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  • 特許-人工呼吸器システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-21
(45)【発行日】2023-09-29
(54)【発明の名称】人工呼吸器システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/00 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
A61M16/00 310
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020071674
(22)【出願日】2020-04-13
(65)【公開番号】P2021166669
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2023-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】514266404
【氏名又は名称】日本気圧バルク工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130281
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 道幸
(74)【代理人】
【識別番号】100214813
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 幸江
(72)【発明者】
【氏名】天野 英紀
【審査官】関本 達基
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-045625(JP,A)
【文献】特開2003-010331(JP,A)
【文献】特開昭59-040867(JP,A)
【文献】特開平11-276588(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に対して吸気及び排気を行うための人工呼吸器システムにおいて、
酸素濃縮手段で高い酸素濃度にされた空気を、加圧手段を用いて高気圧で充填した高圧タンクと、
減圧手段によって減圧された低圧タンクと、
該高圧タンクの高圧で酸素濃度の高い吸気側空気を複数の患者用マスクに吸気すると共に、該患者が吐き出した排気側空気を該患者用マスクを介して該低圧タンク側に排気させる吸排気制御手段とを備え、
該吸排気制御手段が、吸気と排気とを交互に行うことにより、同時に複数の該患者に対して吸気及び排気を行うことを特徴とする人工呼吸器システム。
【請求項2】
前記高圧タンクと前記患者用マスクとの間に設けられた、すべての前記患者の1回の呼吸に必要な前記吸気側空気の量の容量の吸気側小タンクと、
該高圧タンクと該吸気側小タンクとの間に設けられた吸気側弁手段と、
該患者用マスクと前記低圧タンクとの間に設けられた、すべての該患者の1回の呼吸で排気される前記排気側空気の量の容量の排気側小タンクと、
該排気側小タンクと該低圧タンクとの間に設けられた排気側弁手段とを備え、
前記吸排気制御手段が、該吸気側弁手段及び該排気側弁手段とを交互に開閉させることを特徴とする請求項1記載の人工呼吸器システム。
【請求項3】
前記高圧タンクと前記患者用マスクとの間であって該患者用マスクの直近に設けられた、該高圧タンク側から該患者用マスク側にのみ前記吸気側空気を通す吸気弁と、
該患者用マスクと前記低圧タンクとの間であって該患者用マスクの直近に設けられた、該患者用マスク側から該低圧タンク側にのみ前記排気側空気を通す排気弁とを備えることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の人工呼吸器システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者に対して吸気及び排気を行うための人工呼吸器システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、患者に対して空気の吸気及び排気を行うための人工呼吸器が用いられている。例えば、特許文献1の人工呼吸器は、陽圧の空気圧を発生する陽圧ブロワと、陰圧の空気圧を発生する陰圧ブロワと、陽圧ブロワで発生した陽圧と陰圧ブロワで発生した陰圧とを交互に選択して所定の振動空気圧に変換するロータリバルブ機構と、ロータリバルブ機構からの振動空気圧に付勢されて作動し患者に空気を供給するダイヤフラム機構とを備えたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-276588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の人工呼吸器は、一人の患者に1台の人工呼吸器であって、当然にダイヤフラム機構が1式であったために、1台の人工呼吸器を同時に多くの患者に対して用いることができなかった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、同時に複数の患者に対して吸気及び排気を行うことができる人工呼吸器システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の人工呼吸器システムは、酸素濃縮手段で高い酸素濃度にされた空気を、加圧手段を用いて高気圧で充填した高圧タンクと、減圧手段によって減圧された低圧タンクと、高圧タンクの高圧で酸素濃度の高い吸気側空気を複数の患者用マスクに吸気すると共に、患者が吐き出した排気側空気を患者用マスクを介して低圧タンク側に排気させる吸排気制御手段とを備え、吸排気制御手段が、吸気と排気とを交互に行うことにより、同時に複数の患者に対して吸気及び排気を行うことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の人工呼吸器システムは、高圧タンクと患者用マスクとの間に設けられた、すべての患者の1回の呼吸に必要な吸気側空気の量の容量の吸気側小タンクと、高圧タンクと吸気側小タンクとの間に設けられた吸気側弁手段と、患者用マスクと低圧タンクとの間に設けられた、すべての患者の1回の呼吸で排気される排気側空気の量の容量の排気側小タンクと、排気側小タンクと低圧タンクとの間に設けられた排気側弁手段とを備え、吸排気制御手段が、吸気側弁手段及び排気側弁手段とを交互に開閉させることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の人工呼吸器システムは、高圧タンクと患者用マスクとの間であって患者用マスクの直近に設けられた、高圧タンク側から患者用マスク側にのみ吸気側空気を通す吸気弁と、患者用マスクと低圧タンクとの間であって患者用マスクの直近に設けられた、患者用マスク側から低圧タンク側にのみ排気側空気を通す排気弁とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本願の発明によれば、酸素濃縮手段で高い酸素濃度にされた空気を、加圧手段を用いて高気圧で充填した高圧タンクと、減圧手段によって減圧された低圧タンクと、高圧タンクの高圧で酸素濃度の高い吸気側空気を複数の患者用マスクに吸気すると共に、患者が吐き出した排気側空気を患者用マスクを介して低圧タンク側に排気させる吸排気制御手段とを備え、同時に複数の患者に対して吸気及び排気を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る人工呼吸器システムの構成の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本願発明に係る人工呼吸器システムは、患者に対して吸気及び排気を行うためのものである。図1は、本発明に係る人工呼吸器システムの構成の一例を示す説明図である。以下、図をもとに人工呼吸器システム1の説明を行う。尚、図及び以下の説明では、5人の患者Pに対応可能な構成例を示しているが、5人に限られたものではなく、随時増減可能である。
【0012】
人工呼吸器システム1は、患者Pに高圧で酸素濃度の高い吸気側空気を供給する吸気系と、患者Pが吐き出した排気側空気を排気する排気系と、吸気系と排気系との両方を制御する吸排気制御手段と、吸気系と排気系とが患者Pに繋がる患者用マスク66とからなる。
【0013】
吸気系の基本構成としては、酸素濃縮手段である酸素濃縮機14で高い酸素濃度にされた空気を、加圧手段である加圧制御装置12を用いて高気圧で充填した高圧タンク10からなる。また、排気系の基本構成としては、減圧手段である減圧制御装置32及び排気システム32aによって減圧された低圧タンク30からなる。
【0014】
そして、吸排気制御手段は、高圧タンク10の高圧で酸素濃度の高い吸気側空気を複数の患者用マスク66に吸気すると共に、患者Pが吐き出した排気側空気を患者用マスク66を介して低圧タンク30側に排気させる制御を行うもので、吸気と排気とを交互に行うことにより、同時に複数の患者Pに対して吸気及び排気を行うことができる。
【0015】
さらに、人工呼吸器システム1の吸気系の詳細な構成としては、さらに、高圧タンク10と患者用マスク66との間に設けられた、すべての患者Pの1回の呼吸に必要な吸気側空気の量の容量の吸気側小タンク20と、高圧タンク10と吸気側小タンク20との間に設けられた吸気側弁手段である吸気側電磁弁18と、を備えている。また、排気系の詳細な構成としては、さらに、患者用マスク66と低圧タンク30との間に設けられた、すべての患者Pの1回の呼吸で排気される排気側空気の量の容量の排気側小タンク40と、排気側小タンク40と低圧タンク30との間に設けられた排気側弁手段としての排気側電磁弁38を備えている。
【0016】
尚、加圧制御装置12は、例えば加圧ポンプ等の手段である。また、低圧タンク30は、例えば、減圧手段として低圧タンク30の内部に排気用のポンプが排気システム32aとして設けられ、その排気システム32aの制御を減圧制御装置32を用いて行う構成である。また、排気システム32aで排気された排気側空気を殺菌洗浄する排気フィルタ34aを備えた殺菌排気システム34を設け、排気側空気を洗浄した上で外気に放出することも可能である。尚、低圧タンク30の外側に設けられた減圧ポンプを減圧手段として用いることも可能である。
【0017】
上述の高圧タンク10及び低圧タンク30は、人工呼吸器システム1のために専用で設計・製作することも可能であるが、例えば、出願人の会社で製造販売する高圧ルーム、低圧ルーム、酸素ルーム等を用いることも可能である。この出願人が製造販売する高圧ルーム、低圧ルーム、酸素ルームは、部屋内が高気圧や低気圧や酸素濃度が高い状態に維持され、人が内部に滞在して加圧トレーニング等を行うものである。
【0018】
吸排気制御手段は、具体的には、吸気側弁手段である吸気側電磁弁18及び排気側弁手段である排気側電磁弁38の開閉を制御する電磁弁シーケンス制御装置50であり、電磁弁シーケンス制御装置50が、吸気側電磁弁18と排気側電磁弁38とを開閉させる。尚、吸気側弁手段及び排気側弁手段を、電気的に弁の開閉を制御する電磁弁として説明し、吸排気制御手段も電磁弁シーケンス制御装置50として電気的に制御可能な形態で説明しているが、電気的な制御以外の方法での制御でも良く、その形態により制限されるものではない。
【0019】
高圧タンク10と患者用マスク66との間であって患者用マスク66の直近(すなわち、吸気側小タンク20と患者用マスク66との間)には、高圧タンク10側から患者用マスク66側にのみ吸気側空気を通す吸気弁60が設けられ、吸気側空気が、吸気側小タンク20から流路22を通って、患者用マスク66方向にのみ流れるようになっている。
【0020】
また、患者用マスク66と低圧タンク30との間であって患者用マスク66の直近(すなわち、患者用マスク66と排気側小タンク40との間)には、患者用マスク66側から低圧タンク30側にのみ排気側空気を通す排気弁62が設けられ、排気側空気が、患者用マスク66から流路42を通って、排気側小タンク40方向にのみ流れるようになっている。尚、流路42の途中に、排気側空気に含まれる水分を捉える水分キャッチャ44を設けることが好ましい。
【0021】
そして、吸気弁60及び排気弁62が、二股系の流路64を介して患者用マスク66に接続されている。
【0022】
次に、以上のような構成の人工呼吸器システム1の動作を説明する。まず、酸素濃縮機14及び加圧制御装置12を用いて、高圧タンク10に酸素濃度の高い高圧の吸気側空気を充填させる。高圧タンク10に充填される吸気側空気は、例えば10kpa~30kpaの気圧で、酸素濃度が20%以上である。そして、減圧制御装置32及び排気システム32aを用いて、低圧タンク30を減圧させる。低圧タンク30の気圧は、例えば-30kpa~-10kpaである。
【0023】
次に、患者Pが患者用マスク66を装着した状態で、吸気側電磁弁18及び排気側電磁弁38を共に閉じた状態を初動として、まず、吸気側電磁弁18を約3秒から4秒間開く。すると、吸気側空気が、高圧タンク10から吸気側小タンク20に送り込まれる。すると、その吸気側空気が、吸気側小タンク20から流路22を通って吸気弁30に至り、流路64を介して患者用マスク66に供給され、患者用マスク66を介して患者Pに給気される。
【0024】
次に、吸気側電磁弁18を閉じて、排気側電磁弁38を約2秒から3秒間開く。すると、排気側小タンク40、流路42の排気系が負圧にあり、患者Pの吐き出す排気側空気が、流路64から排気弁62を介して流路42を通って排気用小タンク40に至り、そして、さらに排気側空気が低圧タンク30に移動する。ここで、排気側電磁弁38を閉じ、上述のように吸気側電磁弁18を約3秒から4秒間開くようにして、吸気側電磁弁18と排気側電磁弁38の開閉を繰り返させるようにする。尚、高圧タンク10も低圧タンク30も絶えず一定の気圧等にするために、酸素濃縮機14、加圧制御装置12、減圧制御装置32及び排気システム32aを動作させるようにする。
【0025】
以上のような構成及び動作の人工呼吸器システム1によれば、酸素濃縮手段で高い酸素濃度にされた空気を、加圧手段を用いて高気圧で充填した高圧タンク10と、減圧手段によって減圧された低圧タンク30と、高圧タンク10の高圧で酸素濃度の高い吸気側空気を複数の患者用マスク66に吸気すると共に、患者Pが吐き出した排気側空気を患者用マスク66を介して低圧タンク30側に排気させる吸排気制御手段とを備え、同時に複数の患者Pに対して吸気及び排気を行うことができる。
【0026】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、請求の範囲によって示される。そして、請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
以上のように、本発明によれば、同時に複数の患者に対して吸気及び排気を行うことができる人工呼吸器システムを提供することができる。
【符号の説明】
【0028】
1・・・・・人工呼吸器システム
10・・・・高圧タンク
12・・・・加圧制御装置
14・・・・酸素濃縮機
18・・・・吸気側電磁弁
20・・・・吸気側小タンク
22・・・・流路
30・・・・低圧タンク
32・・・・減圧制御装置
32a・・・排気システム
34・・・・殺菌排気システム
34a・・・排気フィルタ
38・・・・排気側電磁弁
40・・・・排気側小タンク
42・・・・流路
44・・・・水分キャッチャ
50・・・・電磁弁シーケンス制御装置
60・・・・吸気弁
62・・・・排気弁
64・・・・流路
66・・・・患者用マスク
図1