(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-21
(45)【発行日】2023-09-29
(54)【発明の名称】放射線検出器
(51)【国際特許分類】
G01T 1/20 20060101AFI20230922BHJP
G01T 1/16 20060101ALN20230922BHJP
【FI】
G01T1/20 B
G01T1/20 F
G01T1/20 E
G01T1/16 A
(21)【出願番号】P 2020062775
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2022-09-12
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section A 発表論文のコピー
(73)【特許権者】
【識別番号】505374783
【氏名又は名称】国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【氏名又は名称】前島 幸彦
(74)【代理人】
【識別番号】100194283
【氏名又は名称】村上 大勇
(72)【発明者】
【氏名】森下 祐樹
【審査官】松平 佳巳
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-205364(JP,A)
【文献】特開2013-113790(JP,A)
【文献】特開2008-026195(JP,A)
【文献】特表2009-500608(JP,A)
【文献】特表2017-537329(JP,A)
【文献】ナノセカンド領域におけるシンチレーション減衰曲線の測定,JAPAN ANALYST Vol.22(1973),日本,1973年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/20
G01T 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を吸収してパルス状の蛍光を発するシンチレータと、前記蛍光を受けて前記蛍光に対応したパルス状の出力信号を発する光検出器と、を有する放射線検出器であって、
前記シンチレータは、α線を吸収した場合の前記蛍光の減衰時定数と、β線を吸収した場合の前記蛍光の減衰時定数が異なる板状の材料で構成され、
測定対象となる試料に近接して設置され、
前記シンチレータの表面における位置毎に前記蛍光を検出する位置検出型の前記光検出器が用いられ、
前記光検出器によって得られた位置毎の出力において、
前記出力信号におけるピークよりも後において前記出力信号が減衰する期間を少なくとも含む第1の期間内における前記出力信号の積分値であるI1と、
前記出力信号におけるピークよりも後において前記出力信号が減衰する期間であり前記第1の期間よりも始期が後である第2の期間内における前記出力信号の積分値であるI2と、
を算出し、
I2/I1と予め設定された閾値との間の大小関係において、I2/I1が大きな場合に前記出力信号がα線によるものと認識し、I2/I1が小さな場合に前記出力信号がβ線によるものと認識すると共に、前記出力信号のピーク値又はI1に基づいて、当該出力信号に対応したα線又はβ線のエネルギーを算出する
ことにより、前記試料における前記α線を発した核種、前記β線を発した核種の分布を認識する解析部を具備することを特徴とする放射線検出器。
【請求項2】
前記材料は、有機化合物であることを特徴とする請求項1に記載の放射線検出器。
【請求項3】
前記材料はスチルベンであることを特徴とする請求項2に記載の放射線検出器。
【請求項4】
前記光検出器はシリコン光電子増倍管であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の放射線検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数種類の放射線を検出する放射線検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線として、α線を検出するためにはα線を高効率で検出可能な検出器として例えばZnS(Ag)シンチレータを用いた検出器が用いられ、β線を検出するためにはβ線を高効率で検出可能な検出器として例えばGM管が用いられる。このため、ある環境下でα線とβ線を検出するためには、個別に測定を行う場合が多く、これらを共に測定するためには時間を要する場合が多い。
【0003】
これに対して、例えば壊変の過程でα線とβ線を発する核種を検知する場合には、α線とβ線とを同時に検出できることが望まれるため、単一の検出器でこれらを区別して検出できることが好ましい。特許文献1には、このようにα線とβ線を区別して検出可能な検出器が記載されている。この検出器は、放射線を吸収して可視光の蛍光を発するシンチレータと、この蛍光を検出する光電子増倍管とで構成されている。ここでは、シンチレータとして、α線を検出するためのZnS(Ag)で構成されたものと、β線を検出するためのプラスチックで構成されたシンチレータとが、α線、β線の入射方向で積層して用いられる。α線のZnS(Ag)中の飛程は短く、かつZnS(Ag)はβ線に対する感度が低い(β線による蛍光を発しない)ため、上側からZnS(Ag)シンチレータ、プラスチックシンチレータを順次積層し、その下側に光電子増倍管を設けることにより、α線によりZnS(Ag)シンチレータが発した蛍光、β線によりプラスチックシンチレータが発した蛍光を、それぞれ光電子増倍管で検出することができる。
【0004】
ここで、α線によりZnS(Ag)シンチレータが発した蛍光、β線によりプラスチックシンチレータが発した蛍光はどちらもパルス状であり、これによって光電子増倍管からパルス状の出力が得られる。ただし、これらのパルス形状(立上り時間、立ち下がり時間等)は大きく異なる。このため、光電子増倍管の出力信号のパルス波形によって、両者を弁別することができ、α線、β線を個別に検出(カウント)することができる。すなわち、このように2層構造のシンチレータを用いることによって、単体の検出器を用いてα線、β線を区別して検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の検出器によるα線、β線の検出能力は十分ではなかった。
【0007】
例えば、放射線(α線、β線)を発した核種を特定するためには、放射線のカウント数だけでなく、検出した放射線のエネルギーを認識することが要求されため、放射線検出器においては、検出した放射線のエネルギースペクトルも認識できることが好ましい。シンチレータにおける蛍光は放射線のエネルギーをシンチレータ材料が吸収することによって発せられるため、このエネルギーは蛍光の強度(パルス状の出力信号のピーク値)に比例し、このピーク値によってエネルギーを認識することができる。ただし、この際には、放射線のエネルギーのほぼ全てがシンチレータにおいて吸収されて蛍光に寄与する必要がある。
【0008】
これに対して、特許文献1に記載の技術のように2層構造のシンチレータを用いた場合には、仮に2層構造のシンチレータ全体を厚くし、これによってα線、β線のエネルギーのほぼ全てが吸収されるような構成としても、α線用のシンチレータ(ZnS(Ag))でα線の、β線用のシンチレータ(プラスチック材料)β線の、それぞれの全エネルギーを吸収させることは困難である。この場合、例えば、β線のエネルギーのうちα線用のシンチレータで吸収された成分は発光には寄与しない。このため、上記のようにα線に対応したパルス出力とβ線に対応したパルス出力が弁別されたとしても、これらのピーク値は必ずしもα線、β線のエネルギーを反映しない。このため、特許文献1に記載の検出器においては、エネルギースペクトルを高い分解能で得ることが困難であった。
【0009】
また、このような2層構造のシンチレータにおいては、このようにそのエネルギーが適切に認識されないだけでなく、エネルギーが小さな場合にはシンチレータに吸収はされるが蛍光は生じない場合があり、この場合には、例えばエネルギーの小さなβ線等は検出されないという状況が生ずる。このため、特許文献1に記載の検出器においては、十分な検出性能が得られなかった。
【0010】
このため、α線とβ線を区別して高感度で検出することができる放射線検出器が望まされた。
【0011】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、上記問題点を解決する発明を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決すべく、以下に掲げる構成とした。
本発明の放射線検出器は、放射線を吸収してパルス状の蛍光を発するシンチレータと、前記蛍光を受けて前記蛍光に対応したパルス状の出力信号を発する光検出器と、を有する放射線検出器であって、前記シンチレータは、α線を吸収した場合の前記蛍光の減衰時定数と、β線を吸収した場合の前記蛍光の減衰時定数が異なる板状の材料で構成され、測定対象となる試料に近接して設置され、前記シンチレータの表面における位置毎に前記蛍光を検出する位置検出型の前記光検出器が用いられ、前記光検出器によって得られた位置毎の出力において、前記出力信号におけるピークよりも後において前記出力信号が減衰する期間を少なくとも含む第1の期間内における前記出力信号の積分値であるI1と、前記出力信号におけるピークよりも後において前記出力信号が減衰する期間であり前記第1の期間よりも始期が後である第2の期間内における前記出力信号の積分値であるI2と、を算出し、I2/I1と予め設定された閾値との間の大小関係において、I2/I1が大きな場合に前記出力信号がα線によるものと認識し、I2/I1が小さな場合に前記出力信号がβ線によるものと認識すると共に、前記出力信号のピーク値又はI1に基づいて、当該出力信号に対応したα線又はβ線のエネルギーを算出することにより、前記試料における前記α線を発した核種、前記β線を発した核種の分布を認識する解析部を具備することを特徴とする。
本発明の放射線検出器において、前記材料は、有機化合物であることを特徴とする。
本発明の放射線検出器において、前記材料はスチルベンであることを特徴とする。
本発明の放射線検出器において、前記光検出器はシリコン光電子増倍管であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は以上のように構成されているので、α線とβ線を区別して高感度で検出することができる放射線検出器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態に係る放射線検出器で用いられるシンチレータの材料を用いた場合のα線、β線による出力信号のパルス波形を示す図である。
【
図2】α線、β線の弁別を出力信号によって行う手法を説明する図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る放射線検出器の構成を示す図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る放射線検出器における動作を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の第1の実施例によって測定されたα線(a)、β線(b)のエネルギースペクトルである。
【
図6】本発明の第2の実施例で用いられるシンチレータの材料を用いた場合のα線、β線による出力信号のパルス波形を示す図である。
【
図7】本発明の第2の実施例によって測定されたα線(a)、β線(b)のエネルギースペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態に係る放射性検出器について説明する。この放射線検出器においては、α線、β線を吸収して可視光の蛍光を発するシンチレータが用いられる。この蛍光は、従来の放射線検出器と同様に光電子増倍管で検出される。
【0016】
まず、この放射線検出器の原理について説明する。ここで用いられるシンチレータを構成する材料は有機化合物であり、例えばスチルベンである。
図1は、スチルベンにα線、β線を入射させた際の蛍光を光電子増倍管で検出した出力信号のパルス波形である。ここで、ピーク値は規格化されて統一されている。このように、スチルベンをシンチレータの材料として用いることにより、α線、β線を共に検出することができる。ただし、両者においては、特にパルスの減衰時定数が大きく異なり、α線の方がβ線よりも減衰時定数が大きい。このため、減衰時定数の違いを用いて両者を弁別することができる。このような減衰特性はシンチレータを構成する材料の物性により定まる。
【0017】
図2は、このための手法を説明する図である。
図2は、
図1に示されたパルス形状を模式的に示す。ここでは、まず、このパルス出力における期間(第1の期間)T1の間の積分値I1が算出される。ここで、T1はパルスの立ち上がり(ピークの前)からピーク後において強度が十分に減衰するまでの減衰期間のほぼ全域にわたる期間として設定され、例えば
図1の例では0~1200nsの期間である。
【0018】
一方、ここではT1の期間内におけるもう一つの期間(第2の期間)T2も設定される。T2は、終期がT1と等しく、始期が、T1よりも前でありパルスのピーク後の減衰期間の途中となるように設定される。このパルス出力における期間T2の間の積分値I2も算出され、I2<I1となる。このようにI2、I1を設定した場合、
図1においては、減衰時定数が大きなα線におけるI2/I1は、β線におけるI2/I1よりも大きくなる。すなわち、I2/I1の値によって
図1の出力を識別することができる。
【0019】
また、
図1においてはα線、β線による出力のピークが統一されて示されているが、実際にはこれらのピーク値はα線、β線のエネルギーに応じて変化し、様々である。ここで、シンチレータを、対象となるエネルギー範囲のα線、β線がこのシンチレータで十分吸収される程度に厚くすれば、これらのα線、β線のエネルギーはほぼ全てがこのシンチレータで吸収され、吸収されたエネルギーは全て上記の蛍光に寄与する。この点については、2層構造のシンチレータが用いられた特許文献1に記載の検出器とは大きく異なる。このため、上記のパルス出力のピーク値により、検出されたα線、β線のエネルギーを適正に認識することができる。あるいは、α線、β線のエネルギーが小さな場合でも、これらを適正に検出することができる。また、上記のピーク値の代わりにパルス波形の全体の積分値であるI1からエネルギーを算出してもよい。
【0020】
この際、異なるエネルギーのα線に対して、上記のI1、I2はこのピーク値にほぼ比例するため、これらの比であるI2/I1の値はα線のエネルギーには依存しない。この点についてはβ線についても同様である。このため、エネルギーに依存しない、α線とβ線の弁別のための指標としてI2/I1を用いることができる。このため、上記のシンチレータとこの弁別手法を用いて、α線、β線それぞれのエネルギースペクトルを得ることができる。
【0021】
I2、I1、あるいは更にパルスのピーク値は、光電子増倍管からのパルス出力をデジタル化して記憶することによって容易に算出することができる。この際、
図2におけるT1の始期は、このようなI2/I1による弁別がしやすいように、例えば標準試料から発生したα線、β線を検出することによって設定することができる。
【0022】
図3は、上記の原理により動作する放射線検出器1の構成を示す図である。ここでは、前記のようなスチルベンで構成されたシンチレータ10が用いられる。シンチレータ10の厚さは、測定対象となるエネルギーのα線、β線が十分吸収されるように設定され、例えば2MeV以下のα線、β線を対象とした場合には6mm程度とされる。
【0023】
光検出器20は、表面に入射した微弱な可視光の強度を認識できるものが用いられ、シリコン光電子増倍管(Si Photomultiplier)が特に好ましく用いられる。
図3においては光検出器20とシンチレータ10は便宜上離間して示されているが、これらは実際には近接させて設けることができる。シリコン光電子増倍管は、シリコンを用いて構成された光電子増倍管である。光検出器20からは、α線、β線のシンチレータ10に対する入射毎に
図1で示されたようなパルス出力が発せられる。なお、図示は省略されているが、光検出器20にはプリアンプ等が適宜設けられる。また、シンチレータ10と光検出器20の間に導光部を設けてもよい。また、α線、β線の2次元分布を測定するために、シンチレータ10を板状とし、光検出器20をシンチレータ10の表面に対応した位置検出型のもの(例えば位置検出型シリコン光電子増倍管:Position Sensitive Si Photomultiplier)としてもよい。光検出器20は、電源50で供給される電圧で駆動される。
【0024】
このパルス出力はアナログ信号であるため、これがデジタイザ30によってデジタル化されてからコンピュータ40に入力する。デジタイザ30としては、実際にはデジタルオシロスコープを用いることができる。
【0025】
コンピュータ40における解析部41は、このようにデジタル化された出力信号(パルス信号)に対して上記のような解析を行う。このため、このようなパルス信号のデータは、コンピュータ40における記憶部42に記憶され、その後で前記のようにこのパルス信号における積分値であるI1、I2がパルス毎に算出され、I2/I1が算出される。この際、パルス出力のピーク値も同時に認識される。また、前記のように光検出器20が位置検出型である場合には、解析部41は、光検出器20におけるこのパルス信号に対応した光の入射位置(入射位置情報)も認識することができる。
【0026】
図4は、この際の解析部41の動作を示すフローチャートである。まず、解析部41は、このようにI1、I2、及びパルスのピーク値を認識する(S1)。この結果、I2/I1の値が閾値Kよりも大きい場合(S2:Yes)には、この出力はα線によるものと認識され、この出力がα線のものとしてカウントされ、そのピーク値よりエネルギーが算出される(S3)。一方、I2/I1の値が閾値K以下であった場合(S2:No)には、この出力はβ線によるものとしてカウントされ、そのピーク値あるいはI1よりエネルギーが算出される(S4)。どちらの場合においても、これらの結果(α線、β線毎のエネルギー)は、記憶部42に記憶される(S5)。
【0027】
この際、前記のように、閾値Kはこの判定(S2)が適正に行われるように、事前に設定される。また、ピーク値とエネルギーの具体的な関係(比例定数)は、α線、β線で個別に設定され、同様に予め設定される。
【0028】
なお、
図4の動作は、光検出器20からの1回のパルス出力(α線又はβ線の1回の検出)毎に行うものとしているが、記憶部42がデジタイザ30からの出力を全て記憶部42に記憶させた後に、出力毎に
図4の動作を行わせてもよい。この場合、デジタイザ30としてデジタルオシロスコープを用いた場合には、出力をデジタルオシロスコープ側で記憶させてもよい。
【0029】
測定が終了し、測定に際して得られた上記のデータが全て記憶部42に記憶された後で、解析部41は、その結果を表示部43で表示させることができる。ここで、例えば光検出器20g位置検出型である場合には、位置情報毎の検出結果をα線、β線のそれぞれにおいてマッピングさせれば、この結果はα線、β線の2次元強度分布となり、この結果は、これらの放射線を発した核種の2次元分布に対応する。
【0030】
一方、α線、β線毎に認識されたエネルギーのヒストグラムは、それぞれα線、β線のエネルギースペクトルに対応する。光検出器20が位置検出型である場合には、このエネルギースペクトルを、位置領域(画素)毎に作成することもできる。解析部41は、これらの結果を表示部43で表示させることもできる。
【0031】
実際に上記の放射線検出器1によってスペクトルを測定した結果について説明する。ここで、シンチレータ10としては、6mm×6mm×6mmのスチルベン製のものが用いられた。光検出器としては、単素子のシリコン光電子増倍管が用いられ、ここではα線、β線のエネルギースペクトルが測定された。ここでは、測定の対象として、ピークエネルギーが5.5MeVのα線を発する241Amと、同じく0.55MeVのβ線を発する90Sr/同じく2.28MeVのβ線を発する90Yを混在させた線源が用いられた。
【0032】
図5は、その結果得られたα線(a)、β線(b)のエネルギースペクトルである。ここで、横軸はエネルギーチャンネル(ピーク値に対応)であり、エネルギーに比例した値となる。線源の特性に対応した結果がそれぞれで適正に得られており、α線の測定に対してのエネルギー分解能はFWHMで23.6%となっている。
【0033】
図5の例では、シンチレータの材料としてスチルベンが用いられたが、同様の特性を有する他の有機化合物も用いることができる。
図6は、このような例として、プラスチックシンチレータ(商品名EJR-299-33:Eljen Technology社製)における、
図1に対応したパルス波形である。この場合においても、α線によるパルス波形の方がβ線によるパルス波形よりも減衰時定数が長いことが確認できる。
【0034】
このシンチレータを用いた場合における
図5と同様の結果を
図7に示す。この場合においても、
図5と同様の結果が得られており、α線の測定に対してのエネルギー分解能はFWHMで27.4%となっている。
【0035】
このため、上記のシンチレータ10の材料としては、スチルベンと同様の特性を有する各種のシンチレータ材料、特に有機化合物を用いることができる。
【0036】
この放射線検出器1においては、特許文献1に記載の技術とは異なり、上記のような特性を有する単層構造のシンチレータを用いることができる。また、光検出器としては、従来の放射線検出器と同様のものを用いることができ、かつ、コンピュータ40としては、上記の処理が可能である限りにおいて、パーソナルコンピュータ等を用いることができる。このため、上記の放射線検出器を安価に得ることができる。
【0037】
また、上記の例では、シンチレータを構成する材料として有機化合物が用いられたが、他の材料でも、同様に蛍光の減衰時定数がα線とβ線で異なる場合には、上記の構成を同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 放射線検出器
10 シンチレータ
20 光検出器
30 デジタイザ
40 コンピュータ
41 解析部
42 記憶部
43 表示部
50 電源