(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-21
(45)【発行日】2023-09-29
(54)【発明の名称】シートサスペンション機構
(51)【国際特許分類】
B60N 2/16 20060101AFI20230922BHJP
B60N 2/54 20060101ALI20230922BHJP
B60N 2/70 20060101ALI20230922BHJP
B60N 2/52 20060101ALI20230922BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20230922BHJP
【FI】
B60N2/16
B60N2/54
B60N2/70
B60N2/52
B60N2/90
(21)【出願番号】P 2019192368
(22)【出願日】2019-10-22
【審査請求日】2022-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000109738
【氏名又は名称】デルタ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101742
【氏名又は名称】麦島 隆
(72)【発明者】
【氏名】藤田 悦則
(72)【発明者】
【氏名】桑野 竜次
(72)【発明者】
【氏名】巻田 聡一
【審査官】西堀 宏之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/049879(WO,A1)
【文献】特開2001-270367(JP,A)
【文献】特開2003-320884(JP,A)
【文献】実開昭59-30729(JP,U)
【文献】国際公開第2018/221744(WO,A1)
【文献】特開2019-48489(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00- 2/90
A47C 1/00- 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体構造とシートとの間に配置されるシートサスペンション機構であって、
前記車体構造側に取り付けられるベースフレームと、
前記シート側に取り付けられるシート支持フレームと、
前記ベースフレームと前記シート支持フレームとの間に位置する中間フレームと、
前記ベースフレームに対して前記中間フレームを支持する第1リンク機構と、
前記中間フレームに対して前記シート支持フレームを支持する第2リンク機構と、
前記中間フレームを前記ベースフレームに対して弾性的に付勢する上下方向用ばね機構と、
前記ベースフレームと前記中間フレームとの間に掛け渡される第1ダンパーと、
を有し、
前記第1リンク機構及び前記第2リンク機構は、前記第2リンク機構における前記中間フレーム及び前記シート支持フレームを結ぶ各リンクの接続中心点間を結ぶ直線が、平衡点において、前記第1リンク機構における前記ベースフレーム及び前記中間フレームを結ぶ各リンクの接続中心点間を結ぶ直線よりも、車体の前後方向に対して垂直に近い位置関係で設けられ、かつ、
前記第2リンク機構の前記各リンクの動きに伴って弾性力を発揮する前後方向用ばね機構が設けられていることを特徴とするシートサスペンション機構。
【請求項2】
前記上下方向用ばね機構の弾性力を調整する第1弾性力調整部材と、前記前後方向用ばね機構の弾性力を調整する第2弾性力調整部材とを有し、前記上下方向用ばね機能の弾性力と前記前後方向ばね機能の弾性力を別々に調整可能である請求項1記載のシートサスペンション機構。
【請求項3】
前記中間フレームと前記シート支持フレームとの間に掛け渡され、所定以上の衝撃力の入力時に減衰力が作用する第2ダンパーをさらに有する請求項1又は2記載のシートサスペンション機構。
【請求項4】
前記前後方向用ばね機構は、一端が前記シート支持フレーム側に、他端が前記第2リンク機構側にそれぞれ係合されるねじりコイルばねを用いて構成され、前記第2リンク機構の各リンクの動きに伴ってねじられる請求項1~3のいずれか1に記載のシートサスペンション機構。
【請求項5】
前記第2リンク機構を構成する前記各リンクのうち、前側及び後側のいずれか少なくとも一方に幅方向に離間して配置される一対のリンク間の前記シート支持フレームとの接続中心点間に、前記シート支持フレームを前記中間フレームに対して上下方向に離間させる弾性力を発揮する底付き防止用のトーションバーがさらに設けられている請求項4記載のシートサスペンション機構。
【請求項6】
前記上下方向用ばね機構は、
前記中間フレームを前記ベースフレームに対して上下方向に離間させる弾性力を発揮する線形のばね特性を示す線形ばねと、
固定磁石と、前記中間フレームが前記ベースフレームに対して上下動することに伴って前記固定磁石との相対位置が変位する可動磁石とを備え、前記固定磁石と前記可動磁石の相対位置に応じてばね定数が変化する非線形のばね特性を示す磁気ばねと
を有し、
前記線形ばね及び前記磁気ばねを組み合わせたばね特性が、平衡点を含む所定の上下動範囲に前記中間フレームが位置する場合において、定荷重となる特性を備えている請求項1~5のいずれか1に記載のシートサスペンション機構。
【請求項7】
前記上下方向用ばね機構は、
さらに、前記ベースフレームと前記中間フレームとの間に、パンタグラフ型リンクと、前記パンタグラフ型リンクに掛け渡される引張コイルばねとを備え、平衡点を含む所定の上下動範囲に前記中間フレームが位置する場合において、前記中間フレームを下方に付勢するばね特性を発揮する補助ばね機構を有し、
前記線形ばね及び前記磁気ばねに、さらに前記補助ばね機構を組み合わせたばね特性が、平衡点を含む所定の上下動範囲に前記中間フレームが位置する場合において、定荷重となる特性を備えている請求項6記載のシートサスペンション機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物のシートの支持に用いられるシートサスペンション機構に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1,2には、下部フレーム(ベースフレーム)に対して上下動可能に設けられる上部フレーム(シート支持フレーム)を磁気ばねとトーションバーとにより弾性的に支持したシートサスペンション機構が開示されている。このシートサスペンション機構は、トーションバーの復元力の作用方向と同方向の磁気ばねの復元力が変位量の増加に伴って増加する特性を「正のばね特性(その時のばね定数を「正のばね定数」)」とし、トーションバーの復元力の作用方向と同方向の磁気ばねの復元力が変位量の増加に拘わらず減少する特性を「負のばね特性(その時のばね定数を「負のばね定数」)」とした場合に、所定の変位範囲において該磁気ばねが負のばね特性を示すことを利用し、正のばね特性を示すトーションバーと該磁気ばねとの組み合わせにより、この所定の変位範囲において、両者を重畳した系全体の変位量に対する荷重値が略一定となる定荷重(ばね定数略ゼロ)の特性を示す領域を有している。
【0003】
特許文献1,2のシートサスペンション機構は、所定の周波数及び振幅の通常振動に対しては、上記の磁気ばねとトーションバーを用いた構成により、両者を重畳したばね定数が略ゼロになる定荷重領域でこれらの振動を吸収し、衝撃性振動によるエネルギーは上部フレーム及び下部フレーム間に掛け渡したダンパーによって吸収する構成となっている。
【0004】
しかし、土工機械の運転席の場合、大きな凹凸のある路面を走行する機会が多いため、振幅のより大きな衝撃性振動に対する対策を重視する必要がある。
【0005】
この点に鑑み、特許文献3では、ばね-ダンパー付きサスペンション部を複数積層された構造のシートサスペンション機構を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-179719号公報
【文献】特開2010-179720号公報
【文献】特開2019-48489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献3のシートサスペンション機構は、基本的には上下方向の入力振動に対して高い振動吸収特性、衝撃吸収特性を発揮することに重点がおかれた構造である。このため、上下方向の振動吸収特性、衝撃吸収特性をさらに向上させると共に、前後方向の振動吸収特性、衝撃吸収特性も高めた機構の開発が望まれていた。
【0008】
本発明は、上記の点に鑑みなされたものであり、上下方向に加え、前後方向についても、高い振動吸収特性及び衝撃吸収特性を発揮できるシートサスペンション機構を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明のシートサスペンション機構は、
車体構造とシートとの間に配置されるシートサスペンション機構であって、
前記車体構造側に取り付けられるベースフレームと、
前記シート側に取り付けられるシート支持フレームと、
前記ベースフレームと前記シート支持フレームとの間に位置する中間フレームと、
前記ベースフレームに対して前記中間フレームを支持する第1リンク機構と、
前記中間フレームに対して前記シート支持フレームを支持する第2リンク機構と、
前記中間フレームを前記ベースフレームに対して弾性的に付勢する上下方向用ばね機構と、
前記ベースフレームと前記中間フレームとの間に掛け渡される第1ダンパーと、
を有し、
前記第1リンク機構及び前記第2リンク機構は、前記第2リンク機構における前記中間フレーム及び前記シート支持フレームを結ぶ各リンクの接続中心点間を結ぶ直線が、平衡点において、前記第1リンク機構における前記ベースフレーム及び前記中間フレームを結ぶ各リンクの接続中心点間を結ぶ直線よりも、車体の前後方向に対して垂直に近い位置関係で設けられ、かつ、
前記第2リンク機構の前記各リンクの動きに伴って弾性力を発揮する前後方向用ばね機構が設けられていることを特徴とする。
【0010】
前記上下方向用ばね機構の弾性力を調整する第1弾性力調整部材と、前記前後方向用ばね機構の弾性力を調整する第2弾性力調整部材とを有し、前記上下方向用ばね機能の弾性力と前記前後方向ばね機能の弾性力を別々に調整可能であることが好ましい。
前記中間フレームと前記シート支持フレームとの間に掛け渡され、所定以上の衝撃力の入力時に減衰力が作用する第2ダンパーをさらに有することが好ましい。
【0011】
前記前後方向用ばね機構は、一端が前記シート支持フレーム側に、他端が前記第2リンク機構側にそれぞれ係合されるねじりコイルばねを用いて構成され、前記第2リンク機構の各リンクの動きに伴ってねじられる構成であることが好ましい。
前記第2リンク機構を構成する前記各リンクのうち、前側及び後側のいずれか少なくとも一方に幅方向に離間して配置される一対のリンク間の前記シート支持フレームとの接続中心点間に、前記シート支持フレームを前記中間フレームに対して上下方向に離間させる弾性力を発揮する底付き防止用のトーションバーがさらに設けられていることが好ましい。
【0012】
前記上下方向用ばね機構は、
前記中間フレームを前記ベースフレームに対して上下方向に離間させる弾性力を発揮する線形のばね特性を示す線形ばねと、
固定磁石と、前記中間フレームが前記ベースフレームに対して上下動することに伴って前記固定磁石との相対位置が変位する可動磁石とを備え、前記固定磁石と前記可動磁石の相対位置に応じてばね定数が変化する非線形のばね特性を示す磁気ばねと
を有し、
前記線形ばね及び前記磁気ばねを組み合わせたばね特性が、平衡点を含む所定の上下動範囲に前記中間フレームが位置する場合において、定荷重となる特性を備えていることが好ましい。
【0013】
前記上下方向用ばね機構は、
さらに、前記ベースフレームと前記中間フレームとの間に、パンタグラフ型リンクと、前記パンタグラフ型リンクに掛け渡される引張コイルばねとを備え、平衡点を含む所定の上下動範囲に前記中間フレームが位置する場合において、前記中間フレームを下方に付勢するばね特性を発揮する補助ばね機構を有し、
前記線形ばね及び前記磁気ばねに、さらに前記補助ばね機構を組み合わせたばね特性が、平衡点を含む所定の上下動範囲に前記中間フレームが位置する場合において、定荷重となる特性を備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のシートサスペンション機構によれば、中間フレームを挟んだベースフレーム側の第1リンク機構の各リンクと、シート支持フレーム側の第2リンク機構の各リンクの動作角度が異なるように、すなわち、第2リンク機構の各リンクの方が、車体の前後方向に対してより垂直に近い角度の範囲で動作する設定となっている。このため、前後運動の入力振動に対して、第2リンク機構を介したシート支持フレームの前後運動が主として対応し、前後方向の振動吸収特性及び衝撃吸収特性を向上させることができる。また、第1リンク機構の動きに伴って弾性力を発揮する上下方向用ばね機構に加え、第2リンク機構の動きに伴った弾性力を発揮する前後方向用ばね機構を有している。このため、上下方向用ばね機構及び前後方向用ばね機構の弾性力の差に伴う位相差により、シートサスペンション機構全体としての上下方向の固有振動数が決定され、上下方向の振動吸収特性及び衝撃吸収特性を向上させることができる。また、上下方向用ばね機構及び前後方向用ばね機構の弾性力を別々に調整可能とすることにより、上記の位相差を調整でき、様々な振動、衝撃への対応が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の一の実施形態に係るシートサスペンション機構を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、ベースフレームに対する中間フレームの支持構造を説明するための断面図である。
【
図7】
図7は、トーションバー及び磁気ばねの荷重-たわみ特性と、両者を重畳した荷重-たわみ特性の例を示した図である。
【
図8】
図8(a)~(c)は、ベースフレームと中間フレームとの間に設けられる補助ばね機構の構成及び作用を説明するための図である。
【
図11】
図11は、上記実施形態のシートサスペンション機構の前後方向の動作及び天付き方向の動作を説明するための図である。
【
図12】
図12は、上記実施形態のシートサスペンション機構の底付き方向の動作を説明するための図である。
【
図13】
図13は、上記実施形態のシートサスペンション機構について行った振動実験における振動伝達率を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に示した実施形態に基づき、本発明をさらに詳細に説明する。
図1~
図5は、本実施形態に係るシートサスペンション機構1の全体構成を示した図である。このシートサスペンション機構1は、乗用車、トラック、バス、フォークリフト等の乗物用のシートを支持する。
【0017】
図1に示したように、シートサスペンション機構1は、車体構造側である車体フロアに固定されるベースフレーム100に対して、シート側に取り付けられるシート支持フレーム200を有し、さらに、ベースフレーム100及びシート支持フレーム200の間に中間フレーム300を備えている。車体フロアに固定されるベースフレーム100は、平面視で略方形に形成され、第1リンク機構130を介して中間フレーム300が支持される。
【0018】
第1リンク機構130は、左右一対の前部リンク131,131と、左右一対の後部リンク132,132とを有してなる。前部リンク131,131は、各下部131a,131aが、ベースフレーム100の側縁部100a,100aの前方寄りに回転可能に軸支され、各上部131b,131bが、中間フレーム300の側部フレーム303,303における前部フレーム301寄りに連結されている(
図3参照)。
【0019】
後部リンク132,132は、各下部132a,132aが、ベースフレーム100の側縁部100a,100aの後方寄りに回転可能に軸支され、各上部132b,132bが、中間フレーム300の後部フレーム302寄りの側部フレーム303,303に連結されている。これにより、中間フレーム300は、ベースフレーム100に対して上下動可能に、より正確には、第1リンク機構130が前部リンク131,131と後部リンク132,132とを備えた平行リンク構造からなるため、前部リンク131,131及び後部リンク132,132の回転軌道に沿って上下動する。すなわち、各リンク131,132とベースフレーム100との接続中心点である各下部131a,131a,132a,132aを回転中心とする前部リンク131,131及び後部リンク132,132の回転方向に沿って、つまり、前部リンク131,131及び後部リンク132,132が前方に倒れて下限位置に向かう方向(
図3では反時計回り)とその反対に戻って上限位置に向かう方向(
図3では時計回り方向)に沿って変位し、中間フレーム300は上下動する。
【0020】
中間フレーム300における幅方向に所定間隔離間した側部フレーム303,303と前部リンク131,131との接続中心点間には、第1トーションバー141aが配設され、側部フレーム303,303と後部リンク132,132との接続中心点間には、第2トーションバー141bが配設されている(
図3参照)。本実施形態では、このトーションバー141a,141bが、荷重-たわみ特性においてほぼ線形に近い変化となる線形特性を示す線形ばねであり、後述する磁気ばね142と組み合わさり、所定の変位範囲において定荷重となる特性を備えた上下方向用ばね機構140を構成する。但し、本実施形態では、線形ばね特性を強くして底付き防止機能を高めるため、後部リンク132,132の各下部132a,132a間には、第3トーションバー141cが配設されている。第1及び第2トーションバー141a,141bの一端は、前部リンク131,131及び後部リンク132,132の各上部131b,131b,132b,132bに連結され、第1及び第2トーションバー141a,141bの他端は、中間フレーム300の側部フレーム303,303に対してそれぞれ相対回転しないように設けられる。第3トーションバー141cの一端は、後部リンク132,132の各下部132a,132aに連結され、第3トーションバー141cの他端は、ベースフレーム100の側縁部100aに相対回転しないように設けられる。
【0021】
これにより、各トーションバー141a,141b,141cは、中間フレーム300をベースフレーム100に対して相対的に離間させる方向、すなわち、上方向に付勢する弾性力を発揮するように設定される。また、第1及び第2トーションバー141a,141bの他端は、第1弾性力調整部材125のプレート部材125c,125dにそれぞれ接続されている(
図5参照)。
【0022】
第1弾性力調整部材125は、調整用ダイヤル125bを回転させると、それによって調整用シャフト125aが回転し、その回転によって、前部リンク131,131側の第1トーションバー141aに接続されたプレート部材125cが回転し、さらに、このプレート部材125cに連結板125eを介して連結された後部リンク132,132側の第2トーションバー141bに接続されたプレート部材125dが回転する。従って、調整用ダイヤル125bを回転操作すると、第1及び第2トーションバー141a,141bがいずれかの方向にねじられ、第1及び第2トーションバー141a,141bの初期弾性力が調整され、着座者の体重に応じて、中間フレーム300及びこの中間フレーム300を介して支持される後述のシート支持フレーム200を上下方向の所定の位置(好ましくは中立位置)に調整できるようになっている。
【0023】
なお、中間フレーム300をベースフレーム100に対して相対的に離間する方向に付勢する線形ばねとしては、トーションバー141a,141b,141cが好ましい。トーションバー141a,141b,141cは、それ自身が回転軸の中心となり、捩られることで所定のばね力が発揮される。これに対して、ベースフレーム100及び中間フレーム300間に略垂直方向にコイルスプリングを配設して線形のばね特性を発揮させることも可能であるが、この場合には、コイルスプリングを懸架支持する部位において摩擦が生じる。これにより、シートサスペンション機構1における摩擦減衰が高くなる要因となる。
【0024】
磁気ばね142は、
図5及び
図6に示したように、固定マグネットユニット1420と可動マグネットユニット1421とを備えてなる。固定マグネットユニット1420は、ベースフレーム100に固定され、該ベースフレーム100の幅方向に所定間隔をおいて対向して配設された一対の固定磁石1420a,1420aを有している。対向する各固定磁石1420a,1420aは、例えば、それぞれ異極同士が上下に隣接する二極磁石が用いられていると共に、同極同士が対面するように配設されている。可動マグネットユニット1421は、所定間隔をおいて対向配置される固定磁石1420a,1420aの間隙に配置される可動磁石1421aを備えてなる。可動磁石1421aは、例えば、上下方向に着磁されていると共に、支持部材1422に支持されており、該支持部材1422が中間フレーム300に固定され下方に延びるブラケット1424に連結されている。このため、中間フレーム300がベースフレーム100に対して上下動すると、該支持部材1422に支持された可動磁石1421aが、固定磁石1420a,1420a間の間隙内を上下に変位する。
【0025】
磁気ばね142は、可動磁石1421aが固定磁石1420a,1420aの間隙を移動することにより発揮されるばね特性が、可動磁石1421aと固定磁石1420a,1420aとの相対位置によって変化する。例えば、
図7に示したように、磁気ばね142は、荷重-たわみ特性において、線形ばねであるトーションバー141a,141b,141cの弾性力(復元力)の作用方向すなわち中間フレーム300をベースフレーム100に対して離間させる方向に復元力が増加する特性を正のばね特性とした場合に、所定の変位量範囲では、当該方向への復元力が減少する負のばね特性(図中の破線の特性)を示す。すなわち、異極同士が隣接する2つの固定磁石1420a,1420aのN極とS極の境界を横切る位置付近の所定の範囲(
図7の例では、約-9mmから約+10mmの範囲)において負のばね特性を発揮する。
【0026】
この結果、磁気ばね142と上記したトーションバー141a,141b,141cとを備えてなる本実施形態の上下方向用ばね機構140は、磁気ばね142における負のばね特性が機能する範囲(
図7の例では、約-9mmから約+10mmの範囲)においては、ばね定数が小さくなる。
【0027】
ここで、トーションバー141a,141b,141cの正のばね特性と磁気ばね142の負のばね特性とを重畳することにより、ばね定数が小さくなることは上記のとおりであるが、両者を重畳したばね特性として、変位量が増加しても荷重値の変化量が所定以下となる定荷重領域すなわちばね定数が略ゼロ(好ましくは、ばね定数約-10N/mm~約10N/mmの範囲)になる領域を有する構成とすることが好ましい。しかしながら、本実施形態では、トーションバー141a,141b,141cを3本用いているため、磁気ばね142の大きさ、磁力等によっては、磁気ばね142の負のばね特性を重畳しても上記の定荷重領域まで調整できない場合もある。そこで、このような場合には、本実施形態のように、負のばね特性を発揮する補助ばね機構143をさらに設けることが好ましい。
【0028】
本実施形態で用いた補助ばね機構143は、
図5及び
図8に示したように、パンタグラフ型リンク1430と引張コイルばね1435を有して構成される。パンタグラフ型リンク1430は、ベースフレーム100に各一端1431a,1431aが軸支され、各他端1431c,1431cに向かうに従って略V字状に拡開するように配置される2つの固定側リンク1431,1431と、中間フレーム300に各一端1432a,1432aが軸支され、中間フレーム300が最上端の位置(
図8(a)の位置)において、各一端1432a,1432aと各他端1432c,1432cとを結ぶ仮想線が略逆V字状となるように配置される2つの可動側リンク1432,1432とを有している。
【0029】
引張コイルばね1435は、各可動側リンク1432,1432の各他端1432c,1432cと、各固定側リンク1431,1431の各他端1431c,1431cとを共に軸支する軸部材1433,1433間に掛け渡されている。
【0030】
補助ばね機構143は、上記の構成であるため、上下方向に変位する際、パンタグラフ型リンク1430は、各可動側リンク1432,1432の一端1432a,1432aが、引張コイルばね1435の各係合支点である軸部材1433,1433を結ぶ直線よりも上方に位置している場合(
図8(a)の位置)と下方に位置している場合(
図8(c)の位置)とでは各可動側リンク1432,1432の向きが逆になる。このため、引張コイルばね1435は、中間フレーム300が所定の位置よりも上方に位置している場合(
図8(a)の位置)には、各可動側リンク1432,1432の各一端1432a,1432aを上方に付勢し、中間フレーム300が所定の位置よりも下方に位置している場合(
図8(c)の位置)には、各可動側リンク1432,1432の各一端1432a,1432aを下方に付勢する。従って、中間フレーム300の中立位置付近、すなわち、人が着座した際に平衡点付近となる位置を、引張コイルばね1435による付勢方向が逆転する位置(
図8(b)の位置)に設定することにより、所定の変位範囲、好ましくは、上記の磁気ばね142が負のばね特性を示す範囲(
図8(b)と
図8(c)との間)では、補助ばね機構143は各可動側リンク1432,1432の一端1432a,1432aを下方向に付勢する負のばね特性を発揮することになる。
【0031】
従って、本実施形態では、磁気ばね142の負のばね特性だけでなく、パンタグラフ型リンク1430に引張コイルばね1435を組み合わせた補助ばね機構143による負のばね特性も重畳される。そのため、本実施形態では、正のばね特性を発揮するトーションバー141a,141b,141cを3本配設し、正方向のばね力を高く設定した構成であるが、このような構成としても定荷重領域を作り出すことが可能となり、負荷質量のさらなる増大にも対処可能となる。また、補助ばね機構143は、上記のように上下方向に変位している範囲の中途において付勢方向が切り替わるため、切り替わるまでの間、例えば、中間フレーム300が、上方位置から下方に切り替わるポイントに至るまでの間(
図8(a)の位置から
図8(b)の位置に至るまでの間)、逆に、下方位置から上方に切り替わるポイントに至るまでの間(
図8(c)の位置から
図8(b)の位置に至るまでの間)は、それぞれの動きの方向に対して制動力として機能するため、衝撃吸収特性の向上にも貢献できる。
【0032】
ベースフレーム100及び中間フレーム300間には、両者が相対的に上下動する際のエネルギーを吸収する減衰力を発揮する第1ダンパー150が設けられている。第1ダンパー150は、
図9及び
図10に示したように、シリンダ151と、該シリンダ151内を相対移動するピストン152を備えた伸縮式のものである。また、中間フレーム300の上下方向動作における中立位置において、例えば、取り付け角度約10~30度の範囲で取り付けられる(
図6参照)。なお、第1ダンパー150は複数並列的に設けることも可能であり、また、この場合、各第1ダンパー150の取り付け角度を異ならせることにより、取り付け角度の小さなダンパーほど減衰力の垂直成分が小さくなり、中間フレーム300及びベースフレーム100に作用する減衰力は、全てのダンパーを同じ取り付け角度で配置した場合と比較して、効き方がなだらかになる。
【0033】
第1ダンパー150は、通常のオイルダンパー等を用いることも可能であるが、中間フレーム300がベースフレーム100に対して上下動する際の平衡点(静止状態で着座した際の位置。第1弾性力調整部材125による調整により、中間フレーム300の中立位置にできるだけ合わせた位置)を含む所定の上下動範囲に対応するピストン152のシリンダ151内における移動区間が、減衰力の作用しない空走区間となるものであることが好ましい。
【0034】
このような空走区間を有する第1ダンパー150は、
図10に示したように、シリンダ151が外側固定筒1511とその内側に配置される内側可動筒1512とを備えた二重筒構造になっている。ピストン152は内側可動筒1512内を摺動可能に配設される。外側固定筒1511の長手方向各端部にはストッパ部1511a,1511bが設けられており、内側可動筒1512は、外側固定筒1511よりも軸方向長さが短く、該内側可動筒1512の長手方向の各端部1512a,1512bが、ストッパ部1511a,1511bに当接するまで移動可能となっている。ピストン152も同様であり、長手方向の各端部152a,152bが、ストッパ部1511a,1511bに当接するまで移動可能となっている。軸方向長さは、内側可動筒1512がピストン152よりも長くなっており、ピストン152にピストンロッド153が連結されている。
【0035】
ピストン152には、その外周部に内側可動筒1512との間で所定の摩擦減衰力を発揮する糸等の線状部材が巻き付けられてなるストリング部152cが設けられている。本実施形態では、このストリング部152cに低粘ちょう度のグリース等の粘性流体を付着させている。粘性流体は、ストリング部152cを構成する糸等の線状部材に含浸や塗布により付着させることができる。よって、ピストン152が内側可動筒1512に対して相対移動すると、ストリング部152cを構成する線状部材の張力による摩擦減衰力と粘性流体による速度依存の粘性減衰力が作用する。すなわち、ピストン152の内側可動筒1512に対する相対変位により、両者間の摩擦力はストリング部152cの張力に変換され、変位量の増加に伴って、ストリング部152cを構成する糸が一体になって硬くなり摩擦係数が低くなる方向に変化して発熱が抑えられる。この変化が粘性減衰力を速度依存型にする。そのため、低速の入力では摩擦減衰力の作用が相対的に大きくなるが、速度が増すにつれ粘性減衰力が高くなる。なお、ストリング部152cを構成する糸の巻き数の増減、巻き付けられる糸の隣接部分間のギャップ、巻き付ける糸の積層数等により、発生する摩擦力、粘性減衰力は適宜に制御される。
【0036】
一方、内側可動筒1512の外周面と外側固定筒1511の内周面との間には、両者間の摩擦力が、内側可動筒1512とピストン152との間のストリング部152cにより生じる摩擦力よりも相対的に小さくなるように、本実施形態では、内側可動筒1512及び外側固定筒1511間に、転がり部材や摺動部材(例えばフェルト)等の低摩擦部材1513を介在させている。
【0037】
これにより、ピストンロッド153の動きに追従してピストン152がシリンダ151内を相対移動する際、内側可動筒1512の各端部1512a,1512bがストッパ部1511a,1511bに当接するまでは、内側可動筒1512及びピストン152間と、内側可動筒1512及び外側固定筒1511間との摩擦力の差により、内側可動筒1512及びピストン152は、一緒に外側固定筒1511内を移動する。このとき、内側可動筒1512と外側固定筒1511との間は低摩擦部材1513により摩擦抵抗が極めて小さく、内側可動筒1512は外側固定筒1511内を実質的に空走することになり、減衰力はほとんど生じない。内側可動筒1512の各端部1512a,1512bが、いずれかのストッパ部1511a,1511bに当接した後は、内側可動筒1512が移動できなくなるため、ピストン152が単独で内側可動筒1512内を摺動する。これにより、ピストン152と内側可動筒1512との間で、上記のような摩擦減衰力及び粘性減衰力が作用する。
【0038】
従って、シリンダ151の内側可動筒1512が外側固定筒1511内を相対移動している範囲が、減衰力が実質的に作用しない空走区間となり、その空走区間の距離は、外側固定筒1511と内側可動筒1512の軸方向長さの差分が相当することになる。この結果、平衡点を含む所定の上下動範囲で、ピストン152が内側可動筒1512に対して相対移動せず、減衰力が効かない移動区間が形成される。好ましくは、中間フレーム300がベースフレーム100に対して上下動する際の着座状態での平衡点(上下動可能な全ストロークの中立位置にできるだけ合うように調整した位置)において、内側可動筒1512が外側固定筒1511内の全移動範囲の略中間位置となるように設定する。これにより、平衡点を含む所定の上下動範囲が、平衡点を中心として上下に均等に形成される。
【0039】
走行中の振動入力によって相対的に中間フレーム300が振動した際、第1ダンパー150は上記の空走区間に対応している場合には、減衰力が実質的に作用せず、振動吸収機能は主として上下方向用ばね機構140によってなされ、所定以上の低周波の大きな振幅を伴う振動が入力された場合には、第1ダンパー150の減衰力が作用し、衝撃エネルギーを吸収する。また、本実施形態の補助ばね機構143が衝撃エネルギーの吸収にも役立つことは上記のとおりである。
【0040】
シート支持フレーム200は、前部フレーム201、後部フレーム202、並びに、前部フレーム201及び後部フレーム202の各端部同士を連結する側部フレーム203,203を有する略方形に形成される(
図1及び
図4参照)。シート支持フレーム200は、中間フレーム300に対して、第2リンク機構230を介して支持される。第2リンク機構230は、
図3に示したように、上記第1のリンク機構130と同様に、左右一対の前部リンク231,231と、左右一対の後部リンク232,232とを有する平行リンク構造からなる。
図1及び
図5に示したように、前部リンク231,231は、各下部231a,231aが、中間フレーム300に配設される第1トーションバー141aが内部に挿入され、中間フレーム300の幅方向に沿って側部フレーム303,303間に掛け渡される第1パイプ材304の各端部付近に固定される第1ブラケット304a,304aに軸支される。後部リンク232,232の各下部232a,232aは、中間フレーム300に配設される第2トーションバー141bが内部に挿入され、中間フレーム300の幅方向に沿って側部フレーム間303、303間に掛け渡される第2パイプ材305の各端部付近に固定される第2ブラケット305a,305aに軸支される。
【0041】
前部リンク231,231の各上部231b,231bは、シート支持フレーム200の前部フレーム201寄りの側部フレーム203,203間に掛け渡された取り付け軸204に軸支され、後部リンク232,232の各上部232b,232bは、後部フレーム202寄りの側部フレーム203,203間に掛け渡された取り付け軸205に軸支される。
【0042】
これにより、シート支持フレーム200は、中間フレーム300に対して、前部リンク231,231及び後部リンク232,232の各下部231a,232aを中心として回動する。但し、第1リンク機構130の各リンク131,131,132,132は、平衡点において前方に傾斜した姿勢で、中間フレーム300の変動がこの前方に傾斜した姿勢の範囲で行われるように設計されているのに対し、第2リンク機構230の各リンク231,231,232,232は、平衡点において後方に傾斜した姿勢となり、シート支持フレーム200の変動がこの後方に傾斜した姿勢の範囲で行われるように設計されている。すなわち、第1リンク機構130の各リンク131,131,132,132と、第2リンク機構230の各リンク231,231,232,232とを、傾斜方向が逆方向となる姿勢にすることで、シート支持フレーム200及びそれに支持されるシートの前後の動きを小さくできる。
【0043】
ここで、第2リンク機構230は、中間フレーム300及びシート支持フレーム200を結ぶ各リンク231,231,232,232の接続中心点間を結ぶ直線が、第1リンク機構130におけるベースフレーム100及び中間フレーム300を結ぶ各リンク131,131,132,132の接続中心点間を結ぶ直線よりも、平衡点において、側方から見て、車体の前後方向に対して垂直に近い位置関係で設けられている。好ましくは、第1リンク機構130の各リンク131,131,132,132の平衡点における水平面からの傾斜角度θ1に対して、第2リンク機構230の各リンク231,231,232,232の平衡点における水平面からの傾斜角度θ2が15度以上垂直に近い姿勢で、より好ましくは、25度~35度垂直に近い姿勢で設けられる(
図3参照)。本実施形態では、平衡点の位置を水平面に垂直な面Yを基準として、
図12に示したように、23.5度後方に傾斜した位置とし、その平衡点を基準として、
図11に示したように、前方に16.1度(垂直な面Yから後方に7.4度傾斜した位置)及び後方に12.5度(垂直な面Yから後方に36度傾斜した位置)の範囲で前後方向に変位可能に設けられている。
【0044】
これにより、第2リンク機構230の各リンク231,231,232,232は、第1リンク機構130の各リンク131,131,132,132と比較した場合に、通常の振動入力においては、上下方向よりも前後方向への変位量を大きくとることができ、前後方向に振動に対して、より感度よく作用する。但し、本実施形態では、上下方向に所定以上の衝撃力が入力された場合には、最大で、上記垂直な面Yから後方に57.4度まで傾斜可能な設定となっている(
図12参照)。
【0045】
第2リンク機構230には、各リンク231,231,232,232の動きに伴って弾性力を発揮する前後方向用ばね機構240が設けられている。前後方向用ばね機構240は、所定長さのコイル部分を有するねじりコイルばねから構成される。本実施形態では2本のねじりコイルばね241,241を有してなる(
図4参照)。ねじりコイルばね241,241は、コイル部241a,241aが、シート支持フレーム200と左右の後部リンク232,232の上部232b,232bとの接続中心点間を結ぶ取り付け軸205の周囲に配置されるように設けられている。本実施形態では、この取り付け軸205の長さ方向中央部を境とした左右それぞれにねじりコイルばね241,241が設けられている。
【0046】
シート支持フレーム200の前部フレーム201と後部フレーム202との間には、後述の第2弾性力調整部材245を構成する調整用プレート245aが掛け渡されている(
図1、
図2及び
図4参照)。一方、後部リンク232,232の中央付近には、端部規制用ロッド232cが幅方向に掛け渡されている。各ねじりコイルばね241,241は、各一端241b,241bを調整用プレート245aの後部245a1にそれぞれ係合させ、各他端241c,241cの後部を後部リンク232,232の端部規制用ロッド232cに係合させて配設される。これにより、後部リンク232,232が各下部232a,232aを中心として回転運動を行うと、各ねじりコイルばね241,241の一端241b,241bが調整用プレート245aの後部245a1に係合しているため、変形方向に力が付与され、各他端241c,241cに後方から押圧する力が作用し、所定の弾性力が発揮される。なお、符号245cは、この調整用プレート245aを被覆するカバーである。
【0047】
また、ねじりコイルばね241,241は、シート支持フレーム200の前部フレーム201に取り付けられた第2弾性力調整部材245により弾性力を調整可能となっている。第2弾性力調整部材245は、上記の調整用プレート245aと調整用ダイヤル245bを有している。調整用ダイヤル245bは、回転することにより、調整用プレート245aを前後動させる。従って、調整用ダイヤル245bを回転させて、調整用プレート245aを前後動させると、その後部245a1に係合している各ねじりコイルばね241,241の一端241b,241bが、各ねじりコイルばね241,241を縮径又は拡径する方向に変位させるため、該ねじりコイルばね241,241の弾性力が調整される。ねじりコイルばね241,241の弾性力を調整することにより、第2リンク機構230及びシート支持フレーム200の前後方向の固有振動数が決定される。
【0048】
また、第2弾性力調整部材245は、上記の第1弾性力調整部材125とは独立して、ねじりコイルばね241,241の弾性力を調整可能となっている。よって、上記の第1弾性力調整部材125による上下方向用ばね機構140の弾性力と、第2弾性力調整部材245による前後方向用ばね機構240の弾性力とをそれぞれ調整することで、第1リンク機構130と第2リンク機構230との間で、両者間の動きの位相差を調整でき、それにより、シートサスペンション機構1全体の上下方向の固有振動数を調整できる。従って、本実施形態によれば、上下方向の入力振動に対する振動吸収特性、衝撃吸収特性を、この位相差の調整により効率よく調整できる。
【0049】
中間フレーム300とシート支持フレーム200との間、本実施形態では、中間フレーム300の後方寄りに上方に突出するように設けた取り付けブラケット330と、シート支持フレーム200の前方寄りの取り付けブラケット250との間に、第2ダンパー260が設けられている(
図4参照)。第2ダンパー260は、衝撃力の入力時において底付き防止機能を果たすものであり、上記の第1ダンパー150の減衰力のみで対応できる場合には必須ではないが、第2ダンパー260を設けることにより、シートサスペンション機構1全体としてより高い減衰力を発揮できる。第2ダンパー260は、上記の第1ダンパー150と同様、シリンダ261と、ピストンロッド263に連結され、シリンダ261内を移動するピストンを有する伸縮式のもので、好ましくは、
図9及び
図10に示した構造のものを用いる。この場合、上記の通常の振動入力時、すなわち、本実施形態では、
図11に示したように、垂直な面Yを基準として後方に7.4度から36度の範囲で変位する場合には、減衰力が機能しない空走区間が対応する設定とすることが好ましい。これにより、通常の振動入力時において、前後方向用ばね機構240により振動吸収特性を効率よく発揮させることができる。すなわち、本実施形態では、この前後方向用ばね機構240により、前後振動を効率よく吸収できる。従って、2~3Hzに生じる前後方向のフワフワ感、8~10Hz付近の前後方向の加速度による内臓共振、20Hz近傍のシートバックからのたたき(いわゆるバックスラップ)を抑制するのに好適である。
【0050】
本実施形態によれば、着座した人は、第1弾性力調整部材125により、上下方向用ばね機構140の弾性力を調整し、中間フレーム300が上下変位範囲の中立位置(平衡点)となるように設定する。次に、第2弾性力調整部材245による前後方向用ばね機構240の弾性力を調整し、前後方向の動きやすさ、すなわち、ねじりコイルばね241,241により発揮されるばね感(硬めのばね感、柔らかめのばね感)を調整する。
【0051】
図11に示した「平衡点」の位置は、静止着座状態で、中間フレーム300が上下変位範囲の中立位置となるように設定した際の該中間フレーム300及びシート支持フレーム200の位置を示している。この位置において、前後方向に振動入力が生じた場合には、
図11の「前方向」及び「後方向」で示した位置まで変位して振動を吸収する。
【0052】
一方、上下方向振動により、天付き方向に変位すると、
図11に示したように、中間フレーム300は、「平衡点」の位置から実線で示した位置である上方に変位する。また、所定以上の衝撃力の入力があると、底付き方向へは、
図12の実線で示した位置まで変位する。
図12に示したように、中間フレーム300が最下端位置になった場合でも、第2リンク機構230には、前後方向用ばね機構240のねじりコイルばね241,241の弾性力が作用するため、着座者への底付き感の低減に寄与できる。
【0053】
なお、第2リンク機構230を構成する前部リンク231,231間及び後部リンク232,232間のいずれか少なくとも一方において、シート支持フレーム200との接続中心点間に、トーションバー(図示せず)を掛け渡した構成とすることが好ましい。例えば、後部リンク232,232間には取り付け軸205が掛け渡されているが、この取り付け軸205をパイプから形成し、そのバイブにトーションバーを挿通して配設する。これにより、シート支持フレーム200を中間フレーム300に対して上下方向に離間させる弾性力が発揮されるため、底付き防止機能をさらに高めることができる。
【0054】
図1~
図12に示した本実施形態のシートサスペンション機構1に、体重65kgの被験者を着座させ行った振動実験の結果を
図13に示す。振動実験は、ISO 7096:2000に基づくJIS A 8304:2001「土工機械-運転員の座席の振動評価試験」で規定されている入力スペクトルクラスEM7「コンパクトダンパ」用の規格で励振した。具体的には、卓越周波数3.24Hz、PSDの最高値5.56(m/s
2)
2/Hzで励振した。加振機は、(株)デルタツーリング製の6軸加振機を使用し、この加振機の振動台上に、シート支持フレーム200にシートが取り付けられたシートサスペンション機構1をセットし、そのシートに被験者を着座させた。
【0055】
図13より、EM7の共振周波数は1.0Hz、共振峰のゲインは約1.45であった。また、ISO 7096:2000の規格中、最も励振波形の振動振幅が大きく、適合することが困難なEM7に関し、励振波形の加速度のピークとなる3.24Hzにおいてゲインは0.5未満であった。よって、本実施形態のシートサスペンション機構1は、高い除振機能を有していると言える。
【符号の説明】
【0056】
1 シートサスペンション機構
100 ベースフレーム
130 第1リンク機構
131 前部リンク
132 後部リンク
140 上下方向用ばね機構
141a,141b,141c トーションバー
142 磁気ばね
143 補助ばね機構
150 第1ダンパー
200 シート支持フレーム
230 第2リンク機構
231 前部リンク
232 後部リンク
240 前後方向用ばね機構
241 ねじりコイルばね
260 第2ダンパー
300 中間フレーム