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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-21
(45)【発行日】2023-09-29
(54)【発明の名称】排ガス処理装置
(51)【国際特許分類】
   F23G 7/06 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
F23G7/06 101D
F23G7/06 N
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018129806
(22)【出願日】2018-07-09
(65)【公開番号】P2019027776
(43)【公開日】2019-02-21
【審査請求日】2021-04-13
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-07
(31)【優先権主張番号】P 2017150513
(32)【優先日】2017-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 一知
(72)【発明者】
【氏名】駒井 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】柏木 誠司
【合議体】
【審判長】間中 耕治
【審判官】竹下 和志
【審判官】槙原 進
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-169935号公報
【文献】特開2010-118652号公報
【文献】特開2003-202106号公報
【文献】特開2010-249509号公報
【文献】特開2008-107031号公報
【文献】特開2008-31847号公報
【文献】特開2002-188810号公報
【文献】特開昭52-124782号公報
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素を含む処理ガスを燃焼処理して無害化する排ガス処理装置であって、
水素を含む処理ガスを燃焼する燃焼室は、円筒状の燃焼室として構成され、
前記燃焼室は、処理ガスと支燃性ガスとをそれぞれ燃焼室の内周面の接線方向に向けて吹き込む処理ガス用ノズルと支燃性ガス用ノズルとを備え、
前記処理ガス用ノズルと支燃性ガス用ノズルは、前記燃焼室の軸線に直交する同一平面上に位置しており、
前記支燃性ガス用ノズルに冷却水供給配管を接続し、前記支燃性ガス用ノズルから支燃性ガスを冷却水とともに前記燃焼室の内周面の接線方向に向けて吹き込むようにしたことを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項2】
前記支燃性ガス用ノズル内を流れる支燃性ガスに前記冷却水供給配管から冷却水を合流させることにより冷却水を細粒化し、細粒化した冷却水を含む支燃性ガスを前記燃焼室に吹き込むようにしたことを特徴とする請求項記載の排ガス処理装置。
【請求項3】
前記燃焼室の上部壁に、冷却水を供給して前記上部壁を冷却する冷却ジャケットを形成したことを特徴とする請求項記載の排ガス処理装置。
【請求項4】
前記冷却ジャケットから排出された冷却水を前記冷却水供給配管に供給するようにしたことを特徴とする請求項記載の排ガス処理装置。
【請求項5】
前記支燃性ガス用ノズルに支燃性ガスを供給する支燃性ガス供給ラインに逆止弁を設け、前記燃焼室内の処理ガスが支燃性ガス供給ラインに逆流しないようにしたことを特徴とする請求項1記載の排ガス処理装置。
【請求項6】
前記冷却水供給配管に逆止弁を設け、前記燃焼室内の処理ガスが前記冷却水供給配管に逆流しないようにしたことを特徴とする請求項記載の排ガス処理装置。
【請求項7】
前記水素を含む処理ガスは、EUV露光装置から排出される排ガスであることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の排ガス処理装置。
【請求項8】
水素を含む処理ガスを燃焼処理して無害化する排ガス処理方法であって、
水素を含む処理ガスを燃焼する燃焼室は、円筒状の燃焼室として構成され、
前記燃焼室の軸線に直交する同一平面上に位置している処理ガス用ノズルと支燃性ガス用ノズルとから、処理ガスと支燃性ガスとをそれぞれ燃焼室の内周面の接線方向に向けて吹き込んで、処理ガスと支燃性ガスの二種混合の旋回流を形成し、
前記支燃性ガス用ノズルに冷却水を供給し、前記支燃性ガス用ノズルから支燃性ガスを冷却水とともに前記燃焼室の内周面の接線方向に向けて吹き込むことを特徴とする排ガス処理方法。
【請求項9】
前記支燃性ガス用ノズル内を流れる支燃性ガスに冷却水を合流させることにより冷却水を細粒化し、細粒化した冷却水を含む支燃性ガスを前記燃焼室に吹き込むことを特徴とする請求項記載の排ガス処理方法。
【請求項10】
前記燃焼室の上部壁に冷却水を供給して前記上部壁を冷却することを特徴とする請求項記載の排ガス処理方法。
【請求項11】
前記燃焼室の上部壁を冷却した後の冷却水を前記支燃性ガス用ノズルに供給することを特徴とする請求項10記載の排ガス処理方法。
【請求項12】
前記水素を含む処理ガスは、EUV露光装置から排出される排ガスであることを特徴とする請求項乃至11のいずれか1項に記載の排ガス処理方法。
【請求項13】
前記燃焼室には、処理ガスおよび支燃性ガスの吹き込み位置から前記燃焼室の軸線方向に離間した位置で、水供給ノズルから水を供給し、前記燃焼室の内周面上に水膜を形成することを特徴とする請求項乃至11のいずれか1項に記載の排ガス処理方法。
【請求項14】
前記水供給ノズルから水を水溜め部の内周面の接線方向に向けて噴出することにより、前記水溜め部に、半径方向外側から内側に向かって斜め下方に傾斜した水面を有する旋回流からなる水膜を形成することを特徴とする請求項13記載の排ガス処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイス等を製造する製造装置から排出される排ガスを燃焼処理して無害化する排ガス処理装置に係り、特にEUV(Extreme Ultra Violet)露光装置から排出される排ガスを燃焼処理して無害化する排ガス処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
MPU、DRAM等の半導体集積回路の高集積化とそれに必要な微細化は、回路パターンを転写する露光装置光学系の短波長化と、液浸、マルチパターニング等の技術によって実現されてきた。
光学系の短波長化は技術的限界に近付いているとも言われるが、近年EUV(Extreme Ultra Violet:極短紫外線)露光装置が実用化されようとしている。EUVとは、これまで365nm→248nm→193nm(現行)と数10年をかけて段階的に進められてきた短波長化を、一気に13.5nmにまで進める技術であり、それだけに克服するべきさまざまな技術的ハードルを抱えている。
【0003】
その一つに装置内の汚染対策がある。EUV露光装置は超精密機器であり、特に光学系への異物の進入によって性能が急激に低下する。EUV露光装置はEUVを発生させる光源部と、光源部で発生させたEUVでウエハの露光を行う露光部から構成されており、光源部ではターゲットへのレーザー照射によって生成するスズ(Sn)の酸化物、露光部では感光性物質(レジスト)から脱離する有機物質が、それぞれ代表的な汚染源として知られているが、これらは装置の運用上必然的に発生するものであり、発生そのものを防止することはできない。
【0004】
これらへの汚染対策として、水素ガスを用いる方法がある。光源部では水素ガスを数百L/分使用してスズの酸化物をガス状の水素化物として除去し、また露光部では同じく水素ガスを数十L/分使用して有機物質をガス化させて除去する。使用された水素ガスは大半が未反応ではあるが、除去された汚染物質のキャリアとして装置から排出される。ただし、露光部内を真空にする動作工程の存在や、光源部と露光部はある程度独立して動作すること、また定期的なメンテナンスといった要因のため、排出される水素ガスの量は大きく変動する。
従ってEUV露光装置からは百数十~数百L/分という変動幅を持った水素ガスを含む処理ガス(排ガス)が排出されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4937886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体デバイス等の製造装置から排出される処理ガス(排ガス)は、通常、排ガス処理装置によって無害化処理を行った後に大気に排出している。この無害化処理方法としては、特許文献1等に開示されているように、燃料(燃料ガス)と支燃性ガス(酸素含有ガス)とを混合して燃料を燃焼させて火炎を形成し、火炎に処理ガス(排ガス)を混合して処理ガスを燃焼処理する燃焼式排ガス処理装置が広く採用されている。
しかしながら、EUV露光装置から排出される処理ガス(排ガス)には大量の水素ガスが含まれているため、別途燃料を供給することなく、支燃性ガス(酸素含有ガス)を供給するだけで処理ガスを燃焼処理できる可能性がある。
【0007】
水素は可燃性ガスの中でも特に燃焼速度が速く、燃焼範囲が広い(高濃度でも低濃度でも燃焼する)特徴を持つ。そのため、水素が燃焼室内に流入した直後急速に燃焼して局所的な高温部が形成され、燃焼室が熱損傷する可能性がある。熱損傷の可能性は水素の流入量が多いほど高くなるが、一般的な手法として大量の支燃性ガス(空気)を用いて燃焼させることにより、熱損傷を防止することは可能である。ただしこの場合、大容積の燃焼室が必要になり、燃焼ガス量も多くなるため装置が大型化する。また支燃性ガス量を水素の流量に合わせて調整する必要が出てくる。これは大量の支燃性ガスに対して少量の水素ガスを混合して燃焼させようとした場合、燃焼可能な下限濃度(水素と空気の混合気の場合、水素濃度が4%)を下回れば燃焼しなくなるためである。
ところが水素の流量はEUV露光装置の運転状態に依存して変動するため、水素の流量に追随して支燃性ガス量を調整することは困難である。従って大量の水素に対して必要最小限の支燃性ガスで燃焼させる必要があり、燃焼室の熱損傷への対策が必要となる。
【0008】
本発明者らは、EUV露光装置から排出される大量の水素を含む処理ガス(排ガス)を燃焼させることができ、かつ燃焼室の熱損傷を防止することができる可能性がある燃焼方式として、水素を含む処理ガスと支燃性ガスとを燃焼室の内周面の接線方向に向けて吹き込むことにより、燃焼室内壁から浮いた二種混合の円筒状混合火炎を形成する断熱混焼方式を着想したものである。
そこで、本発明は、燃焼式排ガス処理装置において水素を含む処理ガスを処理する際に、処理ガスと支燃性ガスとを燃焼室の内周面の接線方向に向けて吹き込み、燃焼室内壁から浮いた二種混合の円筒状混合火炎を形成することにより、燃焼室の熱損傷を防止することができる排ガス処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するため、本発明の排ガス処理装置の一態様は、水素を含む処理ガスを燃焼処理して無害化する排ガス処理装置であって、水素を含む処理ガスを燃焼する燃焼室は、円筒状の燃焼室として構成され、前記燃焼室は、処理ガスと支燃性ガスとをそれぞれ燃焼室の内周面の接線方向に向けて吹き込む処理ガス用ノズルと支燃性ガス用ノズルとを備え、前記処理ガス用ノズルと支燃性ガス用ノズルは、前記燃焼室の軸線に直交する同一平面上に位置しており、前記支燃性ガス用ノズルに冷却水供給配管を接続し、前記支燃性ガス用ノズルから支燃性ガスを冷却水とともに前記燃焼室の内周面の接線方向に向けて吹き込むようにしたことを特徴とする。ここで、同一平面上に位置しているとは、処理ガス用ノズルと支燃性ガス用ノズルの燃焼室内周面側の開口の一部が同一平面上に位置していることをいう。
【0010】
本発明によれば、処理ガスと支燃性ガスとを燃焼室の内周面の接線方向に向けて吹き込むことで円筒状混合火炎を形成することにより、旋回遠心力により円筒状混合火炎の外側は重くて温度の低い未燃の二種混合ガス、内側は軽くて温度の高い二種混合の燃焼後ガスの分布が形成される。したがって、円筒状混合火炎は、温度の低い未燃の二種混合ガスに覆われた自己断熱された状態となるため、燃焼火炎が直接に燃焼室の内壁に触れることはなく、燃焼室の内壁が熱損傷を受けにくい。
【0011】
さらに、本発明によれば、支燃性ガスとともに燃焼室に吹き込まれた冷却水の水滴はガスより重いため、冷却水の水滴は円筒状混合火炎における未燃の二種混合ガスよりもさらに壁面際を周回し、燃焼の障害にはならない。そして、冷却水の水滴は周回中に燃焼室の内壁を冷却する。これにより、処理ガス中に水素が多量に含まれる場合であっても、燃焼室内に局所的な高温部が形成されることがなく、ガス処理性能を確保しつつ燃焼室の熱損傷を防止することが可能である。
【0012】
本発明の好ましい態様によれば、前記支燃性ガス用ノズル内を流れる支燃性ガスに前記冷却水供給配管から冷却水を合流させることにより冷却水を細粒化し、細粒化した冷却水を含む支燃性ガスを前記燃焼室に吹き込むようにしたことを特徴とする。
本発明の好ましい態様によれば、前記燃焼室の上部壁に、冷却水を供給して前記上部壁を冷却する冷却ジャケットを形成したことを特徴とする。
本発明の好ましい態様によれば、前記冷却ジャケットから排出された冷却水を前記冷却水供給配管に供給するようにしたことを特徴とする。
【0013】
本発明の好ましい態様によれば、前記支燃性ガス用ノズルに支燃性ガスを供給する支燃性ガス供給ラインに逆止弁を設け、前記燃焼室内の処理ガスが支燃性ガス供給ラインに逆流しないようにしたことを特徴とする。
本発明の好ましい態様によれば、前記冷却水供給配管に逆止弁を設け、前記燃焼室内の処理ガスが前記冷却水供給配管に逆流しないようにしたことを特徴とする。
本発明の好ましい態様によれば、前記水素を含む処理ガスは、EUV露光装置から排出される排ガスであることを特徴とする。
【0014】
本発明の一態様は、水素を含む処理ガスを燃焼処理して無害化する排ガス処理方法であって、水素を含む処理ガスを燃焼する燃焼室は、円筒状の燃焼室として構成され、前記燃焼室の軸線に直交する同一平面上に位置している処理ガス用ノズルと支燃性ガス用ノズルとから、処理ガスと支燃性ガスとをそれぞれ燃焼室の内周面の接線方向に向けて吹き込んで、処理ガスと支燃性ガスの二種混合の旋回流を形成し、前記支燃性ガス用ノズルに冷却水を供給し、前記支燃性ガス用ノズルから支燃性ガスを冷却水とともに前記燃焼室の内周面の接線方向に向けて吹き込むことを特徴とする
発明の好ましい態様によれば、前記支燃性ガス用ノズル内を流れる支燃性ガスに冷却水を合流させることにより冷却水を細粒化し、細粒化した冷却水を含む支燃性ガスを前記燃焼室に吹き込むことを特徴とする。
【0015】
本発明の好ましい態様によれば、前記燃焼室の上部壁に冷却水を供給して前記上部壁を冷却することを特徴とする。
本発明の好ましい態様によれば、前記燃焼室の上部壁を冷却した後の冷却水を前記支燃性ガス用ノズルに供給することを特徴とする。
本発明の好ましい態様によれば、前記水素を含む処理ガスは、EUV露光装置から排出される排ガスであることを特徴とする。
【0016】
本発明の好ましい態様によれば、前記燃焼室には、処理ガスおよび支燃性ガスの吹き込み位置から前記燃焼室の軸線方向に離間した位置で、水供給ノズルから水を供給し、前記燃焼室の内周面上に水膜を形成することを特徴とする。
本発明の好ましい態様によれば、前記水供給ノズルから水を水溜め部の内周面の接線方向に向けて噴出することにより、前記水溜め部に、半径方向外側から内側に向かって斜め下方に傾斜した水面を有する旋回流からなる水膜を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、処理ガスと支燃性ガスとを燃焼室の内周面の接線方向に向けて吹き込むことで円筒状混合火炎を形成することにより、旋回遠心力により円筒状混合火炎の外側は重くて温度の低い未燃の二種混合ガス、内側は軽くて温度の高い二種混合の燃焼後ガスの分布が形成される。したがって、円筒状混合火炎は、温度の低い未燃の二種混合ガスに覆われた自己断熱された状態となるため、燃焼火炎が直接に燃焼室の内壁に触れることはなく、燃焼室の内壁が熱損傷を受けにくい。
また、本発明によれば、支燃性ガスとともに燃焼室に吹き込まれた冷却水の水滴はガスより重いため、冷却水の水滴は円筒状混合火炎における未燃の二種混合ガスよりもさらに壁面際を周回し、燃焼の障害にはならない。そして、冷却水の水滴は周回中に燃焼室の内壁近傍を冷却する。これにより、処理ガス中に水素が多量に含まれる場合であっても、処理ガス中の水素が急速に燃焼して燃焼室内に局所的な高温部が形成されることがなく、燃焼室の熱損傷を防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の排ガス処理装置の燃焼室の構成例を示す模式的断面図である。
図2図2は、図1のII-II線断面図である。
図3図3は、支燃性ガスに冷却水を注入する構成を備えた燃焼室を示す模式的断面図である。
図4図4は、図3のA部の拡大図である。
図5図5は、図3のV-V線断面図である。
図6図6は、燃焼室の天板に冷却ジャケットを備えた実施例を示す模式的断面図である。
図7図7は、図1に示す排ガス処理装置の支燃性ガス供給ラインに逆止弁を設置した実施形態を示す模式的断面図である。
図8図8は、図3に示す排ガス処理装置の支燃性ガス供給ラインおよび冷却水供給ラインにそれぞれ逆止弁を設置した実施形態を示す模式的断面図である。
図9図9は、図6に示す排ガス処理装置の支燃性ガス供給ラインおよび冷却水供給ラインにそれぞれ逆止弁を設置した実施形態を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る排ガス処理装置の実施形態について図1乃至図9を参照して説明する。図1乃至図9において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。実施形態においては、EUV露光装置から排出される排ガスを燃焼処理して無害化する排ガス処理装置を説明する。
図1は、本発明の排ガス処理装置の燃焼室の構成例を示す模式的断面図である。燃焼室1は、一端(図示例では上端)が閉塞され他端(図示例では下端)が開口した円筒容器状の燃焼室として構成されている。円筒容器状の燃焼室1には、閉塞端部近傍で処理ガス(排ガス)と支燃性ガス(酸素含有ガス)とが吹き込まれるようになっている。
燃焼室1の閉塞端部には、点火用兼種火供給用のパイロットバーナ2が設置されており、パイロットバーナ2には燃料と空気が供給されるようになっている。なお、図1においては、燃焼室1の下方にある洗浄部などは図示を省略している。
【0020】
図2は、図1のII-II線断面図である。図2に示すように、処理ガス(排ガス)を吹き込む処理ガス用ノズル3Aと、支燃性ガス(酸素含有ガス)を吹き込む支燃性ガス用ノズル3Bとが燃焼室1の内周面の接線方向に向けて設置されている。図2に示す例においては、処理ガス用ノズル3Aと支燃性ガス用ノズル3Bは各2個ずつ設置されているが、各ノズル3A,3Bの個数は、燃焼室のサイズや設置スペース等に応じて適宜変更可能である。処理ガスを吹き込む処理ガス用ノズル3Aと、支燃性ガスを吹き込む支燃性ガス用ノズル3Bは、円筒状の燃焼室1の軸線に直交する同一平面上に位置している。ここで、同一平面上に位置しているとは、処理ガス用ノズル3Aと支燃性ガス用ノズル3Bの燃焼室内周面側の開口の一部が同一平面上に位置していることをいう。
【0021】
図1に示すように、燃焼室1には、処理ガスと支燃性ガスとが吹き込まれる位置よりやや下方の位置に、燃焼室1の内壁面上に濡れ壁(水膜)を形成するための水を供給する水供給ノズル5が設置されている。水供給ノズル5は、燃焼室1の側壁から半径方向外側に拡がっている水溜め部6に設置されている。水溜め部6は、燃焼室1の側壁より半径方向外側に延びて水溜め部6の底面を形成する環状の底板6aと、底板6aの外周端より略垂直方向に延びて水溜め部6の側壁を形成する円筒状の側板6bとから構成されている。水供給ノズル5は側板6bに固定されている。水供給ノズル5は水溜め部6の内周面の接線方向に向けて水を噴出するように配置されている。水供給ノズル5から水を水溜め部6の内周面の接線方向に向けて噴出することにより、水溜め部6には、半径方向外側から内側に向かって斜め下方に傾斜した水面を有する旋回流からなる水膜が形成される。そして、傾斜した水面を有する旋回流(水膜)の下端かつ半径方向内端、すなわち水溜め部6の底板6aの半径方向内端から水膜は燃焼室1の内壁に沿って流れ落ちていき、燃焼室1の内壁に濡れ壁(水膜)が形成される。
【0022】
次に、図1および2に示すように構成された燃焼室1において、処理ガス用ノズル3Aと支燃性ガス用ノズル3Bとから、処理ガスと支燃性ガスとを燃焼室1の内周面の接線方向に向けて、火炎の燃焼速度以上の流速で吹き込む。これにより、燃焼室1の内壁から浮いた二種混合の円筒状混合火炎が形成される。円筒状混合火炎は燃焼室1の軸線方向に沿って形成される。二種のガスを共に接線方向に吹き込むことで、旋回遠心力により円筒状混合火炎の外側は重くて温度の低い未燃の二種混合ガス、内側は軽くて温度の高い二種混合の燃焼後ガスの分布が形成される。したがって、円筒状混合火炎は、温度の低い未燃の二種混合ガスに覆われた自己断熱された状態となるため、燃焼火炎が直接に燃焼室1の内壁に触れることはなく、燃焼室の内壁が熱損傷を受けにくい。また、円筒状混合火炎は、この自己断熱された状態ゆえに、放熱による温度低下がなく、燃焼効率の高いガス処理が行われる。また、処理ガスは通常Nガス等により希釈されて排ガス処理装置へ流入するので、このNガスを含む処理ガスを支燃性ガスと混焼することで、緩慢な燃焼となり、局所的な高温部が形成されないため、NOxの発生が抑制される。
【0023】
上述したように、本発明によれば、燃焼室1の内壁から浮いた二種混合の円筒状混合火炎による自己断熱効果により、燃焼室1の内壁は熱損傷を受けにくいようになっているが、処理ガス中に300L/min以上の水素が含まれている場合、処理ガスと支燃性ガスの二種混合の円筒状混合火炎であっても、燃焼室1内に局所的な高温部が形成され、燃焼室1が熱損傷に至る可能性がある。このような場合は、支燃性ガスに冷却水を適量注入することにより、ガス処理性能を確保しつつ燃焼室1の熱損傷を防止することが可能である。以下、この構成について説明する。
【0024】
図3は、支燃性ガスに冷却水を注入する構成を備えた燃焼室を示す模式的断面図である。図3に示すように、支燃性ガスに冷却水を合流させ、冷却水の水滴を含む支燃性ガスを燃焼室1に吹き込むようにしている。冷却水には、市水を用いるが、アルカリ水(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水溶液)を用いてもよい。
【0025】
図4は、図3のA部の拡大図である。図5は、図3のV-V線断面図である。図4に示すように、支燃性ガス用ノズル3Bには、冷却水供給配管10が接続されており、支燃性ガスに冷却水を合流させ、冷却水の水滴を含む支燃性ガスを燃焼室1に吹き込むようにしている。支燃性ガス用ノズル3Bと冷却水供給配管10とが合流する合流部での支燃性ガスの流速は数十m/sであり、この支燃性ガスの流れに冷却水が合流する際に、冷却水は細かい水滴となり(霧吹きと同じ原理による)、水滴は燃焼室内のガスの旋回流に乗って支燃性ガスポート周辺の壁面と燃焼室の天板の下面を流れる。
【0026】
図3および図4に示すように、冷却水の水滴を含む支燃性ガスと、処理ガスとを燃焼室1の内周面の接線方向に向けて吹き込むと、燃焼室1の内壁から浮いた二種混合の円筒状混合火炎が形成される。円筒状混合火炎は燃焼室1の軸線方向に沿って形成される。二種のガスを共に接線方向に吹き込むことで、旋回遠心力により円筒状混合火炎の外側は重くて温度の低い未燃の二種混合ガス、内側は軽くて温度の高い燃焼後ガスの分布が形成される。したがって、円筒状混合火炎は、温度の低い未燃の二種混合ガスに覆われた自己断熱された状態となるため、燃焼火炎が直接に燃焼室1の内壁に触れることはなく、燃焼室の内壁が熱損傷を受けにくい。また、円筒状混合火炎は、この自己断熱された状態ゆえに、放熱による温度低下がなく、燃焼効率の高いガス処理が行われる。
一方、冷却水の水滴はガスよりも重いため、図5に示すように、冷却水の水滴は円筒状混合火炎における未燃の二種混合ガスよりもさらに壁面際を周回し(図5において点線の円で示す)、燃焼の障害にはならない。そして、冷却水の水滴は周回中に、燃焼室1の内壁近傍を冷却する。これにより、処理ガス中に水素が多量に含まれる場合であっても、処理ガス中の水素が急速に燃焼して燃焼室1内に局所的な高温部が形成されることがなく、燃焼室1の熱損傷を防止することが可能である。
【0027】
図6は、燃焼室の天板に冷却ジャケットを備えた実施例を示す模式的断面図である。図6に示すように、燃焼室1は天板の内部に冷却ジャケット11を備えており、冷却ジャケット11には冷却水が供給されて天板が間接冷却されるようになっている。冷却ジャケット11から排出された冷却水は、冷却水供給配管10に供給されて燃焼室1内に吹き込まれる(図4参照)。すなわち、冷却水は、燃焼室天板の間接冷却に用いた後に燃焼室内に吹き込まれ、燃焼室の上部内壁近傍を冷却する。
【0028】
本発明者らは、図6に示す排ガス処理装置を用いて、水素ガスの処理試験を行った。処理試験は、支燃性ガスのみを供給する場合(冷却水なしの場合)と支燃性ガスと冷却水とを供給する場合(冷却水ありの場合)で行い、ガス処理中の燃焼室の外壁の温度を熱電対12により測定した。
まず試験を行うにあたって、排ガス処理装置に流入する処理ガスをEUV露光装置の排ガスと想定し、その組成と流量を以下の表1のように設定した。
【表1】
表1の条件の水素最大時に対して必要最小限な支燃性ガス量(空気量)を設定し、その支燃性ガス量(空気量)を固定したままでも水素最小時に燃焼可能な濃度になるかどうかの試算を行った結果が表2である。
【表2】
水素最小時でも水素濃度は燃焼可能な下限濃度である4%を上回っており、既知のデータ上では水素の量が変動しても、支燃性ガス量を固定したままで燃焼可能であることが分かった。
【0029】
次に実際の排ガス処理装置に表2の条件で処理ガスと支燃性ガスを供給し、安定した燃焼が可能であることと、燃焼室温度が安全な温度に保たれることを検証した。検証結果を表3に示す。
【表3】
表3から分かるように、冷却水なしの場合でも円筒状混合火炎による自己断熱効果により燃焼室温度上昇はかなり抑えられるが、水素最大時(620L/min)には円筒状混合火炎による自己断熱効果に加えて冷却水ありの場合が好ましい。
【0030】
図7は、図1に示す排ガス処理装置の支燃性ガス供給ラインに逆止弁を設置した実施形態を示す模式的断面図である。図7に示すように、支燃性ガス用ノズル3Bに支燃性ガスを供給する支燃性ガス供給ラインL1に逆止弁CV1を設置することにより、燃焼室1内の未燃焼の処理ガスが支燃性ガス供給ラインL1に逆流しないようにしている。
【0031】
図8は、図3に示す排ガス処理装置の支燃性ガス供給ラインおよび冷却水供給ラインにそれぞれ逆止弁を設置した実施形態を示す模式的断面図である。図8に示すように、支燃性ガス用ノズル3Bに支燃性ガスを供給する支燃性ガス供給ラインL1に逆止弁CV1を設置するとともに支燃性ガス用ノズル3Bに冷却水を供給する冷却水供給ラインL2に逆止弁CV2を設置することにより、燃焼室1内の未燃焼の処理ガスが支燃性ガス供給ラインL1および冷却水供給ラインL2に逆流しないようにしている。
【0032】
図9は、図6に示す排ガス処理装置の支燃性ガス供給ラインおよび冷却水供給ラインにそれぞれ逆止弁を設置した実施形態を示す模式的断面図である。図9に示すように、支燃性ガス用ノズル3Bに支燃性ガスを供給する支燃性ガス供給ラインL1に逆止弁CV1を設置するとともに冷却ジャケット11から支燃性ガス用ノズル3Bに冷却水を供給する冷却水供給ラインL2に逆止弁CV2を設置することにより、燃焼室1内の未燃焼の処理ガスが支燃性ガス供給ラインL1および冷却水供給ラインL2に逆流しないようにしている。
【0033】
図7乃至図9に示す実施形態で使用される逆止弁CV1,CV2は、管路内の流れを一方向のみ許す目的に用いられる弁で、弁体はその上流側と下流側の圧力差による力をうけて作動し、圧力差が正流の場合とは逆になると弁体が弁座に速やかに押しつけられ逆流を防止する弁であり、平板上の弁体がスイングするスイング式逆止弁やボール状の弁体が往復動するボール式逆止弁が好ましい。
【0034】
これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術思想の範囲内において、種々の異なる形態で実施されてよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0035】
1 燃焼室
2 パイロットバーナ
3A 処理ガス用ノズル
3B 支燃性ガス用ノズル
5 水供給ノズル
6 水溜め部
6a 底板
6b 側板
10 冷却水供給配管
11 冷却ジャケット
12 熱電対
L1 支燃性ガス供給ライン
L2 冷却水供給ライン
CV1 逆止弁
CV2 逆止弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9