(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-21
(45)【発行日】2023-09-29
(54)【発明の名称】直接フッ素化によるフルオロベンゼンの製造プロセス
(51)【国際特許分類】
C07C 17/12 20060101AFI20230922BHJP
C07C 25/13 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
C07C17/12
C07C25/13
(21)【出願番号】P 2020532913
(86)(22)【出願日】2019-11-25
(86)【国際出願番号】 CN2019120698
(87)【国際公開番号】W WO2021031431
(87)【国際公開日】2021-02-25
【審査請求日】2021-05-18
(31)【優先権主張番号】102019122641.4
(32)【優先日】2019-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】520201145
【氏名又は名称】フジアン ヨンジン テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】FUJIAN YONGJING TECHNOLOGY CO., LTD
【住所又は居所原語表記】No.6, Jin Ling Road, Jin Tang Industry Park, SHAOWU, Fujian 354003 China
(74)【代理人】
【識別番号】100205936
【氏名又は名称】崔 海龍
(74)【代理人】
【識別番号】100132805
【氏名又は名称】河合 貴之
(72)【発明者】
【氏名】クイ, ウェイロン
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ, チャンユエ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ, ホンジュン
(72)【発明者】
【氏名】ウー, ウェンティン
【審査官】中村 政彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-001881(JP,A)
【文献】特開平03-068525(JP,A)
【文献】特開2000-309583(JP,A)
【文献】CONTE, L et al.,Liquid-phase fluorination of aromatic compounds by elemental fluorine,Journal of Fluorine Chemistry,1995年,Vol. 70,pp. 175-179
【文献】GRAKAUSKAS, V,Direct Liquid-Phase Fluorination of Aromatic Compounds,The Journal of Organic Chemistry,1970年,Vol. 35,pp. 723-728
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 17/00
C07C 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のステップa)からステップe)を含む直接フッ素化によるフッ素化ベンゼンの製造プロセスであって、
ステップa)において、液体媒体を提供し、前記液体媒体は、ベンゼンからなり、
ステップb)において、フッ素化ガスを提供し、フッ素化ガスは、単体フッ素(F
2)を含み又は単体フッ素(F
2)からなり、前記フッ素は、少なくとも15体積%(vol.-%)以上の濃度で前記フッ素化ガスに存在し、
ステップc)において、単体フッ素(F
2)及びフッ化水素(HF)に対して耐食性を有するリアクター又はリアクターシステムを提供し、
ステップd)において、ステップb)のフッ素化ガスをステップc)のリアクター又はリアクターシステムにおいてステップa)のベンゼンを通過させ、前記ベンゼンとフッ素化ガスの単体フッ素(F
2)とを反応させることによりベンゼンにおいてフッ素で前記1つ又は複数の水素原子における少なくとも1つを置換し、前記反応は、-30℃から+100℃の温度及び1barの絶対圧力から10barの絶対圧力下で行われ、
ステップe)において、ステップc)のリアクター又はリアクターシステムからステップd)で形成されたフッ素化ベンゼンを取り出し、
ここで、取り出した前記フッ素化ベンゼン
において、前記ベンゼンの1つ又は複数の水素原子における少なくとも1つがフッ素原子で置換され
ている、製造プロセス。
【請求項2】
前記単体フッ素(F
2)は、フッ素化ガスの合計100体積%に対して少なくとも25体積%の濃度でステップb)のフッ素化ガスに存在する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記単体フッ素(F
2)は、フッ素化ガスの合計100体積%に対して15-100体積%の濃度でステップb)のフッ素化ガスに存在する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
ステップd)の反応は、(密閉)カラムリアクターにおいて行われ、ステップa)のベンゼンを回路中で循環させ、高濃度の単体フッ素(F
2)を含むか又は単体フッ素(F
2)からなるステップb)の前記フッ素化ガスをステップc)の前記カラムリアクターに導入し、ステップd)において、前記ベンゼンと反応させ、前記回路は1,500l/h-5,000l/hの循環速度で操作する、請求項1から3のいずれか1項に記載の製造プロセス。
【請求項5】
前記カラムリアクターは、(i)少なくとも1つの冷却器(システム)、少なくとも1つの貯液タンク、(ii)ポンプ、(iii)1つ又は複数の(ノズル)インジェクター、(iv)1つ又は複数の供給口、必要に応じて(v)1つ又は複数の篩、(vi)少なくとも1つの排気口及び少なくとも1つの出口のうちの少なくとも一者を含み、
(i)前記少なくとも1つの冷却器(システム)、少なくとも1つの貯液タンクは、入口及び出口を有し、ステップa)のベンゼンを含み、
(ii)前記ポンプは、ステップa)の前記ベンゼンのポンピング及び循環に用いられ、
(iii)前記(ノズル)インジェクターは、前記カラムリアクターの頂部に設けられ、ステップa)の循環ベンゼンを前記カラムリアクターに噴射し、
(iv)前記供給口は、ステップb)の前記フッ素化ガスを前記カラムリアクターに導入し、前記フッ素化ガスは、高濃度の単体フッ素(F
2)を含むか又は単体フッ素(F
2)からなり、
(v)前記篩は、2つあり、前記カラムリアクターの底部に位置し、
(vi)前記排気口には圧力弁が設けられ、前記出口は、ステップe)においてフッ素化ベンゼンを取り出すためのものである、請求項4に記載の製造プロセス。
【請求項6】
前記カラムリアクターは、充填塔型リアクターである、請求項4又は5に記載の製造プロセス。
【請求項7】
前記反応は、ステップa)の循環ベンゼン及びカラムリアクターに導入されたステップb)のフッ素化ガスの向流中で行われる、請求項4から6のいずれか1項に記載の製造プロセス。
【請求項8】
前記反応は、少なくとも1つの連続プロセスのステップにより行われ、前記連続プロセスは、上部横寸法が5mm以下又は4mm以下である少なくとも1つの連続フローリアクターにおいて行われ、
少なくともフッ素化反応ステップは、以下の1つ又は複数の条件下で少なくとも1つのマイクロリアクターにおいて行われる連続プロセスである、請求項1から3のいずれか1項に記載の製造プロセス。
流速:10ml/h-400l/h
温度:30℃-150℃
圧力:4bar-50bar
滞留時間:1秒-60分間
【請求項9】
少なくとも1つの前記連続フローリアクターは、独立してSiC連続フローリアクターである、請求項8に記載の製造プロセス。
【請求項10】
請求項1に記載された製造プロセスにおけるフッ素化ガスの使用であって、
単体フッ素(F
2)は、15体積%以上の濃度でベンゼン
からなる液体媒体において存在し、
単体フッ素(F
2)は、フッ素化ガスの合計100体積%に対して15-100体積%の濃度で
前記ステップb)のフッ素化ガスに存在し、
生成されるフッ素化有機化合物は、フッ素化ベンゼンである、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単体フッ素(F2)を含むフッ素化ガスを用いて直接フッ素化によりフッ素化ベンゼン、特にモノフルオロベンゼンを製造又は調製するプロセスに関する。例えば、本発明のプロセスは、単体フッ素(F2)を含むフッ素化ガスを用いてフッ素化ベンゼン、特にモノフルオロベンゼンをバッチ又は連続で製造又は調製することを含んでもよい。
【背景技術】
【0002】
工業規模のフッ素化有機化合物は、無水HFによるハロゲン-フッ素交換、HFのオレフィン二重結合への付加、フッ素化剤の使用(例えば、アミン×nHF)、HFとの電解フッ素化(F2のその場での生成)により製造されている。後者の場合、選択性、拡張性及び環境適合性(毒物となる一部のフッ素化化合物)の欠如は、まだ解決されていない問題である。また、F2ガスを直接使用するフッ素化プロセスもある。しかし、このプロセスでは、工業規模が必要であるだけでなく、F2ガス及び産生されるHFを非常に熟練した処理(水素(H)-フッ素(F)交換反応)を行う必要もある。
【0003】
単体フッ素(F2)は、黄色の圧縮ガス(フッ素ガス、F2ガス)であり、刺激臭を有し、強酸化剤であるので可燃性及び還元性物質と急激な反応が発生することができる。その強い化学活性のため、フッ素及びHFに対して強耐食性を有する設備及び容器が必要である以上、F2ガスが窒素ガス(N2)と混合して使用される場合が多い。ヨーロッパでは、通常、95%のN2と5%のF2ガスとの混合物のみの輸送が許可され、或いはF2ガスの含有量が多くとも10%の混合物のみが許容される。
【0004】
アジアでは、使用が承認された不活性ガス(例えば、N2)におけるF2ガスの割合は多くとも20%である。
【0005】
安全性、並びに化学反応におけるF2ガスの化学活性又は反応性の低減及び/又は制御のため、不活性ガス、例えばN2でF2ガスを希釈する必要がある。しかし、工業規模の「不活性化」という前記理由により必要とされる不活性ガスによるF2ガスに対する希釈には、以下の欠点が存在する。一方、不活性ガスで希釈されるF2ガスの計量は非常に把握されにくい。他方、F2ガスとの化学反応が非常に発熱的であるため、反応装置内の熱伝達が不活性ガスによって大幅に低減されるとともに、希釈された不活性ガスによって熱伝達が減少されることにより、最悪の場合、制御が失われる可能性もある。そのため、原則的には、不活性ガスを絶縁ガスとして使用することは望ましくない。
【0006】
従来技術において、希釈されたフッ素化ガス(例えば、Chambers et al.(Journal of Fluorine Chemistry 128 (2007) 29-33))で不活化したベンゼン誘導体をフッ素化する技術が知られている。Chambersは、不活性ガスである窒素ガス(N2)に10%(vol.-%)の単体フッ素(F2)を含むフッ素化ガス及び溶媒(例えば、アセトニトリル又はギ酸反応媒体反応媒体)を用いて反応を行った。Chambersは、マイクロリアクター技術により電子吸引基及び電子供与基を有する1,4-二置換芳香族系に対して直接フッ素化反応を行うことを報告している。フッ素化生成物は、求電子置換過程と一致するプロセスにより得られ、用いられる溶媒に依存する。したがって、アセトニトリル又はギ酸反応媒体を用いる場合、Chambersは、モノフッ素化生成物の高選択性及び高収率を報告している。従来技術において、高比誘電率の溶媒又はプロトン酸は、芳香族系のフッ素化に非常に有効に使用することができる。これは、これらの媒体において、フッ素分子は、溶媒との相互作用により求核攻撃をより容易に行い、競争ラジカル過程は、最小限に抑制されるためである。しかし、Chambersに開示されたこのプロセスにおいて、通常、小規模な反応のみを行い、例えば、16時間以内で反応させることで5から10gの粗生成物が得られる。
【0007】
また、Chambersは、上記と同様な実験環境中で、2つの強電子吸引基を有する芳香環を直接フッ素化する試験を行った。もちろん、これらの芳香環は、求電子攻撃に対して反応性を有しない。しかし、このような気質と単体フッ素(F2)との反応(即ち、不活性ガスである窒素ガス(N2)に10%(vol.-%)の単体フッ素(F2)を含むフッ素化ガス;マイクロリアクター)によるフッ素化生成物の転化率が低いが、選択性が高く、清潔である。しかし、同様に、Chambersに開示されたこのプロセスにおいて、通常、小規模な反応のみを行い、例えば、16時間以内で反応させることで5から10gの粗生成物が得られる。
【0008】
不活性化されたベンゼン誘導体と希釈されたフッ素化ガスとの溶媒であるアセトニトリル中でのフッ素化反応により78%から91%のフッ素化反応転化率が達成されたが、Chambersは、不活性化されたベンゼンそれ自体を用いて5から10gの生成物量の小規模若しくは大規模で試験を行う動機を有さない。
【0009】
そのため、大規模及び/又は工業環境中で制御可能で有効な方式により、ベンゼンを直接フッ素化することによりフッ素化ベンゼンを大規模生産及び/又は工業生産することが非常に必要である。
【0010】
制御可能で有効な方式によりベンゼンを直接フッ素化することによりフッ素化ベンゼンを生産する場合、不活性ガス(例えば、窒素ガス(N2))の単体フッ素(F2)に対する希釈をできるだけ減少させるか、又は実施的に回避するとともに、単体フッ素(F2)の濃度が少なくとも上記及び従来技術で用いられるフッ素化ガスよりも高い必要がある。例えば、単体フッ素(F2)の濃度は、基本的にChambersに使用されるか、又はヨーロッパで承認されている10体積%よりも高い。或いは単体フッ素(F2)の濃度は、基本的にアジアで承認されている20体積%よりも高い。
【0011】
本発明の目的は、フッ素ガス(F2)による直接フッ素化によりフッ素化ベンゼン、特にモノフルオロベンゼンを製造又は調製する効率的なプロセスを提供することにある。フッ素化プロセスにおいて、フッ素ガス(フッ素化ガス)の濃度は、実質的に単体フッ素(F2)15体積%、20体積%、単体フッ素(F2)25体積%よりも高く(即ち、少なくとも25体積%)、好ましくは単体フッ素(F2)35体積%、45体積%よりも高い。また、本発明は、化学合成、特に、フッ素化ベンゼン化合物、特に、最終生成物及び/又は中間体として農業、製薬、電子、触媒、溶媒その他の機能化学用途に用いられるフッ素化ベンゼン(モノフルオロベンゼン)の製造又は調製に適用できる。
【0012】
好ましくは、本発明の目的は、フッ素ガス(F2)による直接フッ素化によりフッ素化ベンゼン(特にモノフルオロベンゼン)を製造又は調製するフッ素化プロセスを提供することにある。これによって、基本的に由F2ガスからなるフッ素化ガスがF2電解リアクター(フッ素電解槽)から直接出る際に化学反応を行うことができ、必要に応じて比較的小さい程度で希釈することで、例えば、フッ素化プロセス及びそのパラメータを調整又は制御する。
【0013】
好ましくは、本発明の他の目的は、特殊な設備及び特殊なリアクター設計により、フッ素ガス(F2ガス)を用いて直接フッ素化することによってフッ素化ベンゼン(特にモノフルオロベンゼン)を製造又は調製するフッ素化プロセスを提供することにある。
【0014】
好ましくは、本発明の他の目的は、フッ素ガス(F2ガス)を用いて直接フッ素化することによってフッ素化ベンゼン(特にモノフルオロベンゼン)を製造又は調製するフッ素化プロセスを提供することにある。このプロセスは、フッ素化ベンゼンの大規模生産及び/又は工業生産中で行うことができる。
【発明の概要】
【0015】
本発明の目的は、特許請求の範囲によって定義され、詳細は後述する。
【0016】
本発明の目的によれば、本発明は、フッ素ガス(F2)による直接フッ素化によりフッ素化ベンゼン(特にモノフルオロベンゼン)を製造又は調製する効率的なプロセスを提供す。フッ素化プロセスにおいて、フッ素ガス(フッ素化ガス)の濃度は、実質的に単体フッ素(F2)15体積%、20体積%、単体フッ素(F2)25体積%以上であり(即ち、少なくとも25体積%)、好ましくは単体フッ素(F2)35体積%、45体積%以上である。また、本発明は、化学合成、特にフッ素化ベンゼン(特にモノフルオロベンゼン)の製造又は調製に適用でき、前記フッ素化ベンゼン(特にモノフルオロベンゼン)は最終生成物及び/又は中間体として農業、製薬、電子、触媒、溶媒その他の機能化学用途に適用できる。
【0017】
好ましくは、本発明は、フッ素ガス(F2)を用いる直接フッ素化によりフッ素化ベンゼン(特にモノフルオロベンゼン)をそれぞれ製造又は調製するフッ素化プロセスを提供する。このプロセスにより、F2がF2電解リアクター(フッ素電解槽)から直接出る際にF2と化学反応を行うことができる。
【0018】
より好ましくは、本発明は、特殊な設備及び特殊なリアクター設計により、フッ素ガス(F
2)を用いて直接フッ素化することによって、フッ素化ベンゼン(特にモノフルオロベンゼン)を製造又は調製するフッ素化プロセスを提供する(例えば、
図1及び
図2)。本発明で用いられる特殊な設備及び特殊なリアクター設計は、例えば、ガススクラバーシステム又は1つ若しくは複数のマイクロリアクターの形態で1つ又は複数の充填塔を含んでもよい。好ましくは、例えば、ガススクラバーシステムの形態の充填塔、より好ましくは、例えば、リバースガススクラバーシステムの形態の充填塔であってもよい。この充填塔は、バッチプロセスにおいてリアクターとして用いられる。
【0019】
フッ素ガス(F2)を用いる直接フッ素化によりフッ素化ベンゼン(特にモノフルオロベンゼン)を製造又は調製するフッ素化プロセスは、適切な圧力、例えば、約1-約10bar(絶対)の圧力、好ましくは約1-約6bar(絶対)の圧力、より好ましくは約4-約6bar(絶対)の圧力で行うことができる。一実施例において、前記プロセスは、約6bar(絶対)の圧力下で行われる。
【0020】
フッ素ガス(F2)を用いる直接フッ素化によりフッ素化ベンゼン(特にモノフルオロベンゼン)を製造又は調製するフッ素化プロセスは、出発化合物であるベンゼンと高濃度F2ガス含有フッ素化ガスとのほぼ等モル比で行うことができる。好ましくは、反応は、わずかにモル過剰な高濃度F2ガス含有フッ素化ガスを用いて行われる。
【0021】
また、直接フッ素化反応は、例えば、所定の時間範囲内(例えば、10時間以内、又は5時間以内)で発熱特性を有するにもかかわらず、本発明の反応は、高転化率を有しかつ得られたフッ素化生成物に主な不純物がない大規模反応として行われることが発見された。フッ素化生成物は、キログラムスケールの量で生産することができる。例えば、本発明の直接フッ素化プロセスは、フッ素化ベンゼンの大規模生産及び/又は工業生産において行うことができる。量を計算するために、ベンゼンの分子量78.114g / mol、およびモノフルオロベンゼンの分子量96.10g / molを参照する。プロセスパラメータを調整および/または制御するために、ここで、周囲圧力について約80℃のベンゼンの沸点と約85℃のモノフルオロベンゼンの沸点も挙げられる。
【0022】
したがって、好ましくは本発明の直接フッ素化プロセスは、フッ素化ベンゼン(好ましくはモノフルオロベンゼン)の大規模生産及び/又は工業生産において行われる。例えば、キログラムスケールの量で行われる。本明細書に記載のカラムリアクターにおいて、バッチプロセス又は連続プロセスで行われる。ベンゼンを出発化合物として1時間ごとに少なくとも約1kg、好ましくは1時間ごとに少なくとも約1.5kgでフッ素化することにより、フッ素化ベンゼン(好ましくはモノフルオロベンゼン)が得られ、その変換率は少なくとも90%、好ましくは約95%である。
【0023】
したがって、好ましくは本発明の直接フッ素化プロセスは、フッ素化ベンゼンの大規模生産及び/又は工業生産において行われる。例えば、より大きな規模又はキログラムスケールの量で行われる。マイクロリアクタープロセスにおいて、連続プロセスで行われる。上記のように、少なくとも約0.5mol/hのベンゼン(約15g/hのベンゼン)又は少なくとも約1mol/hのベンゼン(約26g/hのベンゼン)、好ましくは少なくとも約2mol/hのベンゼン(約52g/hのベンゼン)、より好ましくは少なくとも約3mol/hのベンゼン(約78g/hのベンゼン)を原料として所望の時間範囲(例えば、少なくとも0.5h、好ましくは少なくとも1h、より好ましくは少なくとも2、3又は4h)で少なくとも90%、好ましくは約95%の変換率で必要な大規模及び/又は工業規模量のフッ素化ベンゼン(好ましくはモノフルオロベンゼン)を生産する。前記反応は、等モル量の高濃度のF2ガスを用いておこなわれ、好ましくはわずかにモル約0.1から約0.8mol/h、好ましくは約0.2から約0.7mol/h又は約0.3から約0.7mol/h、より好ましくは約0.4から約0.6mol/h、最も好ましくは約0.5mol/h過剰な高濃度F2ガスを用いて行われる。
【0024】
具体的な実施形態において、好ましくは本発明の直接フッ素化プロセスは、フッ素化ベンゼンの大規模生産及び/又は工業生産において行われる。例えば、キログラムスケールの量で行われる。マイクロリアクターを用いて連続プロセスにおいて、上記のように、少なくとも約3.0mol/hのベンゼン(約234g/hのベンゼン)を出発原料として少なくとも1h、約2h、約3h、約4h、又は約4.25h、好ましくは少なくとも約4.5h又は5h、より好ましくは少なくとも約6h、約10h、約12h又は約24hフッ素化することにより、所望の大規模及び/又は工業規模量のフッ素化ベンゼン(好ましくはモノフルオロベンゼン)を生産し、変換率は少なくとも90%、好ましくは約95%である。したがって、本発明の前記直接フッ素化プロセスにおいて、前記時間範囲内でマイクロリアクターを用いて連続プロセスでフッ素化ベンゼンを大規模生産及び/又は工業生産する。例えば、約0.234kg、約0.468kg、約0.702kg、約0.94kg、約0.99kg又は少なくとも約1kg、好ましくは少なくとも約1.05kg又は約1.17kg、より好ましくは少なくとも1.4kg、2.34kg、2.81kg又は5.62kgのキログラムスケール量のベンゼンを用いて、必要な大規模及び/又は工業規模の量のフッ素化ベンゼン(好ましくはモノフルオロベンゼン)を生産する。変換率は少なくとも90%、好ましくは約95%である。反応は、等モル量の高濃度F2ガス、好ましくはモル量で約0.01-約0.05mol/h、好ましくは約0.01-約0.04mol/h又は約0.01-約0.03mol/h、より好ましくは約0.01-約0.02mol/h、最も好ましくは約0.01mol/h過剰な高濃度F2ガスを用いて行われる。
【0025】
本発明は、フッ素化ガスの使用にも関する。単体フッ素(F2)は、実質的に15体積%又は20体積%以上、好ましくは25体積%(vol.-%)以上の高濃度で、ベンゼンを含むか又はベンゼンからなる出発化合物である液体媒体におけるフッ素化ベンゼンの製造に用いられる。ここで、1つ又は複数の水素原子は、ハロゲン化反応により置換されてもよい。好ましくは、フッ素(F2)は、実質的に15又は20体積%(vol.-%)-100体積%、好ましくは25体積%(vol.-%)-100体積%(vol.-%)の高濃度でフッ素含有ガスに存在する。前記出発化合物はベンゼンであり、かつ生産されたフッ素化化合物はフッ素化ベンゼン(好ましくはモノフルオロベンゼン)である。
【0026】
なお、単体フッ素(F2)の濃度が15体積%(特に20体積%)である場合に本発明のフッ素化反応を行うことができ、特に本発明に記載の特定及び/又は好適な設備若しくはリアクター設計において行うことができる。
【0027】
しかし、本発明に記載の特定及び/又は好適な設備又はリアクター設計において行われる場合、本発明のフッ素化反応は、少なくとも25体積%、より好ましくは35体積%、特に好ましくは45体積%以上の単体フッ素(F2)の濃度下で行われる。
【0028】
本発明によれば、特に好ましくは、F2電解リアクター(フッ素電解槽)から直接出るフッ素ガス(F2)を用いて直接フッ素化によりフッ素化プロセスを行うことにより、フッ素化ベンゼン、特にモノフルオロベンゼンを製造又は調製する。このような電解フッ素ガス(F2)は、通常、単体フッ素(F2)の濃度が約97%である。
【0029】
通常、濃度が約97%の単体フッ素(F2)の電解フッ素ガス(F2)は、F2電解リアクター(フッ素電解槽)から出る際に精製されずにそのまま使用することができるが、必要に応じて精製されてもよい。
【0030】
さらに、通常、単体フッ素(F2)の濃度が約97体積%(vol.-%)(F2電解リアクター(フッ素電解槽)から出たときの濃度)の電解フッ素ガス(F2)で使用されるが、必要に応じて不活性ガス(好ましくは、窒素ガス(N2))で少なくとも80体積%(vol.-%)の単体フッ素(F2)の濃度に希釈された後使用されてもよい。より好ましくは、必要に応じて、15体積%(vol.-%)、好ましくは10体積%(vol.-%)、最も好ましくは5体積%(vol.-%)以下の不活性ガス(好ましくは、窒素ガス(N2))で電解フッ素ガス(F2)を希釈する。
【0031】
フッ素化反応過程の制御可能性の面、例えば、単体フッ素とフッ素化される液体化合物との効果的な混合、熱伝達制御(例えば、不十分な熱交換)、及び反応混合物の微小環境での必要な反応条件の維持の面では、比較的大きな不活性ガスと単体フッ素との比率で不活性ガスを使用することは欠点を有することが予想外に発見された。これらの欠点は、塔型リアクター(ガススクラバーシステム)技術及びマイクロバブルマイクロリアクター又は類似する連続フロー技術にもある。例えば、コイルパイプリアクター又はマイクロリアクターは、高不活性ガス濃度、例えば、低フッ素(F2)濃度の場合、熱交換が悪いだけでなく、(不活性)気泡がある無効な(反応)領域が存在することで、コイルパイプリアクター又はマイクロリアクターの利点が帳消しにされる。塔型リアクター(ガススクラバーシステム)技術には、同様な状況が観察された。
【0032】
<定義>
直接フッ素化とは、出発化合物(例えば、本発明のベンゼン)と単体フッ素(F2)とを化学反応させることにより、1つ又は複数のフッ素原子が生成されたフッ素化生成物に共有結合するように1つ又は複数のフッ素原子を化合物に導入することをいう。
【0033】
化合物とは、共有結合を介して結合された少なくとも2つの原子からなる分子をいう。分子(通常、物質と呼ばれる)において、原子が共有結合して独立した化学構造を形成する。このように定義される分子は、純物質の最小の粒子であり、確定可能な分子量を有し、原子が化学結合により結合され、少なくとも観察されるように(例えば、スペクトル)安定している。このように定義される分子又は物質は、純物質の最小の部分であり、確定可能な分子量その他の確定可能な物理的および化学的性質を有する。本発明において、例えば、出発化合物は、単体フッ素(F2)と反応するために提供されるベンゼンであり、生産された化合物は、フルオロベンゼン、例えばモノフルオロベンゼンである。
【0034】
用語「液体媒体」は、直接フッ素化の反応条件においてフッ素化に対して不活性を示す溶媒であり、出発化合物及び/又はフッ素化される目的化合物を溶解することができる。或いは、出発化合物それ自体は、液体であり、液体媒体として使用されてもよい。フッ素化目的化合物が液体ではない場合、フッ素化目的化合物はそこに溶解することができ、液体である場合、液体媒体として使用することができる。
【0035】
本明細書で開示された数値範囲は、下限値と上限値を含むすべての数値を含む。明示値を含む範囲(例えば、1から7)は、いずれか2つの明示値の間の任意のサブ範囲(例えば、1から2、2から6、5から7、3から7、5から6など)を含む。
【0036】
用語「包含」、「含む」、「有する」などは、明示的に開示されていないにも関わらず、追加成分、ステップ又は過程の存在を除外することを意図していない。疑いを避けるため、特に明記しない限り、用語「包含」の使用によって保護されるすべての成分は、いかなる他の添加剤、補助剤又は化合物を含み得る。一方、用語「基本的に……からなる」は、いかなる他の成分、ステップ又は過程を後続する範囲から除外するが、操作性にとって必須ではないものがこの限りではない。用語「……からなる」は、明確に列挙されていない成分、ステップ又は過程を含まない。特に明記しない限り、用語「又は」とは、個別及び任意の組み合わせ形態で示される成分をいう。単数の使用には複数の使用が含まれ、逆も同様である。
【0037】
本明細書において、用語「vol.-%」とは「体積%」をいう。特に明記しない限り、本明細書で用いられるすべての百分率(%)は「vol.-%」又は「体積%」を表す。
【0038】
例えば、用語「基本的に」とは、F2電解リアクター(フッ素電解槽)から直接でた基本的にF2ガスからなるフッ素化ガスを指し、これは、このようなF2ガスの提供には、大量の精製及び/又は別のガス(例えば、不活性ガス)の必要がない。前記別のガスは、単独で及び/又は一定の量で混合することにより、F2電解リアクター(フッ素電解槽)で産生され、気体生成物として排出されるF2ガスの組成の変化が約±5体積%以上、好ましくは約±3体積%以上となるガスである。したがって、このようなF2電解リアクター(フッ素電解槽)から直接出た基本的にF2ガスからなるフッ素化ガスは、濃度が少なくとも約92体積%、好ましくは少なくとも約95体積%の単体フッ素(F2)である。特に、このようなF2電解リアクター(フッ素電解槽)から直接でた基本的にF2ガスからなるフッ素化ガスは、濃度が約92-100体積%、好ましくは約95-100体積%、より好ましくは約92-99体積%、好ましくは約95-99体積%、或いは約92体積%-約97体積%、好ましくは約95体積%-約97体積%の単体フッ素(F2)を含み得る。
【0039】
本明細書で開示された数値範囲は、下限値と上限値を含むすべての数値を含む。明示値を含む範囲(例えば、1から7)は、いずれか2つの明示値の間の任意のサブ範囲(例えば、1から2、2から6、5から7、3から7、5から6など)を含む。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】ガススクラバーシステムによるフッ素化を示す。
【
図2】1つ又は複数のマイクロリアクター(直列接続)システムにおける連続フッ素化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
発明の概要における説明、特許請求の範囲における限定、及び以下の実施形態における詳しい説明の通り、本発明は、単体フッ素(F2)が高濃度で存在するフッ素化ガス、フッ素化ガスによる直接フッ素化によりフッ素化ベンゼン(好ましくはモノフルオロベンゼン)を製造するプロセスに関する。
【0042】
本発明のフッ素化ガスにおいて、単体フッ素(F2)は、高濃度で存在し、例えば、単体フッ素(F2)の濃度が15体積%又は20体積%以上(即ち、少なくとも15体積%又は20体積%)、好ましくは少なくとも25体積%以上である。本発明のプロセスにおいて、フッ素化ガスを用い、直接フッ素化によりフッ素化ベンゼン(好ましくはモノフルオロベンゼン)を製造し、ここで、単体フッ素(F2)が高濃度で存在する。本発明のプロセスは、直接フッ素化によりフッ素化ベンゼン(好ましくはモノフルオロベンゼン)を製造し、特に最終生成物及び中間体として農業、製薬、電子、触媒、溶媒及び他の機能性化学用途に使用されるフッ素化ベンゼン(好ましくはモノフルオロベンゼン)を製造又は調製する。本発明のフッ素化プロセスは、バッチ又は連続で行うことができる。本発明のプロセスがバッチに行われる場合、カラム型(塔型)リアクターを使用することができる。本発明のプロセスが連続式である場合、マイクロリアクターを使用することができる。必要に応じて、カラム型(塔型)リアクター(ガススクラバーシステム)で本発明のプロセスを連続して行ってもよいが、マイクロリアクターで本発明の連続プロセスを行うことが好ましい。
【0043】
特に、本発明は、フッ素化ガスの使用に関する。単体フッ素(F2)は、実質的に少なくとも10体積%、15体積%又は20体積%以上(即ち、少なくとも15体積%又は20体積%)、好ましくは少なくとも25体積%以上の高濃度で存在し、出発化合物を含むか又は出発化合物からなる液体媒体中でフッ素化ベンゼン(好ましくはモノフルオロベンゼン)を製造することに用いられる。前記出発化合物は、ハロゲン化反応により置換可能な1つ又は複数の水素原子を有し、好ましくはフッ素(F2)が実質的に15体積%又は20体積%以上(即ち、少なくとも15体積%又は20体積%)、好ましくは20体積%-100体積%、より好ましくは25体積%-100体積%(vol.-%)の高濃度でフッ素含有するガスに存在する。
【0044】
本発明において、好ましくは特殊な設備に特殊なリアクター、例えば、マイクロリアクター又は充填塔(好ましくはハステロイで作製される)、特に、フィラー(例えば、金属フィラー(例えば、ハステロイ)若しくはプラスチックフィラー)を含む充填塔、より好ましくはE-TFE若しくは金属フィラー(ハステロイ)(例えば、直径:約10mm)が充填された充填塔を使用する。フィラーは、Raschigから購入され得る(http://www.raschig.de/Fllkrper)。フィラーのタイプは、様々であり、ハステロイで作製されたRaschigs Pall-Rings又はE-TFEフィラーを使用することができる。
【0045】
前記特殊な設備に特殊なリアクターを有する場合、例えば、マイクロリアクター又は充填塔(好ましくはハステロイで作製される)において、フッ素ガスの濃度は、実施的に単体フッ素(F2)の15体積%又は20体積%以上、特に単体フッ素(F2)の20体積%以上(少なくとも20体積%)、好ましくは単体フッ素(F2)の25体積%以上である。前記フッ素ガスは、化学合成、特に農業、製薬、電子、触媒、溶媒その他の機能的化学用途に用いられるフッ素化ベンゼン(最終生成物及び/又は中間体)の製造に使用され得る。本発明では、F2ガスを用いてフッ素化化学反応を行い、その濃度は、好ましくは実質的に25体積%の単体フッ素(F2)以上である。本フッ素化プロセスにおいて、F2電解リアクター(フッ素電解槽)から直接放出されるF2を用いて化学反応を行うことができる。フッ素電解槽で産生されるフッ素ガスの代表的な組成は、体積%で、フッ素含有ガスの合計100体積%に対して97%のF2、多くとも3%のCF4(電極の破損により形成される)、例えば、微量のHF、NO2、OF2、COF2である。
【0046】
本発明の範囲について、注意すべきなのは、技術的な理由ではなく、法的理由のためだけに、フッ素化ガスと反応する有機出発化合物は、ベンゼンのみであり、かつ生産されたフッ素化化合物は、フッ素化ベンゼンのみであり、好ましくは生産されたフッ素化ベンゼンは、モノフルオロベンゼンのみである。
【0047】
フッ素化ガスにおいて、単体フッ素(F2)は、不活性ガスで希釈することができる。不活性ガスは、フッ素化ガスにおける実施的な差異(例えば、約5体積%、好ましくは約3体積%以下の少量の副生成物(例えば、CF4)、微量の不純物(例えば、HF、NO2、OF2、COF2))を構成する。
【0048】
不活性ガスは、所定の条件下で化学反応が発生しないガスである。希ガスは、通常多くの物質と反応せず、不活性ガスと呼ばれている。そのため、通常、不活性ガスにより不要の化学反応によるサンプルの分解を回避する。これらの望ましい化学反応は、通常空気中の酸素ガス及び水と発生する酸化および加水分解反応である。
【0049】
典型的な不活性ガスは、希ガスであり、一般的な不活性ガスは、窒素ガス(N2)である。希ガス(不活性ガスでもあり、エアロゲン(aerogen)とも呼ばれる)は、化学性質が類似する化学元素からなり、標準条件下でいずれも無味、無色の単原子ガスであり、化学反応性が非常に低い。天然に存在する6種類の希ガスは、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)及び放射性のラドンガス(Rn)である。
【0050】
精製されたアルゴンガス及び窒素ガスは、自然の豊かさが高い(空気中、N2:78.3%、Ar:1%)ためコストが低いので、最も一般的に不活性ガスに使用されている。本明細書で定義されているように、好ましくは、窒素ガス(N2)を不活性ガスとして使用し、フッ素化ガス中の単体フッ素(F2)を所望の高濃度に希釈する。
【0051】
単体フッ素(F
2)が窒素ガス(N
2)で希釈されるフッ素化ガスが好ましい。窒素ガス(N
2)を不活性ガスとして使用するフッ素化ガスの例示的な組成は、下表に示される(鋼製シリンダ中の精製成分(フッ素-窒素ガスの混合物))。
【表1】
【0052】
図1及び
図2は、少量の不活性ガスで希釈されたか又は希釈されていないF
2ガスの工業選択を示す。
図1:ガススクラバーシステムによるフッ素化。
向流システムにおいて、高濃度のF
2ガスを用いてバッチフッ素化を行う(貯蔵器に液体原料又は任意の不活性溶媒における原料を含む)。高濃度のF
2といくつかの不活性ガス(例えば、10%N
2)とを併用する場合、フッ素化過程において圧力弁により圧力を5barに保持する。反応過程において、不活性ガスはいくつかのHF(だけ)と共にパージガスとして排出される。
【0053】
図2:1つ又は複数のマイクロリアクター(直列接続)システムにおける連続フッ素化。
【0054】
原料貯蔵器には依然として等モルの形成されたHFが含まれる。バッチ蒸留又は連続蒸留を行うことができる。溶媒が存在する場合、溶媒及びHFを除去した後、再結晶により精製することができる。生成物の性能に応じて、噴霧乾燥を使用してもよい。必要に応じて、滞留時間を延長するために、さらに1つ又は複数のマイクロリアクターを直列接続し
【0055】
例えば、以下スキーム1は、本発明に従って最終生成物又は中間体とするフルオロベンゼン化合物、特にフルオロベンゼン(モノフルオロベンゼン)(実施例に過ぎず、制限するものではない)を製造又は調製するプロセスを表す。
【0056】
【0057】
(高濃度の単体フッ素を含有するフッ素化ガスを用いるフッ素化)
発明の概要における説明、特許請求の範囲における限定、及び以下の実施形態における詳しい説明の通り、本発明は、単体フッ素(F2)が高濃度で存在するフッ素化ガス、単体フッ素(F2)が高濃度で存在するフッ素化ガスを用いる直接フッ素化によるフッ素化無機化合物又はフッ素化有機化合物の製造プロセスに関する。以下、本発明をさらに詳しく説明する。
【0058】
実施例に記載のように、直接フッ素化で用いられるフッ素化ガスは、合計100体積%に対して、20体積%以上の単体フッ素(F2)及び多くとも約80体積%以下の不活性ガス(好ましくは窒素ガス(N2))を含む。上記のように、精製成分としてフッ素-窒素ガスの混合物を鋼製シリンダに充填する。
【0059】
フッ素化ガスの合計100体積%に対して少なくとも20体積%の単体フッ素(F2)を含む本発明のフッ素化プロセス用フッ素化ガスは、30%-45%の転化率に達することができるが、工業プロセスにとって十分ではない。
【0060】
フッ素化反応過程の制御可能性の面、例えば、単体フッ素とフッ素化される液体化合物との効果的な混合、熱伝達制御(例えば、不十分な熱交換)、及び反応混合物の微小環境での必要な反応条件の維持の面では、比較的大きな不活性ガスと単体フッ素との比率で不活性ガスを使用することは欠点を有することが予想外に発見された。これらの欠点は、塔型リアクター(ガススクラバーシステム)技術及びマイクロバブルマイクロリアクター又は類似する連続フロー技術にもある。例えば、コイルパイプリアクター又はマイクロリアクターは、高不活性ガス濃度、例えば、低フッ素(F2)濃度の場合、熱交換が悪いだけでなく、(不活性)気泡がある無効な(反応)領域が存在することで、コイルパイプリアクター又はマイクロリアクターの利点が帳消しにされる。塔型リアクター(ガススクラバーシステム)技術には、同様な状況が観察された。
【0061】
しかし、本発明では、フッ素化ガスの合計100体積%に対して、フッ素化ガスにおける単体フッ素(F2)の濃度を20体積%以上の高濃度、例えば、好ましくは25体積%以上、より好ましくは30体積%又は40体積%以上、最も好ましくは50体積%以上に増加する一方、不活性ガスの濃度(例えば、不活性ガスである窒素ガス(N2)の濃度)を80体積%以下の低濃度、例えば、好ましくは75体積%以下、より好ましくは70体積%又は60体積%以下、最も好ましくは50体積%以下に低減させることにより、工業プロセスにおいて、転化率は、約30%-45%上がり、例えば、転化率は、50体積%以上、好ましくは60体積%又は70体積%以上、さらにより好ましくは80体積%以上、最も好ましくは90体積%以上になる。
【0062】
不活性ガスは、強酸化剤である単体フッ素(F2)の反応性を希釈するために使用される。上記「背景技術」に記載のように、安全性の観点から、単体フッ素(F2)を輸送及び処理するときに、不活性ガスを使用する必要がある(例えば、ヨーロッパでは、95体積%のN2(不活性ガス)及び5体積%のF2ガスを含む混合物である。アジアでは、混合物は、例えば、少なくとも80体積%のN2(不活性ガス)及び多くとも20体積%のF2ガスを含む混合物である。)。このように希釈されたフッ素化ガスに含まれる単体フッ素(F2)が依然として強酸化剤であるが、不活性ガスは、フッ素化反応に影響を与える。
【0063】
驚くべきことに、本発明では、フッ素化ガスの合計100体積%に対して、単体フッ素(F2)を不活性ガスで希釈していない場合、又は不活性ガスで単体フッ素(F2)をフッ素化ガスにおける単体フッ素(F2)の濃度が50体積%以上であるように希釈する場合には、化合物の直接フッ素化が達成され、その転化率は従来技術の希釈フッ素化ガスよりも高いことが発見された。
【0064】
したがって、本発明では、F2電解リアクター(フッ素電解槽)から出たフッ素ガス(F2)をそのまま使用する直接フッ素化により、フルオロベンゼン(特にモノフルオロベンゼン)を製造又は調製するフッ素化プロセスを提供することが特に好ましい。
【0065】
フッ素電解槽で産生されるフッ素ガスの代表的な組成は、フッ素含有ガスの合計100体積%に対して97%のF2、多くとも3%のCF4(電極の破損により形成される)、例えば、微量のHF、NO2、OF2、COF2である。
【0066】
必要に応じて、フッ素化ガスがF2電解リアクター(フッ素電解槽)から出るときに精製されることによりF2電解リアクター(フッ素電解槽)中で形成された一部または全部の副生成物及び微量物質が除去された後、本発明のプロセスにおいてフッ素化ガスとして使用される。しかし、本発明のプロセスには、このような一部または完全な精製が必要ではなく、フッ素化ガスは、F2電解リアクター(フッ素電解槽)から出た後、そのまま使用することができる。
【0067】
F2電解リアクター(フッ素電解槽)から出たフッ素化ガス(精製又は未精製)を使用する場合、必要に応じて、不活性ガス(好ましくは窒素ガス(N2))である程度に希釈してもよい。
【0068】
したがって、必要に応じて、F2電解リアクター(フッ素電解槽)から精製されているか又は精製されていないフッ素化ガスは、多くとも45体積%の不活性ガスで希釈されてもよいが、好ましくは、不活性ガスで希釈された後、フッ素化ガスの合計100体積%に対して、単体フッ素(F2)の濃度は80体積%以上、好ましくは85体積%以上、より好ましくは90体積%以上である。
【0069】
フッ素化ガスにおける単体フッ素(F2)及びいずれかの不活性ガスの和と、100体積%と差分(差分がある場合)は、副生成物(例えば、CF4)及び微量HF、NO2、OF2、COF2から構成される可能性がある(F2電解リアクター(フッ素電解槽)の電極の破損により形成される可能性がある)。本発明において、F2電解リアクター(フッ素電解槽)から出たフッ素ガス(F2)をそのままフッ素化ガスとして使用する場合、通常、本明細書に記載の体積%の値が適用される。
【0070】
したがって、本発明の好ましくはプロセスにおいて、フッ素化ガスの合計100体積%に対して、約80体積%-97±1体積%の単体フッ素(F2)及び約0体積%-17±1体積%の不活性ガス(好ましくは窒素ガス(N2))を含むフッ素化ガスにより直接フッ素化を行う。
【0071】
本発明の別の好ましくはプロセスにおいて、フッ素化ガスの合計100体積%に対して、約85体積%-97±1体積%の単体フッ素(F2)及び約0体積%-12±1体積%の不活性ガス(好ましくは窒素ガス(N2))を含むフッ素化ガスにより直接フッ素化を行う。
【0072】
本発明の別の好ましくはプロセスにおいて、フッ素化ガスの合計100体積%に対して、約87体積%-97±1体積%の単体フッ素(F2)及び約0体積%-10±1体積%の不活性ガス(好ましくは窒素ガス(N2))を含むフッ素化ガスにより直接フッ素化を行う。
【0073】
本発明の別の好ましくはプロセスにおいて、フッ素化ガスの合計100体積%に対して、約90体積%-97±1体積%の単体フッ素(F2)及び約0体積%-7±1体積%の不活性ガス(好ましくは窒素ガス(N2))を含むフッ素化ガスにより直接フッ素化を行う。
【0074】
本発明の別の好ましくはプロセスにおいて、フッ素化ガスの合計100体積%に対して、約95体積%-97±1体積%の単体フッ素(F2)及び約0体積%-2±1体積%の不活性ガス(好ましくは窒素ガス(N2))を含むフッ素化ガスにより直接フッ素化を行う。
【0075】
なお、当業者であれば、任意の例示範囲内におけるいかなる中間値及び中間範囲を選択することができる。
【0076】
(高濃度の単体フッ素を含むフッ素化ガスの用途)
本発明は、フッ素化ガスの用途にも関する。好ましくは、単体フッ素(F2)が実質的に15体積%以上、20体積%以上、特に25体積%以上、即ち、少なくとも25体積%、好ましくは35体積%、45体積%以上の高濃度で存在するフッ素化ガスを用いて、ベンゼンを含むか又はベンゼンからなる出発化合物の液体媒体(前記1つ又は複数の水素原子がハロゲン化反応により置換可能である)中でフッ素化ベンゼンを製造する。ここで、出発化合は、ベンゼンであり、生成されるフッ素化有機化合物は、フッ素化ベンゼン(好ましくはモノフルオロベンゼン)である。
【0077】
本発明は、フッ素化ガスの用途にも関する。単体フッ素(F2)は、高濃度で存在する。例えば、フッ素化ベンゼンを製造する用途において、単体フッ素(F2)は、フッ素化ガスの合計100体積%に対して、少なくとも25体積%、好ましくは少なくとも30体積%、より好ましくは少なくとも35体積%、さらにより好ましくは少なくとも45体積%の高濃度でフッ素化ガスに存在する。
【0078】
さらに、前記用途において、単体フッ素(F2)は、フッ素化ガスの合計100体積%に対して、少なくとも45体積%、好ましくは少なくとも50体積%、より好ましくは少なくとも60体積%、さらにより好ましくは少なくとも70体積%、又は少なくとも80体積%の高濃度でフッ素化ガスに存在してもよい。
【0079】
本発明のフッ素化ベンゼン(好ましくはモノフルオロベンゼン)を製造する用途において、一実施形態において、単体フッ素(F2)は、フッ素化ガスの合計100体積%に対して、15-100体積%、好ましくは20-100体積%、より好ましくは25-100体積%、さらにより好ましくは30-100体積%、さらにより好ましくは35-100体積%、さらにより好ましくは45-100体積%の高濃度でフッ素化ガスに存在する。
【0080】
さらに、前記用途において、単体フッ素(F2)は、フッ素化ガスの合計100体積%に対して、45-100体積%、好ましくは50-100体積%、より好ましくは50-100体積%、より好ましくは60-100体積%、さらにより好ましくは70-100体積%、さらにより好ましくは80-100体積%の高濃度でフッ素化ガスに存在してもよい。
【0081】
(本発明のプロセス)
発明の概要における説明、特許請求の範囲における限定、及び以下の実施形態における詳しい説明の通り、本発明は、直接フッ素化によりフッ素化ベンゼンを製造するプロセスに関する。前記プロセスは、以下のステップを含む。
ステップa)において、液体媒体を提供し、液体媒体は、出発化合物としてベンゼンを含むか又はベンゼンからなるものである(1つ又は複数の水素原子はハロゲン化反応により置換可能である)。
ステップb)において、フッ素化ガスを提供し、フッ素化ガスは、単体フッ素(F2)を含むか又は単体フッ素(F2)からなり、前記フッ素が少なくとも15体積%(vol.-%)以上、好ましくは20体積%(vol.-%)以上の高濃度で前記フッ素化ガスに存在する。
ステップc)において、単体フッ素(F2)及びフッ化水素(HF)に対して耐食性を有するリアクター又はリアクターシステムを提供する。
ステップd)において、ステップb)のフッ素化ガスをステップc)のリアクター又はリアクターシステムにおけるステップa)の液体媒体を通過させ、前記液体媒体は、出発化合物としてベンゼンを含むか又はベンゼンからなるものである。前記ベンゼン出発化合物とフッ素化ガスa)の単体フッ素(F2)とを反応させることにより、ベンゼンにおいてフッ素で前記1つ又は複数の水素原子のうちの少なくとも1つを置換し、前記反応が約-30℃-約+100℃の温度及び約1bar-約10barの絶対圧力下で行われる。
ステップe)において、ステップc)のリアクター又はリアクターシステムからステップd)で形成されたフッ素化ベンゼンを取り出す。
ステップf)において、フッ素化ベンゼン、好ましくはモノフルオロベンゼンを得る。前記ベンゼン出発化合物の1つ又は複数の水素原子のうちの少なくとも1つがフッ素原子によって置換されている。
【0082】
本発明に係るフッ素化ベンゼン(好ましくはモノフルオロベンゼン)の製造プロセスにおいて、一実施形態では、前記単体フッ素(F2)は、フッ素化ガスの合計100体積%に対して、少なくとも25体積%、好ましくは少なくとも30体積%、より好ましくは少なくとも35体積%、さらにより好ましくは少なくとも45体積%の高濃度でステップb)のフッ素化ガスに存在する。
【0083】
本発明に係るフッ素化ベンゼン(好ましくはモノフルオロベンゼン)の製造プロセスにおいて、一実施形態では、前記単体フッ素(F2)は、フッ素化ガスの合計100体積%に対して、15-100体積%、好ましくは20-100体積%、より好ましくは25-100体積%、より好ましくは30-100体積%、さらにより好ましくは35-100体積%、より好ましくは45-100体積%の高濃度でステップb)のフッ素化ガスに存在する。
【0084】
(バッチプロセス)
本発明は、フッ素化ベンゼン(好ましくはモノフルオロベンゼン)の製造プロセスにも関する。前記プロセスはバッチプロセスであり、好ましくはカラムリアクター中で行われる。後述のリアクター設置において前記プロセスをバッチプロセスとして説明するが、好ましくは、例えば、生成物の濃度が高い場合において、前記リアクター設置において前記プロセスを連続プロセスとして行ってもよい。もちろん、前記リアクター装置中で連続プロセスを行う場合、別途の入口及び出口は、それぞれ出発化合物の投入及び生成物化合物の排出に供されることが予想可能である。
【0085】
本発明に係るバッチプロセスは、カラムリアクター中で行われることが好ましい。対応して、フッ素化ベンゼン(好ましくはモノフルオロベンゼン)の製造プロセスでは、前記反応は(密閉)カラムリアクター(システム)中で行われることが最も好ましい。前記製造プロセスは、出発化合物を含むか又は出発化合物からなるステップa)の液体媒体を回路におけて循環させ、高濃度の単体フッ素(F2)を含むか又は単体フッ素(F2)からなるステップb)のフッ素化ガスをカラムリアクターに導入し、ステップc)において液体媒体と出発化合物とを反応させる。好ましくは、回路は、約1,500l/h-約5,000l/h、より好ましくは約3,500l/h-約4,500l/hの循環速度で操作する。一実施例において、回路は約4,000 l/hの循環速度で操作する。
【0086】
本発明に係るフッ素化ベンゼン(好ましくはモノフルオロベンゼン)の製造プロセスは、バッチプロセスを使用することにより、出発化合物を含むか又は出発化合物からなるステップa)の液体媒体は、カラムリアクター内において乱流又は層流、好ましくは乱流で循環する。
【0087】
通常、所望のフッ素化生成物及びフッ素化度に必要な化学量論に基づいて、単体フッ素(F2)を含むフッ素化ガスを回路に投入し、それを反応速度に適応させる。
【0088】
本発明に係るフッ素化ベンゼン(好ましくはモノフルオロベンゼン)の製造プロセスは、例えば、バッチに行うことができる。カラムリアクターは、少なくとも1つの冷却器(システム)、少なくとも1つの貯液タンク、ポンプ、1つ又は複数の(ノズル)インジェクター、1つ又は複数の供給口、1つ又は複数の篩、少なくとも1つの排気口のうちの少なくとも一者を含む。前記貯液タンクは、ステップa)の液体媒体を収容する。前記液体媒体は、出発化合物を含むか又は発化合物からなる。前記ポンプは、液体媒体のポンピング/循環に用いられる。前記(ノズル)インジェクターは、好ましくはカラムリアクターの頂部に設けられ、循環媒体をカラムリアクターに噴射する。供給口は、ステップb)のフッ素化ガスを導入するためのものである。前記フッ素化ガスは、高濃度の単体フッ素(F2)を含むか又は単体フッ素(F2)からなる。前記篩は、好ましくは2つあり、前記カラムリアクターの底部に位置する。前記排気口には圧力弁が設けられている。
【0089】
圧力弁の作用は、反応に必要な圧力を保持し、廃ガス(例えば、フッ素化ガスに含まれる不活性キャリアガス及び前記反応により放出されるフッ化水素(HF))を排出することである。
【0090】
本発明のフッ素化ベンゼン(好ましくはモノフルオロベンゼン)を製造するための前記プロセスは、例えば、バッチで行うことができる。フッ素化ベンゼン(好ましくはモノフルオロベンゼン)を製造する前記プロセスにおいて、カラムリアクターは、充填塔型リアクター、好ましくは金属フィラーが充填された充填塔型リアクターである。
【0091】
図1に示されるフィラー塔の直径は、100又は200mmであってもよく(循環流量及び水垢に依存する)、ハイグレードステンレス鋼(1.4571)で作製される。塔は、長さが3mである場合、直径は100mmであり、長さが6mである場合、直径が200mmである(大容量が必要である場合、後者を使用する)。ハステロイで作製された塔にはE-TFE又は金属フィラーが充填されている。各フィラーは、直径が10mmであり、Raschig(http://www.raschig.de/Fllkrper)から購入することができる。フィラーのタイプは様々であり、後述の試験においてハステロイで作製されたRaschigs Pall-Ringsが使用される。また、E-TFEフィラーは、同じ性能を示し、F
2がガス向流の方式で供給される際に大幅な圧力低下(圧力損失)を引き起こすことがない。
【0092】
本発明のフッ素化ベンゼン(好ましくはモノフルオロベンゼン)の製造プロセスにおいて、反応は、ステップa)の循環液体媒体(出発化合物を含むか又は出発化合物からなる)の向流下でステップb)のフッ素化ガスを用いて行うことができる。前記フッ素化ガスは、高濃度の単体フッ素(F2)を含むか又は単体フッ素(F2)からなり、カラムリアクターに導入される。
【0093】
本発明は、例えば、以下の実施形態を含む。
【0094】
一実施形態では、本発明のフッ素化ベンゼンを製造するプロセスにおいて、ステップd)の反応は、(密閉)カラムリアクターにおいて行われる。出発化合物としてベンゼンを含むか又はベンゼンで構成されるステップa)の液体媒体を回路中で循環させ、高濃度の単体フッ素(F2)を含むか又は単体フッ素(F2)からなるステップb)の前記フッ素化ガスをステップc)の前記カラムリアクターに導入し、ステップd)において、前記液体媒体と前記出発化合物ベンゼンと反応させる。好ましくは、前記回路は1,500l/h-5,000l/h、より好ましくは3,500l/h-4,500l/hの循環速度で操作する。
【0095】
別の実施形態では、本発明のフッ素化ベンゼンを製造するプロセスは、(i)少なくとも1つの冷却器(システム)、少なくとも1つの貯液タンク、(ii)ポンプ、(iii)1つ又は複数の(ノズル)インジェクター、(iv)1つ又は複数の供給口、(v)1つ又は複数の篩、(vi)少なくとも1つの排気口及び少なくとも1つの出口のうちの少なくとも一者を含むカラムリアクター中で行う。
(i)前記貯液タンクは、ステップa)の前記液体媒体を収容するものであり、入口及び出口を有し、前記液体媒体は、出発化合物であるベンゼンを含むか又は前記出発化合物からなり、
(ii)前記ポンプは、ステップa)の前記液体媒体のポンピング及び循環に用いられ、
(iii)前記(ノズル)インジェクターは、好ましくは前記カラムリアクターの頂部に設けられ、ステップa)の循環媒体を前記カラムリアクターに噴射し、
(iv)前記供給口は、ステップb)の前記フッ素化ガスを前記カラムリアクターに導入し、前記フッ素化ガスは、高濃度の単体フッ素(F2)を含むか又は単体フッ素(F2)からなり、
(v)前記篩は、好ましくは2つあり、前記カラムリアクターの底部に位置し、
(vi)前記排気口には圧力弁が設けられ、前記出口は、ステップe)においてフッ素化ベンゼンを取り出すためのものである。
【0096】
別の実施形態において、本発明に係るフッ素化ベンゼンの製造プロセスは、カラムリアクター中で行うことができる。カラムリアクターは、充填塔型リアクターであり、好ましくは単体フッ素(F2)及びフッ化水素(HF)に対して耐性を有するフィラー、例えば、Raschigフィラー及び/又は金属フィラーが充填された充填塔型リアクターであり、より好ましくガススクラバーシステム(塔型)である。
【0097】
別の実施形態において、本発明に係るフッ素化ベンゼンの製造プロセスでは、前記反応は、ステップa)の循環液体媒体及びカラムリアクターに導入されたステップb)のフッ素化ガスの向流中で行われる。前記循環液体媒体は、出発化合物としてベンゼンを含むか又はベンゼンからなり、前記ステップb)のフッ素化ガスは、高濃度の単体フッ素(F2)を含むか又は単体フッ素(F2)からなる。
【0098】
必要に応じて、前記バッチプロセスは連続で行われてもよい。当業者であれば、フッ素化化合物に変換した出発化合物を補充するために特定の反応時間内で必要な量の新しい出発化合物及びフッ素化ガスを連続して投入することができ、反応を連続して行う際に、一定の時間内で反応系からフッ素化化合物を取り除くことができる。
【0099】
(マイクロリアクタープロセス)
本発明は、フッ素化ベンゼン(好ましくはモノフルオロベンゼン)の製造プロセスにも関する。前記プロセスは連続プロセスであり、好ましくは前記連続プロセスはマイクロリアクター中で行われる(
図2)。
【0100】
通常、所望のフッ素化生成物及びフッ素化程度、必要な化学量論(やや過剰な場合がある)に応じて、単体フッ素(F2)を含むフッ素化ガスをマイクロリアクターに投入し、それを反応速度に適応させる。
【0101】
本発明は、1つ以上のマイクロリアクターを使用してもよい。即ち、本発明は、2つ、3つ、4つ、5つ又はそれ以上の个マイクロリアクターを使用することにより、容量を増大し、滞留時間を延長することができる。例えば、10個のマイクロリアクターを並列接続するか、4個のマイクロリアクターを直列接続することができる。2つ以上のマイクロリアクターを使用する場合、複数のマイクロリアクターは、順次に又は並列に配置することができ、3つ以上のマイクロリアクターを使用する場合、順次及び/又は並列に配置することができる。
【0102】
一実施形態において、本発明は非常有利である。本発明の直接フッ素化は、任意に連続フローリアクターシステム、好ましくはマイクロリアクターシステム中で行われる。
【0103】
好ましい実施形態において、本発明は、フッ素化化合物の製造プロセスに関する。前記反応は、少なくとも1つの連続プロセスのステップにより行われ、前記連続プロセスは、約5mm以下又は約4mm以下の上部横寸法を有する少なくとも1つの連続フローリアクター、好ましくは少なくとも1つのマイクロリアクター中で行われる。
【0104】
より好ましくは、前記ステップにおいて、少なくともステップ(b2)のフッ素化反応ステップは、以下の1つ又は複数の条件下で少なくとも1つのマイクロリアクターにおいて行われる連続プロセスであり、
流速:約10ml/h-約400l/h
温度:約30℃-約150℃
圧力:約4bar-約50bar
滞留時間:約1秒-約60分間、好ましくは約1分間-約60分間。
【0105】
別の好ましい実施形態において、本発明は、化合物の製造プロセスに関する。少なくとも1つの前記連続フローリアクター、好ましくは少なくとも1つの前記マイクロリアクターは、独立してSiC連続フローリアクター、好ましくはSiCマイクロリアクターである。
【0106】
(連続フローリアクター及びマイクロリアクター)
さらに、本発明の一態様は、本発明で使用、本明細書で説明されるように、工場エンジニアリングに関する発明を提供する。本発明のいくつかの実施形態において、当該方法は、マイクロリアクター中で実施される好ましい。
【0107】
本発明の一実施形態において、「マイクロリアクター」、「微細構造リアクター」又は「マイクロチャネルリアクター」とは、典型的な横寸法が約1mm以下の有限な空間で化学反応を行う装置であり、一般的なものはマイクロチャネルを使う。通常、本明細書において、用語「マイクロリアクター」、「微細構造リアクター」又は「マイクロチャネルリアクター」とは、典型的な横寸法が約5mm以下の有限な空間で化学反応を行う装置を指す。
【0108】
マイクロリアクター及びその中で物理的過程が発生する他の装置(例えばマイクロ熱交換器)について、マイクロプロセス工学分野において研究を行なった。前記マイクロリアクターは、通常連続フローリアクター(回分式リアクターに対して)をである。マイクロリアクターは、通常の拡大リアクターと比較して、エネルギー効率、反応速度及び収率、安全性、信頼性、拡大可能性、その場/オンデマンド生産が大幅に改善され、プロセス制御がより精細になる。
【0109】
「フローケミストリー」においてマイクロリアクターを用いて化学反応を行う。
【0110】
マイクロリアクターを用いるフローケミストリーにおいて、回分式ではなく、連続的なフローで化学反応を行う。回分式生産は、製造において用いられる技術であり、一連のワークステーションで段階的に所望の目的物を生産し、異なるバッチの生成物を得る。回分式生産、バッチ生産(ワンタイム生産)及び大規模生産(フロー生産又は連続生産)は、3つの主な生産方法である。フローケミストリーにおいて、化学反応は、連続的なフローで行われる。この場合、各ポンプにより流体をパイプにポンピングし、各パイプが互いに接続されているため、流体は互いに接触する。これらの流体が反応性であると、反応が起きる。フローケミストリーは、大量の原料を用いて大規模製造を行う成熟した技術である。しかし、「フローケミストリー」という用語は、実験室規模の応用に対して作ったばかりの用語である。
【0111】
連続フローリアクター(例えば、マイクロリアクターとして用いられる)は、通常管型であり、非反応性材料で作製される。当該非反応性材料は、従来技術において知られているものであり、試薬及び/又は反応物の特定の目的及び特性に依存する。混合方法は、拡散法であり、例えば、リアクターの直径が狭い(例えば、<1mm)場合に拡散法を使用し、例えば、マイクロリアクター及びスタティックミキサーにおいて拡散法を使用する。連続フローリアクターは、反応条件(熱伝達、時間及び混合)を良好に制御することができる。リアクター内の試薬の滞留時間、即ち、反応が加熱又は冷却される時間は、リアクター体積及びそれを通過する流速により計算される(滞留時間=リアクター体積/流速)。従って、比較的長い滞留時間を達成するために、試薬をより遅くポンピングしてもよく、体積がより大きなリアクターを使用してもよく、及び/又は複数のマイクロリアクターを直列接続してもよい。必要に応じて、それらの間にシリンダーを配置して滞留時間を延長してもよい。後者の場合、各マイクロリアクターの後ろにあるサイクロンセパレータは、形成されたHClの脱出を促進し、反応性能に積極的な影響を与える。これにより、生産性は、数ミリリットル/分間から数リットル/時間に増加することができる。
【0112】
フロー式リアクターの例には、回転ディスクリアクター(ColinRamshaw)、回転管リアクター、マルチセルフロー式リアクター、振動流リアクター、マイクロリアクター、熱交換リアクター、吸引式リアクターが含まれる。吸引式リアクターにおいて、1つポンプにより1種の試薬をポンピングし、反応物を吸引する。プラグフロー式リアクター及び管型フローリアクターがさらに含まれる。
【0113】
本発明の一実施形態において、マイクロリアクターを使用することが特に好ましい。
【0114】
好ましい実施形態において、本発明の用途及びプロセスでは、マイクロリアクターを使用する。なお、本発明の一般的な実施形態において、前記マイクロリアクター以外、好ましくは、本明細書で定義された上部横寸法が約1cm以下の管型連続フローリアクターを使用してもよい。したがって、このような連続フローリアクターは、好ましくは約5mm以下又は約4mm以下の上部横寸法を有する。これは、本発明の好ましい実施形態、例えば、好ましいマイクロリアクターを指す。連続的に操作するSTRシリーズは、別の選択肢であるが、マイクロリアクターを使用することがより好ましい。
【0115】
本発明の前記実施形態において、例えば好ましくは、管型連続フローリアクターの最小横寸法は約>5mmであってもよいが、通常約1cm以下である。従って、例えば、好ましくは、管型連続フローリアクターの横寸法は、約>5mm-約1cmの範囲内、又はこの範囲内の任意の値であってもよい。例えば、例えば好ましくは管型連続フローリアクターの横寸法は、約5.1mm、約5.5mm、約6mm、約6.5mm、約7mm、約7.5mm、約8mm、約8.5mm、約9mm、約9.5mm、約10mm、又は前記値の間の任意値であってもよい。
【0116】
本発明の前記実施形態において、好ましくはマイクロリアクターを使用する。マイクロリアクターの最小横寸法は、約0.25mm以上、好ましくは約0.5mm以上であってもよいが、マイクロリアクターの最大横寸法は、約5mm以下である。従って、例えば、マイクロリアクターの横寸法の範囲は、約0.25mm-約5mmであってもよいが、好ましくは約0.5mm-約5mmであり、この範囲内の任意値であってもよい。例えば、マイクロリアクターの横寸法は、約0.25mm、約0.3mm、約0.35mm、約0.4mm、約0.45mm、約5mm、又は前記値の間の任意値であってもよい。
【0117】
上記のように、本発明の実施形態において、横寸法が約1cm以下の管型連続フローリアクターを使用することが好ましい。このような連続フローリアクターは、例えばプラグフロー式リアクター(PFR)である。
【0118】
プラグフロー式リアクター(PFR)は、連続管型リアクター、CTR又はプラグフロー式リアクターとも呼ばれ、是用于在連続的、流動的な円筒状システム中で化学反応を行うリアクターである。PFRリアクターモデルは、このように設計された化学リアクターの挙動を予測するために用いられ、それにより、重要なリアクターの変量、例えば、リアクターのサイズを推測することができる。
【0119】
PFRを流れる流体は、一連の無限に薄い緊密な「プラグ(plug)」にモデル化されてリアクターを流れることができる。前記プラグは、それぞれ均一な組成を有し、リアクターにおいて軸方向に沿って移動し、且つ各プラグは、前後のプラグと異なる組成を有する。主要な仮定は、流体がプラグフローにつれてPFRを経過して軸方向(前又は後)ではなく、径方向(即ち、横方向)において完璧に混合することである。
【0120】
従って、本明細書において、本発明で用いられるリアクタータイプを定義するための用語、例えば「連続フローリアクター」、「プラグフロー式リアクター」、「管型リアクター」、「連続フローリアクターシステム」、「プラグフロー式リアクターシステム」、「管型リアクターシステム」、「連続フローシステム」、「プラグフローシステム」、「管型システム」は、互いに同義であり、交換することができる。
【0121】
リアクター又はシステムは、複数のパイプとして配置することができ、(例えば)線状、環形、蛇状、環状、旋回管型又はそれらの組み合わせであってもよい。(例えば)旋回管型である場合、リアクター又はシステムは、「旋回管型リアクター」又は「旋回管型システム」とも呼ばれる。
【0122】
径方向、即ち横方向において、このようなリアクター又はシステムは、約1cm以下の内径又は内部断面サイズ(即ち、それぞれ縦寸法又は横寸法)を有する。従って、一実施例において、リアクター又はシステムの横寸法は、約0.25mm-約1cm、好ましくは約0.5mm-約1cm、より好ましくは約1mm-約1cmのであってもよい。
【0123】
さらなる実施例において、リアクター又はシステムの横寸法は、約>5mm-約1cm又は約5.1mm-約1cmの範囲内であってもよい。
【0124】
横寸法が約5mm以下又は約4mm以下である場合、リアクターは、「マイクロリアクター」と呼ばれる。さらなるマイクロリアクターの実施例において、リアクター又はシステムの横寸法は、約0.25mm-約5mm、好ましくは約0.5mm-約5mm、より好ましくは約1mm-約5mmの範囲であってもよい。或いは、リアクター又はシステムの横寸法は、約0.25mm-約4mm、好ましくは約0.5mm-約4mm、より好ましくは約1mm-約4mmの範囲であってもよい。
【0125】
反応物が固体である場合、不活性溶媒を使用することができる。従って、固体原料を使用する場合、前記固体原料を不活性溶媒に溶解する。適切な溶媒は、例えばアセトニトリル、又は過フッ素化若しくは部分フッ素化アルカン(例えば、ペンタフルオロブタン(365mfc))、線状又は環状の部分フッ素化または過フッ素化エーテル(如CF3-CH2-OCHF2(E245))、又はオクタフルオロテトラヒドロフランである。通常、利用可能な場合、または最初の合成後に、生成物自体も不活性溶媒として機能する。
【0126】
本発明の任意の実施例において、マイクロリアクターではなく、必要に応じて別の連続フローリアクターを使用してもよい。(例えば)ハロゲン化又はフッ素化で用いられる触媒(ハロゲン化促進触媒、例えば、ハロゲン化触媒又は好ましくはハロゲン化触媒)組成物が反応過程において粘稠になりやすいか、又は前記触媒その自体が粘稠である場合、マイクロリアクターの代わりに、別の連続フローリアクターを使用することが好ましい。この場合には、連続フローリアクターは、下部の横寸法が上記マイクロリアクターの横寸法(即ち、約1mm)よりも大きいが、上部の横寸法が約4mm以下の有限な空間で化学反応を行う装置である。従って、本発明の任意の実施例において連続フローリアクターを使用する。用語「連続フローリアクター」は、好ましくは、有限な空間中で化学反応を行う装置(典型的には、横寸法が約1mm-約4mmである)を指す。本発明のこのような実施例において、前記横寸法を有するプラグフロー式リアクター及び/又は管型フローリアクターを連続フローリアクターとして使用することが特に好ましい。また、本発明のこのような実施例において、マイクロリアクターを使用する実施例と比較して、前記横寸法を有する連続フローリアクター、好ましくはプラグフロー式リアクター及び/又は管型フローリアクターは、より高い流速を有することが特に好ましい。例えば、このより高い流速は、本明細書に記載のマイクロリアクターの典型的な流速の約2倍以下、約3倍以下、約4倍以下、約5倍以下、約6倍以下、約7倍以下、又は約1倍-約7倍、約1倍-約6倍、約1倍-約5倍、約1倍-約4倍、約1倍-約3倍、約1倍-約2倍のいずれかの流速である。本発明のこの実施例において、好ましい前記連続フローリアクター、より好ましいプラグフロー式リアクター及び/又は管型フローリアクターを使用して、本発明書に記載のマイクロリアクターの製造材料を調製する。例えば、このような製造材料は、炭化ケイ素(SiC)及び/又は合金(例えば、本明細書に記載のマイクロリアクターの高耐食性のニッケル-クロム-モリブデン-タングステン合金、例えばHastelloy(登録商標))である。
【0127】
本発明では、前記横寸法を有するマイクロリアクター又は連続フローリアクターを使用することにより、分離工程を簡単化することができるとともに、時間やエネルギーが係る(例えば)中間蒸留工程が必要とされない。特に、本発明では、前記横寸法を有するマイクロリアクター又は連続フローリアクターを使用することにより、相分離だけにより分離することができるとともに、未反応成分は、適宜な時又は必要な時に反応過程に再循環されてもよいか、又は生成物として用いられてもよい。
【0128】
本発明の好適な実施例では、本発明に係るマイクロリアクターを用いるが、マイクロリアクターに加えて又はそれの代わりに、それぞれプラグフロー式リアクター又は管型フローリアクターを使用してもよい。
【0129】
プラグフロー式リアクター又は管型フローリアクター及びその操作条件は、当業者にはよく知られている。
【0130】
本発明において上部の横寸法が約4mm以下の連続フローリアクター、特にマイクロリアクターを使用することが好ましいが、場合によって、収率損失及びより長い滞留時間、より高い温度によりマイクロリアクターの使用が回避されるため、プラグフロー式リアクター又は管型フローリアクターを使用する。これにより、収率損失の問題が解決され、つまり、詰まり(望ましくない駆動方式による粒子の形成)が抑制される。これは、パイプの直径又はプラグフロー式リアクターのチャンネルがマイクロリアクターよりも大きいためである。
【0131】
プラグフロー式リアクター又は管型フローリアクターを使用する欠点は、主観的な見方もなされることができる。一方、ある場所又は生産施設内のある方法の制限下で、この欠点は適切なものであり、収率損失が重要ではないと認められ、或いは他の利点又は制限に鑑みて許容できる場合がある。
【0132】
以下、マイクロリアクターを使用する実施形態により本発明をより詳しく説明する。本発明で使用されるマイクロリアクターは、好ましくはセラミック連続フローリアクターであり、より好ましくはSiC(炭化ケイ素)連続フローリアクターであり、トン規模で物質を生産することができる。熱交換器とSiCとを組み合わせて製造することにより、操作されにくいフローケミストリーの応用に対して最適化制御を行うことができる。コンパクトなモジュラー製造及び流れ生産用のリアクターは、異なる方法に対して柔軟性を有し、一連の生産体積(5-400l/h)を使用することができ、空間に制限がある場合であっても化学製品の収量を増加させ、比類のない化学的適合性及び熱制御を有する。
【0133】
セラミック(SiC)マイクロリアクターは、(例えば)拡散接合に有利な3MSiCリアクターであり、特にろう付け及び金属がなく、FDAに承認された材料又は他の薬物管理機関(例えば、EMA)に承認された材料に優れた熱伝達、質量伝達、優れた化学的適合性を提供する。炭化ケイ素(SiC)は、カーボランダム(carborundum)とも呼ばれ、ケイ素及び炭素を含み、当業者に知られているものである。例えば、合成SiC粉末は、大量に生産され、加工されて多くの用途に用いられている。
【0134】
例えば、本発明の実施例において、本発明の目的は、少なくとも1つの反応ステップがマイクロリアクター中で行われる方法によって目的を実現する。特に、本発明の好適な実施例において、本発明の目的は、少なくとも1つの反応ステップがSiCを含むか又はSiCで作製されたマイクロリアクター(「SiC-マイクロリアクター」)、或いは合金を含むか又は合金で作製されたマイクロリアクター、例えばHastelloy C中で行われる方法によって実現される。詳細は後述する。
【0135】
従って、例えば、本発明の一実施形態において、生産、好ましくは工業生産に適しているマイクロリアクターは、SiC(炭化ケイ素、例えば、Dow Corningが提供したType G1SiC、又はChemtrixが提供したMR555 Plantrix SiC)を含むか、又はSiCで作製された「SiC-マイクロリアクター」であるが、これに制限されない。これにより、(例えば)約5-約400kg/時間の生産性が提供される。或いは、例えば、本発明の他の実施例において、工業生産に適しているマイクロリアクターは、Ehrfeldが提供したHastelloy Cを含むか、又はそれで作製されたものであるが、これに制限されない。このようなマイクロリアクターは、本発明に係るフッ素化生成物の好適な工業生産に特に適している。
【0136】
生産規模のフロー式リアクターに対する機械的要求及び化学的要求を満たすために、3M(商標)SiC(レベルC)でPlantrixモジュールを製造する。特許で保護されている3M(EP1637271B1及び外国特許)拡散接合技術により製造されたリアクターは、全体として密閉され、溶接線/接合スポットがなく、ろう付け用フラックスを使用する必要がない。Chemtrix MR555 Plantrixについては、2017年にChemtrix BVによって印刷されたマニュアル「CHEMTRIXのPlantrix(登録商標)MR555シリーズに関する拡大可能なフローケミストリー技術情報」に記載され、その技術情報の全体は引用により本明細書に組み込まれる。
【0137】
上記実施例に加えて、本発明の他の実施例において、当業者に知られている他の製造業者のSiCを使用することができる。
【0138】
従って、本発明において、ChemtrixのProtrixをマイクロリアクターとして使用してもよい。Protrix(登録商標)は、3M(登録商標)炭化ケイ素で製造されたモジュール化の連続フローリアクターであり、優れた耐薬品性及び熱伝達を提供する。3M(登録商標)SiC(レベルC)で製造されたProtrix(登録商標)モジュールは、フロー式リアクターに対する機械的要求及び化学的要求を満たすことができる。特許で保護されている3M(EP1637271B1及び外国特許)拡散接合技術により製造されたリアクターは、全体として密閉され、溶接線/接合スポットがなく、ろう付け用フラックスを使用する必要がない。この製造技術は、完全なSiCリアクター(熱膨張係数=4.1x10-6K-l)を得るための製造方法である。
【0139】
0.2-20ml/minの流速及び25 bar以下の圧力に設定することにより、Protrix(登録商標)は、実験室規模の連続フロー方法に適用でき、さらにPlantrix(登録商標)MR555(x340倍率)に移転して物質の生産を行うことができる。Protrix(登録商標)リアクターは、独特なフロー式リアクターであり、以下の利点を有する。拡散接合による3M(登録商標) SiCモジュールは、統合した熱交換器を有し、比類のない熱制御及び優れた耐薬品性を提供し、標準ヒュームフードにおいてグラムレベルで極端な反応条件下で安全に操作することができ、試薬の添加量、生産力又は反応時間からみて、生産を効率的かつ柔軟に実行することができる。Protrix(登録商標)フロー式リアクターの一般的なパラメータは以下の通りである。可能な反応タイプは、(例えば)A+B→P1+Q(又はC)→Pであり、用語「A」、「B」、「C」は反応物を示し、「P」、「P1」は生成物を示し、「Q」はクエンチャーを示し、生産量(ml/min)は約0.2-約20であり、チャンネルサイズ(mm)は1x1(予熱ゾーン及び混合器ゾーン)、1.4x1.4(停留通道)であり、試薬供給は1-3であり、モジュールサイズ(幅x高さ)(mm)は110x260であり、フレームサイズ(幅x高さx長さ)(mm)は約400x300x250であり、モジュール/フレーム数は1-4である。Chemtrix Protrix(登録商標)リアクターの技術情報については、2017年にChemtrix BVによって出版されたマニュアル「CHEMTRIXのProtrix(登録商標)に関する拡大可能なフローケミストリー技術情報」に記載され、その技術情報の全体は引用により本明細書に組み込まれる。
【0140】
工業生産、プロセス開発及び小規模生産に適用可能なDow CorningのType G1SiCマイクロリアクターは、以下のサイズにより特徴付けられる。典型的なリアクターサイズ(長さx幅x高さ)は88cmx38cmx72cmであり、典型的な流体モジュールサイズは188mmx162 mmである。Dow CorningのType G1SiCマイクロリアクターの特徴は、優れた混合及び熱交換、特許で保護されているHEART設計、小さい内部容積、長い滞留時間、高柔軟性、多用途、高耐薬品性のため高pH化合物、特にフッ化水素酸が適用すること、混合型ガラス/SiC溶液が製造材料として使用されること、他の先端的なフローリアクターとのシームレスな拡大である。Dow CorningのType G1SiCマイクロリアクターの典型的な技術パラメータは以下の通りである。流速は約30ml/min-約200ml/minであり、操作温度は約-60℃-約200℃であり、操作圧力は約18barg(barg:ゲージ圧の単位、即ち、barで環境圧力又は大気圧よりも高い圧力)以下であり、用いられる材料は炭化ケイ素、PFA(ペルフルオロアルコキシアルカン)、ペルフルオロエラストマーであり、流体モジュール内の容積は10 mlであり、必要に応じて管理機関、例えばFDA又はEMAにより承認されている。Dow CorningのType G1SiCマイクロリアクターのリアクターは、多用途であり、その配置がカスタマイズすることができる。また、前記リアクター上の任意の位置に注入スポットを増設することができる。
【0141】
Hastelloy(登録商標)Cは、式NiCr21Mo14Wで表される合金であり、「合金22」又は「Hastelloy(登録商標)C-22」とも呼ばれてもよい。前記合金は、耐食性が高いニッケル-クロム-モリブデン-タングステン合金であり、酸化性酸、還元性酸及び混合酸に対して優れた耐性を有することが知られている。前記合金は、用于排煙脱硫工場、化学工業、環境保護システム、廃棄物焼却工場、廃水処理工場に用いられている。前記実施例以外、本発明の他の実施例において、当業者に知られている他の製造業者のニッケル-クロム-モリブデン-タングステン合金を用いてもよい。合金成分の合計を100%とする場合、ニッケル-クロム-モリブデン-タングステン合金の典型的な組成(重量%)は、約51.0%以上、例えば約51.0%-約63.0%のNi(ニッケル)を主成分とし、Cr(クロム)が約20.0-約22.5%、Mo(モリブデン)が約12.5-約14.5%、W(タングステン又はウルフラム)が約2.5~約3.5%、Fe(鉄)が約6.0%以下、例えば約1.0%-約6.0%、好ましくは約1.5%-約6.0%、より好ましくは約2.0%-約6.0%である。或いは、Co(コバルト)は、合金成分の合計100%に対して約2.5%以下、例えば約0.1%-約2.5%の含有量で合金に存在してもよい。また、V(バナジウム)は、合金成分の合計100%に対して約0.35%以下、例えば約0.1%-約0.35%の含有量で合金に存在してもよい。さらに、合金成分の合計100%に対して、少量(即ち0.1%以下)の他の元素は、独立して(例えば)C(カーボン)、Si(シリコン)、Mn(マンガン)、P(リン)及び/又はS(硫黄)であり得る。少量(即ち0.1%以下)の他の元素が存在する場合には、前記元素(例えば)C(カーボン)、Si(シリコン)、Mn(マンガン)、P(リン)及び/又はS(硫黄)は、合金成分の合計100%に対してそれぞれ独立して約0.1%以下、例えば約0.01-約0.1%、好ましくは約0.08%以下、例えば約0.01-約0.08%の含有量で存在してもよい。例えば、前記元素(例えば)C(カーボン)、Si(シリコン)、Mn(マンガン)、P(リン)及び/又はS(硫黄)は、合金成分の合計100%に対してそれぞれ独立してC≦0.01%、Si≦0.08%、Mn≦0.05%、P≦0.015%、S≦0.02%の含有量で存在してもよい。通常、上記合金組成物には、Nb(ニオブ)、Ti(チタン)、Al(アルミ)、Cu(銅)、N(窒素)及びCe(セリウム)のいずれかが微量でも存在しない。
【0142】
Hastelloy(登録商標)C-276合金は、極めて低い炭素含有量及びケイ素含有量により溶接の問題を緩和する鍛造ニッケル-クロム-モリブデン材料であるため、化学方法及び関連工業において広く用いられており、多くの腐食性化学薬品に対する耐性について、50年にわたる追跡記録により実証された。他のニッケル合金と同様に、可塑性を有し、成形及び溶接が容易であり、塩化物を含む溶液中の応力腐食割れ(オーステナイト系ステンレス鋼が受けやすい分解の態様)に対して優れた耐性を有する。そのクロム含有量及びモリブデン含有量が高いため、酸化性酸及び非酸化性酸に耐えることができ、塩化物及び他のハロゲン化物の存在下で孔食及び隙間腐食に対して顕著な耐性を示す。総成分100%に対して、重量%で一般的な組成は、Ni(ニッケル)57%(残部)、Co(コバルト)2.5%以下、Cr(クロム)16%、Mo(モリブデン)16%、Fe(鉄)5%、W(タングステン(tungsten)又はウルフラム(wolfram))4%であり、より少量の他の成分は、Mn(マンガン)1%以下、V(バナジウム)0.35%以下、Si(シリコン)0.08%以下、C(カーボン)0.01以下、Cu(銅)0.5%以下である。
【0143】
本発明の別の実施例において、例えば、前記生産、好ましくは前記工業生産に適したマイクロリアクターは、SiC(炭化ケイ素、例えば、Dow CorningによってType G1SiCとして、又はChemtrixによってMR555 Plantrixとして提供されるSiC)で構成されるか、又は作製されたSiC-マイクロリアクターであるが、これに制限されない。これにより、(例えば)約5-約400kg/時間の生産性が提供される。
【0144】
本発明によれば、本発明のフッ素化生成物の生産、好ましくは工業生産において、1つ又は複数のマイクロリアクター、好ましくは1つ又は複数のSiC-マイクロリアクターを使用することができる。本発明のフッ素化生成物の生産、好ましくは工業生産において1つ以上のマイクロリアクター、好ましくは1つ以上のSiC-マイクロリアクターを使用する場合、これらのマイクロリアクター、好ましくはSiC-マイクロリアクターは、並列配置及び/又は直列配置して使用することができる。例えば、2つ、3つ、4つ又はより多くのマイクロリアクター、好ましくは2つ、3つ、4つ又はより多くのSiC-マイクロリアクターは、並列配置及び/又は直列配置して使用することができる。
【0145】
反応及び/又は拡大条件を使用可能な実験室研究について、例えば、Chemtrix社のリアクターPlantrixはマイクロリアクターとして使用することができるが、これに限定されない。
【0146】
場合によっては、マイクロリアクターのガスケットがHDPTFE以外の材料で作られていると、多少の膨張のために短時間の操作ですぐに漏れみが生じる可能性があるため、HDPTFEガスケットは、マイクロリアクターの長い動作時間を確保し、セトラーや蒸留塔などの他の機器部品を使用する。
【0147】
例えば、工業フロー式リアクター(「IFR」、例えばPlantrix(登録商標)MR555)は、ステンレス鋼フレームに置かれた(非浸入式)SiCモジュール(例えば3M(登録商標) SiC)から構成され、標準Swagelokコネクタを用いて前記フレームによりフィードラインと作動媒体との接続を構築する。作動媒体(熱流体又は熱流)と共に使用するときに、統合熱交換器を用いてモジュール内でプロセス流体を加熱又は冷却し、鋸歯状又は双鋸歯状の中間チャンネルの構造中で反応させる。前記構造は、プラグフローを得るとともに高熱交換能力を有するように設計される。基本IFR(例えばPlantrix(登録商標)MR555)システムは、1つのSiCモジュール(例えば3M(登録商標)SiC)及び1つの混合器(MRX)から構成され、前記混合器はA+B→Pタイプの反応を行うことができる。モジュールの数を増加することで反応時間及び/又はシステム生産性を増加することができる。クエンチャーQ/Cモジュールを増設することにより、反応タイプはA+B→P1+Q(又はC)→Pに拡大され、仕切られることで2つの温度領域が得られる。本明細書において、用語「A」、「B」及び「C」は反応物、「P」及び「P1」は生成物、「Q」はクエンチャーを示す。
【0148】
工業用フロー式リアクター(「IFR」、例えばPlantrix(登録商標) MR555)の典型的なサイズは、(例えば)ミリメートルでチャンネルサイズが4x4(「MRX」、混合器)及び5x5(「MRH-I/MRH-II」;MRHは滞留モジュールを示す)であり、モジュールサイズ(幅x高さ)が200mmx555mmであり、フレームサイズ(幅x高さ)が322mmx811mmである。工業用フロー式リアクター(「IFR」、例えばPlantrix(登録商標)MR555)の典型的な生産量は、(例えば)約50l/h-約400l/hである。また、用いられる流体の特性及び過程条件に応じて、工業用フロー式リアクター(「IFR」、例えばPlantrix(登録商標)MR555)の生産量は、(例えば)>400l/hであってもよい。滞留モジュールは、直列に配置することができる。これにより、必要な反応体積又は生産性が得られる。直列に配置可能なモジュールの数は、流体の特性及び目的流速に依存する。
【0149】
工業用フロー式リアクター(「IFR」、例えばPlantrixeMR555)の典型的な操作条件又は過程条件は、(例えば)温度範囲が約-30℃-約200℃、圧力差(作動過程)が<70℃、試薬供給が1-3、最大操作圧力(作動流体)が約200℃の温度で約5bar、最大操作圧力(プロセス流体)が約≦200℃の温度で約25barである。
【0150】
以下、実施例にて本発明を説明するが、この実施例は本発明の範囲を制限しない。
【0151】
<実施例>
以下の実施例において、本発明及び以下の反応スキーム1に従って、高濃度単体フッ素(F
2)を含むフッ素化ガスを用いてベンゼンを直接フッ素化することによりフルオロベンゼンを製造する。
【化2】
F
2 concentrated:濃F
2
【0152】
代表的で例示的なプロセスは以下の実施例1から4で説明する。
【0153】
<実施例1>
向流システムにおいてフルオロベンゼンを合成する。
頂部に5barに設定された圧力弁(電解槽からいくつかのHF及び不活性ガス、例えばCF
4を排出する)を有する総体積10L(
図1)のハステロイC4製のバッチフッ素化向流装置には、4.0kg(51.2mol,4.5L)ベンゼンを充填し、ポンプを起動した。水温8℃の水冷却器を用いて冷却した。ベンゼンの温度が15℃に達したときに、20mol F
2ガス/hで濃F
2有する貯蔵器のバルブを開いた。この試験において、F
2ガスは97%/hの濃度を有する。いくつかのパージガスがやや過剰なF
2と共に設備から排出された。160分間内で合計51.7mol(1.96kg)のF
2ガス(電解溝からの97%濃度)がBronkhorst製のマスフローコントローラーを介して回路における反応混合物に投入される。1時間ごとにステンレス製シリンダ(密閉ンプリングシステム)で反応サンプルを非常に注意深く採取した。分析及び最終処理のために、等体積の水でサンプルを加水分解して形成されたHFを洗い流し、Na
2SO
4で有機相を乾燥させた後、Hewlett Packardガスクロマトグラフィーシステムに注入した。160分間後に取り出されたサンプルには98%フルオロベンゼン(定量的な変換を示す)が含まれた。フルオロベンゼンを大気圧で蒸留することで99.7%の純度に最終精製した。
【0154】
<実施例2>
マイクロリアクターシステムにおいて高濃度F
2ガスを用いるフルオロベンゼンの合成する。
Chemtrix社からの2つの27mlマイクロリアクターを含むマイクロリアクター装置システムにおいて、
図2に示すように、F
2を電気分解して得たれた3.01mol/h高濃度のF
2ガス(Bronkhorst流量計を通過)を3mol/hベンゼンと共に貯蔵器(タンク)に投入し、2つのマイクロリアクターを約60℃の温度に保持し、第2マイクロリアクター後の圧力バルブを5 barに設定した。直列の第2マイクロリアクターは、滞留時間を延長し、反応の温度と圧力をより適切に制御するためのものである。マイクロリアクターシステムからの生成したフルオロベンゼンを含む生成物をステンレス鋼シリンダに収集した。生成したフルオロベンゼンを含む生成物混合物を氷水に加えて副生成物HFを除去する後処理を行なった。相分離後、精密蒸留により純度が99.9%(GC)のフルオロベンゼン(ガスクロマトグラフィー)を得た。総収率は理論値の95%であった。
【0155】
<実施例3>
マイクロリアクターシステムにおいて希釈されたF
2ガス用いてフルオロベンゼンを合成する。
Chemtrix社からの2つの27mlマイクロリアクターを含むマイクロリアクターシステムにおいて、
図2に示すように、ステンレス鋼シリンダ(Bronkhorst流量計)からの3.01mol/h F
2ガス(80体積%のN
2において20体積%のF
2を含む)を3mol/hベンゼンと共に貯蔵器(タンク)に投入し、2つのマイクロリアクターを約60℃の温度に保持し、第2マイクロリアクター後の圧力バルブを5 barに設定した。直列の第2マイクロリアクターは、滞留時間を延長し、反応の温度と圧力をより適切に制御するためのものである。マイクロリアクターから出た生成したフルオロベンゼンを含む生成物材料(気相と混合された液相)をステンレス製シリンダに収集した。生成したフルオロベンゼンを含む生成物混合物を氷水に加えて副生成物HFを除去する後処理を行なった。相分離後、精密蒸留により純度が99.9%(GC)のフルオロベンゼン(ガスクロマトグラフィー)を得た。フルオロベンゼンに対する選択性は95%であったが、変換率はわずか30%であった。
【0156】
<実施例4>
ベンゼンを含むプラスチック製フラスコにF2ガス(20%F2濃度、体積%)にバブリングする。
1.5時間かけて、80mlベンゼン(0.91mol)を含むプラスチック回流コンデンサーの200mlプラスチック製フラスコへ、プラスチックディープパイプを用いて連続して1.0molのF2を加えた。反応混合物を氷水浴で7℃の温度に保持した。
【0157】
氷水で加水分解した後、変換率はわずか19%であり、GC-MS(ガスクロマトグラフィー-質量分析)は、52%以上の多フッ化ベンゼンを示し、フルオロベンゼンへの変換の選択性はわずか45%であった。