(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-21
(45)【発行日】2023-09-29
(54)【発明の名称】手指衛生行動検出システム
(51)【国際特許分類】
G16H 40/20 20180101AFI20230922BHJP
【FI】
G16H40/20
(21)【出願番号】P 2019194558
(22)【出願日】2019-10-25
【審査請求日】2022-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】591253593
【氏名又は名称】株式会社ケアコム
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】小沢 好光
(72)【発明者】
【氏名】二階 隆幸
【審査官】原 秀人
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-057303(JP,A)
【文献】特開2020-071609(JP,A)
【文献】特許第6259940(JP,B1)
【文献】特開2019-096145(JP,A)
【文献】特開2018-067082(JP,A)
【文献】特開2015-153084(JP,A)
【文献】国際公開第2019/162279(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
G06Q 50/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
消毒液剤を吐出する消毒用容器に設けられ、当該消毒用容器に対する吐出操作が行われたことを検出して操作実行情報を自身の識別情報である検出装置IDと共に送信する吐出操作検出装置と、
医療従事者により携帯され、上記医療従事者の識別情報である医療従事者IDを所定のインターバルを置いて定期的に送信する無線送信装置と、
上記吐出操作検出装置から上記操作実行情報および上記検出装置IDを受信するとともに、この受信とは非同期の形態で上記無線送信装置から上記医療従事者IDを受信し、通信ネットワークを介して接続された管理装置に対して上記受信した情報を自身の識別情報である中継装置IDと共に送信する中継装置と、
上記中継装置から送信された上記操作実行情報、上記検出装置ID、上記医療従事者IDおよび上記中継装置IDに基づいて、消毒用容器に対する吐出操作を通じて手指衛生を実行した医療従事者を特定する処理を行う上記管理装置とを備え、
上記吐出操作検出装置が装着された上記消毒用容器を施設の各場所に設置するとともに、上記消毒用容器が設置される各場所と同スペースと定義される場所およびそれ以外の場所を含めて複数の場所に上記中継装置を設置し、
上記管理装置は、
上記同スペースの定義情報を含む上記施設のレイアウト情報と、当該レイアウト情報で示される施設のレイアウト上における上記吐出操作検出装置および上記中継装置の設置場所を示す設置場所情報とを含むデータベースから情報を取得するデータベース情報取得部と、
ある時点において上記中継装置から受信した上記検出装置IDで示される吐出操作検出装置と同スペース内にある中継装置を特定する中継装置特定部と、
上記中継装置特定部により特定された中継装置において上記検出装置IDを受信した時点を基準として所定の期間以内に受信された上記医療従事者IDを対象として、上記データベース情報取得部により取得された情報により示される施設のレイアウト上で上記医療従事者が存在する場所を推定し、当該推定した場所が上記検出装置IDで示される吐出操作検出装置と同スペース内となっている医療従事者を特定する同スペース存在者特定部と、
上記同スペース存在者特定部により特定された同スペース内の医療従事者が複数か否かを判定し、複数である場合は、当該複数の医療従事者の中から、上記ある時点において受信された検出装置IDで示される吐出操作検出装置の近傍場所にいると想定される医療従事者を特定する近傍存在者特定部と、
上記同スペース存在者特定部により特定された同スペース内の医療従事者が1人である場合は、その医療従事者を上記手指衛生を実行した医療従事者として特定する一方、上記同スペース存在者特定部により特定された同スペース内の医療従事者が複数人である場合は、上記近傍存在者特定部により特定された近傍の医療従事者を上記手指衛生を実行した医療従事者として特定する実施医療従事者特定部とを備えたことを特徴とする手指衛生行動検出システム。
【請求項2】
上記管理装置は、
上記医療従事者が携帯用の消毒用容器を所持しているか否かを示す所持情報を記憶する第2のデータベースから情報を取得する第2のデータベース情報取得部と、
上記近傍存在者特定部により特定された近傍の医療従事者が複数か否かを判定し、複数である場合は、上記第2のデータベース情報取得部により取得された情報に基づいて、上記携帯用の消毒用容器を所持していない医療従事者を特定する携帯用非所持者特定部とを更に備え、
上記実施医療従事者特定部は、上記近傍存在者特定部により特定された近傍の医療従事者が1人である場合は、その医療従事者を上記手指衛生を実行した医療従事者として特定する一方、上記近傍存在者特定部により特定された近傍の医療従事者が複数人である場合は、上記携帯用非所持者特定部により特定された医療従事者を上記手指衛生を実行した医療従事者として特定することを特徴とする請求項1に記載の手指衛生行動検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手指衛生行動検出システムに関し、特に、手指衛生行動を実行している医療従事者を特定するシステムに用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
WHOは医療関連感染の中で、医療従事者の手指が媒体となって病原体の感染伝播が発生する5段階について警鐘を鳴らし、ガイドラインを通じて、石鹸と流水による手洗いや、アルコール消毒薬による手指消毒といった手指衛生の励行を推奨している。しかし、医療従事者の手指衛生実施率が50%にすら満たない医療機関も多く、その遵守率(コンプライアンス)は高くない。
【0003】
そのため、医療従事者が必要なタイミングで手指衛生を実行しているかどうかの実態をセンシングし、その結果を現場にフィードバックすることにより、手指衛生の遵守率向上に努めることが求められている。このような背景のもと、従来、消毒液剤を吐出する消毒用ボトルに対する吐出操作が行われたことを検出して所定の情報を送信することにより、当該情報に基づいて医療従事者による消毒実績を管理するシステムが提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
特許文献1に記載の消毒実績把握システムでは、消毒用ポンプ付き容器(消毒用ボトル)が、吐出操作を検知する吐出操作検知手段と、吐出操作の検知に基づいて、消毒用ボトルの周囲にいる被管理者(医療従事者)が携帯しているネームプレート(通信部、制御マイコン、記憶媒体を内蔵する)に対して吐出完了信号を送信する吐出完了信号送信手段とを備える。また、ネームプレートが、被管理者による消毒実績の情報が記憶される記憶媒体と、受信した吐出完了信号に基づいて消毒実績の情報を更新する更新手段を備える。
【0005】
特許文献2に記載の院内手洗い管理システムでは、押圧することによりポンプ機構により吐出ノズルから消毒用アルコールを吐出させるノズルヘッドを備えた消毒用アルコールボトル(消毒用ボトル)に対し、ノズルヘッドに対する押圧力を検知する感圧センサと、感圧センサが検知した押圧値を自身の通信機IDと共に送信する通信機とを含む手洗い管理装置を装着し、当該手洗い管理装置を装着した消毒用ボトルを院内の所定の場所に配置するとともに、手洗い管理装置付き消毒用ボトルの通信機と通信可能な範囲に中継機を設置する。また、個人IDを一定の時間間隔で送信する個人ID送信機を医療従事者に携帯させる。中継機は、個人IDと通信機IDと押圧値とを手洗い管理装置の通信機より受信して、これらの情報を中継機固有の中継機IDと共に院内サーバに送信する。院内サーバは、中継機から受信した個人IDおよび押圧値と、院内サーバが有する個人情報および予め定めておいた押圧設定値とをそれぞれ比較し、個人別にノズルヘッドがプッシュされていない、プッシュされたが不十分、または十分にプッシュされたことを判断する。また、中継機IDと院内サーバが内部に持っている中継機の位置情報とを比較して、医療従事者の場所を特定する。そして、院内サーバは、それらの結果を記録装置に記録させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-61157号公報
【文献】特許第6259940公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1,2に記載のシステムでは、消毒用ボトルを操作している医療従事者の他に、その消毒用ボトルの近くに他の医療従事者がいると、当該他の医療従事者も消毒を行ったものとして記録されてしまうという問題があった。すなわち、特許文献1の場合は、操作された消毒用ボトルの近くにいる他の医療従事者のネームプレートにおいても吐出完了信号が受信され、当該受信された吐出完了信号に基づいて消毒実績の情報が記録されてしまう。また、特許文献2の場合は、操作された消毒用ボトルの近くにいる他の医療従事者が携帯する個人ID送信機から送信された個人IDが消毒用ボトルの手洗い管理装置と中継機とを介して院内サーバに送信され、消毒実績の情報が記録されてしまう。
【0008】
なお、このように操作された消毒用ボトルの近くに複数の医療従事者がいる場合に、その中から実際の操作者を判定する方法として、受信電界強度の大きさを基準として判定する方法が考えられる。例えば、特許文献2に記載のシステムにおいて、個人ID送信機から送信された個人IDを受信する手洗い管理装置において、複数の医療従事者に関する個人IDを受信した場合に、受信電界強度が最も大きい個人IDに対応する医療従事者が消毒用ボトルの実際の操作者であると判定することが可能である。なお、特許文献1に記載のシステムの場合は、各医療従事者が携帯しているネームプレートが吐出完了信号を受信して内部の記憶媒体に消毒実績の情報を記録する仕組みなので、各医療従事者のネームプレートにおける受信電界強度の比較を行うことができない。そのため、ネームプレートで吐出完了信号を受信した複数の医療従事者の中から実際の操作者を特定することはできない。
【0009】
ところで、特許文献2に記載のシステムは、ノズルヘッドに対する押圧力を手洗い管理装置の感圧センサが検知するタイミングと、医療従事者の個人ID送信機から送信された個人IDを手洗い管理装置が受信するタイミングとがほぼ同じであることを前提としており、ノズルヘッドに対する押圧値と個人ID送信機から受信した個人IDとを一緒に中継機に送信している。しかしながら、実際の運用を考慮した場合、個人ID送信機のバッテリの消費電力を抑えるために、個人IDの送信を間欠的に行うように構成することがある。
【0010】
個人IDの送信を間欠的に行うようにした場合、ノズルヘッドに対する押圧力を手洗い管理装置の感圧センサが検知するタイミングと、医療従事者の個人ID送信機から送信された個人IDを手洗い管理装置が受信するタイミングとは必ずしも一致しない。そのため、ノズルヘッドを操作した医療従事者の個人ID送信機から個人IDが送信されたタイミングにおいて、医療従事者が消毒用ボトル10から離れた場所にいることがある。一方、別の医療従事者が消毒用ボトルの近くを移動していて、当該別の医療従事者の個人ID送信機から送信された個人IDが手洗い管理装置にて受信される可能性もある。その結果、手洗い管理装置にて複数の個人IDが受信されたときに、受信電界強度を基準として消毒用ボトルの使用者を特定しようとすると、必ずしも正しい使用者を特定することができない場合があるという問題があった。
【0011】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、医療従事者が携帯する送信装置から間欠的に信号が送信されるように構成されたシステムにおいても、何れかの医療従事者によって手指衛生が実行されたときに、それがどの医療従事者によって行われたのかを正確に特定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した課題を解決するために、本発明の手指衛生行動検出システムでは、消毒用容器に対する吐出操作が行われたことを検出して操作実行情報を検出装置IDと共に送信する吐出操作検出装置が装着された消毒用容器を施設の各場所に設置する。また、吐出操作検出装置から送信される操作実行情報および検出装置IDと、医療従事者が携帯する無線送信装置から所定のインターバルを置いて定期的に送信される医療従事者IDとをそれぞれ非同期の形態で受信して中継装置IDと共に管理装置に送信する中継装置を、消毒用容器が設置される各場所と同スペースと定義される場所およびそれ以外の場所を含めて複数の場所に設置する。管理装置は、ある時点において中継装置から受信した検出装置IDで示される吐出操作検出装置と同スペース内にある中継装置を特定した上で、検出装置IDを受信した時点を基準として所定の期間以内に受信された医療従事者IDを対象として、データベース情報取得部により取得された情報により示される施設のレイアウト上で医療従事者が存在する場所を推定し、当該推定した場所が検出装置IDで示される吐出操作検出装置と同スペース内となっている医療従事者を特定する。さらに、管理装置は、こうして特定された同スペース内の医療従事者が複数か否かを判定し、1人であると判定された場合は、その医療従事者を手指衛生を実行した医療従事者として特定する。一方、同スペース内の医療従事者が複数であると判定された場合は、ある時点において受信された検出装置IDで示される吐出操作検出装置の近傍場所にいると想定される医療従事者を特定することにより、当該近傍の医療従事者を手指衛生を実行した医療従事者として特定するようにしている。
【発明の効果】
【0013】
上記のように構成した本発明によれば、管理装置が検出装置IDを受信した時点を基準として所定の期間以内に受信された医療従事者IDに対応する医療従事者を対象として、施設のレイアウト上で医療従事者が存在する場所が推定され、当該推定された場所が吐出操作検出装置と同スペース内となっている医療従事者を特定して、当該同スペース内の医療従事者を手指衛生を実行した医療従事者として特定することができる。これにより、医療従事者が携帯する無線送信装置から間欠的に医療従事者IDが送信されるように構成された手指衛生行動検出システムにおいても、手指衛生を実行した医療従事者を特定することができる。
【0014】
また、本発明によれば、以上のようにして特定された同スペース内の医療従事者が複数人いる場合であっても、吐出操作検出装置の近傍場所にいると想定される医療従事者を特定して、当該近傍の医療従事者を手指衛生を実行した医療従事者として特定することができる。これにより、ある医療従事者によって消毒用容器の吐出操作により手指衛生が実行されたときに、その消毒用容器の近くに別の医療従事者が存在していても、実際に消毒用容器の吐出操作を行った医療従事者を手指衛生を実行した医療従事者として特定することができる。
【0015】
以上により、本発明によれば、医療従事者が携帯する送信装置から間欠的に信号が送信されるように構成されたシステムにおいても、何れかの医療従事者によって手指衛生が実行されたときに、それがどの医療従事者によって行われたのかを正確に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態による手指衛生行動検出システムが備える各装置およびそれらの設置場所の一例を示す図である。
【
図2】本実施形態による管理装置の機能構成例を示すブロック図である。
【
図3】本実施形態の受信情報記憶部に記憶される受信情報の一例を示す図である。
【
図4】本実施形態による中継装置特定部、近傍存在者特定部および同スペース存在者特定部の動作を説明するための図である。
【
図5】中継装置が検出装置IDを受信した時点を基準として設定される所定の期間を説明するための図である。
【
図6】本実施形態による管理装置の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態による手指衛生行動検出システムが備える各装置およびそれらの設置場所の一例を示す図である。なお、以下の実施形態では、手指衛生行動検出システムを適用する施設が病院であるものとして説明するが、介護施設など、手指衛生の励行が推奨される施設には何れにも適用することが可能である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態による手指衛生行動検出システムは、消毒液剤を吐出する消毒用ボトル10(特許請求の範囲の消毒用容器に相当。
図1では簡易的に「ボ」と表記している)に設けられた吐出操作検出装置100と、医療従事者により携帯される無線送信装置200と、病院内の各場所に設置される中継装置300(
図1では簡易的に「中」と表記している)と、中継装置300に通信ネットワークを介して接続された管理装置400とを備えて構成される。
【0019】
なお、
図1では、中継装置300と管理装置400との間を有線の通信ネットワーク(例えば、有線LAN)により接続する構成を示しているが、これに限定されない。例えば、中継装置300とアクセスポイントとの間をWi-Fi(登録商標)等の無線LANで接続し、アクセスポイントと管理装置400との間を有線LANで接続するようにしてもよい。
【0020】
図1に示すように、消毒用ボトル10は、例えば病院内の各病室R1,R2,R3内に設置される。消毒用ボトル10が設置される病室R1,R2,R3内の位置は、例えば出入口の近傍である。あるいは、病室内のベッド近傍の位置であってもよい。なお、消毒用ボトル10が設置される位置は、各病室R1,R2,R3の出入口近傍で病室外(廊下CR)の位置であってもよい。
【0021】
図1に示すように、消毒用ボトル10は、ポンプ式のボトルであり、上部のノズルヘッドを下方に押下することにより、ボトル内の消毒液が一定量吐出されるようになっている。このノズルヘッドに吐出操作検出装置100が装着されている。吐出操作検出装置100は、感圧センサを備えており、消毒用ボトル10に対する吐出操作(ノズルヘッドの押下操作)が行われたことを検出する。
【0022】
吐出操作検出装置100は、無線送信回路を備えており、消毒用ボトル10に対する吐出操作が感圧センサにより検出されると、吐出操作が実行されたことを示す操作実行情報を、自身の識別情報である検出装置IDと共に無線で送信する。検出装置IDは、吐出操作検出装置100に固有の識別情報であり、内部メモリにあらかじめ記憶されている。吐出操作検出装置100により送信された検出装置IDは、消毒用ボトル10と同じスペース内に設置されている中継装置300にて受信される。
【0023】
医療従事者により携帯される無線送信装置200は、医療従事者の識別情報である医療従事者IDを所定のインターバルを置いて定期的に送信する。例えば、無線送信装置200は、5秒おきに医療従事者IDを送信する。医療従事者IDは、医療従事者に固有の識別情報であり、無線送信装置200の内部メモリにあらかじめ記憶されている。所定のインターバルを置いて医療従事者IDを送信するのは、内蔵バッテリの消費電力量を低く抑え、無線送信装置200をできるだけ長時間継続して使用できるようにするためである。無線送信装置200により送信された医療従事者IDは、医療従事者が存在している位置の周囲にある中継装置300にて受信される。
【0024】
中継装置300は、消毒用ボトル10の吐出操作検出装置100から操作実行情報および検出装置IDを受信するとともに、この受信とは非同期の形態で無線送信装置200から医療従事者IDを受信し、通信ネットワークを介して接続された管理装置400に対して、受信した情報を自身の識別情報である中継装置IDと共に送信する。中継装置IDは、中継装置300に固有の識別情報であり、内部メモリにあらかじめ記憶されている。
【0025】
非同期の形態とは、吐出操作検出装置100から操作実行情報および検出装置IDを受信するタイミングと、無線送信装置200から医療従事者IDを受信するタイミングとが必ずしも一致するとは限らないという意味である。すなわち、操作実行情報および検出装置IDは、吐出操作検出装置100が吐出操作を検出した時点で送信されるのに対し、医療従事者IDは、吐出操作の検出とは無関係に所定の時間間隔(5秒おき)で定期的に送信されるため、中継装置300でこれらの情報を受信するタイミングは非同期となる。
【0026】
中継装置300は、消毒用ボトル10が設置される各場所と同スペースと定義される場所およびそれ以外の場所を含めて複数の場所に設置される。
図1の例では、消毒用ボトル10は病院内の各病室R1,R2,R3内に設置されている。この場合、消毒用ボトル10が設置される各場所と同スペースと定義される場所とは、各病室R1,R2,R3を意味する。また、それ以外の場所とは、病室以外の場所を意味し、
図1の例では廊下CRである。
【0027】
なお、病室の出入口近傍で病室外(廊下CR)の位置に消毒用ボトル10を設置した場合、その消毒用ボトル10が設置される場所と同スペースと定義される場所は、廊下CRではなく、その消毒用ボトル10から最も近い位置にある出入口を有する病室である。消毒用ボトル10が設置される場所に対してどの病室が同スペースであるかについては、後述するように管理装置400が備える第1のデータベースに定義情報が記憶されている。なお、消毒用ボトル10の設置場所によっては、消毒用ボトル10が設置される場所と同スペースが廊下の一部と定義される場合もある。
【0028】
管理装置400は、中継装置300から送信された操作実行情報、検出装置ID、医療従事者IDおよび中継装置IDに基づいて、消毒用ボトル10に対する吐出操作を通じて手指衛生を実行した医療従事者を特定する処理を行う。この処理の詳細については、次の
図2を用いて説明する。
【0029】
図2は、管理装置400の機能構成例を示すブロック図である。
図2に示すように、管理装置400は、記憶媒体として、第1のデータベース記憶部401(
図2では第1のDB記憶部と表記)、第2のデータベース記憶部402(
図2では第2のDB記憶部と表記)、受信情報記憶部403および手指衛生管理情報記憶部404を備えている。また、管理装置400は、機能構成として、通信部41、第1のデータベース情報取得部42(
図2では第1のDB情報取得部と表記)、中継装置特定部43、同スペース存在者特定部44、近傍存在者特定部45、第2のデータベース情報取得部46(
図2では第2のDB情報取得部と表記)、携帯用非所持者特定部47、実施医療従事者特定部48および情報記録部49を備えている。
【0030】
上記各機能ブロック41~49は、ハードウェア、DSP(Digital Signal Processor)、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記各機能ブロック41~49は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROMに記憶されたプログラムが動作することによって実現される。なお、当該プログラムは、ハードディスクや半導体メモリ等の他の記録媒体に記憶されていてもよい。
【0031】
第1のデータベース記憶部401は、同スペースの定義情報を含む施設のレイアウト情報と、当該レイアウト情報で示される施設のレイアウト上における吐出操作検出装置100および中継装置300の設置場所を示す設置場所情報とを含む第1のデータベース(特許請求の範囲のデータベースに相当)をあらかじめ記憶する。施設のレイアウト情報は、各病室R1,R2,R3の位置と形状(大きさを含む)、廊下CRの位置と形状(大きさを含む)を含む情報である。設置場所情報は、吐出操作検出装置100および中継装置300のそれぞれがどの病室R1,R2,R3またはどの廊下CRのどの位置に設置されているかを示す情報であり、後述する吐出操作検出装置100の検出装置IDおよび中継装置300の中継装置IDと関連付けて設置場所が示されている。また、第1のデータベースは、消毒用ボトル10のそれぞれについて、どの場所(病室R1,R2,R3または廊下CR)が同スペースであるかを示した定義情報も含んでいる。
【0032】
第2のデータベース記憶部402は、医療従事者が携帯用の消毒用容器(以下、携帯型消毒用ボトルという)を所持しているか否かを示す所持情報を含む第2のデータベースをあらかじめ記憶する。
図1に示した消毒用ボトル10は、
図1に示した固定の場所に設置して使用されるものであるのに対し、これとは別に、医療従事者が携帯して使用するタイプの携帯型消毒用ボトル(図示せず)も存在する。この携帯型消毒用ボトルにも吐出操作を検出するための吐出操作検出装置が設けられており、吐出操作の検出に応じて操作実行情報がボトルIDと共に無線で送信されるようになっている。ボトルIDは、携帯型消毒用ボトルに固有の識別情報であり、吐出操作検出装置の内部メモリにあらかじめ記憶されている。
【0033】
第2のデータベース記憶部402は、医療従事者の医療従事者IDと、当該医療従事者に割り当てられた携帯型消毒用ボトルのボトルIDとを対応付けて成る第2のデータベースを記憶するものであり、この第2のデータベースに医療従事者IDが記憶されている医療従事者は携帯型消毒用ボトルを所持しており、第2のデータベースに医療従事者IDが記憶されていない医療従事者は携帯型消毒用ボトルを所持していないことを示している。なお、第2のデータベースは、全ての医療従事者の医療従事者IDと、携帯型消毒用ボトルを所持しているか否かを表すフラグ情報とを関連付けて記憶したものであってもよい。
【0034】
通信部41は、中継装置300から送信された操作実行情報、検出装置ID、医療従事者IDおよび中継装置IDを受信する。具体的には、通信部41は、消毒用ボトル10の吐出操作検出装置100における吐出操作の検出時に吐出操作検出装置100から送信された操作実行情報および検出装置IDと、中継装置300にて付加された中継装置IDとを受信する。また、通信部41は、医療従事者の無線送信装置200から定期的に送信された医療従事者IDと、中継装置300にて付加された中継装置IDとを受信する。
【0035】
通信部41は、中継装置300から情報を受信する都度、受信した情報を受信情報記憶部403に時系列に記憶させる。
図3は、受信情報記憶部403に記憶される受信情報の一例を示す図である。受信情報記憶部403は、1つのレコードに1つの受信情報を記憶する。1つのレコードには、レコードID、受信時刻、中継装置ID、操作実行情報、検出装置ID、医療従事者IDおよびボトルIDが項目として含まれている。
【0036】
通信部41が中継装置300から操作実行情報、検出装置IDおよび中継装置IDを受信した場合、受信情報記憶部403に1つのレコードが追加され、当該追加されたレコードにレコードID、受信時刻、中継装置ID、操作実行情報および検出装置IDが記録される(レコードID=R6)。このレコードには、医療従事者IDおよびボトルIDは記録されない。上述したように、このレコードR6の受信情報は、消毒用ボトル10の吐出操作検出装置100において吐出操作が検出された時点で吐出操作検出装置100から中継装置300を介して送信された情報である。
【0037】
また、通信部41が中継装置300から医療従事者IDおよび中継装置IDを受信した場合、受信情報記憶部403に1つのレコードが追加され、当該追加されたレコードにレコードID、受信時刻、中継装置IDおよび医療従事者IDが記録される(レコードID=R1~R5,R7,R100)。これらのレコードには、操作実行情報、検出装置IDおよびボトルIDは記録されない。上述したように、これらのレコードR1~R5,R7,R100の受信情報は、医療従事者の無線送信装置200から中継装置300を介して定期的に送信される情報である。
【0038】
ここで、レコードR2~R4の受信情報は、同じ時刻に同じ医療従事者IDを3つの異なる中継装置300から受信したものである。これは、その医療従事者IDで示される医療従事者の周囲(無線送信装置200の電波が届く範囲)に3つの中継装置300が存在し、無線送信装置200から送信された医療従事者IDが3つの中継装置300でほぼ同時に受信されて、それぞれの中継装置300から同じ医療従事者IDがそれぞれの中継装置IDと共に送信されてきたものであることを示している。
【0039】
また、レコードR1の受信情報とレコードR100の受信情報は、医療従事者IDが同じとなっている。これは、医療従事者の無線送信装置200から所定のインターバル(5秒)を置いて定期的に送信される2回分の受信情報であることを示している。
図3の例では、レコードR1の受信情報に含まれる中継装置IDと、レコードR100の受信情報に含まれる中継装置IDとが同じになっている。これは、5秒の間に医療従事者が同じ中継装置300の近くに存在し続けていることを意味する。5秒の間に医療従事者が別の中継装置300の近くに移動すると、記録される中継装置IDは異なるものとなる。
【0040】
また、通信部41が中継装置300から操作実行情報、ボトルIDおよび中継装置IDを受信した場合、受信情報記憶部403に1つのレコードが追加され、当該追加されたレコードにレコードID、受信時刻、中継装置ID、操作実行情報およびボトルIDが記録される(図示せず)。このレコードには、検出装置IDおよび医療従事者IDは記録されない。
【0041】
第1のデータベース情報取得部42(特許請求の範囲のデータベース情報取得部に相当)は、第1のデータベース記憶部401に記憶された第1のデータベースからレイアウト情報および設置場所情報を取得する。
【0042】
中継装置特定部43は、第1のデータベース情報取得部42により取得された情報に基づいて、ある時点において中継装置300から受信した検出装置IDで示される吐出操作検出装置100と同スペース内にある中継装置300を特定する。ある時点において中継装置300から受信した検出装置IDは、
図3の例でいうと、レコードR6に記録された受信情報に含まれる検出装置IDである。つまり、当該検出装置IDで示される吐出操作検出装置100において吐出操作が検出された時点において、当該吐出操作検出装置100から中継装置300を介して送信された検出装置IDである。
【0043】
当該検出装置IDに対応する吐出操作検出装置100(すなわち、吐出操作が行われた吐出操作検出装置100)の設置場所は、第1のデータベース情報取得部42により取得されたレイアウト情報および設置場所情報に基づいて特定することが可能である。また、レイアウト情報および設置場所情報には、吐出操作検出装置100と同スペースに設置されている中継装置300の情報も含まれている。これにより、中継装置特定部43は、吐出操作が行われた吐出操作検出装置100と同スペース内にある中継装置300を特定することが可能である。
【0044】
なお、吐出操作が行われた吐出操作検出装置100と同スペース内にある中継装置300の特定方法は、これに限定されない。例えば、レコードR6の受信情報の中に検出装置IDと共に含まれている中継装置IDに対応する中継装置300を、吐出操作が行われた吐出操作検出装置100と同スペース内にある中継装置300として特定するようにしてもよい。
【0045】
図4は、この中継装置特定部43の動作を説明するための図である。なお、この
図4は、後述する同スペース存在者特定部44および近傍存在者特定部45の動作を説明する際にも使用する。
【0046】
図4(a)は、病室R1の中に医療従事者が存在する状態を示している。ここでは、医療従事者Aが病室R1内の消毒用ボトル10を操作することによって検出装置IDが病室R1内の中継装置300に送信された後、医療従事者Aが同じ病室R1内を若干歩いて移動したときに、無線送信装置200から医療従事者IDが病室R1内の中継装置300に送信された状態を示している。この場合、中継装置特定部43は、病室R1内の中継装置300を、吐出操作検出装置100が吐出操作された時点において中継装置300から受信した検出装置IDで示される吐出操作検出装置100と同スペース内にある中継装置300として特定する。
【0047】
図4(b)は、医療従事者Aに関しては
図4(a)と同様の状態で、かつ、廊下CRを歩いている別の医療従事者Bが病室R1の出入口に近づいたときに、医療従事者Bの無線送信装置200からも医療従事者IDが送信された状態を示している。この
図4(b)の例において、廊下CRにいる医療従事者Bの無線送信装置200から送信された医療従事者IDは、廊下CRに設置されている2つの中継装置300に加えて、病室R1内の中継装置300においても受信されている。この場合は、
図3のレコードR2~R4のように、同じ時刻に同じ医療従事者IDを含む3つの受信情報が受信情報記憶部403に記憶される。
【0048】
図4(b)に示す状態においても
図4(a)の場合と同様、中継装置特定部43は、病室R1内の中継装置300を、吐出操作検出装置100が吐出操作された時点において中継装置300から受信した検出装置IDで示される吐出操作検出装置100と同スペース内にある中継装置300として特定する。中継装置300が吐出操作検出装置100から検出装置IDを受信し、これを中継装置IDと共に管理装置400へ送信していることに変わりはないからである。
【0049】
同スペース存在者特定部44は、中継装置特定部43により特定された中継装置300において検出装置IDを受信した時点を基準として所定の期間以内に受信された医療従事者IDを対象として、中継装置特定部43により特定された中継装置300を含めて1以上の中継装置300から医療従事者IDと共に受信された1以上の中継装置IDに基づいて、第1のデータベース情報取得部42により取得された情報により示される施設のレイアウト上で医療従事者が存在する場所を推定する。そして、当該推定した場所が検出装置IDで示される吐出操作検出装置100と同スペース内となっている医療従事者を特定する。
【0050】
図5は、中継装置が検出装置IDを受信した時点を基準として設定される所定の期間を説明するための図である。
図5は、3人の医療従事者A~Cが携帯する無線送信装置200から医療従事者IDが定期的に送信されるタイミングと、通信部41が検出装置IDを受信したタイミングとを時間軸の直線によって模式的に示している。通信部41が検出装置IDを受信したタイミングT
Dは、吐出操作検出装置100の吐出操作が検出された時点であり、
図3の例でいうとレコードR6の受信情報が記録されたタイミングに相当する。
【0051】
図5の例では、通信部41が検出装置IDを受信したタイミングT
Dを基準として、それより早い方に-Δ
t時間および遅い方に+Δ
t時間の範囲を所定の期間として設定している。所定の期間は、無線送信装置200が医療従事者IDを送信するインターバルの時間間隔よりも短い期間が設定される。同スペース存在者特定部44は、この所定の期間以内に受信されている医療従事者IDに対応する医療従事者を対象として、吐出操作された吐出操作検出装置100と同スペース内にいると想定される医療従事者を特定する。
【0052】
図5の場合、医療従事者A,Bは、通信部41が検出装置IDを受信したタイミングT
Dを基準として所定の期間以内に医療従事者IDが受信されている。よって、同スペース存在者特定部44は、この医療従事者A,Bの中から、吐出操作された吐出操作検出装置100と同スペース内にいると想定される医療従事者を特定する。
【0053】
図3に即して説明すると、通信部41が検出装置IDを受信したタイミングT
Dは、レコードR6の受信情報が記録されたタイミングである。同スペース存在者特定部44は、このレコードR6の受信時刻を基準として、それより早い方に-Δ
t時間および遅い方に+Δ
t時間の範囲を所定の期間として、この所定の期間以内に受信されたレコードの中から、レコードR6の中継装置IDと同じ中継装置IDが記録されているレコードR2,R7を抽出する。そして、こうして抽出したレコードR2,R7に含まれている医療従事者ID“S003”、“S026”に対応する医療従事者を、同スペース内にいるか否かの判定対象として抽出する。
【0054】
なお、ここでは、通信部41が検出装置IDを受信したタイミングTDを基準として、それより早い方に-Δt時間および遅い方に+Δt時間の範囲を所定の期間として設定しているが、タイミングTDより早い方に-Δt時間の範囲のみを所定の期間として設定するようにしてもよいし、遅い方に+Δt時間の範囲のみを所定の期間として設定するようにしてもよい。前者の場合は、通信部41が検出装置IDを受信した時点で直ちに同スペース存在者特定部44の処理を行うことができる。この場合は、医療従事者が消毒用ボトル10に近づいている途中で医療従事者IDが送信された後、何れかの医療従事者が消毒用ボトル10を操作したようなケースにおいて、操作された吐出操作検出装置100と同スペース内にいる医療従事者を特定することが可能である。
【0055】
一方、通信部41が検出装置IDを受信したタイミングTDよりも遅い方に+Δt時間の範囲も所定の期間として設定する場合は、何れかの医療従事者が消毒用ボトル10を操作した後、医療従事者が消毒用ボトル10から遠ざかっている途中で医療従事者IDが送信されたケースにおいても、操作された吐出操作検出装置100と同スペース内にいる医療従事者を特定することが可能である。この場合は、通信部41が検出装置IDを受信した時点から+Δt時間が経過するのを待って同スペース存在者特定部44の処理を行う必要がある。ただし、手指衛生の実施者を直ちに特定しなければならない特別な理由がない限り、+Δt時間が経過するのを待つことになんら問題はない。
【0056】
例えば、
図4(a)のように、中継装置特定部43により特定された中継装置300において所定の期間以内に医療従事者IDが1つのみ受信された場合、つまり、中継装置300に対して無線送信装置200の電波が届く範囲内に1人の医療従事者Aしか存在しない場合、同スペース存在者特定部44は、当該1人の医療従事者Aを対象として、検出装置IDで示される吐出操作検出装置100(吐出操作が検出された吐出操作検出装置100)と同スペース内にいる医療従事者を特定する。つまり、医療従事者Aが、吐出操作が検出された吐出操作検出装置100と同スペース内にいるか否かを判定する。
図4(a)の場合、同スペース存在者特定部44は、医療従事者Aを、操作された吐出操作検出装置100と同スペース内にいる医療従事者として特定する。
【0057】
また、
図4(b)のように、中継装置特定部43により特定された中継装置300において所定の期間以内に複数の医療従事者IDが受信された場合、つまり、中継装置300に対して無線送信装置200の電波が届く範囲内に2人の医療従事者A,Bが存在する場合、同スペース存在者特定部44は、2人の医療従事者A,Bを対象として、検出装置IDで示される吐出操作検出装置100(吐出操作が検出された吐出操作検出装置100)と同スペース内にいる医療従事者を特定する。
図4(b)の場合、同スペース存在者特定部44は、医療従事者Aを、操作された吐出操作検出装置100と同スペース内にいる医療従事者として特定する。
【0058】
このように、医療従事者が吐出操作検出装置100と同スペース内にいるかどうかを特定するに当たって、医療従事者の存在場所を推定する必要がある。ここで、
図4(a)、(b)に示す医療従事者Aのように、同じ時刻に医療従事者IDが1つのレコードにしか記録されない場合、同スペース存在者特定部44は、そのレコード内に医療従事者IDと共に記録されている中継装置IDに対応する中継装置300の設置場所を、第1のデータベース情報取得部42により取得されたレイアウト情報および設置場所情報に基づいて特定し、当該特定した中継装置300の設置場所を医療従事者の存在場所として推定する。このようにして特定される中継装置300は、吐出操作が検出された吐出操作検出装置100と同スペース内にあるものとして中継装置特定部43により特定されたものである。よって、この場合、医療従事者Aの存在場所は、吐出操作が検出された吐出操作検出装置100と同スペース内であると言える。
【0059】
一方、
図4(b)に示す医療従事者Bのように、同じ時刻に同じ医療従事者IDが複数のレコードに記録されている場合、同スペース存在者特定部44は、それら複数のレコード内において同じ医療従事者IDと共に記録されている異なる中継装置IDに対応する複数の中継装置300の設置場所から、医療従事者の存在場所を推定する。例えば、同スペース存在者特定部44は、第1のデータベース情報取得部42により取得されたレイアウト情報および設置場所に基づいて、複数の中継装置300の設置場所の重心位置を計算する。そして、当該計算した重心位置がレイアウト上のどこに該当するのかを特定し、当該特定した位置を医療従事者の存在場所として推定する。
【0060】
医療従事者の存在場所を推定するために、複数の中継装置300が無線送信装置200から医療従事者IDを受信したときの受信電界強度を利用するようにしてもよい。例えば、複数の中継装置300のうち、受信電界強度が最も大きい中継装置300の設置場所を医療従事者の存在場所として推定するようにしてもよい。あるいは、受信電界強度を利用した公知の三点測位法により、3つの中継装置300の設置場所と、当該3つの中継装置300での受信電界強度から算出される3つの距離とに基づいて設定される3つの範囲が交わる場所を医療従事者の存在場所として推定するようにしてもよい。
【0061】
このようにして、
図4(b)の状態において医療従事者A,Bの存在場所を推定した場合、医療従事者Aの存在場所は、吐出操作が検出された吐出操作検出装置100と同スペース内にあることが推定される一方、医療従事者Bの存在場所は、吐出操作が検出された吐出操作検出装置100と同スペース内にはないことが推定される。よって、同スペース存在者特定部44は、中継装置特定部43により特定された中継装置300において所定の期間以内に医療従事者IDが受信された2人の医療従事者A,Bのうち、推定した存在場所が吐出操作検出装置100と同スペース内となっている方の医療従事者Aを特定する。
【0062】
なお、中継装置300の受信電界強度を利用して医療従事者の存在場所を推定する場合、中継装置300は、受信電界強度を検出するための回路構成を備え、医療従事者IDおよび中継装置IDと共に、検出した受信電界強度の情報も管理装置400に送信する。管理装置400では、受信した受信電界強度の情報もレコードの1項目として受信情報記憶部403に記憶する。同スペース存在者特定部44は、受信情報記憶部403に記憶されている受信電界強度の情報を利用して医療従事者の存在場所を推定する。
【0063】
近傍存在者特定部45は、同スペース存在者特定部44により特定された同スペース内の医療従事者が複数か否かを判定し、複数である場合は、当該複数の医療従事者の中から、ある時点において受信された検出装置IDで示される吐出操作検出装置100の近傍場所にいると想定される医療従事者を特定する。
【0064】
例えば、中継装置300が、無線送信装置200から医療従事者IDを受信する際の受信電波強度に基づいて、無線送信装置200の中継装置300からの相対位置を特定する。そして、中継装置300は、当該特定した無線送信装置200の相対位置情報を医療従事者IDおよび中継装置IDと共に管理装置400に送信する。管理装置400は、送られてきた情報を受信情報記憶部403に記憶させる。近傍存在者特定部45は、この受信情報記憶部403に記憶された無線送信装置200の相対位置情報を利用して医療従事者の存在場所を推定し、当該推定した医療従事者の存在場所と吐出操作検出装置100との距離が所定値以下である医療従事者を、ある時点において受信された検出装置IDで示される吐出操作検出装置100から所定範囲内の場所(近傍場所)にいると想定される医療従事者として特定する。なお、中継装置300は、AoA(Angle of Arrival)方式により電波が到来する方向を検出する公知技術を用いて無線送信装置200の相対方向を特定するとともに、受信電波強度に基づいて電波発信源までの距離を検出する公知技術を用いて無線送信装置200までの相対距離を特定することにより、無線送信装置200の中継装置300からの相対位置を特定することが可能である。
【0065】
なお、同スペース存在者特定部44の処理を行う際にも、以上のように中継装置300により特定される無線送信装置200の相対位置情報を利用して医療従事者の存在場所を推定し、当該推定した医療従事者の存在場所に基づいて、吐出操作が検出された吐出操作検出装置100と同スペース内にいると想定される医療従事者を特定するようにしてもよい。
【0066】
図4(b)に示す例の場合、ある時点において受信された検出装置IDで示される吐出操作検出装置100と同スペース内にいるのは医療従事者Aのみであるため、近傍存在者特定部45の処理は実行されない。仮に、病室R1の中に医療従事者Aとは別の医療従事者Xも存在することが同スペース存在者特定部44により特定されている場合は、近傍存在者特定部45の処理が実行され、医療従事者A,Xの中から、消毒用ボトル10の吐出操作が検出された吐出操作検出装置100から所定距離以内の近傍場所にいると想定される医療従事者が特定される。
【0067】
第2のデータベース情報取得部46は、第2のデータベースから所持情報を取得する。携帯用非所持者特定部47は、近傍存在者特定部45により特定された近傍の医療従事者が複数か否かを判定し、複数である場合は、第2のデータベース情報取得部46により取得された情報に基づいて、携帯型消毒用ボトルを所持していない医療従事者を特定する。すなわち、携帯用非所持者特定部47は、近傍存在者特定部45により吐出操作検出装置100の近傍場所にいるものとして特定された複数の医療従事者に対応する医療従事者IDのうち、第2のデータベースに記憶されている医療従事者IDと異なる医療従事者IDに対応する医療従事者を、携帯型消毒用ボトルを所持していない医療従事者として特定する。
【0068】
実施医療従事者特定部48は、同スペース存在者特定部44により特定された同スペース内の医療従事者が1人である場合は、その同スペース内の医療従事者を手指衛生を実行した医療従事者として特定する。また、実施医療従事者特定部48は、同スペース存在者特定部44により特定された同スペース内の医療従事者が複数人である場合で、かつ、近傍存在者特定部45により特定された近傍の医療従事者が1人である場合は、その近傍の医療従事者を手指衛生を実行した医療従事者として特定する。
【0069】
また、実施医療従事者特定部48は、同スペース存在者特定部44により特定された同スペース内の医療従事者が複数人である場合で、かつ、近傍存在者特定部45により特定された近傍の医療従事者が複数人である場合は、携帯用非所持者特定部47により特定された医療従事者を手指衛生を実行した医療従事者として特定する。
【0070】
情報記録部49は、実施医療従事者特定部48により手指衛生の実行者として特定された医療従事者を、実行時刻、実行場所に関する情報と共に履歴情報として手指衛生管理情報記憶部404に記憶させる。すなわち、情報記録部49は、吐出操作が検出された吐出操作検出装置100の検出装置IDが記録されているレコードR6の中で、受信時刻を手指衛生の実行時刻として、検出装置IDに対応する吐出操作検出装置100の設置場所を手指衛生の実行場所として、実施医療従事者特定部48により手指衛生の実行者として特定された医療従事者の医療従事者IDと共に1つのレコード構成し、当該レコードの情報を手指衛生管理情報記憶部404に記憶させる。
【0071】
なお、通信部41がボトルIDを含む情報を中継装置300から受信した場合は、情報記録部49は、第2のデータベース情報取得部46により取得される情報に基づいて、ボトルIDに対応する医療従事者IDを特定し、当該特定した医療従事者IDと、受信情報が記録されたレコードに含まれる受信時刻(手指衛生の実行時刻)と、ボトルIDとを含めて1つのレコード構成し、当該レコードの情報を手指衛生管理情報記憶部404に記憶させる。
【0072】
図6は、以上のように構成した本実施形態による管理装置400の動作例を示すフローチャートである。管理装置400は、
図6に示すフローチャートの処理を常時繰り返し実行している。なお、この
図6では、管理装置400がボトルIDを受信する場合の動作は省略している。
【0073】
まず、通信部41は、中継装置300から情報を受信したか否かを判定する(ステップS1)。中継装置300から情報を受信していない場合は(ステップS1:No)、ステップS1の判定を繰り返す。一方、通信部41が情報を受信した場合(ステップS1:Yes)、受信情報記憶部403は、1つのレコードを追加して、通信部41が受信した情報を記憶する(ステップS2)。
【0074】
次いで、中継装置特定部43は、受信情報記憶部403に記憶された受信情報の中に、吐出操作検出装置100の検出装置IDが含まれるか否かを判定する(ステップS3)。すなわち、ここでは、何れかの吐出操作検出装置100において吐出操作が検出されたか否かを判定している。受信情報の中に検出装置IDが含まれていない場合(ステップS3:No)、無線送信装置200から定期的に送信される医療従事者IDを受信した場合に相当するので、以降の処理はせず、処理はステップS1に戻る。
【0075】
一方、受信情報の中に検出装置IDが含まれている場合(ステップS3:Yes)、中継装置特定部43は、当該受信情報に含まれる中継装置IDと、第1のデータベース情報取得部42により第1のデータベース記憶部401から取得される情報とに基づいて、検出装置IDで示される吐出操作検出装置100と同スペース内にある中継装置300を特定する(ステップS4)。
【0076】
次いで、同スペース存在者特定部44は、ステップS1で通信部41が検出装置IDを受信した時点を基準として所定の期間以内に受信された医療従事者IDを対象として、中継装置特定部43により特定された中継装置300を含めて1以上の中継装置300から医療従事者IDと共に受信された1以上の中継装置IDに基づいて、第1のデータベース情報取得部42により取得された情報により示される施設のレイアウト上で医療従事者が存在する場所を推定し、当該推定した場所が検出装置IDで示される吐出操作検出装置100と同スペース内となっている医療従事者を特定する(ステップS5)。なお、通信部41がステップS1で検出装置IDを受信した時点よりも遅い方に+Δt時間の範囲も含めて所定の期間を設定している場合は、通信部41が検出装置IDを受信した時点から+Δt時間が経過するのを待って(その間もステップS1~S3の処理を実行する)、同スペース存在者特定部44の処理を行う。
【0077】
ここで、近傍存在者特定部45は、同スペース存在者特定部44により特定された同スペース内の医療従事者が複数か否かを判定する(ステップS6)。同スペース内の医療従事者が複数ではないと判定された場合(ステップS6:No)、つまり同スペース内の医療従事者が1人の場合、実施医療従事者特定部48は、同スペース存在者特定部44により特定された医療従事者を手指衛生を実行した医療従事者として特定する(ステップS7)。その後、処理はステップS13に進む。
【0078】
一方、同スペース内の医療従事者が複数であると近傍存在者特定部45により判定された場合(ステップS6:Yes)、近傍存在者特定部45は、当該複数の医療従事者の中から、吐出操作が検された吐出操作検出装置100から所定距離以内の近傍場所にいると想定される医療従事者を特定する(ステップS8)。
【0079】
さらに、携帯用非所持者特定部47は、近傍存在者特定部45により特定された近傍の医療従事者が複数か否かを判定する(ステップS9)。ここで、近傍の医療従事者が複数ではないと判定された場合(ステップS9:No)、実施医療従事者特定部48は、近傍存在者特定部45により特定された近傍の医療従事者を手指衛生を実行した医療従事者として特定する(ステップS10)。その後、処理はステップS13に進む。
【0080】
一方、近傍の医療従事者が複数であると判定された場合(ステップS9:Yes)、携帯用非所持者特定部47は、第2のデータベース情報取得部46により取得される情報に基づいて、携帯型消毒用ボトルを所持していない医療従事者を特定する(ステップS11)。この場合、実施医療従事者特定部48は、携帯用非所持者特定部47により特定された医療従事者を手指衛生を実行した医療従事者として特定する(ステップS12)。その後、処理はステップS13に進む。
【0081】
ステップS13において、情報記録部49は、ステップS7,S10またはS12で実施医療従事者特定部48により手指衛生の実行者として特定された医療従事者を、実行時刻、実行場所に関する情報と共に履歴情報として手指衛生管理情報記憶部404に記憶させる。これにより、
図6に示すフローチャートの1回の処理が終了する。
【0082】
以上詳しく説明したように、本実施形態によれば、管理装置400が検出装置IDを受信した時点を基準として所定の期間以内に受信された医療従事者IDに対応する医療従事者を対象として、施設のレイアウト上で医療従事者が存在する場所が推定され、当該推定された場所が吐出操作検出装置100と同スペース内となっている医療従事者を特定して、当該同スペース内の医療従事者を手指衛生を実行した医療従事者として特定することができる。これにより、医療従事者が携帯する無線送信装置200から間欠的に医療従事者IDが送信されるように構成された手指衛生行動検出システムにおいても、手指衛生を実行した医療従事者を特定することができる。
【0083】
また、本実施形態によれば、以上のようにして特定された同スペース内の医療従事者が複数人いる場合であっても、吐出操作検出装置100の近傍場所にいると想定される医療従事者を特定して、当該近傍の医療従事者を手指衛生を実行した医療従事者として特定することができる。これにより、ある医療従事者によって消毒用ボトル10の吐出操作により手指衛生が実行されたときに、その消毒用ボトル10の近くに別の医療従事者が存在していても、実際に消毒用ボトル10の吐出操作を行った医療従事者を手指衛生を実行した医療従事者として特定することができる。
【0084】
さらに、本実施形態によれば、以上のようにして特定された近傍に存在する医療従事者が複数人いる場合であっても、第2のデータベース情報取得部46により取得された情報に基づいて、携帯型消毒用ボトルを所持していない医療従事者を特定して、当該医療従事者を手指衛生を実行した医療従事者として特定することができる。携帯型消毒用ボトルを所持している医療従事者であれば、固定の場所に設置された消毒用ボトル10ではなく、自身が所持している携帯型消毒用ボトルを操作すると考えられるからである。これにより、ある医療従事者によって消毒用ボトル10の吐出操作により手指衛生が実行されたときに、その消毒用ボトル10の近傍に別の医療従事者が存在していても、実際に消毒用ボトル10の吐出操作を行った医療従事者を手指衛生を実行した医療従事者として特定することができる。
【0085】
以上により、本実施形態によれば、医療従事者が携帯する無線送信装置200から間欠的に信号が送信されるように構成されたシステムにおいても、何れかの医療従事者によって手指衛生が実行されたときに、それがどの医療従事者によって行われたのかを正確に特定することができる。
【0086】
なお、上記実施形態では、近傍存在者特定部45が、中継装置300により特定される無線送信装置200との相対位置情報に基づき推定される医療従事者の存在場所が吐出操作検出装置100から所定距離以内である医療従事者を吐出操作検出装置100の近傍場所にいる医療従事者として特定する例を示したが、本発明はこれに限定されない。
【0087】
例えば、ある医療従事者に関して、通信部41が検出装置IDを受信したタイミングTDの直前で医療従事者IDと共に受信した中継装置IDに対応する中継装置300の設置場所と、タイミングTDの直後に医療従事者IDと共に受信した中継装置IDに対応する中継装置300の設置場所とに基づいて、医療従事者IDが送信される1回のインターバル間に医療従事者が移動した軌跡を求める。この移動軌跡は、例えば、2つの中継装置300の設置場所の間を直線で結ぶことによって生成する。そして、吐出操作が検出された吐出操作検出装置100の設置場所から所定の距離以内の場所に移動軌跡の少なくとも一部が存在する場合に、その移動軌跡に係る医療従事者を吐出操作検出装置100の近傍場所にいる医療従事者として特定するようにしてもよい。
【0088】
その他、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその精神、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0089】
41 通信部
42 第1のデータベース情報取得部
43 中継装置特定部
44 同スペース存在者特定部
45 近傍存在者特定部
46 第2のデータベース情報取得部
47 携帯用非所持者特定部
48 実施医療従事者特定部
49 情報記録部
100 吐出操作検出装置
200 無線送信装置
300 中継装置
400 管理装置