これによって、抵抗体20および弁機構30を通過するガスの流れやすさ、すなわち、バルブ装置10の全体のCv値を調整することができる。
【0048】
ここで、抵抗体20を用いてバルブ装置10の全体のCv値(バルブ装置10の一次側圧力と二次側圧力とそのときに流れるガスの流量に基づくCv値)を調整するためには、弁機構30のCv値(全開状態における弁機構30を通過するときのCv値)は、抵抗体20のCv値(抵抗体20を通過するときのCv値)よりも大きいことが求められる。これは、抵抗体20のCv値が弁機構30のCv値よりも大きいときには、抵抗体20のCv値の調整にかかわらず、弁機構30のCv値によってバルブ装置10におけるガスの流れやすさが決まってしまうからである。このため、抵抗体20のCv値調整、例えば、環状プレートの枚数調整は、抵抗体20のCv値が、弁機構30のCv値を超えない範囲内で行われることが好ましい。
【0049】
なお、環状プレートの枚数は、求められる流れやすさや、上記の弁機構30のCv値を考慮して、適宜選択されてよいが、5枚以上であることが好ましく、10枚以上であることがより好ましい。枚数が多い場合、1枚の増減によって調整できるCv値の値を小さく設定することができるので、より精密に流れやすさを調整し得る。
【0050】
このように、本実施形態では、制限器として複数の環状プレートの積層体を用いているが、環状プレートに設ける溝は、比較的形状精度高く形成することができる。一方、制限器としてサイズの異なるオリフィスプレートを用いることも考えられるが、オリフィス形成の加工精度を高くすることは困難な場合が多い。したがって、オリフィスプレートではなく、複数の環状プレートの積層体を用いることによって、より精度よくCv値調整を行うことが可能になる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、種々の改変が可能である。例えば、固定具は、上記のような軸部材を有さず、積層された環状プレート22の外周側を支持するように構成された複数の壁状の部材を有していてもよい。また、積層する環状プレート22は、必ずしも同様の流路部(溝)を有するもののみで構成されている必要はない。例えば、環状プレートに設ける溝の数を2本にすれば、溝の数が4本のプレートに比べてよりガスが流れにくくなる。したがって、これらの複数の種類のプレートを組み合わせることによって、より任意性高くCv値の調整を行うことが可能になる。
【0052】
また、抵抗体20は、流路部が設けられたプレートに加えて、流路部を有しないプレートを含むようにして構成されていてもよい。抵抗体20が流路部を有する複数の抵抗要素を含む限り、他の構成要素の有無にかかわらず、本明細書では、複数の抵抗要素によって構成された抵抗体と称することとする。
【0053】
また、バルブ装置は、ノーマルクローズ型であってもよいし、ノーマルオープン型であってもよい。また、バルブ装置は、オンオフ弁だけでなく、任意開度に調整可能なバルブにも適用し得る。
【0054】
さらに、上記には、弁機構の上流側に抵抗体を設ける態様を説明したが、弁機構の下流側に抵抗体を設けても構わない。図3に示す態様において、流出口16をガスの流入側に接続し、流入口14をガスの排出側に接続することによってこのような態様が実現できる。また、図3に示す態様では、弁座34の内側に配置された垂直の流路f3に抵抗体20が設けられているが、弁座34の外側の弁室に接続される流路の途中に収容空間および抵抗体を設けるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の実施形態にかかるバルブ装置および分流システムは、例えば、半導体製造装置におけるガス供給ラインにおいて好適に用いられる。
【符号の説明】
【0056】
2 ガス供給源
4 ガスボックス
6 プロセスチャンバ
8 圧力センサ
10 バルブ装置
12 本体
12A 収容空間
12B 奥底面
14 流入口
16 流出口
18 外蓋
20 抵抗体
22 環状プレート
22a 有底溝(流路部)
22b 中央開口部
24 固定具
28 ガスケットリング
30 弁機構
32 ダイヤフラム弁体
34 弁座
36 駆動機構
100 分流システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6