(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-21
(45)【発行日】2023-09-29
(54)【発明の名称】スピーカー構造及びその磁気回路システム
(51)【国際特許分類】
H04R 9/00 20060101AFI20230922BHJP
H04R 9/02 20060101ALI20230922BHJP
H04R 7/04 20060101ALI20230922BHJP
H04R 9/04 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
H04R9/00 C
H04R9/02 102A
H04R9/02 101Z
H04R7/04
H04R9/04 102
(21)【出願番号】P 2021516577
(86)(22)【出願日】2019-09-20
(86)【国際出願番号】 CN2019107098
(87)【国際公開番号】W WO2020057655
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-06-15
(31)【優先権主張番号】201811100849.0
(32)【優先日】2018-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201921396383.3
(32)【優先日】2019-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521115915
【氏名又は名称】常州阿木奇声学科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】孟献振
(72)【発明者】
【氏名】▲ザイ▼成
(72)【発明者】
【氏名】王登衛
(72)【発明者】
【氏名】丁傳坤
【審査官】菊池 智紀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0003662(US,A1)
【文献】米国特許第03873784(US,A)
【文献】特開2006-101368(JP,A)
【文献】特開2004-032659(JP,A)
【文献】特開2009-049757(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0068063(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 7/00-9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、前記ハウジング内に設置される少なくとも1つの磁気回路システムと、少なくとも1つの振動系を含み、前記少なくとも1つの振動系が、前記少なくとも1つの磁気回路システムの磁界の作用で機械運動を発生可能な少なくとも1層の駆動路と、前記少なくとも1層の駆動路により駆動される振動板を含むスピーカー構造であって、
前記少なくとも1層の駆動路は前記振動板に組み合わされ、且つ平面型をなしており、
前記少なくとも1層の駆動路は少なくとも1層のコイルユニットを含み、
前記少なくとも1つの振動系はフレームを含み、前記振動板はフィルム及び基板を含み、前記フレームは前記磁気回路システムの真上に水平に配置されており、前記フィルムは周縁で前記フレームに組み合わされ、
前記基板は、前記フィルムの中央部に組み合わされるとともに、前記フレームに対して上下動可能であり、
前記少なくとも1層のコイルユニットは前記基板に組み合わされ
、
前記少なくとも1層のコイルユニットは導線を巻き付けてなり、且つ平面型をなしており、
前記少なくとも1層のコイルユニットは少なくとも2層のコイルユニットを含み、前記少なくとも2層のコイルユニットは、直列に接続され、且つ上下に積層されており、
前記少なくとも2層のコイルユニットは、動作過程における電流の方向が同じであることを特徴とするスピーカー構造。
【請求項2】
前記少なくとも1つの磁気回路システムは、前記少なくとも1層のコイルユニットの真下にアレイ状に配列される複数の磁性体を含み、各磁性体の2つの磁極はそれぞれ上側と下側に位置し、且つ隣り合う磁性体の極性は逆向きであることを特徴とする請求項
1に記載のスピーカー構造。
【請求項3】
前記複数の磁性体は間隔を置いて配列される3つの磁性体を含み、前記3つの磁性体のうち1つ目の磁性体と2つ目の磁性体の間に第1隙間が形成されており、前記3つの磁性体のうち2つ目の磁性体と3つ目の磁性体の間に第2隙間が形成されており、前記少なくとも1層のコイルユニットは動作過程における電流の方向が逆向きの2つ平直部分を含み、前記2つの平直部分は、それぞれ前記第1隙間と前記第2隙間に対応して設置されることを特徴とする請求項
2に記載のスピーカー構造。
【請求項4】
前記少なくとも1層のコイルユニットは、導線を螺旋状に1つの平面内で巻くことでなることを特徴とする請求項
3に記載のスピーカー構造。
【請求項5】
前記少なくとも1層のコイルユニットはトラック型をなしており、
前記3つの磁性体はいずれも長尺状をなしており、且つ平行に間隔を置いて配列されることを特徴とする請求項
4に記載のスピーカー構造。
【請求項6】
前記複数の磁性体は、部分的に永久磁石又は電磁石を少なくとも含むことを特徴とする請求項
2~
5のいずれか1項に記載のスピーカー構造。
【請求項7】
ハウジングと、前記ハウジング内に設置される少なくとも1つの磁気回路システムと、少なくとも1つの振動系を含み、前記少なくとも1つの振動系が、前記少なくとも1つの磁気回路システムの磁界の作用で機械運動を発生可能な少なくとも1層の駆動路と、前記少なくとも1層の駆動路により駆動される振動板を含むスピーカー構造であって、
前記少なくとも1層の駆動路は前記振動板に組み合わされ、且つ平面型をなしており、
前記少なくとも1層の駆動路は少なくとも1層のコイルユニットを含み、前記少なくとも1層のコイルユニットは導線を巻き付けてなり、且つ平面型をなしており、
前記少なくとも1層のコイルユニットは少なくとも2層のコイルユニットを含み、前記少なくとも2層のコイルユニットは、直列に接続され、且つ上下に積層されており、
前記少なくとも2層のコイルユニットは、動作過程における電流の方向が同じであり、
前記少なくとも1つの振動系はフレームを含み、前記振動板はフィルム及び基板を含み、前記フレームは前記磁気回路システムの真上に水平に配置されており、前記フィルムは周縁で前記フレームに組み合わされ、
前記基板は、裏面で前記フィルムの中央部の正面に組み合わされるとともに、前記フレームに対して上下動可能であり、
前記少なくとも1層のコイルユニットは裏面で前記基板の正面に組み合わされることを特徴とするスピーカー構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は音響学の分野に関し、より具体的には、スピーカー構造及びその磁気回路システムに関する。
【背景技術】
【0002】
スピーカー構造は電気音響デバイスの一種であり、電気信号を音声信号に変換する作用を奏する。現在の薄型化傾向に伴って、スピーカー構造のサイズに対する要求も一段と厳しいものになっている。
【0003】
関連技術のスピーカー構造には、可動鉄片ユニットと可動コイルユニットが含まれる。可動鉄片ユニットは、ドライブロッドで振動板を振動させることで、その振動により音声を発生させる。このような構造のスピーカー構造は、外形が規則的で体積も小さいが、構造が複雑であり、高コストである。一方、可動コイルユニットは構造が比較的シンプルであり、低コストであるが、外形が不規則でサイズが大変大きい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする技術的課題は、改良型のスピーカー構造及びその磁気回路システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明が技術的課題を解決するために用いる技術方案は以下の通りである。
【0006】
ハウジングと、前記ハウジング内に設置される少なくとも1つの磁気回路システムと、少なくとも1つの振動系を含むスピーカー構造を構成する。前記少なくとも1つの振動系は、前記少なくとも1つの磁気回路システムの磁界の作用で機械運動を発生可能な少なくとも1層の駆動路と、前記少なくとも1層の駆動路により駆動される振動板を含む。前記少なくとも1層の駆動路は、前記振動板に組み合わされ、且つ平面型をなしている。
【0007】
一部の実施例において、前記少なくとも1層の駆動路は少なくとも1層のコイルユニットを含む。前記少なくとも1層のコイルユニットは導線を巻き付けてなり、且つ平面型をなしている。
【0008】
一部の実施例において、前記少なくとも1つの磁気回路システムは、前記少なくとも1層のコイルユニットの真下にアレイ状に配列される複数の磁性体を含む。各磁性体の2つの磁極はそれぞれ上側と下側に位置し、且つ隣り合う磁性体の極性は逆向きである。
【0009】
一部の実施例において、前記複数の磁性体は間隔を置いて配列される3つの磁性体を含む。前記3つの磁性体のうち1つ目の磁性体と2つ目の磁性体の間に第1隙間が形成されており、前記3つの磁性体のうち2つ目の磁性体と3つ目の磁性体の間に第2隙間が形成されている。前記少なくとも1層のコイルユニットは動作過程における電流の方向が逆向きの2つ平直部分を含む。前記2つの平直部分は、それぞれ前記第1隙間と前記第2隙間に対応して設置される。
【0010】
一部の実施例において、前記少なくとも1層のコイルユニットは、導線を螺旋状に1つの平面内で巻くことでなる。
【0011】
一部の実施例において、前記少なくとも1層のコイルユニットはトラック型をなしている。前記3つの磁性体はいずれも長尺状をなしており、且つ平行に間隔を置いて配列される。
【0012】
一部の実施例において、前記複数の磁性体は、部分的に永久磁石又は電磁石を少なくとも含む。
【0013】
一部の実施例において、前記少なくとも1層のコイルユニットは少なくとも2層のコイルユニットを含む。前記少なくとも2層のコイルユニットは、直列に接続され、且つ上下に積層されている。前記少なくとも2層のコイルユニットは、動作過程における電流の方向が同じである。
【0014】
一部の実施例において、前記少なくとも1つの振動系はフレームを含み、前記振動板はフィルム及び基板を含む。前記フレームは前記磁気回路システムの真上に水平に配置されている。前記フィルムは周縁で前記フレームに組み合わされる。前記基板は、裏面で前記フィルムの中央部の正面に組み合わされるとともに、前記フレームに対して上下動可能である。前記少なくとも1層のコイルユニットは裏面で前記基板の正面に組み合わされる。
【0015】
一部の実施例において、前記少なくとも1つの磁気回路システムは2つの磁気回路システムを含む。前記2つの磁気回路システムは上下に配置される。前記少なくとも1つの振動系は前記2つの磁気回路システムの間に設置される。
【0016】
一部の実施例において、前記少なくとも1つの振動系は2つの振動系を含む。前記2つの振動系は上下に間隔を置いて配置され、且つ前記2つの磁気回路システムにそれぞれ対応している。
【0017】
一部の実施例において、前記振動板は回路基板を含み、前記少なくとも1層の駆動路は前記回路基板に印刷される。
【0018】
一部の実施例において、前記回路基板はフレキシブル基板を含む。
【0019】
一部の実施例において、前記磁気回路システムは、平行に間隔を置いて配列される複数の第1磁性体を含み、隣り合う2つの第1磁性体ごとに、極性が上下に交互に配置されるか、左右に交互に配置される。
【0020】
一部の実施例において、前記少なくとも1層の駆動路は複数の平直路を含み、これらの平直路は、隣り合う2つの第1磁性体の間における各駆動空間の真上に対応して設置される。
【0021】
一部の実施例において、前記磁気回路システムは、前記複数の第1磁性体と間隔を置いて交互に配列される複数の第2磁性体を含み、隣り合う2つの第1磁性体ごとに極性が上下に交互に配置され、隣り合う2つの第2磁性体ごとに極性が左右に交互に配置される。
【0022】
スピーカー構造に用いられる磁気回路システムを提供する。前記磁気回路システムは、磁性体アレイを含み、前記磁性体アレイは平行に間隔を置いて配列される複数の第1磁性体を含み、隣り合う2つの第1磁性体ごとに、極性が上下/左右に交互に配置される。
【0023】
一部の実施例において、前記第1磁性体は、永久磁石及び/又は電磁石を含む。
【0024】
一部の実施例において、前記磁性体アレイは複数の第2磁性体を更に含む。前記複数の第2磁性体は前記複数の第1磁性体と間隔を置いて交互に配列され、隣り合う2つの第2磁性体ごとに、極性が左右/上下に交互に配置される。
【発明の効果】
【0025】
本発明のスピーカー構造を実施することで、以下の有益な効果を有する。即ち、振動系の駆動路が平面型をなしているため、スピーカー構造の厚さを効果的に減少させられる。
【0026】
以下に、図面と実施例を組み合わせて本発明につき更に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施例におけるスピーカー構造の立体構造を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1で示したスピーカー構造のA-A方向における断面構造を示す図である。
【
図3】
図3は、
図1で示したスピーカー構造の立体分解構造を示す図である。
【
図4】
図4は、
図1で示したスピーカー構造の振動系の立体分解構造を示す図である。
【
図5】
図5は、
図4で示した振動系の底部を上向きにした場合の立体構造を示す図である。
【
図6】
図6は、
図5で示した振動系の立体分解構造を示す図である。
【
図7】
図7は、
図1で示したスピーカー構造のコイルの一部構造を示す図である。
【
図8】
図8は、本発明の第2実施例におけるスピーカー構造の構成を示す図である。
【
図9】
図9は、本発明の第3実施例におけるスピーカー構造の構成を示す図である。
【
図10】
図10は、本発明の第4実施例におけるスピーカー構造の構成を示す図である。
【
図11】
図11は、本発明の第5実施例におけるスピーカー構造の部分的な立体構造を示す図である。
【
図14】
図14は、本発明の第6実施例におけるスピーカー構造の縦方向の断面構造を示す図である。
【
図15】
図15は、本発明の第7実施例におけるスピーカー構造の縦方向の断面構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の技術的特徴、目的及び効果がより明確に理解されるよう、図面を参照して本発明の具体的実施形態につき詳細に説明する。理解すべき点として、以下の記載において、「前」、「後」、「上」、「下」、「左」、「右」、「縦」、「横」、「垂直」、「水平」、「天井」、「底」、「内」、「外」、「先頭」、「末尾」等の向き又は位置関係を示す用語は、図示の向き又は位置関係に基づいて、特定の向きで構成及び操作することを示しているが、これらは本技術方案の記載の便宜上のものにすぎず、対象となる装置又は部材が必ずしも特定の向きを有さねばならないことを指示するものではない。よって本発明を制限するものと理解すべきではない。
【0029】
図1~
図3は、本発明の第1実施例におけるスピーカー構造1を示す。前記スピーカー構造1は、イヤホン、携帯電話、補聴器等の電子製品に使用可能であり、電気信号を機械的な運動に変換して、最終的に音声信号に変換するものである。前記スピーカー構造1は、ハウジング10、ハウジング10内に設置される磁気回路システム20、及びハウジング10内に設置されて磁気回路システム20の作用で運動可能な振動系30を含み得る。一部の実施例において、磁気回路システム20はハウジング10の底壁111に設置可能であり、振動系30は磁気回路システム20の真上に水平に設置される。振動系30とハウジング10の天井壁121との間にはキャビティ120が規定されている。また、ハウジング10の一端におけるキャビティ120に対応する箇所には放音孔1230が開設されている。前記放音孔1230は、キャビティ120と外部を連通させる。
【0030】
一部の実施例において、ハウジング10は直方体状としてもよく、下ハウジング11と、前記下ハウジング11に組み合わされる上ハウジング12を含み得る。一部の実施例において、下ハウジング11はU字型をなしてもよく、平坦な底壁111と、前記底壁111における対向する両側にそれぞれ立設される第1側壁112及び113の2つを含み得る。一部の実施例において、上ハウジング12は逆U字型をなしてもよく、平坦な天井壁121と、前記天井壁121における対向する両側から下方に延伸する第2側壁122及び123の2つを含む。下ハウジング11と上ハウジング12は交差するよう掛合して、磁気回路システム20と振動系30を収容するための装着スペースを規定する。
【0031】
一部の実施例において、スピーカー構造1は、ハウジング10の一端の外部に設置される放音管40と、ハウジング10の他端の外部に設置される回路基板50を更に含み得る。放音管40は放音孔1230と連通し、回路基板50は振動系30に電気的に接続される。
【0032】
一部の実施例において、磁気回路システム20は、下ハウジング11の底壁111に固定されてアレイ状に配列される複数の磁性体を含み得る。各磁性体の2つの磁極はそれぞれ上側と下側に位置し、且つ隣り合う磁性体の極性は逆向きである。つまり、隣り合う一方の磁性体のN極が上側、S極が下側である場合、他方の磁性体のN極は下側、S極は上側となる。反対の場合も同様である。一部の実施例において、隣り合う磁性体の間には隙間が形成されており、隙間の真上に水平の磁界が形成される。一部の実施例において、磁性体は永久磁石としてもよいし、電磁石としてもよい。一部の実施例において、磁気回路システム20の磁性体は、全てを永久磁石としてもよいし、全てを電磁石としてもよいし、一部を永久磁石、一部を電磁石としてもよい。
【0033】
また、
図3に示すように、一部の実施例において、磁気回路システム20は、平行に間隔を置いて下ハウジング11の底壁111に配列される第1磁性体21、第2磁性体22及び第3磁性体23を含み得る。一部の実施例において、第1磁性体21、第2磁性体22及び第3磁性体23は、いずれも矩形の長尺状としてもよい。また、このうち第1磁性体21と第3磁性体23の極性が同じとなる。即ち、N極が上側、S極が下側となる。一方、第2磁性体22のN極は下側、S極は上側となる。第1磁性体21と第2磁性体22の間には縦長の第1隙間24が形成されており、第2磁性体22と第3磁性体23の間には縦長の第2隙間25が形成されている。
【0034】
図4~
図6に示すように、一部の実施例において、振動系30は、ハウジング10に固定されるフレーム31、フレーム31に固定されるフィルム32、フィルム32の下面に装着される基板33、及び基板33の下面に装着されるコイル34を含む。前記コイル34は、磁気回路システム20の磁界の作用によって機械運動を生じると同時に、自身に接続されているフィルム32を共に運動させることで音声を発生させる。一部の実施例において、前記コイル34は、接着によって基板33に結合すればよい。コイル34は、前記振動系30の平面型の駆動路を構成する。また、フィルム32と基板33によって前記振動系30の振動板が構成される。
【0035】
一部の実施例において、フレーム31は、ハウジング10と一致する矩形の枠形状をなしてもよい。フィルム32は、周縁でフレーム31のサイドフレームに組み合わされる。一部の実施例において、フィルム32はマイラーフィルムによって形成してもよい。一部の実施例において、基板33はアルミ薄板で製造してもよい。また、基板33の裏面はフィルム32の下面に接着可能であり、且つ、フレーム31に対して上下動可能である。コイル34は、平面展開状に基板33の下面に接着可能である。
【0036】
図7に示すように、一部の実施例において、コイル34は、直列に接続され且つ上下に積層される平面型の第1コイルユニット341と平面型の第2コイルユニット342を含み得る。また、これらは一体的に接着してもよい。第1コイルユニット341は、導線を外側から内側に向かって螺旋状に1つの平面内で巻くことで形成される。また、第2コイルユニット342は、導線を内側から外側に向かって螺旋状に1つの平面内で巻くことで形成される。且つ、これらの螺旋の向きは同一である(即ち、いずれも反時計回り方向又は時計回り方向である)。ここでは、動作過程において第1コイルユニット341と第2コイルユニット342に流れる電流の方向を同じとすることで、磁気回路システム20から受ける作用力の方向を同じとする。一部の実施例において、前記コイル34を形成する導線の直径は0.02mm程度とする。
【0037】
理解し得るように、コイル34は2層のコイルユニットに限定されず、必要に応じて、1層のコイルユニット又は2層以上のコイルユニットを適用してもよい。また、理解し得るように、コイル34が複数層のコイルユニットを含む場合には、各層のコイルユニットの巻き方は、内側から外側の螺旋状の巻きと、外側から内側の螺旋状の巻きを交互に配置するとともに、螺旋の向きを同一とする。これにより、各層のコイルユニットにおける電流の方向を一致させる。具体的には、まず、導線を外側から内側に向かって1つの平面内で螺旋状に巻くことでコイルユニットを1層形成する。そして、導線を内側の目標位置まで巻いてから次の層に進み、内側から外側に向かって1つの平面内で螺旋状に巻くことで次層のコイルユニットを形成する。また、更に1層追加したい場合には、再び次の層に進み、外側から内側に向かって螺旋状に巻いて行く。なお、理解し得るように、コイルユニットは螺旋状の巻きに限らず、本発明の構想のもとで、その他の適切な巻き方を採用してもよい。或いは、螺旋状の巻きとその他の巻き方を組み合わせた方式としてもよい。
【0038】
一部の実施例において、第1コイルユニット341と第2コイルユニット342はいずれもトラック型をなす。また、第1コイルユニット341と第2コイルユニット342は、いずれも平行に間隔を置いた2つの平直部分と2つの円弧状部分を含む。前記2つの円弧状部分は、それぞれ前記2つの平直部分の端と端を直列に接続する。
【0039】
一部の実施例において、第1コイルユニット341と第2コイルユニット342の2つの平直部分は、それぞれ磁気回路システム20の第1隙間24と第2隙間25の真上に位置している。これにより、前記2つの平直部分をそれぞれ2つの水平磁界内に位置させる。動作過程では、コイル34に通電すると、左手の法則に従って、前記2つの平直部分が磁気回路システム20の第1隙間24と第2隙間25の真上の水平磁界内で上向き又は下向きの力を受ける。
【0040】
具体的に、磁気回路システム20における隣り合う磁性体の極性は逆向きのため、コイルユニットの平直部分の下方には水平方向の磁界が形成される。コイルユニット両側の平直部分の電流の方向は逆向きとなるが、下方の磁界の方向も逆向きである。そのため、平直部分が受ける力の方向が一致するよう保証可能である。交流が流れた場合、コイル34は力を受けて上下に振動し、基板33とフィルム32を振動させる。これにより、空気の振動を引き起こし、音声を発生させる。理解し得るように、第1コイルユニット341と第2コイルユニット342はトラック型に限らず、一部の実施例では、その他の適切な形状としてもよい。
【0041】
理解し得るように、本発明の第1実施例におけるスピーカー構造1の構成はシンプルであり、主に、ハウジング10、磁性体アレイを用いて構成される磁気回路システム20、及び振動系30によって構成すればよい。また、加工プロセスもシンプルである。よって、関連技術のスピーカー構造と比較して、コストを50%以上も削減可能である。且つ、スピーカー構造1の厚さを小さく設定することも可能であり、関連技術における同等のスピーカー構造と比較して厚さを40%以上も減少させられる。よって、現在の薄型化傾向にいっそう適している。
【0042】
図8は、本発明の第2実施例におけるスピーカー構造を示す。前記スピーカー構造は、ハウジング10a、磁気回路システム20a及び振動系30cを含む。前記振動系30aは、それぞれ第1実施例の振動系30と類似しているため、ここではこれ以上詳述しない。図中に示す磁気回路システム20aは、平行に間隔を置いて配置される複数の電磁石21aを含む。各電磁石21aは、鉄心211aと、鉄心211aの側面に巻き付けられるコイル212aを含み得る。前記電磁石21は、通電後に然るべき磁界を発生させて振動系30aを動作させる。電磁石21aを用いることで、磁気回路システム20の磁界強度をいっそう良好に制御可能となるため、スピーカー構造を異なる応用シーンに適応させられる。
【0043】
図9は、本発明の第3実施例におけるスピーカー構造を示す。前記スピーカー構造は複合式のスピーカー構造であり、2つの磁気回路システム20bと2つの振動系30bを含む。前記磁気回路システム20bと振動系30bは、それぞれ第1実施例の磁気回路システム20及び振動系30と類似しているため、ここではこれ以上詳述しない。図示するように、第2実施例における2つの磁気回路システム20bは、それぞれハウジング10bの天井壁と底壁に設置されている。また、2つの振動系30bは前記2つの磁気回路システム20bの間に設置され、且つ一対一で対応するよう設置される。
【0044】
図10は、本発明の第4実施例におけるスピーカー構造を示す。前記スピーカー構造もまた複合式のスピーカー構造であり、2つの磁気回路システム20cと1つの振動系30cを含んでいる。前記磁気回路システム20cと振動系30cもまた、それぞれ第1実施例の磁気回路システム20及び振動系30と類似しているため、ここではこれ以上詳述しない。図示するように、2つの磁気回路システム20cは、それぞれハウジング10cの天井壁と底壁に設置されている。また、振動系30cは前記2つの磁気回路システム20cの間に設置される。
【0045】
図11~
図13に示すように、本発明の第5実施例におけるスピーカー構造1dは、ハウジング10d、ハウジング10d内に設置される磁気回路システム20d、及びハウジング10d内に設置されて磁気回路システム20dの作用で運動可能な振動系30dを含み得る。振動系30dとハウジング10dの天井壁121dの間にはキャビティ120dが規定されている。
【0046】
一部の実施例において、磁気回路システム20dは永久磁石アレイを含み得る。前記永久磁石アレイは、平行に間隔を置いて設置される複数の第1永久磁石21dを含み、2つの隣り合う第1永久磁石21dの間ごとに駆動空間22dを有する。また、隣り合う2つの第1永久磁石21dごとに極性を交互に配置する。第1永久磁石21dはシート状の永久磁石としてもよく、前記シート状の永久磁石が垂直にハウジング10dの底部に固設される。また、その他の実施例において、第1永久磁石21dは帯状の永久磁石としてもよい。一部の実施例では、隣り合う2つの第1永久磁石21dごとに極性を交互に配置して、N-S-Nの極性構造を形成する。例えば、1つ目、3つ目、5つ目、7つ目の第1永久磁石21dの上端をN極、下端をS極とし、2つ目、4つ目、6つ目の第1永久磁石21dの上端をS極、下端をN極とする。また、一部の実施例では、隣り合う2つの第1永久磁石21dごとに隣接する側の極性を交互に配置し、水平方向のN-S-S-Nの極性構造を形成してもよい。例えば、1つ目、3つ目、5つ目、7つ目の第1永久磁石21dの左側をN極、右側をS極とし、2つ目、4つ目、6つ目の第1永久磁石21dの左側をS極、右側をN極とする。
【0047】
振動系30dは、駆動路311dが設けられたフレキシブル基板31dを含む。前記駆動路311dは複数の平直路3111dを含む。これらの平直路3111dは、隣り合う2つの第1永久磁石21dの間における各駆動空間22dの真上に対応して設置される。駆動路311dは、1本、2本、3本、ひいては複数本を並べて配列してもよいし、2本以上の駆動路311dを直列に接続してもよいし、並列に接続してもよい。一部の実施例において、前記平直路3111dは永久磁石アレイの配列方向に対し垂直に設置される。これにより、電力損失が減少し、効率が向上する。駆動路311dは、フレキシブル基板31dに印刷されて平面型の駆動路を構成する。また、1層、2層或いは複数層を印刷してもよい。更に、前記振動系30dは、マイラーフィルム32dとフレーム33dを含んでもよい。マイラーフィルム32dはフレーム33dとフレキシブル基板31dを接続し、振動系30dはフレーム33dを介してハウジング10d内に固定装着される。また、フレーム33dは環状のワッシャーとしてもよく、下ハウジングのボス上に配置してフレキシブル基板31dを支持してもよい。マイラーフィルム32dとフレキシブル基板31dによって前記振動系30dの振動板が構成される。
【0048】
図11及び
図13に示すように、駆動路311dの平直路3111dは直列に接続される。更に、フレキシブル基板31dには、駆動路311dの平直路3111dを直列に接続する湾曲した接続路が設けられている。一部の実施例では、接続路3111dと平直路3112dによって略S型の駆動路311dが構成される。
【0049】
隣り合う2つの駆動空間22dごとに、真上に位置する対応する駆動路311dは電流の方向が逆向きとなる。左手の法則に従って、通電した回路は、磁界内で上向き又は下向きの力を受ける。また、永久磁石アレイの配列から明らかなように、隣り合う2つの各駆動空間23dに発生する磁界の方向は逆向きとなる。そのため、全ての駆動路311dが受ける力の方向が一致するよう保証可能である(いずれも上方又は下方となる)。駆動路311dに変動電流が流れると、フレキシブル基板31dが力を受けて上下に振動することで、空気が振動し、音声が発生する。
【0050】
図14に示すように、本発明の第6実施例におけるスピーカー構造1eは、ハウジング10e、ハウジング10e内に設置される磁気回路システム20e、及びハウジング10e内に設置されて磁気回路システム20dの作用で運動可能な振動系30eを含み得る。振動系30eとハウジング10eの天井壁121eとの間にはキャビティ120eが規定されている。キャビティ120eは、放音孔(図示しない)を通じて外部と連通可能である。
【0051】
一部の実施例において、磁気回路システム20eは永久磁石アレイを含み得る。前記永久磁石アレイは、間隔を置いて平行に設置される複数の第1永久磁石21eを含み得る。また、隣り合う2つの第1永久磁石21eの間ごとに、第2永久磁石23eが1つずつ間隔を置いて設置されている。即ち、第1永久磁石21eと第1永久磁石21eは間隔を置いて交互に配列される。また、隣り合う2つの第1永久磁石21eごとに極性を上下に交互に配置し、隣り合う2つの第2永久磁石23eごとに極性を左右に交互に配置する。例えば、図示するように、1つ目、3つ目、5つ目、7つ目の第1永久磁石21eの上端をN極、下端をS極とし、2つ目、4つ目、6つ目の第1永久磁石21eの上端をS極、下端をN極とする。また、1つ目、3つ目、5つ目の第2永久磁石23eの左側をN極、右側をS極とし、2つ目、4つ目、6つ目の第2永久磁石23eの左側をS極、右側をN極とする。第1永久磁石21eと第2永久磁石23eはシート状の永久磁石としてもよく、前記シート状の永久磁石が垂直にハウジング10eの底部に固設される。また、その他の実施例において、第1永久磁石21eと第2永久磁石23eは帯状の永久磁石としてもよい。
【0052】
図15は、本発明の第7実施例におけるスピーカー構造1fを示す。スピーカー構造1fは、ハウジング10f、ハウジング10f内に設置される2つの磁気回路システム20f、及びハウジング10f内に設置されて前記2つの磁気回路システム20fの作用でそれぞれ運動可能な2つの振動系30fを含み得る。前記2つの振動系30fは上下に平行に間隔を置いて配置される。また、前記2つの磁気回路システム20fは、それぞれ前記2つの振動系30fの上下両側に設置されるとともに、鏡像をなすよう配置される。磁気回路システム20f及び振動系30fの具体的構造には、それぞれ磁気回路システム20及び振動系30と同様の構造を採用可能なため、ここでは改めて詳述しない。
【0053】
理解し得るように、上記の各技術的特徴は、制限なく任意に組み合わせて使用することが可能である。
【0054】
以上の記載は本発明の実施例にすぎず、これにより本発明の権利範囲が制限されることはない。本発明の明細書及び図面の内容を用いてなされる等価の構造又は等価のフローの変更、或いはその他関連技術分野への直接的又は間接的な運用は、いずれも同様に本発明の権利の保護範囲に含まれる。