(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-21
(45)【発行日】2023-09-29
(54)【発明の名称】尿路感染症を治療するための装置
(51)【国際特許分類】
A61B 18/18 20060101AFI20230922BHJP
A61N 1/44 20060101ALI20230922BHJP
A61B 18/00 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
A61B18/18 100
A61N1/44
A61B18/00
(21)【出願番号】P 2020543034
(86)(22)【出願日】2019-04-30
(86)【国際出願番号】 EP2019061056
(87)【国際公開番号】W WO2019211276
(87)【国際公開日】2019-11-07
【審査請求日】2022-04-13
(32)【優先日】2018-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】512008495
【氏名又は名称】クレオ・メディカル・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CREO MEDICAL LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハンコック,クリストファー・ポール
(72)【発明者】
【氏名】ブライアント,モーガン
(72)【発明者】
【氏名】ターナー,ルイス
(72)【発明者】
【氏名】スウェイン,サンドラ
(72)【発明者】
【氏名】エバット,ジュリアン・マーク
(72)【発明者】
【氏名】ビショップ,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】クレイブン,リチャード
【審査官】和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-525902(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0361558(US,A1)
【文献】特開2006-181353(JP,A)
【文献】特開2017-050267(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0354453(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0276784(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0006229(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0053762(US,A1)
【文献】英国特許出願公開第02547941(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/18
A61N 1/44
A61B 18/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿路感染症治療装置であって、
無線周波数(RF)電磁(EM)エネルギー及び/またはマイクロ波EMエネルギーを伝達する同軸ケーブルを有する細長いプローブと、
前記RF及び/またはマイクロ波EMエネルギーを受け取るために前記同軸ケーブルの遠位端で結合されたプローブ先端と、
前記プローブ先端へガスを運ぶガス導管と、
を備え、
前記同軸ケーブルは、内側導体、外側導体、及び前記内側導体を前記外側導体から分離する誘電材料を備え、
前記プローブ先端は、前記同軸ケーブルの前記内側導体に結合された第1の電極と、前記同軸ケーブルの前記外側導体に結合された第2の電極と、を備え、
前記第2の電極は、前記プローブ先端の内部体積を取り囲み、前記第1の電極は、前記内部体積内で長手方向に延在し、
前記プローブ先端は、前記内部体積から前記同軸ケーブルを隔離するために前記同軸ケーブルの遠位端に取り付けられた絶縁キャップをさらに備え、
前記ガス導管は、前記絶縁キャップと前記第2の電極との間に形成された流路を介して前記内部体積と流体連通し、
前記第1の電極及び前記第2の電極は、前記同軸ケーブルから前記RF及び/またはマイクロ波EMエネルギーを受け取って、非熱プラズマを生成するために、前記ガス導管から受け取られるガスの流路にわたり前記内部体積内で電界を生じるように構成され、
前記プローブ先端は、前記内部体積からプラズマを放出するための出口を含み、
前記プローブ先端は、前記内部体積の遠位端において前記第1の電極に取り付けられた導電性キャップを備え、前記導電性キャップは、前記第2の電極の遠位端から長手方向に離間して、前記出口を画定する、
前記装置。
【請求項2】
前記細長いプローブはさらに、前記プローブ先端を操縦するための操縦ワイヤを備える、請求項
1に記載の装置。
【請求項3】
前記細長いプローブに取り付け可能な引き抜きデバイスであって、前記引き抜きデバイスを通して前記細長いプローブを引き抜くように構成された前記引き抜きデバイスをさらに備える、請求項1
または2のいずれか1項に記載の装置。
【請求項4】
前記細長いプローブを尿路に導入するための外科用スコープデバイスをさらに備える、請求項1から
3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記外科用スコープデバイスは、可撓性スコープデバイスである、請求項
4に記載の装置。
【請求項6】
前記絶縁キャップは、前記第2の電極の内側に取り付けられ、前記流路は、前記絶縁キャップの周りでガスが流れることを可能にする複数の開口部を前記第2の電極に有する、請求項1から
5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記第2の電極は円筒であり、前記複数の開口部はそれぞれ、前記円筒に長手方向のノッチを備える、請求項
6に記載の装置。
【請求項8】
前記第2の電極の近位端は、前記複数の開口部を提供するようにキャスタレートされる、請求項
6に記載の装置。
【請求項9】
前記細長いプローブは、前記同軸ケーブルが貫通する管腔を画定する保護スリーブを備え、前記ガス導管は、前記同軸ケーブルの外側表面と前記保護スリーブの内側表面との間に形成された通路である、請求項1から
8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記第1の電極は螺旋状である、請求項1から
9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記第1の電極は、前記外側導体の遠位端を越えて延びる前記同軸ケーブルの前記内側導体の一部から形成される、請求項1から
10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記絶縁キャップは、面取りされた遠位端を有する、請求項1から
11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記装置は、ロボット支援外科用システムの一部である、請求項1から
12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
前記プローブ先端は、前記プラズマの温度を検出するように構成された温度センサを含む、請求項1から
13のいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
前記温度センサからの信号に基づいて、前記プラズマのプラズマ生成パラメータを制御するように構成されたコントローラをさらに備える、請求項
14に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿路感染症(UTI)の治療に使用するのに好適な装置に関する。
【背景技術】
【0002】
尿路感染症(UTI)は、一般的な感染症であり、尿路内の数多くの領域に影響を与え得る。
図2に示されるように、尿路50は、腎臓52a、52bと、尿管54a、54bと、膀胱56と、尿道58とを含む。UTIは、痛み及び不快感を引き起こし得るため、迅速な治療が望まれる。
【0003】
感染症は、数多くの異なる細菌により引き起こされ得るが、最も一般的な原因は、エシェリキアコリ(大腸菌)である。従って、UTIの従来の治療法は、抗生物質である。しかし、このような治療の副作用に加えて、抗生物質は、効果が出るのに時間がかかり得、場合によっては、抗生物質を複数回投与する必要があり得る。さらに、抗生物質は、抗生物質耐性菌の種類の増加により、UTIの治療効果が弱くなってきている。時間がかかるまたは効果のない治療は、感染が患者の腎臓に広がる場合、特に有害となり得、より深刻な症状が出て、侵襲的処置が必要となり得る。
【0004】
従って、抗生物質を使用しない改善されたUTI治療が、非常に望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、最も概略的には、熱プラズマまたは非熱プラズマを使用して、細菌を破壊することで尿路感染症(UTI)を治療する治療装置を提供する。
【0006】
第1の態様では、UTIを治療するための装置が提供され、装置は、無線周波数(RF)電磁(EM)エネルギー及び/またはマイクロ波EMエネルギーを伝達する同軸ケーブルを有する細長いプローブと、RF及び/またはマイクロ波EMエネルギーを受け取るために同軸ケーブルの遠位端で結合されたプローブ先端と、プローブ先端へガスを運ぶガス導管と、を備え、同軸ケーブルは、内側導体、外側導体、及び内側導体を外側導体から分離する誘電材料を備え、プローブ先端は、同軸ケーブルの内側導体に結合された第1の電極と、同軸ケーブルの外側導体に結合された第2の電極と、を備え、第1の電極及び第2の電極は、熱プラズマまたは非熱プラズマを生成するために、ガス導管から受け取られるガスの流路にわたり、受け取ったRF及び/またはマイクロ波EMエネルギーから電界を生成するように構成される。
【0007】
これにより、装置は、抗生物質を使用せずにUTIを治療することが可能となる。本発明による装置を使用した治療は、迅速かつ効果的であり、抗生物質による従来の治療過程では存属するであろうUTIの症状による患者の不快感を軽減する。
【0008】
熱プラズマまたは非熱プラズマの使用により、とりわけ大腸菌、肺炎桿菌、及び黄色ブドウ球菌を含む、UTIに関連する範囲の細菌または真菌のバイオバーデンが減少する。装置はまた、非熱プラズマと非電離マイクロ波放射との組み合わせを生成するように構成され得る。デバイスは、37℃以下などの41℃未満の温度を有する非熱プラズマを生成するように構成されることが好ましい。このようにして、装置は、周囲組織への損傷を回避しながら、バイオバーデンを減少させて、UTIを治療することができる。
【0009】
いくつかの実施形態では、プローブ先端に送達されるRF及び/またはマイクロ周波数エネルギーのデューティサイクルを制御することが好ましくあり得る。ガス流量も調整可能であり得、例えば、ガス流量は、毎分1.5~10リットルで調整可能であり得る。このようにして、医師が治療装置により除去される微生物(例えば細菌または真菌)の数を制御または調整できるように、装置は構成され得る。これは、医師が、患者の微生物叢(細菌叢または微生物叢)、尿路を含む人間の組織上または内部に存在する微生物に悪影響を与えることなく、必ず感染症を適切に治療できるように支援するのに、役立ち得る。
【0010】
装置は、患者の尿道及び/または尿管に合うように寸法が決められ得、よって、プローブ先端は、10mm未満、例えば3mm以下の直径を有し得る。いくつかの実施形態では、装置は、細長いプローブを直接または小さな切開を介して患者の尿路に導入するために使用され得る腹腔鏡などのスコープデバイスの器具チャネルに合うように、寸法が決められる。
【0011】
細長いプローブは、生体適合性コーティングを有することが好ましい。例えば、同軸ケーブル及びガス導管は、ポリエーテルブロックアミド(PEBAX)コーティングを有し得、プローブ先端は、銀コーティングを有し得る。他の生体適合性材料も検討されてもよい。細長いプローブは、スタンドアロン型装置として患者の尿路内に導入され得る、または外科用スコープデバイスを通して導入され得る。
【0012】
細長いプローブは、医師が治療中にプローブ先端を正確に配置するのを補助するように、操縦可能であり得ることが好ましい。例えば、プローブ先端は、細長いプローブの近位端から遠位端まで延びる制御ワイヤまたは操縦ワイヤ、例えばプル/プッシュロッドなどにより、操縦可能であり得る。細長いプローブは、その長さに沿って柔軟であることが好ましいが、いくつかの実施形態では、細長いプローブは、制御ワイヤによるプローブ先端の操縦を支援するために、その遠位端に向かってより大きな柔軟性を有し得る。
【0013】
いくつかの実施形態では、同軸ケーブルは、その近位端から遠位端まで延びる管腔を有し得る。これは、患者の尿路を通してプローブ先端を操縦し得る制御ワイヤを収容するために使用され得、または他の実施形態では、これはガス導管を形成し得る。
【0014】
いくつかの実施形態では、細長いプローブは、例えば、細長いプローブの遠位端で治療箇所を照明するために及び/または治療箇所の画像を取り込むために、光を伝達する光学チャネルをさらに備え得る。これは、医師が治療対象である尿路の領域を特定するのに役立ち得る。スコープデバイスを介して細長いプローブが患者に導入される場合、スコープデバイスは、治療箇所を照明するために及び/または治療箇所の画像を取り込むために、光を伝達する光学チャネルを備え得る。付加的または代替的に、治療中に医師が患者の尿路内のデバイスを位置特定して追跡することができるように、スコープは、蛍光透視法または他の撮像技術により検出可能であり得る。
【0015】
任意で、装置は、細長いプローブを患者の尿路から所定の速度で自動的に引き抜くように構成された引き抜きデバイスを、さらに備え得る。引き抜きデバイスは、細長いプローブにその近位端で動作可能に接続されたケーブル結合要素と、ケーブル結合要素を駆動して、細長いプローブと患者の尿路との間の長手方向に相対移動を生じるように構成されたモータと、を備え得る。例えば、引き抜きデバイスは、細長いプローブを尿路から引き抜くことができるよう細長いプローブを近位方向に移動させるために、細長いプローブの一部(例えば同軸ケーブル)に係合する1つ以上のホイールまたはローラを駆動するように構成されたモータ、任意でステッパモータを、備え得る。例えば、モータは、引き抜き速度が10mm/秒未満または5mm/秒未満、例えば1mm/秒未満となるように、調整可能であり得る、または構成され得る。所定の引き抜き速度は、モータの速度により設定され、これは医師により設定及び調整が行われ得る。
【0016】
本発明の装置は、直接医師により、またはコンピュータ制御を介して、制御され得るロボット支援外科用システムの一部を形成し得る。
【0017】
第2の電極は、プローブ先端の内部体積を取り囲み得、第1の電極は、内部体積内で長手方向に延在し得、プローブ先端は、内部体積から同軸ケーブルを隔離するために同軸ケーブルの遠位端に取り付けられた絶縁キャップをさらに備え得る。このような実施形態では、ガス導管は、絶縁キャップと第2の電極との間に形成された流路を介して内部体積と流体連通し、第1の電極及び第2の電極は、内部体積内でプラズマを打ち出すために、同軸ケーブルからRF及び/またはマイクロ波エネルギーを受け取って、内部体積内で電界を生じるように構成され、プローブ先端は、内部体積からプラズマを放出するための出口を含む。このような構造は、プラズマ生成を非常に効率的にし、これにより、治療時間が短縮され、治療後に感染症が再発しない程度に細菌が除去されることが保証される。
【0018】
絶縁キャップは、例えば内部体積の近位端を画定するために、第2の電極の内側に取り付けられ得る。流路は、第2の電極に複数の開口部を有し得、これにより、絶縁キャップの周りでガスが流れることが可能となる。複数の開口部は、内部体積へのガスの均一な流れを促進するために、一定の間隔があけられ得る。
【0019】
絶縁キャップは、プローブ先端の遠位部分で確実にプラズマが生成されることを補助し得、また、生成されたプラズマをプローブ先端の外に移動させるのに役立ち得る。いくつかの実施形態では、絶縁キャップは、第2の電極を通る開口部の領域に、面取りされた遠位端を有し得る。これは、第2の電極の流路に沿ったガスの速度を高めるのに役立ち、ガスの流量及びプローブ先端の遠位端外へのプラズマの移動を支援し得る。
【0020】
第2の電極は、円筒であり得る。複数の開口部はそれぞれ、円筒に長手方向のノッチを備え得る。例えば、第2の電極の近位端は、複数の開口部を提供するようにキャスタレートされ得る。
【0021】
細長いプローブは、同軸ケーブルが貫通する管腔を画定する保護スリーブを備え得る。ガス導管は、同軸ケーブルの外側表面と保護スリーブの内側表面との間に形成された通路であり得る。これはまた、確実に装置を小型化して、患者の尿路を通した挿入を容易にし得る。
【0022】
プローブ先端は、内部体積の遠位端において第1の電極に取り付けられた導電性キャップを備え得る。導電性キャップは、第2の電極から隔離されている。例えば、導電性キャップは、第2の電極の遠位端から離間して、出口を画定し得る。導電性キャップは、確実にプラズマが効率よく生成されるようにし得、プローブ先端の端部から周方向にプラズマを注いで、治療領域、特に感染症が患者の尿道または尿管の側壁に影響を与える領域内の細菌を効率的に破壊することを補助する。導電性キャップは、プラズマを生成する第1の電極の延長として効果的に機能する。
【0023】
第1の電極は、螺旋状であってもよい。螺旋状電極は有利に、マイクロ波周波数で電極に直列共振を提供し、これにより、ガス及びプラズマに最大のエネルギーが送達される。第1の電極は、外側導体の遠位端を越えて延びる同軸ケーブルの内側導体の一部から形成される。
【0024】
ガス導管は、ガス源(例えば加圧ガスキャニスタなど)に接続するために、細長いプローブの近位端に配置された入力ポートを有し得る。供給されるガスは、空気、ヘリウム、アルゴン、窒素、及び二酸化炭素のうちのいずれか1つであり得る。いくつかの実施形態では、ガス混合物が使用され得る。装置は、ガス導管内のガス流量を調整可能に制御するように構成された流量コントローラを含み得る。例えば、ガス流量は、毎分1.5~10リットルで調整可能であり得る。ガス流量は、プラズマプルームまたはプラズマエネルギーの大きさに影響を与え得、これは、流量コントローラにより制御され得る。
【0025】
いくつかの実施形態では、プローブ先端は、プラズマに関する情報を提供する感知手段を含み、例えばスペクトルコンテンツ、プラズマエネルギー、及びプラズマ温度などの調整を(必要であれば)行うことを可能にし得る。例えば、プラズマアプリケータは、温度センサ及び/または1つ以上の光検出器を含み得る。これらのセンサから取得した情報は、生成されるプラズマを制御するため、例えばマイクロ波電力レベル、デューティサイクル、マイクロ波電力の波形、ガス流量、ガス混合、ガスタイミングなどを制御するために、フィードバックループで使用され得る。
【0026】
本明細書では、用語「内側」は、器具チャネル及び/または同軸ケーブルの中心(例えば軸)に、半径方向により近いことを意味する。用語「外側」は、器具チャネル及び/または同軸ケーブルの中心(軸)から、半径方向により遠いことを意味する。
【0027】
本明細書では、用語「導電性」は、文脈による別段の指示がない限り、電気伝導性を意味するために使用される。
【0028】
本明細書では、用語「近位」及び「遠位」は、細長いプローブの端部を指す。使用時、近位端は、RF及び/またはマイクロ波エネルギーを提供するジェネレータにより近く、一方、遠位端は、ジェネレータからより遠い。
【0029】
本明細書では、「マイクロ波」は、400MHz~100GHzの周波数範囲を示すように概括的に使用され得るが、1GHz~60GHzの範囲が好ましい。検討された具体的な周波数は、915MHz、2.45GHz、3.3GHz、5.8GHz、10GHz、14.5GHz、及び24GHzである。対照的に、本明細書は、「無線周波数」または「RF」を使用して、例えば最大300MHz、好ましくは10kHz~1MHz、最も好ましくは400kHzという、少なくとも3桁低い周波数範囲を示す。送達されるマイクロ波エネルギーを最適化できるように、マイクロ波周波数が調整され得る。例えば、プローブ先端は、特定の周波数(例えば900MHz)で作動するように設計され得るが、使用時に最も効率的な周波数は異なり得る(例えば866MHz)。
【0030】
本発明の実施形態が、添付の図面を参照しながら、以下により詳しく論述される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図2】本発明が感染症を治療するのに使用され得る人間の尿路の概略図である。
【
図3】本発明で使用する第1のプローブ先端の断面図を示す。
【
図4】第1のプローブ先端で使用される第2の電極の斜視図である。
【
図5】本発明で使用する第2のプローブ先端の断面図を示す。
【
図6】第2のプローブ先端により生成されたプラズマの位置を示すコンピュータシミュレーションモデルである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
さらなる選択肢及び選好
図1は、本発明の一実施形態である治療装置10を示す。治療装置は、例えば、可撓性シャフトの形態を有する細長いプローブを備える。細長いプローブは、同軸ケーブル12を備え、同軸ケーブル12は、その遠位端にプローブ先端14を有する。細長いプローブは、例えばPEBAXで作られた、中に同軸ケーブル12を運ぶ保護スリーブを含み得るが、これは必須ではない。ジェネレータ20が、同軸ケーブル12の近位端に接続される。ガス供給源30も細長いプローブに接続され、細長いプローブを貫通するガス導管(図示せず)を通して、プローブ先端14にガスを供給する。ガス導管は、同軸ケーブル12の一部を形成し得、例えば、同軸ケーブル内、例えばその内側導体内に形成された長手方向中空通路であり得る。あるいは、ガス導管は、例えば保護スリーブ内など、同軸ケーブルに沿って延びる別個の管または通路であり得る。ガス供給源30は、例えばアルゴン、ヘリウム、窒素、二酸化炭素、またはこれらの組み合わせなど、非熱プラズマまたは熱プラズマを形成するのに好適に不活性な任意のガスの供給源であり得る。ガス供給源30は、細長いプローブの遠位端に送達されるガスの流量の調整を可能にするように構成され得る。ガス供給源30は、例えば、毎分1.5~10リットルのガスを供給し得る。
【0033】
いくつかの実施例では、治療プロセスを支援するために、例えば光ファイバを介して、細長いプローブを通して紫外線(UV)光を供給することが望ましくあり得る。光ファイバはまた、細長いプローブの遠位端にある治療箇所を照明するために及び/または治療箇所の画像を取り込むためにも、使用され得る。
【0034】
治療プロセス中、患者の尿路内に配置されたプローブ先端14により、ジェネレータ20は、無線周波数(RF)電磁(EM)エネルギー及び/またはマイクロ波EMエネルギーをプローブ先端14に供給する。ガス供給源30は、同時に、ガス導管を介してプローブ先端14にガスを供給する。RF及び/またはマイクロ波エネルギーと供給ガスは、プローブ先端14で結合して、熱プラズマまたは非熱プラズマを生成し、これは、プローブ先端14から放出され、尿路の表面に接触して微生物を破壊または除去する。この方法でのプラズマ生成の実施例は、例えばWO2009/060213 A1に開示されている。
【0035】
生成されるプラズマが非熱プラズマであるか熱プラズマであるかを決定するように、ジェネレータは制御され得る。例えば、供給マイクロ波エネルギーは、非熱プラズマまたは熱プラズマを生成するために選択可能な電力及び/またはデューティサイクルを有し得る。ジェネレータは、41℃未満の温度を有する非熱プラズマを生成するように操作されることが好ましく、これは、治療箇所の組織への長期的な損傷を回避するのに役立ち得る。
【0036】
装置10はさらに、引き抜きデバイス(図示せず)を含み得、これは、同軸ケーブル12に接続され、同軸ケーブル12を患者の尿路を通して所定の速度で引き抜くように動作可能である。
【0037】
図2は、尿路50の概略図を示す。尿路は、腎臓52a、52bと、尿管54a、54bと、膀胱56と、尿道58とを含む。尿路感染症(UTI)は、人体構造のこれらの部分のうちのいずれかに影響を与え得る。例えば、UTIは、尿管54bの領域60で発生し得る。UTIを治療するために抗生物質が通常使用されるが、これらは、効果がない、または効果が出るのに時間がかかる場合がある。本発明は、尿路50の任意の部分における感染症の改善された治療方法を可能にする装置を提供する。
【0038】
感染症60を治療するために、プローブ先端14は、尿道58及び膀胱56を通して進められ、医師により操縦されて正しい尿管54bに入る。例えば、プローブ先端14は、細長いプローブの近位端から遠位端まで延びる制御ワイヤにより操縦され得る。プローブ先端14が十分前進して領域60に到達すると、ジェネレータ20は、RF及び/またはマイクロ波周波数EMエネルギーをプローブ先端14に送達するように操作され、ガス供給源30は同時に、ガス導管を通してガスをプローブ先端14に運ぶ。医師は、プローブ先端14を治療領域60へ導く際、細長いプローブの遠位端から受け取った画像及び/または蛍光透視法などの他のデバイス撮像技術により、支援され得る。このようにして、感染領域60内で熱プラズマまたは非熱プラズマが生成され、UTIの原因である細菌または他の微生物が破壊され得る。
【0039】
次に、デバイスは、医師により手動で尿路50から引き抜かれ得る、または別個の引き抜きデバイスが使用され得る。引き抜きデバイスは、モータにより駆動される1つ以上のローラを有し得、これにより、引き抜きデバイスが同軸ケーブルに接続されると、モータは、細長いプローブを約1mm/秒の速さで尿路50から自動的に引き抜くように動作可能である。
【0040】
また、プローブ先端14は、腹腔鏡などの外科用スコープデバイスを通して、治療箇所60まで進ませることができると想定される。スコープデバイスは、尿道58及び膀胱56を通って尿管54bに到達し得る。あるいは、スコープデバイスは、尿路50を通ることなく、患者の腹部の切開部を通って治療箇所60に直接アクセスし得る。
【0041】
図3は、本発明で使用する、例えば前述の装置10で使用する、第1のプローブ先端100の断面図を示す。プローブ先端100は、
図1に示されるように、同軸ケーブル12の遠位端に結合され得る。プローブ先端100は、熱プラズマまたは非熱プラズマを生成するために、RF及び/またはマイクロ波EMエネルギー並びにガスを受け取るように構成され、熱プラズマまたは非熱プラズマは、プローブ先端100の遠位端から患者の尿路内の感染箇所に向けて注がれ得る。
【0042】
この実施形態では、プローブ先端100は、その遠位端に、第1の電極102と第2の電極104とを備える。第1の電極102は螺旋形状を有し、第2の電極104は各端部で開口している中空円筒であり、第1の電極102は通常、第2の電極104の長手方向軸に沿って配置される。これにより、第1の電極102と第2の電極104との間に、空間103(プラズマ生成領域とも称される)が画定される。第1の電極102及び第2の電極104のそれぞれは、銀などの生体適合性コーティングを有し得る。
【0043】
第2の電極104は、近位端に形成されたキャスタレーション(すなわち、
図4に示されるようにノッチ125により分離された一連の突出タブ121)を有する。キャスタレーションにより、同軸ケーブル12を囲む環状ガス導管106から、第2の電極104内の空間へ、ガスが流れ込むことが可能となる。空間103にて、第1の電極102と第2の電極104との間に、供給されるRF及び/またはマイクロ波EM放射により高電界が生成されるように構成することにより、プラズマが打ち出され得る。プラズマは、RF EMエネルギーを使用して打ち出され、マイクロ波EMエネルギーにより維持され得る。生成されたプラズマは、第2の電極104の遠位開口端から流れ出て、細長いプローブが挿入された患者の尿路の表面に接触する。
【0044】
同軸ケーブル12は、絶縁性誘電材料111により外側導体110から分離された内側導体108を備える。第1の電極102は、同軸ケーブルの内側導体108に結合され、第2の電極104は、同軸ケーブル12の外側導体110に結合される。いくつかの実施形態では、第1の電極102は、その遠位端に、
図5に示され後述されるキャップ122などのキャップをさらに備え得る。
【0045】
ガス導管106は、同軸ケーブルの外側導体110の外側表面と、同軸ケーブル12を囲む保護スリーブ112との間の環状ギャップにより、形成され得る。上記で論述されたように、ガスは、ガス供給源30から、同軸ケーブル12の近位端にある、または同軸ケーブル12の近位端の周りにあるガス導管106へ、導入され得る。
【0046】
第2の電極104は、同軸ケーブル12の遠位端で、外側導体110の上及びスリーブ112内に篏合するように構成される。従って、第2の電極104は、ガス導管106内のその遠位端に存在する。ガスは、ガス導管106から、第2の電極104の近位端に形成されたキャスタレーションを通って、第2の電極104内に流れることができる。
【0047】
第2の電極104の内側で同軸ケーブル12の遠位端に、全体的に円筒形のセラミックキャップ114が配置される。セラミックキャップ114は、同軸ケーブル12の外側導体110の遠位端から離間している。これらの部品の間の長手方向のギャップ116は、例えばUV硬化性接着剤などの接着剤で充填され、外側導体110と内側導体108との間のいかなるアーキングも防止され得る。
【0048】
セラミックキャップ114は、長手方向に約2mm延在し得る。セラミックキャップ114は、ガス導管106からガスが空間103に流れ込んで、プラズマが打ち出される第1の電極102と第2の電極104との間を通ることを促すように、面取りされた遠位端面を有する。第1の電極102は、セラミックキャップ114を貫通する導電性要素(図示せず)により、同軸ケーブルの内側導体108に結合される。導電性要素は、外側導体110の遠位端を越えて突出する内側導体108の一部であってもよい。
【0049】
この実施形態の第1の電極102は、螺旋構造または渦巻き構造を形成するようにねじられたワイヤで、形成される。いくつかの実施形態では、ワイヤは、例えばPTFE、PEEK、またはセラミック材料などの誘電材料の固体芯の周りに巻かれ得る。あるいは、ワイヤは、薄壁の開口円筒の周りに巻かれ得る。ワイヤは、プローブ先端100における導体損失を確実に最小化するために、銅、銀、金、またはメッキ鋼などの良導体から作成されることが好ましくあり得る。ワイヤは、同軸ケーブル12の遠位端から延在する内側導体108の遠位部分であってもよい。
【0050】
第1の電極102は、本発明で使用されるマイクロ波周波数で、共振構造となるように構成される。第1の電極102を形成するワイヤは、これらの周波数で、誘導行動を示す。第1の電極102を螺旋に形成することにより、エネルギーが先端100に供給されると、隣接するそれぞれのターンの間に、静電容量が生じる。従って、この構造により、プローブ先端100に供給されるEMエネルギーのマイクロ波周波数で、第1の電極102の直列共振が最小インピーダンスを有するのに、好適な状況が作られる。
【0051】
図4は、第2の電極104の一実施例の斜視図を示す。第2の電極104は、開口遠位端123を有する中空円筒であり、電極内で生成されたプラズマが遠位端から流れ出ることを可能にする。電極104の近位端も開口しており、よって、電極は、前述の方法で同軸ケーブルの遠位端に篏合され得る。電極104の近位端においてタブ121の間に複数のノッチ125が形成されるように、電極104の近位端はキャスタレートされている。これらのノッチ125により、前述のように、ガス導管106から電極104の内部へガスが流れることが可能となり、電極104の内部にガスが打ち出され、熱プラズマまたは非熱プラズマが生成される。空間103へのガスの流れが長手方向軸の周りで実質的に均一になるように、複数のノッチが第2の電極104の外周に規則的に間隔を置いて配置されていることが、望ましくあり得る。
【0052】
第2の電極104の全長は、少なくとも11mmであり、キャスタレーションの基部と第2の電極104の遠位端との間の距離は、少なくとも3mmであり、好ましくは少なくとも5mmである。例えば、距離は6.8mmであり得る。この距離は、通常、熱プラズマまたは非熱プラズマが生成される第2の電極104内の体積の長さに等しい。
【0053】
図5は、本発明で使用するプローブ先端120の第2の実施形態の断面図を示す。第1のプローブ先端100に対応する第2のプローブ先端120の機構には、同じ参照番号が与えられ、再度説明は行わない。プローブ先端120は、前述の第1のプローブ先端100と同様の方法で、同軸ケーブルの遠位端に篏合される。
【0054】
プローブ先端120では、第1の電極102は、螺旋状ではなく直線である。例えば、第1の電極102は単に、同軸ケーブルの内側導体108の延長であり得る。第1の電極102の遠位端には、導電性端部キャップ122が存在し、これは、第2の電極104の遠位端から離間して、ギャップ119を画定する。プローブ先端120は、熱プラズマまたは非熱プラズマを生成するために、RF及び/またはマイクロ波EMエネルギー並びにガスを受け取るように構成される。プローブ先端120は、前述のプローブ先端100と同様に作動する。
【0055】
プローブ先端120が患者の尿路内に配置されると、端部キャップ122は、熱プラズマまたは非熱プラズマの維持を支援し、また、尿路の感染領域にプラズマを注いで細菌及び他の微生物を破壊するように作動する。端部キャップ122は、例えば、第2の電極104の外径と同様の(好ましくは第2の電極104の外径よりわずかに大きい)直径を有する円板であり得る。端部キャップ122は、銅、銀、金、またはメッキ鋼などの導電性材料でできている。端部キャップ122は、第2の電極104の遠位端と端部キャップ122との間に約0.5mmのギャップが存在するように、第1の電極102の遠位端に結合されている。端部キャップはまた、
図2に示されるプローブ先端100などの螺旋状の第1の電極を有する実施形態で使用されてもよい。
【0056】
図5に示される構造の発展形態では、例えば1つまたは複数の熱電対などの温度センサが、プラズマ生成領域の近くに配置され得る。例えば、熱電対は、保護スリーブ112の遠位端に取り付けられ得る。熱電対への信号及び熱電対からの信号は、スリーブまたはガス導管106内で伝達され得る。
【0057】
温度センサは、プラズマ生成領域の温度を検出し、温度を示す信号をコントローラに送り返すように構成される。コントローラは、次に、プラズマが熱プラズマになることを防ぐために器具を制御するように構成され得る。
【0058】
使用時、器具は、尿道の内壁に近接する。従って、臓器に損傷を与えることがないように、温度は約40℃に制限されることが重要である。温度センサからの信号は、プラズマ生成パラメータ制御するコントローラ(ジェネレータ)内の閉ループ制御回路で使用され得る。例えば、制御回路は、(i)維持パルスのマイクロ波電力レベル、(ii)マイクロ波エネルギーのパルスの作動時間及び/または停止時間、(iii)RF電圧のバーストの持続時間、(iv)全体の治療時間、(v)アプリケータ供給速度、及び(vi)ガスの流量、のうちのいずれか1つ以上を制御するように作動し得る。あるいは、閾値温度に到達したことを検出すると、ジェネレータは、エネルギー送達を遮断するように構成され得る。
【0059】
温度センサが設けられることにより、器具が安全な温度領域内で作動することが保証され得る。
【0060】
図6は、使用時のプローブ先端120の周りの電界強度を示すコンピュータ生成シミュレーションである。端部キャップ122の存在は、第2の電極104の遠位端と端部キャップ122の長手方向対向部との間に延在する環状領域124に、電界を集中させるように作用することが分かる。これは、プラズマがこの領域に生成され得、空間103を通るガスの流れが、端部キャップ122により偏向されることを示す。これは、尿道58または尿管54a、54bの側壁に熱プラズマまたは非熱プラズマを注いで、これらの領域の感染症を治療するのに、特に有用であり得る。